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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】スプレー混合消防装置
(51)【国際特許分類】
   A62C 31/05 20060101AFI20231107BHJP
【FI】
A62C31/05
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022569289
(86)(22)【出願日】2021-01-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(86)【国際出願番号】 CN2021072358
(87)【国際公開番号】W WO2021143892
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】202010062276.8
(32)【優先日】2020-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522288946
【氏名又は名称】シャンドン ハオシン ジエシ ニュー マテリアル テクノロジー カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ジリアン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ハオ
(72)【発明者】
【氏名】マ,ティンギュ
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ,メイキン
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ,ジンシュイ
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102886111(CN,A)
【文献】特表2004-509716(JP,A)
【文献】特開平05-115576(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0038101(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプレー混合消防装置であって、水スプレーノズル(1)及び粉末スプレーノズル(2)を含み、前記水スプレーノズル(1)は、前記粉末スプレーノズル(2)の外部に周設されており、前記粉末スプレーノズル(2)の粉末スプレー口(4)は、前記水スプレーノズル(1)の水スプレー口(3)の後方に設けられていることを特徴とするスプレー混合消防装置。
【請求項2】
前記粉末スプレーノズル(2)内から噴出された消火剤粉末は、前記水スプレーノズル(1)内から噴出された水流と前記消防装置外部の空中で混合されることを特徴とする請求項1に記載のスプレー混合消防装置。
【請求項3】
前記消火剤粉末はポリアクリル酸ナトリウム樹脂粉末であることを特徴とする請求項2に記載のスプレー混合消防装置。
【請求項4】
前記粉末スプレーノズル(2)の粉末スプレー口(4)と前記水スプレーノズル(1)の水スプレー口(3)とは、粉末と液体が噴出されるときに閉鎖パイプから離れて外気と接触する位置を指すことを特徴とする請求項1に記載のスプレー混合消防装置。
【請求項5】
前記粉末スプレーノズル(2)の粉末スプレー口(4)と前記水スプレーノズル(1)の水スプレー口(3)との軸方向の距離Aは3cmより大きいことを特徴とする請求項1に記載のスプレー混合消防装置。
【請求項6】
前記粉末スプレーノズル(2)はさらに、前記粉末スプレーノズル(2)の前部に設けられている着脱可能な止水スリーブ(11)を含むことを特徴とする請求項1に記載のスプレー混合消防装置。
【請求項7】
前記粉末スプレーノズル(2)と前記水スプレーノズル(1)の管壁との間に排水空間(12)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のスプレー混合消防装置。
【請求項8】
前記水スプレーノズル(1)の前部には外側スリーブ(10)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のスプレー混合消防装置。
【請求項9】
前記水スプレーノズル(1)は水スプレー管(5)に接続され、高圧水流又は水ミストをスプレーすることができ、前記粉末スプレーノズル(2)は粉末スプレー管(6)に接続され、前記粉末スプレー管(6)は粉末貯蔵タンク(7)に接続され、前記粉末貯蔵タンク(7)は高圧ガス源(8)に接続されることを特徴とする請求項1に記載のスプレー混合消防装置。
【請求項10】
粉末消火剤と水のスプレー混合方法であって、粉末スプレーノズル(2)の粉末スプレー口(4)内から噴出された高吸水性樹脂消火剤粉末を、粉末スプレーノズル(2)から噴出して、粉末スプレーノズル(2)の周囲の水スプレー口(3)内から噴出された水流と水スプレーノズル(1)の外部の空気中で混合し、前記水スプレーノズル(1)は前記粉末スプレーノズル(2)外側の周りに設置され、前記粉末スプレーノズル(2)の粉末スプレー口(4)は、前記水スプレーノズル(1)の水スプレー口(3)の後方に設けられていることを特徴とする粉末消火剤と水のスプレー混合方法。
【請求項11】
前記消火剤粉末はポリアクリル酸ナトリウム樹脂粉末であることを特徴とする請求項10に記載の粉末消火剤と水のスプレー混合方法。
【請求項12】
前記消火剤粉末は水スプレー口(3)の位置の後方から噴出されることを特徴とする請求項11に記載の粉末消火剤と水のスプレー混合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消防設備技術の分野に関し、特に、粉末消火剤と液体をスプレーする混合消防装置及び粉末消火剤と水のスプレー混合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、水は依然として最もよく使われる消火剤であり、安価で入手しやすく、環境に汚染がないなどの利点がある。しかし、水の流動性が良いため、火場にスプレーした後、大部分の水が流失し、浪費をもたらす。また、火災面積が大きく、火勢の発展が速く、燃えやすく、消火の難易度が高い大型火災に対して、水で消火すると火災の蔓延を抑えることしかできず、速やかに効果的に消火することは難しい。現在広く使用されている乾燥粉末消火剤は、消火効果が向上しているが、一部のタイプの火災には効果がなく、残留物による環境汚染が深刻である。
【0003】
高吸水性樹脂(Super Absorbent Resin、SAR)は、カルボキシル基、アミド基などの強い親水性基を含有し、かつ一定の架橋度を有する水膨潤型と三次元網状構造の新型機能高分子材料である。水にも有機溶剤にも溶けず、強い吸水性と保水性という独特の性能を持っている。従来の吸水材料、例えばスポンジ、綿、セルロース及びシリカゲルと比べ、高吸水性樹脂の吸水量は大きく、自重の数十倍から数千倍の液体水を迅速に吸収することができ、しかも保水性が強く、加熱加圧下でも水を失いにくいとともに、高分子材料のいくつかの特性を有する。これらの特徴から、高吸水性樹脂に対する研究の発展は極めて迅速で、すでに農林園芸、医療衛生、食品工業、石油化学工業、建築材料などの多くの分野に広く応用されている。
【0004】
高吸水性樹脂は発展が速く、種類が多く、その分類方法も多く、主に原料由来、親水化方法、親水基の種類、架橋方法、製品形態によって分類されるが、最もよく使われる分類方法は原料由来によって分類され、デンプン系高吸水性樹脂、セルロース系高吸水性樹脂、合成系高吸水性樹脂、タンパク質系高吸水性樹脂、ブレンドと複合系高吸水性樹脂などを含む。
【0005】
高吸水性樹脂が自重の数百倍から数千倍の水を吸収できるのは、2つの条件を備えているからである。一つ目は、カルボキシル基、水酸基、アミド基及びスルホン酸基などの親水性基を有し、吸水を可能にすることである。二つ目は、三次元空間ネットワーク構造を持ち、水に溶けず、吸水を現実にすることである。高吸水性樹脂は、親水基を有し、かつ軽く架橋した三次元ネットワークポリマーであり、大量の水分を吸収し、膨潤しても水分を保持し、流出しないことができ、吸水倍率が高く、吸水速度が速く、保水性能が強いなどの利点を有する。
【0006】
高吸水性樹脂、特にポリアクリル酸系高吸水性樹脂の高分子ヒドロゲルを消火分野に応用する利点は以下の通りである。
【0007】
1、高吸水性樹脂では、高分子電解質の側基が水に触れた後、対応するアニオン親水基とカチオン(可動イオン)がイオン化され、主鎖ネットワーク骨格にはすべて負に帯電したアニオンであり、移動できず、その間の反発作用はネットワーク拡張の動力を生じる。カチオンは一定の活動性を持っているが、ネットワーク骨格の反対の電荷に引き付けられ、束縛されているため、ネットワーク中に存在し、このようにネットワーク内部のカチオン濃度は外部水中のカチオン濃度より大きく、イオンはネットワーク内外で浸透圧を生じ、また、高分子電解質自身は親水能力の強い基を持っているため、水は短い時間内に大量に三次元ネットワークに入ることができる。高温条件下では、大量の自由水を固定した高吸水性樹脂はかなりの熱容量を有し、水を失うときに大量の熱を消費することができ、熱源に対する効果的な遮断を形成し、火勢の製御に有利である。
【0008】
2、高吸水樹脂は水を吸収した後に弾性ゲルを形成し、かつこのゲル粒子の間は緊密に連結され、間に空気が入ることができる隙間がなく、ヒドロゲル状態で火源と空気の接触を遮断することができ、闇火の再発を防止し、すでにゲルに覆われた火場内の物体を保護し、それによって迅速な消火効果を達成する。
【0009】
3、高吸水樹脂は水を吸収した後ゲルを形成し、優れた化学安定性、熱安定性及び相容性を有し、かつ粘度が非常に高く、良好な粘着能力を有し、垂直表面に散布した後、物体表面を覆って落下せず、十分な付着厚さを形成することができ、火場内の未燃焼物体に対する防火有効性を効果的に高めることができる。
【0010】
4、高吸水樹脂系高分子粉未は、貯蔵、輸送などの面で安全であり、貯蔵(密閉吸水防止)の安定性は2年以上に達し、毒性がない。強火の中で、熱を受けて水を失うと、樹脂は燃焼して二酸化炭素と水になり、人と家畜に対して無毒である。火が消し止められた後、火場に残った樹脂は数ヶ月以内に自然分解され、人と環境に対して無毒で汚染がなく、環境にやさしい。
【0011】
5、高吸水樹脂粉末は比重が軽く、吸水能力が非常に強く、自重の300倍以上の水を極めて短い時間で吸収することができ、吸水ゲル全体における樹脂粉末の含有量は一般的に水重量の0.05~0.5%の間である。一般的に0.1%前後で、わずかな高吸水樹脂粉末だけで大量の消火ゲルを形成することができ、消火防火効果が優れ、しかも水分を継続的に吸収することができ、余分な水量があちこちに流れることによる二次破壊を回避し、節水作用がある。
【0012】
6、高吸水樹脂粉末は弱酸性、弱アルカリ性又は中性であり、消防設備を腐食しない。
【0013】
従来技術において、アクリルポリマーを用いてゲルを製造して消火する技術がある。例えば、中国特許CN107497088Aには、ヒドロゲル消火剤及びその実施方法が開示され、前記ヒドロゲル消火剤の使用方法は、ヒドロゲル消火剤を水に溶解し、攪拌時間を1分以下とし、質量濃度3~5‰の溶液を製造し、消火に使用することができる。CN107789085Aには、新型高分子ゲル水系消火剤が開示され、使用のとき、新型環境保護高分子ゲル水系消火剤を600~1000倍質量の水に加え、3~5分間攪拌した後、高分子ゲルを形成して消火に用いることができる。CN207101696Uには、新型環境保護消防車が開示され、まず材料を高分子消火材料貯蔵タンクに入れ、消火材料を消防砲管路に入れ、水を水タンクから消防ポンプの入水口を通じて消防砲管路に入れ、回転混合装置の作用で水と高分子材料を螺旋パイプ内で十分に混合させ、その後、消防水砲から放出する。CN100444912Cには、高吸水性樹脂吸水ゲル消火剤の応用が開示され、合成系樹脂ポリアクリル酸ナトリウムを1000倍の水と混合し、30分で吸水ゲルを生成し、このゲルを水鉄砲で火に吹き付けることができ、ポリアクリル酸ナトリウム微粉を1000倍の水と混合し、共にスプレーガンから着火部位に吹き付け、15秒~60秒内でゲルを生成して消火作用を果たす。
【0014】
しかしながら、これらの高吸水性樹脂消火剤の使用方法には、いずれも重大な欠陥がある。本発明者らの長期試験により、高吸水性樹脂粉末は吸水後に急速に膨張し、吸水量の増加につれて粘度が大きくなり、最終的には凝固状態に近くなり、撹拌後の樹脂は非常に粘稠で凝固するやすく、これらの固体状態に近いゲル状吸水性樹脂を適切な方法で放出し、正確的に言えば、人力や機械を使って一塊ずつ投げるのではなく、散布することは困難である。さらに、樹脂は膨張の過程で、消防設備のパイプをひどく塞ぎ、スプレーが持続できなくなり、ひいては水の流れが悪くなったり管路が閉鎖されたりして設備が破損することもある。従って、上記の消火方式の使用場面は大きく制限されている。
【0015】
なお、従来技術の消防設備では、粉末状消火剤と水流の混合について、通常、独立の入力管路に出力管路を積層するように加える技術案は用いられている。例えば、中国特許CN201591928Uには、管内管式複合噴流消防砲が開示され、図1を参照して、各種消火剤を別々に入力し、且つ異なる消火剤をそれぞれ内外管によって輸送することで、混合液と超微細乾燥粉が輸送過程で互いに混合せず、噴出口で合流するだけであるため、それぞれの特性を完全に保持し、さらに直流圧力水又は泡混合液の壁付着作用により、良好な疎水性を有する超微細乾燥粉をより遠い距離に連れて行くことができる。中国特許CN207722267Uには、水と超微細乾燥粉消火剤の混合比を調整できる消防銃が開示され、図2を参照すると、銃体8の先端にスプレーノズルが設けられ、銃体8の後端に独立した送粉管と進水管が設けられ、送粉管の前部は進水管の前部内部に嵌設され、送粉管の前部と進水管の前部との間に通水空洞があり、送粉管の先端と進水管の先端はいずれもスプレーノズルに接続されている。
【0016】
例えば、中国特許CN105148435Aには、多機能消防同軸ノズル装置が開示され、図3を参照すると、外管路の消火媒体を輸送する外軸管路の入口に接続する接続口、内管路の消火媒体を輸送する内軸管路の入口に接続する接続口、外軸管路バルブ、内軸管路バルブ、同軸外管路、同軸内管路、外管路ノズル、内管路ノズル及び内外管路を含む。2セットの独立した消火ノズル装置を巧みに組み合わせて一体になり、同じ又は異なる性質、又は同じ性質の異なる機能の2種類の消火媒体を同時に火場にスプレーすることができる。また例えば、中国特許CN109806532Aには、複合噴流消火スプレー装置が開示され、図4を参照すると、泡又は水系消火剤を輸送するための、一端に第1の排出口が設けられる第1の接続管と、窒素ガス駆動下の乾燥粉末を輸送するための、一端に前記第1の排出口と同心に設ける第2の排出口が設けられる第2の接続管と、一端が前記第1の排出口に接続される外スプレー管と、前記外スプレー管の内側に位置し、且つ前記外スプレー管と同軸に設けられる内スプレー管と、を含み、前記内スプレー管の一端は前記第1の接続管に挿通され、窒素ガス駆動下の乾燥粉末を輸送するために用いられ、前記内スプレー管の外壁と前記第1の排出口の内壁との間に、泡又は水系消火剤を輸送するための通路が設けられている。
【0017】
上記消防水砲又は水鉄砲は、従来の粉末消火剤、特に乾燥粉末消火剤に対して設計されているが、乾燥粉末消火剤は通常、水に溶けず、水を吸収せず、また、市販されている他の消火剤も吸水による体積膨張や粘度の増大がないため、このような消防水砲は乾燥粉末消火剤を使用する際に問題がなく、すべての消火剤粉末は水流によって強く洗い流され、消防砲から離れる。だが、高吸水性樹脂を消火剤として使用する場合、高吸水性樹脂は実際に水に溶けるも疎水性でもなく、水分子を高分子構造の内部に素早く吸い込んで固定し、強力な吸着力を持つゲルを形成することができるため、水のスプレーと粉末のスプレーが同時に行うにつれて、強力な水流がすべての樹脂粉末を持ち去ることができず、粉末スプレー口付近に付着する吸水性樹脂が多くなり、一定時間働いた後に粉末スプレー口が完全に塞がれるという深刻な問題があり、しかも、高吸水性樹脂の各性能指標が優れているほど、このような問題は深刻になる。弊社が行った試験では、外周の水流は様々な形態で内層の粉末スプレー口付近に流入したり、スパッタリングしたり、滴り落ちたりし、粘性が大きく、凝固が非常に速いため、吸水した樹脂はノズル部位に徐々に堆積し、火山状のような樹脂堆積を形成し、粉末スプレー通路を徐々に圧縮し、最後に粉末噴出口を完全に閉鎖する。最悪の場合、水流が直接粉末スプレー口に流れ、凝固した樹脂がごく短時間で粉末スプレー口内部のパイプを塞いでしまう可能性がある。
【0018】
また、消火剤が他のタイプの粉末(例えば、水に可溶な粉末)である場合、特に消火の開始段階及び終了後の水を止める段階において、水が粉末スプレーノズルに逆流する状況もある。もちろん、消防で使用される粉末消火剤は、通常、溶解性に優れた物質であり、水に触れると大量に溶解し、その結果も非常に深刻である。一方は、望ましくない有毒物質や消防設備を腐食させる化学品が生じやすく、他方は、溶解過程が激しく、望ましくない強い反応や大量の熱が発生しやすい。
【0019】
これに鑑みて、消火剤粉末、特に高吸水性樹脂粉末と水流との迅速な混合を実現するとともに、混合後のゲル溶液を所定の位置に連続的に安定して輸送することができる消防装置は市場に求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明が解決しようとする技術的問題は、消火剤粉末、特に高吸水性樹脂粉末と水流との迅速な混合を実現するとともに、混合後のゲル溶液又は消火溶液を所定の位置に連続的に安定して輸送することができる消防装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の技術案は、スプレー混合消防装置を提供し、水スプレーノズルと粉末スプレーノズルを含み、水スプレーノズルは粉末スプレーノズルの外部に周設されており、粉末スプレーノズルの粉末スプレー口は、水スプレーノズルの水スプレー口の後方に設けられている。
【0022】
粉末スプレーノズル内から噴出された消火剤粉末と水スプレーノズル内から噴出された水流とは、消防装置外の空中で混合される。
【0023】
消火剤粉末は、高吸水性樹脂粉末、特にポリアクリル酸ナトリウム樹脂粉末であることが好ましい。
【0024】
粉末スプレーノズルの粉末スプレー口と水スプレーノズルの水スプレー口は、粉末と液体が噴出されるときに閉鎖パイプから離れて外気と接触する位置を指す。
【0025】
粉末スプレーノズルの粉末スプレー口と水スプレーノズルの水スプレー口との軸方向での距離は3cmより大きい。
【0026】
粉末スプレー口には着脱可能な止水スリーブが設けられている。
【0027】
粉末スプレーノズルと水スプレーノズルの管壁との間には排水空間が設けられている。
【0028】
水スプレーノズルの前部には外側スリーブが設けられている。
【0029】
水スプレーノズルは水スプレー管に接続され、高圧水流又は水ミストをスプレーすることができ、粉末スプレーノズルは粉末スプレー管に接続され、粉末スプレー管は粉末貯蔵タンクに接続され、粉末貯蔵タンクは高圧ガス源に接続される。
【0030】
本発明はまた、粉末消火剤と水のスプレー混合方法を提供し、粉末スプレーノズルの粉末スプレー口内から噴出された高吸水性樹脂消火剤粉末は、装置中央の粉末スプレーノズルから噴出され、粉末スプレーノズル周囲の水スプレー口内から噴出された水流とともに水スプレーノズル外部の空気中で混合される。消火剤粉末は、ポリアクリル酸ナトリウム樹脂粉末である。消火剤粉末は、水スプレー口の位置の後方から噴出される。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、従来技術に大量に存在する混合噴流消防設備と比べて、以下の利点がある。
【0032】
1、従来技術では、通常、水スプレー管を粉末スプレー管に嵌設接続する技術案が用いられ、粉末と水をよりよく混合し、水流の力を利用して粉末をより遠くに輸送することができるようにする。この設計構想は、消火剤が水に流され、水に触れると大量のゲル状物質が生じないことを前提としている。しかし、消火剤として高吸水性樹脂粉末を使用する場合、このような構造は、外層の水流が内層の粉末スプレー口に入る機会が多すぎて、粘度の非常に大きいゲルを形成して目詰まりを招くことになる。けれども、このような外水内粉の設計方式には、確かにそれなりの利点がある。例えば、粉末状消火剤は通常軽く、火場の気流環境は複雑で、しかも粉末は圧縮空気によって吹き出され、散布面は比較的に大きく、粉末を水柱の間に噴出すれば、すべての粉末が直接「水の壁」に衝突し、この方式では粉末の漏れが非常に少なく、混合も十分である。外水内粉設計の利点を発揮し、その欠点をできるだけ減らすために、当社は創造的に、粉末スプレーノズルの位置を水スプレーノズルと同じ平面又は実質的に同じ平面から、粉末スプレーノズルの位置を後ろに変える技術案を提出した。この技術案では、水流噴出位置と粉末噴出位置とが実質的に一定の距離を隔てた構造となっている。実験によると、水流が密閉されたパイプから強く噴出するため、周囲の圧力が低下した場合、水スプレー口近傍の管壁と大量の水霧や水玉が生じ、これらの水分子が隣の粉末スプレー口にスパッタされると、粉末スプレー口の閉塞を招く。粉末スプレー口後置の設計を採用すれば、水流を直線又は収束して噴出した後に飛び散った水玉は、粉末スプレー口付近の領域に入る機会がほとんどなく、粉末スプレー口が水に触れる可能性を最大限に減らし、実際には粉末スプレー口を水スプレー口の後ろに隠すことに相当する。実験の結果、この構造の消防装置は、閉塞を起こさずに数十分連続して作動することができる。
【0033】
2、実験によると、大部分の粉末スプレー口に流れる水は、噴水管の内壁に沿って流れるため、水スプレーノズルと粉末スプレーノズルとの間に隔水空間を用意することで、粉末スプレー口に流れる水を直接隔水空間に流入させ、隔水空間から再排出又は一時保存し、水が直接粉末スプレー口に流れるのを避けることができる。また、水柱が粉末スプレー管の外壁に密着して噴出しないことを保証することができ、径方向においても水スプレー口と粉末スプレー口を一定の距離B離間させたことに相当し、軸方向に離間したAを加えて、水スプレー口からスパッタされた水しぶきが粉末スプレー口に与える影響を最大限に低減することができる。同時に、隔水空間の存在により、水スプレー口の直径が実際に大きくなり、噴出した中空水柱の空中での凝集点を粉末スプレー口からより遠くさせ、樹脂粉末が水柱に入ることに有利である。
【0034】
3、水流は環状管の周囲から強力に噴出するため、水柱の形状は、通常の水管から水柱を噴出する形状とは明らかに区別され、略中空環状水柱を呈し、且つこの水柱は水スプレー口から一定距離離れた位置に集まる。このように、樹脂粉末と水流は、従来のスプレー口内部又は出口部位で混合することから、スプレー口から一定距離の空中で混合することになり、水流が粉末スプレー口付近の領域に入る機会を大幅に減少させ、高吸水性樹脂、特にポリアクリル酸ナトリウム樹脂の物理的性質を最大限に利用することで、高吸水量と高吸水率を、消火剤としてポリアクリル酸ナトリウムを使用する障害とならず、優位性に変えた。樹脂粉末と水流は、任意の閉鎖又は半閉鎖の空間内で混合する必要はなく、直接空中で混合することで、吸水後に生じる高粘性が消火剤散布に与える影響を最大限に解決することができる。水スプレー管から噴出された強力な水流又は水霧は、樹脂で形成されたゲルを遠い場所に輸送することができ、しかも水流が急速に噴出する際には、水柱内部にも一定の負圧を生じることができ、噴出後に気流とともに漂う樹脂粉末を水流に吸入することができ、樹脂粉末の密度が低い粒子が小さいという特徴をうまく利用している。同時に、粉末噴出の圧力も実際の必要に応じて低減することができる。
【0035】
4、本発明は、粉末スプレー口の外に止水スリーブを設置し、スパッタした水しぶきがほとんど止水スリーブに遮られ、止水スリーブの外壁に粘着することで、内壁にある粉末スプレー口がゲル又はペーストに塞がれず、スプレー管が汚染されず、非常に簡単な部品を利用して、最も大きな技術問題を解決した。実際には、水砲の多くは人工的に操作されているため、水流噴出の方向、水量の大きさ、スプレーの水圧に大きな変動が生じる可能性が高いため、粉末スプレー口には、水を吸ったゲル状物質が堆積することは避けられず、これらの物質がある程度蓄積されると、粉末スプレー口と水スプレー口の面積が減少し、消防設備の使用効率が大幅に低下する。これに対して、私たちは水スプレーノズルの先端部を着脱可能な止水スリーブに設計する。一方、止水スリーブの直径は粉末スプレー口よりずっと大きく、しかも通常、止水スリーブは置き時計の形を呈し、開放口も内部空間も大きいため、堆積物が形成されれば、ドライバなどの工具を直接使用して堆積物を取り出すことができる。実験によると、堆積物が形成されれば、互いに非常に緊密につながって一体となり、取り出すときも一度に全部取り出すことができる。一方、使用中に何らかの原因で粉末スプレー口が詰まったら、すぐに止水スリーブを交換して、迅速に作業を再開する目的を達成できる。この方法は最も迅速に閉塞問題を解決することができる。実験によると、粉末スプレー口の閉塞は全ての閉塞の90%以上を占め、水スプレー口の閉塞は一般的に、粉末スプレー口が閉塞した後に連鎖反応を引き起こすためである。同時に、粉末スプレー口の閉塞は、粉末スプレーノズルのパイプを塞いでも、ポリアクリル酸ナトリウムの強力な吸水能力と密封能力のため、すぐにパイプを塞ぐので、長距離のパイプを塞ぐことはない。従って、止水スリーブを取り外すとき、粉末スプレーノズル内の堆積物も一緒に全体的に取り出すことになる。また、他の消火剤を使用する場合、粉末スプレー口からの水流の逆流による汚染も、止水スリーブを洗浄することで解決でき、簡便で容易である。
【0036】
5、本発明は消防分野における消火剤として従来の高吸水性樹脂を使用する使用方式を変更し、従来の予め混合してから使用することから、スプレーしながら使用するようになり、消火効率が大幅に向上し、追加の攪拌設備も不要となり、従来の水柱消火方式を変更せず、水砲の中央に粉末スプレー装置を1組加えただけに相当し、噴出する水柱に粉末をスプレーする新しい消火方式を形成し、水柱によって粉末を持って輸送し、水と粉末は輸送しながら混合して吸収し、発火点に達する数秒以内に十分な吸水混合を完成し、水流が発火点に達するとき、消火ゲルもちょうど形成され、従来の消火快速反応の利点に全く影響しない。
【0037】
6、粉末スプレーノズルと水スプレーノズルが重なる構造は、従来の二相噴流混合設備と大きな違いがなく、製作プロセスが簡単で、構造が簡単で、外形が小さくて美しく、占用空間が小さく、取り付け及び修理又は部品の交換が便利で速い。生産メーカーにとって、コストのバランスを追求する場合、既存の消防水砲、水鉄砲又は水龍に実質的な改造を行う必要がなく、本発明の技術的効果を達成するために、既存の水スプレーノズルと粉末スプレーノズルを利用し、水スプレー口をいくつかのバッフルと管壁構造を通じて適切に外側に延伸するだけでよく、改造コストを大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】従来技術における多相噴流水砲の構造概略図である。
図2】従来技術における多相噴流水鉄砲の構造概略図である。
図3】従来技術における多相噴流水砲の構造概略図である。
図4】従来技術における多相噴流水砲の構造概略図である。
図5】本発明の一実施例の消防装置の構造概略図である。
図6】本発明の一実施例の消防装置の端面スプレー口の位置概略図である。
図7】本発明の一実施例の消防装置のスプレー口の位置の概略断面図である。
図8】本発明の一実施例の消防装置のスプレー口の位置の概略断面図である。
図9】本発明の一実施例の消防装置のスプレー口の位置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。以下の実施例は本発明の技術案を前提として実施し、詳細な実施形態と具体的な操作過程を提供するが、本発明の保護範囲は以下の実施例に限定されない。
【0040】
図5を参照する。本発明は消防設備技術分野に関し、スプレー混合消防装置を提供して開示し、水スプレーノズル1と粉末スプレーノズル2を含み、水スプレーノズル1は粉末スプレーノズル2の外部に周設されており、粉末スプレーノズル2の粉末スプレー口4は、水スプレーノズル1の水スプレー口3の後方に設置されている。
【0041】
通常、消防装置はいくつかの部品、例えば、水ポンプ、高圧ポンプ、パイプ、バルブ、水受け口、制御装置などを含んでいるが、具体的に本発明では、2つのコアの部分、即ち粉末をスプレーする装置及び水をスプレーする装置だけを含む。これら2つの装置の設置位置が適切であれば、本発明の発明目的を達成することができる。当社の前の期間の試験は、主に従来技術における混合噴流設備の改造をめぐって行われ、従来技術には粉末と高圧水柱が一緒に噴出して消火する混合噴流設備がすでに存在しているため、開発コストが省け、試験コストが低い。しかし、一連のテストを経て、途中でいくつかの品種の高吸水性樹脂を交換したが、いずれも良好なスプレー効果を達成できなかった。従来の三相又は二相混合噴流消防装備は、水スプレーノズルと粉末スプレーノズルが互いに嵌設されており、水スプレーと粉末スプレーが同時に行われ、水と粉末が互いに包まれて噴出している。高圧水柱の圧力が非常に大きく、水線間の衝突が激しいため、スパッタされた水しぶきは、粉末スプレー口の周囲に入りやすいが、高吸水性樹脂粉末が従来の粉末消火剤と比べて最大の違いは、水に溶解せず、疎水性でもなく、水に触れると急速に膨張し、粘度が急速に増大してゲル状になることであり、徐々に固体状態になってきたゲルは、粉末スプレー口周囲の内壁を塞ぎ、最終的には粉末スプレー口を完全に閉鎖し、消火剤としての樹脂が噴出できなくなる。ある状況で、例えば、高圧水流が吐出された直後や閉じた直後、水流が直接粉末スプレー口に流れ、スプレー口にゲルを形成して直接粉末スプレー口を閉鎖することがよくある。
【0042】
この問題に鑑みて、粉末スプレーノズルの位置を、水スプレーノズルと同じ平面又は実質的に同じ平面から、粉末スプレーノズルの位置を後ろに変える技術案を創造的に提出した。なお、粉末スプレーノズル2の粉末スプレー口4と水スプレーノズル1の水スプレー口3とは、粉末と液体を噴出するときに閉鎖パイプから離れて外気と接触する位置を指す。水スプレー口3は必ずしも設備全体の管口ではない。この場合、水スプレーノズル1と粉末スプレーノズル2は、少なくとも装置の前部に独立したパイプを有しており、水流が直接粉末スプレーノズル2の外管壁から噴出し、ひいては粉末スプレー口4付近で水しぶきが飛び散ることを回避することができる。例えば、図4に示すような消防装置では、粉末スプレー口は管口の後方にあるが、明らかに、この装置の水スプレーノズルの頭部にスリーブが設けられているため、その管口と水スプレー口は重なっておらず、水スプレー口は粉末スプレー口とほぼ同じ平面内にあり、水流は水スプレーノズルと粉末スプレーノズルの管壁からなる閉鎖空間から噴出されると、水スプレー口から噴出されると考えられる。実験の結果、閉鎖パイプから開放空間に入ると、圧力の変化は高速噴出の水柱に最大程度のスパッタリング水しぶきを生じさせるとともに、構造変化部位で生じる衝突水しぶきも明らかになる。この技術案では、水流噴出位置と粉末噴出位置とが実質的に一定距離離れた構造となっている。両者のスプレー口は、端面から見て距離が近いが、軸方向の距離Aが効果的に長くなり、粉末スプレー口4は、スパッタリング水しぶきが最も多い水スプレー口2から一定の緩衝距離がある。この設計では、消火剤粉末、特にポリアクリル酸ナトリウム樹脂粉末は、密度が低くて粒子が小さいため、圧力ガスの作用の下で依然として高い速度で中央から周囲の高圧水柱に直接スプレーされることができ、そしてポリアクリル酸ナトリウム樹脂粉末の優れた吸水速度のため、迅速に水流に加え、水流とともに発火点に向かって飛ぶことができ、樹脂粉末は高圧水柱の強い負圧牽引下で、管壁に大量に付着することはない。
【0043】
図7~9を参照する。粉末スプレー口4の位置は、水スプレー口3の位置の後方にある。高吸水性樹脂粉末は、水スプレーノズル1の水スプレー口3の後方から水流にスプレーされる。この設計は、粉末スプレー口4と水スプレー口3との距離を効果的に長くすることができ、閉塞しやすい粉末スプレー口を水玉がスパッタ不可能な場所に配置し、粉末スプレー口4の閉塞問題をほぼ根絶することができる。このような設計が実現できるのは、主に粉末の噴出自体が一定の圧力を持つことを考慮し、粉末が短距離で大規模な飛散が発生しないことを保証することができ、第二に、高圧水柱の強大な負圧の作用の下で、密度の軽い樹脂粉末がよく吸引されることができ、第三に、必要な場合、止水スリーブ11を増設する方式を採用して粉末の飛散と水濡れを緩和することができる。これにより、ポリアクリル酸ナトリウム樹脂粉末の利点を十分に利用して発揮することができ、出口の閉塞や逆流しやすいという欠点を回避することができる。
【0044】
本発明の消防装置は、2つの物質の混合の観点のみから、必ずしも従来のスリーブ式混合噴流システムよりも混合効果が優れているとは限らないが、新しい消火剤粉末を使用することによる新たな問題を解決する。高吸水性樹脂粉末、特にポリアクリル酸ナトリウム樹脂粉末を消火剤として使用するとき、優れた技術的効果を奏し、ポリアクリル酸ナトリウム樹脂粉末の特性を十分に発揮する。最初は発散面が大きいため混合効果が不完全でも、水柱が発火点に到達する過程で、ポリアクリル酸ナトリウム粉末は依然として水柱中の水分子を大量に吸収し、発火物体に付着した後も、300~500倍の体積以上を吸収するまで、水分子を吸収し続け、優れた消火効果を達成する。
【0045】
粉末スプレーノズル2内から噴出された高吸水性樹脂粉末が水スプレーノズル1内から噴出された水流と消防装置外の空中で混合される。理論的には、粉末スプレー口4が粉末を噴出する方向と水スプレー口3が水を噴出する方向とは交わるべきである。本発明の設計の下で、水スプレーノズル1は内向きに傾斜していないが、進水管の直径は水スプレーノズル1より小さいため、噴出過程において外向きに高速拡散する過程があり、このように、水平噴出の際、高圧水流噴出の方向は、管壁の屈折により水スプレーノズル1の中心軸線にわずかに収束するため、粉末スプレーノズルの中央から直線的に噴出される粉末と斜めに交わることができ、固液のさらなる混合に有利となる。この状況は、外側スリーブ10が設けられている場合により顕著になる。水スプレーノズル1の内部構造には様々な形態があるが、水流が最終的に噴出する方向は、粉末の噴出方向に対して傾斜している。実際には、高圧水柱も管口から一定距離のところに集まっているので、粉末スプレー口4から噴出した樹脂粉末は、粉末スプレーノズルの中央から高圧水柱に噴出されることができ、これにより、高圧水柱によって生じた水カーテンを最大限に利用して、浮遊する粉末を水柱の液面に遮断することができる。場合によっては、水スプレーノズル1と粉末スプレーノズル2の形状はあまり規則的ではないかもしれないが、水流と粉末が設計した方向に沿って噴出することに影響せず、水スプレーノズル1と粉末スプレーノズル2の内部に形成されたスプレー通路の形状が完全に対称であることを確保することができる。水スプレーノズル1と粉末スプレーノズル2はそれぞれ独立して外に水流と粉末を噴出してから、管口から一定の距離で衝突して混合し、粉末スプレー口4がゲルによって塞がれる問題を比較的よく解決する。
【0046】
高吸水性樹脂粉末は、ポリアクリル酸ナトリウム樹脂粉末であることが好ましい。当社の試験により、すべての高吸水性樹脂粉末が最適な消火効果を達成できるわけではなく、各種の高吸水性樹脂粉末間の吸水混合及び状態遷移の効果が明らかに異なり、水を吸った後の高吸水性樹脂粉末を発火点にスプレーすれば、消火効果に違いがある。ポリアクリル酸ナトリウム樹脂粉末の吸水速度、吸水倍数、粘度、密度などの指標は、本発明の消防装置と混合方法とよく一致し、優れた消火効果を達成することができる。
【0047】
また、他のタイプの消火剤粉末、例えば、水に可溶な粉末消火剤を選択することもでき、アルギン酸ナトリウム、可溶性カルシウム塩などが記載されている文献もあるが、試験結果によると、水に溶ける速度が速い粉末の混合効果は比較的に良いである。実際には、本発明の消防装置は、理論的にはほぼ全ての種類の粉末消火剤を採用することができるが、混合効果だけで言えば、本発明は必ずしも従来技術より優れているとは限らない。例えば、疎水性乾燥粉末消火剤をスプレーする場合、ポリアクリル酸ナトリウム粉末をスプレーするよりもはるかに大きな圧力を用いる必要があり、このようにして基本的な混合効果を保証することができる。しかし、本発明は、単に混合効果の問題を解決するために設計されたものではなく、どのような構造で粉末パイプへの水流の影響を最小限にすることができるかが本発明の核心である。多くの粉末消火剤が使用されるときに採用される混合噴流構造は内粉外水のモードであり、消防車専用容器又はパイプ内で予混合してから噴出する必要があり、水スプレー管内に直接挿入されている粉末スプレー管もあり、残留水が粉末パイプに入りやすくになり、さらに汚染や閉塞を引き起こす。本発明の設計を採用すれば、まだ外水内粉であるが、粉末スプレー口と水スプレー口の相対位置が有効に調整され、水流と粉末の混合位置が最適化され、残留水がパイプに逆流する問題を解決でき、その後の清掃作業が比較的簡単で、汚染腐食が小さく、同様に有益な技術効果を得る。
【0048】
水スプレーノズル1と粉末スプレーノズル2は一体に設置され、水スプレーノズル1と粉末スプレーノズル2は通常、水スプレー装置と粉末スプレー装置の水スプレー口3と粉末スプレー口4に近い部分を指し、図6~9を参照し、一体モードでは、水スプレーノズル1と粉末スプレーノズル2は、1つの独立構造に集積され、2つの独立の噴出パイプを切り離すだけでよい。図7~9に示すように、水スプレー口3と粉末スプレー口4は、具体的な形状が柔軟で、開口面積も必要に応じて調整することができ、噴出する水柱の形状も中空水柱又はその他の適切な形状とすることができる。システム全体の構造は非常に簡潔で、体積が小さく、外観が美しく、設備は、訓練、運搬及び消火の使用中に、破損などの状況が発生しにくい。
【0049】
図7~9を参照し、粉末スプレーノズル2の粉末スプレー口4と水スプレーノズル1の水スプレー口3との軸方向の距離は3cmより大きい。粉末スプレー口4には止水スリーブ11が設けられている。止水スリーブ11と水スプレーノズル1の管壁との間には排水空間12が設けられている。粉末スプレーノズル2と水スプレーノズル1の管壁との間には排水空間12が設けられている。水スプレーノズル1の前部には外側スリーブ10が設けられている。
【0050】
通常の場合、粉末スプレー口4と水スプレー口3との距離はあまり長くなく、例えば、15cmを超えない。しかし、消火剤粉末の中には、密度が低く粒子が小さく、ガスによる分散作用が強いものがあるため、距離Aが長い場合、粉末スプレー口4に止水スリーブ11を設け、粉末スプレー口4以外の部分領域を閉鎖することができ、水のスパッタや逆流を避けるために重要である。特に、止水スリーブ11と水スプレーノズル1の管壁との間、又は粉末スプレーノズル2と水スプレーノズル1の管壁との間に排水空間12を設置することにより、水が粉末スプレー口4周囲に流れる可能性を効果的に低減することができる。もちろん、ここで言う設置とは、具体的な実体構造から構成されるだけでなく、水路に対して一定の設計を行い、水柱を一定の形状又は形態で噴出させることもでき、例えば、外管壁に沿って噴出させる場合、ノズル間に隔水空間が自然に形成され、スプレー口が互いに離れるようになる。また、この設計は、高圧水砲の実際の作業過程を同時に考慮する。水砲の使用角度は一般的に斜め上方に向いており、高圧水砲がバルブを開けた直後、バルブが開く過程があり、パイプには水が残存していないため、最初は高圧水柱が瞬時に形成されず、低圧から高圧になることがあり、この過程は通常、水砲内の水流が直接水スプレーノズル1の下に流れることを引き起こす。また、高圧水砲はスプレーを終えたばかりのとき、徐々にバルブを閉める必要があり、バルブを閉める過程で、パイプ中の圧力と水量が徐々に減少し、最後に噴出した水柱が圧力不足のため、直接落ち、この部分の水流が直接水スプレーノズル1の管壁内側に落ちることになる。水流が直接管壁に沿って粉末スプレー口4に流れると、必然的に粉末スプレー口4の閉塞を引き起こす。そして、ここに排水空間12を設計し、圧力不足で落ちる水流のほとんどが管壁に沿って排水空間12に流れることができるので、基本的に上記問題を解決することができる。実際に水スプレーノズル1の内部に流れる水量はそれほど大きくはないが、吸水ゲルを形成して粉末スプレー口4を塞ぐため、水を適切に排出したり一時的に保管したりすれば、管口を塞ぐ状況が発生しない。ここで、水スプレーノズル1の内部に入る水流の排出方式を柔軟に選択することができ、例えば、水スプレーノズル1の下に直接排水孔を設ける。
【0051】
水スプレーノズル1は消防水砲、消防水竜又は消防水鉄砲の一部に属し、水スプレー管5に接続され、高圧水流又は水ミストをスプレーすることができる。図5を参照すれば、本発明の消防装置は実際に、従来の混合噴流消防装置のほとんどから改造されたものであってもよく、元はどんな水砲又は水鉄砲であっても、粉末スプレー管と粉末スプレーノズルの位置の嵌設関係を一定の改造さえすれば、本発明の消防装置を得ることができる。これも本発明の大きな貢献であり、従来の大量の消防装置を簡単に放棄するのではなく、粉末消火剤の特徴に対して、従来の消防装置の中で最適な管路配置方式を選択し、粉末スプレー口を、水スプレー口と略同じ平面上に設置することから、水スプレー口の後方の一定距離のところに設置するように変更し、このようにして、消火剤としてポリアクリル酸ナトリウム樹脂粉末を使用する場合、その最大の効果を発揮し、システム全体のコストを最大限に削減した。
【0052】
図5を参照し、粉末スプレーノズル2は粉末スプレー管6に接続され、粉末スプレー管6は粉末貯蔵タンク7に接続され、粉末貯蔵タンク7は高圧ガス源8に接続される。これも混合噴流設備の従来の粉末スプレー装置の配置であり、もとろん、粉末スプレーノズルが他のタイプの粉末供給装置と直接接続しても、本発明の効果に影響を与えない。趣旨はやはり粉末スプレー装置から噴出される消火剤を水柱に噴出するとともに、水スプレー口3が飛び散った水しぶきが粉末スプレー口4に入らないことである。
【0053】
また、本発明はさらに粉末消火剤と水のスプレー混合方法を提供する。粉末スプレーノズル2の粉末スプレー口4内から噴出された高吸水性樹脂消火剤粉末は、装置中央の粉末スプレーノズル2から噴出され、粉末スプレーノズル2周囲の水スプレー口3内から噴出された水流と、水スプレーノズル1外部の空気中で混合される。消火剤粉末はポリアクリル酸ナトリウム樹脂粉末である。消火剤粉末は、水スプレー口3の位置の後方から噴出される。
【0054】
本発明の有益な点は、従来技術における消火剤としてポリアクリル酸ナトリウム樹脂粉末などを使用する技術的ボトルネックを解決し、ポリアクリル酸ナトリウム樹脂粉末などの粉末消火剤を順調に火場内にスプレーし続けることができ、粉末スプレー口の閉塞又はパイプの汚染を引き起しないことである。
【0055】
上記は本発明の好適な実施例にすぎず、本発明を限定するものではない。本発明の精神と原則の中で行われたすべての修正、等価置換、改良などは、本発明の保護範囲に含まれるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9