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特許7379757電池のケース短絡処理方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】電池のケース短絡処理方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20231107BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
H02J7/00 S
H01M10/48 P
H02J7/00 Q
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2023519112
(86)(22)【出願日】2022-05-23
(86)【国際出願番号】 CN2022094500
(87)【国際公開番号】W WO2023071160
(87)【国際公開日】2023-05-04
【審査請求日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】202111241532.0
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522010668
【氏名又は名称】ジアンス・コンテンポラリー・アンプレックス・テクノロジー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100159329
【弁理士】
【氏名又は名称】三縄 隆
(72)【発明者】
【氏名】万 云霄
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 浩
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-305752(JP,A)
【文献】特開2004-319463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R31/36-31/44
H01M10/42-10/48
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池のケースと電池の第1極との短絡が検出された場合、前記ケースと前記電池の第2極とを短絡接続させるステップであって、前記第1極が正極であれば、前記第2極が負極であり、前記第1極が負極であれば、前記第2極が正極であるステップと、
前記電池のケースと第2極との間の短絡接続を解除し、前記電池を所定時間静置するステップと、
前記電池が所定時間静置された後、前記ケースと前記第1極との間の電位差を検出するステップと、
前記ケースと前記第1極との間の電位差が所定範囲内であるか否かに基づき、前記ケースと前記第1極との間の短絡の種類および前記短絡が解消されたか否かを確定するステップと、を含む電池のケース短絡処理方法。
【請求項2】
前記ケースと前記第1極との間の電位差が所定範囲内であるか否かに基づき、前記ケースと前記第1極との間の短絡の種類および前記短絡が解消されたか否かを確定する前記ステップは、
前記ケースと前記第1極との間の電位差が所定範囲内である場合、前記ケースと前記第1極との間の短絡の種類がケース外部短絡であり、かつ前記ケース外部短絡が解消されたと確定することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ケースと前記第1極との間の電位差が所定範囲内であるか否かに基づき、前記ケースと前記第1極との間の短絡の種類および前記短絡が解消されたか否かを確定する前記ステップは、
前記ケースと前記第1極との間の電位差が所定範囲外である場合、前記ケースと前記第1極との間の短絡の種類がケース内部短絡であり、かつ前記ケース内部短絡が解消されていないと確定することを含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、前記ケースと前記第2極とを短絡接続させる前に、前記ケース上の電解液を洗浄するステップをさらに含む請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記ケースと前記第2極とを短絡接続させる前に、前記ケース上の電解液を洗浄する前記ステップは、
前記電解液の有機溶媒で前記電池を浸漬することにより、ケース表面の電解液を溶解させることと、
揮発性を有するアルコール類物質で前記有機溶媒から取り出した前記電池を浸漬することにより、前記ケース表面に残留する有機溶媒を除去することと、を含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記有機溶媒で前記電池を浸漬する時間を第1の時間とし、
および/または、
前記アルコール類物質で前記電池を浸漬する時間を第2の時間とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ケースと前記第2極とを短絡接続させる前に、前記ケース上の電解液を洗浄する前記ステップは、
有機溶媒で前記電池を浸漬する前に、所定温度の脱イオン水で前記電池を浸漬することにより、前記ケース表面の電解液の結晶を溶解させることを含む請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記脱イオン水で前記電池を浸漬する時間を第3の時間とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記所定温度は70℃~90℃の間である請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記ケースと前記第2極とを短絡接続させる前に、前記ケース上の電解液を洗浄する前記ステップは、
前記電池が浸漬されている間、前記電池に対して超音波を放射することを含む請求項4~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
機溶媒は、
ジメチルカーボネート、
ジエチルカーボネート、
ジプロピルカーボネートのうちの少なくとも1つを含み、
および/または、
ルコール類物質は、
無水エタノールおよび/または無水メタノールを含む請求項4~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、ケース表面の電解液を洗浄する前に、前記第2極のポストを封止することをさらに含む請求項4~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法は、前記ケースと前記第1極との間の電位差が所定範囲外であると検出された場合、前記ケースと前記第1極との間が短絡していると確定するステップをさらに含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項14】
前記所定時間は、6時間~54時間である請求項1または2に記載の方法。
【請求項15】
電池のケースと電池の第1極との短絡が検出された場合、前記ケースと前記電池の第2極とを短絡接続させるためのものであって、前記第1極が正極であれば、前記第2極が負極であり、前記第1極が負極であれば、前記第2極が正極である短絡接続部材と、
前記ケースと前記第極との間の短絡接続が解除されて前記電池が所定時間まで静置した後、前記ケースと前記第1極との間の電位差を検出するための検出装置と、
前記ケースと前記第1極との間の電位差が所定範囲内であるか否かに基づき、前記ケースと前記第1極との間の短絡の種類および前記短絡が解消されたか否かを確定するための情報処理装置とを含む電池のケース短絡処理システム。
【請求項16】
前記情報処理装置は、具体的には、前記ケースと前記第1極との間の電位差が前記所定範囲内である場合、前記ケースと前記第1極との間の短絡の種類がケース外部短絡であり、かつ前記ケース外部短絡が解消されたと確定するために用いられる請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記情報処理装置は、さらに具体的には、前記ケースと前記第1極との間の電位差が前記所定範囲外である場合、前記ケースと前記第1極との間の短絡の種類がケース内部短絡であり、かつ前記ケース内部短絡が解消されていないと確定するために用いられる請求項15または16に記載のシステム。
【請求項18】
前記システムは、前記ケースと第2極とを短絡接続させる前に、前記ケース上の電解液を洗浄するための洗浄装置をさらに含む請求項15または16に記載のシステム。
【請求項19】
前記洗浄装置は、
所定温度の脱イオン水、電解液の有機溶媒および揮発性を有するアルコール類物質で前記電池を順次に浸漬するための容器と、
前記電池が浸漬されている間、前記電池に対して超音波を放射するための超音波放射器と、を含む請求項18に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年10月25日に提出された名称が「電池のケース短絡処理方法およびシステム」である中国特許出願2021112415320号に基づく優先権を主張するものであり、当該出願の全ての内容を本文に引用により組み込まれている。
【0002】
本願は、電池技術分野に関し、特に電池のケース短絡処理方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
近年、動力電池の応用範囲は広がることにつれて、例えば、水力、火力、風力、太陽光発電所などのエネルギー電源システム、および電動工具、軍事用機器、航空宇宙などの多くの分野で広く用いられている。
【0004】
動力電池は、組み立てや試験時に電池のケースが電解液に汚染されたり、絶縁すべき部品間の絶縁異常が生じたりして、電池のケース短絡などの問題が発生する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記問題に鑑みて、本願は、電池ケース短絡の問題を少なくとも一部解決できる、電池のケース短絡処理方法およびシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
電池のケースと電池の第1極との短絡が検出された場合、ケースと電池の第2極とを短絡接続させて、第1極が正極であれば、第2極が負極であり、第1極が負極であれば、第2極が正極であり、
電池ケースと第2極との間の短絡接続を解除し、電池を所定時間静置して、
電池が所定時間静置された後、ケースと第1極との間の電位差を検出して、
ケースと第1極との間の電位差が所定範囲内であるか否かに基づき、ケースと第1極との間の短絡の種類および短絡が解消されたか否かを確定する。
【0007】
電池のケースと第1極との短絡を発見した場合、ケースと第2極とを短絡接続させて電流をケースと第2極の間に移動させることにより、第1極に対するケースの電位差を正常値に戻すことができる。静置によってケース内部短絡を取り除くことができる場合、静置時間内にケース内部短絡で第1極に対するケースの電位差を再び異常にする。電池が所定時間まで静置された後、ケースと第1極との間の電位差を検出する。電位差が所定範囲内であれば、該ケースと第1極との間の短絡がケース外部短絡であり、かつこのようなケース外部短絡が既に修復されたと分かる。電位差が所定範囲外であれば、このような短絡がケース内部短絡であり、かつ修復不可能であると判断できる。第2極とケースとの短絡接続及び静置によってケース外部短絡を修復する一方、修復不可能なケース内部短絡を取り除くことができるため、ケース内部短絡を有する電池の使用による安全上の問題を低減できる。
【0008】
上記態様では、ケースと第1極との間の電位差が所定範囲内であるか否かに基づき、ケースと第1極との間の短絡の種類および短絡が解消されたか否かを確定するステップは、
ケースと第1極との間の電位差が所定範囲内である場合、ケースと第1極との間の短絡の種類がケース外部短絡であり、かつケース外部短絡が解消されたと確定することを含む。
【0009】
上記態様では、ケースと第1極との間の電位差が所定範囲内であるか否かに基づき、ケースと第1極との間の短絡の種類および短絡が解消されたか否かを確定するステップは、
ケースと第1極との間の電位差が所定範囲外である場合、ケースと第1極との間の短絡の種類がケース内部短絡であり、かつケース内部短絡が解消されていないと確定することを含む。
【0010】
前記ケース内部短絡やケース外部短絡という短絡の種類への確定は、第2極とケースとの短絡接続および電池静置後、ケースと第1極との間の電位差への測定、及び、測定して得られた電位差が所定範囲内であるか否かという比較判断によって簡単に実現できる。
【0011】
上記態様では、方法は、
ケースと第2極とを短絡接続させる前に、ケース上の電解液を洗浄するステップをさらに含む。
【0012】
ケースと第2極とを短絡接続させる前に、電解液の除去によって、ケース外部短絡が修復された後にケース上に残留する電解液の移動によるケース外部短絡の再度出現を防止できるため、ケース外部短絡のより徹底的な修復を実現する。
【0013】
上記態様では、ケースと第2極とを短絡接続させる前に、ケース上の電解液を洗浄するステップは、
電解液の有機溶媒で電池を浸漬することにより、ケース表面の電解液を溶解させることと、
揮発性を有するアルコール類物質で有機溶媒から取り出した電池を浸漬することにより、ケース表面に残留する有機溶媒を除去することを含む。
【0014】
電解液の有機溶媒でケース外面に残留する電解液を洗浄でき、同時に揮発性を有するアルコール類物質で電池を浸漬すれば、アルコール類物質の揮発性によってケース表面に残留する有機溶媒および有機溶媒に溶解した電解液を持ち去ることができるので、電池のケース外面の電解液をより徹底的に除去できる。
【0015】
上記態様では、有機溶媒で電池を浸漬する時間を第1の時間とし、
および/または、
アルコール類物質で電池を浸漬する時間を第2の時間とする。
【0016】
ケース外面の電解液を十分に除去することを確保するため、電池を有機溶媒とアルコール類物質に浸漬する時間をそれぞれ規定している。
【0017】
上記態様では、ケースと第2極とを短絡接続させる前に、ケース上の電解液を洗浄するステップは、
有機溶媒で電池を浸漬する前に、所定温度の脱イオン水で電池を浸漬することにより、ケース表面の電解液の結晶を溶解させることを含む。
【0018】
比較的に温度の高い脱イオン水で電池を浸漬することにより、ケース表面の電解液の結晶を溶解させることができるため、ケースの外面をより徹底的に洗浄できる。
【0019】
上記態様では、脱イオン水で電池を浸漬する時間を第3の時間とする。
【0020】
ケース外面の電解液の結晶をより徹底的に溶解させるため、脱イオン水で電池を浸漬する時間は第3の時間に達する必要がある。
【0021】
上記態様では、所定温度は70℃~90℃の間である。
【0022】
該所定温度は、結晶を迅速かつ十分に溶解させることを確保できる。
【0023】
上記態様では、ケースと第2極とを短絡接続させる前に、ケース上の電解液を洗浄するステップは、
電池が浸漬されている間、電池に対して超音波を放射することを含む。
【0024】
超音波の放射による微振動で、電池のケースをより徹底的に洗浄できる。
【0025】
上記態様では、有機溶媒は、
ジメチルカーボネート、
ジエチルカーボネート、
ジプロピルカーボネートのうちの少なくとも1つを含み、
および/または、
アルコール類物質は、
無水エタノールおよび/または無水メタノールを含む。
【0026】
上述の有機溶媒およびアルコール類物質はいずれも入手しやすく低コストという特徴を有する。
【0027】
上記態様では、方法は、
ケース表面の電解液を洗浄する前に、電池の第2極のポストを封止するステップをさらに含む。
【0028】
電池のポストを封止することで、電池が浸漬されている間のポストの腐敗を抑え、さらに修復後の電池の寿命を確保することができる。
【0029】
上記態様では、ケースと第1極との間の電位差が所定範囲外であると検出された場合、ケースと第1極との間が短絡していると確定するステップをさらに含む。
【0030】
ケースと第1極との電位差を検出することにより、電池のケースが短絡しているか否かを簡単かつ迅速に発見できる。
【0031】
上記態様では、所定時間は6時間~54時間である。
【0032】
第2極とケースとの間の短絡接続が解除された後の電池の静置時間を所定時間にすることにより、ケース内部短絡を再び放電させるので、ケース内部短絡をできるだけ検出し、ケース内部短絡を有する電池が使用に供されることを防止することができる。
【0033】
本願実施例の第2の態様は、
電池のケースと電池の第1極との短絡が検出された場合、ケースと電池の第2極とを短絡接続させるためのものであって、第1極が正極であれば、第2極が負極であり、第1極が負極であれば、第2極が正極である短絡接続部材と、
ケースと第極との間の短絡接続が解除されて電池が所定時間まで静置した後、ケースと第1極との間の電位差を検出するための検出装置と、
ケースと第1極との間の電位差が所定範囲内であるか否かに基づき、ケースと第1極との間の短絡の種類および短絡が解消されたか否かを確定するための情報処理装置とを含む電池のケース短絡処理システムを提供する。
【0034】
上記態様では、情報処理装置は、具体的には、ケースと第1極との間の電位差が所定範囲内である場合、ケースと第1極との間の短絡の種類がケース外部短絡であり、かつケース外部短絡が解消されたと確定するために用いられる。
【0035】
情報処理装置は、さらに具体的には、ケースと第1極との間の電位差が所定範囲外である場合、ケースと第1極との間の短絡の種類がケース内部短絡であり、かつケース内部短絡が解消されていないと確定するために用いられる。
【0036】
情報処理装置は、ケースと第1極との電位差が所定範囲内外であるか否かに基づき、ケースと第1極との短絡が解消されたか否かを確定し、かつケース内部短絡を正確に選別することができる。
【0037】
上記態様では、システムは、
ケースと第2極とを短絡接続させる前に、ケース上の電解液を洗浄するための洗浄装置をさらに含む。
【0038】
上記態様では、洗浄装置は、
所定温度の脱イオン水、電解液の有機溶媒および揮発性を有するアルコール類物質で電池を順次に浸漬するための容器と、
電池が浸漬されている間、電池に対して超音波を放射するための超音波放射器とを含む。
【0039】
超音波の導入により、より良い洗浄を実現できる。
【0040】
上述した説明は、本願の技術的手段をより明確に理解するために概説したものに過ぎず、明細書の内容に従って実施することが可能である。また、本願の上記およびその他の目的、特徴、利点などをより明確化し理解しやすくするために、本願を実施するための形態を次のように具体的に挙げる。
【0041】
以下の好ましい実施の形態の詳細な説明を読むことにより、当業者からすれば様々な他の利点および長所は明らかになる。図面は、好ましい実施の形態を示すためものに過ぎず、本願を限定するものとみなされてはならない。なお、全ての図面において、同じ部品には同じ符号を付している。図面においては、
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本願の一実施例に係る電池のケース短絡処理方法のフローチャートである。
図2】本願の一実施例に係る電池の構造の概略図である。
図3】本願の一実施例に係る電池と第2極とを短絡接続させる場合の概略図である。
図4】本願の一実施例に係る電池のケース短絡処理方法のフローチャートである。
図5】本願の一実施例に係るケース表面の電解液洗浄のフローチャートである。
図6】本願の一実施例に係る電池のケース短絡処理方法のフローチャートである。
図7】本願の一実施例に係る電池のケース短絡処理方法の効果の概略図である。
図8】本願の一実施例に係る電池のケース短絡処理システムの構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面を参照しながら、本願発明の実施例を詳しく説明する。以下の実施例は、単に本願の発明をより明確に説明するためのものであるので、例示に過ぎず、これによって本願の保護範囲を限定してはならない。
【0044】
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本願に係る当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。本明細書で使用される用語は、具体的な実施例を説明するためだけであり、本願を限定することを意図するものではない。本願の明細書、特許請求の範囲および上記図面の簡単な説明における「含む」や「有する」という用語、並びにそれらのいかなる変形は、非排他的な包含をカバーすることを意図するものである。
【0045】
本願の実施例の説明において、技術用語の「第1」「第2」などは、単に異なる対象を区別するために使用され、相対的な重要性を示すかまたは技術的特徴の数、特定の順序、または主従関係を暗示するものとして理解されるべきではない。本願の実施例の説明において、「複数」は、特に明記しない限り、2つ以上を意味する。
【0046】
本明細書で言う「実施例」は、実施例に記載の特定の特徴、構造または特性を組み合わせたものが本願の少なくとも1つの実施例に含まれ得ることを意味する。本明細書の各箇所に現れるこの用語は、必ずしも全てが同じ実施例を指すものではなく、他の実施例と互いに排他的で独立または代替の実施例を意味するものでもない。当業者は、本明細書に記載された実施例が他の実施例と組み合わされてもよいことを明示的にも暗黙的にも理解できる。
【0047】
本願の実施例の説明において、「および/または」という用語は、関連する対象の関連関係を説明するものに過ぎず、3つの関係があり得ることを意味する。「Aおよび/またはB」を例にすると、単にA、AとBの両方、単にBという3つの場合があり得る。また、本文中の「/」は、一般的に前後の関連対象が「または」という関係を有すると示す。
【0048】
本願の実施例の説明において、「複数」という用語は2つ以上(2つを含む)を意味し、同様に、「複数組」は2組以上(2組を含む)を意味し、「複数枚」は2枚以上(2枚を含む)を意味する。
【0049】
本願の実施例の説明において、技術用語の「中心」、「縦方向」、「横方向」、「長さ」、「幅」、「厚さ」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」、「時計回り」、「反時計回り」、「軸方向」、「径方向」、「周方向」などが示す向きや位置関係は、図面における向きや位置関係に基づくものであり、単に本願の実施例の説明を容易にし、簡略化するためであり、示される装置や素子が特定の向きを有する必要があり、特定の向きで構成されて動作しなければならないことを示すかまたは暗示するものではないため、本願の実施例を限定するものとして解釈してはならない。
【0050】
本願の実施例の説明において、特に明記・限定しない限り、技術用語の「装着」、「つながる」、「接続」、「固定」などは、広義に理解されるべきである。例えば、固定接続、取り外し可能な接続、または一体化でもよく、機械的接続でも電気的接続でもよく、直接つながっても中間媒体を介した間接つながってもよく、両素子の内部的な連通や両素子の相互作用関係であってもよい。当業者からすれば、具体的な状況に応じて本願の実施例に記載のこれらの用語の具体的な意味を理解できる。
【0051】
現状では、ケースと負極または正極との間に短絡が発生する可能性があり、かつケースと電池の正極または負極との短絡を修復することが比較的に難しく、修復してしばらく経つとケースと電池の正極または負極との間が再び短絡してしまう。
【0052】
研究によると、ケースと電池のポストの間に電解質や金属粒子などが残留していると、電池のケースと対応する極との間にケース外部短絡が発生するが、このようなケース外部短絡により、正極に対するケースの電位差が小さくなり、あるいは負極に対する電位差が小さくなることを見出した。電池のケース内部の一部構造が破損すると、ケースと電池の正極または負極との間にケース内部短絡が発生する。
【0053】
ケース外部短絡の場合、ケースと負極との間が短絡するなら、ケースと正極とを短絡接続させることが考えられる。短絡接続させることにより正極からケースへと放電させることで、負極に対するケースの電位差を上昇させることができる。ケースと正極との間が短絡するなら、ケースと負極とを短絡接続させることが考えられる。このような短絡接続によりケースから負極へと放電させることで、ケースに対する正極の電位差を上昇させる結果、正極や負極に対するケースの電位差が正常に戻る。
【0054】
正極や負極に対するケースの電位差が正常に戻った後、電池を一定期間静置していると、ケースの短絡の種類がケース内部短絡である場合、上述のように短絡接続させてもケースの短絡が修復できないため、静置時間内にケース内部短絡が放電する結果、正極や負極に対するケースの電位差は再び異常になる。このように、静置後の電位差を測定することにより、短絡接続させて修復できる電池、ケース内部短絡を有する修復不可能な電池を選別することができる。
【0055】
本願の実施例で開示される電池は、車両、船舶または航空機などの電気装置に用いられてもよいが、これらに限定されない。本願の実施例は、電池を電源として使用する電気装置を提供し、電気装置は、携帯電話、タブレット、ノートパソコン、電動玩具、電動工具、電気自転車、電気自動車、船舶、宇宙機などが挙げられるが、これらに限定されない。ここで、電動玩具は、ゲーム機、電気自動車玩具、電動船舶玩具、電動飛行機玩具などの据置型または移動型電動玩具を含み、宇宙機は、飛行機、ロケット、スペースシャトル、宇宙船などを含むことができる。
【0056】
本願の実施例に係る用語「短絡接続させる」は、電気的接続、例えば、フレキシブルワイヤまたは金属ワイヤで第2極とケースを接続して第2極とケースとの間の放電接続を形成するようなものとして理解できる。
【0057】
本願の実施例に係る用語「静置」は、室温(常温ともいう)での放置として理解できる。
【0058】
本開示の実施例に係る用語「電解液の有機溶媒」は、電解液を溶解し得る任意の有機物質からなる溶媒を意味すると理解できる。
【0059】
本開示の実施例に係る用語「揮発性を有するアルコール類物質」は、ヒドロキシル基を有する各種のアルコール類試薬を意味すると理解できる。
【0060】
図1に示すように、本願の実施例は、
S110:電池のケースと電池の第1極との短絡が検出された場合、ケースと電池の第2極とを短絡接続させるステップであって、第1極が正極であれば、第2極が負極であり、第1極が負極であれば、第2極が正極であるステップと、
S120:電池ケースと第2極との間の短絡接続を解除し、電池を所定時間静置するステップと、
S130:電池が所定時間静置された後、ケースと第1極との間の電位差を検出するステップと、
S140:ケースと第1極との間の電位差が所定範囲内であるか否かに基づき、ケースと第1極との間の短絡の種類および短絡が解消されたか否かを確定するステップと、
を含む電池のケース短絡処理方法を提供する。
【0061】
該電池は、リチウムイオン電池またはナトリウムイオン電池などの動力電池であってもよい。
【0062】
図2を参照すると、電池は、ケース、正極ポスト、正極シート、負極ポストおよび負極シートなどを含んでもよい。正極ポストと負極ポストはポストと総称でき、ケースの開口部から電池外部に露出している。正極ポストは正極シートと電気的に接続されており、負極シートは負極ポストと電気的に接続されている。
【0063】
ケースは、一般的に金属ケースまたは合金ケースであってもよい。例として、ケースは、アルミケースであってもよい。つまり、ケース自体も導体である。
【0064】
ケースと正極が短絡すると、ケースから外部へ漏電する。負極とケースが短絡すると、電池の放電能力が低下し、かつケースが腐食穿孔されて電池の安全性に影響を及ぼす。
【0065】
ケースと電池との間が短絡していない場合、正極の電位はケースの電位より高く、ケースの電位は負極の電位より高く、かつ正極とケースとの電位差が所定値より大きい必要があり、ケースと負極との電位差も所定値より大きい必要があり、この場合こそケースと正極や負極とそれぞれの間の絶縁が十分であると証明できる。
【0066】
そこで、検出装置により、電池のケースと正極や負極との電池差を検出し、電位差が所定範囲内であるか否かに基づき、ケースと電池の正極または負極との短絡の有無を確定する。
【0067】
電池のケースと第1極との短絡が検出された場合、電池の第2極とケースとを短絡接続させることにより、ケースにおけるイオン(例えば、リチウムイオンまたはナトリウムイオン)のケースからの離脱を実現し、ケースに蓄積されたイオンと正極または負極との接触による短絡を低減する。
【0068】
電池のケースと正極や負極との間の短絡は、ケース内部短絡とケース外部短絡に分けられる。
【0069】
図2は、負極とケースとの短絡の場合を示すものであり、短絡接続させるのは正極とケースである。
【0070】
ケース外部短絡の多くは、ケース表面が電解液や金属に汚染されたことに起因し、ケース外部と電池の正極または負極との間が短絡してしまうことである。この場合、ケースからのイオン離脱により電池のケースの修復を実現できる。
【0071】
ケース内部短絡は、ケース内部で発生するものであり、電池のケース表面のイオンまたは金属の除去による修復は比較的に難しい。
【0072】
短絡の種類がケース内部短絡である場合、第2極とケースとをしばらく短絡接続させた後、第1極に対するケースの電位差を正常値に戻すことができるが、一定時間静置した後、ケース内部短絡が実質的に解消されていないため、この場合第1極に対するケースの電位差は電池静置期間中に再び異常値に戻ってしまう。
【0073】
そこで、本発明の実施例において、ケースと第2極との間の短絡接続を解除した後、電池を所定時間静置する必要があり、修復不可能なケース内部短絡なら第1極に対するケースの電位差が再び異常値に戻る。この異常値は、所定範囲内の任意の値であってもよい。
【0074】
このように、電池を一定時間静置した後、電池の第1極とケースとの間の電位差を測定する。電位差が正常(例えば、所定範囲内)であれば、第1極とケースとの間の短絡が解消されたと分かり、かつ解消可能なケースと第1極との間の短絡の種類は、ケース外部短絡である。測定された電位差が異常であれば、第1極とケースとの間の短絡が解消されておらず、かつケースと第1極との間の短絡の種類がケース内部短絡である確率が極めて高いことが分かる。
【0075】
ケース外部短絡は修復可能なケース異常である一方、ケース内部短絡は修復不可能なケース異常であると考えられる。
【0076】
典型的なケース外部短絡として、
ケースが電解液に汚染され、外部において電解液と電池の正極または負極との間で引き起こす短絡、
ポストとケースとの間のスプライス接続、
電池表面の充放電用プローブとケースとの間のスプライス接続
が含まれてもよい。
【0077】
典型的なケース内部短絡として、以下のようなものが含まれてもよい。
タブとケースとの間のスプライス接続であって、タブはケース内部に位置し、電極シートの一部であり、電極シートとポストとの間の接続構造である;
集電体とケースとの間のスプライス接続であって、集電体は電極シートの一部であり、電極シートは集電体を含み、集電体には活物質が配置され、かつ活物質でコーティングされていない部分がタブを形成することができる。活物質内にリチウムイオンやナトリウムイオンなどのイオンを有し、イオンの移動により電池の充放電を可能にする;
正極シートと負極シートとの間に位置し、正極シートと負極シートを隔離するセパレータの破損;
絶縁膜(例えば、マイラー)の破損;
電池ケースの開口部付近の絶縁部材の抵抗値の異常であって、該開口部はポストが突出するためのものであり、該絶縁部材の設置によりポストとケースとの間が絶縁されるが、絶縁部材の抵抗値が過小であるという異常が生じると、ポストとケースとの間が短絡し、かつこのような短絡はケース内部で発生する。該開口部は、ケースの本体部分以外のエンドキャップによって覆われ、つまり、該絶縁部材は該エンドキャップの内部に位置している。
【0078】
S110に係るケースと第極とを短絡接続させることは、第極のポストとケースを導線で接続することを含んでもよい。例えば、導電シートをそれぞれケースと第極のポストに接触させることにより、導体間接触で短絡接続を実現する。
【0079】
一部の実施例において、短絡の種類がケース内部短絡である場合、電池の安全性を確保するため、電池を廃棄することになる。不要な廃棄を減らすためには、前記ケース短絡処理方法を1回実行した処理結果に基づき、短絡の種類がケース内部短絡であると確定された電池に対し、前記ケース短絡処理方法を1回または複数回繰り返して実行する必要があり、これによりケース内部短絡の判定結果の1回の誤判定による電池の不要な廃棄を避ける。
【0080】
したがって、本開示の実施例では、電池自体の第2極とケースとを短絡接続させること、電池の静置およびケースと第1極との間の電位差の検出を利用すれば、ケースと第1極との間の短絡の種類を簡単に知り、ケース外部短絡という種類を解消することができる。
【0081】
図3を参照すると、第1極とケースとの間の短絡を修復する場合、ケースと第1極との間の短絡を有する複数の電池を一括修復してもよい。
【0082】
例えば、S140は、
ケースと第1極との間の電位差が所定範囲内である場合、ケースと第1極との間の短絡の種類がケース外部短絡であり、かつケース外部短絡が解消されたと確定することを含んでもよい。
【0083】
所定範囲は電池の活物質によって異なる。例えば、リチウム電池を例に説明すると、三元ポリマーリチウム電池の場合、所定範囲は、所定値以上の範囲であってもよい。該所定値は、2Vでも、中央値を2Vとした特定範囲内の任意の値でもよい。
【0084】
リン酸鉄リチウム電池の場合、所定範囲は、所定値以上の範囲であってもよく、該所定値は、中央値を1.5Vとする範囲が可能である。例として、所定値の範囲は、1V~3.5Vの間にすることができる。
【0085】
第1極が正極や負極の場合、所定範囲を規定する所定値は同じでも異なってもよい。
【0086】
例として、第1極が正極や負極の場合、負極に対する所定値は正極に対する所定値よりもわずかに大きくてもよい。
【0087】
例として、三元ポリマーリチウム電池の場合、負極とケースの間の電圧が1.5V未満であれば、負極とケースの間が短絡していると判断し、正極とケースの間の電圧が1V未満であれば、正極とケースの間が短絡していると判断することができる。負極とケースの間の電圧が1.5V以上であれば、負極とケースの間が短絡していないと判断し、正極とケースの間の電圧が1V以上であれば、正極とケースの間が短絡していないと判断することができる。
【0088】
また、例として、リン酸鉄リチウム電池の場合、負極とケースの間の電圧が2V未満であれば、負極とケースの間が短絡していると判断し、正極とケースの間の電圧が1.5V未満であれば、正極とケースの間が短絡していると判断することができる。負極とケースの間の電圧が2V以上であれば、負極とケースの間が短絡していないと判断し、正極とケースの間の電圧が1.5V以上であれば、正極とケースの間が短絡していないと判断することができる。無論、上記は単に例に過ぎない。
【0089】
短絡接続、静置、再測定により、ケースと第1極との電位差が所定範囲内であることが判明した場合、ケースと第1極との電位差が正常に戻ったことを示すため、該ケースと第1極との短絡が修復され、かつ該短絡の種類がケース外部短絡であると判断できる。
【0090】
別の実施例において、S140は、ケースと第1極との間の電位差が所定範囲外である場合、ケースと第1極との間の短絡の種類がケース内部短絡であり、かつケース内部短絡が解消されていないと確定することを含んでもよい。
【0091】
短絡接続が解除された当初、ケースと第1極との間の電位差は正常値に戻るが、しばらく静置している間、ケースと第1極との間の短絡がケース内部短絡であれば、ケース内部短絡によって形成される回路によって第1極に対するケースの電位差が再び異常となるので、この際に測定した電位差が所定範囲外になったら、ケースと第1極との短絡が解消されておらず、かつケースと第1極との短絡の種類が修復不可能なケース内部短絡であると判断できる。
【0092】
一部の実施例において、図4に示すように、方法は、
S100:ケースと第2極とを短絡接続させる前に、ケース上の電解液を洗浄するステップをさらに含む。
【0093】
ケース外部短絡の解消後にケースに残留した電解液の移動によるケースと電池の第1極や第2極との再度短絡を低減し、ケース外部短絡をより徹底的に解消するためである。
【0094】
本開示の実施例において、ケースと第極とを短絡接続させる前に、まずケース上の電解液を洗浄する。ケースの外面の電解液を洗浄することで、一方では異常除去のための短絡接続に要する時間を短縮し、他方ではこのようなケース外部短絡による異常をより徹底的に解消することができる。
【0095】
ここで、ケースと第2極とを短絡接続させる前に、ケース上の電解液を洗浄するステップは、少なくとも、
ケースと第2極とを短絡接続させる前に、ケースと第1極のポストとの間の電解液を洗浄することを含んでもよい。
【0096】
このように、各種の溶液でケース上の電解液を洗浄する場合、少なくとも第1極のポストおよび第1極のポスト付近のケースを対応する溶媒に浸漬する必要がある。例えば、少なくとも第1極のポストおよびケースの一部を脱イオン水、電解液の有機溶媒、揮発性を有するアルコール類物質に浸漬する必要がある。
【0097】
図5に示すように、S100は、
S102:電解液の有機溶媒で電池を浸漬することにより、ケース表面の電解液を溶解させるステップと、
S104:揮発性を有するアルコール類物質で有機溶媒から取り出した電池を浸漬することにより、ケース表面に残留する有機溶媒を除去するステップと、
を含んでもよい。
【0098】
一実施例では、電解液の有機溶媒で電池のケース表面の電解液を溶解できるため、ケース表面の電解液の洗浄を実現する。その後、電池を有機溶媒から取り出すだけでよい。
【0099】
該有機溶媒としては、各種の炭酸エステルが含まれるが、これらに限定されない。
【0100】
本開示の実施例では、電池を有機溶媒から取り出した後、電池のケースに残留する有機溶媒に溶解した電解液が、ケースと電池の正・負極との短絡を起こし続けることをさらに低減するために、高揮発性のアルコール類物質をさらに利用して有機溶媒を溶解させ、アルコール類物質の高揮発性を利用して有機溶媒を迅速に揮発させる。
【0101】
アルコール類物質の濃度を高くすることで、アルコール類物質の揮発性を確保することができる。したがって、電池を再びアルコール類物質に浸漬することで、電池のケース表面の電解液および/または金属物質のより徹底的な除去を実現できる。
【0102】
一部の実施例では、有機溶媒で電池を浸漬する時間を第1の時間とし、
および/または、
アルコール類物質で電池を浸漬する時間を第2の時間とする。
【0103】
第1の時間と第2の時間は同じでも異なってもよい。
【0104】
例として、第1の時間および第2の時間は、どちらも5~30minの間であってもよい。
【0105】
好ましくは、第1の時間も第2の時間も、5min、10minまたは15minのいずれかであり、具体的な長さは電池の体積および/またはケースの形状などによって決められる。
【0106】
一実施例では、図5に示すように、S100は、
S101:有機溶媒で電池を浸漬する前に、所定温度の脱イオン水で電池を浸漬することにより、ケース表面の電解液の結晶を溶解させるステップをさらに含む。
【0107】
電解液がケースを汚した後、比較的に乾燥している外部環境では、電解液から結晶が出る可能性がある。このような結晶をよりよく除去し、ケース外部短絡を修復した後に結晶が除去されていないことによる再度異常を低減するために、まず電池を所定温度の脱イオン水に浸漬することにより、ケース上の結晶を脱イオン水に溶解させることができる。
【0108】
脱イオン水が電気伝導度が弱いという特徴を利用し、処理過程の安全性を高める。
【0109】
一実施例では、脱イオン水で電池を浸漬する時間を第3の時間とする。
【0110】
第3の時間は、第1の時間および/または第2の時間と同じでも異なってもよい。
【0111】
例として、第3の時間の数値範囲は同様に5~30minの間であってもよい。
【0112】
一実施例では、所定温度は70~90℃の間である。
【0113】
脱イオン水の水温を70~90℃の間に設定することにより、超高温において電解液の結晶を脱イオン水により完全に溶解させることができる。
【0114】
好ましくは、所定温度は、75℃~85℃の間であり、さらに好ましくは、所定温度は、80℃~85℃の間である。
【0115】
一部の実施例では、S100は、
S106:電池が浸漬されている間、電池に対して超音波を放射するステップをさらに含む。
【0116】
電池が脱イオン水、有機溶媒、アルコール類物質に順次に浸漬されている際、電池に対して超音波を放射し、超音波によってケース表面の電解液の結晶、電解液または金属粒子などをよりきれいに洗浄する。
【0117】
一実施例では、有機溶媒は、
ジメチルカーボネート、
ジエチルカーボネート、
ジプロピルカーボネートのうちの少なくとも1つを含み、
別の実施例では、アルコール類物質は、
無水エタノールおよび/または無水メタノールを含む。
【0118】
無論、上記は有機溶媒やアルコール類物質の例に過ぎず、具体的な実施はこれらの例に限定されない。
【0119】
本開示の実施例において
一部の実施例では、図6に示すように、電池のケース短絡処理方法は、
S002:ケース表面の電解液を洗浄する前に、電池の第2極のポストを封止するステップをさらに含む。
【0120】
例えば、防水テープまたは防水フィルムなどで第2極のポストを包むことで、電池が脱イオン水などの液体に浸漬されたときの第2極のポストの酸化を防止し、これによりケース外部短絡修復後の電池の正常な使用を確保する。
【0121】
一部の実施例では、方法は、
S001:ケースと第1極との間の電位差が所定範囲外であると検出された場合、ケースと第1極との間が短絡していると確定するステップをさらに含む。
【0122】
例えば、電圧計などの方式により、ケースと電池の正極または負極との間の電位差をそれぞれ測定し、測定した電位差に基づいてケースと第1の極との間の短絡の有無を確定する。
【0123】
ケースと第1極との間の電位差が所定範囲外である場合、ケースと第1極との間の電位差が異常であり、ケースと第1極との間が短絡していることを意味し、上述のいずれか技術案に係るケース短絡処理方法によってケース外部短絡を解消するか、またはケース内部短絡と判断したら該電池を廃棄することで該電池の使用に供されることによる安全上の問題を回避することが可能である。
【0124】
ケースと第1極との短絡が検出された後、前記S110~S140を少なくとも1回実行することで、ケース短絡を解消することできる。
【0125】
一実施例では、第2極とケースとの短絡接続を解除した後の静置の所定時間は6時間~54時間である。
【0126】
好ましくは、所定時間は、24時間、36時間または48時間であってもよい。
【0127】
所定時間が24時間、36時間または48時間などの値であれば、ケースと第1極との間の小さな内部短絡でも検出できるため、修復不可能なケース内部短絡を有する異常電池をより精確に選別することができる。
【0128】
図7は、本願の一実施例に係るケース短絡処理方法でケースにおける負極とケースとの短絡を修復する前後の効果比較図である。図7の横軸は、日付と時間で、縦軸は負極とケースとの電位差である。
【0129】
図8に示すように、本開示の実施例は、
電池のケースと電池の第1極との短絡が検出された場合、ケースと電池の第2極とを短絡接続させるためのものであって、第1極が正極であれば、第2極が負極であり、第1極が負極であれば、第2極が正極である短絡接続部材110と、
ケースと第1極との間の短絡接続が解除されて電池が所定時間まで静置した後、ケースと第1極との間の電位差を検出するための検出装置120と、
ケースと第1極との間の電位差が所定範囲内であるか否かに基づき、ケースと第1極との間の短絡の種類および短絡が解消されたか否かを確定するための情報処理装置130とを含む電池のケース短絡処理システムを提供する。
【0130】
該短絡接続部材110は、
両端がそれぞれケースと第1極のポストに接触する接続端子を有し、ケースと第1極との短絡接続を可能にするフレキシブルワイヤと、
ケースと第1極にそれぞれ接触し、導体間接触によりケースと第1極との短絡接続を可能にする導電シートのうちの少なくとも1つを含むが、これらに限定されない。
【0131】
検出装置120は、第1極とケースとの間の電位差を測定できる電圧計などの電子機器を含むが、これらに限定されない。
【0132】
情報処理装置130は、デスクトップコンピュータ、ノートパソコンまたは検出装置120と一体化したマイクロプロセッサや組み込み制御装置などを含むが、これらに限定されない。
【0133】
一実施例では、情報処理装置130は検出装置120と分離して設置してもよい。別の実施例では、情報処理装置130は、さらに検出装置120と電気接続してもよい。このように、情報処理装置は、検出装置120により検出された電位差に基づいて、ケースと第1極との間の短絡が修復されたか否かを確定し、ケースと第1極との短絡が修復されていない場合、ケースの短絡の種類が修復不可能なケース内部短絡であると確定することができる。
【0134】
前記ケース短絡処理システムにより、電池のケース外部短絡をできるだけ簡単に修復し、同時にケース内部短絡を有する電池を取り除くことが可能となり、出荷された電池の歩留まりを確保し、使用時の電池の安全性を確保することができる。
【0135】
一部の実施例では、情報処理装置130は、具体的には、ケースと第1極との間の電位差が所定範囲内である場合、ケースと第1極との間の短絡の種類がケース外部短絡であり、かつケース外部短絡が解消されたと確定するために用いられる。
【0136】
別の実施形態では、情報処理装置130は、さらに具体的には、ケースと第1極との間の電位差が所定範囲外である場合、ケースと第1極との間の短絡の種類がケース内部短絡であり、かつケース内部短絡が解消されていないと確定するために用いられる。
【0137】
一部の実施例では、システムは、
ケースと第2極とを短絡接続させる前に、ケース上の電解液を洗浄するための洗浄装置をさらに含む。
【0138】
洗浄装置は、ケースと第2極とを短絡接続させる前に、ケース上の電解液を洗浄するために用いられる。ケース表面の電解液が十分に除去されていないことによる、ケースと第2極との短絡接続により修復された電池のケースと第1極との間の再度短絡を低減する。
【0139】
一部の実施例では、洗浄装置は、
所定温度の脱イオン水、電解液の有機溶媒および揮発性を有するアルコール類物質で電池を順次に浸漬するための容器と、
電池が浸漬されている間、電池に対して超音波を放射するための超音波放射器とを含む。
【0140】
容器は、脱イオン水、電解液の有機溶媒および揮発性を有するアルコール類物質などを収容するために用いられ、そして、ケース短絡を有する電池を、前記物質を収容した容器に浸漬する。
【0141】
超音波放射器は、超音波を放射することができ、電池を容器内の液体に浸漬している際に電池に対して超音波を放射し、超音波による振動で電池のケース表面をよりきれいに洗浄する。
【0142】
無論、一部の実施例では、システムは、
電池を洗浄する前に、第2極のポストなどを包んで封止するための封止装置をさらに含む。
【0143】
該封止装置は、第2極のポストに防水テープを巻き付けるロボットアーム、または、前記第2極のポストの表面に防水粘着層を塗布する糊付け装置などを含んでもよい。
【0144】
無論、これは封止装置の例に過ぎず、具体的な実現はこの例に限定されない。
【0145】
以下では、リチウム電子を例として説明する。
【0146】
リチウムイオン電池産業は、急速に発展し、特に、動力電池がますます重要視されている。寧徳時代(CATL)によって発表された第1世代ナトリウムイオン電池は大きな注目を集め、実験室の研究から大規模な商業的用途へのナトリウムイオン電池の大きな進歩を実現したことを示している。アルミケース系リチウムイオン電池またはナトリウムイオン電池の製造および検査工程において、負極とケースとの短絡が発生する可能性があり、短絡箇所によって、ケース内部短絡(内部短絡と略す)とケース外部短絡(外部短絡と略す)に分けられる。
【0147】
ケース内部短絡の原因としては、負極タブとのスプライス接続、集電盤とのスプライス接続、セパレータ/マイラーフィルムの破損、エンドキャップのプラスチック部材の抵抗値の異常などが含まれるが、これらに限定されない。
【0148】
ケース外部短絡の原因としては、負極ポストの電解液汚染、負極ポストの金属/プローブのスプライス接続などが含まれるが、これらに限定されない。
【0149】
負極とケースが短絡すると、アルミケースと負極で構成される一次電池は、アルミケースを正極、負極シートを負極とする完全な閉回路を形成することになる。電解液中のリチウムイオンは、アルミケース内に連続的に埋め込まれ、LixAl(リチウムアルミニウム合金、すなわち腐食生成物)を生成し、この時アルミケースの電極電位は急速に低下し、アルミケースと負極との電位差は大きく低下する。
【0150】
LixAl化合物は構造が緩く、該反応が長時間で行われるとアルミケースは腐食穿孔されてしまう。
【0151】
本開示が解決しようとする課題は、電池の負極-ケース内部短絡と負極-ケース外部短絡を選別・区別し、負極とケースとの短絡に起因する電池ケースの内部腐食を修復することである。
【0152】
本願の実施例は、電池ケースの内部腐食自己修復方法を提供し、
負極とケースに対して電位差を測定し、不良品を確定するが、例えば、負極とケースとの間の電位差がV0未満であると測定された場合には、その電池を不良品とし、該V0の数値範囲は、1V~3.5Vの間であってもよく、
不良品については、導線で電池の正極ポストとケースを一定時間短絡接続させ、アルミケースに埋め込まれたLiを脱離させて修復の目的を達成し、修復後の電池を常温で一定時間静置してから、負極とケースとの間の電位差を再測定する。
【0153】
再測定の電位差がV0以上である電池を修復済みの電池とする。
【0154】
再測定の電位差がV0未満である電池は、つまり修復不可能な電池であり、このような電池の負極とケースとの間には内部短絡が生じている。
【0155】
この方法は、負極とケースとの内部短絡、負極とケースとの外部短絡を簡単かつ迅速に区別し、負極とケースとの内部短絡を有する電池がクライアント側に流出して安全事故を起こすことを低減できる。
【0156】
この方法は、修復装置を別途追加する必要がなく、負極とケースとの間の外部短絡に起因する電池ケースの内部腐食を簡単かつ迅速に修復できる。負極とケースとの間の外部短絡(電解液、金属等による一時的な外部短絡)に起因する負極-ケース電圧測定不良品の誤廃棄を低減し、電池製造の歩留まりを向上させ、コストを節約する。
【0157】
電池の正極とケースとを短絡接続させて電池を修復する前に、負極ポストに対して洗浄を行い、それぞれ温水、ジエチルカーボネート(Diethyl CarBonate、DEC)、無水エタノールで超音波洗浄を行い、
修復後に常温で静置して負極とケースとの間の内部短絡と、負極とケースとの間の外部短絡とを選別・区別する。
【0158】
この方法は、アルミケース系リチウムイオン電池およびナトリウムイオン電池の両方に適用可能であるが、以上はリチウム電池を例示したものに過ぎない。
【0159】
この方法は、負極-ケース外部短絡による電池ケースの内部腐食を簡単かつ迅速に修復し、アルミケース上に生成したLixAl化合物中のLiイオンやNaイオンを脱離させて負極とケースとの間の電位差を正常に回復させることができる。
【0160】
電解液汚染による電池の負極-ケース外部短絡を有する電池に対して、修復前にそれぞれ温水、DEC、無水エタノールで超音波洗浄を行うことにより、残留した電解液を効果的に除去し、残留した電解液が後の使用時に吸水して負極ポストとケースを再び導通させることを回避できる。
【0161】
この方法は、負極とケースとの内部短絡と、負極とケースとの外部短絡とを簡単かつ迅速に区別し、負極とケースとの内部短絡を有する電池がクライアント側に流出して安全事故を引き起こすことを低減できる。
【0162】
本実施例は、電池ケースの内部腐食自己修復方法を提供し、まず、正極ポストを絶縁・防水テープで封止し、次に負極ポストをそれぞれ温水(30℃~85℃の脱イオン水)、DEC、無水エタノールに順次に浸漬し、5min~60min超音波洗浄した後、取り出してエアリングによる乾燥させた。
【0163】
洗浄後、正極ポストの絶縁・防水テープを除去し、次に電池の正極ポストとケースを導体(銅導線またはアルミ導線または他の金属導線)で接続した。
【0164】
0.2h~24h修復した後、導線を取り外した。導線で正極とケースを接続した後、正極とケースとの間に導線が接続されている電池を常温環境下に静置した。該常温は、25℃±所定温度であってもよい。
【0165】
修復後の電池を常温環境下で1h~48h静置した。
【0166】
その後、負極-ケースの電圧を測定したが、電位差が所定値V0未満の電池を取り除いたら、残った電池は修復済みのものとなる。
【0167】
リチウム電池の電解液の洗浄原理は、以下の通りである。
LiPF+HO→LiF+2HF+PF
【0168】
DECなどの有機溶媒で残留した電解液や添加剤を溶解でき、アルコールなど揮発しやすいアルコール類物質は、主に負極ポスト上に残留したDECを溶解洗浄する。
【0169】
自己修復メカニズム
正極ポストとケースを導線で導通させた後、正極ポストとケースで構成された一次電池は閉回路を形成し、つまり正極/ケースからなる一次電池は放電する。
正極(LiFePO4):FePO4+xLi++xe- →xLiFePO4 +(1-x) FePO4
負極(Al): LixAl⇔Al+xLi++xe-
【0170】
先にアルミケースに埋め込まれたLiが放出され、アルミケースの電極電位が上昇し、つまり正極とケースとの電位差が低下する。正極と負極との電位差は、正極とケースとの電位差に、ケースと負極との電位差を加えてなるものであるので、ケースの電位が上昇すると、ケースと負極との電位差が大きくなるため、修復して一定時間経ったら、ケースと負極との電位差は正常値に戻る。
【0171】
さらに、図2のように正極ポストとケースを導線で接続し、あるいは図3のように一括修復用自作装置を使用し、装置のプローブを正極ポストとケースにそれぞれ接触させ、内部回路を介して正極ポストとケースを導通させることも可能である。
【0172】
負極とケースとの間の電位差の測定における電圧測定不良品であるリチウムイオン電池の負極をそれぞれ80℃の温水、DEC、無水エタノールに浸漬してそれぞれ15min超音波洗浄を行い、取り出してエアリングによる乾燥させた。
【0173】
洗浄した電池の正極とケースを銅導線で接続して、室温環境で2h修復した後、導線を取り外した。
【0174】
修復後、負極とケース間の電位差を測定し、48h室温静置後に負極-ケース間電圧を再測定した。
【0175】
再測定の電圧が所定値V0未満であれば該電池を取り除いて、残った電池は修復済みのものとなる。
【0176】
負極とケースとの間の電位差測定不良品である(所定値V1未満、負極-ケース電圧の所定値は電池の種類によって異なる)ナトリウムイオン電池の負極をそれぞれ80℃の温水、DEC、無水エタノールに浸漬してそれぞれ15min超音波洗浄を行い、取り出してエアリングによる乾燥させた。
【0177】
洗浄した電池の極とケースを銅導線で接続し、室温環境で2h修復した後、導線を外した。
【0178】
修復後、負極とケース間の電位差を測定した後、48h室温静置後に負極-ケース間電圧を再測定した。再測定の電圧が所定値V0未満であれば該電池を取り除き、残った電池は修復済みのものとなる。
【0179】
最後に、上述の各実施例は、単に本願の技術案を説明するためのものに過ぎず、それを限定するものではない。上述の各実施例を参照して本願を詳しく説明したが、当業者なら、上述の各実施例に記載の発明に対する修正またはその一部もしくはすべての技術的特徴を同等のものに置換することが依然として可能であること、これらの修正または置換により、対応する発明の本質が本願の各実施例の発明の範囲から逸脱することがなく、いずれも本願の特許請求の範囲および明細書の範囲内に含まれるべきであると理解できる。特に、各実施例に記載の各技術的特徴は、構造上の矛盾がない限り、任意の方式で組み合わせることができる。本願は、本文中に開示された特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲内の全ての技術案を含むものである。
【符号の説明】
【0180】
110 短絡接続部材
120 検出装置
130 情報処理装置
【要約】
本願は、電池のケース短絡処理方法およびシステムを提供する。該電池のケース短絡処理方法は、電池のケースと電池の第1極との短絡が検出された場合、ケースと電池の第2極とを短絡接続させるステップであって、第1極が正極であれば、第2極は負極であり、第1極が負極であれば、第2極は正極であるステップと、電池ケースと第2極との間の短絡接続を解除し、電池を所定時間静置するステップと、電池が所定時間静置された後、ケースと第1極との間の電位差を検出するステップと、ケースと第1極との間の電位差が所定範囲内であるか否かに基づき、ケースと第1極との間の短絡の種類および短絡が解消されたか否かを確定するステップとを含む。
図1
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図8