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特許7379786ブラシ付き直流モータ、およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】ブラシ付き直流モータ、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 23/66 20060101AFI20231108BHJP
   H02K 15/14 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
H02K23/66 A
H02K15/14 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022500199
(86)(22)【出願日】2020-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2020005902
(87)【国際公開番号】W WO2021161536
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】山内 啓介
(72)【発明者】
【氏名】北村 直
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 慎太郎
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-025679(JP,A)
【文献】特開2002-165413(JP,A)
【文献】特開平07-115747(JP,A)
【文献】国際公開第2013/175624(WO,A1)
【文献】特開2011-130639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 23/66
H02K 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が開口した筒状のモータケースと、前記モータケースに保持された対をなす永久磁石と、前記モータケース内に回転軸を介して回転自在に支持されるロータと、前記モータケースの前記一端を閉塞するエンドキャップアセンブリと、前記モータケース内において前記回転軸と共に一体に回転する整流子と、前記整流子の外周面に接触するブラシと、ノイズを抑制するノイズ防止回路とを備え、
前記モータケースは、前記永久磁石の外周に沿った曲面部と、前記永久磁石間の平面部とを有し、前記ノイズ防止回路は、少なくとも一対のコンデンサと1個のアースターミナルとを含む直流モータにおいて、
前記エンドキャップアセンブリは、前記モータケースの前記曲面部に対応する曲面状外周部と、前記モータケースの前記平面部に対応する平面状外周部とを有しており、
前記平面状外周部の1つは、前記回転軸の軸線O-O方向に伸びる平板状壁部を有しており、
前記平板状壁部の内側に、前記一対のコンデンサを収容する一対のコンデンサ取付穴を有し、
前記アースターミナルは、平坦な矩形状のベース部と、前記ベース部の一端から伸びる複数の分岐片を有しており、前記分岐片は前記ベース部に対してU字形に折れ曲げられて形成されており、
前記アースターミナルの前記矩形状のベース部の幅及び長さは、前記一対のコンデンサ取付穴の中心間の距離よりも長く、
前記アースターミナルは、前記矩形状のベース部が前記平板状壁部の内側の面に接し、前記分岐片が前記平板状壁部の外面と前記モータケースの内面とに挟まれて前記モータケースに弾性的に接触するようにして前記平板状壁部に保持され、
前記少なくとも一対のコンデンサを、前記アースターミナルの前記ベース部及び前記分岐片を介して、前記モータケースに接地するように構成されていることを特徴とするブラシ付き直流モータ。
【請求項2】
請求項1に記載の直流モータにおいて、
前記平板状壁部の内側の面の下部と前記一対のコンデンサ取付穴との間には、前記平板状壁部の内側の面に平行なアース取付け用溝が設けられていることを特徴とするブラシ付き直流モータ。
【請求項3】
請求項2に記載の直流モータにおいて、
前記アースターミナルの前記ベース部には、取付け保持用突起が設けられており、
前記取付け保持用突起は、前記アースターミナルの板厚を含むその頂点の高さが、前記アース取付け用溝の幅よりも大きいことを特徴とするブラシ付き直流モータ。
【請求項4】
請求項1に記載の直流モータにおいて、
前記分岐片の間に形成され、前記ベース部の一端から伸び、前記平板状壁部の外面に保持されるアースターミナル保持爪を有することを特徴とするブラシ付き直流モータ
【請求項5】
請求項1に記載の直流モータは、車載のモータ駆動式弁装置の駆動源であることを特徴とするブラシ付き直流モータ。
【請求項6】
請求項に記載の直流モータの製造方法であって、
前記各コンデンサの一方の足を、前記アースターミナルの前記ベース部に固定し、
前記各コンデンサを、前記コンデンサ取付穴に挿入するとともに、前記アースターミナルの前記ベース部を、前記平板状壁部の前記アース取付け用溝内に差し込んで、前記アースターミナルを前記エンドキャップアセンブリの前記平板状壁部に保持し、
前記各コンデンサを、エポキシ樹脂で前記コンデンサ取付穴に固定し、
前記各コンデンサの他方の足を、電源ターミナルに固定し、
前記ロータと前記エンドキャップアセンブリを前記モータケース内に組み込み、前記アースターミナルの前記複数の分岐片を前記モータケースと接触させることを特徴とするブラシ付き直流モータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシ付き直流モータ、およびその製造方法に係り、特に、車載用の小型モータに適した、ブラシ付き直流モータ、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブラシ付き直流モータ、例えば車両に搭載される小型の直流モータとして、有底筒状のモータケースの内周面に永久磁石を複数配置し、この永久磁石の内側にロータを回転自在に設けたブラシ付きの直流モータがある。
【0003】
特許文献1には、ブラシ付き直流モータとして、筒部を有するモータケースと、この筒部の内周面に対向配置された2対の永久磁石と、これらの永久磁石の内側に回転自在に支持されたロータとを備え、筒部に、径方向で対向する少なくとも一対の平坦部を形成し、これらの平坦部を避けた位置に永久磁石を配置したモータが開示されている。この直流モータのブラシホルダユニットは、モータケースに設けられた一対の平坦部と面一になるようにして、一対の平坦壁が設けられている。モータケースの一対の平坦部の幅を筒部の直径よりも小さくすることで、筒部全体を円筒状に形成した場合よりも、モータを小型化することができる利点がある。
特許文献2にも、モータケースの平板部に対応する一対の平坦部を備えたブラシホルダを具備する、ブラシ付き直流モータが開示されている。
【0004】
ブラシ付き直流モータは、ブラシを用いて整流子との整流を行っており、整流時に整流子とブラシとの接触の際に生じるスパークにより電気ノイズが発生する。この電気ノイズは、車両に搭載される各種コントローラ等、他の電気部品を誤作動させるおそれがある。そのため、車載用の直流モータに関しては、他の電気部品への悪影響を除くために、ブラシで発生するノイズの許容値の規制がEMC(electric magnetic compatibility)規格として、国際的に規定されている。
【0005】
特許文献1に記載の電動モータには、電気ノイズを抑制する手段として、ブラシホルダユニットに一対のコンデンサ及び一対のチョークコイルを含む、回路が設けられている。一対のコンデンサの間には、グランドに接地された中点端子が接続されている。
【0006】
また、特許文献2に記載のブラシ付き電動モータも、ブラシホルダユニットに一対のコンデンサ及び一対のチョークコイルを含む、電気ノイズ抑制用の回路を備えている。一対のコンデンサと一対のグランド端子は、ブラシホルダの一対の平坦な側面に装着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】WO2013/175624 A1
【文献】特開2010-57298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の直流モータでは、ブラシホルダユニット(本発明では、以下、エンドキャップアセンブリ)に設けられたグランド端子(アースターミナル)と金属製のモータケース等との電気的な接続を行うために、アースターミナルに接続されたアース用の配線の端部をモータケースに弾性的に接触させる方式、配線の端部をエンドキャップアセンブリとモータケース間に挟持し拘束した状態で接触させる方式、及び、配線の端部をモータケースや等に設けられた溝にはんだ付け等で機械的に固着する方式が知られている。配線の端部を弾性的に接触させる方式や挟持する方式は、固着する方式に比べて、製造工程が簡単なため、モータを安価に製造できる利点がある。
その半面、アース用の配線の端部を弾性的に接触させる方式や挟持する方式は、ブラシホルダの取り付け状態によって、アースターミナルとモータケース等との電気的な接続が不完全となる場合もある。また、エンジン等、車両の駆動源の振動が長期間加わることにより、アース用の配線の先端部が変形し、モータケースとの電気的な接続が不安定になる場合もある。このような不完全な接触状態が生ずると、電気ノイズを抑制する手段が正常に機能しなくなる。
【0009】
特許文献1には、アースターミナルとモータケース等との電気的な接続に関する、詳細な記載はない。
【0010】
特許文献2に記載の発明では、アースターミナルが、先端部が複数に分岐した分岐片として構成されており、この先端部を、モータケースに弾性的に接触させる構造となっている。特許文献2の発明によれば、アースターミナルの先端部が複数に分岐しているので、取り付け状態の不備により、アースターミナルが正規の姿勢からずれたとしても、アースターミナルの先端部の少なくとも一部とモータケースとの接触状態を確保することができ、アースターミナルのモータケースへの電気的な接続の信頼性を高めることができる。
【0011】
しかしながら、特許文献2に記載の発明では、ブラシホルダの平板状の両側面に沿って、各々、コンデンサとアースターミナルの装着溝とが並んで設置されている。このような、ブラシホルダの外周方向に沿って並んでコンデンサと装着溝を配置する構造では、装着溝のサイズを小さくせざるを得ない。そのため、装着溝内に装着されるアースターミナル、ひいては、複数に分岐したアースターミナルの先端部のサイズは小さなものとなる。仮に、これを、車両のエンジンに搭載される弁装置の駆動源用のモータに採用することを想定した場合、アースターミナルの先端部に、エンジンからの振動等、大きな外力が長期間加わる。そのため、サイズの小さい先端部が変形し、アースターミナルとモータケースとの接触が十分に確保されず、電気ノイズを抑制する機能を維持できなくなる可能性がある。
【0012】
本発明の課題の1つは、アースターミナルの先端部をモータケースに弾性的に接触させる方式であって、かつ、振動等の外力が加わった場合でも容易に変形しにくい十分な機械的な強度を有し、長期間の使用でも電気的な接続状態を維持できる、信頼性の高いアースターミナルを具備した、ブラシ付き直流モータを提供することにある。
本発明の他の課題は、十分な機械的な強度を有し、長期間の使用に耐える信頼性の高いアースターミナルを具備した、ブラシ付き直流モータの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の1つの態様によれば、ブラシ付き直流モータは、
一端が開口した筒状のモータケースと、前記モータケースに保持された対をなす永久磁石と、前記モータケース内に回転軸を介して回転自在に支持されるロータと、前記モータケースの前記一端を閉塞するエンドキャップアセンブリと、前記モータケース内において前記回転軸と共に一体に回転する整流子と、前記整流子の外周面に接触するブラシと、ノイズを抑制するノイズ防止回路とを備え、
前記モータケースは、前記永久磁石の外周に沿った曲面部と、前記永久磁石間の平面部とを有し、前記ノイズ防止回路は、少なくとも一対のコンデンサと1個のアースターミナルとを含む直流モータにおいて、
前記エンドキャップアセンブリは、前記モータケースの前記曲面部に対応する曲面状外周部と、前記モータケースの前記平面部に対応する平面状外周部とを有しており、
前記平面状外周部の1つは、平板状壁部を有しており、
前記平板状壁部の内側に、前記一対のコンデンサを収容する一対のコンデンサ取付穴を有し、
前記アースターミナルは、ベース部と、前記ベース部の一端に形成された複数の分岐片とを有しており、
前記アースターミナルは、前記ベース部が前記平板状壁部の内側の面に接し、前記分岐片が前記平板状壁部の外面と前記モータケースの内面とに挟まれて前記モータケースに弾性的に接触するようにして前記平板状壁部に保持され、
前記少なくとも一対のコンデンサを、前記アースターミナルの前記ベース部及び前記分岐片を介して、前記モータケースに接地するように構成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の他の態様によれば、前記平板状壁部の内側の面の下部と前記一対のコンデンサ取付穴との間には、前記平板状壁部の内側の面に平行なアース取付け用溝が設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明のアースターミナルは、平坦で広い面積を有するエンドキャップアセンブリの平板状壁部に保持されるので、そのサイズを大きくすることができる。機械的強度が大きいため、電気的な接続状態を長期間維持できる、換言すると、電気ノイズを抑制する機能を長期間維持できるアースターミナルを提供することができる。例えば、車両のエンジン等、大きな振動の加わる環境下で使用しても、長期間の使用に耐える、信頼性の高いアースターミナルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第一の実施例に係る、ブラシ付き直流モータの分解斜視図である。
図2図1に示した直流モータの、Z方向の横断面図である。
図3図1に示した直流モータの、Y方向の縦断面図である。
図4】第一の実施例に係る直流モータの、エンドキャップアセンブリの内面を示す、斜視図である。
図5】前記エンドキャップアセンブリに組み込まれるアースターミナルの、構造及び製法を示す図である。
図6】前記エンドキャップアセンブリの側面の斜視図である。
図7】前記直流モータの、電気的な回路図である。
図8】前記直流モータの製造方法を示すフローチャートである。
図9】前記アースターミナルとコンデンサ、及び、電源ターミナルの接続の工程を示す展開図である。
図10】前記アースターミナルの、エンドキャップ本体への装着工程の初期の段階を示す要部断面図である。
図11】前記アースターミナルの、エンドキャップ本体への装着工程の最終段階を示す要部断面図である。
図12】前記エンドキャップアセンブリの製造工程を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0017】
以下、本発明の一実施例に係る、ブラシ付き直流モータについて、説明する。
最初に、本実施例の直流モータの、全体的な構成について、図1図3を参照しながら説明する。
図1は、本実施例に係る、ブラシ付き直流モータの分解斜視図である。図2は、図1の直流モータの横断面図、図3は、図1の直流モータの縦断面図である。
ブラシ付き直流モータ100は、導電性の材料、例えば、鉄等の磁性体材料で形成される有底筒状のモータケース110と、このモータケース110内に固定される正面視C字型の2極の永久磁石112,112と、永久磁石抑え113と、モータケース110内に回転軸121を介して回転自在に支持されるロータ120と、モータケース110の開口部1103に固定される合成樹脂製のエンドキャップアセンブリ130とを備えている。
【0018】
モータケース110の外周部は、一対の永久磁石112,112の外周に沿った一対の曲面部1101と、これら永久磁石間の一対の平面部1102とを有している。エンドキャップアセンブリ130は、モータケースの曲面部1101に対応する一対の曲面状外周部131と、モータケースの平面部1102に対応する一対の平面状外周部132と、回転軸121に対応する回転軸孔133を有している。
モータケース110の一対の平面部1102は、回転軸121の軸線O-Oに平行に伸びている。回転軸121は、モータケース110に設けられたスリーブベアリング114と、シールドキャップ144設けられたボールベアリング115により、回転自在に枢支されている。
【0019】
直流モータのロータ120は、コイル122と、整流子124を有している。エンドキャップアセンブリ130には、整流子124に摺接して、コイル122に電流を供給するための、一対のカーボン製のブラシ126が収容されている。一対のブラシ126は、エンドキャップアセンブリ130に保持された一対の電源ターミナル140に接続されている。また、電気的ノイズ防止回路を構成し、ブラシ126と電源ターミナル140とに接続される、一対のコンデンサ150と1個のアースターミナル160とが、エンドキャップアセンブリ130に保持されている。
エンドキャップアセンブリ130の一対の平面状外周部132には、軸線O-O方向に伸びる一対の平板状壁部134(A,B)が設けられ、さらに、いずれか一方の平板状壁部134(A)の内側に、アース取付け用斜面1381及びアース取付け用溝1382が設けられている。アースターミナル160は、U字形に折り曲げられており、前記一方の平板状壁部134に保持され、U字形の内側の部分は、アース取付け用斜面1381及びアース取付け用溝1382に接している。また、アースターミナル160のU字形の外側の面部分は、モータケース110の開口部1103にエンドキャップアセンブリの延長部139が差し込まれて固定される際に、モータケースの開口部1103の内面と平板状壁部134Aとに挟まれ、アースターミナル160がモータケース110に電気的に接続されている。
回転軸121の一端には、直流モータの出力側の減速機構の一部を構成するギヤ142が固定されている。
【0020】
次に、図4図6を参照しながら、本実施例のエンドキャップアセンブリ130及びアースターミナル160の構成について、説明する。図4は、エンドキャップアセンブリの内面の斜視図であり、図5は、アースターミナルの構成及び製法を示す図、図6はエンドキャップアセンブリの側面の斜視図である。
138はエンドキャップ本体であり、その外周面を構成する一対の平面状外周部132には、各々平板状壁部134(A,B)が設けられており、これらの平板状壁部134(A,B)は、各々、回転軸121の軸線O-O方向に平行に伸びる、平板状壁部の外面135と平板状壁部の内面136とを有している。
エンドキャップ本体138には、さらに、一対のブラシ126(A,B)、一対のコンデンサ取付穴137(A,B)、一対のブラシスプリン127(A,B)、一対のピッグテール128(A,B)、及び、一対の電源ターミナル140(A,B)が設けられている。
エンドキャップ本体138上で、かつ1つの平板状壁部134Aの半径方向の内側、すなわち、平板状壁部134Aの内面136と回転軸孔133との間に、平板状壁部134Aの内面136に沿って、一対のコンデンサ取付穴137が設けられている。これらのコンデンサ取付穴137には、一対のコンデンサ150(A,B)が固定されており、また、その中間には、軸線O-O方向に伸びるテーパ状のアース取付け用斜面1381が設けられている。また、平板状壁部134Aの内面136の下部とその半径方向内側の一対のコンデンサ取付穴137との間には、この平板状壁部134Aの内面に平行なアース取付け用溝1382が設けられている(図10図11参照)。
1つの平板状壁部134Aにはさらに、アースターミナル160が保持されており、このアースターミナル160には、一対のコンデンサ150及び一対の電源ターミナル140が接続されている。
【0021】
アースターミナルの素材には、導電性に優れ、かつ、弾性及び剛性を有する所定形状の板材、例えば真鍮板を使用する。この真鍮板に、切断や曲げ加工を施して、アースターミナル160が成される。真鍮板の厚さは、0.2mm~0.5mm程度である。
アースターミナル160は、図5の(A)に示すように、平坦な矩形状のアースターミナルベース部1604と、このベース部1604の一端から伸びる一対の分岐片、すなわち、矩形状のアースターミナル第1分岐片1601及びアースターミナル第2分岐片1602と、これらの分岐片の間に形成されたアースターミナル保持爪1603とを有している。
図5の(B)に示すように、アースターミナル160は、一対の分岐片(1601、1602)と保持爪1603が、ベース部1604に対してU字形に折れ曲げられて形成されている。
また、アースターミナル160のベース部1604の中央には、補強リブ1605と、取付け保持用突起1606とが設けられている。補強リブ1605は、その頂部が矩形の平坦である。この補強リブは、ベース部の断面係数を大きくするためのものであり、その形状は任意に設定できる。取付け保持用突起1606は、ベース部1604を平板状壁部134Aの内面136に押し付けるように機能するものであり、その頂点の高さは、補強リブ1605の高さよりも大きい。また、アースターミナル160の板厚を含む取付け保持用突起1606の頂点の高さは、アース取付け用溝1382の幅よりも大きくなっている。なお、取付け保持用突起1606は、ベース部1604の下部に、左右対称に複数個設けても良い。
このアースターミナル160は、図4図6に示すように、ベース部1604が平板状壁部134Aの内面136の側に位置し、一対の分岐片1601,1602及び1つの保持爪1603が平板状壁部134Aの外面135の側に位置するようにして、平板状壁部134Aに保持される。
【0022】
本実施例のアースターミナル160は、平坦で広い面積を有するエンドキャップアセンブリの130平板状壁部134Aの両側の平面を利用して保持されるので、そのサイズを大きくすることができる。従って、導電性に優れ、かつ、弾性及び剛性を有するとともに、全体として、高い機械的強度を有する、アースターミナル160を得ることができる。
図5の(A)において、ベース部1604の幅をW0、長さをL1、一対のアースターミナル分岐片1601、1602の長さをL2とすると、これらは、次のような関係にある。
ベース部1604の幅W0は、一対のコンデンサ取付穴137、137の中心間の距離よりも長く、平板状壁部134Aの軸線O-O方向の長さよりも短い。ベース部1604の長さL1は、幅W0よりも長い。アースターミナル分岐片1601、1602の長さL2は、幅W0よりも長く、ベース部1604の長さをL1よりも短い。
さらに、アースターミナル分岐片1601、1602の幅をW1、保持爪1603の幅をW2とすると、アースターミナル160の具体的なサイズの一例は、次の通りである。
真鍮板の厚さは、0.3mm、ベース部の幅W0は、7.3mm、長さL1は、10.2mmである。さらに、アースターミナル分岐片1601、1602の幅W1は、1.2mm、保持爪1603の幅W2は1.6mmである。
【0023】
図7は、本実施例に係る直流モータ100の、電気的な回路図である。直流モータ100の一対のブラシ126(A,B)と電源端子170(A,B)との間には、電源ターミナル140(A,B)を介して、一対のコンデンサ150(A,B)が接続されており、これらのコンデンサは、アースターミナル160を介して、グランドを構成するモータケースの内面に電気的に接続されている。すなわち、一対のコンデンサ150(A,B)は、アースターミナル160のベース部1604及び一対の分岐片(1601、1602)を介して、モータケースに接地するように構成されている。
【0024】
本実施例に係る直流モータによれば、アースターミナル160の先端部は、一対の分岐片(1601、1602)として分岐している。そのため、アースターミナルの取り付け状態によってモータケースに対してアースターミナルが正規の姿勢からずれた場合でも、この分分岐片の柔軟な弾性変形により、少なくとも一方の分岐片が、モータケースの内面へ接触し、電気的な接続状態を維持することができる。
また、各分岐片は、サイズが大きいので、振動等の外力が加わった場合でも容易に変形しにくい十分な機械的な強度を有しする。そのため、長期間の使用に耐える信頼性の高いアースターミナルを具備した、ブラシ付き直流モータを提供することができる。
【0025】
次に、図8のフローチャート、及び図9図12を参照しながら、本実施例に係る直流モータの製造方法、特に、エンドキャップアセンブリの製造方法について説明する。
図9は、アースターミナル160とコンデンサ150(A、B)、及び、電源ターミナル140の接続の工程を示す図である。
まず、一対のコンデンサ150(A、B)の一対の足1501、1502を、各々、フォーミングし、カットする(S801)。
次に、アースターミナル160のベース部1604に、一対のコンデンサ150(A、B)一方の足1501を、各々、スポット溶接で固定する(S802)。
次に、エンドキャップ本体138のコンデンサ取付穴137(A、B)に、エポキシ樹脂を塗布する(S803)。
次に、一対のコンデンサ150(A、B)を、各々、一対のコンデンサ取付穴137(A、B)に差し込むと共に、アースターミナル160のベース部1604を、平板状壁部134Aの内面136側の、アース取付け用溝1382内に差し込む(S804)。
次に、アースターミナル160を、その保持爪1603や一対の分岐片(1601、1602)で、エンドキャップの平板状壁部134Aに保持する(S805)。このようにして、アースターミナル160は、エンドキャップ本体138の平板状壁部134Aに保持される。
【0026】
図10は、アースターミナル160の、エンドキャップ本体138への装着過程の最初の段階を示す図である。テーパ状のアース取付け用斜面1381は、アースターミナル160のベース部1604を、アース取付け用溝1382内に差し込むのを容易にする機能がある。すなわち、アースターミナルのベース部1604をアース取付け用溝1382内に差し込む際に、ベース部1604がコンデンサ取付穴137の側へ向かわず、アース取付け用溝1382内へ安定して挿入できるようにするものである。取付け保持用突起1606は、アース取付け用溝1382内に差し込まれると、ベース部1604を板状壁部の内面136に押し付けて、アースターミナル160を定位置に保持する機能がある。補強リブ1605は、アース取付け用斜面1381に接しないように、その高さが設定されている。
【0027】
図11は、アースターミナル160がエンドキャップ本体138へ装着された、最終段階を示す図である。アースターミナル160は、ベース部1604が、アース取付け用溝1382内に完全に差し込まれて平板状壁部134Aの内面136に押し付けられ、他方、保持爪1603や分岐片1601,1602の根元部分が、平板状壁部134Aの外面135に弾性的に接することで、平板状壁部134Aに保持される。
【0028】
図8に戻り、次に、エンドキャップ本体138を電気炉に入れ、コンデンサ取付穴137のエポキシ樹脂を硬化させる(S806)。
次に、一対の電源ターミナル140(A、B)の電源ターミナル延長部1402(図9参照)に、一対のブラシ126(A、B)のピッグテール128(A、B)の端を、各々、スポット溶接で固定する(S807)。
さらに、エンドキャップ本体138に、一対の電源ターミナル140(A、B)を挿入し、各々、固定する(S808)。
【0029】
そして、一対の電源ターミナル140(A、B)の各端の電源ターミナル頭部1401に、一対のコンデンサ150(A、B)の他方の足1502を、各々、スポット溶接で固定する(S809)
図9は、一対のコンデンサ150(A、B)の他方の足1502の固定状況を示している。また、図12にハッチングを施した部分は、エンドキャップアセンブリの製造工程(S807)~(S809)に関係した部分を示す斜視図である。
【0030】
図8に戻り、次に、エンドキャップ本体138の一対のホルダー部に、一対のカーボン製のブラシ126(A、B)を挿入し(S810)、エンドキャップ本体138に、一対のブラシスプリング127(A、B)を取り付け(S811)、エンドキャップアセンブリ130を完成させる。
そして、このエンドキャップアセンブリ130を、ロータ120の回転軸121に取り付け(S812)、ロータ120とエンドキャップアセンブリ130をモータケース110内に組み込むことにより、アースターミナル160の一対の分岐片1601、1602が、平板状壁部134Aの外面135とモータケース110の内面とに挟まれ、一対の分岐片1601、1602がモータケース110の内面に弾性的に接触する状態となる。これにより、アースターミナル160とモータケース110とが電気的に接続される(S813)。
【0031】
本実施例のアースターミナル160は、平坦で広い面積を有するエンドキャップアセンブリの130平板状壁部134Aの両側の平面を利用して保持されるので、アースターミナル、特に、その一対の分岐片1601、1602のサイズを大きくすることができる。従って、導電性に優れ、かつ、弾性及び剛性を有するとともに、全体として、長期間にわたり、高い機械的強度を保有する、アースターミナル160を得ることができる。
本実施例によれば、アースターミナルは、モータケースに弾性的に接触させる方式であり、かつ、振動等の外力が加わった場合でも容易に変形しにくい十分な機械的な強度を有する構造となっている。そのため、長期間の使用でも電気的な接続状態を維持できる、信頼性の高いアースターミナルを具備した、ブラシ付き直流モータを提供することができる。
また、アースターミナルは薄いので、エンドキャップの平板状壁部にアースターミナルを設けても、モータケースの平坦部の幅を筒部の直径よりも小さくすることによりモータを小型化できるという利点は、損なわれない。
【変形例】
【0032】
本発明は、アースターミナル160が、ベース部1604とその一端から伸びる複数の分岐片(1601、1602)とを備え、このアースターミナル160を、エンドキャップアセンブリ130の平板状壁部134Aの両側の面(135、136)を利用して保持するように構成したことが特徴の1つである。この特徴を具備する範囲内で、アースターミナルの構成を任意に変更することができる。
例えば、アースターミナル160に、2対の分岐片を設けても良い。この場合、中央に1つの保持爪を設けても良く、各分岐片の間に保持爪を設けても良い。
逆に、2対の分岐片に各々、保持爪の機能も持たせることで、保持爪を省略しても良い。
あるいはまた、1対の分岐片の間にある1つの保持爪の長さを若干長くして、この保持爪に分岐片の機能すなわちアース端子としての機能を持たせるようにしても良い。
これらの変形例に示した、分岐片や保持爪の数や形状等の構成は、機械的強度が大きく、電気ノイズを抑制する機能を長期間維持できるアースターミナルを提供できるという、本発明の作用・効果を損なわない範囲で、適宜、設定すればよい。
【実施例2】
【0033】
実施例1では、エンドキャップアセンブリに、電気ノイズを抑制する手段として、一対のコンデンサからなる回路が搭載された例を示したが、本発明は、これに限定されるものではない。電気ノイズを抑制する手段として、エンドキャップ本体138に、一対のコンデンサに加えて、さらに、一対のチョークコイルを含む回路が搭載される場合でも、本発明のアースターミナル160を採用することができる。すなわち、コモンモードやノーマルモードに対応した回路が、エンドキャップアセンブリに搭載された場合でも、本発明のアースターミナル160を採用することができる。
【実施例3】
【0034】
実施例1では、2極のブラシ付き直流モータの例を示したが、本発明は、これに限定されるものではない。4極のブラシ付き直流モータにおいても、対をなす2組の永久磁石の外周に沿った対をなす2組の曲面部と、各永久磁石間の対をなす2組の平面部とを有するものであれば、対応するエンドキャップの平面部のいずれか1つを利用して、平板状壁部134Aを形成することで、実施例1と同様な、アースターミナル160を設置することができる。
なお、4極よりも極数の多い小型のブラシ付き直流モータでは、エンドキャップの平面部の長さが短くなるので、アースターミナル160のサイズが小さくなり、その機械的強度を確保するのが難しくなる。そのため、このようなモータに、本発明のアースターミナルを設けるのは実用的ではない。
【実施例4】
【0035】
本発明のブラシ付き直流モータは、例えば、自動車のエンジンのEGR弁や電子スロットル装置等の、モータ駆動式弁装置の駆動源として採用することができる。すなわち、車のエンジンに搭載される弁装置用駆動用の直流モータとして、使用することができる。この場合、常にエンジンからの振動による外力が作用するが、本発明によれば、エンドキャップの平板状壁部を利用して、容易に変形しにくい十分な機械的な強度を有し、長期間の使用でも電気的な接続状態を維持できる、信頼性の高いアースターミナルを設けることができる。これにより、電気ノイズを低減し、長期間の使用に耐えるモータ駆動式弁装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0036】
100 直流モータ
110 モータケース
1101 モータケースの曲面外周部
1102 モータケースの平面部
1103 モータケースの開口部
112 永久磁石
113 永久磁石抑え
114 スリーブベアリング
115 ボールベアリング
120 ロータ
121 回転軸
122 コイル
124 整流子
126 ブラシ
127 ブラシスプリング
128 ピッグテール
130 エンドキャップアセンブリ
131 エンドキャップの曲面外周部
132 エンドキャップの平面状外周部
133 回転軸孔
134 平板状壁部
135 平板状壁部の外面
136 平板状壁部の内面
137 コンデンサ取付穴
138 エンドキャップ本体
1381 アース取付け用斜面
1382 アース取付け用溝
139 延長部
140 電源ターミナル
1401 電源ターミナル頭部
1402 電源ターミナル延長部
142 ギヤ
144 シールドキャップ
150 コンデンサ
1501 コンデンサの一方の足
1502 コンデンサの他方の足
160 アースターミナル
1601 アースターミナル第1分岐片
1602 アースターミナル第2分岐片
1603 アースターミナル保持爪
1604 アースターミナルベース部
1605 補強リブ
1606 取付け保持用突起
170 電源端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12