(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】電気装置および電気機器
(51)【国際特許分類】
H05K 7/18 20060101AFI20231107BHJP
【FI】
H05K7/18 L
(21)【出願番号】P 2022566173
(86)(22)【出願日】2022-05-24
(86)【国際出願番号】 JP2022021258
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 宏輝
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-94279(JP,A)
【文献】実開昭60-58041(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体形状を有するラックと、
前記ラック内に前記ラックの前方から出し入れ可能に収容される電気機器とを備え、
前記ラックは、
前記ラックの幅方向に離間して配置され、各々が鉛直方向に延在する第1および第2の柱部材と、
前記第1および第2の柱部材に対して前記ラックの後方向にそれぞれ離間して配置され、各々が前記鉛直方向に延在する第3および第4の柱部材と、
前記第1および第3の柱部材の間に配置され、前記ラックの前後方向に延在する第1のガイド部材と、
前記第2および第4の柱部材の間に、前記幅方向において前記第1のガイド部材と対向して配置され、前記前後方向に延在する第2のガイド部材とを含み、
前記電気機器は、
直方体形状を有しており、前記幅方向における第1および第2の側面が前記第1および第2のガイド部材によってそれぞれ支持されるケースと、
前記第1の側面の内面に取り付けられ、前記ケースが前記ラックの前方向へ移動することを規制する第1の規制部材と、
前記第2の側面の内面に、前記幅方向において前記第1の規制部材と対向して取り付けられ、前記ケースが前記ラックの前記前方向へ移動することを規制する第2の規制部材とを含み、
前記電気機器が前記ラック内に収容されている状態において、
前記第1の規制部材は、前記前後方向において前記第1および第3の柱部材の間に位置し、
前記第2の規制部材は、前記前後方向において前記第2および第4の柱部材の間に位置
し、
前記第1の規制部材は、
前記第1の側面に形成された第1の開口部を通じて前記ケースから前記幅方向に突出した状態において前記第1の柱部材に当接するように構成された第1のラッチ部材と、
前記第1のラッチ部材を突出状態に向けて付勢する第1の弾性部材と、
前記第1のラッチ部材を前記幅方向に移動させて前記ケースの内部に没入させるための第1の解除部材とを含み、
前記第2の規制部材は、
前記第2の側面に形成された第2の開口部を通じて前記ケースから前記幅方向に突出した状態において前記第2の柱部材に当接するように構成された第2のラッチ部材と、
前記第2のラッチ部材を突出状態に向けて付勢する第2の弾性部材と、
前記第2のラッチ部材を前記幅方向に移動させて前記ケースの内部に没入させるための第2の解除部材とを含む、電気装置。
【請求項2】
前記第1の解除部材は、前記第1のラッチ部材に連結される第1の基部と、前記第1の基部に接合されて前記第1の開口部から露出する第1の屈曲部とを含み、前記第1の開口部を通じて前記ケースの外側から前記第1の屈曲部に与えられる押圧力に応じて前記第1のラッチ部材を前記幅方向に移動させ、
前記第2の解除部材は、前記第2のラッチ部材に連結される第2の基部と、前記第2の基部に接合されて前記第2の開口部から露出する第2の屈曲部とを含み、前記第2の開口部を通じて前記ケースの外側から前記第2の屈曲部に与えられる押圧力に応じて前記第2のラッチ部材を前記幅方向に移動させる、請求項
1に記載の電気装置。
【請求項3】
前記第1の解除部材は、前記ケースの内部において、前記第1のラッチ部材の前方に配置され、
前記第2の解除部材は、前記ケースの内部において、前記第2のラッチ部材の前方に配置される、請求項
2に記載の電気装置。
【請求項4】
前記ラックの前方から前記電気機器が前記ラックに挿入されるときには、
前記第1の弾性部材は、前記第1の柱部材から前記第1のラッチ部材に与えられる当接力を受けて前記第1のラッチ部材を前記ケースの内部に没入させるとともに、前記第1のラッチ部材を前記突出状態に復帰させる付勢力を前記第1のラッチ部材に付与し、
前記第2の弾性部材は、前記第2の柱部材から前記第2のラッチ部材に与えられる当接力を受けて前記第2のラッチ部材を前記ケースの内部に没入させるとともに、前記第2のラッチ部材を前記突出状態に復帰させる付勢力を前記第2のラッチ部材に付与する、請求項
1に記載の電気装置。
【請求項5】
前記第1のラッチ部材の前記第1の側面からの突出部分の表面は、前記ラックの前記後方向に向けて凸となっている曲面形状を有しており、
前記第2のラッチ部材の前記第2の側面からの突出部分の表面は、前記ラックの前記後方向に向けて凸となっている曲面形状を有している、請求項
4に記載の電気装置。
【請求項6】
前記ラックは、前記鉛直方向に互いに間隔をあけて配置された複数の前記第1のガイド部材と、前記鉛直方向に互いに間隔をあけて配置された複数の前記第2のガイド部材とを含み、複数の前記電気機器を前記鉛直方向に積層して収容する、請求項1から
5のいずれか1項に記載の電気装置。
【請求項7】
直方体形状を有するラック内に前記ラックの前方から出し入れ可能に収容される電気機器であって、
前記ラックは、
前記ラックの幅方向に離間して配置され、各々が鉛直方向に延在する第1および第2の柱部材と、
前記第1および第2の柱部材に対して前記ラックの後方向にそれぞれ離間して配置され、各々が前記鉛直方向に延在する第3および第4の柱部材と、
前記第1および第3の柱部材の間に配置され、前記ラックの前後方向に延在する第1のガイド部材と、
前記第2および第4の柱部材の間に、前記幅方向において前記第1のガイド部材と対向して配置され、前記前後方向に延在する第2のガイド部材とを含み、
前記電気機器は、
直方体形状を有しており、前記幅方向における第1および第2の側面が前記第1および第2のガイド部材によってそれぞれ支持されるケースと、
前記第1の側面の内面に取り付けられ、前記ケースが前記ラックの前方向へ移動することを規制する第1の規制部材と、
前記第2の側面の内面に、前記幅方向において前記第1の規制部材と対向して取り付けられ、前記ケースが前記ラックの前記前方向へ移動することを規制する第2の規制部材とを備え、
前記電気機器が前記ラック内に収容されている状態において、
前記第1の規制部材は、前記前後方向において前記第1および第3の柱部材の間に位置し、
前記第2の規制部材は、前記前後方向において前記第2および第4の柱部材の間に位置
し、
前記第1の規制部材は、
前記第1の側面に形成された第1の開口部を通じて前記ケースから前記幅方向に突出した状態において前記第1の柱部材に当接するように構成された第1のラッチ部材と、
前記第1のラッチ部材を突出状態に向けて付勢する第1の弾性部材と、
前記第1のラッチ部材を前記幅方向に移動させて前記ケースの内部に没入させるための第1の解除部材とを含み、
前記第2の規制部材は、
前記第2の側面に形成された第2の開口部を通じて前記ケースから前記幅方向に突出した状態において前記第2の柱部材に当接するように構成された第2のラッチ部材と、
前記第2のラッチ部材を突出状態に向けて付勢する第2の弾性部材と、
前記第2のラッチ部材を前記幅方向に移動させて前記ケースの内部に没入させるための第2の解除部材とを含む、電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気装置および電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2009-218326号公報(特許文献1)には、電子機器ユニットのラック搭載構造が開示されている。電子機器ユニットの両側面にはサイドアダプタが取り付けられている。ラックにはラック装着具が取り付けられている。電子機器ユニットは、サイドアダプタを介してラック装着具に搭載される。電子機器ユニットの引き出し時には、サイドアダプタに設けられたストップ部と、ラック装着具に設けられた脱落防止用部材とが係合することによって、電子機器ユニットの脱落が防止される。
【0003】
特開2014-216350号公報(特許文献2)には、筐体ユニット収納ラックが開示されている。ラック本体は、筐体ユニットが載置される棚板を有している。棚板の前端部には、上方に突出する係合部材が取り付けられている。筐体ユニットの後端部には、筐体ユニットの底面から突出する被係合部材が取り付けられている。筐体ユニットがラック本体から前方に向けて引き出されたときに、被係合部材が係合部材に係合することによって、筐体ユニットの脱落が阻止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-218326号公報
【文献】特開2014-216350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1および2に開示されたラック搭載構造は何れも、ラックに係合部材を取り付け、かつ、ユニットの外面に被係合部材を取り付ける構成を採用している。この構成によれば、ラックからユニットを引き出す際に、係合部材と被係合部材との係合によって、ラックからユニットが脱落することを防止することができる。
【0006】
しかしながら、その一方で、上記構成では、ラックおよびユニットの各々が大型化すること、および各々の形状の複雑化することが懸念される。ラックおよびユニットの大型化は、装置全体の大型化および重量化に繋がる。ラックおよびユニットの形状の複雑化は、ラックおよびユニットの加工および組立にかかるコストを増加させることが懸念される。
【0007】
また、ラックからユニットを完全に引き出すためには、係合を解除する作業が必要となるため、ユニットを出し入れする作業に時間および手間を要し、作業性を低下させることが懸念される。
【0008】
本開示はこのような課題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、電気装置を大型化および複雑化することなく、ラックから電気機器が脱落することを防止することができる電気装置および電気機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る電気装置は、直方体形状を有するラックと、ラック内にラックの前方から出し入れ可能に収容される電気機器とを備える。ラックは、第1から第4の柱部材と、第1および第2のガイド部材とを含む。第1および第2の柱部材は、ラックの幅方向に離間して配置され、各々が鉛直方向に延在する。第3および第4の柱部材は、第1および第2の柱部材に対してラックの後方向にそれぞれ離間して配置され、各々が鉛直方向に延在する。第1のガイド部材は、第1および第3の柱部材の間に配置され、ラックの前後方向に延在する。第2のガイド部は、第2および第4の柱部材の間に、幅方向において第1のガイド部材と対向して配置され、前後方向に延在する。電気機器は、ケースと、第1および第2の規制部材とを含む。ケースは、直方体形状を有しており、幅方向における第1および第2の側面が第1および第2のガイド部材によってそれぞれ支持される。第1の規制部材は、第1の側面の内面に取り付けられ、ケースがラックの前方向へ移動することを規制する。第2の規制部材は、第2の側面の内面に、幅方向において第1の規制部材と対向して取り付けられる。第2の規制部材は、ケースがラックの前方向へ移動することを規制する。電気機器がラック内に収容されている状態において、第1の規制部材は、前後方向において第1および第3の柱部材の間に位置する。第2の規制部材は、前後方向において第2および第4の柱部材の間に位置する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、電気装置を大型化および複雑化することなく、ラックから電気機器が脱落することを防止することができる電気装置および電気機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態に係る電気装置の構成例を示す概略的な外観図である。
【
図2】
図1に示した電気機器の構成を示す斜視図である。
【
図5】ラックから電気機器を引き出す方法を説明する図である。
【
図6】ラックから電気機器を引き出す方法を説明する図である。
【
図7】ラックから電気機器を引き出す方法を説明する図である。
【
図8】ラックに電気機器を挿入する方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰り返さないものとする。
【0013】
(電気装置の構成例)
図1は、実施の形態に係る電気装置の構成例を示す概略的な外観図である。以下、本開示の思想に基づく電気装置の一例として、無停電電源装置について説明する。ただし、本開示に係る電気装置は、無停電電源装置に限定されず、任意の電気機器をラック内に収容する構成を備えていればよい。
【0014】
図1には、電気装置100の筐体の外表面を構成している板状の部材を取り外し、筐体の内部を視認可能とした状態が示されている。
図1に示すように、電気装置100は、ラック110を備えている。無停電電源装置を構成する複数の電気機器20は、ラック110内に収容されている。
【0015】
以下の説明では、電気装置100を正面側から見たときのラック110および電気機器20の左右方向(幅方向)をX軸方向とし、ラック110および電気機器20の前後方向(奥行き方向)をY軸方向とし、ラック110および電気機器20の鉛直方向(高さ方向)をZ軸方向とする。なお、+X方向はX軸方向を右側に進む方向であり、-X方向は+X方向とは反対方向である。+Y方向はラック110の正面から背面に向かう方向であり、-Y方向は+Y方向とは反対方向である。+Z方向はZ軸方向を上方に進む方向であり、-Z方向は+Z方向とは反対方向である。
【0016】
ラック110は、直方体形状の外形を有している。ラック110は、筐体を支持するための複数のフレーム部材を有している。複数のフレーム部材は、Z軸方向に延在する第1から第4の柱部材11~14を含んでいる。第1および第2の柱部材11,12は、X軸方向に互いに離間して配置されている。第3の柱部材13は、第1の柱部材11に対して+Y方向に離間して配置されている。第4の柱部材14は、第2の柱部材12に対して+Y方向に離間して配置されている。
【0017】
ラック110は、複数の第1のガイド部材15Aと、複数の第2のガイド部材15Bとを有している。複数の第1のガイド部材15Aは、各々、第1の柱部材11と第3の柱部材13との間に配置され、Y軸方向に延在している。複数の第1のガイド部材15Aは、Z軸方向に互いに間隔をあけて配置されている。
【0018】
複数の第2のガイド部材15Bは、各々、第2の柱部材12と第4の柱部材14との間に配置され、Y軸方向に延在している。複数の第2のガイド部材15Bは、Z軸方向に互いに間隔をあけて配置されている。複数の第1のガイド部材15Aと、複数の第2のガイド部材15Bとは、X軸方向において互いに対向する位置に配置されている。X軸方向において互いに対向して位置する一対のガイド部材15A,15Bは、電気機器20を下側から支持するための支持部材としての機能を有する。
【0019】
なお、支持部材は、X軸方向およびY軸方向に沿って平板状に形成された棚板であってもよい。この場合、電気機器20は棚板の上面に載置される。
【0020】
複数の電気機器20は、各々、直方体形状の外形を有しており、ラック110内に、Z軸方向に互いに間隔をあけて積み重ねられて収容されている。
図1の例では、複数の電気機器20は、同一の形状および大きさを有しているが、複数の電気機器20の間で形状および/または大きさが異なっていてもよい。
【0021】
複数の電気機器20は、複数のUPS(Uninterruptible Power Supply)ユニットと、少なくとも1つのバイパスユニットとを含んでいる。複数のUPSユニットおよび少なくとも1つのバイパスユニットは、図示しない入力端子および出力端子の間に電気的に並列に接続される。入力端子には交流電源が接続され、出力端子には負荷が接続される。
【0022】
UPSユニットは、直方体形状を有するケースの内部に、コンバータ、インバータ、双方向チョッパなどの電力変換器、コンデンサ、ならびにリアクトルを含む複数の電気部品を収容して構成されている。バイパスユニットは、直方体形状を有するケースの内部に、バイパススイッチを含む複数の電気部品を収容して構成されている。
【0023】
電気装置100の運用中に各電気機器20を保守点検したり新品へ交換することが容易となるように、ラック110は、ラック110の前方から各電気機器20を出し入れすることが可能に構成されている。
図1には、1台の電気機器20がラック110から引き出されている状態が示されている。
【0024】
図1に示すように、電気機器20は、ケースの底面が一対のガイド部材15A,15Bに支持された状態で、作業者によってラック110の前方向(-Y方向)に引き出される。このとき、電気機器20のY軸方向の重量バランスが崩れることによって、電気機器20がラック110から誤って脱落してしまう可能性がある。あるいは、作業者が電気機器20を勢いよく引き出したことによって、電気機器20がラック110から脱落してしまう可能性がある。
【0025】
このような電気機器20の脱落を防止するために、各電気機器20の内部には、電気機器20の前方への移動を規制するための規制部材30A,30Bが設けられている。規制部材30A,30Bは、電気機器20のX軸方向における2つの側面の内面にそれぞれ取り付けられている。第1の規制部材30Aと第2の規制部材30Bとは、X軸方向において互いに対向する位置に配置されている。
【0026】
規制部材30A,30Bは、後述するように、電気機器20をラック110の前方から引き出す場面において、その一部分が第1および第2の柱部材11,12にそれぞれ当接することによって、電気機器20の前方への移動を規制するように構成されている。
【0027】
(電気機器の構成)
図2は、
図1に示した電気機器20の構成を示す斜視図である。
図2には、電気機器20のケース21の内部の一部分を視認可能とした状態が示されている。
【0028】
図2に示すように、電気機器20は、直方体形状の外形を有するケース21を有している。ケース21の前面には一対のヒレ部22A,22Bが設けられている。ヒレ部22Aは、平板状の形状を有しており、ケース21の前面の+X方向における端部から+X方向に突出している。ヒレ部22Bは、平板状の形状を有しており、ケース21の前面の-X方向における端部から-X方向に突出している。
【0029】
ヒレ部22A,22Bの各々には、厚み方向に貫通する貫通孔24が形成されている。貫通孔24は、電気機器20をラック110に固定するために用いられる。電気機器20がラック110に収容された状態において、一対のヒレ部22A,22Bがボルトに代表される締結部材によって第1および第2の柱部材11,12にそれぞれ締結されることにより、電気機器20はラック110に固定される。
【0030】
ケース21は、第1の側面21Aと、第1の側面21Aと対向する第2の側面21Bとを有している。第1の規制部材30Aは、第1の側面21Aの内面に取り付けられている。第2の規制部材30Bは、第2の側面21Bの内面に取り付けられている。第1の規制部材30Aと第2の規制部材30Bとは、X軸方向において互いに対向する位置に配置されている。
【0031】
図1に示すように、電気機器20がラック110に収容されている状態において、第1の規制部材30Aは、Y軸方向において、第1の柱部材11と第3の柱部材13との間に配置されている。第2の規制部材30Bは、Y軸方向において、第2の柱部材12と第4の柱部材14との間に配置されている。
【0032】
このようにすると、電気機器20がラック110の前方に引き出される場合に、電気機器20が-Y方向に移動する途中で、規制部材30A,30Bの一部分を柱部材11,12にそれぞれ当接させることができる。規制部材30A,30Bの柱部材11,12に対する当接により、電気機器20の-Y方向への移動が規制される。その結果、
図1に示すように、電気機器20の一部分がラック110から引き出された状態で、電気機器20を落下させることなく保持することができる。
【0033】
なお、規制部材30A,30Bの各々は、規制部材30A,30Bの柱部材11,12に対する当接を解除するための機構を有している。この機構を用いて規制部材30A,30Bと柱部材11,12との当接を解除することにより、電気機器20の-Y方向の移動が許容される。したがって、電気機器20を-Y方向に移動させて、ラック110から電気機器20を完全に引き出すことができる。
【0034】
(規制部材の構成)
次に、
図3および
図4を参照して、規制部材30A,30Bの構成について説明する。
【0035】
図3は、第1の規制部材30Aの構成を示す斜視図である。
図3には、電気機器20のケース21の第1の側面21Aの一部分が拡大して示されている。
図3および
図4では、第1の規制部材30Aの構成の詳細について説明するが、第2の規制部材30Bも、第1の規制部材30Aと同じ構成を有している。
【0036】
図3に示すように、第1の規制部材30Aは、ラッチ部材32と、カバー部材33と、解除部材34と、固定部材36と、ベース部材38と、弾性部材(図示せず)とを含んで構成される。
【0037】
ラッチ部材32は、四角柱状の形状を有している。ラッチ部材32は、ケース21の内部に、X軸方向に延在するように配置されている。ラッチ部材32は、カバー部材33によって覆われている。カバー部材33の内部には、ラッチ部材32を突出状態に付勢するための弾性部材(図示せず)が設けられている。
【0038】
ケース21の第1の側面21Aには、矩形形状を有する開口部26が形成されている。ラッチ部材32の+X方向における端部は、開口部26を通じて第1の側面21Aから+X方向に突出している。ラッチ部材32の突出部分の表面は、+Y方向に向けて凸となっている曲面形状を有している。
【0039】
解除部材34は、ケース21の内部において、ラッチ部材32の前方に配置されている。解除部材34とラッチ部材32とは連結されている。解除部材34は、ラッチ部材32に連結される平板状の基部34Aと、平板状の屈曲部34Bとを有している。基部34Aは、ラッチ部材32と平行に配置されている。屈曲部34Bは、基部34Aの+X方向における端部に設けられている。
【0040】
屈曲部34Bは、Y軸方向に延びている。屈曲部34Bは、開口部26から露出している。基部34Aと屈曲部34Bとは略直角を形成している。屈曲部34Bは、基部34Aの+X方向の端部に接合されている。一枚の板材が曲げ変形されて、基部34Aおよび屈曲部34Bが一体に形成されてもよい。
【0041】
ベース部材38は、ラッチ部材32と解除部材34との間に設けられている。カバー部材33は、ベース部材38に取り付けられている。ベース部材38は、ラッチ部材32を支持する第1の面と、解除部材34の基部34Aを支持する第2の面とを有している。ベース部材38には、第1および第2の面を貫通する貫通孔39が形成されている。貫通孔39は、X軸方向に延びる形状を有している。
【0042】
ラッチ部材32および解除部材34の基部34Aは、貫通孔39の内部で連結されている。これにより、ラッチ部材32および解除部材34の連結部分を、貫通孔39の内部において、X軸方向に移動させることが可能となっている。
【0043】
固定部材36は、ラッチ部材32、カバー部材33、ベース部材38および解除部材34を第1の側面21Aの内面に固定するための部材である。ベース部材38は、固定部材36に取り付けられている、ベース部材38は、固定部材36を介して、第1の側面21Aに固定されている。
【0044】
図3は、ラッチ部材32および解除部材34の連結部分が、貫通孔39の内部において第1の側面21Aに近い位置に配置されている状態を示している。この状態では、ラッチ部材32は、+X方向における端部が、開口部26を通じて第1の側面21Aから+X方向に突出した状態となっている。
【0045】
ここで、ラッチ部材32の第1の側面21Aからの突出部分の長さは、電気機器20を-Y方向へ移動させたときに、ラッチ部材32の+X方向における端部と第1の柱部材11とが当接するように設定されている。ラッチ部材32の+X方向における端部と第1の柱部材11とが当接することによって、電気機器20の-Y方向への移動が規制される。これによると、
図1に示したように、電気機器20の一部分がラック110から引き出された状態で、電気機器20を落下させることなく保持することが可能となる。
【0046】
図3に示した状態から、ラッチ部材32および解除部材34の連結部分を、ケース21の内側に向けて-X方向に移動させることにより、
図4に示すように、ラッチ部材32の+X方向における端部をケース21の内部に没入させることができる。
【0047】
図4は、第1の規制部材30Aにおいて、ラッチ部材32がケース21の内部に没入している状態を示している。
図4に示すように、作業者は、第1の側面21Aに形成された開口部26から露出している解除部材34の屈曲部34Bを、ケース21の内側に向けて押圧することによって、ラッチ部材32および解除部材34の連結部分を、ケース21の内側に向けて-X方向に移動させることができる。連結部分の移動により、ラッチ部材32の+X方向における端部がケース21の内部に没入される。その結果、ラッチ部材32の+X方向における端部と第1の柱部材11との当接が解除され、電気機器20の-Y方向への移動が許容される。
【0048】
上述したように、第2の規制部材30Bは、第1の規制部材30Aと同じ構成を有している。したがって、第2の規制部材30Bは、第2の側面21Bに形成された開口部26からラッチ部材32の-X方向における端部が-X方向に突出している状態(
図3参照)において、ラッチ部材32の-X方向における端部と第2の柱部材12とが当接するように構成されている。このラッチ部材32と第2の柱部材12との当接によって、電気機器20の-Y方向への移動が規制される。
【0049】
さらに、第2の規制部材30Bは、ラッチ部材32の-X方向における端部がケース21の内部に没入している状態(
図4参照)において、ラッチ部材32の-X方向における端部と第2の柱部材12との当接が解除される。これにより、電気機器20の-Y方向への移動が許容される。
【0050】
(電気機器の引き出し方法)
次に、
図5から
図7を参照して、ラック110から電気機器20を引き出す方法について説明する。以下に説明する方法は、電気機器20を保守点検する場面または電気機器20の新品に交換する場面において実施される。
【0051】
図5から
図7は、ラック110の第2の柱部材12付近を上面から見た図である。
図5から
図7では、
図2に示す電気機器20のケース21の上面を取り外し、ケース21の内部を視認可能とした状態が示されている。
【0052】
図5に示すように、ケース21の第2の側面21Bの内面には、第2の規制部材30Bが取り付けられている。第2の規制部材30Bは、
図3および
図4で示した第1の規制部材30Aと同一の構成を有している。すなわち、第2の規制部材30Bは、ラッチ部材32と、カバー部材33と、弾性部材35と、解除部材34と、ベース部材38と、固定部材36とを有している。
【0053】
ラッチ部材32は、ケース21の内部に、X軸方向に延在するように配置されている。ラッチ部材32は、カバー部材33によって覆われている。カバー部材33の内部には、ラッチ部材32を突出状態に付勢するための弾性部材35が設けられている。弾性部材35は、例えばコイルばねである。
【0054】
ラッチ部材32の-X方向における端部は、開口部26を通じて第2の側面21Bから-X方向に突出している。ラッチ部材32の突出部分の表面は、+Y方向に向けて凸となっている曲面形状を有している。
【0055】
解除部材34は、ケース21の内部において、ラッチ部材32の前方に配置されている。解除部材34の基部34Aとラッチ部材32とは連結されている。解除部材34の屈曲部34Bは、Y軸方向に延びており、開口部26から露出している。
【0056】
ベース部材38は、ラッチ部材32と解除部材34との間に設けられている。ベース部材38には、X軸方向に延びる貫通孔39(図示せず)が形成されている。ラッチ部材32および解除部材34の基部34Aは、貫通孔39の内部で連結されている。ベース部材38は、固定部材36を介して、第2の側面21Bに固定されている。
【0057】
電気機器20をラック110の前方から引き出す場合には、作業者は、図中白矢印で示すように、電気機器20を-Y方向に移動させる。電気機器20が-Y方向に移動する途中において、
図5に示すように、第2の側面21Bから-X方向に突出している、ラッチ部材32の-X方向における端部が、第2の柱部材12に当接する。これにより、電気機器20の-Y方向への移動が規制される。電気機器20は、一部分がラック110から引き出された状態で保持される。
【0058】
次に、作業者は、
図6に示すように、開口部26から露出している解除部材34の屈曲部34Bを、ケース21の内側に向けて押圧する。この押圧力を受けて、屈曲部34Bは、図中の矢印A1に示すように、ケース21の内側に押し込まれる。これにより、解除部材34の基部34Aとラッチ部材32との連結部分は+X方向へ移動する。ラッチ部材32の-X方向における端部は、ケース21の内部に没入される。ラッチ部材32がケース21の内部に没入されたことによって、ラッチ部材32の-X方向における端部と第2の柱部材12との当接が解除され、電気機器20の-Y方向への移動が許容される。
【0059】
作業者は、第1の規制部材30Aにおける解除部材34の屈曲部34Bと、第2の規制部材30Bにおける解除部材34の屈曲部34Bとを同時に押圧することによって、第1の規制部材30Aと第1の柱部材11との当接、および、第2の規制部材30Bと第2の柱部材12との当接を同時に解除することができる。これにより、作業者は、電気機器20を-Y方向へさらに移動させて、電気機器20をラック110から完全に引き出すことが可能となる。
【0060】
図6の状態から電気機器20を-Y方向へさらに移動させると、
図7に示すように、弾性部材35は、-X方向における端部が開口部26から突出するように、ラッチ部材32を付勢する。この付勢力を受けて、解除部材34の基部34Aとラッチ部材32との連結部分は、図中矢印A2に示すように、-X方向へ移動する。その結果、ラッチ部材32の-X方向における端部は、再び、開口部26を通じて第2の側面21Bから-X方向に突出している状態となる。
【0061】
(電気機器の挿入方法)
次に、
図8を参照して、ラック110に電気機器20を挿入する方法について説明する。
【0062】
図8は、ラック110の第2の柱部材12付近を上面から見た図である。
図8では、
図5から
図7と同様に、
図2に示す電気機器20のケース21の上面を取り外し、ケース21の内部を視認可能とした状態が示されている。
【0063】
電気機器20をラック110に収容する場合には、上述した引き出し方法とは逆の手順に従って、ラック110の前方から電気機器20をラック110内に挿入する作業が行われる。
【0064】
作業者は、図中白矢印で示すように、電気機器20を+Y方向へ移動させる。電気機器20が+Y方向に移動する途中において、
図8に示すように、第2の側面21Bから-X方向に突出している、ラッチ部材32の-X方向における端部が、第2の柱部材12に当接する。
【0065】
ただし、ラッチ部材32は、第2の柱部材12と当接する部分が+Y方向に向けて凸となっている曲面形状を有している。そのため、第2の柱部材12からラッチ部材32に与えられる当接力は、ラッチ部材32を+X方向に移動させる力に変換される。この力を受けて、図中矢印A3に示すように、解除部材34の基部34Aとラッチ部材32との連結部分が+X方向へ移動し、ラッチ部材32がケース21の内部に押し込まれる。ラッチ部材32がケース21の内部に押し込まれたことによって、ラッチ部材32の-X方向における端部と第2の柱部材12との当接が解除される。したがって、電気機器20の+Y方向への移動が許容される。
【0066】
図8の状態から電気機器20を+Y方向へさらに移動させると、弾性部材35は、-X方向における端部が開口部26から突出するように、ラッチ部材32を付勢する。この付勢力を受けて、解除部材34の基部34Aとラッチ部材32との連結部分は-X方向へ移動する。その結果、ラッチ部材32の-X方向における端部は、再び、開口部26を通じて第2の側面21Bから-X方向に突出している状態となる。
【0067】
以上説明したように、本実施の形態によれば、電気機器20の幅方向における側面21A,21Bの内面にそれぞれ取り付けられた規制部材30A,30Bによって、ラック110の前方への移動が規制されるため、電気機器20の外面に被係合部材を取り付ける必要がない。よって、電気機器20が大型になること、および、電気機器20の外形が複雑になることを防ぐことができる。
【0068】
さらに、本実施の形態では、ラック110には被係合部材と係合する係合部材を取り付ける必要がないため、ラック110が大型になり、かつ、その形状が複雑になることを防ぐことができる。これによると、電気装置100全体が大型化および重量化することを回避することができる。また、ラック110および電気機器20の加工および組立にかかるコストが増加することを抑制することができる。
【0069】
また、本実施の形態によれば、作業者は、規制部材30A,30Bに設けられた解除部材34を押圧するという簡易な作業によって、ラック110と電気機器20との当接を解除して、ラック110から電気機器20を完全に引き出すことができる。さらに、ラック110に電気機器20を収容するときには、電気機器20をラック110内に挿入したときに規制部材30A,30Bとラック110との当接が自動的に解除されるため、作業者は、当接を解除する作業を要することなく、電気機器20を容易にラック110内に収容することができる。この結果、ラック110に電気機器20を出し入れする際の作業性を向上させることが可能となる。
【0070】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0071】
11~14 柱部材、15A,15B ガイド部材、20 電気機器、21 ケース、21A,21B 側面、22A,22B ヒレ部、24,29 貫通孔、26 開口部、30A,30B 規制部材、32 ラッチ部材、33 カバー部材、34 解除部材、34A 基部、34B 屈曲部、35 弾性部材、36 固定部材、100 電気装置、110 ラック。
【要約】
ラック(110)は、第1から第4の柱部材(11~14)と、第1および第2のガイド部材(15A,15B)とを含む。電気機器(20)のケースは、幅方向における第1および第2の側面が第1および第2のガイド部材(15A,15B)によってそれぞれ支持される。第1のおよび第2の規制部材(30A,30B)は、ケースの第1および第2の側面の内面にそれぞれ取り付けられ、ケースがラック(110)の前方向へ移動することを規制する。第2の規制部材(30B)は、幅方向において第1の規制部材(30A)と対向して取り付けられる。電気機器(20)がラック(110)内に収容されている状態において、第1の規制部材(30A)は、前後方向において第1および第3の柱部材(11,13)の間に位置する。第2の規制部材(30B)は、前後方向において第2および第4の柱部材(12,14)の間に位置する。