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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】クラック除去のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 29/00 20060101AFI20231107BHJP
   G01N 27/90 20210101ALI20231107BHJP
   B22D 11/12 20060101ALI20231107BHJP
   B23P 6/04 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
B22D29/00 G
G01N27/90
B22D11/12 Z
B23P6/04
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022576142
(86)(22)【出願日】2021-06-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-29
(86)【国際出願番号】 EP2021065994
(87)【国際公開番号】W WO2021254971
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2023-01-10
(31)【優先権主張番号】20180393.9
(32)【優先日】2020-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【弁理士】
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】リンデル、ステン
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-520319(JP,A)
【文献】特開昭53-109840(JP,A)
【文献】特開昭51-009048(JP,A)
【文献】特開昭60-184456(JP,A)
【文献】特開昭52-139648(JP,A)
【文献】特開昭59-104545(JP,A)
【文献】特開2008-238259(JP,A)
【文献】特開昭52-134487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 29/00
B22D 11/00-11/22
B23K 7/00-7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱間金属製造プロセス中に金属材料(M)中のクラック(C)を除去する方法であって、前記方法は、
- 誘導測定を利用するクラック検出ユニットによって前記熱間金属製造プロセス中にクラックの存在とそのクラック深さとを決定するステップ(S10)と、
- 前記クラック検出ユニットから既知の距離に配置されたクラック除去ユニットへクラック検出信号(D)とクラック深さ(CD)とを送信するステップ(S20)と、ここで、前記クラック除去ユニットは、カービング手段を噴出し、噴出される前記カービング手段の強度を変化させるように構成されたエジェクタを備え、
- 前記クラック検出信号に基づいて、少なくとも前記クラック深さに基づいて噴出される前記カービング手段の強度で前記エジェクタを作動させることによって、検出された前記クラックを除去するステップ(S30)と、を備え、
前記方法は、前記エジェクタと前記金属材料の表面との間の第1の距離を決定するステップ(S25)をさらに備え、
前記熱間金属製造プロセス中に検出された前記クラックを除去する前記ステップは、少なくとも前記クラック深さ及び前記第1の距離に基づいて、噴出される前記カービング手段の強度を設定することを備える、方法。
【請求項2】
検出された前記クラックを除去するための前記エジェクタの作動は、前記金属材料の速度と、前記クラック検出ユニットと前記クラック除去ユニットとの間の前記距離と、によって決定される、前記クラック検出ユニットによるクラック検出からの経過時間に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属材料の表面と前記クラック除去ユニットの前記エジェクタとの間の前記第1の距離を調節させるステップ(27)をさらに備える、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
クラック除去のプロセス中に前記クラック検出ユニットと前記クラック除去ユニットとの間の前記距離を一定に維持することを備える、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
エッジにおけるクラックとそのクラック深さとを検出するために前記金属材料(M)の前記エッジ(E)の外側に前記クラック検出ユニットの一部を用意するステップ(S5)をさらに備える、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
基準位置に対しての前記エッジの位置を決定するステップ(28)と、クラック除去のプロセス中に、前記エッジと前記クラック検出ユニットとの間の相対距離と、前記エッジと前記クラック除去ユニットとの間の距離と、を一定に維持するように前記クラック検出ユニット及び前記クラック除去ユニットの位置を調整するステップ(29)とをさらに備える、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記エジェクタはバーナであり、噴出される前記カービング手段は火炎であり、前記方法は、前記バーナへのガス供給量を制御することによって前記火炎の強度を調整するステップをさらに備える、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記金属材料の同じ動作線に沿って前記クラック検出ユニットと前記クラック除去ユニットとを配置するステップ(S7)を備える、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記金属材料(M)は、連続鋳造機から放出される熱間スラブである、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記熱間金属製造プロセスは、少なくとも500℃、又は少なくとも750℃の前記金属材料(M)の温度を示す、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
熱間金属製造プロセス中に金属材料(M)中のクラック(C)を除去するための装置(1、1’)であって、前記装置は、
- 送信コイル(32、3)と少なくとも1つの受信コイル(34、5)とを備えるクラック検出ユニット(30、16)と、
- 前記クラック検出ユニットから既知の距離(KD)に配置されたクラック除去ユニット(40、25)と、ここで、前記クラック除去ユニットは、カービング手段(44、27)を噴出し、噴出される前記カービング手段の強度を変化させるように構成された少なくとも1つのエジェクタ(42、26)を備え、
- 前記金属材料中に磁場を発生させるために既知のスキームに従って前記送信コイルに電流を送り、信号を発生させるために前記受信コイルによって前記磁場を検出し、クラックの存在とそのクラック深さ(CD)とを確立するために発生した信号を処理するように構成された制御ユニット(60、17)と、を、備え、
前記制御ユニットは、前記熱間金属製造プロセス中にクラックを検出すると、前記クラックを除去するように前記エジェクタを作動させ、少なくとも前記クラック深さに基づいて噴出される前記カービング手段の強度を設定するために、前記クラック除去ユニットへクラック検出信号(D)とクラック深さ(CD)とを送信するように構成されており、
前記制御ユニットは、前記エジェクタと前記金属材料の表面との間の第1の距離(FD)を決定し、少なくとも前記クラック深さ及び前記第1の距離に基づいて、噴出される前記カービング手段の強度を設定するように構成される、装置(1、1’)。
【請求項12】
前記制御ユニットは、前記金属材料の速度と、前記クラック検出ユニットと前記クラック除去ユニットとの間の前記距離と、によって決定される前記クラック検出ユニットによるクラック検出からの経過時間に基づいて前記エジェクタの前記作動のタイミングを計算するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記金属材料に対して前記クラック検出ユニット及び/又は前記クラック除去ユニットの位置を調整するように構成された位置調整装置(70、21)をさらに備える、請求項11又は12に記載の装置。
【請求項14】
前記クラック検出ユニット及び前記クラック除去ユニットは、共通プラットフォーム(50、20)を共有している、請求項1から1のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記クラック検出ユニットは、エッジにおけるクラック及びそのクラック深さの検出を可能にするために、送信コイルの一部が前記金属材料(M)の前記エッジ(E)の外側に配置されるように構成されている、請求項1から1のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記制御ユニットは、基準位置に対する前記エッジの位置を決定するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
前記エジェクタは、カービング手段として火炎を噴出するように構成されたバーナであり、前記火炎の強度を変化させるために前記バーナへのガス供給量を変化させる、請求項1から1のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、金属材料中のクラックの除去に関し、より詳細には、例えば鋳造など、金属製造プロセス中のクラック除去に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば金属シートまたは金属スラブなどの金属材料の物体からクラックを除去する方法が、今日産業において使用されている。一般に、クラックの周りの金属物体の一部は、クラックの代わりに溝を作り出すように除去される。溝は、クラックとは対照的に、金属物体の後続の処理において問題を引き起こさない、または少なくともほとんど問題を引き起こさない。これは、例えば、クラック除去後の金属スラブが金属スラブの厚さを減少させるために圧延される場合である。例えば、金属材料の一部の除去は、金属物体を研削することによって、または例えばガスバーナを用いて金属材料を溶融することによって、実行することができる。
【0003】
このように、冷たい金属物体上で観察されるクラックを除去することは、よく使用される措置である。まず、金属物体が、金属製造プロセス、例えば、鋳造機またはキャスタにおける鋳造において生産され、その後、しばしば数日間、室温に冷却される。続いて、金属物体は、通常大きい開いたクラックのみが見つけられる措置でクラックについて目視検査される。例えば、金属物体に光が照射されてもよく、クラックは、カメラなどの光学センサによって検出することができる。しかしながら、そのような光学的方法は、典型的には、金属材料の表面上に見えるクラックを検出するだけであり、金属材料中の色の変化が、光学センサによってクラックとして読み取られ得る。したがって、金属物体の表面は、典型的には、完全に清浄にされるとともに滑らかにされる必要がある。次いで、目視でまたは光学的に検出されたクラックを、上で例示された除去プロセスに従って十分な深さまで除去することができる。
【0004】
EP2535125において、熱間圧延鋼板を製造することができるスラブ処理方法およびスラブ処理が開示される。スラブ処理方法は、処理のためにスラブを用意するステップと、600℃未満の温度までスラブを冷却する前にスラブのエッジ領域をスカーフするステップと、スラブを後処理するステップとを備える。
【0005】
現在のクラック除去措置には、いまだにいくつかの欠点があり、したがって、金属材料の物体におけるクラック除去のための改善された方法および装置を提供することについて当業界における必要性がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、上記の問題の少なくとも一部を克服し、金属製造プロセス中にクラックを除去するための解決策を提供することであり、これは、先行技術の解決策に比べて少なくともある程度まで改善される。この目的、および他の目的は、以下において明らかになり、金属製造プロセス中に金属材料中のクラックを除去するための方法および装置によって達成される。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、金属製造プロセス中に金属材料中のクラックを除去する方法が提供される。この方法は、
- 誘導測定を利用するクラック検出ユニットによって金属製造プロセス中にクラックの存在とそのクラック深さとを決定するステップと、
- クラック検出ユニットから知られている距離に配置されたクラック除去ユニットへクラック検出信号とクラック深さとを送信するステップと、クラック除去ユニットは、カービング手段を噴出し、噴出されるカービング手段の強度を変化させるように構成されたエジェクタを備え、
- クラック検出信号に基づいて少なくともクラック深さに基づく噴出されるカービング手段の強度でエジェクタを作動させることによって検出されたクラックを除去するステップと、を備える。
【0008】
これによって、クラックは、金属材料をクールダウンする必要なく、金属製造プロセス中に、例えば、鋳造中に、効率的に除去され得る。また、クラック深さがエジェクタがカービング手段を噴出する強度を決定するための入力として使用されるとき、十分であるが過度でない量のカービング手段が、例えば、金属材料中に溝を生じさせることによって、クラックを除去するように噴出される。したがって、エジェクタは、設定強度を決定するための入力としてクラック深さを用いて噴出されるカービング手段の強度を変化させるように構成される。さらに、クラック検出ユニットから知られている距離にクラック除去ユニットを配置することと組み合わせて、金属製造プロセス中にクラックの存在とそのクラック深さとを検出するとともに、金属製造プロセス中にクラックの検出に基づいて検出されたクラックを除去することによって、クラックを除去するための効率的な手段が提供される。言い換えれば、クラック検出ユニットおよびクラック除去ユニットは、金属製造プロセス中にクラックを検出し、除去するために連続的で同期したやり方で動作している。
【0009】
したがって、少なくとも1つの例示実施形態によれば、クラック深さは、エジェクタがカービング手段を噴出する強度を決定するための入力として使用される。別の言い方をすれば、噴出されるカービング手段の強度は、クラック深さに応じて適合させられる。クラック深さは、決定されたクラックの決定されたクラック深さである。言い換えれば、エジェクタが噴出されるカービング手段の強度を変化させるように構成されるとき、それは、クラック深さに応じて噴出されるカービング手段の強度を変化させるように構成される。これによって、エジェクタは、決定されたクラック深さのものに対応する深さまで、それが検出されたクラックで金属材料中にカービングするように噴出されるカービング手段を適合させる。この措置は、続いて検出されたクラックについて繰り返される。したがって、エジェクタは、続いて検出されたクラックについてのそれぞれのクラック深さに応じて、噴出されるカービング手段の強度を変化させる。したがって、2つの続いて検出されたクラックについて、第1のクラックは第1のクラック深さを有し、第2のクラックは第2のクラック深さを有し、第2のクラック深さは第1のクラック深さよりも大きく、エジェクタは、第1のクラックを除去するときに第1のクラック深さに応じて噴出されるカービング手段の強度を変化または適合させ、続いて、第2のクラックを除去するときに第2のクラック深さに応じて噴出されるカービング手段の強度を変化または適合させ、第2のクラックを除去するときの噴出されるカービング手段の強度は、第1のクラックを除去するときの噴出されるカービング手段の強度よりも大きい。
【0010】
金属製造プロセス中は、すなわち、典型的には金属材料が金属製造機械、例えば鋳造機から放出された後に金属材料物体を製造するプロセス中、または鋳造プロセスの間に、しかし、金属材料を冷却する前に、成形するプロセス中として理解されたい。したがって、金属製造プロセスは、熱間金属製造プロセスと呼ばれる場合があり、熱間は、少なくとも500℃または少なくとも750℃の金属材料の温度を示す。典型的には、本方法は、連続鋳造機からすなわち熱間スラブ上に金属材料を放出するときに実行される。金属製造プロセス中は、以下における動作中と呼ばれる場合がある。本開示の金属材料は、金属物体、熱間金属物体、金属スラブ、金属シート、熱間金属スラブ、または熱間金属シートと呼ばれ得る。
【0011】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、クラックの存在とそのクラック深さとを決定するステップは、金属材料と非接触のやり方で実行される。クラック検出ユニットは、例えば、金属材料中に磁場を発生させるように配置および構成された送信コイルと、磁場を検出するように配置および構成された少なくとも1つの第1の受信コイルと、を備えることができる。したがって、クラック検出ユニットとクラック除去ユニットとの間の知られている距離は、例えば、送信コイルまたは受信コイルとエジェクタとの間の距離であり得る。より詳細には、クラックを検出するための誘導測定技法を使用するとき、対応する時間変動する電流を送ることにより生じる送信コイルが発生する時間変動する磁場によって金属材料中、例えば、金属シートまたは金属スラブ中に電流が誘導される。誘導電流が金属材料中のクラックに遭遇するときに、クラックは、誘導電流に対する障害を構成する。結果として、クラックは、クラックのない金属材料と比較してクラックにおける誘導電流を変化させる。変化させられた電流は、電流の周りの磁場に変化を与える。磁場の変化は、受信コイルによって測定され、それによって、例えば、知られている基準データとの比較によって、クラックが金属材料の検査された部分に存在することが決定され得る。そのようなクラック検出ユニットは、以下にさらに詳細に説明される。
【0012】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、検出されたクラックを除去するためのエジェクタの作動は、金属材料の速度と、クラック検出ユニットとクラック除去ユニットとの間の距離と、によって決定されるクラック検出ユニットのクラック検出からの経過時間に基づく。
【0013】
これによって、検出されたクラックを除去するためのエジェクタの作動の正確なタイミングが実現される。経過時間は、例えば、10秒と100秒との間であり得る。例えば、金属材料の速度は、約2cm/sであり得、クラック検出ユニットとクラック除去ユニットとの間の距離は、0.5mと1mとの間であり得る。代替として、金属材料の速度はより高速であり、経過時間はより小さくてもよく、例えば5秒未満または2秒未満などの例えば10秒未満である。したがって、エジェクタは、クラックを局所的に除去するために作動させられる。すなわち、クラックは、金属材料の不要な大部分をカービングすることなく、または金属材料中に溝をカービングすることなく除去される。典型的には、クラックがクラック深さに対応する深さまでエジェクタおよび噴出されるカービング手段によって除去されるとすぐに、エジェクタは、停止させられる。エジェクタを作動されたままにする時間は、例えば、決定されたクラックの長さに適合され、例えば、クラックの長さは、後述されるように推定または決定される。典型的には、クラックの幅は、長さおよび/またはクラック深さと比較して小さく、エジェクタは、典型的には、少なくともクラックの幅に対応する幅だけ噴出されるカービング手段を噴出するように構成される。
【0014】
したがって、少なくとも1つの例示実施形態によれば、クラック検出信号に基づいて少なくともクラック深さに基づく噴出されるカービング手段の強度でエジェクタを作動させることによって検出されたクラックを除去するステップは、検出されたクラックを局所的に除去することによって実行される。したがって、金属材料の検出されたクラックを備える部分は、噴出されるカービング手段によってカービングされる。言い換えれば、クラックおよび最も近くの周囲の金属材料は、噴出されるカービング手段によって除去される。
【0015】
典型的には、クラック検出ユニットおよびクラック除去ユニットは、動作中、連続的に金属材料の同じスポットに遭遇するように配置される。言い換えれば、クラック検出およびクラック除去は、継続的なおよび連続的なやり方で実行される。
【0016】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、方法は、金属材料の同じ動作線に沿ってクラック検出ユニットとクラック除去ユニットとを配置するステップを備える。したがって、クラック検出ユニットおよびクラック除去ユニットは、同じ動作線に沿って配置され、動作中に、対応するやり方で金属材料に遭遇するように構成される。例えば、クラック検出ユニットの検出エリアまたは検出幅は、クラック除去ユニットのクラック除去エリアまたはクラック除去幅に対応する。したがって、クラック検出ユニットによって検出されるクラックは、金属材料がその動作経路に沿って移動するときに、クラック除去ユニットによって遭遇される。別の言い方をすれば、クラック除去ユニットは、同じ縦軸に沿って配置されてもよく、縦軸は、金属材料の移動の主方向に平行である。少なくとも1つの例示実施形態によれば、金属材料は、金属材料にわたって横方向に延びる(すなわち、金属材料の表面と同じ水平面内で縦軸に直交する)異なるゾーンに分割されてもよく、そこにおいて、各ゾーンは、クラック検出ユニットとクラック除去ユニットとを備える。また、クラック検出ユニットおよびクラック除去ユニットのために同じ動作線を維持することによって、横方向移動は、回避され得る。熱間金属材料について、横方向移動の回避は、これが冷却に関する問題を引き起こし得るときに、好ましい。代替として、クラック検出ユニットおよびクラック除去ユニットは、金属材料に沿って横方向に移動させるための手段を備える。そのような実施形態について、クラックが検出されると、クラック検出ユニットおよびクラック除去ユニットの横方向移動は、典型的には、クラック除去ユニットがクラックが検出された同じ縦軸に沿って動作することを可能にするように止められる。
【0017】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、本方法は、エジェクタと金属材料の表面との間の第1の距離を決定するステップをさらに備え、ここにおいて、金属製造プロセス中に検出されたクラックを除去するステップは、少なくともクラック深さおよび第1の距離に基づいて噴出されるカービング手段の強度を設定することを備える。
【0018】
これによって、やはり、エジェクタと金属材料の表面との間第1の距離が、エジェクタがカービング手段を噴出する強度を決定するために入力としてとられ得る。したがって、クラック除去の改善された精度および/または改善された効率が提供される。
【0019】
金属材料の表面は、典型的には、水平面内に配置され、クラック検出ユニット(例えば、送信コイルおよび/または受信コイル)、またはクラック除去ユニット(例えば、エジェクタ)に対しての金属材料の表面からの距離は、水平面に直交する垂直距離であることを理解されたい。したがって、クラック検出ユニットおよびクラック除去ユニットは、水平面に平行な軸に沿った互いからある距離(すなわち、水平距離)に配置され、金属材料の表面からある垂直距離に共に配置される。したがって、第1の距離は、垂直距離である。
【0020】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、第1の距離は、クラック検出ユニット、例えば、クラック検出ユニットの受信コイルと金属材料の表面との間の測定された距離に基づく。測定された距離、および例えば、受信コイルおよびエジェクタ(またはエジェクタの穴)の知られている相互関連位置に基づいて、第1の距離は、決定される。測定された距離は、例えば、ある時間間隔にわたる受信コイルからの積分された信号に基づき得る。
【0021】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、本方法は、金属材料の表面とクラック除去ユニットのエジェクタとの間の第1の距離を適合させるステップをさらに備える。
【0022】
これによって、エジェクタは、金属材料の表面から有益な距離に配置することができる。また、噴出されるカービング手段の必要とされる強度は、第1の距離を適合させることによって適合され得る。エジェクタは、クラック除去ユニットが一斉に移動するように配置および構成され得、したがって、金属材料の表面とエジェクタとの間の第1の距離を適合させることによってエジェクタを移動させるとき、クラック除去ユニットは、移動する。いっそうさらに、問題が動作中に生じる場合、エジェクタおよび/またはクラック除去ユニットは、金属材料から離れるように迅速に移動され得る。それに応じて、クラック検出ユニットは、金属材料から離れるように移動され得る。
【0023】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、本方法は、クラック除去ユニットの動作中に第1の距離を一定に維持するステップをさらに備える。
【0024】
これは、例えば、クラック検出ユニットと金属材料の表面との間の測定された距離に応じて動作するいくつかの位置調整手段によって実現され得る。
【0025】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、方法は、クラック除去のプロセス中にクラック検出ユニットとクラック除去ユニットとの間の距離を一定に維持するステップを備える。
【0026】
すなわち、クラック検出ユニットとクラック除去ユニットとの間の水平距離は、一定である。したがって、クラックの除去、具体的には、クラック除去のタイミングは、クラック検出ユニットとクラック除去ユニットとの間の知られている距離が一定であるときに容易にされる。
【0027】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、クラック検出ユニットおよびクラック除去ユニットは、互いにすぐ近くに配置され、および/または金属材料に対して等しく移動するように構成される。
【0028】
クラック検出ユニットは、例えば、場合によっては共通プラットフォームを共有することによってクラック除去ユニットに結合またはしっかりと接続され得る。
【0029】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、クラック除去ユニットは、クラック検出ユニットと一緒に移動可能に配置される。
【0030】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、本方法は、エッジにおけるクラックとそのクラック深さとを検出するために、金属材料のエッジの一部外側にクラック検出ユニットを用意するステップをさらに備える。
【0031】
これによって、金属材料のエッジにおけるクラックおよびそれらのそれぞれのクラック深さは、検出され得る。そのような実施形態のために、また、クラック除去ユニットは、(例えば、エッジを部分的に重ね合わせることによって)任意の検出されたクラックを除去するためにエッジの近くに配置される。典型的には、クラック検出ユニットの送信コイルは、金属材料のエッジの少なくとも一部外側に設けられる。少なくとも1つの例示実施形態によれば、クラック検出ユニット、例えば、送信コイルは、エッジの少なくとも部分的に内側に設けられる。したがって、クラック検出ユニット、例えば、送信コイルなどは、エッジにおけるクラックとそのクラック深さとを検出するために、エッジを重ね合わせるように設けられる。
【0032】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、本方法は、クラック除去のプロセス中に、エッジとクラック検出ユニットとの間の相対距離と、エッジとクラック除去ユニットとの間の距離と、を一定に維持するように、基準位置に対してのエッジの位置を決定するステップと、クラック検出ユニットとクラック除去ユニットの位置とを調整するステップと、を備える。
【0033】
これによって、金属材料のエッジにおいてクラックを除去するプロセスが改善される。基準位置は、クラック検出ユニット(またはクラック除去ユニット)内、またはそれが配置される任意のプラットフォーム内の任意の位置であり得る。例えば、基準位置は、受信コイル、または受信コイルの磁気中心(または水平中心軸)である。
【0034】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、エジェクタはバーナであり、噴出されるカービング手段は火炎であり、本方法は、バーナへのガス供給量を制御することによって火炎の強度を調整するステップをさらに備える。
【0035】
これによって、クラックを除去するためのシンプルだがさらに有効な手段が提供される。火炎は、典型的には、クラックの周りの材料をカービングまたは溶融し、金属材料中に溝を生じさせる。しかしながら、エジェクタは、例えば、ジェット火炎または酸素ジェットを噴出するように、異なるように構成されてもよいことを理解されたい。したがって、カービング手段の強度は、カービング手段のエジェクタに対しての強さ、パワー、または拡張と理解され得る。火炎の場合、強度は、例えば、火炎のサイズに関連し得る。
【0036】
本発明の第2の態様によれば、金属製造プロセス中に金属材料中のクラックを除去するための装置が提供される。本装置は、
- 送信コイルと少なくとも1つの受信コイルとを備えるクラック検出ユニットと、
- クラック検出ユニットから知られている距離に配置されたクラック除去ユニットと、クラック除去ユニットは、カービング手段を噴出し、噴出されるカービング手段の強度を変化させるように構成された少なくとも1つのエジェクタを備え、
- 金属材料中に磁場を発生させるために知られているスキーマに従って送信コイルに電流を送り、信号を発生させるために受信コイルによって磁場を検出し、クラックの存在とそのクラック深さとを確立するために発生させられた信号を処理するように構成された制御ユニットと、ここにおいて、金属製造プロセス中にクラックを検出すると、制御ユニットは、クラックを除去するようにエジェクタを作動させ、少なくともクラック深さに基づいて噴出されるカービング手段の強度を設定するためにクラック除去ユニットへクラック検出信号とクラック深さとを送信するように構成される、を備える。
【0037】
本発明の第2の態様の効果および特徴は、本発明の第1の態様に関連して上述されたものに概ね類似する。本発明の第1の態様に関して述べられる実施形態は、本発明の第2の態様と概ね互換性があり、そのいくつかが以下に説明される。制御ユニットが送信コイルを動作させるように構成される金属材料中に磁場を発生させるための知られているスキーマは、例えば、時間変動する電流を制御することによって実現される。
【0038】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、制御ユニットは、金属材料の速度と、クラック検出ユニットとクラック除去ユニットとの間の距離と、によって決定されるクラック検出ユニットのクラック検出からの経過時間に基づいてエジェクタの作動のタイミングを計算するように構成される。
【0039】
本発明の第1の態様に関して述べられるように、クラック検出ユニットおよびクラック除去ユニットは、典型的には、同じ動作線(または縦軸)に沿って配置され、動作中に、対応するやり方で金属材料に遭遇するように構成される。したがって、クラック検出ユニットとクラック除去ユニットとの間の、例えば、送信コイルまたは受信コイルとエジェクタとの間の距離、および金属材料の速度を知ることで、クラック除去ユニットによるクラック除去のタイミングは、クラック検出ユニットによるクラック検出に対して設定され得る。
【0040】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、制御ユニットは、エジェクタと金属材料の表面との間の第1の距離を決定するように構成され、少なくともクラック深さおよび第1の距離に基づいて噴出されるカービング手段の強度を設定する。
【0041】
第1の距離は、本発明の第1の態様を参照して説明されるように、クラック検出ユニットによって測定される距離に基づくことができる。
【0042】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、装置は、金属材料に対してクラック検出ユニットおよび/またはクラック除去ユニットの位置を調整するように構成された位置調整装置をさらに備える。
【0043】
位置調整装置は、金属材料またはその表面に対して垂直と水平の両方に位置を調整するように構成され得る。例えば、位置調整装置は、金属材料の表面とクラック除去ユニットのエジェクタとの間の距離を適合させるために少なくとも1つのモータ駆動式アクチュエータを備えることができる。位置調整装置は、金属材料に対しての位置を一定に維持するために、金属材料に対して垂直と水平の両方に位置を調整するように構成され得る。
【0044】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、クラック検出ユニットおよびクラック除去ユニットは、共通プラットフォームを共有している。
【0045】
これによって、クラック除去の動作は、容易にされる。プラットフォームを用いることによって、クラック検出ユニットおよびその任意の構成要素とクラック除去ユニットおよびその任意の構成要素との間の距離は、知られている状態および一定に維持される。また、プラットフォームによって、クラック除去ユニットは、クラック検出ユニットと一緒に移動可能に配置される。
【0046】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、クラック検出ユニットは、エッジにおけるクラックおよびそのクラック深さの検出を可能にするために、送信コイルが金属材料のエッジの一部外側に配置されるようになされるように構成される。
【0047】
本発明の第1の態様に関して説明されるように、送信コイルは、動作中に、送信コイルがエッジにおけるクラックおよびそのクラック深さの検出を可能にするためにエッジを重ね合わせるように、金属材料のエッジの少なくとも一部外側におよび少なくとも一部内側に配置されるように構成され得る。本発明の第1の態様に関してやはり述べられるように、クラック除去ユニットは、それに応じて、例えば、動作中にエッジを重ね合わせるように配置されるように構成されることによって金属材料のエッジにおけるクラックを除去するように構成および配置され得る。
【0048】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、制御ユニットは、基準位置に対してのエッジの位置を決定するように構成される。
【0049】
基準位置は、前述したように、同じ基準位置であり得る。
【0050】
制御ユニットは、エッジとクラック検出ユニットとの間の相対距離と、エッジとクラック除去ユニットとの間の距離と、を一定に維持するように、クラック検出ユニットとクラック除去ユニットの位置とを調整するように構成され得る。
【0051】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、受信コイルは、第1の受信コイルであり、装置は、送信コイルによって引き起こされる磁場を検出するように配置および構成された第2の受信コイルをさらに備え、ここにおいて、制御ユニット、または制御ユニットのコンピューティング装置は、第2の受信コイルによって検出される磁場によって生成される信号を受信するようにさらに構成される。制御ユニットは、それぞれ第1および第2の受信コイルに対しての金属材料のエッジの位置および表面からの距離を決定するようにさらに構成され得る。より詳細には、第1の受信コイルは、エッジの比較的近くに配置されるように、例えば、エッジを少なくとも部分的に重ね合わせるように構成され、ある時間範囲にわたる第1の受信コイルからの積分された信号値の原因は、第1の受信コイルと金属材料の表面との間の垂直距離と、第1の受信コイル(例えば、磁気中心または水平中心軸)とエッジとの間の水平距離の両方に依存する。他方で、第2の受信コイルは、典型的にはエッジの遠くに、第1の受信コイルからある距離に配置されるように構成され、同じ時間範囲にわたる第2の受信コイルからの積分された信号値の原因は、第2の受信コイルと金属材料の表面との間の垂直距離にだけ依存する。
【0052】
これによって、コイル装置(すなわち、送信コイル、ならびに第1および第2の受信コイル)および金属材料のエッジおよび表面に対してのその距離が、決定され得る。そのような位置情報は、例えば、コイル装置とエッジとの間、およびコイル装置と金属材料の表面との間で一定の距離をそれぞれ維持するために、例えば、コイル装置を水平および垂直に再配置するように構成された位置調整装置と組み合わせて使用することができる。
【0053】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、エジェクタは、カービング手段として火炎を噴出するように構成されたバーナであり、火炎の強度を変化させるためにバーナへのガス供給量を変化させる。
【0054】
本発明の第1の態様に関して述べられるエジェクタの効果および実施形態は、本発明の第2の態様にも適用可能である。典型的には、エジェクタの動作は、制御ユニットによって制御される。
【0055】
次に、クラック検出ユニットの実施形態が、より詳細に説明される。例えば、クラック検出ユニットは、以下の方法および装置に従って、EP2574911A1におけるように構成され得る。クラック検出ユニットは、送信コイルと受信コイルとを備える。本方法は、
- 金属材料中に磁場を発生させるために送信コイルへ第1の大きさを有する電流を送ることと、
- 磁場が、金属材料中で測定されることが望まれる最も深いクラック深さよりも深く侵入したことが推定されるときに、電流が第2の大きさを得るように電流を制御することと、
- 受信コイルによって磁場を検出することと、それによって、検出された磁場が、受信コイル中に信号を発生させる、
- 第1の時間範囲内の信号の第1の特性値を決定することと、第1の時間範囲は、
- 第2の大きさを得るための電流の制御による任意の乱れが終わったことが推定された時間、ならびに
- 任意で、第2の大きさを得るために電流の制御により金属材料中に誘導される電流が、金属材料の表面の凹凸および測定されることが望まれないクラック深さに対応する深さよりも金属材料中に深くに侵入した時間、に開始し、
第1の時間範囲は、第2の大きさを得るために電流の制御により電流が金属材料中に誘導される電流が、測定されることが望まれる最も深いクラック深さに対応する金属材料中の深さまで侵入したときに終了する、
- 第1の時間範囲後の第2の時間範囲内の信号の第2の特性値を決定することと、
- 第1の特性値および第2の特性値に基づいてクラックの可能性がある存在およびそのクラック深さを決定することと、を含む。
【0056】
上記の特定された時間範囲に従って第1の特性値と第2の特性値とを決定することによって、他のプロセス・パラメータに決定されたクラック深さ値に影響を与えさせることなく、クラック深さが、独立して決定され得る。したがって、信頼できるクラック深さ測定が行われ得る。
【0057】
一実施形態では、送るステップにおいて、電流は、本質的に一定である。一実施形態では、金属材料中で測定されることが望まれる最も深いクラック深さよりも深く磁場が侵入したことの推定は、送信コイルへ電流を送ることが開始されるとき、測定されることが望まれる最も深いクラック深さ、ならびに金属材料の比透磁率および電気抵抗率に基づく。一実施形態では、第1の時間範囲の開始は、その第2の大きさを得るための電流の制御が開始される時間、および金属材料の比透磁率と電気抵抗率との間の関係に基づいて推定される。一実施形態では、第1の時間範囲の終了は、電流がその第2の大きさを得る時間、測定されることが望まれる最も深いクラック深さ、ならびに金属材料の比透磁率および電気抵抗率に基づいて推定される。一実施形態では、第1の特性値を決定するステップは、第1の時間範囲の間で信号を積分することを含む。一実施形態では、第2の特性値を決定するステップは、第2の時間範囲中に信号を積分することを含む。一実施形態では、クラックの可能性がある存在およびそのクラック深さを決定するステップは、第1の特性値と第2の特性値との間の関係を決定することを含む。
【0058】
一実施形態は、第3の時間範囲内の信号の第3の特性値を決定することを備え、第3の時間範囲は、第1の時間範囲で同時に開始し、第1の時間範囲の開始および第1の時間範囲の終了に基づいて決定される時間で終了し、そこにおいて、決定するステップは、第1の特性値、第2の特性値、および第3の特性値に基づいて可能性のあるクラックのクラック長さを決定することを含む。上で特定されたように、第3の特性値を決定することによって、検査される金属材料の表面と平行な平面内の受信コイルの広がりよりも少ない広がりを有するクラックのクラック深さが、決定され得る。また、第3の特性値は、クラック長さを決定できるように第1の特性値および第2の特性値と一緒に十分な情報も与える。一実施形態では、第3の特性値を決定するステップは、第3の時間範囲中に信号を積分することを備える。
【0059】
クラック検出ユニットは、以下の装置に従って、EP2574911A1におけるように構成され得る。この装置は、金属材料中に磁場を発生させるように配置および構成された送信コイルと、磁場を検出するように配置および構成された受信コイルと、金属材料中に磁場を発生させるために送信コイルへ第1の大きさを有する電流を送るように構成された信号発生器と、金属材料中で測定されることが望まれる最も深いクラック深さよりも深くに磁場が侵入したことが推定されるときに電流が第2の大きさを得るように信号発生器を制御するように構成された制御ユニットと、受信コイルによって検出される磁場によって生成される信号を受信し、第1の時間範囲内の信号の第1の特性値を決定するように構成されたコンピューティング装置とを備え、第1の時間範囲は、
- 第2の大きさを得るための電流の制御による任意の乱れが終わったことが推定された時間、ならびに
- 任意で、第2の大きさを得るために電流の制御により金属材料中に誘導される電流が、金属材料の表面の凹凸、および測定されることが望まれないクラック深さに対応する深さよりも金属材料中に深く侵入した時間、に開始し、
第1の時間範囲は、第2の大きさを得るための電流の制御により金属材料中に誘導される電流が、測定されることが望まれる最も深いクラック深さに対応する金属材料中の深さまで侵入した後に終了し、コンピューティング装置は、第1の時間範囲後の第2の時間範囲内で信号の第2の特性値を決定し、第1の特性値および第2の特性値に基づいてクラックの可能性のある存在およびそのクラック深さを決定するようにさらに構成される。
【0060】
一実施形態では、コンピューティング装置は、第3の時間範囲内の信号の第3の特性値を決定するように構成され、第3の時間範囲は、第1の時間範囲と同時に開始し、第1の時間範囲の開始および第1の時間範囲の終了に基づいて決定される時間で終了し、さらに、第1の特性値、第2の特性値、および第3の特性値に基づいて可能性のあるクラックのクラック長さを決定するように構成される。
【0061】
EP2574911A1の方法および装置の特定の詳細は、その詳細な説明に与えられ、具体的には、例えば、クラック深さCDおよびクラック長さを決定するために、様々な時間範囲または時間スパンの理論および推定、例えば、t1~t0、t12~t11、t14~t13、t11~t1、t11~t17、および対応する時点、ならびに第1、第2、および第3の特性値CV1、CV2、CV3およびその関連の参照がなされ、これは、同じ構成要素を用いて本明細書に示された本開示と組み合わせて利用され得る。
【0062】
したがって、少なくとも1つの例示実施形態によれば、クラックの存在とクラック深さとを決定するステップは、誘導測定を基準データと比較することを含むことができる。例えば、クラックが金属材料のその一部に存在するかどうか決定するために、クラック検出ユニットの測定信号(S)は、クラックのない同じ金属材料の基準値と比較するために、制御ユニットまたはコンピューティング装置内で処理される。
【0063】
また、制御ユニットまたはコンピューティング装置は、例えば、クラック検出ユニットの測定された距離によって第1の距離を決定するために使用することができる。これは、コンピューティング装置の積分ユニットにおいて実行することができ、受信コイル中の誘導電圧は、例えば、(例えば、送信コイルを通る電流をオフすることによって)第2の大きさを得るために制御信号が送信コイルへ電流を命じる瞬間から、その後、一定の時間まで(典型的には、第2の大きさを得るための電流の制御による任意の乱れが終わった時間まで)積分される。この積分された値は、受信コイルと金属材料の表面との間の距離を計算するために使用することができ、材料の影響から概ね独立している。
【0064】
本開示の装置は、さらにまたは代替として、金属材料のエッジにおけるクラックを検出し、除去するために使用され得る。そのようなクラック検出ユニットは、送信コイルと、少なくとも1つの受信コイルとを備える。そのような実施形態によれば、金属材料のエッジにおけるクラックを決定するための方法は、以下に説明されるように実行され得る。
【0065】
- 金属材料中に磁場を発生させるために送信コイルへ第1の大きさを有する電流を送り、
- 磁場が金属材料中で測定されることが望まれる最も深いクラック深さよりも深くに侵入したことが推定されるときに、電流が第2の大きさを得るように電流を制御し、
- 受信コイルによって磁場を検出し、それによって、この検出された磁場は、受信コイル中に信号を発生させ、
- 第2の大きさを得るための電流の制御により任意の乱れが終わったことが推定される第1の時点で信号の第1の信号値を決定し、
- 第1の時点の後の第2の時点で信号の第2の信号値を決定し、
- 第2の時点の後の第3の時点で信号の第3の信号値を決定し、
- 信号値の以下の組合せ、すなわち、第1の信号値と第2の信号値、第2の信号値と第3の信号値、および第1の信号値と第3の信号値のうちの少なくとも2つの間の特性関係を決定することによって第1、第2、および第3の信号値に基づいてクラックの可能性のある存在およびそのクラック深さを決定し、ここにおいて、信号値の少なくとも2つの組合せ間の特性関係は、エッジの位置およびエッジの曲率の半径から独立している。上記特定された時間に従って信号値の少なくとも2つの組合せ間の特性関係を決定することによって、クラック深さは、決定されたクラック深さ値に影響を与える他のプロセス・パラメータを有することなく、エッジの位置およびエッジの曲率の半径から独立して決定され得る。したがって、信号値の少なくとも2つの組合せの間の特性関係は、エッジの位置およびエッジの曲率の半径から独立していることを理解されたい。したがって、信頼できるクラック深さ測定が、金属材料のエッジにおいて提供され得る。
【0066】
そのような測定方法のより詳細は、以下、詳細の説明において、図2a、図2b、図3a、および図3bを参照して説明される。
【0067】
一般に、特許請求の範囲で使用される全ての用語は、本明細書中に別段明示的に定められない限り、当技術分野におけるその通常の意味に従って解釈されるべきである。「1つの(a/an)/(the)要素、装置、構成要素、手段、ステップなど」の全ての参照は、別段明示的に述べられない限り、要素、装置、構成要素、手段、ステップなどの少なくとも1つの例を参照するときにオープンで解釈されるべきである。本明細書中に開示された任意の方法のステップは、明示的に述べられない限り、開示された正確な程度で実行される必要はない。
【0068】
次に、本発明概念のこれらのおよび他の態様が、本発明概念の例示実施形態を示す添付図面を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1】金属製造プロセス中に金属材料中のクラックを除去するための装置の一例の概略図。
図2a】金属製造プロセス中に金属材料中のクラックを除去するための装置の別の例の概略図。
図2b】金属製造プロセス中に金属材料中のクラックを除去するための装置の別の例の概略図。
図3a-3b】図2aおよび図2b中の装置内のクラック検出ユニットによって検出された信号の特性関係を決定するための第1、第2、および第3の時点の図。
図4】金属製造プロセス中に金属材料中のクラックを除去する方法のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0070】
以下の説明では、説明のためであって限定のためではなく、本発明の徹底的な理解を与えるために、特定の構成要素、インターフェース、技法等などの特定の詳細が説明される。しかしながら、本発明が、これらの特定の詳細から外れる他の実施形態で実施されてもよいことは当業者に明らかであろう。他の例では、よく知られているデバイス、回路、および方法の詳細な説明は、不要な詳細で本発明の説明を曖昧にしないように省略される。
【0071】
本明細書中に示される装置は、クラックのクラック深さを決定することによって金属材料物体中にクラックを検出し、金属製造プロセス中にクラックを連続的に除去するように適合される。装置は、いくつかの実施形態では、クラック長さを決定することを可能にし得る。装置は、鋳造プロセスまたは圧延プロセスなどの(熱間)金属製造プロセスに極端な条件下で使用されるように適合される。詳細には、装置は、粗い金属表面上で測定されたクラック深さまでのクラックの除去のために使用され得る。
【0072】
電流が金属材料中に誘導されることを可能にするのに十分高い電導性を有する任意の金属材料が、本明細書中に示された方法および装置にかけることができる。そのような材料は、例えば、鋼鉄、または熱間鋼である。
【0073】
図1は、鋳造などの熱間金属製造プロセス中に金属材料M中のクラックを除去するための装置1の斜視図と、装置1を動作させるための制御ユニットおよび信号処理の相補的な概略図とを示す。装置1は、誘導測定を利用してクラックの存在とそれらのそれぞれのクラック深さとを決定するための送信コイル32および受信コイル34の(ただ図1に概略的に示され、図2aおよび図2bを参照してより詳細に説明される)コイル装置31を備えたクラック検出ユニット30と、クラック検出ユニット30から知られている距離KDで配置されたクラック除去ユニット40とを備える。クラック除去ユニット40は、カービング手段44を噴出するように構成された少なくとも1つのエジェクタ42を備える。図1の例示実施形態では、クラック検出ユニット30およびクラック除去ユニット40は、共通プラットフォーム50上に配置される。装置1は、装置1の動作を制御するように構成された制御ユニット60と、金属材料Mに対して、具体的には金属材料Mの表面19に対してプラットフォーム50の位置を変化させることによってクラック検出ユニット30およびクラック除去ユニット40の位置を調整するように構成された位置調整装置70とをさらに備える。金属材料Mは、金属物体と呼ばれ得る。
【0074】
図1中の装置1に示されたエジェクタの個数は、例示である。クラック除去ユニット40中により多くのエジェクタが存在し得る、および各エジェクタは、金属材料Mのあるエリアまたは幅を覆うように配置および構成され得ることに気付かれたい。典型的には、各エジェクタは、各関連したコイル装置およびエジェクタが、協働グループを形成し、すなわち、連続的で同期した活動で、クラックとそのクラック深さとを検出し、噴出されるカービング手段44によってクラックを除去する際に協働するグループを形成するように、クラックの存在とそのクラック深さとを決定するためにクラック検出ユニット30の対応するコイル装置につなげられる。例えば、装置1は、クラック検出ユニット30の左端へのコイル装置35と、クラック検出ユニット30の右端へのコイル装置31とを備える。
【0075】
位置調整装置70は、装置1の右手側に第1のアクチュエータ72を動作させるために、第1の垂直に移動可能なアーム72または第1のアクチュエータ72と、例えば、モータを備えた第1のベース74とを備える。図1の位置調整装置70は、装置1の左手側に第2のアクチュエータ76を動作させるために、第2の垂直に移動可能なアーム76または第2のアクチュエータ76と、例えば、モータを備えた第2のベース78とをさらに備える。これによって、金属材料Mの表面19とプラットフォーム50ならびにクラック検出ユニット30およびクラック除去ユニット40との間の少なくとも垂直距離は、効率的なおよび対応するやり方で調整され得る。少なくとも1つの例示実施形態によれば、第1のベース74および第2のベース78の少なくとも1つは、金属材料Mの表面19に対して水平にプラットフォーム50ならびにクラック検出ユニット30およびクラック除去ユニット40の位置を調整するために水平面内で移動可能である。明確にするために、金属材料Mの表面19は、水平面内で広がり、垂直方向または垂直距離は、そのような水平面に直交する。
【0076】
次に、装置1の動作は、制御ユニット60を参照してさらに説明される。制御ユニット60は、様々なサブ・ユニットを備え、図1中のサブ・ユニットは、第1のユニット62、第2のユニット64、および積分ユニット66によって具体化される。第1のユニット62は、金属材料M中に磁場を発生させるために知られているスキーマに従って送信コイル32に電流を送るように構成される。受信コイル34は、信号を発生させるために磁場を検出するように配置および構成され、第1のユニット62は、そのような信号を受信するように構成され、クラックCの存在およびそのクラック深さCDを確立するために発生した信号を処理する(図1中のクラック深さCDは、可視性を高めるために大いに誇張されることに留意されたい)。鋳造中にクラックCを検出すると、第1のユニット62は、制御ユニット60の第2のユニット64へクラック深さCDを含むクラック検出信号Dを送信するように構成される。
【0077】
積分ユニット66は、それぞれ、クラック検出ユニット30の右端SRおよび左端SLのコイル装置31、35から信号を時間積分するように構成される。そのような積分された信号ISR、ISLは、第2のユニット64において、クラック検出ユニット30と金属材料Mの表面19との間の距離、例えば、クラック検出ユニット30の右手側と金属材料Mの表面19との間の距離DiR、およびクラック検出ユニット30の左手側と金属材料Mの表面19との距離DiLを決定するために使用することができる。したがって、位置調整装置70の動作は、例えば、2つの距離DiR、DiLを一定に維持する設定を用いて、距離DiRについての制御信号CtrlR、および距離DiLについての制御信号CtrlLによって制御することができる。
【0078】
クラック検出ユニット30と金属材料Mの表面19との間の距離を測定することは、単一の位置(したがって、クラック検出ユニット19の右端側と左端側の両方に対してではなく)からの信号を積分するだけで、しかしながら、クラック検出ユニット30の右端側と左端側の両方を測定することによって実行することができ、測定された距離の改善された精度が実現されることに留意されたい。測定された距離は、クラック検出ユニット30およびエジェクタ42(またはエジェクタ42の穴)の知られた相互関連位置に基づいて、エジェクタ40と金属材料Mの表面19との間の第1の距離FDを決定するために使用され得る。前述したように、第1の距離FDは、位置調整装置70によって明らかに変化させることができる。
【0079】
第2のユニット64は、検出されたクラックCを除去するためにクラック除去ユニット40とエジェクタ42とを作動させるように構成される。また、クラック除去ユニット40、およびエジェクタ42が、カービング手段44の強度を変化させるように構成されるとき、第2のユニット64は、少なくともクラック深さCDに基づいて噴出されるカービング手段44の強度を設定することができるが、典型的には、やはり第1の距離FDである。すなわち、少なくともクラック深さCDは、第2のユニット64への入力として使用され、クラック深さCDに応じて噴出されるカービング手段44の強度を設定するために使用される。図1において、エジェクタ42は、カービング手段として火炎44を噴出するように構成されたバーナ42によって具体化される。バーナ42は、ガス供給装置80によって動作させられ、第2のユニット64は、したがって、すなわち、クラック深さCD、しかし典型的には、やはり第1の距離FDに少なくとも基づいてクラックCを除去するに必要な火炎44の強度に対応するバーナ42へのガス供給量を与えるように、ガス供給装置80へ制御信号CtrlGを送信することができる。
【0080】
図1に見ることができるように、金属材料Mは、動きの矢印2に沿って速度vで移動しており、それによって、クラックCは、まず、クラック検出ユニット30とその中のコイル装置31と遭遇し、続いてクラック除去ユニット40と遭遇する。これによって、まず、クラックCの存在およびそのクラック深さCDを決定することができ、続いて、クラックCは、同期した継続的なやり方でクラック除去ユニット40によって除去することができる。図1に見られるように、第2のユニット64は、金属材料Mの速度vで送られ、したがって、金属材料Mの速度vおよびクラック検出ユニット30とクラック除去ユニット40との間の距離KDによって決定されるクラック検出ユニット30のクラック検出からの経過時間に基づいてエジェクタ42の作動のタイミングを計算することができる。したがって、クラックCは、金属材料Mから局所的に除去される。
【0081】
次に、本発明は、金属材料MのエッジEにおけるクラックおよびそのクラック深さと、関連したクラック除去との決定に関して説明される。金属材料のエッジEにおけるクラックの除去が、エッジEにおける金属材料M中の磁場の発生、磁場の検出、およびある所定の時間における検出された磁場に関する信号の特性関係の決定を伴い、それによってクラック深さを決定することができるとき、そのようなクラックの決定は、まず、以下に説明され、その後、クラック除去が説明される。
【0082】
図2aおよび図2bは、金属材料M、例えば、図1中のものと同じ金属材料のエッジEにおける表面19中のクラックを検出および除去するための装置1’の一例の概略図を示す。図2aは平面図であり、図2bは、側面図である。図2aおよび図2bの装置1’は、図1の装置1と同じ原理であり、以下に、装置間の差異の主な要点が、説明される。例えば、図1の制御ユニット60、ならびにその第1、第2、および積分ユニット62、66、64は、図2aおよび図2b中の構成要素17中に一般に組み込まれているとみなされたい。したがって、構成要素17は、汎用制御ユニット17、または汎用制御およびコンピューティング・ユニット17と呼ばれ得る。装置1’は、図1を参照して説明される送信コイル32および受信コイル34と同じ機能を有する送信コイル3および第1の受信コイル5を備えたクラック検出ユニット16を備える。また、クラック検出ユニット16は、第1の受信コイル5の遠くに配置された第2の受信コイル6を備える。送信コイル3、第1および第2の受信コイル5、6は、ここで、コイル装置18と一般に呼ばれる。いっそうさらに、装置1’は、コイル装置18が接続され、それと移動可能であるプラットフォーム20を備える。図2bに示されるように、プラットフォーム20は、例えば、垂直Vと水平Hの両方にコイル装置18の位置を調整するように構成されたアクチュエータ21Aとベース21Bとを備える図1の位置調整装置70に類似する位置調整装置21と結合される。プラットフォーム20は、コイル装置18を再配置できるのに必要とされず、送信コイル3、第1の受信コイル5、および第2の受信コイル6の各々は、位置調整装置21に直接結合され得ることを留意されたい。
【0083】
次に、装置1’の動作の例が、図2a、図2b、図3a、および図3bを参照して詳細に説明される。クラックCについて検査され、クラック除去にかけられる金属材料M、例えば、熱間スラブまたは熱間金属シートは、送信コイル3および第1および第2の受信コイル5、6の近くに配置される。より具体的には、装置1’は、送信コイル3が、距離DOによって示されるようにエッジEの少なくとも一部外側に配置されるように、および距離DIによって示されるようにエッジEの少なくとも一部内側に配置されるようになされる。DO/DIの比は、0.1と0.4との間であることが好ましい。図2aおよび図2bにおいて、第1の受信コイル5は、その磁気中心MCがエッジEの内側に配置されるようにエッジEに一部重なり合うように配置される。図2aおよび図2bにおいて、第2の受信コイル6は、エッジEの内側におよび金属材料Mを覆って十分に配置される。典型的には、送信コイル3および第1および第2の受信コイル5、6のそれぞれの磁気軸は、金属材料Mの表面19に直交する。好ましくは、送信コイル3ならびに第1および第2の受信コイル5、6のそれぞれ1つずつは、フラット・コイルであり、マイナ・プロパゲーション(minor propagation)は、その磁気軸に直交するのと比べて、その磁気軸に沿っている。すなわち、水平面内のプロパゲーションと比べて、垂直方向に沿ったマイナ・プロパゲーションである。
【0084】
金属材料Mは、典型的には、クラック検査中にある速度vでコイル装置18に対して移動し2、それによって金属材料Mの表面19に沿った検査を可能にし、特に金属材料MのエッジEで、図2aおよび図2bにおいて、クラックCの連続的な除去を可能にする。上述したように、送信コイル3は、エッジEに重なり合うように、エッジEの少なくとも一部外側に、および金属材料MのエッジEの少なくとも一部内側に配置され得る。
【0085】
(例えば、図2aおよび図2bの構成要素17に組み込まれる第1のユニット62として図1に示される)制御ユニットは、信号発生器(図示せず)へ制御信号を供給するように構成され、それによって送信コイル3へ供給される信号発生器の出力信号、例えば、電流を制御する。信号発生器は、例えば、開状態にあり、それによって送信コイルへ電流を供給するように、またはそれが送信コイルへ電流を供給しない閉状態にあるように制御ユニットによって制御され得るトランジスタを備えることができる。
【0086】
一実施形態では、制御ユニットは、信号発生器が、図3aに示されるように、第1の時間スパンt00~t0において第1の大きさI1を有する本質的に一定である電流を発生させるように、信号発生器を制御するように構成される。
【0087】
エッジEにおけるクラックCを検出するプロセスは、主に図3aおよび図3bを参照して、以下におけるように実行され得る。第1の大きさI1を有する電流は、送信コイル3へ送られる。それによって、磁場が、エッジEにおいて金属材料M中に生成される。クラック検査中、金属材料Mの表面19は、送信コイル3の周りの磁場が金属材料Mに侵入し、したがって金属材料M中に磁場を引き起こすことができるように、送信コイル3に十分近く(例えば、10~25mm、または10~15mmもしくは15~25mm)に配置される。磁場が金属材料M中で測定されることが望まれる最も深いクラック深さよりも深く金属材料Mの中に侵入したことが推定される時間t0の点で、信号発生器によって送られる電流は、本質的に一定の電流が第2の大きさI2を得るように制御ユニットによって制御される。第2の大きさI2は、例えば、本質的にゼロ、またはゼロであり得る(すなわち、トランジスタをその閉状態に設定する)。第1の振幅I1から第2の振幅I2への電流供給量の変化により、誘導電流が金属材料M中に発生する。
【0088】
好ましくは、信号発生器によって送られる電流は、図3a中の一番上の図に示されるように、パルス列22aの形態にある。典型的には、磁場の測定は、以下により詳細に詳述されるように続くパルス間で得られる。
【0089】
金属材料M中で測定されることが望まれる最も深いクラック深さよりも深く金属材料Mの中に磁場が侵入したときの推定は、理論的推定に基づくことができ、推定された時間は、制御ユニットがそれに応じて信号発生器によって出力される電流を制御することができるように制御ユニット中のソフトウェアにプログラムされる。
【0090】
推定は、送信コイル3への電流の送りが始まるとき、測定されることが望まれる最も深いクラック深さ、金属材料Mの比透磁率μおよび電気抵抗率ρに基づくことができる。そのような推定は、例えば、以下の関係によって与えられ得る。
【0091】
【数1】
【0092】
ただし、t0は、図3aおよび図3bに示されるように、電流がその第2の大きさI2を得るときのミリ秒の単位の時間であり、t00は、電流がその第1の大きさI1を得るときの時間であり、CDmaxは、ミリメートル単位で測定されることが望まれる最大クラック深さであり、μは、金属材料Mの比透磁率であり、ρは、ナノ・オーム・メートル(nΩm)の単位の金属材料Mの電気抵抗率である。
【0093】
送信コイル3のエネルギーは、送信コイル3と並列に配置された第1の抵抗器(図示せず)によって迅速に放出され得る。同様に、第1および第2の受信コイル5、6のエネルギーは、それぞれ、第2および第3の抵抗器によって放出され得る。したがって、第1の抵抗器は、電流がその第2の大きさI2に達したときに、送信コイル3からエネルギーを放出するように配置および構成される。
【0094】
電流がその第2の大きさI2に達したとき、誘導電流によって生成される磁場は、少なくとも第1の受信コイル5によって検出される。第1の受信コイル5によって検出された磁場は、第1の受信コイル5に信号S(t)、例えば、電圧を誘導し、これは、増幅器によって増幅され得る。図2aおよび図2bの例示実施形態によれば、誘導電流によって生成される磁場も、第2の受信コイル6によって検出される。第2の受信コイル6によって検出された磁場も、第2の受信コイル6に信号Sr(t)、例えば、電圧を誘導し、これは、増幅器によって増幅され得る。
【0095】
増幅器(S)は、少なくとも第1の受信コイル5から(例えば、構成要素17として図2aおよび図2bに示された、制御ユニット60の第1のユニット62に組み込まれた)コンピューティング装置へ増幅された信号を供給する。コンピューティング装置は、一実施形態では、それぞれ、信号の第1の信号値St1、第2の信号値St2、および第3の信号値St3を決定するように構成される。一実施形態では、構成要素17は、図3aおよび図3bに示されるように、第1の時点t1における第1の信号値St1、第2の時点t2における第2の信号値St2、および第3の時点t3における第3の信号値St3を第1のユニット62が決定できるように、第1のユニット62へ制御信号を供給するように構成される。
【0096】
第1の受信コイル5による磁場の検出、および任意で、第2の受信コイル6による磁場の検出の前にまたはそれと同時に、磁場によって第1の受信コイル5に生成されるエネルギーは、第2の抵抗器によって放出され、磁場によって第2の受信コイル6に生成されるエネルギーは、第3の抵抗器によって放出される。したがって、第2および第3の抵抗器は、電流がその第2の大きさI2に達したときに、それぞれ、第1および第2の受信コイル5、6からエネルギーを放出するように配置および構成される。一実施形態では、第2の抵抗器は、第1の受信コイル5と並列接続で配置され、および/または第3の抵抗器は、第2の受信コイル6と並列接続で配置される。
【0097】
第1の抵抗器、第2の抵抗器、および第3の抵抗器の抵抗の適切な選択によって、第1の大きさI1と第2の大きさI2との間の電流の高速スイッチング、送信コイル3ならびに第1および第2の受信コイル5、6のエネルギーの高速放出が、実現され得、したがって、第1および第2の受信コイル5、6による磁場測定の開始前の短い時間スパンt1-t0を可能にする。
【0098】
第1の時点t1は、一実施形態では、第2の大きさI2を得るための電流の制御による任意の乱れが終わったこと、および任意で、第2の大きさI2を得るための電流の制御による金属材料M中の誘導電流が金属材料Mの表面の凹凸に対応する深さおよび測定されることが望まれない浅いクラック深さよりも深く金属材料Mの中に侵入したことが推定された(t0からの)時間である。電流が金属材料Mの表面の凹凸よりも深い深さおよび測定されることが望まれない浅いクラック深さへ侵入した時間の推定は、1mm以下の深さを有するクラック深さおよび表面の凹凸が測定されることが望まれない場合、以下の関係によって与えられ得る。
【0099】
【数2】
【0100】
ただし、t1は、マイクロ秒の単位の時間であり、μは、金属材料Mの比透磁率であり、ρは、nΩmの単位の電気抵抗率である。同様の式が、測定されることが望まれる最小クラック深さに応じて得られてもよい。例えば、熱間鋼(例えば、1000℃の鋼鉄)などの高い電気抵抗率の材料を測定するとき、減衰時間は、約1マイクロ秒未満であるべきであり、したがって、時間t1は、1マイクロ秒、または(t0の後の)0.5~1マイクロ秒の間であるように選択される。低い抵抗率の材料については、第1の時点t1のかなりより長い設定が、例えば、以下の簡略化された式に従って使用され得る。
【0101】
【数3】
【0102】
ただし、ρは、ナノ・オーム・メートル(nΩm)の単位の金属材料Mの電気抵抗率であり。t1は、マイクロ秒の単位である。
【0103】
第3の時点t3は、一実施形態では、エッジEの曲率の半径Rの変化のいずれの影響も止まったことが推定された(t0の後の)時間である。例えば、第3の時点t3は、熱間鋼(例えば、1000℃の鋼鉄)などの高い電気抵抗率の材料を測定するために、(例えば、2mmのエッジEの半径Rで)約12マイクロ秒であり得る。別の材料については、第3の時点t3は、次のように設定され得る。
【0104】
【数4】
【0105】
ただし、ρは、ナノ・オーム・メートル(nΩm)の単位の金属材料Mの電気抵抗率であり、t3は、マイクロ秒の単位である。
【0106】
第2の時点t2は、第1の時点t1と第3の時点t3との間のある時間に選ばれる。例えば、第2の時点t2は、(t0の後の)時間
【0107】
【数5】
【0108】
で選ばれ得る。
【0109】
本明細書中に説明された第1、第2、および第3の時点の各々は、典型的には、第1の信号値St1、第2の信号値St2、および第3の信号値St3を決定するためにコンピューティング装置、例えば、第1のユニット62へ制御信号を供給することができる構成要素17のソフトウェアにプログラムされる。
【0110】
第1、第2、および第3の時点t1、t2、t3について、それぞれの第1の信号値St1、第2の信号値St2、および第3の信号値St3は、コンピューティング装置によって、例えば、第1のユニット62によって決定される。第1の信号値St1は、典型的には、第1の時点t1でとられる信号の単一の信号値であるが、t1の-30%からt1の+30%まで広がる第1の時間範囲内の信号の平均値、または第1の時間範囲内の信号の積分とすることもできる。同様に、第2の信号値St2は、典型的には、第2の時点t2でとられる信号の単一の信号値であるが、t2の-30%からt2の+30%まで広がる第2の時間範囲内の信号の平均値、または第2の時間範囲内の信号の積分とすることもできる。最後に、第3の信号値St3は、典型的には、第3の時点t3でとられた信号の単一の信号値であるが、t3の-30%からt3の+30%まで広がる第3の時間範囲内の信号の平均値、または第3の時間範囲内の信号の積分とすることもできる。
【0111】
第1、第2、および第3の信号値St1、St2、St3は、さらなる信号処理を受けることができ、構成要素17で構成されたサンプル・アンド・ホールド回路による電圧としてアナログ信号の形態で、または代替として、構成要素17で構成されたA/D変換器によるデジタル信号として与えられ得る。
【0112】
第1、第2、および第3の信号値St1、St2、St3は、第3の時点t3の後であるが、測定が繰り返され、新しい電流パルスが信号発生器によって発生させられる時間t20の前である第4の時間t4でさらなる信号処理を受けることができ、ここにおいて、第1のユニット62は、続く測定、すなわち、続く電流パルスの信号値の決定のために第4の時間t4の後の第5の時間t5でリセットされ得る。これは、図3bの一番下の図に示される。したがって、電流パルスは、時間t20で送信コイル3へ信号発生器によって送ることができ、ここにおいて、測定は、繰り返される。
【0113】
続いて、第1、第2、および第3の信号値St1、St2、St3に基づいてクラック深さを決定することによってクラックが存在するか決定される。クラック深さの決定は、信号値の以下の組合せ、すなわち、第1の信号値St1と第2の信号値St2、第2の信号値St2と第3の信号値St3、および第1の信号値St1と第3の信号値St3のうちの少なくとも2つの間の特性関係を決定することによって構成要素17において実行され得る。特性関係の組合せ、例えば、St1/St2とSt1/St3、またはSt2/St3とSt1/St3またはSt1/St2は、以下にさらに説明されるエッジの位置およびエッジの曲率の半径から独立している。留意事項として、材料の抵抗率は、クラックの検出中に実質的に一定であり、金属材料の表面の凹凸は、第1の時点t1の特性に関する測定に影響を与えない。
【0114】
図3bを見ると、クラックおよびそのクラック深さCDの決定が、特性関係を基準信号の対応する特性関係と比較することによって行われる。図3bでは、第1の基準信号Sa(t)は、(上述したように、理論的にまたは測定によって確立されており、クラックCは、金属材料MのエッジEに存在する。基準位置に対してのエッジEの位置、そこで第1の受信コイル5の磁気中心MC、およびエッジEの曲率の半径Rは、それに応じて、それぞれ、エッジ位置パラメータおよび半径パラメータによって決定され得る。したがって、少なくとも1つの例示実施形態によれば、エッジ位置パラメータは、基準位置に対してのエッジの位置を表し、または基準位置に対してのエッジの位置に対応し、半径パラメータは、エッジの曲率の半径を表し、またはエッジの曲率の半径に対応する。エッジ位置パラメータおよび半径パラメータは、通常の条件を表す第1の基準信号Sa(t)について、エッジ位置パラメータの第1のエッジ基準値、および半径パラメータの第1の基準値に対応している。また、以下の基準信号、すなわち、クラックを有さず、同じ半径パラメータおよびエッジ位置パラメータ(すなわち、それぞれ、第1の半径基準値および第1のエッジ基準値)を有する同じ金属材料についての第2の基準信号Sb(t)、クラックを有さず、同じ半径パラメータ(すなわち、第1の半径基準値)を有するが、第1のエッジ基準値に対してのエッジ位置パラメータの所定の変化している同じ金属材料についての第3の基準信号Sc(t)、およびクラックを有さず、エッジ位置パラメータとして第1のエッジ基準値を有し、第1の半径基準値に対しての半径パラメータの所定の変化を伴う同じ金属材料についての第4の基準信号Sd(t)が、図3bに確立され、示されている。したがって、基準信号の全部は、上に示されるように、しかし、連続曲線を実現するためにt1、t2、およびt3よりも多くの時間について、計算に理論的にまたは測定に基づく。
【0115】
エッジの位置の独立性は、したがって、第1、第2、および第3の信号値St1、St2、St3の以下の特性関係によって、例えば、以下の措置および計算を実行することによって、行うことができる。
【0116】
まず、第1、第2、および第3の時点t1~t3について、第2および第3の基準信号Sb(t)、Sc(t)の以下の特性関係が、
【0117】
【数6】
【0118】
のように設定され、
【0119】
【数7】
【0120】
となる。
【0121】
上記の特性関係に基づいて、したがって、エッジの位置は、測定を乱さない。
【0122】
Sb(t1)/Sb(t2)およびSc(t1)/Sc(t2)は、金属材料中にクラックが存在せず、半径パラメータについて第1の半径基準値を有するときに、1に等しいそのような積をつくるために、続いて、定数係数N12が乗じられてもよい。同様に、Sb(t2)/Sb(t3)およびSc(t2)/Sc(t3)は、金属材料中にクラックが存在せず、半径パラメータについて第1の半径基準値を有するときに、1に等しいそのような積をつくるために、定数係数N23が乗じられてもよい。したがって、以下の関係が設定され得る。
【0123】
【数8】
【0124】
したがって、測定S(t)中、上述したように、以下の式が設定される。
【0125】
【数9】
【0126】
したがって、R12およびR23のゼロ(0)からの偏差は、エッジの位置から独立して、エッジの曲率の半径の変化、ならびに/またはクラックの存在および深さを示す。
【0127】
N12およびN23は、金属材料が測定を受けるときに同じまたは類似する電気特性および磁気特性を有する基準金属材料に対する測定によって決定することができる。
【0128】
図3bからさらに明らかになるように、第2の時点t2と第3の時点t3との間の同じ基準信号Sa(t)、Sd(t)間の違いに比べて、少なくとも、第1の時点t1と第2の時点t2との間で第1の基準信号Sa(t)および第4の基準信号Sd(t)にかなりの違いがある。したがって、R12は、結果として、Sd(t)についてのR23対してのR12と比べて、Sa(t)についてのR23に対して比較的大きい違いになる。このことに基づいて、エッジ位置およびエッジの曲率の半径から独立している特性数CRが、以下のように決定され得る。
【0129】
【数10】
【0130】
Const1は、例えば、第1の半径基準値に対しての半径パラメータの所定の変化を含み、そのような半径変化についてCR=0である上述したような基準材料に関する測定値に基づいて決定することができ、またはConst1は、クラック測定を受ける金属材料に対して、しかしクラックが存在しない部分に対して決定することができ、Const1の値は、測定中の最小測定変動を与える。すなわち、Const1の値は、エッジの半径Rが変化しているときに、CRの最小変動を与えるように選択される。例えば、第2の時点t2が上記の式t2=(((t1)1/2+(t3)1/2)/2)2によって決定される場合、Const1は、1に等しいまたは1にほぼ等しい。
【0131】
例えば、上述したような方法、ステップS10~S60を実行し、Sd(t)についてのCR=0(すなわち、Const1=R12/R23)、Const1=0.91、およびSb(t1)=1を知らせることによって、図3bに基づく以下の結果として得られる表は、以下のように設定され得る。
【0132】
【表1】
【0133】
したがって、ゼロ(0)からのCRの偏差は、クラックの存在を示す(値-0.0001は約ゼロであることを確認されたい)。
【0134】
続いて、クラック深さCDは、以下の関係によって決定され得る。
【0135】
【数11】
【0136】
ただし、Const2およびConst3は、例えば、異なるクラック深さを有するクラックを含む上述したような基準材料に対する測定によって決定することができ、または理論的に決定することができる。例えば、熱間鋼(1000℃の鋼鉄)および時間t1-t3については、上述したように、Const2は約100であり、Const3は約1mmである。
【0137】
少なくとも1つの例示実施形態によれば、第1および第2の受信コイル5、6は、以下に説明されるように、装置1’に対して水平に(すなわち、金属材料の表面19に沿ってまたは平行に)エッジEの位置を決定するとともに、金属材料Mの表面19と装置1’との間の垂直距離を決定するために使用される。すなわち、第1の受信コイル5がS(t)である場合、および第2の受信コイル6がSr(t)である場合、上述したように、2つの(増幅された)時間依存信号S(t)、Sr(t)は、構成要素17へ送られる。ここで、信号S(t)とSr(t)との両方は、図1および積分ユニット66の場合、右および左側の距離DiRおよびDiLとして、対応するやり方で、時間t0から時間t1まで別々に積分される。S(t1-t0)およびSr(t1-t0)の2つの積分された値(すなわち、
【0138】
【数12】
【0139】
および
【0140】
【数13】
【0141】
)、およびその関係は、装置1’に対してのエッジEの水平位置と、金属材料Mの表面19と装置1’との間の垂直距離とを決定するために使用され、より詳細には、第1の受信コイル5がエッジEの比較的近くに配置されるとき、S(t1-t0)の積分された値は、第1の受信コイル5と金属材料の表面19との間の垂直距離、ならびに第1の受信コイル5(例えば、磁気中心MC)とエッジEとの間の水平距離の両方に依存し、一方、Sr(t1-t0)の積分された値は、(第2の受信コイル6が、エッジEから離れて配置されるとき)第2の受信コイル6と金属材料の表面19との間の垂直距離だけに依存する。したがって、装置1’またはコイル装置18に関して、エッジEの位置または水平距離PHor、および金属材料Mの表面19までの垂直距離PVerは、比Sr(t1-t0)/S(t1-t0)によって決定することができる。例えば、PHorおよびPVerが変動される(例えば、複数のステップにわたって、1mm)ときに基準材料について測定することによって、比
【0142】
【数14】
【0143】
を決定することができ、PHorとPVerの関係は、例えば、送信コイルの磁気中心に基づいて、決定することができる。
【0144】
上述した測定について、第1の受信コイル5は、例えば、金属材料の表面19と第1の受信コイル5との間の垂直距離の約半分であるエッジEから磁気中心MCまでの水平距離で配置される。第2の受信コイル6は、例えば、金属材料の表面19と第2の受信コイル6との間の垂直距離よりも大きい第2の受信コイル6のエッジEから磁気中心までの水平距離で配置される。
【0145】
したがって、位置調整装置21は、PHorおよびPVerの測定に応じてプラットフォーム20を移動させ、測定中、PHorおよびPVerを一定に維持するように構成され得る。PHorおよびPVerの大きい変動(例えば、±3~5mm)については、エッジの位置およびエッジの曲率の半径の測定独立性は、満たされ得ない。したがって、少なくとも1つの例示実施形態によれば、エッジの位置およびエッジの曲率の半径の測定独立性は、PHorおよびPVer<±3mmの変動について有効である。
【0146】
第1の受信コイル5だけを有する実施形態については、基準位置に対してのエッジの位置、すなわち、エッジE、および例えば第1の受信コイル5の磁気中心MCからの水平距離に基づいてエッジ位置パラメータを確立するとともに、エッジEの曲率の半径Rに基づいて半径パラメータを確立することがさらに可能であることを理解されたい。先に説明された特性関係は、エッジ位置パラメータおよび半径パラメータが独立であるように適合される。しかしながら、PHorおよびPVerの絶対値については、第1の受信コイル5と第2の受信コイル6の両方が必要とされる。
【0147】
金属材料中のエッジにおけるクラックは、エッジのすぐ近くに存在するクラック、例えば、エッジから始まり金属材料の中に入る45°の幾何学的対角軸と交わるクラック、または金属材料の水平面から金属材料の側面垂直面へ延びるクラックとして解釈されるべきである。クラック深さCDは、一例示実施形態によれば、金属材料の表面からクラックが45°の幾何学的対角軸と交わる点までの距離であり得る。ここでは、エッジEにおけるクラックの測定は、金属材料MのエッジEの少なくとも一部外側に送信コイル3を設ける、好ましくは、DO/DIが0.1~0.4の間であるように重ね合わせることによって具体化される。また、エッジの湾曲は、丸い必要はなく、エッジが鋭くてもよいことに留意されたい。そのような場合、水力半径または等価半径が、本明細書中に示された半径の代わりに用いられてもよい。
【0148】
次に、エッジEにおけるクラックCの除去が、図2aおよび図2bを参照してより詳細に説明される。
【0149】
図2aおよび図2bの装置1’は、クラック検出ユニット16から知られている距離KDに配置されたクラック除去ユニット25を備える。クラック除去ユニット25は、図1の装置1に対応するカービング手段27を噴出するように構成された少なくとも1つのエジェクタ26を備える。図2aおよび図2bの例示実施形態では、クラック検出ユニット16およびクラック除去ユニット25は、共通プラットフォーム20上に配置され、図1のもののような制御ユニット60は、わかりやすくするために、同じ機能性を有する構成要素17に組み込まれることが想定される。また、エジェクタ26は、図1の装置1のように、カービング手段として火炎を噴出するように構成されたバーナ27であり得、したがって、対応するガス供給手段28に結合されており、この説明は、本明細書で再び繰り返さない。図2aに見られるように、クラック除去ユニット25は、クラックの除去を可能にするために、金属材料MのエッジEの一部外側に配置される。適切な接続および配線手段29は、図2b中にではなく図2a中に概略的に示される。
【0150】
次に、図1の装置1ならびに図2aおよび図2bの装置1’によって金属材料M中のクラックCを除去するための方法が、図4のフローチャートを参照して説明される。
【0151】
ステップS10において、金属製造プロセス中のクラックCの存在およびそのクラック深さCDは、誘導測定を利用するクラック検出ユニットによって決定される。適宜のステップS7において、クラック検出ユニットおよびクラック除去ユニットは、金属材料の同じ動作線に沿って配置される。また、クラック検出ユニットとクラック除去ユニットとの間の距離は、クラック除去のプロセス中に一定に維持され得る。
【0152】
クラック検出ユニットは、例えば、図2aおよび図2bを参照して説明されるように、金属材料MのエッジEにおいて、または図1を参照して説明されるように、金属材料MのエッジEの遠くでクラックを決定するように配置および構成され得る。したがって、適宜のステップS5において、クラック検出ユニットは、エッジでクラックとそのクラック深さとを検出するために金属材料のエッジの一部外側に設けられるまたは配置される。図2aおよび図2bに示されるように、クラック除去ユニットは、これに応じて、この領域内の任意の検出されたクラックを除去するようにエッジに配置される。金属材料のエッジにおけるそのようなクラック検出およびクラック除去については、装置1’の基準位置に対してのエッジの位置は、ステップ28において決定することができ、ステップ29において、クラック検出ユニットおよびクラック除去ユニットの位置は、エッジとクラック検出ユニットとの間の相対距離を維持するとともに、クラック除去のプロセス中にエッジとクラック除去ユニットとの間の距離を一定に維持するように調整されてもよい。
【0153】
ステップS20においてクラック検出信号Dおよびクラック深さCDは、クラック検出ユニットから知られている距離に配置されたクラック除去ユニットへ送信される。クラック除去ユニットは、カービング手段を噴出し、噴出されるカービング手段の強度を変化させるように構成されたエジェクタを備える。エジェクタは、バーナであってもよく、噴出されるカービング手段は、図1を参照して説明されるように火炎であってもよい。典型的には、クラック検出ユニットとクラック除去ユニットとの間の距離は、クラック除去のプロセス中、一定に保持される。
【0154】
ステップS30において、検出されたクラックは、クラック検出信号に基づいてクラック深さに少なくとも基づく噴出されるカービング手段の強度でエジェクタを作動させることによって除去される。
【0155】
噴出されるカービング手段の強度は、エジェクタと金属材料の表面との間の第1の距離によってさらに決定され得る。したがって、適宜のステップS25において、金属材料の表面とクラック除去ユニットのエジェクタとの間の第1の距離が、決定される。したがって、金属製造プロセス中に検出されたクラックを除去するステップS30は、クラック深さおよび第1の距離に少なくとも基づいて、噴出されるカービング手段の強度を設定することを備えることができる。第1の距離は、例えば、図1に示される。
【0156】
適宜のステップ27において、金属材料の表面とクラック除去ユニットのエジェクタとの間の第1の距離が適合される。
【0157】
本発明概念は、主に、いくつかの実施形態を参照して説明されてきた。しかしながら、当業者によって容易に理解されるように、上で開示されたもの以外の他の実施形態が、特許請求の範囲によって定められる本発明の範囲内で等しく可能である。したがって、本発明は、最も実際的で好ましい実施形態であると現在考えられるものに関連して説明されたが、本発明は、開示された実施形態に限定されず、反対に、様々な修正および均等な装置を包含すること意図されることを理解されたい。本開示に記載された方法ステップの順序は、図4に記載された順序に制約されない。ステップの1つまたはいくつかは、本発明の範囲から逸脱することなく、場所を変化させることができ、または異なる順序で行われてもよい。しかしながら、少なくとも1つの例示実施形態によれば、方法ステップは、図4に説明された連続した順序で実行される。
【0158】
さらに、開示された実施形態の変形は、図面、本開示、および特許請求の範囲の検討から権利主張される発明概念を実施する際に当業者によって理解および実行することができる。特許請求の範囲では、「備える」という語は、他の要素またはステップを除外せず、不定冠詞「a」または「an」は、複数を除外しない。ある手段が相互に異なる独立請求項に引用されるという単なる事実は、これらの手段の組合せが有利に使用できないことを示さない。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] 金属製造プロセス中に金属材料(M)中のクラック(C)を除去する方法であって、前記方法は、
- 誘導測定を利用するクラック検出ユニットによって前記金属製造プロセス中にクラックの存在とそのクラック深さとを決定するステップ(S10)と、
- 前記クラック検出ユニットから既知の距離に配置されたクラック除去ユニットへクラック検出信号(D)とクラック深さ(CD)とを送信するステップ(S20)と、ここで、前記クラック除去ユニットは、カービング手段を噴出し、噴出される前記カービング手段の強度を変化させるように構成されたエジェクタを備え、
- 前記クラック検出信号に基づいて、少なくとも前記クラック深さに基づく噴出される前記カービング手段の強度で前記エジェクタを作動させることによって、検出された前記クラックを除去するステップ(S30)と、を備える方法。
[2] 検出された前記クラックを除去するための前記エジェクタの作動は、前記金属材料の速度と、前記クラック検出ユニットと前記クラック除去ユニットとの間の距離と、によって決定される、前記クラック検出ユニットによるクラック検出からの経過時間に基づく、[1]に記載の方法。
[3] 前記エジェクタと前記金属材料の表面との間の第1の距離を決定するステップ(S25)をさらに備え、ここにおいて、前記金属製造プロセス中に検出された前記クラックを除去する前記ステップは、少なくとも前記クラック深さ及び前記第1の距離に基づいて噴出される前記カービング手段の強度を設定することを備える、[1]又は[2]に記載の方法。
[4] 前記金属材料の表面と前記クラック除去ユニットの前記エジェクタとの間の前記第1の距離を適合させるステップ(27)をさらに備える、[3]に記載の方法。
[5] クラック除去のプロセス中に前記クラック検出ユニットと前記クラック除去ユニットとの間の距離を一定に維持することを備える、[1]から[4]のいずれか一項に記載の方法。
[6] エッジにおけるクラックとそのクラック深さとを検出するために前記金属材料(M)の前記エッジ(E)の外側に前記クラック検出ユニットの一部を用意するステップ(S5)をさらに備える、[1]から[5]のいずれか一項に記載の方法。
[7] 基準位置に対しての前記エッジの位置を決定するステップ(28)と、クラック除去のプロセス中に、前記エッジと前記クラック検出ユニットとの間の相対距離と、前記エッジと前記クラック除去ユニットとの間の距離と、を一定に維持するように前記クラック検出ユニット及び前記クラック除去ユニットの位置を調整するステップ(29)とをさらに備える、[6]に記載の方法。
[8] 前記エジェクタはバーナであり、噴出される前記カービング手段は火炎であり、前記方法は、前記バーナへのガス供給量を制御することによって前記火炎の強度を調整するステップをさらに備える、[1]から[7]のいずれか一項に記載の方法。
[9] 前記金属材料の同じ動作線に沿って前記クラック検出ユニットと前記クラック除去ユニットとを配置するステップ(S7)を備える、[1]から[8]のいずれか一項に記載の方法。
[10] 金属製造プロセス中に金属材料(M)中のクラック(C)を除去するための装置(1、1’)であって、前記装置は、
- 送信コイル(32、3)と少なくとも1つの受信コイル(34、5)とを備えるクラック検出ユニット(30、16)と、
- 前記クラック検出ユニットから既知の距離(KD)に配置されたクラック除去ユニット(40、25)と、ここで、前記クラック除去ユニットは、カービング手段(44、27)を噴出し、噴出される前記カービング手段の強度を変化させるように構成された少なくとも1つのエジェクタ(42、26)を備え、
- 前記金属材料中に磁場を発生させるために既知のスキームに従って前記送信コイルに電流を送り、信号を発生させるために前記受信コイルによって前記磁場を検出し、クラックの存在とそのクラック深さ(CD)とを確立するために発生した信号を処理するように構成された制御ユニット(60、17)と、ここで、前記金属製造プロセス中にクラックを検出すると、前記制御ユニットは、前記クラックを除去するように前記エジェクタを作動させ、少なくとも前記クラック深さに基づいて噴出される前記カービング手段の強度を設定するために前記クラック除去ユニットへクラック検出信号(D)とクラック深さ(CD)とを送信するように構成されている、を備える装置(1、1’)。
[11] 前記制御ユニットは、前記金属材料の速度と、前記クラック検出ユニットと前記クラック除去ユニットとの間の前記距離と、によって決定される前記クラック検出ユニットによるクラック検出からの経過時間に基づいて前記エジェクタの前記作動のタイミングを計算するように構成される、[10]に記載の装置。
[12] 前記制御ユニットは、前記エジェクタと前記金属材料の表面との間の第1の距離(FD)を決定するように構成され、少なくとも前記クラック深さ及び前記第1の距離に基づいて噴出される前記カービング手段の強度を設定する、[10]又は[11]に記載の装置。
[13] 前記金属材料に対して前記クラック検出ユニット及び/又は前記クラック除去ユニットの位置を調整するように構成された位置調整装置(70、21)をさらに備える、[10]から[12]のいずれか一項に記載の装置。
[14] 前記クラック検出ユニット及び前記クラック除去ユニットは、共通プラットフォーム(50、20)を共有している、[10]から[13]のいずれか一項に記載の装置。
[15] 前記クラック検出ユニットは、エッジにおけるクラック及びそのクラック深さの検出を可能にするために、送信コイルの一部が前記金属材料(M)の前記エッジ(E)の外側に配置されるように構成されている、[10]から[14]のいずれか一項に記載の装置。
[16] 前記制御ユニットは、基準位置に対する前記エッジの位置を決定するように構成されている、[15]に記載の装置。
[17] 前記エジェクタは、カービング手段として火炎を噴出するように構成されたバーナであり、前記火炎の強度を変化させるために前記バーナへのガス供給量を変化させる、[10]から[16]のいずれか一項に記載の装置。
図1
図2a
図2b
図3a-3b】
図4