(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】飲料組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 2/00 20060101AFI20231108BHJP
A23L 2/56 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
A23L2/00 B
A23L2/56
(21)【出願番号】P 2023032602
(22)【出願日】2023-03-03
【審査請求日】2023-03-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】312017444
【氏名又は名称】ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】小野 都
(72)【発明者】
【氏名】小野木 尚子
(72)【発明者】
【氏名】丹下 優菜
(72)【発明者】
【氏名】村上 綾子
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-136867(JP,A)
【文献】国際公開第2019/038681(WO,A2)
【文献】韓国登録特許第2445922(KR,B1)
【文献】中国特許出願公開第112772807(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイゲノール
を2~200ppm含有し、メチルオイゲノール
を含有し、オイゲノール1重量部に対して、メチルオイゲノールの含有量が0.0001~0.01重量部である飲料。
【請求項2】
オイゲノールを2~200ppm含有し、シンナムアルデヒドを含有し、オイゲノール1重量部に対して、シンナムアルデヒドの含有量が0.1~10重量部である飲料。
(但し、炭酸ガスを含有し、下記(A)~(C)を満たすことを特徴とする果実酒を除く。
(A)オイゲノールの含有量:0.1~20ppm
(B)ケイヒアルデヒドの含有量:0.1~15ppb
(C)メントールの含有量:0.1~10ppm)
【請求項3】
炭酸及び/又はスパイス抽出物を含有する請求項1記載の飲料
【請求項4】
炭酸及び/又はスパイス抽出物を含有する請求項2記載の飲料。
【請求項5】
オイゲノール
を2~200ppmとなるように含有させ、メチルオイゲノール
を含有させ、オイゲノール1重量部に対して、メチルオイゲノールの含有量が0.0001~0.01重量部とする工程を含む、飲料の製造方法。
【請求項6】
飲料に、オイゲノール
を2~200ppm含有させ、メチルオイゲノール
を、オイゲノール1重量部に対して、メチルオイゲノールの含有量が0.0001~0.01重量部となるように含有させる、飲料が生じるムレ臭を低減させる方法。
【請求項7】
オイゲノール
を2~200ppmとなるように含有させ、シンナムアルデヒドを含有
させ、オイゲノール1重量部に対して、シンナムアルデヒドの含有量が0.1~10重量部とする工程を含む、飲料の製造方法。
(但し、炭酸ガスを含有し、下記(A)~(C)を満たすことを特徴とする果実酒の製造方法を除く。
(A)オイゲノールの含有量:0.1~20ppm
(B)ケイヒアルデヒドの含有量:0.1~15ppb
(C)メントールの含有量:0.1~10ppm)
【請求項8】
飲料に、オイゲノール
を2~200ppm含有させ、シンナムアルデヒドを、
オイゲノール1重量部に対して、シンナムアルデヒドの含有量が0.1~10重量部となるように含有させる、飲料が生じるムレ臭を低減させる方法。
(但し、炭酸ガスを含有し、下記(A)~(C)を満たすことを特徴とする果実酒に関する方法を除く。
(A)オイゲノールの含有量:0.1~20ppm
(B)ケイヒアルデヒドの含有量:0.1~15ppb
(C)メントールの含有量:0.1~10ppm)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のように、天然の素材由来の抽出物に由来して所定の含有量でp-クレゾールが含有される飲料において、オイゲノールを含有させて嗜好性を向上させることは公知である。
さらに、特許文献2に記載のように、柑橘風味飲料にオイゲノール、1,4-シネオール、フルフラール、5-メチルフルフラールをある範囲の濃度で含有させることにより、保管後の経時劣化による刺激感の発生を抑制できることは公知である。
これらの文献に記載のように、オイゲノール単独ではなく、他の成分も含有させることにより優れた効果を発揮させることは知られているが、これらは、p-クレゾールの添加による支障の改善であったり、他の成分との密接な関係により成り立つ飲料である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-116662号公報
【文献】特開2022-98923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オイゲノールを含む香気成分を有するスパイスが含有された飲料、スパイスを含有しないが、オイゲノールを含有する香料組成物を含有する飲料では、飲用時に場合によりムレ臭を感じる場合がある。ムレ臭により、飲料の香りが好ましい香りではなくなったり、飲用時の風味が劣化したりすることがあった。そして、本発明者らは、このムレ臭を有する原因はオイゲノールの存在であることを確認した。
そこで、飲料に独特の風味を付けるために上記スパイスや上記香料組成物を飲料に添加等したときにおいて、ムレ臭の発生を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、下記の手段を採用することにより上記の課題を解決できることを見出した。
1.オイゲノール、メチルオイゲノール及び/又はシンナムアルデヒドを含有する飲料。
2.メチルオイゲノールを0.1~2000ppb含有する1記載の飲料。
3.オイゲノール1重量部に対して、メチルオイゲノールの含有量が0.0001~0.01重量部である1又は2に記載の飲料。
4.シンナムアルデヒドを1~2000ppm含有する1~3のいずれかに記載の飲料。
5.オイゲノール1重量部に対して、シンナムアルデヒドの含有量が0.1~10.0重量部である1~4のいずれかに記載の飲料。
6.炭酸及び/又はスパイス抽出物を含有する1~5のいずれかに記載の飲料。
7.オイゲノールと、メチルオイゲノール及び/又はシンナムアルデヒドを含ませる工程を含む、飲料の製造方法。
8.オイゲノールと、メチルオイゲノール及び/又はシンナムアルデヒドを含ませることにより飲料に生じるムレ臭を低減させる方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、オイゲノールを含有するスパイス抽出物や、スパイス抽出物由来ではないオイゲノールを含有した飲料において、オイゲノールに由来するムレ臭を低減させることができる。なお、ムレ臭とは、湿気がこもったような、もわっとした後味である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の本発明を実施するための説明は、本発明を限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に属する。
【0008】
[本発明における各成分の含有量の測定方法]
本発明におけるオイゲノール、メチルオイゲノール、及びシンナムアルデヒドの測定対象化合物の含有量は、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ-質量分析法(SPME-GC-MS法)または溶媒抽出-ガスクロマトグラフ-質量分析法によって特定する。各試料には、当該成分と同様の挙動を示す内部標準成分を一定濃度添加し、また試料に当該標準成分を別途添加して作成した検量線を使用する標準添加法により測定を実施する。各成分の定量イオンのピーク面積を、内部標準成分の定量イオンのピーク面積で除した面積比を用いて標準試料の検量線を作成し、定量を実施する。
【0009】
[オイゲノール]
本発明において、飲料にスパイス風味を付与するオイゲノールは、ムレ臭を有する化合物である。そのため、オイゲノールの含有量は、1ppm以上が好ましく、1.5ppm以上がより好ましく、10ppm以上が更に好ましく15ppm以上が最も好ましい。また300ppm以下が好ましく、180ppm以下がより好ましく、150ppm以下が最も好ましい。オイゲノールの含有量をこの範囲にすることによって、より深みがあるスパイス風味にしやすくなる。また、オイゲノールの含有量が1ppm未満であると、深みのある味にすることが困難であり、オイゲノールの含有量が300ppmを超えるとムレ臭が強くなりすぎる可能性があり、適切な風香味の飲料にならない場合がある。
オイゲノールは合成して得たものでもよく、スパイス抽出物やその他の飲食物に含有されたもの又はオイゲノールを含む香料でもよい。
但し、下記に示すスパイス抽出物やその他の抽出物、および香料を飲料に含有させる際において、これらの抽出物および香料中にオイゲノールが含有されているのであれば、これらの抽出物および香料に由来するオイゲノールの含有量も、本発明の飲料中のオイゲノールの含有量に含める。
【0010】
[メチルオイゲノール]
メチルオイゲノールは、シナモン等に含有される、ややスパイシーな香気を呈する成分である。
メチルオイゲノールの含有量は、0.1ppb以上が好ましく、0.5ppb以上がより好ましく、1ppb以上が更に好ましく10ppb以上が最も好ましい。また2000ppb以下が好ましく、1000ppb以下がより好ましく、150ppb以下が最も好ましい。メチルオイゲノールの含有量をこの範囲にすることによって、オイゲノールによるムレ臭を抑制しやすくなる。また、メチルオイゲノールの含有量が0.1ppb未満であると、オイゲノールによるムレ臭を抑制できない可能性があり、メチルオイゲノールの含有量が2000ppbを超えると、それ以上にメチルオイゲノールを含有させても効果の向上の程度が小さくなる可能性がある。
但し、下記に示すスパイス抽出物やその他の抽出物、および香料を飲料に含有させる際において、これらの抽出物および香料中にメチルオイゲノールが含有されているのであれば、これらの抽出物および香料に由来するメチルオイゲノールの含有量も、本発明の飲料中のメチルオイゲノールの含有量に含めることとする。
【0011】
[シンナムアルデヒド]
本発明において使用されるシンナムアルデヒドは、例えば、植物由来のシンナムアルデヒド、及び化学的に合成されたシンナムアルデヒドのいずれでもよい。
そして、植物由来のシンナムアルデヒドとして、予め植物原料から抽出されたシンナムアルデヒド(具体的には、例えば、植物由来のシンナムアルデヒドを含む組成物)、シンナムアルデヒドを含む当該植物原料(例えば、シナモンの樹皮)、又はシンナムアルデヒドを含む香料を使用してもよい。但し、植物原料から抽出されたシンナムアルデヒドを使用することが好ましい。
シンナムアルデヒドの含有量は、1ppm以上が好ましく、1.5ppm以上がより好ましく、5ppm以上が更に好ましく10ppm以上が最も好ましい。また2000ppm以下が好ましく、1000ppm以下がより好ましく、250ppm以下が最も好ましい。シンナムアルデヒドの含有量をこの範囲にすることによって、オイゲノールによるムレ臭を抑制しやすくなる。また、シンナムアルデヒドの含有量が1ppm未満であると、オイゲノールによるムレ臭を抑制できない可能性があり、シンナムアルデヒドの含有量が2000ppmを超えると、それ以上にシンナムアルデヒドを含有させても効果の向上の程度が小さくなる可能性がある。
但し、下記に示すスパイス抽出物やその他の抽出物、および香料を飲料に含有させる際において、これらの抽出物および香料中にシンナムアルデヒドが含有されているのであれば、これらの抽出物および香料に由来するシンナムアルデヒドの含有量も、本発明の飲料中のシンナムアルデヒドの含有量に含めることとする。
【0012】
[オイゲノールの含有量に対するメチルオイゲノールの含有量の比]
本発明において、飲料中のオイゲノールの含有量1重量部に対するメチルオイゲノールの含有量の比としては、0.0001重量部以上が好ましく、0.0002重量部以上がより好ましく、0.0005重量部以上が更に好ましい。また0.01重量部以下が好ましく、0.005重量部以下がより好ましく、0.001重量部以下が更に好ましい。
オイゲノールの含有量に対するメチルオイゲノールの含有量をこの範囲にすることによって、オイゲノールによるムレ臭を抑制しやすくなる。また、オイゲノールの含有量に対するメチルオイゲノールの含有量の比が0.0001重量部未満であると、オイゲノールによるムレ臭を抑制できない可能性があり、0.01重量部を超えると、それ以上にメチルオイゲノールを含有させても効果の向上の程度が小さくなる可能性がある。
【0013】
[オイゲノールの含有量に対するシンナムアルデヒドの含有量の比]
本発明において、飲料中のオイゲノールの含有量1重量部に対するシンナムアルデヒドの含有量の比としては、0.1重量部以上が好ましく、0.2重量部以上がより好ましく、0.5重量部以上が更に好ましい。また10重量部以下が好ましく、5重量部以下がより好ましく、3重量部以下が更に好ましい。
オイゲノールの含有量に対するシンナムアルデヒドの含有量をこの範囲にすることによって、オイゲノールによるムレ臭を抑制しやすくなる。また、オイゲノールの含有量に対するシンナムアルデヒドの含有量の比が0.1重量部未満であると、オイゲノールによるムレ臭を抑制できない可能性があり、10重量部を超えると、それ以上にシンナムアルデヒドを含有させても効果の向上の程度が小さくなる可能性がある。
【0014】
[メチルオイゲノールとシンナムアルデヒドを共に含有する場合]
本発明は、メチルオイゲノールとシンナムアルデヒドを共に含有しても良い。
このときには、メチルオイゲノールとシンナムアルデヒドのそれぞれの含有量は、独立して上記に記載の範囲にすることができる。
【0015】
[スパイス抽出物]
本発明におけるスパイス抽出物としては、いわゆるスパイスと言われるものの抽出物で良い。
そのようなスパイスの一例としては、アサノミ、アサフェチダ、アジョワン、アニス、アンゼリカ、ウイキョウ、ウコン、エルダーベリー、オレガノ、オールスパイス、オレンジピール、カショウ、カッシア、カモミール、カラシナ、カルダモン、カレーリーフ、カンゾウ、キャラウェー、クチナシ、クミン、クレソン、クローブ、ケシノミ、ケーパー、コショウ、ゴマ、コリアンダー、サッサフラス、サフラン、サボリー、サルビア、サンショウ、シソ、シナモン、シャロット、ジュニパーベリー、ショウガ、スターアニス、セイヨウワサビ、セロリ、ソーレル、タイム、タマネギ、タマリンド、タラゴン、チャイブ、ディル、トウガラシ、ナツメグ、ニガヨモギ、ニジェラ、ニンジン、ニンニク、バジル、パセリ、バニラ、パプリカ、ヒソップ、フェネグリーク、フェンネル、花椒、山椒、ホースラディッシュ、マジョラム、ミョウガ、メース、ラベンダー、リンデン、レモングラス、レモンバーム、ローズ、ローズマリー、ローレル、ワサビなどが挙げられる。
そしてこれらの植物等のうち、スパイスとして使用できる種子、茎、葉、根、樹皮等の部位から任意の条件により抽出して得た抽出物又はその濃縮物であれば良い。
本発明の飲料におけるスパイス抽出物のうち、溶媒以外のスパイス抽出物の含有量としては、飲料の風香味に影響を与える程度に、飲料の全量に対して0.01重量%以上が好ましい。
なお、本発明中のオイゲノール、メチルオイゲノール及びシンナムアルデヒド含有量は、スパイス抽出物が、オイゲノール、メチルオイゲノール及びシンナムアルデヒドのうち1種以上を含有するときに、このスパイス抽出物由来の含有量も合わせた含有量である。なお、スパイス抽出物がオイゲノール、メチルオイゲノール及びシンナムアルデヒドのいずれも含有しないときもある。
またスパイス抽出物の中でも、オイゲノールを含有するか否かに係わらず、ムレ臭を有するものがある。このようなスパイス抽出物を飲料に含有させる場合には、得られた飲料がムレ臭を抑制したものにできるよう、スパイス抽出物の選択と含有量を調整する。
【0016】
[その他の抽出物]
上記スパイス抽出物の他に、ライム、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、スウィーティー、ミカン等の柑橘系果実の抽出物を含有させても良い。
【0017】
[炭酸]
本発明の飲料は、さらに炭酸を加えて炭酸飲料にすることもできる。但し、炭酸飲料にした場合には、飲用時の発泡によって、炭酸飲料にしない場合に対してムレ臭が目立つ傾向にあるので、場合によりより多くのメチルオイゲノール及び/又はシンナムアルデヒドを含有させることが好ましい。
【0018】
飲料に炭酸水を加えて炭酸飲料にしても良い。炭酸飲料中の炭酸(二酸化炭素)の濃度としては、公知の炭酸飲料中の濃度と同程度又はそれ以下でもよい。
【0019】
[その他の任意の成分]
本発明の飲料は、それぞれ、公知の果汁(レモン、ライム、ミカン、オレンジ、グレープフルーツ、ユズ、シークワーサー等の柑橘類、梅、リンゴ、イチゴ、桃、さくらんぼ(黄桃)等のバラ科、ぶどう、プラム、ざくろ、ブルーベリー、カシス、クランベリー、マキベリー、いちご、アップル、ピーチ、マンゴー、パイナップル、キウイ、梨等の果汁)及びこれら果汁の濃縮果汁、還元果汁、ストレート果汁、果実ピューレ(火を通した果実あるいは生の果実をすりつぶしたり裏ごししたりした半液体状のもの)、これらの希釈液、濃縮液、混合液)、野菜汁、牛乳、乳酸菌発酵乳、ヨーグルト、植物性ミルク(豆乳、オーツミルク、アーモンドミルク、ココナッツミルク、ライスミルク、カシューナッツミルク、マカデミアミルク等)、大豆粉等から選ばれた1種以上を含有する飲料でも良い。さらに、コーラ様飲料、日本茶、中国茶、紅茶、コーヒー、ココア等の飲料の飲料でも良く、これらの飲料のブレンドでも良い。
さらに炭酸飲料でもよく、炭酸を含有しない飲料でもよい。さらにコーラ様炭酸飲料でもよいが、シンナムアルデヒドの濃度が200~900ppb、かつデカナールの含有量が40~180ppbである場合を除くことが好ましい。
なお、アルコール飲料、アルコール飲料テイストアルコール飲料風味のノンアルコール飲料を除き、さらにレモン果皮成分含有果汁とオイゲノールのみを含有する場合は除く。
【0020】
(その他)
本発明に係る飲料は、本発明の効果を毀損しない範囲で、飲料として通常配合される甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、果物等のフレーバー(果物様等の香りを付与するフレーバー)等の香料、酸味料、色素、塩類、食物繊維など(以下、適宜「添加剤」という)を含有していてもよい。また、特定保健用食品とするために必要な物質も含有できる。
甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトースなどを用いることができる。
高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームなどを用いることができる。
酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどを用いることができる。
酸味料としては、例えば、クエン酸、アジピン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL-リンゴ酸、DL-リンゴ酸ナトリウム、リン酸などを用いることができる。
着色料としては、飲食品の色付けに用いるものであれば、天然着色料、及び合成着色料のいずれも使用できる。着色料としては、例えば、カラメル色素、クチナシ色素、マリーゴールド色素、カロテン色素、アントシアニン色素、果汁色素、野菜色素、合成色素等を使用することができる。
塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウムなどを用いることができる。
食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ペクチン、ポリデキストロース、グアーガム分解物などを用いることができる。
さらに、植物に由来するタンパクの分解物(植物タンパク分解物)を含有してもよく、又は含有しなくても良い。植物タンパク分解物は、植物に由来するタンパクの加水分解により得られ、その植物タンパクの加水分解は、酵素処理、酸処理又はアルカリ処理等により行われる。植物タンパク分解物は植物ペプチドを含む。植物タンパク分解物は、さらに遊離アミノ酸及び植物タンパクからなる群より選択される1以上を含んでもよい。
そして、前記した各原料は、一般に市販されているものを使用することができる。
【0021】
(容器詰飲料)
本発明の飲料を、各種容器に飲料を詰めることにより、長期間の保管による品質の劣化を好適に防止できる。
この容器は密閉できるものであればよく、金属製缶容器や金属製樽容器(アルミニウム製又はスチール製など)、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器でも良い。容器の容量は特に限定されず、現在流通する容量のものを採用できる。なお、気体、水分および光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
さらに、容器に充填する前又は後に、適宜殺菌処理してもよい。殺菌処理の方法は特に限定されず、飲料の組成に即して、通常のプレート式殺菌、チューブラー式殺菌、レトルト殺菌、バッチ殺菌、オートクレーブ殺菌等から任意の手段を選択できる。
【実施例】
【0022】
予めベース液を調製し、そのベース液に本発明中の各成分を含有させて飲料とした。
(ベース液の調製)
下記表1の組成になるようにして各原材料を混合して1リットルのベース液を調製した。
【0023】
【0024】
(飲料の調製)
上記ベース液に対して、オイゲノールの濃度が2ppm、20ppm及び200ppmになるようにオイゲノールを添加して飲料を得た。おおよそ200.0ppmが商品として飲用できるムレ臭となる上限であった。
オイゲノールの濃度が2ppm、20ppm及び200ppmのそれぞれの場合において、メチルオイゲノールを0.2ppb、2ppb、20ppb、200ppb及び2000ppbになるようにメチルオイゲノールを添加した。同様にしてシンナムアルデヒドを0.2ppm、2ppm、20ppm、200ppm及び2000ppmになるように添加した。
また、エキスとして、スパイスエキスを所定量含有させた飲料も得た。
【0025】
(ムレ臭の評価)
例えば表2において、比較例1の試料のムレ臭を5とし、これを基準にして、オイゲノールの濃度が同じ実施例1、2及び3の試料のムレ臭を測定した。比較例2の試料のムレ臭を5とし、これを基準にして、オイゲノールの濃度が同じ実施4、5及び6の試料のムレ臭を測定した。比較例3の試料のムレ臭を5とし、これを基準にして、オイゲノールの濃度が同じ実施例7、8及び9の試料のムレ臭を測定した。実施例10、11、21及び22では炭酸を加えて炭酸飲料にした。その飲料中の炭酸濃度は約2.6Volである。
表3に記載の例においても同様にして測定した。
ムレ臭の評価基準として、ムレ臭5は、オイゲノールの濃度に応じた程度のムレ臭ありを示す。ムレ臭1はムレ臭なしを示す。ムレ臭4、3及び2は、ムレ臭5ほどではないが、ムレ臭の程度は数字が小さいほど低い。全実施例及び全比較例に共通して、ムレ臭4は飲用できるかどうかの境界であり、ムレ臭3はムレ臭を感じるが気にならない程度であり、ムレ臭2はムレ臭をほとんど感じない程度である。
そして、各試料について、それぞれ、臭気の評価に習熟した5名の評価者が、各飲料の臭気を測定した。各評価者による上記の基準に基づく評価の平均を、下記表2及び3中にムレ臭の評価として示す。ただし、オイゲノールの濃度によらず、ムレ臭の評価が4以下であれば、飲料としての実用上、特に問題はない。
【0026】
【0027】
【0028】
本発明に沿った例である各実施例によれば、感じるムレ臭は小さいものであった。これに対して、メチルオイゲノールやシンナムアルデヒドを含有しない各比較例によれば、オイゲノールの濃度に応じた強さの評価5のムレ臭を感じた。
実施例11と22によれば、エキスを含有させたので、オイゲノール、メチルオイゲノール及びシンナムアルデヒドを含有した。同時に、ムレ臭を強くする他の成分も含有し得ることになる。そのようなエキスを含有させても、本発明に沿った組成であれば、十分なムレ臭低減効果を発揮できる。
【要約】
【課題】スパイス風味を特徴付けるためにオイゲノールを含有させた飲料がムレ臭を有しないようにすること。
【解決手段】オイゲノール、メチルオイゲノール及び/又はシンナムアルデヒドを含有する飲料。
【選択図】なし