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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】光学積層体及びこれを備える装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20231108BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B5/22
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018182844
(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公開番号】P2020052294
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(74)【代理人】
【識別番号】100118050
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 将之
(74)【代理人】
【識別番号】100142295
【弁理士】
【氏名又は名称】深海 明子
(72)【発明者】
【氏名】竹重 彰詞
(72)【発明者】
【氏名】牛山 章伸
(72)【発明者】
【氏名】黒田 剛志
(72)【発明者】
【氏名】晝間 祐介
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-219278(JP,A)
【文献】特開2015-025956(JP,A)
【文献】国際公開第2015/025909(WO,A1)
【文献】特開2014-219552(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0131920(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも受光部と、光学積層体とを備える装置であって、
前記光学積層体は、少なくとも半透過半反射層及び特定の波長の光を吸収する吸収層を備え、
前記装置は、検出物で反射した光を、前記光学積層体により反射して、前記受光部に取り込む構成を有し、
前記吸収層は、前記半透過半反射層よりも、検出物で反射した光の入射面に近い側に配置され、
検出物で反射した光が前記光学積層体で反射する方向と、前記光学積層体の法線方向との成す角度(θ1)が可変であり、
前記半透過半反射層の入射角5°におけるピーク反射波長をλ、前記吸収層のピーク吸収波長をλとしたとき、下記式(1)を満たす、
装置。
λ>λ (1)
【請求項2】
半透過半反射層がコレステリック構造を有する液晶層である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
半透過半反射層の入射角5°におけるピーク反射波長(λ)が、700nm以上2,600nm以下である、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
半透過半反射層の入射角5°におけるピーク反射波長をλ、吸収層のピーク吸収波長をλとしたとき、下記式(2)を満たす、請求項1~3のいずれかに記載の装置。
5nm≦λ-λ≦150nm (2)
【請求項5】
λ-λが5nm以上50nm以下である、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記角度(θ1)が、55°以下である、請求項1~4のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
さらに、出光部を備える、請求項1~6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記出光部から出光した光が前記光学積層に入射する方向と、前記光学積層体の法線方向との成す角度(θ2)が可変である、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記角度(θ2)が、55°以下である、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記吸収層は、前記半透過半反射層よりも、前記出光部から出光した光の入射面に近い側に配置される、請求項7~9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
半透過半反射層として、2種以上の半透過半反射層を備える、請求項1~10のいずれかに記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体及びこれを備える装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動運転システムや、自動ブレーキ機能等に関する社会の関心及び需要が増えつつあり、そのためには、より高性能にレーザを対象物に出光したり、反射光等を受光部に伝える偏向部が必要とされる。
特許文献1には、運転支援システムにおけるLidarの精度を高めることのできる選択波長吸収樹脂組成物及びその製造方法を提供することを目的として、透明樹脂と、光吸収剤とを有するLidar用選択波長吸収樹脂組成物であって、上記樹脂組成物の厚み1mmに成形した硬化体が、波長380nm以上700nm以下の範囲の平均光透過率が40%以下であり、Lidarで使用するレーザ光の波長における光透過率が70%以上であることを特徴とするLidar用選択波長吸収樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-167484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者等は、外光によるノイズの増加を防ぐために、偏向部に半透過半反射層を使用した場合、偏向部に対する入射光の角度により、反射される光が波長シフトしてしまうという問題があることを見出した。
本発明は、入射角による反射波長のシフトを抑制することが可能な光学積層体、及び該光学積層体を偏向部として備え、出光部又は受光部の少なくともいずれかを備える装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、半透過半反射層及び特定の波長の光を吸収する吸収層を備える光学積層体において、半透過半反射層の選択反射ピーク波長と、吸収層の吸収ピーク波長とを一定の関係とすることにより、上記の課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、以下の<1>~<9>に関する。
<1> 出光部及び受光部から選択される少なくとも1つと、光学積層体とを備え、光学積層体は、少なくとも半透過半反射層及び特定の波長の光を吸収する吸収層を備え、光学積層体の出光部及び受光部から選択される少なくとも1つに対する角度(θ)が可変であり、半透過半反射層の入射角5°におけるピーク反射波長をλ、吸収層のピーク吸収波長をλとしたとき、下記式(1)を満たす、装置。
λ>λ (1)
<2> 半透過半反射層がコレステリック構造を有する液晶層である、<1>に記載の装置。
<3> 半透過半反射層の入射角5°におけるピーク反射波長(λ)が、700nm以上2,600nm以下である、<1>又は<2>に記載の装置。
<4> 半透過半反射層の入射角5°におけるピーク反射波長をλ、吸収層のピーク吸収波長をλとしたとき、下記式(2)を満たす、<1>~<3>のいずれかに記載の装置。
5nm≦λ-λ≦150nm (2)
<5> 光学積層体の出光部及び受光部から選択される少なくとも1つに対する角度(θ)が、55°以下である、<1>~<4>のいずれかに記載の装置。
<6> 出光部及び受光部を備える、<1>~<5>のいずれかに記載の装置。
<7> 半透過半反射層として、2種以上の半透過半反射層を備える、<1>~<6>のいずれかに記載の装置。
<8> <1>~<7>のいずれかの装置に使用される光学積層体。
<9> 少なくとも半透過半反射層及び特定の波長の光を吸収する吸収層を備え、半透過半反射層がコレステリック構造を有する液晶層であり、半透過半反射層の入射角5°におけるピーク反射波長をλ、吸収層のピーク吸収波長をλとしたとき、下記式(1)及び(2)を満たし、λが700nm以上2,600nm以下である光学積層体。
λ>λ (1)
5nm≦λ-λ≦150nm (2)
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、入射角による反射波長のシフトを抑制することが可能な光学積層体、及び該光学積層体を偏向部として備え、出光部又は受光部の少なくともいずれかを備える装置を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の装置の一例を概略的に示す断面図である。
図2】実施例において作製した光学積層体の層構成を示す断面模式図である。
図3】比較例において作製した光学積層体の層構成を示す断面模式図である。
図4図4は、吸収層のみでの波長と透過率との関係を示した図である。
図5図5は、実施例1の光学積層体における入射角と反射率との関係を示した図である。
図6図6は、実施例2の光学積層体における入射角と反射率との関係を示した図である。
図7図7は、比較例1の光学積層体における入射角と反射率との関係を示した図である。
図8図8は、比較例2の光学積層体における入射角と反射率との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明において、数値範囲を表す「A~B」の記載は、端点を含む数値範囲を表す。すなわち、「A以上B以下」(A<Bの場合)、又は、「A以下B以上」(A>Bの場合)を表す。また、以下の説明において、好ましい態様の組合せは、より好ましい態様である。
以下、本発明の実施形態を説明する。
[装置]
本発明の装置は、出光部及び受光部から選択される少なくとも1つと、光学積層体とを備え、光学積層体は、少なくとも半透過半反射層及び特定の波長の光を吸収する吸収層を備え、光学積層体の出光部及び受光部から選択される少なくとも1つに対する角度(θ)が可変であり、半透過半反射層の入射角5°におけるピーク反射波長をλ、吸収層のピーク吸収波長をλとしたとき、下記式(1)を満たすことを特徴とする。
λ>λ (1)
本発明者等は、特定の波長を反射する、半透過半反射層を有する光学積層体において、光学積層体への入射角によって、ピーク反射波長が短波長側にシフトするという問題があることを見出した。本発明では、半透過半反射層に加えて、半透過半反射層のピーク反射波長よりも短波長側にピーク吸収波長を有する吸収層を設けることにより、ピーク反射波長のシフトが抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
なお、上記の現象は、出光部又は受光部から選択される少なくとも1つに対して、該光学積層体の角度(θ)が可変である装置において顕著である。
上記の効果が得られる詳細な機構は不明であるが、以下のように推察される。半透過半反射層のピーク反射波長は、半透過半反射層への入射角が大きくなるに従って、短波長側にシフトする。このとき、半透過半反射層の5°におけるピーク反射波長(λ)よりも短波長側にピーク吸収波長λを有する吸収層を設けることで、短波長側にシフトした反射光は、吸収層により吸収されるため、結果として角度依存性が減少したものと推察される。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
<全体構成>
本発明の装置の一例について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、装置1は、出光部10及び受光部20を備える。なお、図1では、出光部10及び受光部20を有する装置を示すが、本発明はこれに限定されず、出光部10のみを有する装置や、受光部20のみを有する装置であってもよい。なお、例えば、出光部10を有しない場合には、出光部10が他の装置に組み込まれたような構成でもよく、また、受光部20を有しない場合には、受光部20が他の装置に組み込まれたような構成であってもよい。
なお、本発明の装置は、出光部及び受光部の双方を有することが好ましい。出光部及び受光部を有する場合には、例えば、検出物体までの距離や方位を検出する装置とし構成されうる。
【0011】
ここで、出光部10は、いずれの波長の光を出光するものであってもよいが、後述する半透過半反射層のピーク反射波長と近似する光を出光することが好ましい観点から、好ましくは700nm以上、より好ましくは780nm以上であり、そして、好ましくは2,600nm以下、より好ましくは1,400nm以下、更に好ましくは1,200nm以下である。
出光部から出向する光の波長としては、具体的には、780nm、785nm、792nm、800nm、805nm、808nm、820nm、830nm、840nm、850nm、852nm、870nm、880nm、900nm、903nm、904nm、905nm、915nm、940nm、976nm、980nm、1060nm、1064nm、1208nm、1300nm、1310nm、1330nm、1370nm、1440nm、1450nm、1470nm、1480nm、1490nm、1530nm、1550nm、1575nm、1625nm、1650nm、1940nm、2000nm、2600nm等が例示される。
なお、半透過半反射層の入射角5°におけるピーク反射波長(λ)と、出光部からの出光光の波長(λ)との差の絶対値(|λ-λ|)は、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下、更に好ましくは100nm以下、より更に好ましくは50nm以下、より更に好ましくは25nm以下である。
【0012】
出光部10は、レーザ光源であることが好ましく、レーザ光源としては、例えば、種々の半導体レーザが例示される。所望の波長により適宜光源を選択すればよい。なお、種々の半導体レーザが市販されており、例えば、THORLABS社製、ファイバーラボ株式会社製、ローム株式会社製の各種半導体レーザ等が例示される。
また、出光する光は、パルス光であっても、連続光であってもよい。
【0013】
なお、図1では、出光部10から出射した光を符号L1にて概念的に示している。
図1中、出光部10から出射されたレーザ光(L1)の光軸上には、レンズ60が設けられている。このレンズ60は、コリメートレンズとして構成されるものであり、出光部10(例えば、レーザダイオード)からのレーザ光(L1)を平行光に変換している。
レンズ60を通過したレーザ光L1の光路上には、ミラー30が設けられている。このミラー30は、レンズ60を透過したレーザ光L1の光軸に対して傾斜した反射面30aを備え、レンズ60を透過したレーザ光L1を、光学積層体40に向けて反射させている。本構成では、レンズ60を通過した水平方向のレーザ光L1をミラー30によって反射させており、その反射したレーザ光L1が光学積層体40に入射するようになっている。
【0014】
光学積層体40は、出光部10及び受光部20から選択される少なくとも1つに対する角度(θ)が可変である。光学積層体40は、少なくとも半透過半反射層及び特定の波長の光を吸収する吸収層を備える。なお、光学積層体40は、該光学積層体40を支持する支持台(不図示)と、この支持台に連結された軸部(不図示)と、該軸部に回転可能に支持する軸受け(不図示)とを備えることが好ましく、光学積層体40によりレーザ光L1を周囲の空間に向けて偏向させる。
【0015】
光学積層体40は、ミラー30で反射されたレーザ光L1の光軸上に配置されると共に、中心軸(所定の中心軸)を中心として、回動可能とされている。光学積層体40は、出光部10からのレーザ光L1が常に同一位置P1に入射するように配置されており、この位置P1に入射するレーザ光を空間に向けて偏向(反射)させる。
また、光学積層体40の回転中心となる中心軸の方向は、ミラー30から当該光学積層体40に入射するレーザ光の方向と一致しており、レーザ光L1が光学積層体40に入射する入射位置P1が、中心軸の上の位置とされている。
図1では、空間に向けて偏向された光が、水平となるように、光学積層体40及びミラー30が配置されている。
【0016】
受光部20としては特に限定されないが、光学積層体40によるピーク反射波長周辺の波長の光を受光可能な受光部であることが好ましい。受光部としては、フォトダイオードが例示される。なお、装置1に入光する光を反射光L2とする。
ここで、受光部20は、いずれの波長の光を受光するものであってもよいが、後述する半透過半反射層のピーク反射波長と近似する光を受光することが好ましい観点から、好ましくは700nm以上、より好ましくは780nm以上であり、そして、好ましくは2,600nm以下、より好ましくは1,400nm以下、更に好ましくは1,200nm以下である。
なお、半透過半反射層の入射角5°におけるピーク反射波長(λ)と、受光部での受光波長(λ)との差の絶対値(|λ-λ|)は、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下、更に好ましくは100nm以下、より更に好ましくは50nm以下、より更に好ましくは25nm以下である。
【0017】
例えば検出物等により反射された光L2が、光学積層体40により反射されて、受光部20に取り込まれる構成となっている。ここで、本発明の装置において、光学積層体40は、ピーク反射波長を有する半透過半反射層を有するものであり、特定の波長の光のみを反射することから、L2として外光が混入した場合であっても、特定の波長の光のみを受光部に反射することが可能であり、外光の影響を低減することができる。
図1では、光学積層体40から受光部20に至るまでの反射光L2の光路上には、受光部20に向けて反射光L2を集光する集光レンズ62が設けられている。集光レンズ62は、光学積層体40からの反射光L2を集光して、受光部20に導くものである。
【0018】
<光学積層体>
本発明の装置に使用される光学積層体について、以下に説明する。本発明の光学積層体は、少なくとも半透過半反射層及び特定の波長の光を吸収する吸収層を備え、出光部及び受光部から選択される少なくとも1つに対する角度(θ)が可変であり、かつ、半透過半反射層の入射角5°におけるピーク反射波長をλ、吸収層のピーク吸収波長をλとしたとき、下記式(1)を満たす。
λ>λ (1)
【0019】
本発明において、吸収層は、半透過半反射層に対して、光学積層体への光の入射面に近い位置に配置されている。すなわち、光学積層体に入射した光は、吸収層及び半透過半反射層をこの順で透過することが好ましい。
換言すれば、光学積層体が、吸収層及び半透過半反射層に加えて、基材を有する場合には、基材、半透過半反射層及び吸収層をこの順で有することが好ましい。
【0020】
なお、出光部及び受光部から選択される少なくとも1つに対する角度(θ)が可変であるとは、出光部からの直接の光のみならず、出光部から図1に示すようにミラー30を介して光学積層体に入射する光の角度(図1中のθ)が可変であることを意味する。
また、受光部に対する角度(θ)が可変であるとは、光学積層体が受光部に向けて反射する角度(θ)が、可変であることを意味する。
本発明において、出光部及び受光部から選択される少なくとも1つに対する角度(θ)は、十分な反射率を得る観点から、好ましくは55°以下、より好ましくは50°以下、更に好ましくは45°以下、より更に好ましくは40°以下、より更に好ましくは35°以下、より更に好ましくは30°以下、より更に好ましくは25°以下であり、また、装置の設計の観点から、好ましくは5°以上である。
【0021】
また、本発明の光学積層体は、少なくとも半透過半反射層及び特定の波長の光を吸収する吸収層を備え、半透過半反射層がコレステリック構造を有する液晶層であり、半透過半反射層の入射角5°におけるピーク反射波長をλ、吸収層のピーク吸収波長をλとしたとき、下記式(1)及び(2)を満たし、λが700nm以上2,600nm以下である。
λ>λ (1)
5nm≦λ-λ≦150nm (2)
【0022】
(半透過半反射層)
本発明の装置に使用される光学積層体及び本発明の積層体は、半透過半反射層を有する。
ここで、「半透過半反射層」とは、所定の偏光を透過し、それ以外の偏光を反射すると共に、反射する光の波長依存性を有する膜である。なお、前記偏光とは、円偏光、直線偏光、s波、p波などを意味する。また、反射率は、適宜設定することができ、反射率が50%に限定されるものではない。
特に、半透過半反射層は、反射する光の波長依存性を有することが好ましく、半透過半反射層の入射角5°におけるピーク反射波長(λ)は、好ましくは700nm以上、より好ましくは780nm以上であり、そして、好ましくは2,600nm以下、より好ましくは1,400nm以下、更に好ましくは1,200nm以下である。
半透過半反射層は、コレステリック構造を有する液晶層(以下、「CLC層」ともいう。)であることが好ましい。
【0023】
本明細書においてCLC層とは、コレステリック規則性を呈する液晶性分子からなる層をいう。コレステリック規則性とは、一平面上では分子軸が一定の方向に並んでいるが、それに重なる次の平面では分子軸の方向が少し角度をなしてずれ、更に次の平面では更に角度がずれるというように、重なって配列している平面を順次透過して進むに従って当該平面中の分子軸の角度がずれて(ねじれて)いく構造である。このように分子軸の方向がねじれてゆく構造はカイラルな構造となる。
【0024】
コレステリック液晶層は、一般的に、フィジカルな分子配列に基づいて、一方向の旋光成分とこれと逆回りの旋光成分とを分離する旋光選択特性を有する。このような液晶層に対して、液晶のプレーナー配列のヘリカル軸に沿って入射した光は、右旋及び左旋の2つの円偏光に別れ、一方が透過し、他方が反射される。この現象は、円偏光2色性として知られ、液晶性分子の螺旋構造における旋回方向を適宜選択すると、該旋回方向と同一の旋光方向を持つ円偏光が選択的に反射される。
【0025】
この場合の最大旋光偏光光反射は、下記式(1)の波長λで生じる。すなわち、λは、反射光の中心波長(選択反射中心波長)を意味する。
λ=nav・p ・・・(1)
ここで、pは液晶性分子の螺旋構造におけるヘリカルピッチ、navはヘリカル軸に直交する平面内の平均屈折率である。
また、このときの反射光の波長バンド幅Δλは下記式(2)で示される。
Δλ=Δn・p ・・・(2)
ここで、Δnは液晶材料の複屈折値である。
【0026】
本発明において、コレステリック液晶層に代表される半透過半反射層のピーク反射波長の半値幅は、好ましくは10nm以上500nm以下、より好ましくは20nm以上300nm以下、更に好ましくは30nm以上150nm以下である。半透過半反射層のピーク反射波長の半値幅が上記範囲内であると、不必要な光の反射による受光部への影響を小さくすることができる。
ここで、半透過半反射層のピーク反射波長をλ、液晶性分子の螺旋構造におけるヘリカルピッチをp、ヘリカル軸に直交する平面内の平均屈折率をnavとすれば、入射される光が入射角θを有している場合、Braggの法則から、下記の式を満足する波長の光が選択的に反射される。
λ=nav・pcosθ
従って、入射角が変化すると、反射波長が短波長シフトするため、入射角を変更する本発明のような用途においては、ある程度の半値幅が必要である。
【0027】
コレステリック液晶層単独での偏光分離作用について説明する。無偏光がコレステリック液晶層に入射した場合、前記波長λを中心とした波長バンド幅Δλの範囲の光の右旋又は左旋の円偏光成分の一方が反射され、他方の円偏光成分及び他の波長域の光(無偏光)が透過される。なお、反射された右旋又は左旋円偏光は、通常の反射と異なり、位相が反転されることなくそのまま反射される。
【0028】
コレステリック液晶層としては、重合性基を有する液晶性モノマー又はオリゴマーを含む硬化性組成物の硬化物や、ガラス状態にした液晶性ポリマーからなるものが挙げられる。
上記の中でも、コレステリック液晶層は重合性基を有する液晶性モノマー又はオリゴマーを含む硬化性組成物の硬化物であることが好ましい。コレステリック液晶層が上記硬化性組成物の硬化物であると、液晶性分子をコレステリック液晶状態のままで光学的に固定化することができ、取り扱い性も向上するためである。
上記硬化性組成物は電離放射線硬化性、熱硬化性のいずれでもよいが、コレステリック液晶層の生産性の観点からは電離放射線硬化性組成物であることが好ましい。本明細書において電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も使用可能である。
【0029】
重合性基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合基、及びエポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。重合性の観点からは(メタ)アクリロイル基又はビニル基が好ましく、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
重合性基を有する液晶性モノマー又はオリゴマーは、上記重合性基を少なくとも1つ有していればよいが、三次元架橋により液晶性分子が光学的に固定されたコレステリック液晶層を得る観点からは、重合性基を2つ以上有することが好ましく、両末端に重合性基を有する、2官能の液晶性モノマー又はオリゴマーがより好ましい。
【0030】
重合性基を有する液晶性モノマーとしては、例えば、特開平7-258638号公報や特表平10-508882号公報で開示されている液晶性モノマーが挙げられる。重合性基を有する液晶性オリゴマーとしては、例えば、特開昭57-165480号公報で開示されているようなコレステリック相を有する環式オルガノポリシロキサン化合物が挙げられる。
【0031】
重合性基を有する液晶性モノマーの具体例としては、例えば下記構造式(I)で表される、両末端にアクリロイル基を有する液晶性モノマーが挙げられる。
【0032】
【化1】
【0033】
コレステリック液晶層は、重合性基を有する液晶性モノマー又はオリゴマーと、カイラル剤とを含む硬化性組成物の硬化物であることがより好ましい。前記液晶性モノマー又はオリゴマーを所定の温度で液晶層にした場合にはネマチック状態になるが、ここにカイラル剤を添加すれば、カイラルネマチック液晶(すなわち、コレステリック液晶)となる。また、使用するカイラル剤の種類を変えてカイラルパワーを変えるか、又はカイラル剤の配合量を変化させることによって、コレステリック液晶層に含まれる液晶性分子の螺旋構造におけるヘリカルピッチを調整することができ、これによりコレステリック液晶層の選択反射波長域を調整することができる。
また、コレステリック液晶層は、ディスコティック液晶により作製してもよい。なお、コレステリック液晶層は、例えば、特開2000-086591号公報等に記載されているようなカイラルディスコティック化合物を使用してもよく、また、特開2000-111734号公報、特開2000-171637号公報、特開2000-347039号公報等に記載されているような、非カイラル性ディスコティック液晶性化合物と、重合性基を有するカイラルディスコティック化合物との共重合体を使用してもよい。
【0034】
三次元架橋により液晶性分子が光学的に固定されたコレステリック液晶層を得る観点からは、コレステリック液晶層は、重合性基を有する液晶性モノマー又はオリゴマーと、重合性基を有するカイラル剤とを含む硬化性組成物の硬化物であることが更に好ましい。
重合性基を有するカイラル剤としては、三次元架橋により液晶性分子が光学的に固定されたコレステリック液晶層を得る観点から、重合性基を2つ以上有するカイラル剤であることが好ましく、両末端に重合性基を有する、2官能のカイラル剤であることがより好ましい。重合性基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合基、及びエポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。重合性の観点からは(メタ)アクリロイル基又はビニル基が好ましく、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
【0035】
カイラル剤としては、例えば、特開平7-258638号公報や特表平10-508882号公報で開示されているキラル化合物が挙げられる。
カイラル剤の市販品としては、両末端に重合性基としてアクリロイル基を有するカイラル剤「Paliocolor(登録商標)LC756」(BASF社製)等が挙げられる。
【0036】
コレステリック液晶層中のカイラル剤の量は、所望の波長選択性が得られる量であれば特に制限はないが、コレステリック液晶層の形成に用いる硬化性組成物中の液晶性モノマー、液晶性オリゴマー、及びカイラル剤の合計量を100質量部とした時のカイラル剤の配合量として、通常0.5~20質量部、好ましくは1~15質量部、より好ましくは2~10質量部である。
【0037】
コレステリック液晶層の形成に用いる硬化性組成物は、前述した電離放射線の照射により硬化するものであることが好ましい。電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる材料や層の厚さに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70~300kV程度で硬化させることが好ましい。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、通常波長190~380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈等が用いられる。
【0038】
コレステリック液晶層の形成に用いる硬化性組成物は、更に光重合開始剤を含むことが好ましい。硬化性組成物中の重合性基を有する液晶性モノマー又はオリゴマー、並びに重合性基を有するカイラル剤を紫外線照射により硬化させることが可能になるためである。
光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーズケトン、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α-アシルオキシムエステル、チオキサントン類等から選ばれる1種以上が挙げられる。
上記光重合開始剤は1種を単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
前記硬化性組成物中の光重合開始剤の量は、液晶性モノマー、液晶性オリゴマー、及びカイラル剤の合計量を100質量部とした時の光重合開始剤の配合量として、1~10質量部であることが好ましく、2~8質量部であることがより好ましい。
【0039】
コレステリック液晶層の形成に用いる硬化性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、更に光重合促進剤、滑剤、可塑剤、充填剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、架橋剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、導電剤、屈折率調整剤、溶剤等のその他の成分を含有してもよい。
【0040】
コレステリック液晶層を構成する材料が液晶性ポリマーである場合、その具体例としては、液晶性を呈するメソゲン基を主鎖、側鎖、あるいは主鎖及び側鎖の位置に導入したポリマー、コレステリル基を側鎖に導入した高分子コレステリック液晶、例えば、特開平9-133810号公報で開示されている液晶性ポリマー、特開平11-293252号公報で開示されている液晶性ポリマー等が挙げられる。
液晶性ポリマーとしては、液晶性ポリマーそれ自体にカイラル能を有しているコレステリック液晶性ポリマーそのものを用いてもよいし、ネマチック液晶性ポリマーとコレステリック液晶性ポリマーの混合物を用いてもよい。このような液晶性ポリマーは、温度によって状態が変わり、例えばガラス転移温度が90℃、アイソトロピック転移温度が200℃である場合は、90~200℃の間でコレステリック液晶状態を呈し、これを室温まで冷却すれば、コレステリック構造を有したままガラス状態で固化させることができる。
【0041】
液晶性ポリマーのように、コレステリック液晶層を構成する液晶材料がガラス転移温度を有するものである場合、温度を変化させることにより液晶のON/OFF制御を行うことも可能である。この性質を利用して、本発明において、半透過半反射層は、必要に応じて一時的に全透過又は全遮蔽フィルタに変化させることもできる。また、温度による色変化機能を付与することもできる。
【0042】
液晶性ポリマーのコレステリック構造に起因する入射光の選択反射波長域を調整するには、公知の方法で液晶性ポリマー分子中のカイラルパワーを調整すればよい。また、ネマチック液晶性ポリマーとコレステリック液晶性ポリマーの混合物を用いる場合は、その混合比を調整する。
【0043】
本発明の半透過半反射層が有するコレステリック液晶層は1層の液晶層のみから構成された単層構造でもよく、液晶層を2層以上積層した多層構造でもよい。液晶性分子のヘリカルピッチが異なるコレステリック液晶層を2層以上積層した構造とすることにより、複数の、又は幅広い選択反射波長域を有する半透過半反射層を得ることも可能になる。
【0044】
コレステリック液晶層が多層構造である場合、層の数には特に制限はないが、生産性、光透過性の観点、並びに液晶性分子の配向乱れを抑制する観点等から、好ましくは2~6層、より好ましくは2~4層である。
コレステリック液晶層の厚さは、使用する液晶性モノマー又はオリゴマー、ポリマーやカイラル剤の種類、並びに所望するコレステリック液晶層の選択反射波長域によっても最適な範囲が異なるが、入射光の反射率を高める観点からは、好ましくは0.2μm以上、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは1μm以上である。また、本発明において、半透過半反射膜を搭載する各種部材の小型化、薄型化の観点からは、コレステリック液晶層の厚さは、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、更に好ましくは50μm以下、より更に好ましくは30μm以下、より更に好ましくは20μm以下、より更に好ましくは10μm以下である。なお、上記コレステリック液晶層の厚さは、液晶層全体の厚さであり、液晶層が2層以上である場合はその合計の厚さである。
【0045】
コレステリック液晶層の厚さは、例えば、走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いて撮影した断面の画像から10箇所の厚みを測定し、10箇所の値の平均値から算出できる。STEMの加速電圧は10kV~30kVとすることが好ましい。STEMの倍率は、測定膜厚がミクロンオーダーの場合は1,000~7,000倍とすることが好ましく、測定膜厚がナノオーダーの場合は5万~30万倍とすることが好ましい。
【0046】
コレステリック液晶層の形成方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。以下、コレステリック液晶層が、前述した液晶性モノマー又はオリゴマーを含む電離放射線硬化性組成物の硬化物である場合を例として説明する。
まず、ガラス基板上に配向膜を形成し、その上に、液晶性モノマー又はオリゴマー、カイラル剤、並びに光重合開始剤、溶剤等のその他成分を含むコレステリック液晶層形成用の電離放射線硬化性組成物を塗布し、配向膜の配向規制力によって液晶性分子(液晶性モノマー及びオリゴマー)を配向させる。次に、この配向状態のままで電離放射線を照射して液晶性モノマー又はオリゴマーを三次元架橋させ、前記硬化性組成物の硬化物であるコレステリック液晶層を得ることができる。
前記硬化性組成物を塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、ダイコート法、バーコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ビードコーター法等の公知の各種方法を挙げることができる。
前記硬化性組成物が溶剤を含有する場合、該硬化性組成物を塗布した後に、例えば30~120℃で10~120秒間乾燥を行うことが好ましい。
【0047】
上記配向膜は従来知られている方法で作製することができる。例えば、ガラス基板上にポリイミドを成膜し、ラビングする方法;ガラス基板上に光配向膜となる高分子化合物を成膜し、偏光UV(紫外線)を照射する方法;延伸したPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを用いる方法;マスクを用いてパターニングする方法;等が挙げられる。
【0048】
コレステリック液晶層が前述した液晶性ポリマーからなるものである場合も、上記と同様にガラス基板上に配向膜を形成し、当該配向膜上に液晶性ポリマーを含む組成物を前記方法で塗布して、配向膜の配向規制力によってポリマーを配向させる。必要に応じて乾燥を行った後、冷却して液晶性ポリマーをガラス状態に固定させればコレステリック液晶層を得ることができる。
【0049】
コレステリック液晶層が多層構造である場合も、上記と同様の方法で液晶層を順次積層して形成することができる。複数の液晶層は直接積層してもよく、光学粘着層や任意の層を介して積層してもよい。
複数の液晶層を積層する場合には、配向乱れを少なくするなどの観点から、隣接するコレステリック液晶層中の液晶性分子のダイレクタの方向を互いに略平行にすることが好ましい。
【0050】
本発明において、半透過半反射層が2種以上の半透過半反射層を有することが好ましい。前述したように、2種以上の半透過半反射層として、異なる選択反射ピーク波長を有する半透過半反射層を積層することで、広範囲の波長に対する選択反射性を有する光学積層体としてもよく、また、左円偏光に対する選択反射性を有するコレステリック液晶層と、右円偏光に対する選択反射性を有するコレステリック液晶層とを積層してもよい。
なお、本発明の装置をLidar等の、対象物に対して特定の波長の光を出光し、反射して戻った光の強度は位相差を検出する装置として使用する場合には、コレステリック液晶層が右円偏光に対する選択反射性のみを有していると、対象物から反射して戻った光は左円偏光となっているため、反射能を有しない。従って、反射の戻り光を検出するためには、右円偏光に対する選択反射性を有するコレステリック液晶層と、左円偏光に対する選択反射性を有するコレステリック液晶層とを積層することが好ましい。また、このような態様とすることによって、反射率も向上するので好ましい。
【0051】
(吸収層)
本発明の装置に使用する光学積層体及び本発明の光学積層体は、特定の波長の光を吸収する吸収層を備える。なお、半透過半反射層の入射角5°におけるピーク反射波長をλ、吸収層のピーク吸収波長をλとしたとき、下記式(1)を満たす。
λ>λ (1)
すなわち、吸収層のピーク波長λは、光学積層体の半透過半反射層の入射角5°におけるピーク反射波長λよりも小さい。
本発明において、「吸収層のピーク吸収波長」とは、吸収層により光の透過率が10%以下となる波長が存在する場合には、光の透過率が10%となる波長を意味する。また、全波長における光の透過率が10%を超え、かつ、吸収層が吸収ピークを有する場合には、該ピーク波長を意味する。なお、吸収層のピーク吸収波長は、入射角5°において光の透過率を測定する。
吸収層は、所望の波長に吸収を有する化合物(以下、「吸収化合物」ともいう。)を含有する層であることが好ましい。すなわち、吸収化合物とは、該化合物を含有することにより、所望の波長の光の透過率が10%以下となる化合物であることが好ましい。
吸収化合物としては特に限定されず、所望のλの波長によって、適宜選択すればよい。具体的には、特開2018-120248号公報に記載されているビスベンゾフラノン系顔料、アゾメチン系顔料、及びピリレン系顔料、特開2002-348491号公報に記載されている黒色アゾ顔料、特開2017-167484号公報の段落0030~0033に記載されている光吸収剤、特開2017-209926号公報の段落0072~0080に記載されているアゾメチン系黒色顔料等が挙げられる。
【0052】
また、λは、λよりも短波長側に位置していることから、吸収層として、IR透過フィルタとして市販されている各種フィルタを使用してもよい。
【0053】
本発明で使用される光学積層体又は本発明の光学積層体に光が入射すると、特定の波長の光が半透過半反射層によって反射される。半透過半反射層がコレステリック液晶層である場合、光学積層体への入射角の増大に伴い、選択反射ピーク波長が低波長側にシフトするという現象が生じる。これにより、特定の波長の光を検出していた場合、反射される光のうち、ノイズが多くなり、特定の波長の光の検出が困難であるという問題がある。また、光学積層体に反射させることで、特定の波長の光を出光しようとしていたにも関わらず、波長の異なる光を出光することになるという問題もある。
本発明では、短波長側にシフトした反射光を、吸収層により吸収することにより、光学積層体としての吸収ピーク波長のシフトを抑制するものである。
従って、本発明で使用される光学積層体又は本発明の光学積層体は、半透過半反射層の入射角5°におけるピーク反射波長をλ、吸収層のピーク波長をλとしたとき、下記式(1)を満たすものであり、また、式(2)を満たすことが好ましい。
λ1>λ2 (1)
5nm≦λ-λ≦150nm (2)
【0054】
上記式(1)を満たすことにより、半透過半反射層により、低波長側にシフトした反射光が、吸収層によりカットされて、入射角による反射波長のシフトを抑制することが可能である。
一方、λ-λが大きすぎると、λから大きくはずれた波長の光がカットされることとなり、反射波長シフトの抑制に効果的ではない。一方、λ-λが小さすぎると、カットされる波長範囲が大きく、十分な反射率が得られない場合がある。
従って、λ-λは、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、更に好ましくは15nm以上、より更に好ましくは20nm以上であり、そして、好ましくは150nm以下、より好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下である。
【0055】
本発明の装置に使用される光学積層体又は本発明の光学積層体は、入射角5°におけるピーク反射波長(λ)と、入射角35°におけるピーク反射波長(λ)との差(λ-λ)は、入射角による反射波長シフトを抑制する観点から、好ましくは50nm以下、より好ましくは46nm以下、更に好ましくは42nm以下、より更に好ましくは40nm以下である。
【0056】
本発明において、光学積層体は、少なくとも上述した半透過半反射層と吸収層とを有しているが、これに加えて、基材、保護層、粘着層等を有していてもよい。
(粘着層)
本発明において、光学積層体は、粘着層を有することが好ましい。粘着層は、基材と半透過半反射層との間に設けられていてもよく、吸収層と半透過半反射層との間に設けられていてもよく、特に限定されない。
粘着層は、この種の光学積層体に適用することができる粘着剤から適宜選択すればよく、例えば、PSA(Pressure Sensitive Adhesive)粘着剤により形成される。より具体的には、アクリル系粘着剤で形成された層が例示される。
【実施例
【0057】
以下、本発明について、実施例及び比較例を参照して更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
【0058】
参考例1
下記構造式で表される、両末端にアクリロイル基を有する液晶性モノマー(I)96.52質量部、両末端にアクリロイルを有するカイラル剤「Paliocolor(登録商標)LC756」(BASF社製)3.48質量部、光重合開始剤「IRGACURE(登録商標)907」(2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン)4質量部、フッ素系レベリング剤「F-554」(DIC株式会社製)0.3質量部を溶剤(メチルエチケトン:シクロヘキサノン=73:27)で溶解させた電離放射線硬化性組成物(固形分濃度:28質量%)を調製した。
100μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム「A4100」(東洋紡株式会社製)の易接着層のない面をラビング処理し、ここに前記電離放射線硬化性組成物をバーコーターにより塗布し、100℃で溶剤を蒸発させつつ2分間保持して液晶性モノマー分子を配向させた。ついで、その塗布面に300mJ/cm(波長365nm)の紫外線を照射して硬化させ、PETフィルム上にコレステリック構造を有する液晶層(厚さ4μm)を備えたフィルムを作製した。
【0059】
【化2】
【0060】
参考例2
上記構造式で表される、両末端にアクリロイル基を有する液晶性モノマー(I)87.84質量部、両末端にアクリロイルを有するカイラル剤「Paliocolor(登録商標)LC1080」(BASF社製)12.16質量部、光重合開始剤「IRGACURE(登録商標)907」(2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン)4質量部、フッ素系レベリング剤「F-554」(DIC株式会社製)0.3質量部を溶剤(メチルエチケトン:シクロヘキサノン=73:27)で溶解させた電離放射線硬化性組成物(固形分濃度:20質量%)を調製した。
100μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム「A4100」(東洋紡株式会社製)の易接着層のない面をラビング処理し、ここに前記電離放射線硬化性組成物をバーコーターを用いて塗布し、100℃で溶剤を蒸発させつつ2分間保持して液晶性モノマー分子を配向させた。ついで、その塗布面に300mJ/cm(波長365nm)の紫外線を照射して硬化させ、PETフィルム上にコレステリック構造を有する液晶層(厚さ4μm)を備えたフィルムを作製した。
【0061】
参考例3
アゾメチン系黒色顔料(大日精化工業株式会社製「クロモファインブラックA-1103」)と、2液硬化型アクリル-ウレタン樹脂バインダーとからなる固形分33質量%の塗布液をグラビア印刷法でポリカーボネート基材(厚さ200μm)上に塗布(塗布量:固形分基準で5g/m)し、硬化させ、吸収層(厚み:5μm)を有する積層体を形成した。
ガラス基板(コーニング社製「eagle XG」(登録商標)0.7mm厚)の片面に光学用粘着フィルム(25μm厚)を貼り、光学用粘着フィルム面と、前記積層体の吸収層とを貼り合わせた。ガラス基板上に吸収層を含む積層体を貼り合せした。
光源と測定セルとの間に偏光子を内蔵した分光光度計「V-7100」(日本分光株式会社製)内に、吸収層を光源側に設置して透過率を測定した。透過率は、入射角を5度と40度で測定した。検出角は0度、偏光子は0度と90度、更にサンプルを0度、90度と回転させて合計4回測定して平均を測定結果とした。結果を図4に示す。
【0062】
実施例1
ガラス基板(コーニング社製、「eagle XG」(登録商標)0.7mm厚)の片面に光学用粘着フィルム(25μm厚)を貼り、光学用粘着フィルム面と、参考例1で作製したフィルムのコレステリック液晶層面とを貼り合わせた。次いでPETフィルムを剥離し、ガラス基板上にコレステリック液晶層を1層転写した積層体を作製した。
次に、この積層体の液晶面に光学用粘着フィルム(25μm厚)を貼り、参考例3で作製した積層体の塗布面を粘着側にして貼り合せ、光学積層体を得た。図2(a)に実施例1で作製した積層体の層構成を示す。図2(a)中、「PSA」は、光学用粘着フィルム層を意味し、CLC-Rは、右円偏光を反射するコレステリック液晶層を意味し、半透過半反射層として機能する。
光源と測定セルとの間に偏光子を内蔵した分光光度計「V-7100」(日本分光株式会社製)内に、吸収層を光源側に設置して反射率を測定した。反射率は、入射角を5度から10度間隔で45度まで測定した。検出角は0度、偏光子は0度と90度、更にサンプルを0度、90度と回転させて合計4回測定して平均を測定結果とした。結果を図5に示す。
【0063】
実施例2
ガラス基板(コーニング社製、「eagle XG」(登録商標)0.7mm厚)の片面に光学用粘着フィルム(25μm厚)を貼り、光学用粘着フィルム面と、参考例1で作製したフィルムのコレステリック液晶層面とを貼り合わせた。次いでPETフィルムを剥離し、更に光学用粘着フィルム(25μm厚)を貼り、光学用粘着フィルム面と、参考例2で作製したフィルムのコレステリック液晶層面とを貼り合わせた。次いでPETフィルムを剥離し、ガラス基板上にコレステリック液晶層を2層転写した積層体を作製した。
次に、この積層体の液晶面に光学用粘着フィルム(25μm厚)を貼り、参考例3で作製した積層体の塗布面を粘着側にして貼り合せ、光学積層体を得た。図2(b)に実施例2で作製した積層体の層構成を示す。図2(b)中、「PSA」は、光学用粘着フィルム層を意味し、CLC-Rは、右円偏光を反射するコレステリック液晶層を意味し、半透過半反射層として機能する。また、CLC-Lは、左円偏光を反射するコレステリック液晶層を意味し、半透過半反射層として機能する。
光源と測定セルとの間に偏光子を内蔵した分光光度計「V-7100」(日本分光株式会社製)内に、吸収層を光源側に設置して反射率を測定した。反射率は、入射角を5度から10度間隔で55度まで測定した。検出角は0度、偏光子は0度と90度、更にサンプルを0度、90度と回転させて合計4回測定して平均を測定結果とした。結果を図6に示す。
【0064】
比較例1
ガラス基板(コーニング社製、「eagle XG」(登録商標)0.7mm厚)の片面に光学用粘着フィルム(25μm厚)を貼り、光学用粘着フィルム面と、参考例1で作製したフィルムのコレステリック液晶層面とを貼り合わせた。次いでPETフィルムを剥離し、ガラス基板上にコレステリック液晶層を1層転写した積層体を作製した。図3(a)に比較例1で作製した積層体の層構成を示す。図3(a)中、「PSA」は、光学用粘着フィルム層を意味し、CLC-Rは、右円偏光を反射するコレステリック液晶層を意味し、半透過半反射層として機能する。
光源と測定セルとの間に偏光子を内蔵した分光光度計「V-7100」(日本分光株式会社製)内に、吸収層を光源側に設置して反射率を測定した。反射率は、入射角を5度から10度間隔で45度まで測定した。検出角は0度、偏光子は0度と90度、更にサンプルを0度、90度と回転させて合計4回測定して平均を測定結果とした。結果を図7に示す。
【0065】
比較例2
ガラス基板(コーニング社製、「eagle XG」(登録商標)0.7mm厚)の片面に光学用粘着フィルム(25μm厚)を貼り、光学用粘着フィルム面と、参考例1で作製したフィルムのコレステリック液晶層面とを貼り合わせた。次いでPETフィルムを剥離し、更に光学用粘着フィルム(25μm厚)を貼り、光学用粘着フィルム面と、参考例2で作製したフィルムのコレステリック液晶層面とを貼り合わせた。次いでPETフィルムを剥離し、ガラス基板上にコレステリック液晶層を2層転写した積層体を作製した。
図3(b)に比較例2で作製した積層体の層構成を示す。図3(b)中、「PSA」は、光学用粘着フィルム層を意味し、CLC-Rは、右円偏光を反射するコレステリック液晶層を意味し、半透過半反射層として機能する。CLC-Lは、左円偏光を反射するコレステリック液晶層を意味し、半透過半反射層として機能する。
光源と測定セルとの間に偏光子を内蔵した分光光度計「V-7100」(日本分光株式会社製)内に、吸収層を光源側に設置して反射率を測定した。反射率は、入射角を5度から10度間隔で45度まで測定した。検出角は0度、偏光子は0度と90度、更にサンプルを0度、90度と回転させて合計4回測定して平均を測定結果とした。結果を図8に示す。
【0066】
図5図8から、実施例1、2、及び比較例1、2における、光学積層体としてのピーク反射波長を、以下の表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
表1に示されるように、本発明の光学積層体は、入射角によりピーク波長の依存性が大きく改善していた。また、実施例1に比べ、実施例2の方が大きな反射率が得られたことから、右円偏光を反射するコレステリック液晶層と、左円偏光を反射するコレステリック液晶層とを組み合わせて使用することが、特に好ましいことが示された。
【符号の説明】
【0069】
1 装置
10 出光部
14 受光部
30 ミラー
40 光学積層体
60 レンズ
62 集光レンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8