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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】アンテナ装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/24 20060101AFI20231107BHJP
   H01Q 5/35 20150101ALI20231107BHJP
   H01Q 9/42 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
H01Q1/24 Z
H01Q5/35
H01Q9/42
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022530406
(86)(22)【出願日】2020-06-09
(86)【国際出願番号】 JP2020022732
(87)【国際公開番号】W WO2021250788
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】318012780
【氏名又は名称】FCNT株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古賀 洋平
(72)【発明者】
【氏名】伴 泰光
(72)【発明者】
【氏名】吉川 学
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/183336(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102013110795(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00- 1/52
H01Q 5/00- 5/55
H01Q 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1周波数に対応する長さを有しており、グランドに沿って配置される第1アンテナと、
前記第1アンテナを構成する金属を貫通するスロットによって形成されており、前記第1周波数よりも高周波の第2周波数に対応するスロット長を有する第2アンテナと、
前記グランドから前記第1アンテナへ繋がる前記第1周波数用の第1給電線と、
前記スロットと前記グランドとの間において前記第2アンテナに対し非接触状態で配置される電磁界結合用の金属素子と、
前記グランドから前記金属素子へ繋がる前記第2周波数用の第2給電線と、を備える、
アンテナ装置。
【請求項2】
前記金属素子は、前記スロットの長手方向に沿って延在する金属である、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1アンテナは、前記第1周波数に対応した波長の4分の1の長さを持ち、
前期第2アンテナは、前記第2周波数に対応した波長の2分の1の長さを持つ、
請求項1又は2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記金属素子は、前記スロットの開口部分の縁を形成する2つの長辺のうちの一方に対し、他方よりも近い位置に配置されている、
請求項1から3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記金属素子は、長手方向における両端のうちの一方のみに前記第2給電線が繋がったモノポール形状を有している、
請求項1から4の何れか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記金属素子は、ループ形状を有している、
請求項1から4の何れか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記第2給電線は、前記スロットの長手方向における前記スロットの中央付近において前記金属素子に繋がる、
請求項1から6の何れか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記金属素子は、長手方向における一端が、前記スロットの長手方向における前記スロットの中央付近に位置する、
請求項1から7の何れか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記金属素子は、整合回路を介して前記第2の給電線と接続される、
請求項1から8の何れか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
前記スロットには、誘電体が充填されている、
請求項1から9の何れか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項11】
前記スロットと前記グランドとの間に配置されており、主放射方向が前記スロットへ向くように配置された第3アンテナを更に備える、
請求項1から10の何れか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項12】
請求項1から11の何れか一項に記載のアンテナ装置を備える、
電子機器。
【請求項13】
前記第1アンテナを構成する金属によって一部が形成された筐体を備える、
請求項12に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信技術の発展に伴い、電子機器に各種のアンテナが用いられている(例えば、特許文献1-2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-64320号公報
【文献】国際公開第2016/103859号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、スマートフォンのような携帯端末の場合、様々な無線通信方式に対応するために、周波数帯域の異なる複数種のアンテナが内蔵される場合がある。しかし、このような携帯端末には、アンテナ以外にも様々な電子部品を内蔵する必要があるため、アンテナ用の設置スペースを確保するのが容易でない。
【0005】
そこで、開示の技術の1つの側面は、複数種のアンテナの設置スペースを可及的に抑制可能なアンテナ装置及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の技術の1つの側面は、次のようなアンテナ装置によって例示される。本アンテナ装置は、第1周波数に対応する長さを有しており、グランドに沿って配置される第1アンテナと、第1アンテナを構成する金属を貫通するスロットによって形成されており、第1周波数よりも高周波の第2周波数に対応するスロット長を有する第2アンテナと、グランドから第1アンテナへ繋がる第1周波数用の第1給電線と、スロットとグランドとの間において第2アンテナに対し非接触状態で配置される電磁界結合用の金属素子と、グランドから金属素子へ繋がる第2周波数用の第2給電線と、を備える。
【0007】
また、開示の技術の1つの側面は、上記アンテナ装置を備えた電子機器によって例示される。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術は、複数種のアンテナの設置スペースを可及的に抑制可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る携帯端末の外観を表面側から表した外観斜視図である。
図2図2は、携帯端末の機能構成例を示すブロック図である。
図3図3は、実施形態に係るアンテナの斜視図である。
図4図4は、金属素子の位置関係を示した図である。
図5図5は、実施形態におけるSパラメータを示したグラフである。
図6図6は、実施形態におけるトータル効率を示したグラフである。
図7図7は、3.7GHzの周波数における金属素子の給電位置及び素子長とトータル効率との関係を示したグラフである。
図8図8は、第1変形例に係るアンテナの斜視図である。
図9図9は、第2変形例に係るアンテナの斜視図である。
図10図10は、第2変形例におけるSパラメータを示したグラフである。
図11図11は、第2変形例におけるトータル効率を示したグラフである。
図12図12は、整合回路の一例を示した概略図である。
図13図13は、第3変形例におけるSパラメータを示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本開示の一例を示すに過ぎず、本開示の技術的範囲を以下の形態に限定するものではない。
【0011】
<実施形態>
図1は、実施形態に係る携帯端末の外観を表面側から表した外観斜視図である。本実施形態に係る携帯端末1は、図1に示されるように、全体的に板状の電子機器であり、表示部2やマイク、スピーカ、端子等を設けた筐体3を有している。本実施形態では、携帯端末1の一例であるスマートフォンを前提として説明するが、携帯端末1は、例えば、通話機能を有しないタブレット型コンピュータ、携帯型音響機器、電子辞書、電卓、その他各種の電子機器であってもよい。また、本実施形態は、携帯不能なデスクトップ型コンピュータ、家庭用電気製品、FA(Factory Automation)用のセンサ、監視カメラ、その他の各種電子機器であってもよい。
【0012】
図2は、携帯端末1の機能構成例を示すブロック図である。図3に示すように、携帯端末1は、表示部2の他に、制御部4、通信部5、音声入出力部6、記憶部7、操作部8、アンテナ9、スピーカ10、マイク11を備える。アンテナ9は、携帯端末1の筐体3の外面の一部を形成してもよいし、筐体3に内蔵されていてもよい。
【0013】
制御部4は、CPU(Central Processing Unit)などの携帯端末1全体の処理を司る処理部であり、記憶部7からプログラムを読み出してプロセスを実行する。制御部4は、プロセスを実行することで各種機能ブロックを実現し、例えば、表示部2に表示される表示物の処理や、通信部5に実行させる通信関係の処理を行う。
【0014】
通信部5は、制御部4の制御のもと、アンテナ9を用いて、他の移動機や基地局装置等の無線通信機器と無線通信を実行する。具体的には、通信部5は、5G(第5世代移動体通信)や4G(第4世代移動体通信)、WiFi(登録商標、Wireless Fidelity)等の各種通信規格に準拠した通信方式を用いて、他の移動機や基地局装置等の無線通信機器と無線通信を行う。例えば、通信部5は、制御部4の制御のもと、ウェブブラウザでの選択操作により選択されたウェブサイトの情報や、その他各種のアプリケーションで取り扱うデータの送受信を、5G通信やWiFi通信等を介して行う。
【0015】
音声入出力部6は、制御部4から入力された音声をスピーカ10より出力する。また、音声入出力部6は、音声をマイク11より集音して制御部4に出力する。
【0016】
記憶部7は、メモリやSSD(Solid State Drive)などの記憶装置である。記憶部7は、コンピュータプログラムおよびデータを格納する。
【0017】
操作部8は、表示部2の表示画面に重畳して配設されたタッチパネルや操作キーなどを有しており、ユーザからの各種入力を受け付けて制御部4へ出力する。表示部2は、液晶画面などであり、制御部4の制御のもと各種情報を表示画面に表示する。
【0018】
携帯端末1の構成については、以上の通りである。次に、アンテナ9の詳細について説明する。上述したように、本実施形態の携帯端末1は、5Gや4G、WiFi等の各種通信規格に準拠した通信方式を用いて、他の移動機や基地局装置との無線通信を行う。よって、アンテナ9には、様々な周波数帯に対応するために複数種のアンテナが備わっている。
【0019】
図3は、実施形態に係るアンテナ9の斜視図である。アンテナ9は、図3に示すように、LTEアンテナ9A、Sub6アンテナ9B、ミリ波アンテナ9C、金属素子9D、給電線9E、給電線9Fを備える。なお、図3では、アンテナ9の要部のみを図示しており、モールド樹脂等の周辺部については図示を省略している。
【0020】
アンテナ9は、グランドGの端部に設けられている。グランドGは、接地電位に保持される矩形状の金属層であり、銅箔等の薄膜状の金属層で実現される。グランドGは、電磁的にグランドとみなすことができる部位であるため、図3では矩形の板状に図示されているが、実際には各種電子部品が実装された配線基板に配置される金属層である。
【0021】
LTEアンテナ9Aは、細長い板状の金属材で構成される棒状のアンテナである。LTEアンテナ9Aは、4Gの周波数(本願でいう「第1周波数」の一例である)に対応する長さ(70mm)、好適な長さとしては波長の4分の1に近い長さを有しており、グランドGから所定距離(5mm)の位置においてグランドGの縁沿いに延在する。LTEアンテナ9Aは、グランドGからLTEアンテナ9Aへ繋がる給電線9EがLTEアンテナ9Aの長手方向における一端部分に接続されている。給電線9Eは、同軸ケーブルで給電される場合は、シールド線がグランドGに接続され、芯線が給電点においてLTEアンテナ9Aに接続される。よって、LTEアンテナ9Aは、モノポールアンテナとして機能する。LTEアンテナ9Aは、板状の金属材なので、アンテナ9が携帯端末1の筐体3の外面の一部を形成する場合、当該LTEアンテナ9Aが筐体3の外装面を形成してもよい。
【0022】
Sub6アンテナ9Bは、板状の金属材であるLTEアンテナ9Aを貫通するスロットによって形成されるスロットアンテナである。Sub6アンテナ9Bは、LTEアンテナ9Aの長手方向に沿って延在するスロットによって形成されている。よって、Sub6アンテナ9Bを形成するスロットの長手方向の長さ(スロット長)は、必然的に、LTEアンテナ9Aの長手方向の長さより短い。したがって、Sub6アンテナ9Bは、LTEアンテナ9Aよりも高周波の周波数に対応することになる。スロットの長さは波長の2分の1に近い長さにすることが好適である。本実施形態では、一例として、4Gより高周波の5GにおけるSub6帯の周波数をSub6アンテナ9Bで対応するべく、30mmの長さと3.6mmの横幅のスロットを誘電率3.0の樹脂で充填したものを、Sub6アンテナ9Bのスロットアンテナとした。
【0023】
ミリ波アンテナ9Cは、アンテナとその他の素子とを一体化したアンテナモジュールである。ミリ波アンテナ9Cは、図3に示されるようにSub6アンテナ9Bの長手方向よりも小さいアンテナモジュールであり、5Gにおけるミリ波帯の周波数に対応する。ミリ波帯の電波は、指向性が著しく高いため、本実施形態では、ミリ波アンテナ9Cの主放射方向がSub6アンテナ9B内を通って図3の紙面上部へ向かう方向にミリ波アンテナ9Cが配置されている。
【0024】
アンテナ9には、このように、LTEアンテナ9A、Sub6アンテナ9B、ミリ波アンテナ9Cの3種類のアンテナが備わっており、幅広い周波数帯域に対応可能となっている。よって、携帯端末1は、アンテナ9に備わるこれら3種類のアンテナを適宜切り替えることにより、通信環境に応じた最適な通信方式を選択することができる。
【0025】
ところで、Sub6アンテナ9Bは、上述したように、LTEアンテナ9Aを構成する金属材に形成されている。よって、Sub6アンテナ9Bに給電線を直接繋ぐと、LTEアンテナ9Aがアンテナとして機能できない。そこで、本実施形態のアンテナ9では、Sub6アンテナ9Bの給電経路が、以下のように構成されている。
【0026】
すなわち、アンテナ9には、図3に示されるように、金属素子9Dと給電線9Fが備わっている。金属素子9Dは、Sub6アンテナ9BとグランドGとの間においてSub6アンテナ9Bを構成するスロットアンテナに対し非接触状態で配置される電磁界結合用の金属素子である。よって、金属素子9Dは、図3に示されるように、LTEアンテナ9AとグランドGの何れに対しても離間する位置に配置されている。そして、金属素子9Dの端部には、給電線9Fが繋がっている。給電線9Fは、グランドGに設けられた高周波回路に繋がっている。この高周波回路は、通信部5を構成する。
【0027】
図4は、金属素子9Dの位置関係を示した図である。金属素子9Dは、Sub6アンテナ9Bを構成するスロットの長手方向に沿って延在する金属である。また、金属素子9Dは、スロットの開口部分の縁を形成する2つの長辺のうちの一方に対し、他方よりも近い位置に配置されている。よって、金属素子9Dは、スロットの開口部分の縁を形成する2つの長辺のうちの一方に沿うように延在している。
【0028】
金属素子9Dは、端部に繋がっている給電線9Fから給電されると、電磁界結合方式における送電側電極として機能し、Sub6アンテナ9Bを構成するスロットと金属素子9Dとの間に電界を発生させる。そして、Sub6アンテナ9Bを構成するスロットが、電磁界結合方式における受電側電極として機能し、Sub6アンテナ9Bが給電線9Fの電力を電波にして送信する。
【0029】
また、Sub6アンテナ9Bを構成するスロットは、Sub6アンテナ9Bが電波を捉えると、電磁界結合方式における送電側電極として機能し、Sub6アンテナ9Bを構成するスロットと金属素子9Dとの間に電界を発生させる。そして、金属素子9Dが、電磁界結合方式における受電側電極として機能し、Sub6アンテナ9Bで捉えた電波の電力を給電線9Fへ送る。
【0030】
なお、給電線9Fに繋がる高周波回路には、Sub6アンテナ9Bが送受信するSub6の周波数帯の電力において、Sub6アンテナ9Bを構成するスロットと金属素子9Dとの間で適切な強度の共振が発生するように、適宜の整合回路が備わっている。
【0031】
上記のように構成されるアンテナ9であれば、LTEアンテナ9A、Sub6アンテナ9B、ミリ波アンテナ9Cの3つをアンテナとして機能させることができる。すなわち、LTEアンテナ9Aにおいては、4Gの周波数に対応する電波の送受信が行われる。また、Sub6アンテナ9Bにおいては、Sub6の周波数に対応する電波の送受信が行われる。また、ミリ波アンテナ9Cにおいては、Sub6アンテナ9Bを構成するスロットを通じてミリ波帯の電波の送受信が行われる。更に、金属素子9D自体をモノポールアンテナとして機能させ、更に異なる周波数帯の電波の送受信を金属素子9D自体が行うこともできる。
【0032】
<シミュレーション>
上記実施形態のアンテナ9に相当する解析モデルを用意し、電磁界シミュレータでシミュレーションを行ったので、その結果を以下に示す。
【0033】
本解析モデルでは、図4に示されるように、LTEアンテナ9Aの長さを70mm、LTEアンテナ9AとグランドGとの間の距離を5mm、給電線9Eからミリ波アンテナ9Cまでの間の距離を5mm、Sub6アンテナ9Bを形成するスロットの長手方向の長さを30mm、Sub6アンテナ9Bを形成するスロットの短手方向の長さを3.6mmとした。また、Sub6アンテナ9Bを形成するスロット内には、比誘電率(Er)が3.0の誘電体を充填した。また、金属素子9Dをミリ波アンテナ9Cから2.3mm離間させた。
【0034】
本解析では、まず、金属素子9DからSub6アンテナ9Bへの電磁界結合方式による給電により、Sub6アンテナ9Bを形成するスロットにおける共振が現れるか否かについて調査した。図5は、実施形態におけるSパラメータを示したグラフである。また、図6は、実施形態におけるトータル効率を示したグラフである。
【0035】
図5のグラフを見ると判るように、Sub6アンテナ9Bを形成するスロットがLTEアンテナ9Aに設けられている場合、LTEアンテナ9Aにスロットが設けられていない場合には発現しないSパラメータの低下が3.7GHz付近に見られる。また、図6のグラフを見ると判るように、Sub6アンテナ9Bを形成するスロットがLTEアンテナ9Aに設けられている場合、LTEアンテナ9Aにスロットが設けられていない場合には発現しないトータル効率の5dB程度の上昇が3.7GHz付近に見られる。よって、本解析モデルによれば、5GにおいてSub6帯に割り当てられる3.7GHzの周波数において、Sub6アンテナ9Bのスロットと金属素子9Dとの間に共振が発生し、金属素子9Dが逆L型アンテナとして放射する電力がSub6アンテナ9Bのスロットへ給電できることが判る。
【0036】
本解析では、次に、金属素子9Dの給電位置及び素子長とトータル効率との関係について調査した。図7は、3.7GHzの周波数における金属素子9Dの給電位置及び素子長とトータル効率との関係を示したグラフである。図7に示す符号Pは、Sub6アンテナ9Bを形成するスロットの長手方向の一端から給電線9Fまでの長さを示す。また、図7に示す符号Lは、金属素子9Dの長さ(素子長)を示す。図7のグラフを見ると判るように、給電線9Fをスロットの長手方向の一端付近、すなわち、P=0.0mmとなるように配置した場合、トータル効率を最も高くするには素子長をL=15mm程度にする必要があることが判る。これと同程度のトータル効率を、給電線9Fをスロットの長手方向の中央付近、すなわち、P=15.0mmとなるように配置して得ようとした場合、図7のグラフにおいて二点鎖線及び符号Aで示すように、素子長はL=5.0mm程度でよいことが判る。つまり、金属素子9Dの素子長を3分の1程度にすることができる。よって、本シミュレーションにより、給電線9Fは、スロットの長手方向の一端付近に設けるよりも、スロットの長手方向の中央付近に設けた方が、金属素子9Dの素子長を短くすることが可能であることが判る。
【0037】
以上のシミュレーションにより、本実施形態のアンテナ9は、LTEアンテナ9Aに設けたスロットをSub6アンテナ9Bとして機能させることが可能であることが判る。よって、本実施形態のアンテナ9であれば、LTEアンテナ9AとSub6アンテナ9Bという2種類のアンテナをほぼ一体で形成し、更に、Sub6アンテナ9Bを形成するスロットを通じてミリ波アンテナ9Cの電波を通すこともできるため、複数種のアンテナの設置スペースを可及的に抑制できる。したがって、例えば、スマートフォンのように、様々な無線通信方式に対応するために、周波数帯域の異なる複数種のアンテナが内蔵される場合において、本実施形態のアンテナ9を用いれば、アンテナ用の設置スペースを可及的に抑制できるので、無線特性を維持しながらアンテナ用の設置スペースを確保するのが容易となる。
【0038】
<第1変形例>
なお、上記実施形態のアンテナ9は、ミリ波アンテナ9Cを省略したものであってもよい。図8は、第1変形例に係るアンテナ9の斜視図である。本第1変形例に係るアンテナ9は、ミリ波アンテナ9Cが省略されている点を除き、上記実施形態と同様である。本第1変形例に係るアンテナ9も上記実施形態と同様、LTEアンテナ9AとSub6アンテナ9Bという2種類のアンテナをほぼ一体で形成することで、複数種のアンテナの設置スペースを可及的に抑制できる。
【0039】
<第2変形例>
また、上記実施形態のアンテナ9は、金属素子9Dをモノポール形状ではなくループ形状にしてもよい。図9は、第2変形例に係るアンテナ9の斜視図である。本第2変形例に係るアンテナ9は、金属素子9Dの代わりに、金属素子9Dの給電線9Fに接続されていない側の端部をグランドGにショートさせた逆L字状の金属素子9Gが設けられている。その他の構成については、上記実施形態と同様である。
【0040】
本第2変形例に相当する解析モデルを用意し、電磁界シミュレータでシミュレーションを行ったので、その結果を以下に示す。
【0041】
本第2変形例に相当する解析モデルは、金属素子9Dをモノポール形状ではなくループ形状の金属素子9Gに置き換えた点を除き、上記実施形態のアンテナ9に相当する解析モデルと同様である。よって、各部の寸法等の説明については省略する。図10は、第2変形例におけるSパラメータを示したグラフである。また、図11は、第2変形例におけるトータル効率を示したグラフである。
【0042】
図10のグラフを見ると判るように、モノポール形状の金属素子9Dの代わりにループ形状の金属素子9Gを用いても、上記実施形態の解析モデルと同様、3.7GHz付近においてSパラメータの顕著な低下が見られる。また、図11のグラフを見ると判るように、3.7GHz付近においてトータル効率の顕著な上昇が見られる。よって、本第2変形例の解析モデルであっても、5GにおいてSub6帯に割り当てられる3.7GHzの周波数において、Sub6アンテナ9Bのスロットと金属素子9Gとの間に共振が発生し、金属素子9Gが放射する電力がSub6アンテナ9Bのスロットへ給電できることが判る。
【0043】
<第3変形例>
ところで、上記実施形態や変形例では整合回路について記述していなかったが、金属素子9D,9Gが放射する電力を増幅するべく、金属素子9D,9Gには、例えば、以下のような整合回路を設けてもよい。図12は、整合回路の一例を示した概略図である。図12に示すANTは、金属素子9D,9Gに相当する。
【0044】
金属素子9D,9Gは、インピーダンスが極めて低い。そこで、高周波回路で生成される高周波の電力が金属素子9D,9Gから効率的に放射されるようにするために、例えば、図12に示されるように、インダクタを直列挿入し、キャパシタを並列挿入する整合回路を設けてもよい。図12に例示するインダクタの大きさ(1.0nH)とキャパシタの大きさ(4.5pF,2.5pF)は、一例であり、上記実施形態及び変形例に設ける整合回路は、これらの大きさのインダクタとキャパシタで構成されるものに限定されない。
【0045】
図13は、第3変形例におけるSパラメータを示したグラフである。金属素子9D,9Gに適宜の整合回路を設けると、金属素子9D,9Gから出力される電力が増大するため、金属素子9D,9GとSub6アンテナ9Bとの間における電磁界結合を強くすることが可能となる。よって、図13に示されるように、Sパラメータが改善される。
【0046】
<その他の変形例>
上記実施形態や各変形例では、4GやSub6等の周波数帯に用いることを前提に説明したが、その他の周波数帯に用いるアンテナとしても適用可能である。上記実施形態や各変形例は、上記のように例示した寸法や形状に限定されるものではなく、適宜の寸法や形状等に変形可能である。
【符号の説明】
【0047】
G・・グランド
1・・携帯端末
2・・表示部
3・・筐体
4・・制御部
5・・通信部
6・・音声入出力部
7・・記憶部
8・・操作部
9・・アンテナ
9A・・LTEアンテナ
9B・・Sub6アンテナ
9C・・ミリ波アンテナ(アンテナモジュール)
9D・・金属素子
9E,9F・・給電線
9G・・金属素子
10・・スピーカ
11・・マイク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13