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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】油圧緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/32 20060101AFI20231107BHJP
   B62K 25/08 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
F16F9/32 Z
B62K25/08 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023547450
(86)(22)【出願日】2023-08-04
(86)【国際出願番号】 JP2023028549
【審査請求日】2023-08-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(72)【発明者】
【氏名】道浦 大祐
(72)【発明者】
【氏名】村上 陽亮
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-127848(JP,A)
【文献】特開2010-230091(JP,A)
【文献】特開2021-081025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/32
B62K 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側及び車輪側にそれぞれ配置されるテレスコピック型の車体側チューブ及び車軸側チューブと、
前記車軸側チューブの下端部から前記車体側チューブの内部へ延びているシリンダと、
前記車体側チューブの上端部から前記シリンダの内部へ延びている第1ロッドと、
前記第1ロッドに連結され、前記シリンダの内壁に対して摺動可能なピストンと、
前記ピストンから前記シリンダの下端部へ延びた第2ロッドと、
前記シリンダの内部に、且つ、前記ピストンよりも前記車軸側チューブの下端側に位置して、前記シリンダの内部を第2油室に仕切ってシールしている第2隔壁と、
前記シリンダの内部に、且つ、前記ピストンよりも前記車体側チューブの上端側に位置して、前記シリンダの内部を第1油室に仕切ってシールしており、前記第2隔壁よりもシール性が低い第1隔壁と、
前記シリンダの外周面と前記車軸側チューブの内周面とによって区画されており、作動油を溜めることが可能な第1リザーバと、
前記シリンダの内部に、前記シリンダの前記下端部と前記第2隔壁とによって区画されており、作動油を溜めることが可能な第2リザーバと、
前記第1リザーバと前記第2リザーバとを連通する連通路と、
を含んでいる油圧緩衝器。
【請求項2】
前記第1隔壁は、前記第1ロッドを支持する第1ロッドガイドによって構成され、
前記第1ロッドガイドは、前記シリンダの内部を前記第1油室に仕切ってシールする第1シール部分を備えている、請求項1に記載の油圧緩衝器。
【請求項3】
前記第2隔壁は、前記第2ロッドを支持する第2ロッドガイドによって構成され、
前記第2ロッドガイドは、前記シリンダの内部を前記第2油室に仕切ってシールする第2シール部材を備えている、請求項1に記載の油圧緩衝器。
【請求項4】
前記第2ロッドは、パイプによって構成されており、
前記パイプの内部には、前記第2油室と前記第2リザーバとの差圧に応動して前記第2リザーバから前記第2油室への作動油の流れを許容するチェック弁が、設けられている、請求項1に記載の油圧緩衝器。
【請求項5】
前記第2ロッドは、前記ピストンの中心線に対し揺動可能に、前記ピストンに連結されている、請求項1に記載の油圧緩衝器。
【請求項6】
前記第1油室と前記第2油室とを連通するバイパス路と、前記バイパス路を流れる作動油に流路抵抗を付与し且つ前記付与する流路抵抗を調整可能な制御弁とを、更に含む、請求項1に記載の油圧緩衝器。
【請求項7】
前記連通路は、前記シリンダに設けられた貫通孔によって構成されている、請求項1に記載の油圧緩衝器。
【請求項8】
前記車体側チューブと前記車軸側チューブとを互いに離間させる方向に付勢する圧縮コイルばねと、前記圧縮コイルばねのコイルの内周面を案内する筒状のスプリングガイドとを、更に備え、
前記圧縮コイルばね及び前記スプリングガイドは、前記シリンダの前記外周面と前記車軸側チューブの前記内周面との間に位置しており、
前記スプリングガイドの下端は、前記圧縮コイルばねの下端面を支持するフランジを備え、
前記フランジの下端面は、前記第1リザーバに溜まっている作動油を前記貫通孔へ案内することが可能な溝を有している、請求項7に記載の油圧緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に乗員が跨がって乗車する鞍乗り型車両に採用するのに好適な油圧緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
二輪車や三輪車等の鞍乗型車両に搭載されている懸架装置には、車体側チューブと車軸側チューブとをテレスコピック型に構成した油圧緩衝器が用いられる。例えばフロントフォークには、車軸側チューブの内部にシリンダ(カートリッジ)を設け、このシリンダ内にバルブ付きピストンをスライド可能に設け、このピストンに連結されたロッドを車体側チューブに設けた、いわゆるカートリッジタイプの油圧緩衝器も、用いられている。
【0003】
従来のカートリッジタイプのフロントフォークでは、伸長側の減衰力の調整幅と、圧縮側の減衰力の調整幅の、両方を確保するためには、2つの減衰力可変デバイスが必要であり、コストアップの要因となり得る。そこで、ピストンの両側に2つのロッドを設ける、いわゆる両ロッド構造の油圧緩衝器の開発が進められてきた。両ロッドタイプの油圧緩衝器であれば、シリンダの内部にロッドが出入りする体積分の作動油の移動が無い。このため、シリンダ内の作動油の圧力変動を抑制することもできる。この両ロッド構造の油圧緩衝器は、例えば特許文献1によって知られている。
【0004】
特許文献1で知られている油圧緩衝器は、車軸側チューブの内部にシリンダを設け、このシリンダ内にピストンをスライド可能に設け、このピストンの両端に第1ロッドと第2ロッドとをそれぞれ連結したというものである。シリンダの上端部は、第1隔壁によって仕切られている。シリンダの下端部は、第2隔壁によって仕切られている。第1ロッドは、ピストンから上方へ延びて第1隔壁を貫通し、車体側チューブの上端部に連結している。第2ロッドは、ピストンから下方へ延びて第2隔壁を貫通している。シリンダは内部に、ピストンと第1隔壁とによって区画された第1油室(上方室)と、ピストンと第2隔壁とによって区画された第2油室(下方室)とを、有している。
【0005】
さらに、シリンダの外周面と車軸側チューブの内周面とによって区画された空間(空間部)は、作動油を溜めることが可能である。この空間部において、作動油の油面よりも上は空気室である。この空気室に溜められるエアによって油圧緩衝器のエア反力(エアバネ効果)を得ることができる。
【0006】
空間部に溜められる作動油の油面の高さは、第1隔壁よりも上位に設定されている。このため、シリンダの外周面と第1隔壁の上面は作動油に浸されている。この第1隔壁はチェック弁を備えている。このチェック弁は、第1隔壁の上方から第1油室への作動油の流入を許容するが、これとは逆に、第1油室から第1隔壁の上方への作動油の流出を阻止している。第1油室内の作動油が不足したときには、チェック弁が開いて作動油を第1油室に補充することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-230091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1で知られている油圧緩衝器では、シリンダの外周面と車軸側チューブの内周面とによって区画された空間(空間部)に溜められる、作動油の油面の高さは、第1隔壁よりも上位に設定されることが求められる。第1隔壁の上面が作動油に浸されていないと、第1油室に空気が侵入した場合に、減衰力の発生不良の原因となる。よって、空間部に溜められる作動油の油面の高さは、少なくとも第1隔壁の上面が作動油に浸される程度にオイルを入れなけれならない。これでは、油圧緩衝器のエア反力(エアバネ効果)の設定自由度を高める上で、制約を受けるので不利である。従って、油圧緩衝器が伸縮動作をするときに発生する減衰力を、適切に管理するには、改良の余地がある。
【0009】
本発明は、両ロッドタイプの油圧緩衝器において、油圧緩衝器が伸縮動作をするときに発生する減衰力を、適切に管理することができる技術を、提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、鋭意検討の結果、油圧緩衝器が車体に組み付けられた状態で、上側の第1油室に発生するエア溜まり現象を、防止すればよいことに着目した。そして、第1隔壁のシール部分からエア抜きをすることによって、上側の第1油室に発生するエア溜まり現象を防止できることを知見した。本発明は、これらの知見に基づいて完成させた。
【0011】
本開示によれば、車体側及び車輪側にそれぞれ配置されるテレスコピック型の車体側チューブ及び車軸側チューブと、前記車軸側チューブの下端部から前記車体側チューブの内部へ延びているシリンダと、前記車体側チューブの上端部から前記シリンダの内部へ延びている第1ロッドと、前記第1ロッドに連結され、前記シリンダの内壁に対して摺動可能なピストンと、前記ピストンから前記シリンダの下端部へ延びた第2ロッドと、前記シリンダの内部に、且つ、前記ピストンよりも前記車軸側チューブの下端側に位置して、前記シリンダの内部を第2油室に仕切ってシールしている第2隔壁と、前記シリンダの内部に、且つ、前記ピストンよりも前記車体側チューブの上端側に位置して、前記シリンダの内部を第1油室に仕切ってシールしており、前記第2隔壁よりもシール性が低い第1隔壁と、前記シリンダの外周面と前記車軸側チューブの内周面とによって区画されており、作動油を溜めることが可能な第1リザーバと、前記シリンダの内部に、前記シリンダの前記下端部と前記第2隔壁とによって区画されており、作動油を溜めることが可能な第2リザーバと、前記第1リザーバと前記第2リザーバとを連通する連通路と、を含んでいる油圧緩衝器が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本開示では、両ロッドタイプの油圧緩衝器において、油圧緩衝器が伸縮動作をするときに発生する減衰力を、適切に管理することができる技術を、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例による油圧緩衝器の要部を断面した側面図である。
図2図1に示される油圧緩衝器の模式図である。
図3図1の3部を拡大した図である。
図4図1の4部を拡大した図である。
図5図4に示される第2隔壁、連結機構及びチェック弁周りの斜視図である。
図6図1の6部を拡大した図である。
図7図3に示されるスプリングガイドの斜視図である。
図8図1に示される油圧緩衝器の減衰力特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、添付図に示した形態は本発明の一例であり、本発明は当該形態に限定されない。説明中、上下とは鞍乗り型車両に油圧緩衝器を搭載した状態を基準として上下を指す。また、図中Upは上、Dnは下を示している。
【0015】
<実施例>
図1図8を参照しつつ、実施例の油圧緩衝器10について説明する。
【0016】
図1及び図2に示されるように、油圧緩衝器10は、乗員が跨がって乗車する鞍乗り型車両(図示せず)の一種である自動二輪車に用いられる。以下において、自動二輪車を「鞍乗り型車両」と称することがある。
【0017】
油圧緩衝器10は、テレスコピック型であって、車体側ブラケット(図示せず)に連結可能な円筒状の車体側チューブ11(第1チューブ11)と、車軸側ブラケット12に連結された円筒状の車軸側チューブ13(第2チューブ13)とを備えている。車軸側ブラケット12は、車輪用の車軸(図示せず)を連結可能である。車軸側チューブ13は、車体側チューブ11に対して相対的に移動可能に嵌め込まれている。車体側チューブ11の上端部11aは、例えば閉鎖部材14(キャップ部材14)によって閉鎖されている。
【0018】
図3も参照すると、車軸側チューブ13の下端部13aは、車軸側ブラケット12に嵌め込まれ且つ固定されているとともに、例えば環状の閉鎖部材15(ボトム部材15)によって閉鎖されている。
【0019】
ここで、油圧緩衝器10が縮む行程を圧縮行程といい、油圧緩衝器10が伸びる行程を伸長行程という。本実施例では、油圧緩衝器10は、車体側チューブ11に対して車軸側チューブ13を進退させる、倒立型の構成を説明する。しかし、油圧緩衝器10は、車軸側チューブ13に対して車体側チューブ11を進退させる、正立型の構成を含む。
【0020】
図1及び図2に示されるように、さらに油圧緩衝器10は、車軸側チューブ13の下端部13a(例えば車軸側ブラケット12)から車体側チューブ11の内部へ延びたシリンダ16を備えている。図3に示されるように、シリンダ16の下端部16aは、環状のボトム部材15に嵌め込まれて更に下方へ延び、ボトムキャップ17によって閉鎖されるとともに、このボトムキャップ17によって車軸側ブラケット12に固定されている。
【0021】
図3に示されるように、油圧緩衝器10は、車体側チューブ11と車軸側チューブ13とを互いに離間させる方向に付勢する圧縮コイルばね21と、この圧縮コイルばね21のコイルの内周面21aを案内する筒状のスプリングガイド22とを備えている。圧縮コイルばね21及びスプリングガイド22は、車軸側チューブ13の内周面13bとシリンダ16の外周面16bとの間に位置している。
【0022】
スプリングガイド22は、パイプ状の部材である。このスプリングガイド22の下端22aは、圧縮コイルばね21の下端面21bを支持するフランジ22bを備えている。このフランジ22bは、スプリングガイド22の下端22aから拡径した平板状の部分である。このフランジ22bの下端面22cは、閉鎖部材15の上に重なっており、この閉鎖部材15によって支持されている。図2に示されるように、圧縮コイルばね21の上端は、車体側チューブ11の上端部11aのキャップ部材14から下方へ延びたパイプ状のばね受け部23によって支持されている。
【0023】
図2に示されるように、油圧緩衝器10は、ピストン30の軸方向の両側に2つのロッド40,50(第1ロッド40及び第2ロッド50)を備えた、いわゆる両ロッドタイプの構成である。2つのロッド40,50は、ピストン30の中心線CLに位置したパイプ状の部材である。
【0024】
図4に示されるように、ピストン30は、シリンダ16の内周面16cに対して摺動可能である。このピストン30は、シリンダ16の内周面16cに摺動可能なピストン本体31と、このピストン本体31を貫通して中心線CL上に位置したパイプ状のピストン軸32とを備えている。このピストン軸32は、ピストン本体31に固定されている。
【0025】
図2に示されるように、第1ロッド40は、車体側チューブ11の上端部11aからシリンダ16の内部へ延びている。例えば、この第1ロッド40の上端部41は、キャップ部材14に備えた駆動装置140に連結されることによって、車体側チューブ11の上端部11aに設けられている。第1ロッド40の下端部42は、制御弁130を介してピストン軸32の上端部32aに連結されている。制御弁130及び駆動装置140の詳細については後述する。
【0026】
第2ロッド50は、ピストン30からシリンダ16の下端部16aへ延びている。この第2ロッド50の下端部51はどこにも固定されていない、自由端である。第2ロッド50の上端部52は、ピストン30の中心線CLに対し揺動可能に、ピストン軸32の下端部32bに連結機構60(図5参照)によって連結されている。
【0027】
図5に示されるように、連結機構60は、ピストン軸32の下端部32bに取り付けられた連結基材61と、この連結基材61に取り外し可能に取り付けられた支持部62と、この支持部62に第2ロッド50の上端部52を揺動可能に掛け止める掛止め部63とを備えている。
【0028】
連結基材61は、第2ロッド50へ向かって開放した有底筒状の部材であって、底部61aをピストン軸32の下端部32bにナット等の結合部材64によって取り付けられている。
【0029】
支持部62は、筒状の部材であって、連結基材61の筒部61aの内周面にネジ込み等の締結によって取り付けられている。この支持部62の内周面62aには、この内周面62aよりも小径である環状の揺動支持部62bが一体に形成されている。
【0030】
掛止め部63は、第2ロッド50の上端部52の外周面52aから、この外周面52aの全周にわたって径方向へ突出している。例えば、掛止め部63は第2ロッド50の上端部52の外周面52aに嵌め込まれた止め輪によって構成される。
【0031】
第2ロッド50に設けられているた掛止め部63を、揺動支持部62bに掛け止めることにより、第2ロッド50の上端面53は、結合部材64の軸方向の端面64aに接し、または近接している。このため、第2ロッド50の上端部52は、結合部材64の端面64aと支持部62の揺動支持部62bとの、少なくとも一方によって、ピストン30の中心線CLに対し全方位へ揺動可能に支持、いわゆるフローティング支持される。このように、第2ロッド50は、ピストン30の中心線CLに対し揺動可能に、ピストン30に連結されている。
【0032】
図2に示されるように、シリンダ16の内部は、ピストン30によって2つの油室71,72(上の第1油室71と下の第2油室72)に区画されている。詳しく述べると、シリンダ16は、内部に、第1隔壁80と第2隔壁90とを備えている。第1隔壁80は、ピストン30よりも車体側チューブ11の上端側に位置している。第2隔壁90は、ピストン30よりも車軸側チューブ13の下端側に位置している。ピストン30と第1隔壁80とは、シリンダ16の内部を第1油室71に仕切ってシールしている。ピストン30と第2隔壁90とは、シリンダ16の内部を第2油室72に仕切ってシールしている。
【0033】
図4に示されるように、第1ロッド40の下端部42とピストン軸32の上端部32aと制御弁130は、第1油室71に位置している。第2ロッド50の上端部52とピストン軸32の下端部32bと連結機構60は、第2油室72に位置している。
【0034】
先に第2隔壁90について説明する。図3及び図4に示されるように第2隔壁90は、隔壁支持部91によって支持されている。この隔壁支持部91は、シリンダ16の下端部16aからシリンダ16の内部へ延びたパイプによって構成されている。隔壁支持部91の下端部91aは、ボトムキャップ17によって閉鎖されるとともに、このボトムキャップ17によって車軸側ブラケット12に固定されている。
【0035】
図5に示されるように第2隔壁90は、隔壁支持部91の上端部91bに固定されている筒状の部材である。第2ロッド50の上端部52は、第2隔壁90の内部を貫通して、第2油室72に入り込んでいる。第2隔壁90は、第2ロッド50を軸方向に移動可能に支持するので、ロッドガイドによって構成されていると考えることができる。つまり、第2隔壁90は、第2ロッド50を支持する第2ロッドガイドによって構成されている。この第2隔壁90は、第2ロッド50を軸方向へ摺動可能に支持するブッシュ92(軸受92)を備えるとともに、シリンダ16の内部を第2油室72に仕切ってシールする2つの第2シール部材93,94(内部シール部材93と外部シール部材94)を備えている。
【0036】
内部シール部材93は、第2ロッド50の上端部52の外周面52aと第2隔壁90の内周面90aとの間を液密にシールするラバー製の部材であって、例えばオイルシールによって構成されている。外部シール部材94は、シリンダ16の内周面16cと第2隔壁90の外周面90bとの間を液密にシールするラバー製の部材であって、例えばOリングによって構成されている。第2シール部材93,94によってシールするので、第2隔壁90のシール性は高い。
【0037】
次に、第1隔壁80について説明する。図6に示されるように第1隔壁80は、シリンダ16の上端部16dに固定されている。第1ロッド40は、第1隔壁80の内部を貫通している。第1隔壁80は、第1ロッド40を軸方向に移動可能に支持するので、ロッドガイドによって構成されていると考えることができる。つまり、第1隔壁80は、第1ロッド40を支持する第1ロッドガイドによって構成されている。
【0038】
この第1隔壁80は、第1ロッド40を軸方向へ摺動可能に支持するブッシュ83(軸受83)を備えている。さらに第1隔壁80は、シリンダ16に固定された有底筒状の隔壁本体81と、この隔壁本体81の開口端を塞ぐリッド82と、隔壁本体81の内部に位置してブッシュ83を保持する環状の保持部84とを備えている。隔壁本体81の底板81aとリッド82は、第1ロッド40を貫通する孔81b,82aを有している。
【0039】
隔壁本体81の外周面81c及びリッド82は、シリンダ16の内周面16cに嵌め込まれている。隔壁本体81の外周面81cとシリンダ16の内周面16cとの間は、微小な隙間C1を有しているだけであり、シール部材によってシールされていない。隔壁本体81の外周面81cとシリンダ16の内周面16cとの間の隙間C1の大きさδ1は、例えば次のように設定される。第1油室71に溜まっている作動油の粘性によって、この作動油が隙間C1から流出しない程度、または、第1油室71の作動油による減衰力の発生に影響を及ぼさない程度に、隙間C1の大きさδ1が設定されることが好ましい。
【0040】
第1ロッド40の外周面43とブッシュ83の内周面83aとの間の隙間C2は、ブッシュ83に対して第1ロッド40が円滑にスライド可能な範囲の微少な大きさδ2に設定されることが好ましい。
【0041】
ブッシュ83は、保持部84の内周面84aに嵌め込まれている。この保持部84の外周面84bは、弾性材料製の環状の弾性体85(例えばOリング85)を介して隔壁本体81の内周面81dに支持されている。弾性体85は、保持部84の内周面84aに嵌め込まれている。隔壁本体81の内周面81dは、中心線CLに対して交差する方向への弾性体85の移動及び弾性変形を制限するように、この弾性体85の外周面を支持している。弾性体85を用いることにより、保持部84の外周面84bは、隔壁本体81の内周面81dに対して直接には接触しない形態で支持、いわゆるフローティング支持されている。隔壁本体81の内周面81dと保持部84の外周面84bとの間は、弾性体85によってシールされることになる。
【0042】
以上の説明から明らかなように、第1隔壁80のシール性は、第2隔壁90のシール性よりも低く設定されている。なお、第1隔壁80及び第2隔壁90の各シール構造は、上記の構成に限定されるものではなく、第1隔壁80のシール性は、第2隔壁90のシール性よりも低く設定されればよい。
【0043】
図3に示されるように、さらに油圧緩衝器10は、作動油を溜めることが可能な2つのリザーバ101,102(第1リザーバ101及び第2リザーバ102)と、第1リザーバ101と第2リザーバ102とを連通する連通路103とを備えている。第1リザーバ101は、車軸側チューブ13の内周面13bとシリンダ16の外周面16bとによって区画されている。第2リザーバ102は、シリンダ16の内部に、このシリンダ16の下端部16aと第2隔壁90(図4参照)とによって区画されている。連通路103は、シリンダ16に設けられた貫通孔によって構成されている。連通路103のことを、適宜「第1貫通孔103」ということがある。
【0044】
図3及び図7に示されるように、スプリングガイド22のフランジ22bの下端面22cは、第1リザーバ101に溜まっている作動油を第1貫通孔103(連通路103)へ案内することが可能な、少なくとも1つの溝22dを有している。この溝22dは、スプリングガイド22の中心線CLに対して交差するとともに、フランジ22bの径方向に貫通している。
【0045】
図7に示されるように、このフランジ22bの下端面22cが重なっている閉鎖部材15は、溝22dから流れてきた作動油を第1貫通孔103へ案内することが可能に、案内凹部15aを有していることが好ましい。この案内凹部15aの形状は、例えばフランジ22bの下端面22c側から、中心線CLに沿って反対側へ向かうにつれて、先細りとなる雌テーパ状である。
【0046】
図3に示されるように、第1リザーバ101に溜められている作動油は、スプリングガイド22の溝22d、第1貫通孔103、隔壁支持部91の下端部91aに形成されている第2貫通孔91cを通って、第2リザーバ102へ流れる。第2リザーバ102に溜まっている作動油は、第2ロッド50の下端の開口54から内部へ流入することが可能である。
【0047】
図2及び図5に示されるように、第2ロッド50は内部にチェック弁105を備えている。さらに第2ロッド50は、チェック弁105の位置よりも上端面53側(ピストン30側)には、油出入口55を有している。この油出入口55は、第2ロッド50を径方向に貫通し、第2油室72に連通している。チェック弁105は、第2油室72と第2リザーバ102との差圧に応動して第2リザーバ102から第2油室72への作動油の流れを許容するとともに、逆方向の流れを阻止する構成である。例えば、第2油室72の作動油の圧力が低下したときに発生する、第2油室72と第2リザーバ102との差圧に応動して開放することが可能である。
【0048】
次に、図2を参照しつつ、油圧緩衝器10における作動油の流れについて説明する。ピストン30(ピストン本体31)は、伸側チェック弁111と伸側絞り流路112と圧側チェック弁113と圧側絞り流路114とを備えている。油圧緩衝器10の伸長行程において、第1油室71から第2油室72へ流れる作動油が伸側チェック弁111及び伸側絞り流路112を通ることにより、伸側絞り流路112は減衰力を発生させることが可能である。油圧緩衝器10の圧縮行程において、第2油室72から第1油室71へ流れる作動油が圧側チェック弁113及び圧側絞り流路114を通ることにより、圧側絞り流路114は減衰力を発生させることが可能である。
【0049】
油圧緩衝器10が伸長行程のとき(ピストン30に対してシリンダ16が矢印Re方向へ伸びるとき)には、上の第1油室71の容積が減少し、下の第2油室72の容積が増大する。第1油室71の圧力は、第2油室72の圧力よりも高圧になる。第1油室71内の余剰の作動油の一部は、伸側チェック弁111及び伸側絞り流路112を通過して第2油室72へ流出する。このとき、伸側絞り流路112による減衰作用が生じる。さらに、第1油室71内の余剰の作動油の一部は、後述するバイパス路120及び制御弁130を通過して第2油室72へ流出する。バイパス路120を通過する作動油に、制御弁130が流路抵抗を付与することにより、減衰作用が生じる。
【0050】
油圧緩衝器10が圧縮行程のとき(ピストン30に対してシリンダ16が矢印Rc方向へ縮むとき)には、上の第1油室71の容積が増大し、下の第2油室72の容積が減少する。第2油室72の圧力は、第1油室71の圧力よりも高圧になる。第2油室72内の余剰の作動油の一部は、圧側チェック弁113及び圧側絞り流路114を通過して第1油室71へ流出する。このとき、圧側絞り流路114による減衰作用が生じる。さらに、第2油室72内の余剰の作動油の一部は、バイパス路120及び制御弁130を通過して第1油室71へ流出する。バイパス路120を通過する作動油に、制御弁130が流路抵抗を付与することにより、減衰作用が生じる。
【0051】
油圧緩衝器10は、ピストン30を迂回して第1油室71と第2油室72とを連通するバイパス路120と、このバイパス路120を流れる作動油に流路抵抗を付与し且つ付与する流路抵抗を調整可能な制御弁130とを含む。この制御弁130は、第1油室71と第2油室72とのいずれか一方、例えば第1油室71に配置されている。
【0052】
バイパス路120は、第2ロッド50の油出入口55から、パイプ状のピストン軸32の内部及び制御弁130の内部を介して、制御弁130の油出入口132aまでの油通路である。
【0053】
図4に示されるように、制御弁130は、可変絞り弁の機能を有しており、駆動装置140(図2参照)によって駆動される。この駆動装置140は、アクチュエータまたは手動操作機構によって構成される。駆動装置140は、制御弁130を駆動制御する作動ロッド141(弁棒141)を備えている。この作動ロッド141は、第1ロッド40の内部を軸方向への進退可能に通っている。作動ロッド141の進出距離に従って、制御弁130の開度を調整することができる。
【0054】
制御弁130は、第1ロッド40の下端部42に取り外し可能に取り付けられている。この制御弁130は、第1ロッド40の下端部42に取り付けられた弁体ホルダ131と、この弁体ホルダ131の下面に設けられた有底筒状の弁ハウジング132とを備えている。弁体ホルダ131と弁ハウジング132とによって、内部に弁収納部133が区画されている。弁体ホルダ131は、第1ロッド40の中心線CL上(ピストン30の中心線CL上)に位置した弁体134を保持している。この弁体134は、駆動装置140の作動ロッド141に押されることにより、中心線CLに沿って移動可能である。
【0055】
弁ハウジング132は、弁収納部133と第1油室71とを連通可能な、少なくとも1つの油出入口132aを有している。弁ハウジング132の底板132bは、ピストン軸32の上端部32aに接続されている。ピストン軸32の上端部32aは、弁体134に対向した弁座135を備えている。
【0056】
制御弁130の開度は、弁座135に対する弁体134の移動量に従って変化する。駆動装置140(図2参照)によって弁体134の移動量を調節することにより、制御弁130による減衰力の発生量が調節可能である。弁体134は、弁座135から離れる方向へ、コイルばね136によって付勢されている。
【0057】
次に、図2及び図8を参照しつつ、油圧緩衝器10の減衰力特性について説明する。図8は、横軸をピストン30の移動速度Vpとし、縦軸を油圧緩衝器10が発生する減衰力Dfとして、バイパス路120及び制御弁130を備えたことによる、減衰力Dfの調整範囲Vw1,Vw2を表している。
【0058】
特性線Df11は、伸長行程(伸び側)の場合における、油圧緩衝器10の最小減衰力特性を示している。特性線Df12は、伸長行程の場合における、油圧緩衝器10の最大の減衰力特性を示している。伸長行程の場合における、減衰力Dfの最大調整範囲はVw1である。
【0059】
特性線Df21は、圧縮行程(縮み側)の場合における、油圧緩衝器10の最小減衰力特性を示している。特性線Df22は、圧縮行程の場合における、油圧緩衝器10の最大の減衰力特性を示している。圧縮行程の場合における、減衰力Dfの最大調整範囲はVw2である。
【0060】
本実施例の油圧緩衝器10は、単一のピストン30であるにもかかわらず、バイパス路120及び制御弁130を組み合わせることによって、伸長行程での減衰力Dfの最大調整範囲Vw1と、圧縮行程での減衰力Dfの最大調整範囲Vw2とを、同じに設定することが可能である。つまり、本実施例の油圧緩衝器10は、伸長側の減衰力の調整幅(調整範囲)と、圧縮側の減衰力の調整幅の、両方を確保することができる。しかも、制御弁130(減衰力可変デバイス130)は1つだけでですむ。例えば、伸長行程の最小減衰力特性の特性線Df11に対して、圧縮行程の最小減衰力特性の特性線Df21を同じに設定することができる。また、伸長行程の最大減衰力特性の特性線Df12に対して、圧縮行程の最大減衰力特性の特性線Df22を同じに設定することができる。
【0061】
以上に説明した油圧緩衝器10についてまとめると、次の通りである。
【0062】
図2を参照する。本実施例によれば、第1に、油圧緩衝器10は、車体側及び車輪側にそれぞれ配置されるテレスコピック型の車体側チューブ11及び車軸側チューブ13と、この車軸側チューブ13の下端部13aから車体側チューブ11の内部へ延びているシリンダ16と、を含んでいる。
【0063】
さらに油圧緩衝器10は、車体側チューブ11の上端部11aからシリンダ16の内部へ延びている第1ロッド40と、この第1ロッド40に連結され、シリンダ16の内周面16cに対して摺動可能なピストン30と、このピストン30からシリンダ16の下端部16aへ延びた第2ロッド50と、を含んでいる。
【0064】
さらに油圧緩衝器10は、シリンダ16の内部に、且つ、ピストン30よりも車軸側チューブ13の下端側に位置して、シリンダ16の内部を第2油室72に仕切ってシールしている第2隔壁90と、シリンダ16の内部に、且つ、ピストン30よりも車体側チューブ11の上端側に位置して、シリンダ16の内部を第1油室71に仕切ってシールしており、第2隔壁90よりもシール性が低い第1隔壁80と、を含んでいる。
【0065】
さらに油圧緩衝器10は、シリンダ16の外周面16bと車軸側チューブ13の内周面13bとによって区画されており、作動油を溜めることが可能な第1リザーバ101と、シリンダ16の内部に、このシリンダ16の下端部16aと第2隔壁90とによって区画されており、作動油を溜めることが可能な第2リザーバ102と、第1リザーバ101と第2リザーバ102とを連通する連通路103と、を含んでいる。
【0066】
このように、油圧緩衝器10は、ピストン30の軸方向の両側に2つのロッド40,50を備えた、いわゆる両ロッドタイプの構成である。シリンダ16の内部は、ピストン30と上側の第1隔壁80とによって第1油室71に区画されるとともに、ピストン30と第2隔壁90とによって第2油室72に区画されている。油圧緩衝器10を車体(図示せず)に取り付けた場合に、第1隔壁80は第2隔壁90よりも上側に位置する。第1隔壁80のシール性(密封性)は、第2隔壁90のシール性よりも低く設定されている。第2油室72に侵入した空気(気泡を含む)は、油圧緩衝器10が圧縮動作をするときに、ピストン30によって作動油と共に第2油室72から第1油室71へ送られる。第1油室71に侵入した空気は、油圧緩衝器10が伸長動作をするときに、シール性が低い第1隔壁80から外方(第1リザーバ101)へ排出される。
【0067】
例えば、図6に示されるように、第1隔壁80のシール部分は、隔壁本体81の外周面81cとシリンダ16の内周面16cとの間の微小な隙間C1と、第1ロッド40の外周面43とブッシュ83の内周面83aとの間の微小な隙間C2とによって構成される。各隙間C1,C2の大きさδ1,δ2は、極めて小さい。第1隔壁80のシール部分(隙間C1,C2)は、エア抜きの作用をすることができる。よって、図2に示される第1油室71及び第2油室72に発生するエア溜まり現象を防止できるので、第1リザーバ101に溜められる作動油の油面高さにかかわらず、第1油室71及び第2油室72を作動油によって満たすことができる。油圧緩衝器10が伸長動作をするときに発生する減衰力は、第1リザーバ101に溜められる作動油の、油面の高さによる影響を受けない。つまり、第1油室71に溜められる作動油の貯留量の設定自由度を高めることができるので、油圧緩衝器10が伸長動作をするときに発生する減衰力を、適切に管理することができる。従って、両ロッドタイプの油圧緩衝器10において、油圧緩衝器10が伸縮動作をするときに発生する減衰力を、適切に管理することができる。しかも、第1隔壁80のシール性を第2隔壁90のシール性よりも低く設定するだけであるから、第1油室71からエア抜き作用をするための別個の構成を追加する必要もない。
【0068】
従って、ピストン30の軸方向の両側に2つのロッド40,50を備えた、両ロッドタイプの油圧緩衝器10において、この油圧緩衝器10が伸縮動作をするときに発生する減衰力を、適切に管理することができる。
【0069】
加えて、第1リザーバ101に溜められる作動油の油面の高さの制限がなくなるので、この油面よりも上の空気室に溜められるエアの量を適切に設定することができる。このエアの量の設定によって、油圧緩衝器10のエア反力(エアバネ効果)の設定自由度を高めることができる。
【0070】
図6を参照する。第2に、好ましくは、第1に記載の油圧緩衝器10であって、第1隔壁80は、第1ロッド40を支持する第1ロッドガイドによって構成されている。この第1ロッドガイド80(第1隔壁80)は、シリンダ16の内部を第1油室71に仕切ってシールする第1シール部分を備えている。例えば、第1隔壁80のシール部分は、隔壁本体81の外周面81cとシリンダ16の内周面16cとの間の隙間C1と、第1ロッド40の外周面43とブッシュ83の内周面83aとの間の隙間C2とによって構成される。
【0071】
第1ロッドガイド80(第1隔壁80)に備えた第1シール部分によって、第1隔壁80のシールを行うことが可能である。このため、シリンダ16の内部を第1油室71に仕切ってシールするための別個のシール部材を設ける必要がない。
【0072】
図5を参照する。第3に、好ましくは、第1~第2に記載の油圧緩衝器10であって、第2隔壁90は、第2ロッド50を支持する第2ロッドガイドによって構成されている。この第2ロッドガイド90(第2隔壁90)は、シリンダ16の内部を第2油室72に仕切ってシールする第2シール部材93,94を備えている。
【0073】
第2ロッドガイド90(第2隔壁90)に備えた第2シール部材93,94によって、第2隔壁90のシールを行うことが可能である。このため、シリンダ16の内部を第2油室72に仕切ってシールするための別個のシール部材を設ける必要がない。
【0074】
図5を参照する。第4に、好ましくは、第1~第3に記載の油圧緩衝器10であって、第2ロッド50は、パイプによって構成されている。このパイプ50(第2ロッド50)の内部にはチェック弁105が設けられている。このチェック弁105は、第2油室72と第2リザーバ102との差圧に応動して第2リザーバ102から第2油室72への作動油の流れを許容する構成である。
【0075】
第1油室71及び第2油室72から空気が排出されることによって、各油室71,72の内部の作動油の貯留量は減少する。しかし、チェック弁105は、油圧緩衝器10が伸長動作をするときに発生する、第2油室72と第2リザーバ102との差圧に応動して開放する。このため、第2油室72に溜められる作動油の減少分を、第2リザーバ102から第2油室72へ速やかに補填することができる。
【0076】
図5を参照する。第5に、好ましくは、第1~第4に記載の油圧緩衝器10であって、第2ロッド50は、ピストン30の中心線CLに対し揺動可能に、ピストン30に連結されている。つまり、第2ロッド50は連結機構60によってピストン30に連結されている。
【0077】
このように、第2ロッド50は、ピストン30の中心線CLに対して、揺動可能な構成(いわゆる、フローティング支持構成)なので、ピストン30の中心線CLに対する芯ズレ、平行度の精度、傾きを吸収することが可能である。このため、ピストン30や第2隔壁90に対する第2ロッド50の嵌め合い公差の緩和や、摩擦抵抗の低減を図ることができる。
【0078】
図2及び図5を参照する。第6に、好ましくは、第1~第5に記載の油圧緩衝器10であって、第1油室71と第2油室72とを連通するバイパス路120と、このバイパス路120を流れる作動油に流路抵抗を付与し且つ付与する流路抵抗を調整可能な制御弁130とを含む。
【0079】
このため、制御弁130は、第1油室71からバイパス路120を介して第2油室72へ流れる作動油に流路抵抗を付与するとともに、第2油室72からバイパス路120を介して第1油室71へ流れる作動油に流路抵抗を付与することが可能である。従って、油圧緩衝器10が伸長動作をするときに発生する減衰力と、油圧緩衝器10が圧縮動作をするときに発生する減衰力との、両方を、1つの制御弁130によって十分な調整範囲で調整可能である。
【0080】
図2を参照する。第7に、好ましくは、第1~第6に記載の油圧緩衝器10であって、連通路103は、シリンダ16に設けられた貫通孔によって構成されている。
【0081】
シリンダ16は、車体側チューブ11及び車軸側チューブ13と共に、油圧緩衝器10を構成する主要な構造体である。このシリンダ16を有効活用して、第1リザーバ101と第2リザーバ102とを連通する貫通孔103(第1貫通孔103)を設けている。この貫通孔103によって簡単な構成の連通路を有することができる。
【0082】
図3を参照する。第8に、好ましくは、第7に記載の油圧緩衝器10であって、車体側チューブ11と車軸側チューブ13とを互いに離間させる方向に付勢する圧縮コイルばね21と、この圧縮コイルばね21のコイルの内周面21bを案内する筒状のスプリングガイド22とを備えている。圧縮コイルばね21及びスプリングガイド22は、シリンダ16の外周面16bと車軸側チューブ13の内周面13bとの間に位置している。スプリングガイド22の下端22aは、圧縮コイルばね21の下端面21bを支持するフランジ22bを備えている。このフランジ22bの下端面22cは、第1リザーバ101に溜まっている作動油を貫通孔103へ案内することが可能な溝22dを有している。
【0083】
このように、スプリングガイド22のなかの、圧縮コイルばね21の下端面21bを支持するフランジ22bの下端面22cに、溝22dを有している。この溝22dによって、第1リザーバ101に溜まっている作動油を、貫通孔103へ案内することが可能である。スプリングガイド22を有効活用して、第1リザーバ101に溜まっている作動油を貫通孔103を介して第2リザーバ102へ案内している。このため、スプリングガイド22の配置の自由度を高めることができる。
【0084】
なお、本発明による油圧緩衝器10は、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、上記実施例に限定されるものではない。例えば、制御弁130は、バイパス路120を通過する作動油に流路抵抗を付与する構成であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の油圧緩衝器10は、鞍乗り型車両用に搭載するフロントフォークに適用するのに好適である。
【符号の説明】
【0086】
10…油圧緩衝器、 11…車体側チューブ、、 11a…上端部、 13…車軸側チューブ、 13a…下端部、 13b…内周面、 16…シリンダ、 16a…下端部、 16b…外周面、 16c…内周面、 21…圧縮コイルばね、 21a…コイルの内周面、 22…スプリングガイド、 22a…下端、 22b…フランジ、 22c…フランジの下端面、 22d…溝、 30…ピストン、 40…第1ロッド、 50…第2ロッド、 71…第1油室、 72…第2油室、 80…第1隔壁(第1ロッドガイド)、 90…第2隔壁(第2ロッドガイド)、 93,94…第2シール部材、 101…第1リザーバ、 102…第2リザーバ、 103…連通路(貫通孔)、 105…チェック弁、 120…バイパス路、 130…制御弁、 CL…ピストンの中心線。
【要約】
油圧緩衝器(10)は、車軸側チューブ(13)の下端部(13a)から車体側チューブ(11)の内部へ延びたシリンダ(16)と、前記車体側チューブ(11)の上端部(11a)から前記シリンダ(16)の内部へ延びた第1ロッド(40)と、前記第1ロッド(40)に連結されたピストン(30)と、前記ピストン(30)から前記シリンダ(16)の下端部(16a)へ延びた第2ロッド(50)とを含む。前記シリンダ(16)の内部は、前記ピストン(30)と第1隔壁(80)とにより第1油室(71)に区画され、前記ピストン(30)と第2隔壁(90)とにより第2油室(72)に区画されている。前記第1隔壁(80)のシール性は、前記第2隔壁(90)のシール性よりも低い。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8