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特許7379791電気療法用の刺激装置及び接触電極の極性を確認する方法
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  • 特許-電気療法用の刺激装置及び接触電極の極性を確認する方法 図1
  • 特許-電気療法用の刺激装置及び接触電極の極性を確認する方法 図2A
  • 特許-電気療法用の刺激装置及び接触電極の極性を確認する方法 図2B
  • 特許-電気療法用の刺激装置及び接触電極の極性を確認する方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】電気療法用の刺激装置及び接触電極の極性を確認する方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/39 20060101AFI20231108BHJP
   A61N 1/365 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
A61N1/39
A61N1/365
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021500258
(86)(22)【出願日】2020-02-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 IB2020050928
(87)【国際公開番号】W WO2020183253
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】102019106224.1
(32)【優先日】2019-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515197178
【氏名又は名称】ゲーエス エレクトロメディジニシェ ゲレーテ ゲー. ステンプル ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ウルブリヒ、マルク
(72)【発明者】
【氏名】ポイケルト、ミヒャエル
【審査官】近藤 裕之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第8738130(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2015/273226(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/100381(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/236248(US,A1)
【文献】特開2011-056287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/39
A61N 1/365
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気療法用の刺激装置、特に除細動器及び/又は外部ペースメーカ装置であって、
患者の身体上の適切な刺激位置に適用することができ、患者(10)の身体に電流パルスを印加することができる少なくとも2つの接触電極(11、12)であって、前記少なくとも2つの接触電極(11、12)のうちの第1の接触電極は、放出された電流パルスに対して正極性を有する充電電極(12)として機能し、前記少なくとも2つの接触電極(11、12)のうちの第2の接触電極は、放出された電流パルスに対して負極性を有する放電電極(11)として機能する、少なくとも2つの接触電極(11、12)と、
ライン接続部(21、17)によって接触電極(11、12)に接続されているか、又は接続され得る、電流パルス発生器(14)と、
を備え、
前記接触電極(11、12)に接続されているか、又は接続され得る、信号の評価ユニット(15)を備えることを特徴とし、
前記患者(10)の身体に適用される前記接触電極(11、12)によって、接触電極のそれぞれの適用位置に固有の身体自体の信号を記録し、前記評価ユニット(15)に送信するように構成され、
前記評価ユニット(15)は、前記接触電極(11、12)で検出された固有の前記信号に基づいて、前記患者(10)の身体上の前記接触電極(11、12)の実際の位置を決定するためにセットアップされる、
刺激装置。
【請求項2】
患者(10)の身体上の充電電極(12)及び放電電極(11)の適用位置を表示する表示装置(18)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の刺激装置。
【請求項3】
電流パルス発生器(14)と接触電極(11、12)との間のライン接続(21、17)を切り替える切替手段(19、20)を備えることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の刺激装置。
【請求項4】
前記切替手段(19、20)が、切替スイッチ(20)を含むことを特徴とする、請求項3に記載の刺激装置。
【請求項5】
前記切替スイッチ(20)が、前記評価ユニット(15)により制御された方法で作動され得ることを特徴とする、請求項4記載の刺激装置。
【請求項6】
固有の前記信号がECG信号であることを特徴とする、
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の刺激装置。
【請求項7】
電気療法用の刺激装置(13)、特に除細動装置及び/又はペースメーカ装置の患者(10)の身体に適用される接触電極(11、12)の極性を確認する方法であって、
患者の身体に適用される接触電極(11、12)によって、接触電極のそれぞれの適用位置に固有の身体自体の信号が記録され、評価ユニット(15)に送信され、
評価ユニット(15)は、接触電極(11、12)で検出された信号に基づいて、患者の身体上の接触電極の実際の位置を決定する、
方法。
【請求項8】
評価ユニット(15)は、それぞれの接触電極に実際に印加され、電気療法に提供される治療電流の極性を、それぞれの実際の位置における接触電極上の目標極性と比較し、実際の極性と目標極性とが一致しない場合に、信号を出力し、及び/又は実際の極性を目標極性に変更することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
固有の前記信号がECG信号であることを特徴とする、請求項7又は請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適切な刺激位置で患者の身体に適用することができ、それによって電流パルスを患者の身体に印加することができる少なくとも2つの接触電極と、ライン接続によって接触電極に接続されるか、又は接続することができる電流パルス発生器と、を備え、少なくとも2つの接触電極のうちの第1の電極が、放出された電流パルスに対して正極性を有する充電電極として機能し、少なくとも2つの接触電極のうちの第2の電極が、放出された電流パルスに対して負極性を有する放電電極として機能する、電気療法用の刺激装置、特に除細動器及び/又は外部ペースメーカ装置に関する。本発明はさらに、患者の身体に適用される接触電極の極性を決定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
除細動器又は外部ペースメーカとして使用するのに適した刺激装置は、一般に、患者の上半身の特定の位置に固定される、例えば接着される2つの接触電極によって、治療対象である患者の身体に接続される。そうすることにより、接触電極は基本的に同一である、即ち、両方の電極は、充電電極として機能することも、放電電極として機能することも可能である。それにより、放出された電流パルスに対して、正極性の電極は充電電極として機能し、負極性の電極は放電電極として機能する。
【0003】
従って、外部ペースメーカ(pacers)及び除細動器の標準電極位置は、「前部-後部(anterior-posterior)」及び「前部-側部(anterior-lateral)」の位置となる。「前部-側部」の配置では、前部、即ち、前上側の胸部の右側に適用される電極の極性は正であり、側部に適用される電極の極性、即ち、脇の下に横方向(左)に配置される電極の極性は負である。「前部-後部」の配置では、後部、即ち、患者の背部に適用される電極は正極性を有し、前部、即ち、胸部に適用される電極は負極性を有する。
【0004】
電極の極性は、極性の反転が結合閾値を大幅に上昇させ、治療の成功にチャレンジする可能性があるので、合理的な治療にとって決定的である。特に救助者が大きな時間的及び心理的プレッシャーの下にいる緊急事態においては、除細動を実行するため又は外部ペースメーカとの接続を確立するための電極の極性が反転することが意図せずに容易に起こる可能性があり、その場合、治療の成功が損なわれるか又は完全にチャレンジとなることが理解される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、患者の身体上での接触電極の正確な位置決めが単純化される、冒頭で述べたタイプの刺激装置を作り出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、患者の身体上の接触電極の適用位置を決定するために、接触電極に接続されているか、又は接続され得る信号評価ユニットにより、本発明で達成される。その際、本発明による方法によれば、患者の身体に適用される電気療法用の刺激装置、特に除細動器及び/又はペースメーカ装置の接触電極の極性を確認することが可能になり、患者の身体に適用される接触電極によって、接触電極のそれぞれの適用位置に固有の身体自体の信号が記録され、評価ユニットに送信される。
【0007】
評価ユニットは、接触電極で検出された信号、例えば、それらの向き及び/又はサイズに基づいて、患者の身体上での接触電極の実際の位置を決定する。これは、接触電極の極性を手動で反転させるように誘導するために、適切なディスプレイによって救急救命士又は医師に表示することができる。したがって、本発明による装置は、患者の身体上の充電電極及び放電電極の適用位置を表示する表示装置を有することができる。
【0008】
評価ユニットが、それぞれの接触電極に実際に印加され、電気療法に提供される治療電流の極性を、それぞれの実際の位置における接触電極上の目標極性と比較する場合には、特に有利である。実際の極性と目標極性とが一致しない場合には、信号を出力する、及び/又は実際の極性を目標極性に変更する。
【0009】
このようにして、救急救命士又は医師には、患者の身体に適用される接触電極のそれぞれの極性が与えられるだけではなく、必要であれば、極性が反転されていること、又は特に好ましい有利な方法では、電極が接続されたときに、本発明による装置自体によってエラーが直ちに修正されることも与えられる。したがって、救助隊員は、電極が誤って適用された(反転された)場合であっても、患者が最適な治療を受けるという事実に頼ることができる。これにより、貴重な時間を節約することができる。
【0010】
本発明による方法を実施するために、装置は、電流パルス発生器と接触電極との間のライン接続を反転させるための切替手段を備えていることが好ましい。切替手段は、接触電極の誤った極性が装置によって決定された場合に、接触電極と除細動器/外部ペースメーカとの間に接続されたケーブル接続を切り替えることを不要にする。切替手段は、切替スイッチを含むことができ、その動作中、極反転が迅速に行われる。従って、切替スイッチを、評価ユニットによって制御された方法で作動させることができ、その結果、装置の操作担当者による手動の介入なしに、切替を自動的に行うことができる場合に、特に有利である。
【0011】
装置によって評価される信号は、好ましくは、接触電極が患者の身体上に配置された位置で電極によってピックアップされ、接触電極に接続されたライン接続を介して刺激装置の評価ユニットに送信されるECG信号とすることができる。ECG信号は、接触電極の位置によって大きく異なるので、患者の身体上にある2つの接触電極の位置は、DE‐ECG導出からの特徴の抽出から明確に推測できる。接触電極の配置のそれぞれの位置を推定するために評価することができる他のタイプの信号は、例えば、適用された接触電極の位置における組織の生体電位又はインピーダンスとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明のさらなる利点及び特徴は、以下の説明及び図面から明らかになり、本発明の好ましい実施形態が、実施例によってより詳細に説明される。
図1図1Aは、外部ペースメーカ及び除細動器の標準電極位置「前部-側部」を示す図であり、図1Bは、標準電極位置「前部-後部」を示す図である。
図2A図2Aは、正しい極性(上)と逆の極性(下)とで、図1Aに従う電極位置から取得できるECG信号を示す図である。
図2B図2Bは、正しい極性(上)と逆の極性(下)とで、図1Bに従う電極位置から取得できるECG信号を示す図である。
図3図3は、本発明による方法を実施するための本発明による刺激装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、外部ペースメーカ又は除細動器に使用されるような、患者10の身体上の接触電極11、12の配置のための2つの標準電極位置を示す。
【0014】
電極を患者に適用するときには、電極が正しく配置されていることを保証するだけでなく、接触電極11、12を介して除細動器又はペースメーカによって患者の体内に導入される電気パルスの正しい極性が観察されることも重要である。図1A及び図1Bに示される2つの電極位置において、ドットで表される接触電極11の極性は負であり、黒ベタとして示される接触電極12の極性は正である必要がある。図示された点で接触電極11、12によって記録されたECG信号が導出されて記録される場合、上述のように正しい極性が観察されると、上記の図2A及び図2Bにそれぞれ示されたECG信号経路が得られる。極性が反転すると、ECG応答信号の経路も変化し、図2A及び図2Bの下方にそれぞれ示されるように見える。
【0015】
極性を反転させることによって、記録された波形の特徴が変化し、これに基づいて、2つの接触電極の極性が目的の配置に対応しているか、逆になっているかが容易に分かる。
【0016】
図3に概略的に示される刺激装置は、全体が13で示され、2つの接触電極11、12に加えて、電流パルス発生器14及びECG評価ユニット15を備える。これらは、導体ケーブル16及び接続ケーブル17によって接触電極11、12に接続されている。評価ユニット15は、接触電極11、12によってピックアップされたECG信号を視覚的に表示する表示装置18と、信号処理装置19とを有し、信号処理装置19により、記録されたECG信号に基づいて、患者の身体上のどの位置に正極性の充電電極12があり、どの位置に負極性の放電電極11があるかが決定される。
【0017】
評価ユニット15は、患者10の身体上の目標位置(図1)における2つの接触電極の反転を検出すると、二重切替スイッチ20を操作することによって、電流パルス発生器14から接触電極11,12の接続ケーブル17へのライン接続部21の切替をもたらすであろう。このようにして、電流パルス発生器14によって提供され、それぞれの接触電極に印加される電気療法の治療電流の極性が、それぞれの実際の位置での接触電極の目標極性と比較され、実際の極性と目標極性とが一致しない場合に、実際の極性が目標極性に変更される。
【0018】
好ましい例示的な実施形態では、2つの接触電極の極性が自動的に反転される。その結果、電流の充電及び放電は、電極と電流パルス発生器との間の接続ケーブルを切断し、極性を反転させた後にそれらを再接続する必要なしに、患者10の身体上の正しい点でそれぞれ行われる。
図1
図2A
図2B
図3