(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】ダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 23/06 20060101AFI20231107BHJP
C22B 26/22 20060101ALI20231107BHJP
C22B 9/10 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
C22C23/06
C22B26/22
C22B9/10
(21)【出願番号】P 2022516929
(86)(22)【出願日】2021-04-01
(86)【国際出願番号】 JP2021014240
(87)【国際公開番号】W WO2021215220
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】202010315367.8
(32)【優先日】2020-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲徳▼江
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼ 幸▲峰▼
(72)【発明者】
【氏名】周 文科
(72)【発明者】
【氏名】曾 小勤
(72)【発明者】
【氏名】丁 文江
(72)【発明者】
【氏名】覃 明
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108118226(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106609331(CN,A)
【文献】特表2018-521213(JP,A)
【文献】国際公開第2020/171758(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 23/00-23/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金であって、
その成分含有量は、
Laが3.1wt%~5.0wt%、
Alが1.5wt%~3.0wt%、
Znが0.1wt%~0.5wt%、
Mnが0.1wt%~0.5wt%、残部がMgおよび不可避的不純物元素であり、
前記Alの質量含有量と前記Laの質量含有量との比が1:1.4~1:2.5である
ことを特徴とするダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金。
【請求項2】
前記Alの質量含有量と前記Laの質量含有量との比は1:1.4~1:2である
ことを特徴とする請求項1に記載のダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金。
【請求項3】
前記Laの含有量は3.1wt%~4.0wt%である
ことを特徴とする請求項1に記載のダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金。
【請求項4】
前記Alの含有量は1.5wt%~3.0wt%である
ことを特徴とする請求項1に記載のダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金。
【請求項5】
前記ダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金は、マグネシウム合金基体および析出される第2相を含み、前記第2相はAl
11La
3である
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金の製造方法であって、
(1)マグネシウム塊をるつぼに入れ、保護ガスを通入し、マグネシウム塊を全て溶解させる、
(2)Al塊、Zn塊、Mg-Mn中間合金塊を加え、完全に溶解するまで保温する、
(3)Mg-La中間合金塊を加え、完全に溶解するまで保温し、金属溶湯を得る、
(4)前記金属溶湯を溶解状態に保持して、攪拌し、精錬剤を加え、前記金属溶湯の表面に鏡面光沢が出現したら攪拌を停止する、
(5)スラグ形成剤を加え、静置した後、除滓する、
(6)除滓した前記金属溶湯をダイカスト鋳造金型に鋳込んでダイカスト鋳造し、前記ダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金を得る、
ステップを含むことを特徴とする前記製造方法。
【請求項7】
ステップ(1)において、前記保護ガスはSF
6とN
2の混合ガスである
ことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
ステップ(2)において、温度は700℃~720℃に保持する
ことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項9】
ステップ(4)において、精錬剤の添加量は前記金属溶湯全質量の1%~2%である
ことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項10】
ステップ(5)において、前記金属溶湯の温度を760℃~780℃に昇温後に前記スラグ形成剤を添加する
ことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子システムおよび装置が、集積化、小型化、軽量化、高出力といった方向に発展するにつれて、電子システムおよび装置の放熱に厳しい課題が課せられている。マグネシウム合金は、小密度で比強度が高いという特徴を有する理想的な軽量化材料である。しかし現時点において、自動車や電子分野で利用されている慣用のダイカスト鋳造マグネシウム合金AZ91Dは、その熱伝導率が60W/m・K未満であり、純マグネシウムの熱伝導率155W/m・Kおよび慣用のダイカスト鋳造アルミニウム合金ADC12の熱伝導率96W/m・Kに比べて極めて低く、このことは、例えば大出力の自動車用インバータ、駆動モータ、5G通信の製品等、放熱要求の高い装置における利用を大きく制約している。したがって高い熱伝導率を有するダイカスト鋳造可能なマグネシウム合金の開発が急がれている。
【0003】
現在すでに開示されている高熱伝導性合金の中で、例えばMg-Zn-Si(特許文献1参照)合金の場合、この合金は変形加工および熱処理により、熱伝導率は120W/m・Kを上回ることができる。Mg-Al-Mn-Ca-Cu(特許文献2参照)合金の場合、この合金は熱プレス成形後の機械的性質に非常に優れ、熱伝導率は131W/m・Kに達する。しかしながら、これらの合金はいずれも変形マグネシウム合金に属し、製造工程が複雑で、ダイカスト鋳造生産には適さない。さらに一部で開示されている高熱伝導性のダイカスト鋳造マグネシウム合金、例えばMg-Ca-Sm-Zr(特許文献3参照)合金の場合、その熱伝導率は80W/m・Kを超え、引張強度は175~230MPa、伸び率は2~11%である。この合金は高価なSm、Zr等の元素を含むため、生産コストが高く、また熱伝導率は慣用のダイカスト鋳造アルミニウム合金に比べれば依然として低い。Mg-Zn-Sm-Mn(特許文献4参照)合金の場合、その熱伝導率は100W/m・Kを上回り、引張強度は100MPaを超え、伸び率は2%を超える。この合金は、熱伝導性は高いが、強度がやや低く、耐荷重要求の高い製品における利用には適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】中国特許出願公開第101709418号明細書
【文献】中国特許出願公開第109439989号明細書
【文献】中国特許出願公開第105088042号明細書
【文献】中国特許出願公開第104846246号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は正に上記課題を解決するために完成されたもので、本発明の目的は、ダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金およびその製造方法を提供することである。本発明のダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金は、25℃の条件で、熱伝導率が105W/(m・k)を上回り、降伏強度が128MPaを超え、引張強度が220MPaを超え、伸び率が6%より大きく、通信や自動車等の部品におけるケース材料に対する放熱要求を満足することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を実現するため、本発明のダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金は、その特徴として、前記ダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金の成分含有量が、
La 3.1wt%~5.0wt%、
Al 1.5wt%~3.0wt%、
Zn 0.1wt%~0.5wt%、
Mn 0.1wt%~0.5wt%、残部はMgおよび不可避的不純物元素であり、
前記Alの質量含有量と前記Laの質量含有量との比が1:1.4~1:2.5である。
【0007】
本発明はさらに、上記ダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金の製造方法に関し、その特徴として、下記ステップを含む。
【0008】
(1)マグネシウム塊をるつぼに入れ、保護ガスを通入し、マグネシウム塊を全て溶解させる、
(2)Al塊、Zn塊、Mg-Mn中間合金塊を加え、完全に溶解するまで保温する、
(3)Mg-La中間合金塊を加え、完全に溶解するまで保温し、金属溶湯を得る、
(4)前記金属溶湯を溶解状態に保持して、攪拌し、精錬剤を加え、前記金属溶湯の表面に鏡面光沢が出現したら攪拌を停止する、
(5)スラグ形成剤を加え、静置した後、除滓する、
(6)除滓した前記金属溶湯をダイカスト鋳造金型に鋳込んでダイカスト鋳造し、前記ダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金を得る。
【0009】
本明細書は本願の優先権の基礎となる中国特許出願第202010315367.8号の開示内容を包含する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金は、25℃の条件で、熱伝導率が105W/(m・k)を上回り、降伏強度は128MPaを超え、引張強度は230MPaを超え、伸び率は6%より大きく、通信器材や自動車部品等の放熱要求の高い筐体のダイカスト鋳造生産に適合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例1におけるダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金の金属組織微視的形状図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に特定の具体的な実施例を挙げ本発明の実施形態を説明するが、当業者は本明細書に記載の内容により本発明の他の利点および効果を容易に理解可能となる。本発明の内容は好ましい実施例と組み合わせて説明されているが、それによってこの発明の特徴がこれらの実施形態に限定されることを表すものではない。むしろ、実施形態を組み合わせて発明を説明する目的は、本発明の特許請求の範囲をベースに派生する可能性のある他の選択や変更をカバーするためである。本発明に対する理解を深めるため、以下の説明には多くの具体的な詳細が含まれる。本発明はまた、これらの詳細を用いることなく実施することも可能である。さらに、本発明の重点が混乱したり曖昧になったりしないように、一部の具体的な詳細は記述の中で省略されている。なお、支障がない場合には、本発明における実施例および実施例における特徴は、互いに組み合わせることもできる。
【0013】
合金化は、マグネシウム合金の総合的性能を向上させる慣用手段であるが、合金元素の添加に伴って、マグネシウム合金の熱伝導率は低下し、その低下の程度は添加する元素の種類によって決定される。合金元素がマグネシウム合金中に固溶すれば、熱伝導率の下降は顕著になる。合金元素とマグネシウムが金属間化合物を形成すれば、熱伝導率に対する影響はマグネシウム基体中に固溶するよりも一桁は下がる。
【0014】
したがって本発明の基本的思想は、マグネシウム合金中に固溶する合金元素の数をできるだけ減らし、第2相の割合を増やして、合金の強化を実現するとともに、熱伝導率に対する影響を可能な限り軽減することである。すなわち本発明では、マグネシウム合金における固溶度が極めて小さく、且つマグネシウムと第2相を形成し易い合金元素Laを主要な合金元素として選択することで、合金が高い熱伝導率を得られるようにする。
【0015】
また、合金の強度、伸び率、および鋳造性の問題を考慮し、合金に一定量のAl元素を添加する。しかしAl元素は合金の熱伝導率に大きく影響するため、Al元素の添加は合金の熱伝導率の急速な低下につながる。したがって本発明では、Al元素とLa元素の質量含有量の割合を制御して、Al元素とLa元素が第2相を形成するようにし、合金の熱伝導率の低下をできる限り減らすとともに、合金の強度を向上させている。
【0016】
さらに、本発明では合金に少量のZnを添加することで、合金の熱伝導率は低下させずに合金を一層強化し、合金の強度を上げることを可能にしている。
【0017】
また、本発明はさらに、合金に一定量のMn元素を加えることで、マグネシウム合金の不可避的有害元素であるFe、Ni等による合金の耐食性に対する影響を除去している。
【0018】
すなわち本発明において、前記ダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金の成分含有量は次のとおりである。
【0019】
La 3.1wt%~5.0wt%、
Al 1.5wt%~3.0wt%、
Zn 0.1wt%~0.5wt%、
Mn 0.1wt%~0.5wt%、残部はMgおよび不可避的不純物元素であり、
前記Alの質量含有量と前記Laの質量含有量との比は1:1.4~1:2.5である。
【0020】
特に、前記Alの質量含有量と前記Laの質量含有量との比が1:1.4~1:2であると、前記ダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金は、より高い強度を得ることができる。
【0021】
特に、前記Laの含有量が3.1wt%~4.0wt%、前記Alの含有量が1.5wt%~3.0wt%であるとき、前記ダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金は、より高い熱伝導率とより高い強度を得ることができる。
【0022】
さらに、前記ダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金には、マグネシウム合金基体および析出される第2相が含まれ、前記第2相はAl11La3である。これにより前記ダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金中に転位のピン止め効果が生じ、合金強度および伸び率が向上するとともに、合金の鋳造性が改善される。前記ダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金中には、マグネシウム合金基体と第2相のAl11La3のみを含むことが好ましく、このとき、合金は最適な熱伝導率および強度を得ることができる。
【0023】
また、本発明はさらに下記ステップを含む、上記ダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金の製造方法に関する。
【0024】
(1)マグネシウム塊をるつぼに入れ、保護ガスを通入し、マグネシウム塊を全て溶解させる、
(2)Al塊、Zn塊、Mg-Mn中間合金塊を加え、完全に溶解するまで保温する、
(3)Mg-La中間合金塊を加え、完全に溶解するまで保温して、金属溶湯を得る、
(4)前記金属溶湯を溶解状態に保持して、攪拌し、精錬剤を加え、前記金属溶湯の表面に鏡面光沢が出現したら攪拌を停止する、
(5)スラグ形成剤を加え、静置した後、除滓する、
(6)除滓した前記金属溶湯をダイカスト鋳造金型に鋳込んでダイカスト鋳造し、前記ダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金を得る。
【0025】
ここで、前記精錬剤は本分野で慣用される精錬剤であり、前記スラグ形成剤は本分野で慣用されるスラグ形成剤である。これにより、簡易な方法によって上記ダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金を得ることができる。
【0026】
さらに、ステップ(1)において、前記保護ガスはSF6とN2の混合ガスであり、混合比率は本分野で常用される比率とすることができ、これにより、マグネシウム塊の溶解時にマグネシウム塊を保護し、マグネシウム塊の酸化を防ぐことができる。ステップ(2)において、温度は700℃~720℃に保持され、これにより、適切な温度で金属塊を溶解し、エネルギー源の消費を減らすことができる。ステップ(4)において、精錬剤の添加量は金属溶湯全質量の1%~2%であり、これにより、精錬剤の消費を減らすことができる。ステップ(5)において、前記金属溶湯の温度を760℃~780℃に昇温後に前記スラグ形成剤を加え、スラグ形成時には、温度を溶解温度より高い温度にし、これにより、金属溶湯の流れ性を向上させ、スラグ形成効率を向上させる。
【実施例】
【0027】
次に、具体的な実施例により本発明を詳しく説明する。
[実施例1]
本実施例は、ダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金(Mg-4La-2.5Al-0.2Zn-0.1Mn)およびその製造方法に関し、本実施例のダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金の成分は、4wt%のLa、2.5wt%のAl、0.2wt%のZn、0.1wt%のMn、残部のMgおよび不可避的不純物である。前記製造方法は、下記ステップを含む。
【0028】
1、材料配合:重量%配合比でかつ焼損率を適宜考慮して材料を配合するものとし、純マグネシウム塊、純アルミニウム塊、純亜鉛塊、Mg-Mn中間合金、Mg-La中間合金を秤取する。次に配合した原料を予熱する。
【0029】
2、溶解前準備:溶解用るつぼ、各種工具に前処理(清掃、予熱等)を行う。保護ガスを検査確認する。精錬剤、スラグ形成剤等を準備する。ダイカスト鋳造機を試運転し、金型を予熱する。
【0030】
3、溶解:
(1)純マグネシウム塊を全て溶解炉のるつぼに入れ、保護ガスのSF6とN2の混合ガスを通入し、720℃に昇温して、マグネシウム塊を全て溶解させる、
(2)マグネシウム塊が全て溶解したら、マグネシウム溶湯の温度を700℃に制御し、予熱した純アルミニウム塊、純亜鉛塊、Mg-Mn中間合金塊を順次加え、完全に溶解するまで保温する、
(3)予熱したMg-La中間合金塊をさらに加え、完全に溶解するまで保温する、
(4)次に溶湯温度を720℃に保持して、マグネシウム合金専用の精錬剤を加え、添加量は溶融体全重量の約2wt%とし、秩序立ててかき混ぜ、表面に鏡面光沢が出現したら攪拌を停止する、
(5)精錬完了後780℃に昇温し、スラグ形成剤を加え、15分間静置し、溶湯のスラグを十分に形成させ、次に除滓する。
【0031】
4、合金のダイカスト鋳造:
除滓した金属溶湯を適切な鋳込温度に調整し、十分に予熱したダイカスト鋳造金型内に鋳込んでダイカスト鋳造し、マグネシウム合金ダイカスト鋳造品を得る。ICP検出を行ったところ、その成分はMg-4La-2.5Al-0.2Zn-0.1Mnであった。
【0032】
図1は、実施例1におけるダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金(Mg-4La-2.5Al-0.2Zn-0.1Mn)の金属組織微視的形状図である。
図1に示すように、マグネシウム合金の基体(濃色グレー部分)上に針状の第2相(白色部分)Al
11La
3が析出しており、転位のピン止め効果が生じることで、合金強度および伸び率を向上させるとともに、合金の鋳造性を改善することができる。
【0033】
本発明におけるMg-4La-2.5Al-0.2Zn-0.1Mnのダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金は、室温での熱伝導率が112.9W/(m・K)、降伏強度が145MPa、引張強度が240MPa、伸び率が12%である。
[実施例2]
本実施例は、ダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金(Mg-4La-2Al-0.2Zn-0.2Mn)およびその製造方法に関し、本実施例におけるダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金の成分は、4wt%のLa、2wt%のAl、0.2wt%のZn、0.2wt%のMn、残部はMgおよび不可避的不純物である。前記製造方法は、下記ステップを含む。
【0034】
1、材料配合:重量%配合比でかつ焼損率を適宜考慮して材料を配合するものとし、純マグネシウム塊、純アルミニウム塊、純亜鉛塊、Mg-Mn中間合金、Mg-La中間合金を秤取する。次に配合した原料を予熱する。
【0035】
2、溶解前準備:溶解用るつぼ、各種工具に前処理(清掃、予熱等)を行う。保護ガスを検査確認する。精錬剤、スラグ形成剤等を準備する。ダイカスト鋳造機を試運転し、金型を予熱する。
【0036】
3、溶解:
(1)純マグネシウム塊を全て溶解炉のるつぼに入れ、保護ガスのSF6とN2の混合ガスを通入し、720℃に昇温して、マグネシウム塊を全て溶解させる、
(2)マグネシウム塊が全て溶解したら、マグネシウム溶湯の温度を700℃に制御し、予熱した純アルミニウム塊、純亜鉛塊、Mg-Mn中間合金塊を順次加え、完全に溶解するまで保温する、
(3)予熱したMg-La中間合金塊をさらに加え、完全に溶解するまで保温する、
(4)次に溶湯温度を720℃に保持して、マグネシウム合金専用の精錬剤を加え、添加量は溶融体全重量の約1wt%とし、秩序立ててかき混ぜ、表面に鏡面光沢が出現したら攪拌を停止する、
(5)精錬完了後760℃に昇温し、スラグ形成剤を加え、15分間静置し、溶湯のスラグを十分に形成させ、次に除滓する。
【0037】
4、合金のダイカスト鋳造:
除滓した金属溶湯を適切な鋳込温度に調整し、十分に予熱したダイカスト鋳造金型内に鋳込んでダイカスト鋳造し、マグネシウム合金ダイカスト鋳造品を得る。ICP検出を行ったところ、その成分はMg-4La-2Al-0.2Zn-0.2Mnであった。
【0038】
本発明におけるMg-4La-2Al-0.2Zn-0.2Mnのダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金は、室温での熱伝導率が115W/(m・K)、降伏強度が140MPa、引張強度が235MPa、伸び率が10%である。
[実施例3]
本実施例は、ダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金(Mg-3.1La-1.5Al-0.1Zn-0.5Mn)およびその製造方法に関し、本実施例におけるダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金の成分は、3.1wt%のLa、1.5wt%のAl、0.1wt%のZn、0.5wt%のMn、残部はMgおよび不可避的不純物である。前記製造方法は、下記ステップを含む。
【0039】
1、材料配合:重量%配合比でかつ焼損率を適宜考慮して材料を配合するものとし、純マグネシウム塊、純アルミニウム塊、純亜鉛塊、Mg-Mn中間合金、Mg-La中間合金を秤取する。次に配合した原料を予熱する。
【0040】
2、溶解前準備:溶解用るつぼ、各種工具に前処理(清掃、予熱等)を行う。保護ガスを検査確認する。精錬剤、スラグ形成剤等を準備する。ダイカスト鋳造機を試運転し、金型を予熱する。
【0041】
3、溶解:
(1)純マグネシウム塊を全て溶解炉のるつぼに入れ、保護ガスのSF6とN2の混合ガスを通入し、720℃に昇温して、マグネシウム塊を全て溶解させる、
(2)マグネシウム塊が全て溶解したら、マグネシウム溶湯の温度を700℃に制御し、予熱した純アルミニウム塊、純亜鉛塊、Mg-Mn中間合金塊を順次加え、完全に溶解するまで保温する、
(3)予熱したMg-La中間合金塊をさらに加え、完全に溶解するまで保温する、
(4)次に溶湯温度を720℃に保持して、マグネシウム合金専用の精錬剤を加え、添加量は溶融体全重量の約1.5wt%とし、秩序立ててかき混ぜ、表面に鏡面光沢が出現したら攪拌を停止する、
(5)精錬完了後770℃に昇温し、スラグ形成剤を加え、15分間静置し、溶湯のスラグを十分に形成させ、次に除滓する。
【0042】
4、合金のダイカスト鋳造:
除滓した金属溶湯を適切な鋳込温度に調整し、十分に予熱したダイカスト鋳造金型内に鋳込んでダイカスト鋳造し、マグネシウム合金ダイカスト鋳造品を得る。ICP検出を行ったところ、その成分はMg-3.1La-1.5Al-0.1Zn-0.5Mnであった。
【0043】
本発明におけるMg-3.1La-1.5Al-0.1Zn-0.5Mnのダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金は、室温での熱伝導率が118.2W/(m・K)、降伏強度が128MPa、引張強度が220MPa、伸び率が9%である。
[実施例4]
本実施例は、ダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金(Mg-5La-2Al-0.5Zn-0.3Mn)およびその製造方法に関し、本実施例におけるダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金の成分は、5wt%のLa、2wt%のAl、0.5wt%のZn、0.3wt%のMn、残部はMgおよび不可避的不純物である。前記製造方法は、下記ステップを含む。
【0044】
1、材料配合:重量%配合比でかつ焼損率を適宜考慮して材料を配合するものとし、純マグネシウム塊、純アルミニウム塊、純亜鉛塊、Mg-Mn中間合金、Mg-La中間合金を秤取する。次に配合した原料を予熱する。
【0045】
2、溶解前準備:溶解用るつぼ、各種工具に前処理(清掃、予熱等)を行う。保護ガスを検査確認する。精錬剤、スラグ形成剤等を準備する。ダイカスト鋳造機を試運転し、金型を予熱する。
【0046】
3、溶解:
(1)純マグネシウム塊を全て溶解炉のるつぼに入れ、保護ガスのSF6とN2の混合ガスを通入し、720℃に昇温して、マグネシウム塊を全て溶解させる、
(2)マグネシウム塊が全て溶解したら、マグネシウム溶湯の温度を700℃に制御し、予熱した純アルミニウム塊、純亜鉛塊、Mg-Mn中間合金塊を順次加え、完全に溶解するまで保温する、
(3)予熱したMg-La中間合金塊をさらに加え、完全に溶解するまで保温する、
(4)次に溶湯温度を720℃に保持して、マグネシウム合金専用の精錬剤を加え、添加量は溶融体全重量の約2wt%とし、秩序立ててかき混ぜ、表面に鏡面光沢が出現したら攪拌を停止する、
(5)精錬完了後760℃に昇温し、スラグ形成剤を加え、15分間静置し、溶湯のスラグを十分に形成させ、次に除滓する。
【0047】
4、合金のダイカスト鋳造:
除滓した金属溶湯を適切な鋳込温度に調整し、十分に予熱したダイカスト鋳造金型内に鋳込んでダイカスト鋳造し、マグネシウム合金ダイカスト鋳造品を得る。ICP検出を行ったところ、その成分はMg-5La-2Al-0.5Zn-0.3Mnであった。
【0048】
本発明におけるMg-5La-2Al-0.5Zn-0.3Mnのダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金は、室温での熱伝導率が105.3W/(m・K)、降伏強度が151MPa、引張強度が254MPa、伸び率が6%である。
[実施例5]
本実施例は、ダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金(Mg-4.2La-3Al-0.3Zn-0.2Mn)およびその製造方法に関し、本実施例におけるダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金の成分は、4.2wt%のLa、3wt%のAl、0.3wt%のZn、0.2wt%のMn、残部はMgおよび不可避的不純物である。前記製造方法は、下記ステップを含む。
【0049】
1、材料配合:重量%配合比でかつ焼損率を適宜考慮して材料を配合するものとし、純マグネシウム塊、純アルミニウム塊、純亜鉛塊、Mg-Mn中間合金、Mg-La中間合金を秤取する。次に配合した原料を予熱する。
【0050】
2、溶解前準備:溶解用るつぼ、各種工具に前処理(清掃、予熱等)を行う。保護ガスを検査確認する。精錬剤、スラグ形成剤等を準備する。ダイカスト鋳造機を試運転し、金型を予熱する。
【0051】
3、溶解:
(1)純マグネシウム塊を全て溶解炉のるつぼに入れ、保護ガスのSF6とN2の混合ガスを通入し、720℃に昇温して、マグネシウム塊を全て溶解させる、
(2)マグネシウム塊が全て溶解したら、マグネシウム溶湯の温度を700℃に制御し、予熱した純アルミニウム塊、純亜鉛塊、Mg-Mn中間合金塊を順次加え、完全に溶解するまで保温する、
(3)予熱したMg-La中間合金塊をさらに加え、完全に溶解するまで保温する、
(4)次に溶湯温度を720℃に保持して、マグネシウム合金専用の精錬剤を加え、添加量は溶融体全重量の約2wt%とし、秩序立ててかき混ぜ、表面に鏡面光沢が出現したら攪拌を停止する、
(5)精錬完了後760℃に昇温し、スラグ形成剤を加え、15分間静置し、溶湯のスラグを十分に形成させ、次に除滓する。
【0052】
4、合金のダイカスト鋳造:
除滓した金属溶湯を適切な鋳込温度に調整し、十分に予熱したダイカスト鋳造金型内に鋳込んでダイカスト鋳造し、マグネシウム合金ダイカスト鋳造品を得る。ICP検出を行ったところ、その成分はMg-4.2La-3Al-0.3Zn-0.2Mnであった。
【0053】
本発明におけるMg-4.2La-3Al-0.3Zn-0.2Mnのダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金は、室温での熱伝導率が108.2W/(m・K)、降伏強度が147MPa、引張強度が246MPa、伸び率が10%である。
[比較例1]
本比較例は、ダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金(Mg-4La-2.5Al-0.1Mn)およびその製造方法に関し、本比較例におけるダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金の成分は、4wt%のLa、2.5wt%のAl、0.1wt%のMn、残部はMgおよび不可避的不純物である。前記製造方法は、下記ステップを含む。
【0054】
1、材料配合:重量%配合比でかつ焼損率を適宜考慮して材料を配合するものとし、純マグネシウム塊、純アルミニウム塊、Mg-Mn中間合金、Mg-La中間合金を秤取する。次に配合した原料を予熱する。
【0055】
2、溶解前準備:溶解用るつぼ、各種工具に前処理(清掃、予熱等)を行う。保護ガスを検査確認する。精錬剤、スラグ形成剤等を準備する。ダイカスト鋳造機を試運転し、金型を予熱する。
【0056】
3、溶解:
(1)純マグネシウム塊を全て溶解炉のるつぼに入れ、保護ガスのSF6とN2の混合ガスを通入し、720℃に昇温して、マグネシウム塊を全て溶解させる、
(2)マグネシウム塊が全て溶解したら、マグネシウム溶湯温度を720℃に制御し、予熱した純Al塊、Mg-Mn中間合金塊を順次加え、完全に溶解するまで保温する、
(3)予熱したMg-La中間合金塊をさらに加え、完全に溶解するまで保温する、
(4)次に溶湯温度を720℃に保持して、マグネシウム合金専用の精錬剤を加え、添加量は金属溶湯全重量の約1wt%とし、秩序立ててかき混ぜ、表面に鏡面光沢が出現したら攪拌を停止する、
(5)精錬完了後760℃に昇温し、スラグ形成剤を加え、15分間静置し、溶湯のスラグを十分に形成させ、次に除滓する。
【0057】
4、合金のダイカスト鋳造:
除滓した金属溶湯を適切な鋳込温度に調整し、十分に予熱したダイカスト鋳造金型内に鋳込んでダイカスト鋳造し、マグネシウム合金ダイカスト鋳造品を得る。ICP検出を行ったところ、その成分はMg-4La-2.5Al-0.1Mnであった。
【0058】
本比較例におけるMg-4La-2.5Al-0.1Mnのダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金は、室温での熱伝導率が108.9W/(m・K)、降伏強度が135MPa、引張強度が225MPa、伸び率が12%である。
【0059】
上記からわかるように、マグネシウム合金中にZn元素が欠如している場合、マグネシウム合金の熱伝導率はやや高いが、マグネシウム合金の強度は低下する。
[比較例2]
本比較例は、ダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金(Mg-4La-0.5Zn-0.2Mn)およびその製造方法に関し、本比較例におけるダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金の成分は、4wt%のLa、0.5wt%のZn、0.2wt%のMn、残部はMgおよび不可避的不純物である。前記製造方法は、下記ステップを含む。
【0060】
1、材料配合:重量%配合比でかつ焼損率を適宜考慮して材料を配合するものとし、純マグネシウム塊、純アルミニウム塊、純亜鉛塊、Mg-Mn中間合金、Mg-La中間合金を秤取する。次に配合した原料を予熱する。
【0061】
2、溶解前準備:溶解用るつぼ、各種工具に前処理(清掃、予熱等)を行う。保護ガスを検査確認する。精錬剤、スラグ形成剤等を準備する。ダイカスト鋳造機を試運転し、金型を予熱する。
【0062】
3、溶解:
(1)純マグネシウム塊を全て溶解炉のるつぼに入れ、保護ガスのSF6とN2の混合ガスを通入し、720℃に昇温して、マグネシウム塊を全て溶解させる、
(2)マグネシウム塊が全て溶解したら、マグネシウム溶湯の温度を700℃に制御し、予熱した純アルミニウム塊、純亜鉛塊、Mg-Mn中間合金塊を順次加え、完全に溶解するまで保温する、
(3)予熱したMg-La中間合金塊をさらに加え、完全に溶解するまで保温する、
(4)次に溶湯温度を720℃に保持して、マグネシウム合金専用の精錬剤を加え、添加量は溶融体全重量の約2wt%とし、秩序立ててかき混ぜ、表面に鏡面光沢が出現したら攪拌を停止する。
【0063】
(5)精錬完了後760℃に昇温し、スラグ形成剤を加え、15分間静置し、溶湯のスラグを十分に形成させ、次に除滓する。
【0064】
4、合金のダイカスト鋳造:
除滓した金属溶湯を適切な鋳込温度に調整し、十分に予熱したダイカスト鋳造金型内に鋳込んでダイカスト鋳造し、マグネシウム合金ダイカスト鋳造品を得る。ICP検出を行ったところ、その成分はMg-4La-0.5Zn-0.2Mnであった。
【0065】
本比較例におけるMg-4La-0.5Zn-0.2Mnのダイカスト鋳造可能な高熱伝導性マグネシウム合金は、室温での熱伝導率が123.7W/(m・K)、降伏強度が128MPa、引張強度が200MPa、伸び率が1%である。
【0066】
上記からわかるように、マグネシウム合金中にAl元素が欠如している場合、マグネシウム合金の熱伝導率は高いが、マグネシウム合金の強度と伸び率は低下する。
【0067】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。