(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】医療デバイスリリースシステム
(51)【国際特許分類】
A61F 2/95 20130101AFI20231107BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
A61F2/95
A61M25/00 540
(21)【出願番号】P 2022530695
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 US2020064240
(87)【国際公開番号】W WO2021145980
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-05-25
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ライバーンス、ラモン
(72)【発明者】
【氏名】オストルート、ティモシー エイ.
(72)【発明者】
【氏名】タッソーニ、ニコラス リー
(72)【発明者】
【氏名】ナイガード、エリック ダグラス
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-534995(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0071916(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/95
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長いシャフトであって、前記細長いシャフトの近位端から前記細長いシャフトの遠位端まで延びる管腔を有する細長いシャフトと、
身体の外側に留まるように構成された近位端から遠位端まで遠位に延びるとともに、前記細長いシャフトの前記管腔内に摺動可能に配置された近位リリースワイヤと、
前記近位リリースワイヤの前記遠位端に結合された遠位ストッパと、
近位端から遠位端まで遠位に延びるとともに、前記細長いシャフトの前記管腔内に摺動可能に配置された遠位リリースワイヤであって、前記遠位リリースワイヤの前記近位端は前記遠位ストッパの近位にある前記近位リリースワイヤの前記遠位端に摺動可能に結合される、遠位リリースワイヤと、を備え、前記遠位リリースワイヤは、医療デバイスを前記細長いシャフトの前記遠位端に解放可能に取り付けるように構成される、医療デバイスシステム。
【請求項2】
前記遠位ストッパの近位にある前記近位リリースワイヤに結合された近位ストッパをさらに備える、請求項1に記載の医療デバイスシステム。
【請求項3】
前記遠位リリースワイヤの前記近位端は、前記近位ストッパと前記遠位ストッパとの間に配置される、請求項2に記載の医療デバイスシステム。
【請求項4】
前記近位ストッパは、前記近位リリースワイヤの外径よりも大きい外径を有する、請求項2または3に記載の医療デバイスシステム。
【請求項5】
前記遠位ストッパは、前記近位リリースワイヤの外径よりも大きい外径を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の医療デバイスシステム。
【請求項6】
前記遠位リリースワイヤの前記近位端は、前記近位リリースワイヤの周りに配置されたらせんコイルに形成される、請求項1~5のいずれか一項に記載の医療デバイスシステム。
【請求項7】
前記遠位ストッパは、前記らせんコイルの内径よりも大きい外径を有する、請求項6に記載の医療デバイスシステム。
【請求項8】
前記遠位ストッパは、前記近位リリースワイヤの遠位端から形成されたループである、請求項1~5のいずれか一項に記載の医療デバイスシステム。
【請求項9】
前記遠位ストッパは、概して円筒形のカラーであって、それを通って延びる管腔を画定する概して円筒形のカラーを含み、前記遠位リリースワイヤは、前記概して円筒形のカラーの前記管腔内に摺動可能に配置される、請求項1~5のいずれか一項に記載の医療デバイスシステム。
【請求項10】
前記遠位リリースワイヤの前記近位端は、ループに形成される、請求項8に記載の医療デバイスシステム。
【請求項11】
前記遠位リリースワイヤの前記近位端は、ループの管腔の直径よりも大きい外寸を有する三次元形状である、請求項8または9に記載の医療デバイスシステム。
【請求項12】
前記遠位リリースワイヤの前記近位端は、概して円筒形のカラーであって、それを通って延びる管腔を画定する概して円筒形のカラーを含み、前記近位リリースワイヤは、前記遠位リリースワイヤの前記概して円筒形のカラーの前記管腔内に摺動可能に配置される、請求項9に記載の医療デバイスシステム。
【請求項13】
前記遠位ストッパは、前記遠位リリースワイヤの前記近位端と物理的に係合するように構成される、請求項1~12のいずれか一項に記載の医療デバイスシステム。
【請求項14】
前記近位リリースワイヤは、所定の軸方向距離にわたって前記遠位リリースワイヤとは独立して、前記細長いシャフトの長手方向軸線に沿って近位に移動するように構成される、請求項1~13のいずれか一項に記載の医療デバイスシステム。
【請求項15】
前記所定の軸方向距離よりも長い前記近位リリースワイヤの近位移動は、前記近位リリースワイヤと協調して前記遠位リリースワイヤを移動させるように構成される、請求項14に記載の医療デバイスシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療デバイスと、医療デバイスを製造及び/または使用するための方法とに関する。より具体的には、本開示は、医療用インプラントを解放するためのシステムの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
多種多様な体内医療デバイスが、医療用途、例えば、外科的及び/または血管内用途のために開発されてきた。これらのデバイスのいくつかには、ガイドワイヤ、カテーテル、(例えば、ステント、グラフト、置換弁等のための)医療デバイス送達システム等が含まれる。これらのデバイスは、様々な異なる製造方法のいずれか一つによって製造され、様々な方法のいずれか一つに従って使用することができる。代替医療デバイス、並びに医療デバイスを製造及び/または使用するための代替方法を提供する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0003】
第一の例では、医療デバイスシステムは、細長いシャフトであって、細長いシャフトの近位端から細長いシャフトの遠位端まで延びる管腔を有する細長いシャフトと、身体の外側に留まるように構成された近位端から遠位端まで遠位に延びるとともに、細長いシャフトの管腔内に摺動可能に配置された近位リリースワイヤと、近位リリースワイヤの遠位端に結合された遠位ストッパと、近位端から遠位端まで遠位に延びるとともに、細長いシャフトの管腔内に摺動可能に配置された遠位リリースワイヤと、を備えてもよい。遠位リリースワイヤの近位端は、遠位ストッパの近位にある近位リリースワイヤの遠位端に摺動可能に結合されてもよい。遠位リリースワイヤは、細長いシャフトの遠位端に医療デバイスを解放可能に取り付けるように構成されてもよい。
【0004】
上記の例のいずれかに対して代替的または追加的に、別の例では、医療デバイスシステムは、遠位ストッパの近位にある近位リリースワイヤに結合された近位ストッパをさらに備えてもよい。
【0005】
上記の例のいずれかに対して代替的または追加的に、別の例では、遠位リリースワイヤの近位端は、近位ストッパと遠位ストッパとの間に配置されてもよい。
上記の例のいずれかに対して代替的または追加的に、別の例では、近位ストッパは、近位リリースワイヤの外径よりも大きい外径を有してもよい。
【0006】
上記の例のいずれかに対して代替的または追加的に、別の例では、遠位ストッパは、近位リリースワイヤの外径よりも大きい外径を有してもよい。
上記の例のいずれかに対して代替的または追加的に、別の例では、遠位リリースワイヤの近位端は、近位リリースワイヤの周りに配置されたらせんコイルに形成されてもよい。
【0007】
上記の例のいずれかに対して代替的または追加的に、別の例では、遠位ストッパは、らせんコイルの内径よりも大きい外径を有してもよい。
上記の例のいずれかに対して代替的または追加的に、別の例では、遠位ストッパは、近位リリースワイヤの遠位端から形成されたループであってもよい。
【0008】
上記の例のいずれかに対して代替的または追加的に、別の例では、遠位ストッパは、概して円筒形のカラーであって、それを通って延びる管腔を画定する概して円筒形のカラーを含んでもよく、遠位リリースワイヤは、概して円筒形のカラーの管腔内に摺動可能に配置される。
【0009】
上記の例のいずれかに対して代替的または追加的に、別の例では、遠位リリースワイヤの近位端は、ループに形成されてもよい。
上記の例のいずれかに対して代替的または追加的に、別の例では、遠位リリースワイヤの近位端は、ループの管腔の直径よりも大きい外寸を有する三次元形状であってもよい。
【0010】
上記の例のいずれかに対して代替的または追加的に、別の例では、遠位リリースワイヤの近位端は、概して円筒形のカラーであって、それを通って延びる管腔を画定する概して円筒形のカラーを含んでもよい。近位リリースワイヤは、遠位リリースワイヤの概して円筒形のカラーの管腔内に摺動可能に配置されてもよい。
【0011】
上記の例のいずれかに対して代替的または追加的に、別の例では、遠位ストッパは、遠位リリースワイヤの近位端と物理的に係合するように構成されてもよい。
上記の例のいずれかに対して代替的または追加的に、別の例では、近位リリースワイヤは、所定の軸方向距離にわたって遠位リリースワイヤとは独立して、細長いシャフトの長手方向軸線に沿って近位に移動するように構成されてもよい。
【0012】
上記の例のいずれかに対して代替的または追加的に、別の例では、近位リリースワイヤの近位移動は、近位リリースワイヤと協調して遠位リリースワイヤを移動させるように構成された所定の軸方向距離よりも長くてもよい。
【0013】
別の例では、医療デバイスシステムは、細長いシャフトであって、細長いシャフトの近位端から細長いシャフトの遠位端まで延びる管腔を有する細長いシャフトと、身体の外側に留まるように構成された近位端から遠位ストッパを含む遠位端まで遠位に延びる近位リリースワイヤであって、遠位ストッパは、近位リリースワイヤの中間領域よりも大きい断面寸法を有するとともに、細長いシャフトの管腔内に摺動可能に配置される、近位リリースワイヤと、らせんコイルを含む近位端から概して線形の遠位端まで遠位に延びるとともに、細長いシャフトの管腔内に摺動可能に配置された遠位リリースワイヤであって、遠位リリースワイヤのらせんコイルは、近位リリースワイヤの中間領域の上に摺動可能に配置される、遠位リリースワイヤと、を備えてもよい。遠位リリースワイヤは、細長いシャフトの遠位端に医療デバイスを解放可能に取り付けるように構成されてもよい。第一の距離にわたる近位リリースワイヤの近位移動は、遠位リリースワイヤとは独立して近位リリースワイヤを移動させてもよく、第一の距離よりも長い第二の距離にわたる近位リリースワイヤの近位移動は、近位リリースワイヤと協調して遠位リリースワイヤを移動させるように構成されてもよい。
【0014】
上記の例のいずれかに対して代替的または追加的に、別の例では、第一の距離は、遠位ストッパの近位端とらせんコイルの遠位端領域との間の距離以下であってもよい。
上記の例のいずれかに対して代替的または追加的に、別の例では、遠位ストッパの近位端は、第一の距離よりも長い距離での近位リリースワイヤの近位作動時に、遠位リリースワイヤのらせんコイルの内面または遠位端と係合するように構成されてもよい。
【0015】
上記の例のいずれかに対して代替的または追加的に、別の例では、遠位リリースワイヤの少なくとも一部は、近位リリースワイヤの中間領域に概して平行に延びてもよい。
別の例では、医療デバイスシステムは、細長いシャフトであって、細長いシャフトの近位端から細長いシャフトの遠位端まで延びる管腔を有する細長いシャフトと、身体の外側に留まるように構成された近位端から遠位端まで遠位に延びるとともに、細長いシャフトの管腔内に摺動可能に配置された近位リリースワイヤと、近位リリースワイヤの遠位端に結合された遠位ストッパと、遠位ストッパの近位にある近位リリースワイヤに結合された近位ストッパと、近位端から概して線形の遠位端まで遠位に延びるとともに、細長いシャフトの管腔内に摺動可能に配置された遠位リリースワイヤであって、遠位リリースワイヤの近位端は、近位リリースワイヤの線形部分の上に摺動可能に結合された複数の巻線を含む、遠位リリースワイヤと、を備えてもよい。遠位リリースワイヤは、細長いシャフトの遠位端に医療デバイスを解放可能に取り付けるように構成されてもよい。第一の距離にわたる近位リリースワイヤの近位移動は、遠位リリースワイヤとは独立して近位リリースワイヤを移動させてもよく、第一の距離よりも長い第二の距離にわたる近位リリースワイヤの近位移動は、近位リリースワイヤと協調して遠位リリースワイヤを移動させるように構成されてもよい。
【0016】
上記の例のいずれかに対して代替的または追加的に、別の例では、遠位リリースワイヤの近位端は、近位ストッパと遠位ストッパとの間に摺動可能に配置されてもよい。
上記の例のいずれかに対して代替的または追加的に、別の例では、遠位ストッパは、複数の巻線の内径よりも大きい外径を有してもよい。
【0017】
いくつかの実施形態、態様、及び/または例についての上記の要約は、本開示の各実施形態またはすべての実施を説明することを意図するものではない。以下の図及び詳細な説明は、これらの実施形態をより具体的に例示するものである。
【0018】
本開示は、添付の図面に関連する様々な実施形態についての以下の詳細な説明を考慮して、より完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】例示的な医療デバイスシステムの斜視図である。
【
図2】
図1の例示的な医療デバイスシステムの部分断面図である。
【
図3】
図1の例示的な医療デバイスシステムの遠位部分の斜視図である。
【
図4】例示的な医療デバイスシステムの一部の作動を示す図である。
【
図5】例示的な医療デバイスシステムの一部の作動を示す図である。
【
図6】例示的な医療デバイスシステムの一部の作動を示す図である。
【
図7】例示的な医療デバイスシステムの一部の作動を示す図である。
【
図8】例示的な医療デバイスシステムの一部の作動を示す図である。
【
図9】例示的な医療デバイスシステムの例示的なリリース機構を示す図である。
【
図10】別の例示的な医療デバイスシステムの部分断面図である。
【
図11】別の例示的な医療デバイスシステムの部分断面図である。
【
図12】別の例示的な医療デバイスシステムの部分断面図である。
【
図13】別の例示的な医療デバイスシステムの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示の態様は様々な修正及び代替形態に従うが、その詳細は、例として図面に示され、詳細に説明される。しかしながら、その意図は、本開示の態様を記載された特定の実施形態に限定することではないことを理解されたい。それどころか、その意図は、開示の精神及び範囲に含まれるすべての修正、均等、及び代替物を網羅することにある。
【0021】
以下の説明は、必ずしも縮尺されていない図面を参照して読まれるべきであり、その中で同様の参照符号は、いくつかの図を通して同様の要素を表す。詳細な説明及び図面は、特許請求される発明を説明することを意図しているが、限定することは意図していない。当業者は、記載される及び/または示される様々な要素が、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な組み合わせ及び構成で配置され得ることを認識するであろう。詳細な説明及び図面は、特許請求される発明の例示的な実施形態を示している。しかしながら、明確性及び理解の容易さのために、すべての特徴及び/または要素が各図面に示されている訳ではないが、特に明記しない限り、その特徴及び/または要素は関係なく存在するものと理解され得る。
【0022】
以下の定義された用語については、特許請求の範囲または本明細書の他の箇所で異なる定義が与えられていない限り、これらの定義が適用されるものとする。
本明細書では、明示的に示されているか否かにかかわらず、すべての数値は「約」という用語で修飾されているものとみなす。数値の文脈において、「約」という用語は一般に、当業者が記載された値と同等である(例えば、同じ機能または結果を有する)とみなす数値の範囲を指す。多くの場合、「約」という用語には、最も近い有効数字に丸められた数値が含まれ得る。「約」という用語の他の(例えば、数値以外の文脈での)使用法は、特に明記しない限り、本明細書の文脈から理解され、本明細書の文脈に一貫するように、通常の慣習的な定義を有するものとみなされ得る。
【0023】
端点による数値範囲の記載には、その端点を含む、その範囲内のすべての数値が含まれる(例えば、1~5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5が含まれる)。
【0024】
様々な構成要素、特徴、及び/または仕様に関連していくつかの適切な寸法、範囲、及び/または値が開示されているが、本開示に触れる当業者は、所望の寸法、範囲、及び/または値が明示的に開示されたものから逸脱し得ることを理解するであろう。
【0025】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「一つの(a、an、及びthe)」は、明確に別段の指示がない限り、複数の指示対象を含む。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、「または(or)」という用語は一般に、明確に別段の指示がない限り、「及び/または(and/or)」を含む意味で使用される。理解を容易にするために、本開示の特定の特徴は、開示された実施形態内でそれらの特徴が複数形または繰り返しであったとしても、単数形で記載され得ることに留意されたい。特徴の各例は、明示的に反対の記載がない限り、単一の開示を含む、及び/またはそれに含まれ得る。簡潔性及び明確性の目的で、開示された発明のすべての要素が必ずしも各図に示されている訳ではなく、以下で詳細に説明されている訳ではない。しかしながら、以下の説明は、特に反対の記載がない限り、複数の構成要素が存在する構成要素のいずれか及び/またはすべてに等しく適用され得ることを理解されたい。さらに、明確性のために、いくつかの要素または特徴のすべての例が各図に示されている訳ではない。
【0026】
「近位(proximal)」、「遠位(distal)」、「前進(advance)」、「後退(retract)」、及びそれらの変形等の相対的な用語は一般に、デバイスのユーザ/オペレータ/操縦者に対する様々な要素の位置決定、方向、及び/または操作に関連して考慮され得、「近位」及び「後退」はユーザに近い、またはユーザに近づくことを示し、または参照し、「遠位」及び「前進」はユーザから遠い、またはユーザから遠ざかることを示し、または参照する。いくつかの例では、「近位」及び「遠位」という用語は、開示の理解を容易にするために任意に割り当てられ得、そのような例が当業者には容易に明らかとなるであろう。「上流(upstream)」、「下流(downstream)」、「流入(inflow)」、及び「流出(outflow)」等の他の相対的な用語は、体管腔、血管等の管腔内、またはデバイス内の流体の流れの方向を指す。「軸方向(axial)」、「円周方向(circumferential)」、「長手方向(longitudinal)」、「横方向(lateral)」、「半径方向(radial)」等のさらに他の相対的な用語及び/またはそれらの変形は一般に、開示された構造またはデバイスの中心長手方向軸線に対する方向及び/または向きを指す。
【0027】
「範囲(extent)」という用語は、特に最小範囲と呼ばれない限り、述べられた、または識別された寸法の最大の測定値を意味すると理解され得る。例えば、「外側の範囲(outer extent)」は最大の外寸を意味すると理解され得、「半径方向の範囲(radial extent)」は最大の半径方向の寸法を意味すると理解され得、「長手方向の範囲(longitudinal extent)」は最大の長手方向の寸法を意味すると理解され得る、等である。「範囲」の各例は異なり得るが(例えば、軸方向、長手方向、横方向、半径方向、円周方向等)、個々の使用法の文脈から当業者には明らかであろう。一般に、「範囲」は、使用目的に応じて測定された可能な限り最大の寸法とみなされ得る。しかしながら、「最小範囲(minimum extent)」と呼ばれる場合、「範囲」は、使用目的に応じて測定された可能な限り最小の寸法を指す。いくつかの例では、「範囲」は一般に平面及び/または断面内で直交して測定され得るが、特定の文脈から明らかなように、角度的、放射状、円周方向(例えば、円弧に沿って)等を含むがこれらに限定されない異なる方法で測定されてもよい。
【0028】
本明細書における「実施形態(an embodiment)」、「いくつかの実施形態(some embodiments)」、「他の実施形態(other embodiments)」等への言及は、記載された実施形態が特定の特徴、構造、または特性を含み得るが、すべての実施形態が必ずしもその特定の特徴、構造、または特性を含むとは限らないことを示すことに留意されたい。さらに、そのような語句は必ずしも同じ実施形態を指している訳ではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性がある実施形態に関連して記載される場合、明示的に記載されているか否かにかかわらず、明示的に反対の記載がない限り、他の実施形態に関連してその特定の特徴、構造、または特性を実施することは、当業者の知識の範囲内であろう。すなわち、以下に記載される様々な個々の要素は、特定の組み合わせで明示的に示されていない場合でも、当業者に理解されるであろうように、他の追加の実施形態を形成するため、または記載された実施形態を補完及び/または強化するために互いに組み合わせ可能または配置可能であると企図される。
【0029】
明確性の目的で、特定の識別数値命名法(例えば、第一、第二、第三、第四等)を説明及び/または特許請求の範囲全体にわたって使用することで、様々な記載及び/または特許請求された特徴に名前を付け、及び/またはこれらを区別することができる。数値の命名法は限定的なものではなく、単なる例示であることが理解されるべきである。いくつかの実施形態では、簡潔性及び明確性の目的で、以前に使用された数値命名法からの変更及び逸脱が行われ得る。すなわち、「第一の」要素として識別される特徴は、後に「第二の」要素、「第三の」要素等と呼ばれてもよく、または完全に省略されてもよく、及び/または異なる特徴が「第一の」要素と呼ばれてもよい。それぞれの例における意味及び/または指定は、熟練した専門家には明らかであろう。
【0030】
心血管系に影響を与える及び/または影響を受ける疾患及び/または病状は、世界中で蔓延している。例えば、動静脈奇形(AVMs: arterial venous malformations)のいくつかの形態は、血管系を通る正常な血流を「利用する(feed off)」場合がある。理論に拘束されることなく、動静脈奇形及び/または他の疾患または状態について、正常な、酸素及び/または栄養の豊富な血流を不良にさせ、それによってそれらの成長能力及び/または広がる能力を制限することによって、少なくとも部分的に治療を行うことが可能であると考えられている。血管閉塞の恩恵を受け得る疾患または状態の他の例には、出血、動脈瘤、静脈不全、臓器切除前の血流の遮断、または肝臓の分枝血管への塞栓性ビーズの逆流防止が含まれるが、これらに限定されない。本明細書に開示されるのは、いくつかの動静脈奇形及び/または他の疾患または状態を治療及び/または修復するために、心臓血管系の一部で使用され得る医療デバイスである。本明細書に開示されるデバイスはまた、以下により詳細に説明されるように、いくつかの追加の望ましい特徴及び利点を提供し得る。
【0031】
図1及び
図2は、例示的な医療デバイスシステム100の態様を示している。医療デバイスシステム100は、細長いシャフト110の近位端114から細長いシャフト110の遠位端116まで延びる管腔112(例えば、
図2)を有する細長いシャフト110を含んでもよい。いくつかの実施形態では、細長いシャフト110は、カテーテル、ハイポチューブ、または他の同様の管状構造であってもよい。いくつかの実施形態では、細長いシャフト110の少なくとも一部は、曲がりくねった血管系をナビゲートするために細長いシャフト110の長さに沿って増加する柔軟性を提供するために、微細加工、複数の切断または弱められた領域、ある程度の材料除去等を含んでもよい。細長いシャフト110に適しているが非限定的ないくつかの材料、例えば金属材料、ポリマー材料、複合材料等を以下に記載する。
【0032】
医療デバイスシステム100は、細長いシャフト110の管腔112内に摺動可能に配置された近位リリースワイヤ(または送達システムプルワイヤ)120及び遠位リリースワイヤ(またはカプラープルワイヤ)122(例えば、
図2)を含んでもよい。医療デバイス130は、細長いシャフト110の遠位端116の近くに配置されてもよい。近位及び遠位リリースワイヤ120、122は、本明細書でより詳細に説明されるように、医療デバイス130に対して連結位置と解放位置との間で軸方向に摺動可能であってもよい。近位及び遠位リリースワイヤ120、122は、医療デバイス130を細長いシャフト110の遠位端116に解放可能に取り付けるように構成されてもよい。医療デバイス130は、送達構成から展開構成に拡張するように構成されてもよい。簡潔性のため、医療デバイス130は本明細書では塞栓コイルとして示されているが、血管閉塞デバイス、ステント、塞栓フィルタ、置換心臓弁、他の閉塞デバイス、及び/または他の医療用インプラント等を含むがこれらに限定されない、同様の方法で移送、送達、使用、解放等される他の適切な医療デバイスもまた企図される。いくつかの実施形態では、近位及び/または遠位リリースワイヤ120、122は、交互に及び/または交換可能に、プルワイヤ、作動ワイヤ、及び/またはロッキングワイヤと呼ばれてもよい。近位及び遠位リリースワイヤ120、122は一般に、中実のワイヤまたはシャフトであってもよいが、いくつかの実施形態では管状であってもよい。リリースワイヤ120、122に適しているが非限定的ないくつかの材料、例えば金属材料、ポリマー材料、複合材料等を以下に記載する。
【0033】
いくつかの実施形態では、医療デバイスシステム100は、医療デバイス130を送達構成で治療部位に送達するようにサイズ設定及び構成されたマイクロカテーテル190を含んでもよい。細長いシャフト110及び医療デバイス130は、マイクロカテーテル190の管腔192(例えば、
図2)内に摺動可能に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、マイクロカテーテル190は、治療部位への医療デバイス130の経皮送達を容易にすることができる。参考のためにのみ、送達構成または少なくとも部分的に展開された構成における医療デバイス130が図面(例えば、
図1~
図9)に示され得る。当業者は、医療デバイス130が展開されるときに、医療デバイス130が拡張されてもよく、及び/またはそれ自体に巻かれてもよいことを認識するであろう。マイクロカテーテル190に適しているが非限定的ないくつかの材料、例えば金属材料、ポリマー材料、複合材料等を以下に記載する。
【0034】
図3は、細長いシャフト110の遠位端116の拡大斜視図を示しており、細長いシャフト110、医療デバイス130、及びマイクロカテーテル190が透明に示されている。近位リリースワイヤ120は、身体の外側に留まるように構成された近位端124(例えば、
図2)から遠位端126まで遠位に延びる、概して細長い構造であってもよい。近位リリースワイヤ120の近位端124は、医療デバイス130の解放を制御するためにユーザによって作動可能であってもよい。場合によっては、近位リリースワイヤ120の遠位端126は、医療デバイス130の近位に配置されてもよい。近位リリースワイヤ120は、近位端124から近位ストッパ132まで遠位に延びる第一の領域128と、近位ストッパ132から遠位ストッパ136まで遠位に延びる第二の領域134とを含んでもよい。遠位ストッパ136の遠位端は、近位リリースワイヤ120の遠位端126を形成してもよい。近位及び遠位ストッパ132、136は、近位リリースワイヤ120の拡大部分であってもよく、これらはそれぞれ、第一及び/または第二の領域128、134の直径よりも大きい直径を有してもよい。しかしながら、近位及び遠位ストッパ132、136は、同じ断面寸法を有する必要はない。さらに、近位及び/または遠位ストッパ132、136は、概して円筒形を有するものとして示されているが、それらは球形、直方体、長方形プリズム、円錐形等であるがこれらに限定されない、任意の所望の三次元形状をとってもよい。同様に、近位リリースワイヤ120の第一及び/または第二の領域128、134は、正方形、長方形、楕円形、多角形等であるがこれらに限定されない、円形以外の断面形状を有してもよい。場合によっては、近位リリースワイヤ120は、単一のモノリシック構造として形成されてもよい。他の場合には、近位リリースワイヤ120は、一緒に固定的に結合された二つ以上の構成要素から形成されてもよい。例えば、ストッパ132、136の一方または両方は、別個に形成され、第一及び/または第二の領域128、134を形成するワイヤに結合(例えば、接着、溶接、はんだ付け等)されてもよい。
【0035】
遠位リリースワイヤ122は、ワイヤまたはフィラメントから形成されるとともに、近位端138から遠位端140まで遠位に延びる、概して細長い構造であってもよい。遠位リリースワイヤ122は、概して円形の断面形状を有するものとして示されているが、遠位リリースワイヤ122は、正方形、長方形、楕円形、多角形等であるがこれらに限定されない他の断面形状を有してもよい。遠位リリースワイヤ122の遠位端140は、本明細書でより詳細に説明されるように、リリース機構170と摺動可能に結合されてもよい。近位端138は、遠位リリースワイヤ122の長さが近位リリースワイヤ120の長さに沿って概して平行に延びるように、近位リリースワイヤ120の近位ストッパ132と遠位ストッパ136との間に配置されてもよい。場合によっては、例えば、これは必須ではないが、遠位リリースワイヤ122がリリース機構170と連結している場合、遠位リリースワイヤ122の近位端138は、近位リリースワイヤ120の近位ストッパ132の近くに、またはこれに隣接して配置されてもよい。他の場合、例えば、これは必須ではないが、遠位リリースワイヤ122がリリース機構170と係合していない場合、遠位リリースワイヤ122の近位端138は、近位リリースワイヤ120の遠位ストッパ136の近くに、またはこれに隣接して配置されてもよい。遠位リリースワイヤ122の近位端138の位置は、所望の滑り距離、または近位リリースワイヤ120及び/または遠位リリースワイヤ122が医療デバイス130を解放することなく伸長または移動可能な所望の長さによって少なくとも部分的に決定され得ることが企図される。
【0036】
遠位リリースワイヤ122の近位端138は、近位リリースワイヤの第二の領域134の周りに巻き付けられて、らせんコイル142を形成してもよい。例えば、本明細書でより詳細に説明されるように、らせんコイル142及び/または近位リリースワイヤ120が連結された関係にあり、互いに対して長手方向に摺動可能となるように、遠位リリースワイヤ122が近位リリースワイヤ120の周りにらせん状に巻かれてもよい。らせんコイル142は、一つ未満、一つ、二つ、三つ、四つ、またはそれ以上等であるがこれらに限定されない、任意の所望の数のらせん巻線を含んでもよい。さらに、一つ以上のらせん巻線は完全な360°回転未満の回転を形成し得ることが企図される。場合によっては、一つ以上のらせん巻線は、完全な360°回転未満の回転を有する単一の巻線を含んでもよい。らせんコイル142は、しっかりと巻かれた一つ以上の巻線を有する第一の部分146を含んでもよく、これは次に緩いピッチ巻線に移行して、その結果、らせんコイル142から概して線形の部分144へと流れるワイヤ(または遷移領域)148が、しっかりと巻かれた部分146と同軸となる。遷移領域148はまた、組み立て中に遠位リリースワイヤ122の装填を容易にし、遠位リリースワイヤ122と細長いシャフト110の内壁との相互作用を最小化することによって、前進及び/または後退する力を軽減することができる。場合によっては、第一の部分146の各巻線は、同じピッチを有する必要はない。らせんコイル142は、細長いシャフト110の内面と機械的に接合するか、または物理的に係合する(例えば、摩擦的に係合する)ように構成された外径145(例えば、
図2参照)を有し得ることがさらに企図される。遠位リリースワイヤ122と細長いシャフト110との間のこの機械的係合は、リリース機構170に対する遠位リリースワイヤ122の位置の維持に役立ち得る。
【0037】
近位ストッパ132は、らせんコイル142の内径168(例えば、
図6参照)よりも大きい外径133(例えば、
図2参照)を有してもよい。これにより、近位ストッパ132は、遠位リリースワイヤ122の近位端138に押す力を加えることができる。この押す力により、近位リリースワイヤ120は、近位ストッパ132とらせんコイル142を一緒にくさびで留めることなく、細長いシャフト110内で近位リリースワイヤ120及び遠位リリースワイヤ122を装填することを容易にすることができる。
【0038】
本明細書に記載されるように、遠位リリースワイヤ122の近位端138は、近位ストッパ132と近位リリースワイヤ120の遠位ストッパ136との間に配置されてもよい。これにより、近位リリースワイヤ120及び遠位リリースワイヤ122を、制限されたまたは所定の軸方向距離にわたって(例えば、システム100の長手方向軸線に沿って)互いに摺動可能に結合することが可能となり得る。近位リリースワイヤ120及び遠位リリースワイヤ122はそれぞれ、制限された軸方向距離にわたって互いに対して独立して移動し得ることが企図される。第二の領域134の長さ(または近位ストッパ132と遠位ストッパ136との間の距離)は、近位リリースワイヤ120及び/または遠位リリースワイヤ122が他の構成要素120、122と係合してそれも移動させる前に、独立して摺動可能な距離を決定し得る。
【0039】
近位リリースワイヤ120及び遠位リリースワイヤ122の摺動配置は、医療デバイス130の想定よりも早い脱落を軽減することに役立ち得る。例えば、送達システム100(及び医療デバイス130)が近位に後退されるとき(及び使用中の他の時間に)、細長いシャフト110は引張荷重を受け得る。言い換えれば、細長いシャフト110の遠位部分が伸長される場合があり、これにより、保持ワイヤの医療デバイス130からの想定よりも早い脱落が引き起こされ得る。近位リリースワイヤ120の近位端124(またはそれに隣接する領域)は、細長いシャフト110の近位端114(またはそれに隣接する領域)に結合されて、近位リリースワイヤ120の細長いシャフトに対する移動を制限または防止することができる。しかしながら、これは、近位リリースワイヤ120が細長いシャフト110と共に伸長される原因となる可能性がある。近位リリースワイヤ120及び遠位リリースワイヤ122の摺動配置は、遠位リリースワイヤ122に近位の力を及ぼすことなく、細長いシャフト110の遠位部分が伸長するにつれて近位リリースワイヤ120が近位に移動する(例えば、伸長する)ことを可能にし得る。
【0040】
図4~
図9は一般に、例えば治療部位等で、細長いシャフト110から解放される医療デバイス130を示している。使用中、医療デバイスシステム100のマイクロカテーテル190は、患者の解剖学的構造に挿入されてもよく、マイクロカテーテル190の遠位端は、治療部位に隣接する位置に誘導及び/または前進されてもよい。細長いシャフト110の遠位端116に配置され、及び/またはこれの近くに配置された医療デバイス130は、管腔192の近位端に挿入され、マイクロカテーテル190内に配置され、マイクロカテーテル190を通って、及び/またはマイクロカテーテル190と共に治療部位に前進されてもよい。いくつかの実施形態では、医療デバイス130は、マイクロカテーテル190の遠位端に近接するマイクロカテーテル190の管腔192内に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、医療デバイス130は、使用前及び/またはマイクロカテーテル190を患者の解剖学的構造に挿入する前に、マイクロカテーテル190の遠位端に近接するマイクロカテーテル190の管腔192内に配置されてもよい。医療デバイス130の展開及び/または解放は、医療デバイスの種類及び/または所望の治療プロセスまたは方法に応じて選択的に実行され得る。医療デバイス130を展開する準備ができたら、
図4に示すように、医療デバイス130が露出され、及び/またはマイクロカテーテル190の遠位に配置されるまで、細長いシャフト110をマイクロカテーテル190に対して遠位に前進及び/または平行移動させてもよい。あるいは、マイクロカテーテル190は、医療デバイス130が露出されるまで、及び/またはマイクロカテーテル190の遠位に配置されるまで、細長いシャフト110に対して引き抜かれてもよい。明確性のため、マイクロカテーテル190は、近位に後退された構成で示されている。しかしながら、身体を通したナビゲートの間、マイクロカテーテルは、医療デバイス130の上に配置されてもよい。
【0041】
リリース機構170は、医療デバイス130を細長いシャフト110の遠位端116に解放可能に取り付けてもよい。いくつかの実施形態では、細長いシャフト110は、細長いシャフト110の遠位端116に固定的に取り付けられたリリース機構170の第一の部分172を含んでもよく、医療デバイス130は、医療デバイス130の近位端に固定的に取り付けられたリリース機構170の第二の部分174を含んでもよい。遠位リリースワイヤ122の遠位端140は、
図4に見られるように、連結位置においてリリース機構170の第一の部分172及びリリース機構170の第二の部分174と摺動可能に係合してもよい。遠位リリースワイヤ122は、
図4に示されるように、近位リリースワイヤ120及び遠位リリースワイヤ122が送達構成にあるとき、リリース機構170の第一の部分172をリリース機構170の第二の部分174と連結する。送達構成は、近位リリースワイヤ120の近位ストッパ132が遠位リリースワイヤ122の近位端138に隣接または接触することを必要とせず、また、送達構成は、遠位ストッパ136がリリース機構170の第一の部分172に隣接または接触することを必要としないことに留意されたい。場合によっては、遠位ストッパ136の外径166は、リリース機構170の内径よりも大きくてもよい。これは、近位リリースワイヤ120及び/または遠位リリースワイヤ122が医療デバイス130の管腔内に意図せずに遠位に前進することを防止または低減することができる。
【0042】
図4は、最大のスリップジョイントクリアランス150を可能にする配置における近位リリースワイヤ120及び遠位リリースワイヤ122を示している。スリップジョイントクリアランス150は、遠位リリースワイヤ122の動きが見られる前に、細長いシャフト110をどれだけ伸長させ得るかを決定することができる。スリップジョイントクリアランス150は、遠位ストッパ136の近位端164と、その内径が遠位ストッパ136の外径よりも小さいらせんコイル142内の点との間の距離であり得る。スリップジョイントクリアランス150は、第二の領域134の長さ(または近位及び遠位ストッパ132、136の間の距離)を変更することによって変更され得る。近位及び遠位ストッパ132、136の間の距離は、本質的に任意の伸長ターゲットにも耐えるように調整され得ることが企図される。場合によっては、近位リリースワイヤ120の第二の領域134は、約0.2インチ(0.51センチメートル(cm))~約0.5インチ(1.27cm)、約0.28インチ(0.71cm)~約0.43インチ(1.09cm)、または約0.34インチ(0.86cm)の範囲の長さを有してもよい。近位リリースワイヤ120の第二の領域134は、用途に応じて、0.2インチ(0.51cm)または0.5インチ(1.27cm)より長い長さを有し得ることが企図される。
【0043】
送達システム100が治療位置まで遠位に前進されると、細長いシャフト110が伸長し始め得る。場合によっては、近位リリースワイヤ120を細長いシャフト110に結合して、送達中の細長いシャフト110に対する近位リリースワイヤ120の長手方向の移動を防止することができる。これにより、近位リリースワイヤ120は細長いシャフト110と共に伸長し得る。
図5は、伸長の一部を吸収する近位リリースワイヤ120及び遠位リリースワイヤ122を示している。
図5に見られるように、近位リリースワイヤ120は、矢印162によって示されるように近位方向にシフトしているが、遠位リリースワイヤ122は、長手方向において固定されたままである。
図5に見られるように、遠位ストッパ136とらせんコイル142との間には、長さ152のクリアランスが残っている。しかしながら、長さ152は、
図4に示される構成の長さ150よりも短い。近位リリースワイヤ120の移動は、伸長またはユーザの作動に起因し得る。
【0044】
医療デバイス130の取り外しが望まれる場合、ユーザは、そのように取り付けられている場合、細長いシャフト110と近位リリースワイヤ120とを切り離して、近位リリースワイヤ120の近位後退を可能にし得る。らせんコイル142の内径168は、近位リリースワイヤ120の第二の領域134の外径よりも大きくてもよいことが企図される。これは、近位リリースワイヤ120とらせんコイル142との間の表面接触を最小限にし、したがって、近位リリースワイヤ120と遠位リリースワイヤ122との間の摩擦を低減し得る。近位リリースワイヤ120の近位端124は、
図6に示されるように、遠位ストッパ136とらせんコイル142との間のクリアランスの長さが使い果たされるまで、第一の距離にわたって、矢印162に示されるように近位に作動されてもよい。
図6に示されるように、近位リリースワイヤ120のさらなる近位作動が遠位作動ワイヤ122の同時近位移動をもたらすように、遠位ストッパ136の近位端164がらせんコイル142に接触するとき、クリアランスは使い果たされる。遠位ストッパ136とらせんコイル142との間の距離の長さは、細長いシャフト110の伸長の程度、及び/または近位及び遠位ストッパ132、136及び/またはらせんコイル142の元の構成に応じて可変であり得ることが企図される。遠位ストッパ136の近位端164が遠位リリースワイヤ122のらせんコイル142の内面または遠位表面の一方または両方に係合すると、近位リリースワイヤ120の第二の距離にわたるさらなる近位移動は、
図7に示されるように、近位リリースワイヤ120と協調した遠位リリースワイヤ122の近位作動をもたらす。場合によっては、遠位ストッパ136は、らせんコイル142の内径168よりも大きい外径166を有してもよく、遠位ストッパ136とらせんコイル142との間に機械的係合を作り出すことができる。場合によっては、遠位ストッパ136の外径166及び/または近位ストッパ132の外径は、送達システムの他の特徴に対するストッパとして機能するように、及び/または近位リリースワイヤ120を細長いシャフト110の管腔112内の中心に配置するように調整されてもよい。
【0045】
本明細書に記載されるように、遠位リリースワイヤ122のらせんコイル142は、細長いシャフト110の内壁との締まりばめ(またはそうでなければ摩擦的または物理的係合)を有してもよい。これにより、ユーザによって近位リリースワイヤ120に意図的に力が加えられるまで、遠位リリースワイヤ122を固定することができる。このような配置は、遠位リリースワイヤ122の受動的な移動を低減することに役立ち得る。さらに、本明細書に記載されるように、らせんコイル142の内径168は、近位リリースワイヤ120の第二の領域134がほとんど摩擦なくそこを通過することができるように、近位リリースワイヤ120の第二の領域134の直径よりも大きくてもよい。
【0046】
リリース機構170は、遠位リリースワイヤ122がリリース機構170の長さ以上の長さによって近位に作動されるまで、連結構成のままであり得ることが企図される。
図8及び
図9は、展開された構成における医療デバイス130を備えたシステム100を示している。例えば、リリース機構170の長さよりも短い長さによる遠位リリースワイヤ122の近位作動は、医療デバイス130を解放するのに十分ではない可能性がある。少なくともいくつかの実施形態では、遠位リリースワイヤ122は、細長いシャフト110を通って延びる管腔112、リリース機構170の第一の部分172を通って延びる第一の軸方向管腔、及びリリース機構170の第二の部分174を通って延びる第二の軸方向管腔内に摺動可能に配置されてもよい。医療デバイス130の解放は、連結された構成と完全に解放された構成との間の遠位リリースワイヤ122の任意の軸方向位置で反転され得ることが企図される(例えば、
図8及び
図9)。第一の部分172の第一の軸方向管腔及び第二の部分174の第二の軸方向管腔は、医療デバイス130が細長いシャフト110の遠位端116に解放可能に取り付けられるとき、中心長手方向軸線及び/または遠位リリースワイヤ122と実質的に同軸であってもよい。リリース機構170、第一の部分172、及び第二の部分174に適しているが非限定的ないくつかの材料、例えば金属材料、ポリマー材料、複合材料等を以下に記載する。
【0047】
図7及び
図8に戻ると、明示的に示されていないが、細長いシャフト110は、医療デバイス130がマイクロカテーテル190の遠位に配置されるとき、細長いシャフト110の近位端114及び/または近位リリースワイヤ120がマイクロカテーテル190の近位に留まる(例えば、マイクロカテーテル190から近位に延びる)のに十分な長さを有してもよい。使用中、細長いシャフト110は、治療部位から、医療デバイスシステム100がオペレータ(例えば、臨床医、医師、ユーザ等)によって操作され得る患者の外側の位置に到達するのに十分な長さを有してもよい。医療デバイスシステム100を治療部位に挿入した後、医療デバイスシステム100のオペレータは、近位リリースワイヤ120及び/または遠位リリースワイヤ122を操作して医療デバイス130を解放するために、第一の手を細長いシャフト110の近位端114に置き、第二の手を近位リリースワイヤ120の近位端124に置いてもよい。
【0048】
明示的に示されていないが、医療デバイスシステム100は、医療デバイス130をマイクロカテーテル190内に装填するように構成されたイントロデューサを含んでもよい。イントロデューサは、近位端から遠位端まで延びる管腔を有する管状部材であってもよい。イントロデューサは、医療デバイス130を縮小された直径に、及び/またはマイクロカテーテル190内に装填するための送達構成に保持してもよい。医療デバイス130をマイクロカテーテル190内に装填した後、イントロデューサは、細長いシャフト110の上を細長いシャフト110に対して近位に引き抜かれ、医療デバイスシステム100から取り外されてもよい。
【0049】
使用中、医療デバイス130を治療部位(例えば、静脈、動脈等)に送達する方法は、マイクロカテーテル190を患者の解剖学的構造に挿入し、マイクロカテーテル190の遠位端を治療部位に隣接する位置に誘導することを含んでもよい。この方法は、細長いシャフト110の遠位端116に配置された、及び/またはこれの近くに配置された医療デバイス130を、マイクロカテーテル190内に配置された管腔192の近位端に挿入することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、医療デバイス130は、マイクロカテーテル190が患者の解剖学的構造に挿入された後、マイクロカテーテル190の管腔192に挿入されてもよい。この方法は、医療デバイス130をマイクロカテーテル190を通して治療部位に前進させることを含んでもよい。医療デバイス130は、細長いシャフト110内の管腔112を通って延びるプルワイヤ(例えば、近位リリースワイヤ120及び/または遠位リリースワイヤ122等)によって、細長いシャフト110の遠位端116に解放可能に取り付けられてもよい。近位リリースワイヤ120は、細長いシャフト110から近位に延びてもよく、近位リリースワイヤ120は、細長いシャフト110に解放可能に結合されてもよい。あるいは、いくつかの実施形態では、医療デバイス130がマイクロカテーテル190の管腔192の近位端に挿入され、マイクロカテーテル190を通ってマイクロカテーテル190の遠位端まで前進されてから、マイクロカテーテル190が患者の解剖学的構造に挿入されてもよい。
【0050】
本明細書で論じられるように、リリース機構170の第一の部分172は、細長いシャフト110の遠位端116に取り付けられてもよく、リリース機構170の第二の部分174は、医療デバイス130の近位端に固定的に取り付けられてもよい。近位リリースワイヤ120及び/または遠位リリースワイヤ122は、細長いシャフト110の管腔112、リリース機構170の第一の部分172の第一の軸方向管腔、及びリリース機構170の第二の部分174の第二の軸方向管腔内に摺動可能に配置されてもよい。
【0051】
この方法は、近位リリースワイヤ120と細長いシャフト110との間の保持機構のロックを解除して、近位リリースワイヤ120を細長いシャフト110から切り離すことを含んでもよい。この方法は、細長いシャフト110を治療部位に対して固定位置に維持しながら、近位リリースワイヤ120を細長いシャフト110の近位端114から近位に並進させ、近位リリースワイヤ120及び/または遠位リリースワイヤ122を細長いシャフト110及び/またはリリース機構170に対して並進させて、遠位リリースワイヤ122を連結位置から解放位置にシフトし、それによって、医療デバイス130を細長いシャフト110から解放することをさらに含んでもよい。
【0052】
この方法はまた、治療部位からの細長いシャフト110及び/またはマイクロカテーテル190の近位への引き抜きを含んでもよい。例えば、いくつかの実施形態では、細長いシャフト110は、マイクロカテーテル190の管腔192を通って近位に引き抜かれて取り外されてもよく、次いで、マイクロカテーテル190は、患者の解剖学的構造から引き抜かれ、及び/または除去されてもよい。いくつかの実施形態では、細長いシャフト110は、細長いシャフト110の遠位端116及び/またはリリース機構170の第一の部分172がマイクロカテーテル190の遠位端及び/または管腔192内に配置されるのに十分に近位に引き抜かれてもよい。次に、細長いシャフト110及びマイクロカテーテル190は、患者の解剖学的構造から一緒に引き抜かれてもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、細長いシャフト110は、マイクロカテーテル190の管腔192を通して除去されてもよく、マイクロカテーテル190は、患者の解剖学的構造内の所定の位置に残され、及び/または保持されてもよい。次に、必要に応じて、第二の細長いシャフト及び関連する第二の医療デバイスをマイクロカテーテル190の管腔192の近位端に挿入し、展開のために治療部位まで前進させてもよい。特定の処置のために必要または所望に応じて、本明細書に記載のデバイス、並びに記載の方法のステップについて追加の繰り返しが行われ得る。
【0054】
図10は、別の例示的な医療デバイスシステム200の態様を示している。
図10は、細長いシャフト210の遠位端領域216の部分断面図である。医療デバイスシステム200は、細長いシャフト210の近位端(明示的に示されていない)から細長いシャフト210の遠位端領域216まで延びる管腔212を有する細長いシャフト210を含んでもよい。細長いシャフト210は、本明細書に記載の細長いシャフト110と形態及び機能が類似していてもよい。いくつかの実施形態では、細長いシャフト210は、カテーテル、ハイポチューブ、または他の同様の管状構造であってもよい。いくつかの実施形態では、細長いシャフト210の少なくとも一部は、曲がりくねった血管系をナビゲートするために細長いシャフト210の長さに沿って増加する柔軟性を提供するために、微細加工、複数の切断または弱められた領域、ある程度の材料除去等を含んでもよい。細長いシャフト210に適しているが非限定的ないくつかの材料、例えば金属材料、ポリマー材料、複合材料等を以下に記載する。
【0055】
医療デバイスシステム200は、細長いシャフト210の管腔212内に摺動可能に配置された近位リリースワイヤ(または送達システムプルワイヤ)220及び遠位リリースワイヤ(またはカプラープルワイヤ)222を含んでもよい。医療デバイス230は、細長いシャフト210の遠位端の近くに配置されてもよい。医療デバイス230は、本明細書に記載の医療デバイス130と形態及び機能が類似していてもよい。近位及び遠位リリースワイヤ220、222は、本明細書でより詳細に説明されるように、医療デバイス230に対して連結位置と解放位置との間で軸方向に摺動可能であってもよい。近位及び遠位リリースワイヤ220、222は、医療デバイス230を細長いシャフト210の遠位端216に解放可能に取り付けるように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、近位及び/または遠位リリースワイヤ220、222は、交互に及び/または交換可能に、プルワイヤ、作動ワイヤ、及び/またはロッキングワイヤと呼ばれてもよい。近位及び/または遠位リリースワイヤ220、222は一般に、中実のワイヤまたはシャフトであってもよいが、いくつかの実施形態では管状であってもよい。近位及び/または遠位リリースワイヤ220、222に適しているが非限定的ないくつかの材料、例えば金属材料、ポリマー材料、複合材料等を以下に記載する。
【0056】
いくつかの実施形態では、医療デバイスシステム200は、医療デバイスを送達構成で治療部位に送達するようにサイズ設定及び構成されたマイクロカテーテル290を含んでもよい。細長いシャフト210及び医療デバイス230は、マイクロカテーテル290の管腔292内に摺動可能に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、マイクロカテーテル290は、治療部位への医療デバイスの経皮送達を容易にすることができる。マイクロカテーテル290に適しているが非限定的ないくつかの材料、例えば金属材料、ポリマー材料、複合材料等を以下に記載する。
【0057】
近位リリースワイヤ220は、身体の外側に留まるように構成された近位端(明示的に示されていない)から遠位端226まで遠位に延びる。場合によっては、近位リリースワイヤ220の遠位端226は、医療デバイス230の近位に配置されてもよい。遠位端226は、それを通って延びる管腔232を画定するループ228を含む遠位ストッパを形成するようにコイル状にされてもよい。場合によっては、ループ228の自由端は、近位リリースワイヤ220またはループ228の一部に接続または固定されてもよい。他の実施形態では、ループ228の自由端は、近位リリースワイヤ220及び/またはループ228の他の部分から離間され、及び/またはそれらに固定されていなくてもよい。ループ228の外径は、ループ228を形成するワイヤの外径よりも大きくてもよい。明示的に示されていないが、近位リリースワイヤ220は、遠位リリースワイヤ222の近位移動を制限し、及び/またはシステムの装填を容易にし得る近位ストッパを含んでもよい。
【0058】
遠位リリースワイヤ222は、近位端238から遠位端240まで遠位に延びる。本明細書でより詳細に説明されるように、遠位リリースワイヤ222の遠位端240は、リリース機構270と摺動可能に結合されてもよい。近位端238は、近位リリースワイヤ220の遠位端226の近位に配置されてもよい。例えば、遠位リリースワイヤ222の近位端領域は、近位リリースワイヤ220の遠位端領域の長さの一部と重なってもよい。近位端238は、それを通って延びる管腔244を画定するループ242を形成するようにコイル状にされてもよい。場合によっては、ループ242の自由端は、遠位リリースワイヤ222またはループ242の一部に接続または固定されてもよい。他の実施形態では、ループ242の自由端は、遠位リリースワイヤ222及び/またはループ242の他の部分から離間され、及び/または固定されていなくてもよい。ループ242の外径は、ループ242を形成するワイヤの外径よりも大きくてもよい。ループ228、242は、近位リリースワイヤ220の近位後退により、近位リリースワイヤ220の遠位ループ228が遠位リリースワイヤ222の近位ループ242と機械的に接合するようにサイズ設定され得ることが企図される。
【0059】
いくつかの実施形態では、ループ228、242は、金属プルワイヤを使用し、その端部をループまたはコイルに形成することによって形成されてもよい。以下により詳細に説明されるように、いくつかの例示的な金属には、ステンレス鋼、ニチノール、及び他のものが含まれ得ることが企図される。ニチノールを使用する場合、熱硬化を利用して、所望の特定の形状にコイル状のセクションを形成することができる。
【0060】
近位リリースワイヤ220の遠位ループ228は、遠位リリースワイヤ222の線形部分246が遠位ループ228の管腔232内に摺動可能に配置されるように、遠位リリースワイヤ222の近位ループ242の遠位にある遠位リリースワイヤ222の線形部分246の上に摺動可能に配置されるか、またはこれを概して取り囲んでもよい。遠位リリースワイヤ222の近位ループ242は、近位リリースワイヤ220の線形部分236が近位ループ242の管腔244内に摺動可能に配置されるように、近位リリースワイヤの遠位ループ228の近位にある近位リリースワイヤ220の線形部分236の上に摺動可能に配置されるか、またはこれを概して取り囲んでもよい。この配置は、スリップジョイント260を形成してもよい。場合によっては、スリップジョイント260の構成は、送達中にスリップジョイント260が結合するリスクを低減するものであってもよい。近位リリースワイヤ220の遠位ループ228は、スリップジョイントクリアランス250を提供するために、遠位リリースワイヤ222の近位ループ242からある距離だけ離間されてもよい。スリップジョイントクリアランス250は、遠位リリースワイヤ222を同時に移動させることなく、近位リリースワイヤ220が(少なくとも近位に)移動可能な長手方向距離であってもよい。これにより、近位リリースワイヤ220及び遠位リリースワイヤ222を、制限された軸方向距離にわたって(例えば、システム200の長手方向軸線に沿って)互いに摺動可能に結合することが可能となり得る。近位リリースワイヤ220及び遠位リリースワイヤ222はそれぞれ、制限された軸方向距離にわたって互いに対して独立して移動し得ることが企図される。スリップジョイントクリアランス250は、近位リリースワイヤ220及び/または遠位リリースワイヤ222が他の構成要素220、222と係合してそれも移動させる前に、独立して摺動可能な距離を決定し得る。スリップジョイントクリアランス250は、遠位リリースワイヤ222に対する近位リリースワイヤ220の位置を変更し、細長いシャフト210に対して前記位置に近位リリースワイヤ220を固定することによって変更することができる。場合によっては、スリップジョイントクリアランス250は、それぞれ、約0.25センチメートル(cm)~約3cm、約0.5cm~約2cm、約0.75cm~約1.25cm、または約1cmの範囲の長さを有してもよい。スリップジョイントクリアランス250は、用途に応じて、0.25cm未満または3cmを超える長さを有し得ることが企図される。
【0061】
近位リリースワイヤ220及び遠位リリースワイヤ222の摺動配置は、医療デバイス230の想定よりも早い脱落を軽減することに役立ち得る。例えば、送達システム200(及び医療デバイス230)が近位に後退されるとき(及び使用中の他の時間に)、細長いシャフト210は引張荷重を受け得る。言い換えれば、細長いシャフト210の遠位部分が伸長される場合があり、これにより、保持ワイヤの医療デバイス230からの想定よりも早い脱落が引き起こされ得る。近位リリースワイヤ220の近位端(またはそれに隣接する領域)は、細長いシャフト210の近位端(またはそれに隣接する領域)に結合されて、細長いシャフトに対する近位リリースワイヤ220の移動を制限または防止することができる。しかしながら、これは、近位リリースワイヤ220が細長いシャフト210と共に伸長される原因となる可能性がある。近位リリースワイヤ220及び遠位リリースワイヤ222の摺動配置は、遠位リリースワイヤ222に近位の力を及ぼすことなく、細長いシャフト210の遠位部分が伸長するにつれて近位リリースワイヤ220が近位に移動する(例えば、伸長する)ことを可能にし得る。例えば、近位リリースワイヤ220及び遠位リリースワイヤ222は、近位リリースワイヤ220の遠位ループ228が、遠位リリースワイヤ222の近位ループ242からある距離だけ離間され得るように配置されてもよい。これにより、近位の力が遠位リリースワイヤ222に加えられる前に、近位リリースワイヤ220がスリップジョイントクリアランス250の全長にわたって近位に移動することが可能となり得る。本明細書でより詳細に説明されるように、近位リリースワイヤ220の遠位ループ228が遠位リリースワイヤ222の近位ループ242と係合すると、遠位リリースワイヤ222は、近位リリースワイヤ220と共に近位に移動する。
【0062】
使用中、医療デバイスシステム200のマイクロカテーテル290は、患者の解剖学的構造に挿入されてもよく、マイクロカテーテル290の遠位端は、治療部位に隣接する位置に誘導及び/または前進されてもよい。細長いシャフト210の遠位端216に配置され、及び/またはこれの近くに配置された医療デバイス230は、管腔292の近位端に挿入され、マイクロカテーテル290内に配置され、マイクロカテーテル290を通って、及び/またはマイクロカテーテル290と共に治療部位に前進されてもよい。いくつかの実施形態では、医療デバイス230は、マイクロカテーテル290の遠位端に近接するマイクロカテーテル290の管腔292内に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、医療デバイス230は、使用前及び/またはマイクロカテーテル290を患者の解剖学的構造に挿入する前に、マイクロカテーテル290の遠位端に近接するマイクロカテーテル290の管腔292内に配置されてもよい。医療デバイス230の展開及び/または解放は、医療デバイスの種類及び/または所望の治療プロセスまたは方法に応じて選択的に実行され得る。医療デバイス230を展開する準備ができたら、医療デバイス230が露出され、及び/またはマイクロカテーテル290の遠位に配置されるまで、細長いシャフト210をマイクロカテーテル290に対して遠位に前進及び/または平行移動させてもよい。あるいは、マイクロカテーテル290は、医療デバイス230が露出されるまで、及び/またはマイクロカテーテル290の遠位に配置されるまで、細長いシャフト210に対して引き抜かれてもよい。明確性のため、マイクロカテーテル290は、近位に後退された構成で示されている。しかしながら、身体を通したナビゲートの間、マイクロカテーテルは、医療デバイス230の上に配置されてもよい。
【0063】
リリース機構270は、医療デバイス230を細長いシャフト210の遠位端216に解放可能に取り付けてもよい。いくつかの実施形態では、細長いシャフト210は、細長いシャフト210の遠位端216に固定的に取り付けられたリリース機構270の第一の部分272を含んでもよく、医療デバイス230は、医療デバイス230の近位端に固定的に取り付けられたリリース機構270の第二の部分274を含んでもよい。遠位リリースワイヤ222の遠位端240は、
図10に見られるように、連結位置においてリリース機構270の第一の部分272及びリリース機構270の第二の部分274と摺動可能に係合してもよい。遠位リリースワイヤ222は、
図10に示されるように、近位リリースワイヤ220及び遠位リリースワイヤ222が送達構成にあるとき、リリース機構270の第一の部分272をリリース機構270の第二の部分274と連結する。
【0064】
送達システム200が治療位置まで遠位に前進されると、細長いシャフト210が伸長し始め得る。場合によっては、近位リリースワイヤ220を細長いシャフト210に結合して、送達中の細長いシャフト210に対する近位リリースワイヤ220の長手方向の移動を防止することができる。これにより、近位リリースワイヤ220は細長いシャフト210と共に伸長し得る。明示的に示されていないが、近位リリースワイヤ220が近位方向にシフトされるとき、遠位リリースワイヤ222は長手方向に固定されたままであってもよく、したがって、スリップジョイントクリアランス250の距離を減少させてもよい。
【0065】
医療デバイス230の取り外しが望まれる場合、ユーザは、そのように取り付けられている場合、細長いシャフト210と近位リリースワイヤ220とを切り離して、近位リリースワイヤ220の近位後退を可能にし得る。近位リリースワイヤ220の近位端(明示的に示されていない)は、スリップジョイント260のクリアランス250の長さが使い果たされるまで、第一の距離にわたって近位に作動されてもよい。クリアランス250の長さは、細長いシャフト210の伸長の程度、及び/または近位ループ242に対する遠位ループ228の元の構成に応じて可変であり得ることが企図される。近位リリースワイヤ220の遠位ループ228が遠位リリースワイヤ222の近位ループ242と係合すると、(例えば、クリアランスの所定の距離を越えた、または第一の距離よりも長い)第二の距離にわたる近位リリースワイヤ220のさらなる近位移動によって、遠位リリースワイヤ222が近位リリースワイヤ220と共に近位に作動される。場合によっては、遠位リリースワイヤ222の近位ループ242は、細長いシャフト210の内壁との締まりばめ(またはそうでなければ摩擦的または物理的係合)を有してもよい。これにより、ユーザによって近位リリースワイヤ220に意図的に力が加えられるまで、遠位リリースワイヤ222を固定することができる。このような配置は、遠位リリースワイヤ222の受動的な移動を低減することに役立ち得る。
【0066】
リリース機構270は、遠位リリースワイヤ222がリリース機構270の長さ以上の長さによって近位に作動されるまで、連結構成のままであり得ることが企図される。例えば、リリース機構270の長さよりも短い長さによる遠位リリースワイヤ222の近位作動は、医療デバイス230を解放するのに十分ではない可能性がある。少なくともいくつかの実施形態では、遠位リリースワイヤ222は、細長いシャフト210を通って延びる管腔212、リリース機構270の第一の部分272を通って延びる第一の軸方向管腔、及びリリース機構270の第二の部分274を通って延びる第二の軸方向管腔内に摺動可能に配置されてもよい。医療デバイス230の解放は、連結構成と完全に解放された構成との間の遠位リリースワイヤ222の任意の軸方向位置で反転され得ることが企図される。第一の部分272の第一の軸方向管腔及び第二の部分274の第二の軸方向管腔は、医療デバイス230が細長いシャフト210の遠位端216に解放可能に取り付けられるとき、中心長手方向軸線及び/または遠位リリースワイヤ222と実質的に同軸であってもよい。リリース機構270、第一の部分272、及び第二の部分274に適しているが非限定的ないくつかの材料、例えば金属材料、ポリマー材料、複合材料等を以下に記載する。使用中、医療デバイス230を治療部位(例えば、静脈、動脈等)に送達する方法は、医療デバイス130に関連して記載された方法と同様であってもよい。
【0067】
図11は、別の例示的な医療デバイスシステム300の態様を示している。
図11は、細長いシャフト310の遠位端領域316の部分断面図である。医療デバイスシステム300は、細長いシャフト310の近位端(明示的に示されていない)から細長いシャフト310の遠位端領域316まで延びる管腔312を有する細長いシャフト310を含んでもよい。細長いシャフト310は、本明細書に記載の細長いシャフト110と形態及び機能が類似していてもよい。いくつかの実施形態では、細長いシャフト310は、カテーテル、ハイポチューブ、または他の同様の管状構造であってもよい。いくつかの実施形態において、細長いシャフト310の少なくとも一部は、曲がりくねった血管系をナビゲートするために細長いシャフト310の長さに沿って増加する柔軟性を提供するために、微細加工、複数の切断または弱められた領域、ある程度の材料除去等を含んでもよい。細長いシャフト310に適しているが非限定的ないくつかの材料、例えば金属材料、ポリマー材料、複合材料等を以下に記載する。
【0068】
医療デバイスシステム300は、細長いシャフト310の管腔312内に摺動可能に配置された近位リリースワイヤ(または送達システムプルワイヤ)320及び遠位リリースワイヤ(またはカプラープルワイヤ)322を含んでもよい。医療デバイス330は、細長いシャフト310の遠位端の近くに配置されてもよい。医療デバイス330は、本明細書に記載の医療デバイス130と形態及び機能が類似していてもよい。近位及び遠位リリースワイヤ320、322は、本明細書でより詳細に説明されるように、医療デバイス330に対して連結位置と解放位置との間で軸方向に摺動可能であってもよい。近位及び遠位リリースワイヤ320、322は、医療デバイス330を細長いシャフト310の遠位端316に解放可能に取り付けるように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、近位及び/または遠位リリースワイヤ320、322は、交互に及び/または交換可能に、プルワイヤ、作動ワイヤ、及び/またはロッキングワイヤと呼ばれてもよい。近位及び/または遠位リリースワイヤ320、322は一般に、中実のワイヤまたはシャフトであってもよいが、いくつかの実施形態では管状であってもよい。近位及び/または遠位リリースワイヤ320、322に適しているが非限定的ないくつかの材料、例えば金属材料、ポリマー材料、複合材料等を以下に記載する。
【0069】
いくつかの実施形態では、医療デバイスシステム300は、医療デバイスを送達構成で治療部位に送達するようにサイズ設定及び構成されたマイクロカテーテル390を含んでもよい。細長いシャフト310及び医療デバイス330は、マイクロカテーテル390の管腔392内に摺動可能に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、マイクロカテーテル390は、治療部位への医療デバイスの経皮送達を容易にすることができる。マイクロカテーテル390に適しているが非限定的ないくつかの材料、例えば金属材料、ポリマー材料、複合材料等を以下に記載する。
【0070】
近位リリースワイヤ320は、身体の外側に留まるように構成された近位端(明示的に示されていない)から遠位端326まで遠位に延びる。場合によっては、近位リリースワイヤ320の遠位端326は、医療デバイス330の近位に配置されてもよい。遠位端326は、それを通って延びる管腔332を画定するループ328を形成するようにコイル状に巻かれた遠位ストッパを含んでもよい。場合によっては、ループ328の自由端は、近位リリースワイヤ320またはループ328の一部に接続または固定されてもよい。他の実施形態では、ループ328の自由端は、近位リリースワイヤ320及び/またはループ328の他の部分から離間され、及び/または固定されていなくてもよい。いくつかの実施形態では、ループ328は、金属プルワイヤを使用し、その端部をループまたはコイルに形成することによって形成されてもよい。以下でより詳細に説明されるように、いくつかの例示的な金属には、ステンレス鋼、ニチノール、及び他のものが含まれ得ることが企図される。ニチノールを使用する場合、熱硬化を利用して、所望の特定の形状にコイル状のセクションを形成することができる。ループ328の外径は、ループ328を形成するワイヤの外径よりも大きくてもよい。明示的に示されていないが、近位リリースワイヤ320は、遠位リリースワイヤ322の近位移動を制限し、及び/またはシステムの装填を容易にし得る近位ストッパを含んでもよい。
【0071】
遠位リリースワイヤ322は、近位端338から遠位端340まで遠位に延びる。遠位リリースワイヤ322の遠位端340は、本明細書でより詳細に説明されるように、リリース機構370と摺動可能に結合されてもよい。近位端338は、近位リリースワイヤ320の遠位端326の近位に配置されてもよい。例えば、遠位リリースワイヤ322の近位端領域は、近位リリースワイヤ320の遠位端領域の長さの一部と重なってもよい。近位端338は、ボール342が管腔332を通過できないように、近位リリースワイヤ320のループ328の管腔332の直径よりも大きい直径(または外寸)を有するボールまたは球342を含んでもよい。ボール342は、遠位リリースワイヤ322と共に単一のモノリシック構造として形成されてもよい。他の実施形態では、ボール342は、別個に形成され、その後、遠位リリースワイヤ322に取り付けられてもよい(例えば、はんだ付け、ろう付け、溶接、接着等)。近位端338に隣接するボール342は、概して球形を有するものとして示され、記載されているが、円盤形、楕円体、卵形、多角形、立方体、円錐形、角錐形、円筒形、偏心形、Jフック等の他の三次元形状が所望により用いられてもよいことが企図される。
【0072】
近位リリースワイヤ320の遠位ループ328は、遠位リリースワイヤ322の線形部分346が遠位ループ328の管腔332内に摺動可能に配置されるように、遠位リリースワイヤ322のボール342の遠位にある遠位リリースワイヤ322の線形部分346の上に摺動可能に配置されるか、またはこれを概して取り囲んでもよい。この配置は、スリップジョイント360を形成してもよい。場合によっては、スリップジョイント360の構成は、送達中にスリップジョイント360が結合するリスクを低減するものであってもよい。近位リリースワイヤ320の遠位ループ328は、スリップジョイントクリアランス350を提供するために、遠位リリースワイヤ322のボール342からある距離だけ離間されてもよい。スリップジョイントクリアランス350は、遠位リリースワイヤ322を同時に移動させることなく、近位リリースワイヤ320が(少なくとも近位に)移動可能な長手方向距離であってもよい。これにより、近位リリースワイヤ320及び遠位リリースワイヤ322を、制限された軸方向距離にわたって(例えば、システム300の長手方向軸線に沿って)互いに摺動可能に結合することが可能となり得る。近位リリースワイヤ320及び遠位リリースワイヤ322はそれぞれ、制限された軸方向距離にわたって互いに対して独立して移動し得ることが企図される。スリップジョイントクリアランス350は、近位リリースワイヤ320及び/または遠位リリースワイヤ322が他の構成要素320、322と係合してそれも移動させる前に、独立して摺動可能な距離を決定し得る。スリップジョイントクリアランス350は、遠位リリースワイヤ322に対する近位リリースワイヤ320の位置を変更し、細長いシャフト310に対して前記位置に近位リリースワイヤ320を固定することによって変更することができる。場合によっては、スリップジョイントクリアランス350は、それぞれ、約0.25センチメートル(cm)~約3cm、約0.5cm~約2cm、約0.75cm~約1.25cm、または約1cmの範囲の長さを有してもよい。スリップジョイントクリアランス350は、用途に応じて、0.25cm未満または3cmを超える長さを有し得ることが企図される。
【0073】
近位リリースワイヤ320及び遠位リリースワイヤ322の摺動配置は、医療デバイス330の想定よりも早い脱落を軽減することに役立ち得る。例えば、送達システム300(及び医療デバイス330)が近位に後退されるとき(及び使用中の他の時間に)、細長いシャフト310は引張荷重を受け得る。言い換えれば、細長いシャフト310の遠位部分が伸長される場合があり、これにより、保持ワイヤの医療デバイス330からの想定よりも早い脱落が引き起こされ得る。近位リリースワイヤ320の近位端(またはそれに隣接する領域)は、細長いシャフト310の近位端(またはそれに隣接する領域)に結合されて、細長いシャフトに対する近位リリースワイヤ320の移動を制限または防止することができる。しかしながら、これは、近位リリースワイヤ320が細長いシャフト310と共に伸長される原因となる可能性がある。近位リリースワイヤ320及び遠位リリースワイヤ322の摺動配置は、遠位リリースワイヤ322に近位の力を及ぼすことなく、細長いシャフト310の遠位部分が伸長するにつれて近位リリースワイヤ320が近位に移動する(例えば、伸長する)ことを可能にし得る。例えば、近位リリースワイヤ320及び遠位リリースワイヤ322は、近位リリースワイヤ320の遠位ループ328が、遠位リリースワイヤ322のボール342からある距離だけ離間され得るように配置されてもよい。これにより、近位の力が遠位リリースワイヤ322に加えられる前に、近位リリースワイヤ320がスリップジョイントクリアランス350の全長にわたって近位に移動することが可能となり得る。本明細書でより詳細に説明されるように、近位リリースワイヤ320の遠位ループ328が遠位リリースワイヤ322のボール342と係合すると、遠位リリースワイヤ322は、近位リリースワイヤ320と共に近位に移動する。
【0074】
使用中、医療デバイスシステム300のマイクロカテーテル390は、患者の解剖学的構造に挿入されてもよく、マイクロカテーテル390の遠位端は、治療部位に隣接する位置に誘導及び/または前進されてもよい。細長いシャフト310の遠位端316に配置され、及び/またはこれの近くに配置された医療デバイス330は、管腔392の近位端に挿入され、マイクロカテーテル390内に配置され、マイクロカテーテル390を通って、及び/またはマイクロカテーテル390と共に治療部位に前進されてもよい。いくつかの実施形態では、医療デバイス330は、マイクロカテーテル390の遠位端に近接するマイクロカテーテル390の管腔392内に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、医療デバイス330は、使用前及び/またはマイクロカテーテル390を患者の解剖学的構造に挿入する前に、マイクロカテーテル390の遠位端に近接するマイクロカテーテル390の管腔392内に配置されてもよい。医療デバイス330の展開及び/または解放は、医療デバイスの種類及び/または所望の治療プロセスまたは方法に応じて選択的に実行され得る。医療デバイス330を展開する準備ができたら、医療デバイス330が露出され、及び/またはマイクロカテーテル390の遠位に配置されるまで、細長いシャフト310をマイクロカテーテル390に対して遠位に前進及び/または平行移動させてもよい。あるいは、マイクロカテーテル390は、医療デバイス330が露出されるまで、及び/またはマイクロカテーテル390の遠位に配置されるまで、細長いシャフト310に対して引き抜かれてもよい。明確性のため、マイクロカテーテル390は、近位に後退された構成で示されている。しかしながら、身体を通したナビゲートの間、マイクロカテーテルは、医療デバイス330の上に配置されてもよい。
【0075】
リリース機構370は、医療デバイス330を細長いシャフト310の遠位端316に解放可能に取り付けてもよい。いくつかの実施形態では、細長いシャフト310は、細長いシャフト310の遠位端316に固定的に取り付けられたリリース機構370の第一の部分372を含んでもよく、医療デバイス330は、医療デバイス330の近位端に固定的に取り付けられたリリース機構370の第二の部分374を含んでもよい。遠位リリースワイヤ322の遠位端340は、
図11に見られるように、連結位置においてリリース機構370の第一の部分372及びリリース機構370の第二の部分374と摺動可能に係合してもよい。遠位リリースワイヤ322は、
図11に示されるように、近位リリースワイヤ320及び遠位リリースワイヤ322が送達構成にあるとき、リリース機構370の第一の部分372をリリース機構370の第二の部分374と連結する。
【0076】
送達システム300が治療位置まで遠位に前進されると、細長いシャフト310が伸長し始め得る。場合によっては、近位リリースワイヤ320を細長いシャフト310に結合して、送達中の細長いシャフト310に対する近位リリースワイヤ320の長手方向の移動を防止することができる。これにより、近位リリースワイヤ320は細長いシャフト310と共に伸長し得る。明示的に示されていないが、近位リリースワイヤ320が近位方向にシフトされるとき、遠位リリースワイヤ322は長手方向に固定されたままであってもよく、したがって、スリップジョイントクリアランス350の距離を減少させてもよい。
【0077】
医療デバイス330の取り外しが望まれる場合、ユーザは、そのように取り付けられている場合、細長いシャフト310と近位リリースワイヤ320とを切り離して、近位リリースワイヤ320の近位後退を可能にし得る。近位リリースワイヤ320の近位端(明示的に示されていない)は、スリップジョイント360のクリアランス350の長さが使い果たされるまで、第一の距離にわたって近位に作動されてもよい。クリアランス350の長さは、細長いシャフト310の伸長の程度、及び/またはボール342に対する遠位ループ328の元の構成に応じて可変であり得ることが企図される。近位リリースワイヤ320の遠位ループ328が、遠位リリースワイヤ322のボール342と係合するか、またはこれに物理的に接触すると、(例えば、クリアランスの所定の距離を越えた、または第一の距離よりも長い)第二の距離にわたる近位リリースワイヤ320のさらなる近位移動によって、遠位リリースワイヤ322が近位リリースワイヤ320と共に近位に作動される。場合によっては、遠位リリースワイヤ322のボール342は、細長いシャフト310の内壁との締まりばめ(またはそうでなければ摩擦的または物理的係合)を有してもよい。これは、ユーザによって近位リリースワイヤ320に意図的に力が加えられるまで、遠位リリースワイヤ322を固定することができる。このような配置は、遠位リリースワイヤ322の受動的な移動を低減することに役立ち得る。
【0078】
リリース機構370は、遠位リリースワイヤ322がリリース機構370の長さ以上の長さによって近位に作動されるまで、連結構成のままであり得ることが企図される。例えば、リリース機構370の長さよりも短い長さによる遠位リリースワイヤ322の近位作動は、医療デバイス330を解放するのに十分ではない可能性がある。少なくともいくつかの実施形態では、遠位リリースワイヤ322は、細長いシャフト310を通って延びる管腔312、リリース機構370の第一の部分372を通って延びる第一の軸方向管腔、及びリリース機構370の第二の部分374を通って延びる第二の軸方向管腔内に摺動可能に配置されてもよい。医療デバイス330の解放は、連結構成と完全に解放された構成との間の遠位リリースワイヤ322の任意の軸方向位置で反転され得ることが企図される。第一の部分372の第一の軸方向管腔及び第二の部分374の第二の軸方向管腔は、医療デバイス330が細長いシャフト310の遠位端316に解放可能に取り付けられるとき、中心長手方向軸線及び/または遠位リリースワイヤ322と実質的に同軸であってもよい。リリース機構370、第一の部分372、及び第二の部分374に適しているが非限定的ないくつかの材料、例えば金属材料、ポリマー材料、複合材料等を以下に記載する。使用中、医療デバイス330を治療部位(例えば、静脈、動脈等)に送達する方法は、医療デバイス130に関連して記載された方法と同様であってもよい。
【0079】
図12は、別の例示的な医療デバイスシステム400の態様を示している。
図12は、細長いシャフト410の遠位端領域416の部分断面図である。医療デバイスシステム400は、細長いシャフト410の近位端(明示的に示されていない)から細長いシャフト410の遠位端領域416まで延びる管腔412を有する細長いシャフト410を含んでもよい。細長いシャフト410は、本明細書に記載の細長いシャフト110と形態及び機能が類似していてもよい。いくつかの実施形態では、細長いシャフト410は、カテーテル、ハイポチューブ、または他の同様の管状構造であってもよい。いくつかの実施形態では、細長いシャフト410の少なくとも一部は、曲がりくねった血管系をナビゲートするために細長いシャフト410の長さに沿って増加する柔軟性を提供するために、微細加工、複数の切断または弱められた領域、ある程度の材料除去等を含んでもよい。細長いシャフト410に適しているが非限定的ないくつかの材料、例えば金属材料、ポリマー材料、複合材料等を以下に記載する。
【0080】
医療デバイスシステム400は、細長いシャフト410の管腔412内に摺動可能に配置された近位リリースワイヤ(または送達システムプルワイヤ)420及び遠位リリースワイヤ(またはカプラープルワイヤ)422を含んでもよい。医療デバイス430は、細長いシャフト410の遠位端の近くに配置されてもよい。医療デバイス430は、本明細書に記載の医療デバイス130と形態及び機能が類似していてもよい。近位及び遠位リリースワイヤ420、422は、本明細書でより詳細に説明されるように、医療デバイス430に対して連結位置と解放位置との間で軸方向に摺動可能であってもよい。近位及び遠位リリースワイヤ420、422は、医療デバイス430を細長いシャフト410の遠位端416に解放可能に取り付けるように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、近位及び/または遠位リリースワイヤ420、422は、交互に及び/または交換可能に、プルワイヤ、作動ワイヤ、及び/またはロッキングワイヤと呼ばれてもよい。近位及び/または遠位リリースワイヤ420、422は一般に、中実のワイヤまたはシャフトであってもよいが、いくつかの実施形態では管状であってもよい。近位及び/または遠位リリースワイヤ420、422に適しているが非限定的ないくつかの材料、例えば金属材料、ポリマー材料、複合材料等を以下に記載する。
【0081】
いくつかの実施形態では、医療デバイスシステム400は、医療デバイスを送達構成で治療部位に送達するようにサイズ設定及び構成されたマイクロカテーテル490を含んでもよい。細長いシャフト410及び医療デバイス430は、マイクロカテーテル490の管腔492内に摺動可能に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、マイクロカテーテル490は、治療部位への医療デバイスの経皮送達を容易にすることができる。マイクロカテーテル490に適しているが非限定的ないくつかの材料、例えば金属材料、ポリマー材料、複合材料等を以下に記載する。
【0082】
近位リリースワイヤ420は、身体の外側に留まるように構成された近位端(明示的に示されていない)から遠位端426まで遠位に延びる。場合によっては、近位リリースワイヤ420の遠位端426は、医療デバイス430の近位に配置されてもよい。遠位端426は、それを通って延びる管腔432を画定する、概して円筒形のカラーまたはスリーブ428を含んでもよい。カラー428は、近位リリースワイヤ420と共に単一のモノリシック構造として形成されてもよい。他の実施形態では、カラー428は、別個に形成され、その後、近位リリースワイヤ420に取り付けられてもよい(例えば、はんだ付け、ろう付け、溶接、接着等)。カラー428は、近位リリースワイヤ420の残りの部分の外径よりも大きい外径を有してもよい。明示的に示されていないが、近位リリースワイヤ420は、遠位リリースワイヤ422の近位移動を制限し、及び/またはシステムの装填を容易にし得る近位ストッパを含んでもよい。
【0083】
遠位リリースワイヤ422は、近位端438から遠位端440まで遠位に延びる。遠位リリースワイヤ422の遠位端440は、本明細書でより詳細に説明されるように、リリース機構470と摺動可能に結合されてもよい。近位端438は、近位リリースワイヤ420の遠位端426の近位に配置されてもよい。例えば、遠位リリースワイヤ422の近位端領域は、近位リリースワイヤ420の遠位端領域の長さの一部と重なってもよい。近位端438は、ボール442が管腔432を通過できないように、近位リリースワイヤ420のカラー428の管腔432の直径よりも大きい直径(または外寸)を有するボールまたは球442を含んでもよい。ボール442は、遠位リリースワイヤ422と共に単一のモノリシック構造として形成されてもよい。他の実施形態では、ボール442は、別個に形成され、その後、近位リリースワイヤ422に取り付けられてもよい(例えば、はんだ付け、ろう付け、溶接、接着等)。近位端438に隣接するボール442は、概して球形を有するものとして示され、記載されているが、円盤形、楕円体、卵形、多角形、立方体、円錐形、角錐形、円筒形、偏心形、Jフック等の他の三次元形状が所望により用いられてもよいことが企図される。
【0084】
近位リリースワイヤ420のカラー428は、遠位リリースワイヤ422の線形部分446がカラー428の管腔432内に摺動可能に配置されるように、遠位リリースワイヤ422のボール442の遠位にある遠位リリースワイヤ422の線形部分446の上に摺動可能に配置されるか、またはこれを概して取り囲んでもよい。この配置は、スリップジョイント460を形成してもよい。場合によっては、スリップジョイント460の構成は、送達中にスリップジョイント460が結合するリスクを低減するものであってもよい。近位リリースワイヤ420のカラー428は、スリップジョイントクリアランス450を提供するために、遠位リリースワイヤ422のボール442からある距離だけ離間されてもよい。スリップジョイントクリアランス450は、遠位リリースワイヤ422を同時に移動させることなく、近位リリースワイヤ420が(少なくとも近位に)移動可能な長手方向距離であってもよい。これにより、近位リリースワイヤ420及び遠位リリースワイヤ422を、制限された軸方向距離にわたって(例えば、システム400の長手方向軸線に沿って)互いに摺動可能に結合することが可能となり得る。近位リリースワイヤ420及び遠位リリースワイヤ422はそれぞれ、制限された軸方向距離にわたって互いに対して独立して移動し得ることが企図される。スリップジョイントクリアランス450は、近位リリースワイヤ420及び/または遠位リリースワイヤ422が他の構成要素420、422と係合してそれも移動させる前に、独立して摺動可能な距離を決定し得る。スリップジョイントクリアランス450は、遠位リリースワイヤ422に対する近位リリースワイヤ420の位置を変更し、細長いシャフト410に対して前記位置に近位リリースワイヤ420を固定することによって変更することができる。場合によっては、スリップジョイントクリアランス450は、それぞれ、約0.25センチメートル(cm)~約3cm、約0.5cm~約2cm、約0.75cm~約1.25cm、または約1cmの範囲の長さを有してもよい。スリップジョイントクリアランス450は、用途に応じて、0.25cm未満または3cmを超える長さを有し得ることが企図される。
【0085】
近位リリースワイヤ420及び遠位リリースワイヤ422の摺動配置は、医療デバイス430の想定よりも早い脱落を軽減することに役立ち得る。例えば、送達システム400(及び医療デバイス430)が近位に後退されるとき(及び使用中の他の時間に)、細長いシャフト410は引張荷重を受け得る。言い換えれば、細長いシャフト410の遠位部分が伸長される場合があり、これにより、保持ワイヤの医療デバイス430からの想定よりも早い脱落が引き起こされ得る。近位リリースワイヤ420の近位端(またはそれに隣接する領域)は、細長いシャフト410の近位端(またはそれに隣接する領域)に結合されて、細長いシャフトに対する近位リリースワイヤ420の移動を制限または防止することができる。しかしながら、これは、近位リリースワイヤ420が細長いシャフト410と共に伸長される原因となる可能性がある。近位リリースワイヤ420及び遠位リリースワイヤ422の摺動配置は、遠位リリースワイヤ422に近位の力を及ぼすことなく、細長いシャフト410の遠位部分が伸長するにつれて近位リリースワイヤ420が近位に移動する(例えば、伸長する)ことを可能にし得る。例えば、近位リリースワイヤ420及び遠位リリースワイヤ422は、近位リリースワイヤ420のカラー428が、遠位リリースワイヤ422のボール442からある距離だけ離間され得るように配置されてもよい。これにより、近位の力が遠位リリースワイヤ422に加えられる前に、近位リリースワイヤ420がスリップジョイントクリアランス450の全長にわたって近位に移動することが可能となり得る。本明細書でより詳細に説明されるように、近位リリースワイヤ420のカラー428が遠位リリースワイヤ422のボール442に係合または接触すると、遠位リリースワイヤ422は、近位リリースワイヤ420と共に近位に移動する。
【0086】
使用中、医療デバイスシステム400のマイクロカテーテル490は、患者の解剖学的構造に挿入されてもよく、マイクロカテーテル490の遠位端は、治療部位に隣接する位置に誘導及び/または前進されてもよい。細長いシャフト410の遠位端416に配置され、及び/またはこれの近くに配置された医療デバイス430は、管腔492の近位端に挿入され、マイクロカテーテル490内に配置され、マイクロカテーテル490を通って、及び/またはマイクロカテーテル490と共に治療部位に前進されてもよい。いくつかの実施形態では、医療デバイス430は、マイクロカテーテル490の遠位端に近接するマイクロカテーテル490の管腔492内に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、医療デバイス430は、使用前及び/またはマイクロカテーテル490を患者の解剖学的構造に挿入する前に、マイクロカテーテル490の遠位端に近接するマイクロカテーテル490の管腔492内に配置されてもよい。医療デバイス430の展開及び/または解放は、医療デバイスの種類及び/または所望の治療プロセスまたは方法に応じて選択的に実行され得る。医療デバイス430を展開する準備ができたら、医療デバイス430が露出され、及び/またはマイクロカテーテル490の遠位に配置されるまで、細長いシャフト410をマイクロカテーテル490に対して遠位に前進及び/または平行移動させてもよい。あるいは、マイクロカテーテル490は、医療デバイス430が露出されるまで、及び/またはマイクロカテーテル490の遠位に配置されるまで、細長いシャフト410に対して引き抜かれてもよい。明確性のため、マイクロカテーテル490は、近位に後退された構成で示されている。しかしながら、身体を通したナビゲートの間、マイクロカテーテルは、医療デバイス430の上に配置されてもよい。
【0087】
リリース機構470は、医療デバイス430を細長いシャフト410の遠位端416に解放可能に取り付けてもよい。いくつかの実施形態では、細長いシャフト410は、細長いシャフト410の遠位端416に固定的に取り付けられたリリース機構470の第一の部分472を含んでもよく、医療デバイス430は、医療デバイス430の近位端に固定的に取り付けられたリリース機構470の第二の部分474を含んでもよい。遠位リリースワイヤ422の遠位端440は、
図12に見られるように、連結位置においてリリース機構470の第一の部分472及びリリース機構470の第二の部分474と摺動可能に係合してもよい。遠位リリースワイヤ422は、
図12に示されるように、近位リリースワイヤ420及び遠位リリースワイヤ422が送達構成にあるとき、リリース機構470の第一の部分472をリリース機構470の第二の部分474と連結する。
【0088】
送達システム400が治療位置まで遠位に前進されると、細長いシャフト410が伸長し始め得る。場合によっては、近位リリースワイヤ420を細長いシャフト410に結合して、送達中の細長いシャフト410に対する近位リリースワイヤ420の長手方向の移動を防止することができる。これにより、近位リリースワイヤ420は細長いシャフト410と共に伸長し得る。明示的に示されていないが、近位リリースワイヤ420が近位方向にシフトされるとき、遠位リリースワイヤ422は長手方向に固定されたままであってもよく、したがって、スリップジョイントクリアランス450の距離を減少させてもよい。
【0089】
医療デバイス430の取り外しが望まれる場合、ユーザは、そのように取り付けられている場合、細長いシャフト410と近位リリースワイヤ420とを切り離して、近位リリースワイヤ420の近位後退を可能にし得る。近位リリースワイヤ420の近位端(明示的に示されていない)は、スリップジョイント460のクリアランス450の長さが使い果たされるまで、第一の距離にわたって近位に作動されてもよい。クリアランス450の長さは、細長いシャフト410の伸長の程度、及び/またはボール442に対するカラー428の元の構成に応じて可変であり得ることが企図される。近位リリースワイヤ420のカラー428が、遠位リリースワイヤ422のボール442と係合するか、またはこれに物理的に接触すると、(例えば、クリアランスの所定の距離を越えた、または第一の距離よりも長い)第二の距離にわたる近位リリースワイヤ420のさらなる近位移動によって、遠位リリースワイヤ422が近位リリースワイヤ420と共に近位に作動される。場合によっては、遠位リリースワイヤ422のボール442は、細長いシャフト410の内壁との締まりばめ(またはそうでなければ摩擦的または物理的係合)を有してもよい。これは、ユーザによって近位リリースワイヤ420に意図的に力が加えられるまで、遠位リリースワイヤ422を固定することができる。このような配置は、遠位リリースワイヤ422の受動的な移動を低減することに役立ち得る。
【0090】
リリース機構470は、遠位リリースワイヤ422がリリース機構470の長さ以上の長さによって近位に作動されるまで、連結構成のままであり得ることが企図される。例えば、リリース機構470の長さよりも短い長さによる遠位リリースワイヤ422の近位作動は、医療デバイス430を解放するのに十分ではない可能性がある。少なくともいくつかの実施形態では、遠位リリースワイヤ422は、細長いシャフト410を通って延びる管腔412、リリース機構470の第一の部分472を通って延びる第一の軸方向管腔、及びリリース機構470の第二の部分474を通って延びる第二の軸方向管腔内に摺動可能に配置されてもよい。医療デバイス430の解放は、連結構成と完全に解放された構成との間の遠位リリースワイヤ422の任意の軸方向位置で反転され得ることが企図される。第一の部分472の第一の軸方向管腔及び第二の部分474の第二の軸方向管腔は、医療デバイス430が細長いシャフト410の遠位端416に解放可能に取り付けられるとき、中心長手方向軸線及び/または遠位リリースワイヤ422と実質的に同軸であってもよい。リリース機構470、第一の部分472、及び第二の部分474に適しているが非限定的ないくつかの材料、例えば金属材料、ポリマー材料、複合材料等を以下に記載する。使用中、医療デバイス430を治療部位(例えば、静脈、動脈等)に送達する方法は、医療デバイス130に関連して記載された方法と同様であってもよい。
【0091】
図13は、別の例示的な医療デバイスシステム500の態様を示している。
図13は、細長いシャフト510の遠位端領域516の部分断面図である。医療デバイスシステム500は、細長いシャフト510の近位端(明示的に示されていない)から細長いシャフト510の遠位端領域516まで延びる管腔512を有する細長いシャフト510を含んでもよい。細長いシャフト510は、本明細書に記載の細長いシャフト110と形態及び機能が類似していてもよい。いくつかの実施形態では、細長いシャフト510は、カテーテル、ハイポチューブ、または他の同様の管状構造であってもよい。いくつかの実施形態では、細長いシャフト510の少なくとも一部は、曲がりくねった血管系をナビゲートするために細長いシャフト510の長さに沿って増加する柔軟性を提供するために、微細加工、複数の切断または弱められた領域、ある程度の材料除去等を含んでもよい。細長いシャフト510に適しているが非限定的ないくつかの材料、例えば金属材料、ポリマー材料、複合材料等を以下に記載する。
【0092】
医療デバイスシステム500は、細長いシャフト510の管腔512内に摺動可能に配置された近位リリースワイヤ(または送達システムプルワイヤ)520及び遠位リリースワイヤ(またはカプラープルワイヤ)522を含んでもよい。医療デバイス530は、細長いシャフト510の遠位端の近くに配置されてもよい。医療デバイス530は、本明細書に記載の医療デバイス130と形態及び機能が類似していてもよい。近位及び遠位リリースワイヤ520、522は、本明細書でより詳細に説明されるように、医療デバイス530に対して連結位置と解放位置との間で軸方向に摺動可能であってもよい。近位及び遠位リリースワイヤ520、522は、医療デバイス530を細長いシャフト510の遠位端516に解放可能に取り付けるように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、近位及び/または遠位リリースワイヤ520、522は、交互に及び/または交換可能に、プルワイヤ、作動ワイヤ、及び/またはロッキングワイヤと呼ばれてもよい。近位及び/または遠位リリースワイヤ520、522は一般に、中実のワイヤまたはシャフトであってもよいが、いくつかの実施形態では管状であってもよい。近位及び/または遠位リリースワイヤ520、522に適しているが非限定的ないくつかの材料、例えば金属材料、ポリマー材料、複合材料等を以下に記載する。
【0093】
いくつかの実施形態では、医療デバイスシステム500は、医療デバイスを送達構成で治療部位に送達するようにサイズ設定及び構成されたマイクロカテーテル590を含んでもよい。細長いシャフト510及び医療デバイス530は、マイクロカテーテル590の管腔592内に摺動可能に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、マイクロカテーテル590は、治療部位への医療デバイスの経皮送達を容易にすることができる。マイクロカテーテル590に適しているが非限定的ないくつかの材料、例えば金属材料、ポリマー材料、複合材料等を以下に記載する。
【0094】
近位リリースワイヤ520は、身体の外側に留まるように構成された近位端(明示的に示されていない)から遠位端426まで遠位に延びる。場合によっては、近位リリースワイヤ520の遠位端426は、医療デバイス530の近位に配置されてもよい。遠位端426は、それを通って延びる管腔532を画定する、概して円筒形のカラーまたはスリーブ528を含む遠位ストッパを含んでもよい。カラー528は、近位リリースワイヤ520と共に単一のモノリシック構造として形成されてもよい。他の実施形態では、カラー528は、別個に形成され、その後、近位リリースワイヤ520に取り付けられてもよい(例えば、はんだ付け、ろう付け、溶接、接着等)。カラー528は、近位リリースワイヤ520の残りの部分の外径よりも大きい外径を有してもよい。明示的に示されていないが、近位リリースワイヤ520は、遠位リリースワイヤ522の近位移動を制限し、及び/またはシステムの装填を容易にし得る近位ストッパを含んでもよい。
【0095】
遠位リリースワイヤ522は、近位端538から遠位端540まで遠位に延びる。遠位リリースワイヤ522の遠位端540は、本明細書でより詳細に説明されるように、リリース機構570と摺動可能に結合されてもよい。近位端538は、近位リリースワイヤ520の遠位端426の近位に配置されてもよい。例えば、遠位リリースワイヤ522の近位端領域は、近位リリースワイヤ520の遠位端領域の長さの一部と重なってもよい。近位端538は、それを通って延びる管腔544を画定する、概して円筒形のカラーまたはスリーブ542を含んでもよい。カラー542は、遠位リリースワイヤ522と共に単一のモノリシック構造として形成されてもよい。他の実施形態では、カラー542は、別個に形成され、その後、遠位リリースワイヤ522に取り付けられてもよい(例えば、はんだ付け、ろう付け、溶接、接着等)。カラー542は、遠位リリースワイヤ522の残りの部分の外径よりも大きい外径を有してもよい。
【0096】
近位リリースワイヤ520のカラー528は、遠位リリースワイヤ522の線形部分546がカラー528の管腔532内に摺動可能に配置されるように、遠位リリースワイヤ522のカラー542の遠位にある遠位リリースワイヤ522の線形部分546の上に摺動可能に配置されるか、またはこれを概して取り囲んでもよい。遠位リリースワイヤ522のカラー542は、近位リリースワイヤ520の線形部分536がカラー542の管腔544内に摺動可能に配置されるように、近位リリースワイヤ520のカラー528の近位にある近位リリースワイヤ520の線形部分536の上に摺動可能に配置されるか、またはこれを概して取り囲んでもよい。この配置は、スリップジョイント560を形成してもよい。場合によっては、スリップジョイント560の構成は、送達中にスリップジョイント560が結合するリスクを低減するものであってもよい。近位リリースワイヤ520のカラー528は、スリップジョイントクリアランス550を提供するために、遠位リリースワイヤ522のカラー542からある距離だけ離間されてもよい。スリップジョイントクリアランス550は、遠位リリースワイヤ522を同時に移動させることなく、近位リリースワイヤ520が(少なくとも近位方向に)移動可能な長手方向距離であってもよい。これにより、近位リリースワイヤ520及び遠位リリースワイヤ522を、制限された軸方向距離にわたって(例えば、システム500の長手方向軸線に沿って)互いに摺動可能に結合することが可能となり得る。近位リリースワイヤ520及び遠位リリースワイヤ522はそれぞれ、制限された軸方向距離にわたって互いに対して独立して移動し得ることが企図される。スリップジョイントクリアランス550は、近位リリースワイヤ520及び/または遠位リリースワイヤ522が他の構成要素520、522と係合してそれも移動させる前に、独立して摺動可能な距離を決定し得る。スリップジョイントクリアランス550は、遠位リリースワイヤ522に対する近位リリースワイヤ520の位置を変更し、細長いシャフト510に対して前記位置に近位リリースワイヤ520を固定することによって変更することができる。場合によっては、スリップジョイントクリアランス550は、それぞれ、約0.25センチメートル(cm)~約3cm、約0.5cm~約2cm、約0.75cm~約1.25cm、または約1cmの範囲の長さを有してもよい。スリップジョイントクリアランス550は、用途に応じて、0.25cm未満または3cmを超える長さを有し得ることが企図される。
【0097】
近位リリースワイヤ520及び遠位リリースワイヤ522の摺動配置は、医療デバイス530の想定よりも早い脱落を軽減することに役立ち得る。例えば、送達システム500(及び医療デバイス530)が近位に後退されるとき(及び使用中の他の時間に)、細長いシャフト510は引張荷重を受け得る。言い換えれば、細長いシャフト510の遠位部分は伸長される場合があり、これにより、保持ワイヤの医療デバイス530からの想定よりも早い脱落が引き起こされ得る。近位リリースワイヤ520の近位端(またはそれに隣接する領域)は、細長いシャフト510の近位端(またはそれに隣接する領域)に結合されて、細長いシャフトに対する近位リリースワイヤ520の移動を制限または防止することができる。しかしながら、これは、近位リリースワイヤ520が細長いシャフト510と共に伸長される原因となる可能性がある。近位リリースワイヤ520及び遠位リリースワイヤ522の摺動配置は、遠位リリースワイヤ522に近位の力を及ぼすことなく、細長いシャフト510の遠位部分が伸長するにつれて近位リリースワイヤ520が近位に移動する(例えば、伸長する)ことを可能にし得る。例えば、近位リリースワイヤ520及び遠位リリースワイヤ522は、近位リリースワイヤ520のカラー528が、遠位リリースワイヤ522のカラー542からある距離だけ離間され得るように配置されてもよい。これにより、近位の力が遠位リリースワイヤ522に加えられる前に、近位リリースワイヤ520がスリップジョイントクリアランス550の全長にわたって近位に移動することが可能となり得る。本明細書でより詳細に説明されるように、近位リリースワイヤ520のカラー528が遠位リリースワイヤ522のカラー542に係合または接触すると、遠位リリースワイヤ522は、近位リリースワイヤ520と共に近位に移動する。
【0098】
使用中、医療デバイスシステム500のマイクロカテーテル590は、患者の解剖学的構造に挿入されてもよく、マイクロカテーテル590の遠位端は、治療部位に隣接する位置に誘導及び/または前進されてもよい。細長いシャフト510の遠位端516に配置され、及び/またはこれの近くに配置された医療デバイス530は、管腔592の近位端に挿入され、マイクロカテーテル590内に配置され、マイクロカテーテル590を通って、及び/またはマイクロカテーテル590と共に治療部位に前進されてもよい。いくつかの実施形態では、医療デバイス530は、マイクロカテーテル590の遠位端に近接するマイクロカテーテル590の管腔592内に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、医療デバイス530は、使用前及び/またはマイクロカテーテル590を患者の解剖学的構造に挿入する前に、マイクロカテーテル590の遠位端に近接するマイクロカテーテル590の管腔592内に配置されてもよい。医療デバイス530の展開及び/または解放は、医療デバイスの種類及び/または所望の治療プロセスまたは方法に応じて選択的に実行され得る。医療デバイス530を展開する準備ができたら、医療デバイス530が露出され、及び/またはマイクロカテーテル590の遠位に配置されるまで、細長いシャフト510をマイクロカテーテル590に対して遠位に前進及び/または平行移動させてもよい。あるいは、マイクロカテーテル590は、医療デバイス530が露出されるまで、及び/またはマイクロカテーテル590の遠位に配置されるまで、細長いシャフト510に対して引き抜かれてもよい。明確性のため、マイクロカテーテル590は、近位に後退された構成で示されている。しかしながら、身体を通したナビゲートの間、マイクロカテーテルは、医療デバイス530の上に配置されてもよい。
【0099】
リリース機構570は、医療デバイス530を細長いシャフト510の遠位端516に解放可能に取り付けてもよい。いくつかの実施形態では、細長いシャフト510は、細長いシャフト510の遠位端516に固定的に取り付けられたリリース機構570の第一の部分572を含んでもよく、医療デバイス530は、医療デバイス530の近位端に固定的に取り付けられたリリース機構570の第二の部分574を含んでもよい。遠位リリースワイヤ522の遠位端540は、
図13に見られるように、連結位置においてリリース機構570の第一の部分572及びリリース機構570の第二の部分574と摺動可能に係合してもよい。遠位リリースワイヤ522は、
図13に示されるように、近位リリースワイヤ520及び遠位リリースワイヤ522が送達構成にあるとき、リリース機構570の第一の部分572をリリース機構570の第二の部分574と連結する。
【0100】
送達システム500が治療位置まで遠位に前進されると、細長いシャフト510が伸長し始め得る。場合によっては、近位リリースワイヤ520を細長いシャフト510に結合して、送達中の細長いシャフト510に対する近位リリースワイヤ520の長手方向の移動を防止することができる。これにより、近位リリースワイヤ520が細長いシャフト510と共に伸長し得る。明示的に示されていないが、近位リリースワイヤ520が近位方向にシフトされるとき、遠位リリースワイヤ522は長手方向に固定されたままであってもよく、したがって、スリップジョイントクリアランス550の距離を減少させてもよい。
【0101】
医療デバイス530の取り外しが望まれる場合、ユーザは、そのように取り付けられている場合、細長いシャフト510と近位リリースワイヤ520とを切り離して、近位リリースワイヤ520の近位後退を可能にし得る。近位リリースワイヤ520の近位端(明示的に示されていない)は、スリップジョイント560のクリアランス550の長さが使い果たされるまで、第一の距離にわたって近位に作動されてもよい。クリアランス550の長さは、細長いシャフト510の伸長の程度、及び/またはカラー542に対するカラー528の元の構成に応じて可変であり得ることが企図される。近位リリースワイヤ520のカラー528が、遠位リリースワイヤ522のカラー542と係合するか、またはこれに物理的に接触すると、(例えば、クリアランスの所定の距離を越えた、または第一の距離よりも長い)第二の距離にわたる近位リリースワイヤ520のさらなる近位移動によって、遠位リリースワイヤ522が近位リリースワイヤ520と共に近位に作動される。場合によっては、遠位リリースワイヤ522のカラー542は、細長いシャフト510の内壁との締まりばめ(またはそうでなければ摩擦的または物理的係合)を有してもよい。これは、ユーザによって近位リリースワイヤ520に意図的に力が加えられるまで、遠位リリースワイヤ522を固定することができる。このような配置は、遠位リリースワイヤ522の受動的な移動を低減することに役立ち得る。
【0102】
リリース機構570は、遠位リリースワイヤ522がリリース機構570の長さ以上の長さによって近位に作動されるまで、連結構成のままであり得ることが企図される。例えば、リリース機構570の長さよりも短い長さによる遠位リリースワイヤ522の近位作動は、医療デバイス530を解放するのに十分ではない可能性がある。少なくともいくつかの実施形態では、遠位リリースワイヤ522は、細長いシャフト510を通って延びる管腔512、リリース機構570の第一の部分572を通って延びる第一の軸方向管腔、及びリリース機構570の第二の部分574を通って延びる第二の軸方向管腔内に摺動可能に配置されてもよい。医療デバイス530の解放は、連結構成と完全に解放された構成との間の遠位リリースワイヤ522の任意の軸方向位置で反転され得ることが企図される。第一の部分572の第一の軸方向管腔及び第二の部分574の第二の軸方向管腔は、医療デバイス530が細長いシャフト510の遠位端516に解放可能に取り付けられるとき、中心長手方向軸線及び/または遠位リリースワイヤ522と実質的に同軸であってもよい。リリース機構570、第一の部分572、及び第二の部分574に適しているが非限定的ないくつかの材料、例えば金属材料、ポリマー材料、複合材料等を以下に記載する。使用中、医療デバイス530を治療部位(例えば、静脈、動脈等)に送達する方法は、医療デバイス130に関連して記載された方法と同様であってもよい。医療デバイスシステム、細長いシャフト、リリースワイヤ、医療デバイス、リリース機構、イントロデューサ、及び/またはマイクロカテーテル等(及び/または開示された他のシステム)の様々な構成要素及び本明細書に開示されたそれらの様々な要素に使用可能な材料は、医療デバイスに一般的に関連するものを含み得る。簡潔性のため、以下の説明は、医療デバイスシステム、細長いシャフト、リリースワイヤ、医療デバイス、リリース機構、イントロデューサ、及び/またはマイクロカテーテル等について言及している。しかしながら、これは、本明細書に記載のデバイス及び方法を限定することを意図するものではない。なぜなら、以下の説明は、医療デバイスシステム、細長いシャフト、リリースワイヤ、医療デバイス、リリース機構、イントロデューサ、及び/またはマイクロカテーテル等、及び/またはそれらの要素または構成要素等であるがこれらに限定されない、本明細書に開示される他の要素、部材、構成要素、またはデバイスに適用され得るためである。
【0103】
いくつかの実施形態では、医療デバイスシステム、細長いシャフト、リリースワイヤ、医療デバイス、リリース機構、イントロデューサ、及び/またはマイクロカテーテル等、及び/またはそれらの構成要素は、金属、金属合金、ポリマー(それらのいくつかの例が以下に開示される)、金属-ポリマー複合材料、セラミック、それらの組み合わせ等、または他の適切な材料から作製され得る。適切な金属及び金属合金のいくつかの例には、444V、444L、及び314LVステンレス鋼等のステンレス鋼、軟鋼、線形弾性及び/または超弾性ニチノール等のニッケルチタン合金、ニッケル-クロム-モリブデン合金(例えば、INCONEL(登録商標)625等のUNS:N06625、HASTELLOY(登録商標)C-22(登録商標)等のUNS:N06022、HASTELLOY(登録商標)C276(商標)等のUNS:N10276、他のHASTELLOY(登録商標)合金等)、ニッケル-銅合金(例えば、MONEL(登録商標)400、NICKELVAC(商標)400、NICORROS(登録商標)400等のUNS:N04400)、ニッケル-コバルト-クロム-モリブデン合金(例えば、MP35-N(商標)等のUNS:R44035)、ニッケル-モリブデン合金(例えば、HASTELLOY(登録商標)ALLOY B2(商標)等のUNS:N10665)、他のニッケル-クロム合金、他のニッケル-モリブデン合金、他のニッケル-コバルト合金、他のニッケル-鉄合金、他のニッケル-銅合金、他のニッケル-タングステンまたはタングステン合金等の他のニッケル合金、コバルト-クロム合金、コバルト-クロム-モリブデン合金(例えば、ELGILOY(登録商標)、PHYNOX(登録商標)等のUNS:R44003)、プラチナ富化ステンレス鋼、チタン、プラチナ、パラジウム、金、それらの組み合わせ等、または他の任意の適切な材料が含まれる。
【0104】
本明細書で暗示されるように、市販のニッケル-チタンまたはニチノール合金類の中には、「線形弾性(linear elastic)」または「非超弾性(non-super-elastic)」と呼ばれるカテゴリがあり、これは、化学的には従来の形状記憶及び超弾性材料と類似し得るが、顕著で有益な機械的特性を示し得るものである。線形弾性及び/または非超弾性ニチノールは、線形弾性及び/または非超弾性ニチノールがその応力/ひずみ曲線において超弾性ニチノールが示すような実質的な「超弾性プラトー(superelastic plateau)」または「フラグ領域(flag region)」を示さないという点で、超弾性ニチノールから区別され得る。代わりに、線形弾性及び/または非超弾性ニチノールでは、回復可能なひずみが増加するにつれて、塑性変形が始まるまで実質的に線形の、またはいくらか線形であるが必ずしも完全に線形ではない関係で、または少なくとも超弾性ニチノールで見られ得る超弾性プラトー及び/またはフラグ領域よりも線形の関係で応力が増加し続ける。したがって、本開示の目的のために、線形弾性及び/または非超弾性ニチノールはまた、「実質的(substantially)」線形弾性及び/または非超弾性ニチノールと呼ばれ得る。
【0105】
場合によっては、線形弾性及び/または非超弾性ニチノールはまた、超弾性ニチノールが塑性変形する前に最大約8%のひずみを受け入れ得る一方で、線形弾性及び/または非超弾性ニチノールは(例えば、塑性変形する前に)実質的に弾性を維持しながら最大約2~5%のひずみを受け入れ得るという点で、超弾性ニチノールから区別され得る。これらの材料はいずれも、塑性変形する前に約0.2~0.44%のひずみしか受け入れ得ないステンレス鋼等の他の線形弾性材料(その組成に基づいても区別され得る)から区別することができる。
【0106】
いくつかの実施形態では、線状弾性及び/または非超弾性ニッケル-チタン合金は、広い温度範囲にわたる示差走査熱量測定(DSC: differential scanning calorimetry)及び動的金属熱分析(DMTA: dynamic metal thermal analysis)によって検出可能なマルテンサイト/オーステナイト相変化を示さない合金である。例えば、いくつかの実施形態では、線形弾性及び/または非超弾性ニッケル-チタン合金においては、摂氏約-60度(℃)~約120℃の範囲で、DSC及びDMTA分析によって検出可能なマルテンサイト/オーステナイト相変化が存在しない場合がある。したがって、そのような材料の機械的曲げ特性は、この非常に広い温度範囲にわたる温度の影響に対して概して不活性であり得る。いくつかの実施形態では、周囲温度または室温での線形弾性及び/または非超弾性ニッケル-チタン合金の機械的曲げ特性は、例えば、それらが超弾性プラトー及び/またはフラグ領域を示さないという点で、体温での機械的特性と実質的に同じである。例えば、広い温度範囲にわたって、線形弾性及び/または非超弾性ニッケル-チタン合金は、その線形弾性及び/または非超弾性特性及び/または性質を維持する。
【0107】
いくつかの実施形態では、線形弾性及び/または非超弾性ニッケル-チタン合金は、ニッケルが約50~約60重量パーセントの範囲にあり得、残りは本質的にチタンである。いくつかの実施形態では、その組成において、ニッケルは約54~約57重量パーセントの範囲にある。適切なニッケル-チタン合金の一例として、日本国神奈川県の株式会社古河テクノマテリアルから市販されているFHP-NT合金がある。他の適切な材料には、ULTANIUM(商標)(Neo-Metricsから入手可能)及びGUM METAL(登録商標)(トヨタから入手可能)が含まれ得る。いくつかの他の実施形態では、超弾性合金、例えば超弾性ニチノールを使用して、所望の特性を達成することができる。
【0108】
少なくともいくつかの実施形態では、医療デバイスシステム、細長いシャフト、リリースワイヤ、医療デバイス、リリース機構、イントロデューサ、及び/またはマイクロカテーテル等、及び/またはそれらの構成要素の一部または全部はまた、放射線不透過性材料がドープされ、それから作製され、またはそうでなければそれを含んでもよい。放射線不透過性材料は、医療処置中に透視スクリーンまたは別の画像技術で比較的明るい画像を生成することができる材料であると理解されている。この比較的明るい画像は、医療デバイスシステム、細長いシャフト、リリースワイヤ、医療デバイス、リリース機構、イントロデューサ、及び/またはマイクロカテーテル等の位置を決定する際にユーザを支援する。放射線不透過性材料のいくつかの例には、金、プラチナ、パラジウム、タンタル、タングステン合金、放射線不透過性フィラーが充填されたポリマー材料等が含まれ得るが、これらに限定されない。さらに、他の放射線不透過性マーカーバンド及び/またはコイルもまた、同じ結果を達成するために、医療デバイスシステム、細長いシャフト、リリースワイヤ、医療デバイス、リリース機構、イントロデューサ、及び/またはマイクロカテーテル等の設計に組み込まれ得る。
【0109】
いくつかの実施形態では、ある程度の磁気共鳴画像法(MRI)適合性が、医療デバイスシステム、細長いシャフト、リリースワイヤ、医療デバイス、リリース機構、イントロデューサ、及び/またはマイクロカテーテル等に与えられる。例えば、医療デバイスシステム、細長いシャフト、リリースワイヤ、医療デバイス、リリース機構、イントロデューサ、及び/またはマイクロカテーテル等、及び/またはそれらの構成要素または一部は、画像を実質的に歪ませたり、実質的なアーチファクト(画像のギャップ等)を生成したりしない材料で作製されてもよい。例えば、特定の強磁性材料は、MRI画像にアーチファクトを生成する可能性があるため、適切でない場合がある。医療デバイスシステム、細長いシャフト、リリースワイヤ、医療デバイス、リリース機構、イントロデューサ、及び/またはマイクロカテーテル等、またはそれらの一部もまた、MRI装置が画像化可能な材料から作製され得る。これらの特性を示すいくつかの材料には、例えば、タングステン、コバルト-クロム-モリブデン合金(例えば、ELGILOY(登録商標)、PHYNOX(登録商標)等のUNS:R44003)、ニッケル-コバルト-クロム-モリブデン合金(例えば、MP35-N(商標)等のUNS:R44035)、ニチノール等、及びその他が含まれる。
【0110】
いくつかの実施形態では、医療デバイスシステム、細長いシャフト、リリースワイヤ、医療デバイス、リリース機構、イントロデューサ、及び/またはマイクロカテーテル等、及び/またはそれらの一部は、ポリマーまたは他の適切な材料から作製されるか、またはそれらを含み得る。適切なポリマーのいくつかの例には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリオキシメチレン(POM、例えば、DuPontから入手可能なDELRIN(登録商標))、ポリエーテルブロックエステル、ポリウレタン(例えば、ポリウレタン85A)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエーテルエステル(例えば、DSM Engineering Plasticsから入手可能なARNITEL(登録商標))、エーテルまたはエステル系コポリマー(例えば、ブチレン/ポリ(アルキレンエーテル)フタレート及び/またはDuPontから入手可能なHYTREL(登録商標)等の他のポリエステルエラストマー)、ポリアミド(例えば、Bayerから入手可能なDURETHAN(登録商標)またはElf Atochemから入手可能なCRISTAMID(商標))、エラストマーポリアミド、ブロックポリアミド/エーテル、ポリエーテルブロックアミド(例えばPEBAX(登録商標)という商品名で入手可能なPEBA)、エチレンビニルアセテートコポリマー(EVA)、シリコーン、ポリエチレン(PE)、MARLEX(登録商標)高密度ポリエチレン、MARLEX(登録商標)低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(例えばREXELL(商標))、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリパラフェニレンテレフタミド(例えば、KEVLAR(登録商標))、ポリスルホン、ナイロン、ナイロン-12(EMS American Grilonから入手可能なGrilamid(登録商標)等)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PFA)、エチレンビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリスチレン、エポキシ、ポリビニリデンクロリド(PVdC)、ポリ(スチレン-b-イソブチレン-b-スチレン)(例えば、SIBS(登録商標)及び/またはSIBS(登録商標)50A)、ポリカーボネート、イオノマー、生体適合性ポリマー、他の適切な材料、または混合物、組み合わせ、それらのコポリマー、ポリマー/金属複合材料等が含まれ得る。いくつかの実施形態では、シースは、液晶ポリマー(LCP)を混合し得る。例えば、混合物には最大約6パーセントのLCPを含み得る。
【0111】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される医療デバイスシステム、細長いシャフト、リリースワイヤ、医療デバイス、リリース機構、イントロデューサ、及び/またはマイクロカテーテル等は、構造上または構造内に配置された布材料を含み得る。布材料は、組織の内部成長を促進するように適合された、高分子材料または生体材料等の生体適合性材料から構成され得る。いくつかの実施形態では、布材料は、生体吸収性材料を含み得る。適切な布材料のいくつかの例には、ポリエチレングリコール(PEG)、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、ePTFE)、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン材料、ポリエステル、ポリウレタン、及び/またはそれらの混合または組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0112】
いくつかの実施形態では、医療デバイスシステム、細長いシャフト、リリースワイヤ、医療デバイス、リリース機構、イントロデューサ、及び/またはマイクロカテーテル等は、織物材料を含み、及び/または織物材料から形成され得る。適切な織物材料のいくつかの例には、扁平な、成形された、撚られた、織られた、予備収縮された、または未収縮の合成糸が含まれ得る。本発明での使用に適した合成生体適合性糸には、ポリエチレンテレフタレート(PET)ポリエステルを含むポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリビニル、ポリメチルアセテート、ポリアミド、ナフタレンジカルボキシレン誘導体、正絹、及びポリテトラフルオロエチレンが含まれるがこれらに限定されない。さらに、合成糸の少なくとも一つは、金属糸またはガラスまたはセラミック糸または繊維であり得る。有用な金属糸には、ステンレス鋼、プラチナ、金、チタン、タンタル、またはNi-Co-Cr系合金から作製された、またはそれらを含む糸が含まれる。糸は、炭素、ガラスまたはセラミック繊維をさらに含んでもよい。糸は、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリナフタレン、ポリテトラフルオロエチレン等を含むがこれらに限定されない熱可塑性材料から作製されることが望ましい。糸は、マルチフィラメント、モノフィラメント、またはスパンタイプのものであり得る。選択される糸の種類及びデニールは、生体適合性があり移植可能なプロテーゼ、より具体的には、望ましい特性を有する血管構造を形成する方法で選択され得る。
【0113】
いくつかの実施形態では、医療デバイスシステム、細長いシャフト、リリースワイヤ、医療デバイス、リリース機構、イントロデューサ、及び/またはマイクロカテーテル等は、適切な治療薬を含み、及び/またはこれによって処理されてもよい。適切な治療薬のいくつかの例には、抗血栓剤(ヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、及びPPack(デキストロフェニルアラニンプロリンアルギニンクロロメチルケトン)等)、抗増殖剤(エノキサパリン、アンギオペプチン、平滑筋細胞の増殖を阻害可能なモノクローナル抗体、ヒルジン、アセチルサリチル酸等)、抗炎症剤(デキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、スルファサラジン、メサラミン等)、抗腫瘍/抗増殖/抗有糸分裂剤(パクリタキセル、5-フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、エンドスタチン、アンギオスタチン、チミジンキナーゼ阻害剤等)、麻酔剤(リドカイン、ブピバカイン、ロピバカイン等)、抗凝固剤(D-Phe-Pro-Argクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、抗トロンビン化合物、血小板受容体拮抗薬、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン、プロスタグランジン阻害剤、血小板阻害剤、及びマダニ抗血小板ペプチド等)、血管細胞増殖促進剤(増殖因子阻害剤、増殖因子受容体拮抗剤、転写活性化剤、翻訳促進剤等)、血管細胞増殖阻害剤(増殖因子阻害剤、増殖因子受容体拮抗剤、転写抑制剤、翻訳抑制剤、複製阻害剤、阻害抗体、増殖因子に対する抗体、増殖因子と細胞毒からなる二官能分子、抗体と細胞毒からなる二官能分子等)、コレステロール低下剤、血管拡張剤、内因性血管作用メカニズムに干渉する薬剤が含まれ得る。
【0114】
この開示は、多くの点で、例示に過ぎないことを理解されたい。本発明の範囲を超えることなく、特に形状、サイズ、及びステップの配置に関して、詳細に変更を加えることができる。これには、適切な範囲で、他の実施形態で使用されている一例の実施形態の特徴のいずれかを使用することが含まれ得る。当然ながら、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲が表現される言語で定義される。