(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】電池素子を製造するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20231107BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20231107BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01M10/0587
(21)【出願番号】P 2023130242
(22)【出願日】2023-08-09
【審査請求日】2023-08-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000152675
【氏名又は名称】コマツNTC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴光
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-56754(JP,A)
【文献】特開2022-22726(JP,A)
【文献】特開2012-188278(JP,A)
【文献】特開平8-174711(JP,A)
【文献】特開2020-35701(JP,A)
【文献】国際公開第2012/023423(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/00-10/39
H01M 4/00- 4/62
H01M 6/00- 6/22
H01G11/00-13/06
B65H16/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の電極シートが巻回されてなる電池素子の製造装置であって、
前記電極シートを巻回する巻回機構と、
巻回された前記電極シートの終端部と、前記巻回機構によって次に巻回される前記電極シートの始端部との境界において前記電極シートを切断する切断装置と、
前記切断装置よりも上流位置において前記電極シートを把持可能な上流チャックと、
前記切断装置よりも下流位置において前記電極シートを把持可能であり、前記始端部を把持して、前記巻回機構に向かう搬送方向に移動することにより、前記始端部を前記巻回機構による巻回開始位置に搬送する下流チャックと、
前記始端部の幅方向の位置を検出する始端位置センサと、
前記下流チャックの位置を調整することにより、前記巻回機構に対する前記始端部の幅方向への位置ずれを補正する補正アクチュエータと、
を備える製造装置。
【請求項2】
前記始端位置センサは、前記切断装置よりも下流に配置される、
請求項1に記載の製造装置。
【請求項3】
前記切断装置は、前記上流チャックと前記下流チャックとによって前記電極シートが把持された状態で、前記電極シートを切断する、
請求項1に記載の製造装置。
【請求項4】
前記切断装置は、前記搬送方向と、前記搬送方向の逆方向とに移動可能である、
請求項1に記載の製造装置。
【請求項5】
前記切断装置は、前記電極シートを切断後、前記下流チャックが前記始端部を把持する前に、前記逆方向に移動する、
請求項4に記載の製造装置。
【請求項6】
前記下流チャックは、互いに向かい合う一対の下流ローラを含み、
前記一対の下流ローラは、前記搬送方向に応じた正回転方向のみに回転可能である、
請求項1に記載の製造装置。
【請求項7】
前記上流チャックは、
パッドと、
前記パッドと向かい合って配置される上流ローラと、
を含み、
前記上流ローラは、前記搬送方向に応じた正回転方向と、前記正回転方向と反対の逆方向とに回転可能である、
請求項1に記載の製造装置。
【請求項8】
帯状の電極シートが巻回されてなる電池素子の製造方法であって、
前記電極シートを巻回機構によって巻回することと、
巻回された前記電極シートの終端部と、次に巻回される前記電極シートの始端部との境界において、前記電極シートを切断装置によって切断することと、
前記切断装置よりも上流位置において、前記電極シートを上流チャックによって把持することと、
前記切断装置よりも下流位置において前記電極シートを下流チャックによって把持することと、
前記下流チャックによって前記始端部を把持して、前記巻回機構に向かう搬送方向に移動させることにより、前記始端部を前記巻回機構による巻回開始位置に搬送することと、
前記始端部の幅方向の位置を検出することと、
前記下流チャックの位置を調整することにより、前記巻回機構に対する前記始端部の幅方向への位置ずれを補正すること、
を備える製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、帯状の電極シートが巻回されてなる電池素子を製造するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、帯状の電極シートを巻回することで電池素子を製造する装置が知られている。例えば、特許文献1では、電極シートとセパレータとを所定の長さごとに巻き取る巻取装置が開示されている。この巻取装置は、回転体と、切断手段と、チャックと、レーザーセンサと、補正用アクチュエータとを備えている。
【0003】
回転体は、電極シートを巻き取る。切断手段は、刃部と台座部とを含む。切断手段は、回転体に巻き取られた電極シートの終端部と、次に巻き取られる電極シートの始端部との間で、電極シートを切断する。チャックは、切断手段よりも上流位置において電極シートを把持可能である。チャックは、電極シートの始端部を把持して回転体に向かって移動することにより、電極シートの始端部を回転体に供給する。レーザーセンサは、電極シートの始端部の位置を検出する。補正用アクチュエータは、検出した電極シートの始端部の位置に基づいて、回転体に対する電極シートの始端部の幅方向への位置ズレを補正するように、チャックの位置を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の巻取装置では、切断手段によって電極シートが切断される時には、チャックは切断手段よりも上流に配置されている。そのため、チャックが始端部を把持して回転体に向かって移動するときには、切断手段の刃部と台座部とは互いに上下に離れた退避位置に移動する。チャックは、刃部と台座部との間を通って、回転体まで移動する。
【0006】
上述した巻取装置では、切断手段の刃部と台座部とは、刃部と台座部との間をチャックが通過できるように、それぞれ退避位置まで大きく移動する。そのため、巻取装置が大型化してしまう。また、刃部と台座部との間の距離が大きいため、刃部と台座部との位置を互いに合わせることが困難である。刃部と台座部との位置合わせの精度が低くなると、電池素子の製造品質が低下してしまう。本開示の目的は、電池素子の製造装置を小型化すると共に、電池素子の製造品質を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る製造装置は、帯状の電極シートが巻回されてなる電池素子の製造装置である。製造装置は、巻回機構と、切断装置と、上流チャックと、下流チャックと、始端位置センサと、補正アクチュエータとを備える。巻回機構は、電極シートを巻回する。切断装置は、巻回された電極シートの終端部と、巻回機構によって次に巻回される電極シートの始端部との境界において電極シートを切断する。上流チャックは、切断装置よりも上流位置において電極シートを把持可能である。下流チャックは、切断装置よりも下流位置において電極シートを把持可能である。下流チャックは、始端部を把持して、巻回機構に向かう搬送方向に移動することにより、始端部を巻回機構による巻回開始位置に搬送する。始端位置センサは、始端部の幅方向の位置を検出する。補正アクチュエータは、下流チャックの位置を調整することにより、巻回機構に対する始端部の幅方向への位置ずれを補正する。
【0008】
本開示の一態様に係る製造方法は、帯状の電極シートが巻回されてなる電池素子の製造方法である。製造方法は、電極シートを巻回機構によって巻回することと、巻回された電極シートの終端部と、次に巻回される電極シートの始端部との境界において、電極シートを切断装置によって切断することと、切断装置よりも上流位置において、電極シートを上流チャックによって把持することと、切断装置よりも下流位置において電極シートを下流チャックによって把持することと、下流チャックによって始端部を把持して、巻回機構に向かう搬送方向に移動させることにより、始端部を巻回機構による巻回開始位置に搬送することと、始端部の幅方向の位置を検出することと、下流チャックの位置を調整することにより、巻回機構に対する始端部の幅方向への位置ずれを補正すること、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、下流チャックは、切断装置よりも下流位置において電極シートを把持する。そのため、下流チャックが、始端部を巻回機構に搬送する際に、切断装置を大きく退避させなくても、下流チャックが切断装置と干渉することが回避される。それにより、電池素子の製造装置を小型化すると共に、電池素子の製造品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】電池素子の製造装置の構成を示す模式図である。
【
図3】巻回機構と第1供給装置との構成を示す模式的な側面図である。
【
図4】巻回機構と第1供給装置との構成を示す模式的な上面図である。
【
図5A】切断工程における第1供給装置の動作を示す図である。
【
図5B】切断工程における第1供給装置の動作を示す図である。
【
図5C】切断工程における第1供給装置の動作を示す図である。
【
図5D】切断工程における第1供給装置の動作を示す図である。
【
図6A】電極供給工程における第1供給装置の動作を示す図である。
【
図6B】電極供給工程における第1供給装置の動作を示す図である。
【
図6C】電極供給工程における第1供給装置の動作を示す図である。
【
図6D】電極供給工程における第1供給装置の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施形態にかかる電池素子の製造装置について説明する。
図1は、電池素子2の製造装置1の構成を示す模式図である。本実施形態では、電池素子2は、例えばリチウムイオン電池に用いられる。
図1に示すように、電池素子2は、正電極シート3と、第1セパレータシート4と、負電極シート5と、第2セパレータシート6とが、筒状に巻回されることで形成されている。
【0012】
正電極シート3と、第1セパレータシート4と、負電極シート5と、第2セパレータシート6とは、それぞれ帯状の形状を有する。
図2は、電池素子2の一部の拡大断面図である。
図2に示すように、電池素子2は、互いに積層された正電極シート3と、第1セパレータシート4と、負電極シート5と、第2セパレータシート6とを含む。正電極シート3と負電極シート5とは、活物質が塗布された金属製の薄板である。第1セパレータシート4と第2セパレータシート6とは、ポリプロピレンなどの絶縁体製である。第1セパレータシート4と第2セパレータシート6とは、正電極シート3と負電極シート5との短絡を防止するために、正電極シート3と負電極シート5との間にそれぞれ配置される。
【0013】
図1に示すように、製造装置1は、正電極シート3と、第1セパレータシート4と、負電極シート5と、第2セパレータシート6とを互いに重ねて、巻芯7に巻回することで、電池素子2を製造する。正電極シート3は、正電極ロール8Aから繰り出される。正電極ロール8Aは、正電極シート3が筒状に巻回されたものである。第1セパレータシート4は、第1セパレータロール8Bから繰り出される。第1セパレータロール8Bは、第1セパレータシート4が筒状に巻回されたものである。負電極シート5は、負電極ロール8Cから繰り出される。負電極ロール8Cは、負電極シート5が筒状に巻回されたものである。第2セパレータシート6は、第2セパレータロール8Dから繰り出される。第2セパレータロール8Dは、第2セパレータシート6が筒状に巻回されたものである。
【0014】
製造装置1は、コントローラ10と、ガイド機構11と、第1供給装置12と、第2供給装置13と、巻回機構14とを含む。コントローラ10は、製造装置1を制御する。コントローラ10は、例えばプロセッサと記憶装置とを含む。コントローラ10は、記憶しているプログラム及びデータに従い、第1供給装置12と、第2供給装置13と、巻回機構14とを制御する。
【0015】
ガイド機構11は、正電極ロール8Aから繰り出される正電極シート3を巻回機構14まで案内する。ガイド機構11は、第1セパレータロール8Bから繰り出される第1セパレータシート4を巻回機構14まで案内する。ガイド機構11は、負電極ロール8Cから繰り出される負電極シート5を巻回機構14まで案内する。ガイド機構11は、第2セパレータロール8Dから繰り出される第2セパレータシート6を巻回機構14まで案内する。正電極ロール8Aと、第1セパレータロール8Bと、負電極ロール8Cと、第2セパレータロール8Dとは、それぞれ回転可能に支持されている。
【0016】
ガイド機構11は、複数のガイドローラA1-A5,B1-B4,C1-C6,D1-D4を含む。複数のガイドローラA1-A5,B1-B4,C1-C6,D1-D4は、それぞれ回転可能に支持されている。
【0017】
ガイドローラA1-A4は、正電極ロール8Aから繰り出される正電極シート3を案内する。ガイドローラB1-B4は、第1セパレータロール8Bから繰り出される第1セパレータシート4を案内する。ガイドローラA5は、正電極シート3と第1セパレータシート4とを巻回機構14まで案内する。ガイドローラC1-C5は、負電極ロール8Cから繰り出される負電極シート5を案内する。ガイドローラD1-D4は、第2セパレータロール8Dから繰り出される第2セパレータシート6を案内する。ガイドローラC6は、負電極シート5と第2セパレータシート6とを巻回機構14まで案内する。
【0018】
なお、ガイド機構11は、図示しない張力制御機構を含む。張力制御機構は、正電極シート3と、第1セパレータシート4と、負電極シート5と、第2セパレータシート6とに、張力を付与する。張力制御機構は、例えば、ダンサーローラを含む。
【0019】
図3は、巻回機構14と第1供給装置12との構成を示す模式図である。
図4は、巻回機構14、及び、第1供給装置12の上面図である。
図3に示すように、巻回機構14は、巻回アクチュエータ15を含む。巻回アクチュエータ15は、例えばモータを含む。或いは、巻回アクチュエータ15は、他のアクチュエータを含んでもよい。巻回アクチュエータ15は、巻芯7を回転させることで、正電極シート3と、第1セパレータシート4と、負電極シート5と、第2セパレータシート6とを、巻芯7に巻回する。なお、
図3においては、第1セパレータシート4と、負電極シート5と、第2セパレータシート6とは、省略されている。
【0020】
第1供給装置12は、正電極シート3を巻回機構14に供給する。
図3及び
図4に示すように、第1供給装置12は、切断装置20と、上流チャック21と、下流チャック22と、始端位置センサ23と、補正アクチュエータ24とを含む。切断装置20は、巻回機構14に巻回された正電極シート3の終端部と、巻回機構14によって次に巻回される正電極シート3の始端部との境界において、正電極シート3を切断する。切断装置20は、刃部30と、台部31と、第1切断アクチュエータ32と、第2切断アクチュエータ33とを含む。
【0021】
刃部30と台部31とは、互いに向かい合って配置される。正電極シート3は、刃部30と台部31との間を通って延びている。刃部30と台部31とは、それぞれ上下方向に移動可能である。上下方向は、正電極シート3に垂直な方向を意味する。また、刃部30と台部31とは、それぞれ正電極シート3の搬送方向と、搬送方向の逆方向とに移動可能である。搬送方向は、
図3において矢印X1で示すように、第1供給装置12から巻回機構14に向かう方向である。
【0022】
第1切断アクチュエータ32は、刃部30と台部31とを、切断位置と退避位置とに移動させる。刃部30と台部31とは、切断位置において正電極シート3を切断する。刃部30と台部31とは、退避位置において正電極シート3から、上下方向に離れる。第1切断アクチュエータ32は、例えばモータ、或いはシリンダを含む。
【0023】
第2切断アクチュエータ33は、刃部30と台部31とを、搬送方向と、搬送方向の逆方向とに移動させる。第2切断アクチュエータ33は、例えばモータ、或いはシリンダを含む。或いは、第1切断アクチュエータ32と第2切断アクチュエータ33とは、それぞれ他のアクチュエータを含んでもよい。
【0024】
上流チャック21は、切断装置20よりも上流位置において正電極シート3を把持可能である。上流チャック21は、パッド34と、上流ローラ35と、チャックアクチュエータ36とを含む。パッド34と上流ローラ35とは、切断装置20よりも上流に配置される。パッド34と上流ローラ35とは、互いに向かい合って配置される。正電極シート3は、パッド34と上流ローラ35との間を通って延びている。パッド34は、上下方向に移動可能である。
【0025】
上流ローラ35は、正電極シート3を支持する。上流ローラ35は、回転可能に支持されている。上流ローラ35は、搬送方向に応じた正回転方向と、正回転方向と反対の逆回転方向とに回転可能である。チャックアクチュエータ36は、パッド34を、把持位置と解放位置とに移動させる。パッド34と上流ローラ35とは、把持位置において、正電極シート3を把持する。パッド34は、解放位置において、正電極シート3から上下方向に離れる。チャックアクチュエータ36は、例えばモータ、或いはシリンダを含む。或いは、チャックアクチュエータ36は、他のアクチュエータを含んでもよい。
【0026】
下流チャック22は、切断装置20よりも下流位置において正電極シート3を把持可能である。下流チャック22は、正電極シート3の始端部を把持して搬送方向に移動することにより、始端部を巻回機構14による巻回開始位置に搬送する。下流チャック22は、一対の下流ローラ37,38と、第1チャックアクチュエータ39と、第2チャックアクチュエータ40とを含む。
【0027】
一対の下流ローラ37,38は、切断装置20よりも下流に配置される。一対の下流ローラ37,38は、互いに向かい合って配置される。正電極シート3は、一対の下流ローラ37,38の間を通って延びている。一対の下流ローラ37,38は、それぞれ上下方向に移動可能である。また、一対の下流ローラ37,38は、搬送方向と、搬送方向の逆方向とに移動可能である。一対の下流ローラ37,38は、それぞれ回転可能に支持されている。一対の下流ローラ37,38は、それぞれ搬送方向に応じた正回転方向のみに回転可能であり、正回転方向と反対の逆回転方向には回転不能である。
【0028】
第1チャックアクチュエータ39は、一対の下流ローラ37,38を、把持位置と解放位置とに移動させる。一対の下流ローラ37,38は、把持位置において正電極シート3を把持する。一対の下流ローラ37,38は、解放位置において正電極シート3から上下方向に離れる。第1チャックアクチュエータ39は、例えばモータ、或いはシリンダを含む。
【0029】
第2チャックアクチュエータ40は、一対の下流ローラ37,38を、搬送方向と、搬送方向の逆方向とに移動させる。第2チャックアクチュエータ40は、例えばモータ、或いはシリンダを含む。或いは、第1チャックアクチュエータ39と第2チャックアクチュエータ40とは、他のアクチュエータを含んでもよい。
【0030】
始端位置センサ23は、正電極シート3の始端部3Aの幅方向の位置を検出する。始端位置センサ23は、切断装置20よりも下流に配置される。始端位置センサ23は、正電極シート3の搬送方向において、切断装置20と巻回機構14との間に配置される。始端位置センサ23は、例えばレーザー式の変位センサである。或いは、始端位置センサ23は、磁気式、或いは超音波式などの他の変位センサであってもよい。
【0031】
補正アクチュエータ24は、下流チャック22の位置を調整することにより、巻回機構14に対する始端部3Aの幅方向への位置ずれを補正する。
図4に示すように、一対の下流ローラ37,38は、正電極シート3の幅方向に移動可能である。補正アクチュエータ24は、一対の下流ローラ37,38を幅方向に移動させる。
【0032】
例えば、
図4に示すように、正電極シート3の始端部3Aが、正位置P1から幅方向に、ずれている場合、始端位置センサ23は、そのズレ方向とズレ量とを検出する。補正アクチュエータ24は、始端部3Aを把持している一対の下流ローラ37,38を、ズレ方向と反対方向に、ズレ量だけ移動させることで、始端部3Aの幅方向への位置ずれを補正する。
【0033】
上述したアクチュエータ15,24,32,33,36,39,40及び始端位置センサ23は、コントローラ10と通信可能に接続されている。コントローラ10は、アクチュエータ15,24,32,33,36,39,40に指令信号を送信することで、アクチュエータ15,24,32,33,36,39,40をそれぞれ制御する。また、コントローラ10は、始端位置センサ23から、始端部3Aのズレ量とズレ方向とを示す検出信号を受信する。コントローラ10は、始端部3Aのズレ量とズレ方向とに基づいて補正アクチュエータ24を制御することで、始端部3Aの幅方向への位置ずれを補正する。
【0034】
第2供給装置13は、第1供給装置12と同様の構成を有する。第2供給装置13は、第1供給装置12と同様に、コントローラ10によって制御される。それにより、製造装置1による電池素子2の製造が行われる。以下、製造装置1による電池素子2の製造工程について説明する。
【0035】
まず、第1セパレータシート4の始端部と、第2セパレータシート6の始端部とが、巻芯7に取り付けられる。そして、巻回機構14によって巻芯7が回転することで、第1セパレータシート4と第2セパレータシート6とが、巻芯7に巻回される。
【0036】
次に、後述する電極供給工程により、第1電極シートの始端部3Aと第2電極シートの始端部とが、巻回開始位置に搬送される。例えば、第1電極シートの始端部3Aと第2電極シートの始端部3Aとは、第1セパレータシート4、或いは第2セパレータシート6に、巻回開始位置において挟み込まれ、第1セパレータシート4及び第2セパレータシート6と共に、巻芯7に巻回される。それにより、巻回工程が開始される。
【0037】
巻回工程では、
図3に示すように、上流チャック21と下流チャック22とは、それぞれ解放位置に位置している。また、切断装置20は、退避位置に位置している。この状態で、製造装置1は、巻回装置が巻芯7を回転させることにより、正電極シート3と、第1セパレータシート4と、負電極シート5と、第2セパレータシート6とを互いに重ねて、巻芯7に巻回する。
【0038】
正電極シート3と負電極シート5とが、所定長さだけ巻回されると、製造装置1は、巻回工程を終了して、切断工程を開始する。切断工程では、巻回機構14による巻芯7の回転は停止される。
図5A~
図5Dは、切断工程での第1供給装置12の動作を示す図である。切断工程では、まず
図5Aに示すように、下流チャック22が把持位置に移動する。それにより、下流チャック22は、切断装置20よりも下流位置において、正電極シート3を把持する。
【0039】
次に、
図5Bに示すように、上流チャック21が把持位置に移動する。それにより、上流チャック21は、切断装置20よりも上流位置において、正電極シート3を把持する。
図5Cに示すように、切断装置20は、上流チャック21と下流チャック22とによって正電極シート3が把持された状態で、正電極シート3を切断する。切断装置20は、巻回機構14に巻回された正電極シート3の終端部3Bと、次に巻回される正電極シート3の始端部3Aとの境界で、正電極シート3を切断する。
【0040】
正電極シート3が切断されると、
図5Dに示すように、下流チャック22は解放位置に移動し、切断装置20は退避位置に移動する。上流チャック21は、切断装置20よりも上流位置において正電極シート3を把持している。そして、巻回機構14が巻芯7を回転させることで、電極シートの終端部3Bが巻芯7に巻回される。第2供給装置13も、上述した第1供給装置12と同様に動作する。それにより、正電極シート3と、第1セパレータシート4と、負電極シート5と、第2セパレータシート6とが筒状に巻回されることで、電池素子2が製造される。
【0041】
切断工程が完了すると、製造装置1は、電池素子2が巻回された巻芯7を、次の巻芯7と交換する。例えば、製造装置1は、図示しない交換装置を備えており、交換装置により、電池素子2が巻回された巻芯7を、次の巻芯7と交換する。それにより、次の巻芯7が、巻回機構14に配置される。
【0042】
次に、製造装置1は、電極供給工程を開始する。
図6A~
図6Dは、電極供給工程での第1供給装置12の動作を示す図である。電極供給工程では、
図6Aに示すように、切断装置20と下流チャック22とは、搬送方向と逆方向に移動する。すなわち、切断装置20と下流チャック22とは、上流チャック21に近づくように移動する。そして、
図6Bに示すように、下流チャック22は、把持位置に移動する。それにより、下流チャック22は、切断装置20より下流位置で正電極シート3を把持する。
【0043】
次に、
図6Cに示すように、上流チャック21は、解放位置に移動する。それにより、正電極シート3が上流チャック21による把持から解放される。そして、
図6Dに示すように、下流チャック22は、正電極シート3を把持した状態で、搬送方向に移動する。このとき、始端位置センサ23は、始端部3Aの幅方向へのズレ量とズレ方向とを検出する。補正アクチュエータ24は、ズレ量とズレ方向とに基づいて、始端部3Aの幅方向への位置ずれを補正する。それにより、正電極シート3の始端部3Aが、精度よく巻回開始位置に供給される。
【0044】
第1電極シートの始端部3Aは、巻回開始位置において、第1セパレータシート4と共に、巻芯7に巻回される。このとき、切断装置20は、搬送方向に移動して
図3に示す巻回工程における位置に戻る。下流チャック22は、解放位置に移動すると共に、搬送方向と逆方向に移動して、
図3に示す巻回工程における位置に戻る。それにより、上述した巻回工程が再び開始される。
【0045】
第2供給装置13も、上述した第1供給装置12と同様に動作する。それにより、第2電極シートの始端部が、巻回開始位置に供給される。そして、第2電極シートの始端部が、第2セパレータシート6と共に、巻芯7に巻回される。
【0046】
以上説明した本実施形態に係る電池素子2の製造装置1では、電極供給工程において、下流チャック22は、切断装置20よりも下流位置において正電極シート3を把持する。そのため、下流チャック22が、始端部3Aを巻回機構14に搬送する際に、切断装置20を大きく退避させなくても、下流チャック22が切断装置20と干渉することが回避される。それにより、電池素子2の製造装置1を小型化することができる。
【0047】
例えば、
図3に示すように、切断装置20が退避位置において、刃部30と台部31との間の距離は、下流チャック22よりも小さくてもよい。刃部30と台部31との間の距離は、正電極シート3と接触しない程度の小さな距離であってもよい。そのため、刃部30と台部31との位置合わせの精度が向上することで、正電極シート3の切断の品質が向上する。
【0048】
切断工程において、切断装置20は、上流チャック21と下流チャック22とによって正電極シート3が把持された状態で、正電極シート3を切断する。そのため、切断時における正電極シート3の撓みが抑えられる。それにより、正電極シート3の切断の品質が向上する。
【0049】
始端位置センサ23は、切断装置20よりも下流に配置されている。従って、始端位置センサ23は、切断装置20よりも上流に配置される場合と比べて、巻芯7に近い位置で、始端部3Aの幅方向の位置を検出することができる。それにより、始端部3Aの位置ズレの補正の精度が向上する。
【0050】
切断装置20は、正電極シート3を切断後、下流チャック22が始端部3Aを把持する前に、搬送方向と逆方向に移動する。それにより、下流チャック22が切断装置20と干渉することが抑えられると共に、下流チャック22による正電極シート3の把持代を確保することができる。
【0051】
以上、第1供給装置12による本実施形態に係る製造装置1の効果について説明したが、第2供給装置13によっても、上述した第1供給装置12による効果と同様の効果が得られる。
【0052】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0053】
ガイド機構11、第1供給装置12、第2供給装置13、或いは巻回機構14の構成は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、ガイド機構11におけるガイドローラの配置、及び、数は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。
【0054】
第1供給装置12において、下流チャック22の構造は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、下流チャック22は、ローラに限らず、パッドなどの他の部材によって、正電極シート3を把持してもよい。上流チャック21の構造は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、上流チャック21は、一対のローラなどの他の部材によって、正電極シート3を把持してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本開示によれば、電池素子の製造装置を小型化すると共に、電池素子の製造品質を向上させることができる。
【符号の説明】
【0056】
1:製造装置
3:正電極シート
3B:終端部
3A:始端部
14:巻回機構
20:切断装置
21:上流チャック
22:下流チャック
23:始端位置センサ
24:補正アクチュエータ
34:パッド
35:上流ローラ
37,38:下流ローラ
【要約】
【課題】電池素子の製造装置を小型化すると共に、電池素子の製造品質を向上させる。
【解決手段】製造装置は、巻回機構と、切断装置と、上流チャックと、下流チャックと、始端位置センサと、補正アクチュエータとを備える。巻回機構は、電極シートを巻回する。切断装置は、巻回された電極シートの終端部と、巻回機構によって次に巻回される電極シートの始端部との境界において電極シートを切断する。上流チャックは、切断装置よりも上流位置において電極シートを把持可能である。下流チャックは、切断装置よりも下流位置において電極シートを把持可能である。下流チャックは、始端部を把持して、巻回機構に向かう搬送方向に移動することにより、始端部を巻回機構による巻回開始位置に搬送する。始端位置センサは、始端部の幅方向の位置を検出する。補正アクチュエータは、下流チャックの位置を調整することにより、巻回機構に対する始端部の幅方向への位置ずれを補正する。
【選択図】
図3