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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】コロイダルシリカスラリー
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20231108BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20231108BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
B24B37/00 H
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020034876
(22)【出願日】2020-03-02
(65)【公開番号】P2021141105
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】503002569
【氏名又は名称】株式会社タイテム
(74)【代理人】
【識別番号】100156203
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 永久
(74)【代理人】
【識別番号】110001140
【氏名又は名称】特許業務法人鈴木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福井 孝一
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-288455(JP,A)
【文献】特開2000-073049(JP,A)
【文献】特開2017-218514(JP,A)
【文献】特開2018-154789(JP,A)
【文献】特開2015-227410(JP,A)
【文献】特開2001-342455(JP,A)
【文献】特開2021-38389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/00
C09K 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)シリカ、
(B)水、
および
(C)分散剤
を含むコロイダルシリカスラリーであり、
前記(A)シリカの濃度が30重量パーセント以上であり、
前記(C)分散剤が、以下の(a)、(b)及び(c)の分子構造的特徴を一分子中に持つこと
(a)塩基性窒素基および酸性基の両方を持つ
(b)塩基性窒素基の数が1個または2個である
(c)酸性基の数が塩基性窒素基の数より多い
前記(C)分散剤が、塩の形の場合は、水素の一つまたは二つ以上がカチオンに置換されており、カチオンが、アンモニウムイオンまたはテトラメチルアンモニウムイオンであること、
および、
pHが、6.0~7.0(ただし、7.0を除く)であることを特徴とするコロイダルシリカスラリー。
【請求項3】
前記(C)分散剤が、ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロトリスメチレンホスホン酸(NTMP)、およびこれらのアンモニウム塩から選ばれた少なくとも1種の化合物である請求項1または2のいずれかに記載のコロイダルシリカスラリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造時のシリコンウェハ研磨およびCMP(Chemical Mechanical Polishing、化学機械的研磨)において研磨砥粒として好適に用いられる高純度かつ高濃度のコロイダルシリカのスラリーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体製造時のシリコンウェハ研磨およびCMPにおいては、ウェハー等の汚染を防ぐため、金属不純物の少ない高純度コロイダルシリカスラリーが用いられている。この際、保管および輸送効率、さらに研磨剤の配合の自由度の向上の観点から、高純度であり、かつシリカ濃度が高いコロイダルシリカスラリーが求められている。シリカ濃度の高いコロイダルシリカスラリーを得る試みとして、例えば、ある種の無機酸、無機酸塩、有機酸及び有機酸塩から選ばれる少なくとも一種以上の分散剤を添加したシリカ濃度が20重量パーセント以上のシリカゾルが報告されている(特許文献1)。
しかし、より高濃度のシリカを含みかつ良分散性を維持した高純度コロイダルシリカスラリーが求められている。
【0003】
高シリカ濃度化とは別に、シリカ研磨剤にエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)(NTMP)等の有機酸および塩基を含む化合物を添加することが報告されている(特許文献2、3、4)。
しかし、これらは金属イオンを捕捉/無害化/除去するキレート剤として添加されており、高シリカ濃度化は意図されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2008/015943号
【文献】特開昭63-272460号公報
【文献】特開平09-204657号公報
【文献】特表2003-507895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記したように高濃度のシリカを含みかつ良分散性を維持した高純度のコロイダルシリカスラリーを提供するものである。
コロイダルシリカは、粒子表面にシラノール基SiOHを持っており、このシラノール基は、中性からアルカリ性領域ではH+を解離しSiO-となる。このためシリカ粒子はマイナスの電荷を帯びることになり、マイナス電荷同士の反発により安定なコロイドが維持されている。
【0006】
しかし、シリカ濃度が高くなると、シリカ粒子同士が接近する頻度が増えるため、中には電気的反発を乗り越え衝突・合体するのが多く現れ、最終的に凝集物を生成してしまう。
本発明は、このような凝集が抑えられ、高シリカ濃度においても良分散性を維持するコロイダルシリカスラリーを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(A)シリカ、
(B)水、
および
(C)分散剤
を含むコロイダルシリカスラリーであり、
前記(A)シリカの濃度が25重量パーセント以上であり、
前記(C)分散剤が、以下の(a)、(b)及び(c)の分子構造的特徴を一分子中に持つことを特徴とするコロイダルシリカスラリーである。
(a)塩基性窒素基および酸性基の両方を持つ
(b)塩基性窒素基の数が1個または2個である
(c)酸性基の数が塩基性窒素基の数より多い
【発明の効果】
【0008】
本発明により、高濃度のシリカを含みかつ良分散性を維持した高純度コロイダルシリカスラリーが提供される。
これにより、保管および輸送の効率、さらに研磨剤の配合の自由度の向上を図ることができる。
特に限定されるものではないが、本発明の効果は以下のメカニズムに基づくと推察される。
【0009】
本発明の(C)分散剤が持つ塩基性窒素基は、コロイダルシリカ表面のシラノール基と水素結合することが知られている。そこで、塩基性窒素基を持つと同時に、その塩基性窒素基の数より多い酸性基を持っていれば、本分散剤がシラノール基に水素結合した場合、塩基性窒素基で打ち消される以上のマイナス電荷をシリカ粒子に付与することとなる。
【0010】
これによりシリカ粒子同士の電気的反発が増大し、高濃度でも良分散性が維持されると考えられる。しかしながら、塩基性窒素基の数より多い酸性基を持つというだけでは不十分であり、塩基性窒素基の数にも制限が付く。すなわち、一分子中の塩基性窒素基の数が多いと、複数ある塩基性窒素基が別々のシリカ粒子と水素結合し、逆に凝集を促進することが起こる。そのため、一分子中の塩基性窒素基の数は1または多くても2である必要がある。
【0011】
さらに、塩基性窒素基の数が2の場合、2個の塩基性窒素基の位置が分子中で離れすぎていると、やはり凝集促進の可能性が増えるので好ましくない。従って、2個の塩基性窒素基は離れていても、3個以下の原子、例えば3個以下の炭素原子を介して位置することが好ましい。
以上の条件を満たす化合物は、シリカ表面のシラノール基と水素結合することにより、シリカ表面のマイナス電荷を効果的に増加させることができる。そのため、この化合物を含む(C)分散剤を用いることにより、シリカ濃度が高くても良分散性を維持したコロイダルシリカスラリーを実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、
(A)シリカ、
(B)水、
および
(C)分散剤
を含むコロイダルシリカスラリーであり、
前記(A)シリカの濃度が25重量パーセント以上であり、
前記(C)分散剤が、以下の(a)、(b)及び(c)の分子構造的特徴を一分子中に持つことを特徴とするコロイダルシリカスラリーである。
(a)塩基性窒素基および酸性基の両方を持つ
(b)塩基性窒素基の数が1個または2個である
(c)酸性基の数が塩基性窒素基の数より多い
【0013】
<(C)分散剤>
- 塩基性窒素基 -
(C)分散剤の化合物が持つ塩基性窒素基の例としては、アミノ基-NR12を挙げることができる。
ここで、R1およびR2は同一または異なる有機基または水素であり、一方、または両方は水素Hであってもよい。すなわち、アミノ基となるアミンとしては、1級アミン、2級アミン、あるいは3級アミンのいずれでもよい。なお、R1および/またはR2が、有機基である場合は、それぞれが炭素を含む原子団から導かれる基であることが好ましい。また、有機基として、-N=R(Rは炭化水素基などの有機基)のように二重結合を有する基、さらには、ピリジル基、ピリジレン基などのように窒素が芳香環の一部を構成する基であってもよい。
【0014】
また、上記した発明の効果を得るために、一分子中の塩基性窒素基の数(BB(個))は1または多くても2である必要がある。BBが2の場合、2つの塩基性窒素基は同じでも異なっていいてもよい。さらに、上記した発明の効果を得るためには、塩基性窒素基の数が2の場合、2個の塩基性窒素基の位置が分子中で離れすぎていると、やはり凝集促進の可能性が増えるので好ましくない。従って、2個の塩基性窒素基は離れていても、3個以下の原子、例えば3個以下の炭素原子を介して位置することが好ましい。その具体例を挙げるなら、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基でつながった塩基性窒素基がこれに該当する。
【0015】
- 酸性基 -
(C)分散剤の化合物が持つ酸性基の例としては、カルボキシル基-COOH、ホスホノ基-PO32、スルホ基-SO3Hを挙げることができる。ここでHは、その全て又は一部が共存するカチオンに置換されていてもよい。
また、これらの酸性基は、1個であっても、2個以上であってもよく、その種類は1種類あるいは2種類以上であってもよい。
一分子中の酸性基の数(AA(個))と、上記の一分子中の塩基性窒素基の(BB(個))との大小関係は、AA>BBである。また、好ましくは、AA>BB+1である。
【0016】
- 具体例 -
(C)分散剤の具体例としては、複数のカルボキシル基を持つモノアミン、3以上のカルボキシル基を持つジアミン、複数のホスホノ基を持つモノアミン、3以上のホスホノ基を持つジアミン、複数のスルホ基を持つモノアミン、3以上のスルホ基を持つジアミン、カルボキシ基とホスホノ基を持つモノアミン、カルボキシ基とスルホ基を持つモノアミン、ホスホノ基とスルホ基を持つモノアミンを挙げることができる。これらの中で、好ましくは、複数のカルボキシル基を持つモノアミン、3以上のカルボシ基を持つジアミン、複数のホスホノ基を持つモノアミンである。さらに、複数の中でも3以上のカルボキシル基を持つモノアミンおよび複数の中でも3以上のホスホノ基を持つモノアミンが特に好ましい。
【0017】
さらに具体的には、(C)分散剤の例として、
アスパラギン酸(-NH2 1個、-COOH 2個)、
グルタミン酸 (-NH2 1個、-COOH 2個)、
イミノ二酢酸(IDA)(-N(-H)-1個、-COOH 2個)、
ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)(-N(-)-1個、-COOH 2個)、
ニトリロ三酢酸(NTA)(-N(-)-1個、-COOH 3個)、
エチレンジアミン四酢酸(EDTA)(-N(-)-2個、-COOH 4個、2個の塩基性窒素基の間にエチレンが介在する)、
ニトリロトリスメチレンホスホン酸(NTMP)(-N-1個、-CH2-P(=O)(OH)3 3個)、
エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTMP)(-N(-)-2個、-COOH 4個、2個の塩基性窒素基の間にエチレンが介在する)、
グリホサート(-N(-)- 1個、-COOH 1個 及び-CH2-P(=O)(OH)3 1個)、
システイン酸(-NH2 1個、-COOH 1個 及び-CH2-S(=O)2(OH)1個)、
および
ピリジンジカルボン酸(2,6-ピリジレン基 1個、-COOH 2個)
を挙げることができる。
これらの中で、好ましくは、NTA、EDTA、およびNTMPである。さらに、NTAおよびNTMPが特に好ましい。
【0018】
上記の(C)分散剤は、何らかの塩の形でも良く、それぞれの水素の一つまたは二つ以上がカチオンに置換されていても良い。好ましいカチオンとしては、金属イオンのコンタミを防ぐという観点から、アンモニウムイオンおよびテトラメチルアンモニウムイオンが挙げられる。このような塩の形態の中では、NTAのアンモニウム塩、EDTAのアンモニウム塩、およびNTMPのアンモニウム塩が好ましい。さらに、NTAのアンモニウム塩およびNTMPのアンモニウム塩が特に好ましい。
【0019】
(C)分散剤の濃度は、少ないと効果が見られなくなってしまうため、(C)分散剤の重量濃度/(A)シリカの重量濃度の比の値として、0.0001以上が好ましい。より好ましくは0.0002以上であり、特に好ましくは0.0005以上である。(C)分散剤の濃度は、多いと逆に(A)シリカの凝集を引き起こす可能性があるため、(C)分散剤の重量濃度/(A)シリカの重量濃度の比の値としては0.05以下が好ましい。この比の値は、より好ましくは0.02以下であり、特に好ましくは0.01以下である。
【0020】
<(A)シリカ>
本発明のコロイダルシリカスラリー中の(A)シリカ濃度は25重量パーセント以上である。
保管および輸送の効率ならびに研磨剤の配合の自由度の向上の観点から、より好ましくは30重量パーセント以上であり、特に好ましくは35重量パーセント以上である。また、通常は60重量パーセント以下であり、好ましくは50重量パーセント以下である。本発明のシリカは、金属不純物含量の少ない高純度シリカであり、好ましくは、アルコキシシランを原料として合成される。アルコキシシラン又はその縮合体からのゾルゲル法により合成されたシリカが特に好ましい。シリカ粒子の粒径には特に限定されないが、シリカスラリーの安定性の観点から、窒素吸着法(BET法)により求められる平均一次粒子径は5~100nmが好ましい。より好ましくは10~80nmであり、特に好ましくは15~50nmである。
【0021】
シリカ粒子の二次粒子径分布は、動的光散乱法により測定することができ、その分布(体積表示)の累積50%粒子径D50を平均二次粒子径と呼ぶ。シリカ粒子の平均二次粒子径としては、10~200nmが好ましい。より好ましくは15~150nmであり、特に好ましくは20~100nmである。特に平均一次粒子径が15~30nm、平均二次粒子径が20~40nmのような粒径の小さい粒子は、研磨後のウェハー表面の欠陥低減への効果が期待される。
【0022】
しかし、小粒径の粒子ほど比表面積が大きくなるため凝集を起こしやすく、高シリカ濃度のスラリーを調製するのは難しくなる。しかしながら、本発明に基づくと、このような小粒径のシリカに対しても、シリカ濃度30重量パーセント以上、さらには35重量パーセント以上のシリカスラリーを実現することができる。
【0023】
<その他の成分>
コロイダルシリカスラリーを原料にCMPスラリーまたはベアシリコン研磨スラリーを調製した際に不要な成分を持ち込まない観点から、(A)シリカ、(B)水および(C)分散剤の以外の成分は極力少ない方が望ましい。特にゾルゲル法によるシリカ合成で添加されるアルカリ(典型的にはアンモニア)は、(C)分散剤を中和する程度の量まで減らすことが望ましい。アルカリ成分の含有量の評価法としてpHを用いると、コロイダルシリカスラリーのpHは、6.0~8.0であることが好ましい。特に好ましくは、pHは6.5~7.5である。
【実施例
【0024】
以下、実施例によって、本発明をより具体的に説明する。本発明はこれらの例によって何ら制限されるものではない。
本発明において用いた測定および試験の方法は以下のとおりである。
【0025】
(1)コロイダルシリカの平均一次粒子径の測定
コロイダルシリカの平均一次粒子径は、BET法(窒素吸着)により測定して得た比表面積を下記式[1]
平均一次粒子径(nm)=2672/比表面積(m2/g) [1]
に代入し算出した。BET法による比表面積の測定は、(株)マウンテック社製Macsorb HM model-1201を用い行った。測定用サンプルは、コロイダルシリカを含むスラリーをホットプレート上で加熱・乾燥させた後、乳鉢で細かく砕くことにより調製した。
【0026】
(2)コロイダルシリカの平均二次粒子径の測定
コロイダルシリカの平均二次粒子径は、動的光散乱法により測定した粒度分布(体積表示)の累積50%粒子径D50で示した。また、累積84%粒子径と累積16%粒子径の差の1/2をSDとした。動的光散乱法による粒度分布測定は、日機装(株)製Microtrac model UPA-UT151を用い行った。
測定用サンプルは、コロイダルシリカを含むスラリーをシリカ濃度0.1重量パーセントとなるようイオン交換水で希釈することにより調製した。
【0027】
(3)pHの測定
コロイダルシリカスラリーのpHの測定は、メトラー・トレド(株)社製セブンイージーpH計を用い行った。
【0028】
(調製例1)
<コロイダルシリカAの調製>
コロイダルシリカAは、日本特許第4712556号の比較例1に記載の方法で調製し、シリカ濃度18.0重量パーセントのシリカスラリーを得た。得られたコロイダルシリカの粒径は、平均一次粒子径28.2nm、平均二次粒子径53.4nm (SD=17.1nm、CV=0.32)であった。
【0029】
(調製例2)
<コロイダルシリカBの調製>
コロイダルシリカBは、日本特許第4712556号の実施例1に記載の方法で調製し、シリカ濃度18.2重量パーセントのシリカスラリーを得た。得られたコロイダルシリカの粒径は、平均一次粒子径18.3nm、平均二次粒子径30.9nm (SD=9.3nm、CV=0.30)であった。
【0030】
(実施例1)
スターラーバーを入れ風袋重量を測定したスクリュー管に、調製例1で調製したコロイダルシリカAのスラリーを所定量投入した。
ここにさらに分散剤溶液としてNTAのアンモニア水溶液(NTA:NH3=1:2(mol/mol))を所定量(NTA重量濃度/シリカ重量濃度=0.001となるよう)添加した。
この分散剤溶液を添加したスラリーをスターラー付きホットプレート上で加熱し、水を蒸発させ濃縮を行った。
スラリー量が所定量にまで減少したら、室温まで放冷した後、重量を測定した。
この重量と風袋重量、添加したシリカスラリーA量と元のシリカ濃度から濃縮後のシリカ濃度を求めた。この時のシリカ濃度は36重量パーセントであった。このスラリーの沈殿の有無を目視により確認した。以上の結果を表1に示す。
【0031】
(実施例2)
コロイダルシリカスラリーとして調製例2で調製したコロイダルシリカBのスラリーを使用した以外は実施例1と同様である。
【0032】
(実施例3)
分散剤溶液を添加したスラリーをシリカ40重量パーセントまで濃縮した以外は実施例1と同様である。
【0033】
(実施例4)
分散剤溶液をNTA重量濃度/シリカ重量濃度=0.002となるよう添加した後、スラリーをシリカ41重量パーセントまで濃縮した以外は実施例1と同様である。
【0034】
(実施例5)
分散剤溶液をNTA重量濃度/シリカ重量濃度=0.004となるよう添加した後、スラリーをシリカ40重量パーセントまで濃縮した以外は実施例1と同様である。
【0035】
(実施例6)
分散剤溶液としてNTMPの水溶液を、NTMP重量濃度/シリカ重量濃度=0.001となるよう添加した後、スラリーをシリカ38重量パーセントまで濃縮した以外は実施例1と同様である。
【0036】
(実施例7、8)
分散剤溶液としてEDTAのアンモニア水溶液(EDTA:NH3=1:3(mol/mol))を、EDTA重量濃度/シリカ重量濃度=0.001(実施例7)、または0.002(実施例8)となるよう添加した後、スラリーをシリカ35重量パーセントまで濃縮した以外は実施例1と同様である。
【0037】
(比較例1)
分散剤溶液は添加せず、スラリーをシリカ25重量パーセントまで濃縮した以外は実施例1と同様である。
【0038】
(比較例2)
分散剤溶液は添加せず、スラリーをシリカ25重量パーセントまで濃縮した以外は実施例2と同様である。
【0039】
(比較例3)
分散剤溶液としてN,N-ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)(塩基性窒素基が3級アミン 1個、酸性基がカルボキシル基1個)の水溶液を、DHEG重量濃度/シリカ重量濃度=0.001となるよう添加した後、スラリーをシリカ27重量パーセントまで濃縮した以外は実施例1と同様である。
【0040】
(比較例4)
分散剤溶液としてジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)(塩基性窒素基が3級アミン 3個、酸性基がカルボキシル基 5個)のアンモニア水溶液(DTPA:NH3=1:4(mol/mol))を、DTPA重量濃度/シリカ重量濃度=0.001となるよう添加した後、スラリーをシリカ34重量パーセントまで濃縮した以外は実施例1と同様である。
【0041】
(比較例5)
分散剤溶液として1%硫酸を、硫酸重量濃度/シリカ重量濃度=0.004となるよう添加した後、スラリーをシリカ31重量パーセントまで濃縮した以外は実施例1と同様である。
【0042】
(実施例9)
分散剤溶液を添加したスラリーをシリカ35重量パーセントまで濃縮した以外は実施例1と同様にして調製したシリカスラリーについて、pH測定を行った。結果を表2に示す。
【0043】
(実施例10)
分散剤溶液を添加したスラリーをシリカ27重量パーセントまで濃縮した以外は実施例2と同様にして調製したシリカスラリーについて、pH測定を行った。
【0044】
実施例1~10では濃縮後のスラリーにシリカの沈殿の生成は確認できなかったが、比較例1~5ではシリカの沈殿の生成が確認された。また、実施例9と10についてpHを測定したところ、それぞれ6.7および7.0であった。
【0045】
以上のように、本発明によれば、シリカ濃度40重量パーセント以上の良分散性を維持したコロイダルシリカスラリーを得ることができる。さらに、凝集を起こしやすい小粒径の粒子(シリカB)であっても、シリカ濃度35重量パーセント以上でも良分散性を維持している。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明により提供されるコロイダルシリカスラリーは、高濃度のシリカを含みかつ良分散性が維持されている。したがって、保管および輸送の効率、さらに研磨剤の配合の自由度の向上を図ることができる。本発明のコロイダルシリカスラリーは、各種被研磨物の研磨剤の原料として好適に使用され、特には、半導体基板の製造過程における、シリコンウェハ研磨やCMPプロセスに好適に用いることができる。