(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】多孔質部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/26 20060101AFI20231108BHJP
A63B 37/00 20060101ALI20231108BHJP
C08L 75/00 20060101ALI20231108BHJP
C08K 3/00 20180101ALI20231108BHJP
【FI】
C08J9/26 101
C08J9/26 CFF
A63B37/00 314
A63B37/00 322
C08L75/00
C08K3/00
(21)【出願番号】P 2018239788
(22)【出願日】2018-12-21
【審査請求日】2021-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 雄宣
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特公昭54-003901(JP,B1)
【文献】特開2001-081227(JP,A)
【文献】特開昭55-115433(JP,A)
【文献】特開平03-174457(JP,A)
【文献】特開平02-305579(JP,A)
【文献】特開2018-135458(JP,A)
【文献】特開2013-155822(JP,A)
【文献】特開昭58-092372(JP,A)
【文献】特開2005-046299(JP,A)
【文献】国際公開第2016/194737(WO,A1)
【文献】特公昭46-031752(JP,B1)
【文献】英国特許出願公開第01465557(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00 - 9/42
B29C 44/00 - 44/60
B29C 67/20
A63B 37/00 - 47/04
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子材料及び水に溶出可能な水溶性微粉末を含むポリマー組成物を成形して中実成形体を得、その後に、上記水溶性微粉末を水で溶出及び除去することにより、多孔質成形体を得る多孔質部材の製造方法において、上記高分子材料が熱可塑性ポリウレタンエラストマーであり、上記水溶性微粉末は、平均粒子径が1~800μmであるとともに、20℃の水100gに対
して1g以上溶解する粉末であり、上記水溶性微粉末の配合量が上記熱可塑性ポリウレタンエラストマー100質量部に対して1~30質量部であり、上記多孔質部材がゴルフボールのカバーであることを特徴とする多孔質部材の製造方法。
【請求項2】
上記水溶性微粉末の融点が100℃以上である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
上記水溶性微粉末が、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、四ホウ酸カルシウム、可溶性デンプン、単糖類、二糖類、三糖類、少糖類、多糖類、及びこれらの水和物から選ばれる少なくとも1種類である請求項1又は2の記載の製造方法。
【請求項4】
上記水溶性微粉末が塩化ナトリウムである請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
上記水溶性微粉末が、可溶性デンプン、単糖類、二糖類、三糖類、少糖類及び多糖類の群から選ばれる少なくとも1種類である請求項3記載の製造方法。
【請求項6】
上記熱可塑性ポリウレタンエラストマー100質量部に対する上記水溶性微粉末の配合量が1~5質量部である請求項1~5のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項7】
上記多孔質成形体の比重が0.2~1.2である請求項1~6のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項8】
上記多孔質成形体の反発弾性が、JIS-K 6255規格の測定で9~62%である請求項1~7のいずれか1項記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡組成物、発泡部材及びその製造方法に関し、特に、ゴルフボールの中間層やカバー等のゴルフボール部材に好適に用いられる発泡組成物、発泡部材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフボールは、飛んで止まる性能や耐傷付き性能等が要求され、即ち、ドライバーショット時はよく飛ぶとともに、アプローチショット時ではバックスピンがよくかかるものが好ましく開発されてきた。そのため、これまでゴルフボールの部材としては、高反発性且つ耐傷付き性の良いカバー材料が多く開発されてきた。しかし、カバー等のゴルフボール部材に対して高反発性や耐傷付き性を高めると、アプローチショット時においても飛びすぎてしまい、繊細なコントロール性に欠けるものであった。また、カバー材料等のゴルフボール部材の反発弾性を下げるためには分子量を下げる等の方法も検討されるが、分子量を下げると該カバー材の耐傷つき性や成型性が悪くなる傾向がある。従って、プロや上級者からは、高反発性且つ耐傷付き性の良いカバー等のゴルフボール部材を備えたゴルフボールにおいては、アプローチショット時に更にコントロールしやすいボールが求められている。
【0003】
また、従来より、使用されているゴルフボールのカバー材を発泡体(多孔質体)とする技術もいくつか提案されており、例えば、特開2005-46299号公報(特許文献1)や特開平01-212577号公報(特許文献2)が挙げられる。しかし、これらの技術では、有機発泡剤や炭酸水素ナトリウム(重曹)等の発泡剤をカバー材料に配合するものであり、このような化学発泡剤による成形法は、成形時の温度や圧力、設備システムの繊細な管理も必要となる。また、カバー等のゴルフボール部材内部全体において均一な発泡体を得ることは非常に困難である。更に、大半の発泡成形法においては部材表面にスキン層が形成されることとなり、発泡させたゴルフボールのカバー表面を研磨することでスキン層を除去しボール表面に発泡面を露出させるなど工夫が必要である。この方法を用いたゴルフボールでは、カバー表面が均一な発泡体となっていないことが多く、繊細な外径や重量等の管理が要求されるゴルフボールにおいて安定したゴルフボール製品を供給することが困難といえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-46299号公報
【文献】特開平01-212577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、発泡剤を使用することなく、比較的簡便な方法で、表面のみ又は全体に亘って均一な発泡体(多孔質体)を得ることができる発泡組成物及びこれを用いたゴルフボール部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、発泡剤を使用することなく、表面のみ又は全体に亘って均一な発泡体(多孔質体)を得るためには、ゴルフボール部材の基材となる高分子材料に溶出可能な水溶性微粉末を含むことより、該発泡組成物を成形させた後に、上記水溶性微粉末を溶出及び除去することにより、該水溶性微粉末の粒子形状を空隙とする連続又は独立な多孔質体を得ること、また、その方法は比較的簡便で工業的に有利であることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0007】
従って、本発明は、下記の多孔質部材の製造方法を提供する。
1.高分子材料及び水に溶出可能な水溶性微粉末を含むポリマー組成物を成形して中実成形体を得、その後に、上記水溶性微粉末を水で溶出及び除去することにより、多孔質成形体を得る多孔質部材の製造方法において、上記高分子材料が熱可塑性ポリウレタンエラストマーであり、上記水溶性微粉末は、平均粒子径が1~800μmであるとともに、20℃の水100gに対して1g以上溶解する粉末であり、上記水溶性微粉末の配合量が上記熱可塑性ポリウレタンエラストマー100質量部に対して1~30質量部であり、上記多孔質部材がゴルフボールのカバーであることを特徴とする多孔質部材の製造方法。
2.上記水溶性微粉末の融点が100℃以上である上記1記載の製造方法。
3.上記水溶性微粉末が、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、四ホウ酸カルシウム、可溶性デンプン、単糖類、二糖類、三糖類、少糖類、多糖類、及びこれらの水和物から選ばれる少なくとも1種類である上記1又は2記載の製造方法。
4.上記水溶性微粉末が塩化ナトリウムである上記3記載の製造方法。
5.上記水溶性微粉末が、可溶性デンプン、単糖類、二糖類、三糖類、少糖類及び多糖類の群から選ばれる少なくとも1種類である請求項3記載の製造方法。
6.上記熱可塑性ポリウレタンエラストマー100質量部に対する上記水溶性微粉末の配合量が1~5質量部である上記1~5のいずれかに記載の製造方法。
7.上記多孔質成形体の比重が0.2~1.2である上記1~6のいずれかに記載の製造方法。
8.上記多孔質成形体の反発弾性が、JIS-K 6255規格の測定で9~62%である上記1~7のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の発泡組成物によれば、発泡剤を使用することなく、比較的簡便な方法で、表面のみ又は全体に亘って均一な発泡体(多孔質体)を得ることができるものであり、特に、アプローチショット時にコントロールしやすいゴルフボールを得るためのゴルフボール部材として好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明につき、更に詳しく説明する。
本発明の発泡組成物は、高分子材料及び溶出可能な水溶性微粉末を含む。
【0010】
本発明において、上記高分子材料としては、特に制限はないが、発泡組成物により形成される発泡体(発泡部材)を具備する目的の製品に応じて、その要求特性を満足するために必要な高分子材料を、公知の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー及び熱硬化性樹脂、熱硬化性エラストマーの中から適宜選定することができる。
【0011】
例えば、ゴルフボール部材として用いる場合には、基材となる上記高分子材料は、ゴム材や、熱可塑性又は熱硬化性のポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、アイオノマー樹脂、ポリオレフィン系エラストマー及びポリウレア等を用いることができる。これらは、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができ、特に、ゴルフボールのカバー等の被覆部材として用いる場合は、ポリウレタン又はポリウレアを好適に用いることができる。
【0012】
上記ゴム材としては、基材ゴムを主材とするゴム組成物を加硫することにより得られる。このゴム組成物として、例えば、基材ゴム、共架橋剤、架橋開始剤、金属酸化物及び老化防止剤を含有するゴム組成物を用いて形成することが挙げられる。上記ゴム組成物の基材ゴムとしては、ポリブタジエンを用いることが好ましい。
【0013】
上記のポリウレタン又はポリウレアの詳細は以下のとおりである。
【0014】
ポリウレタン
ポリウレタンの構造は、長鎖ポリオールである高分子ポリオール(ポリメリックグリコール)からなるソフトセグメントと、ハードセグメントを構成する鎖延長剤及びポリイソシアネートからなる。ここで、原料となる高分子ポリオールとしては、従来からポリウレタン材料に関する技術において使用されるものはいずれも使用でき、特に制限されるものではない。例えば、ポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、共役ジエン重合体系ポリオール、ひまし油系ポリオール、シリコーン系ポリオール、ビニル重合体系ポリオールなどを挙げることができる。ポリエステル系ポリオールとしては、具体的には、ポリエチレンアジペートグリコール、ポリプロピレンアジペートグリコール、ポリブタジエンアジペートグリコール、ポリヘキサメチレンアジペートグリコール等のアジペート系ポリオールやポリカプロラクトンポリオール等のラクトン系ポリオールを採用することができる。ポリエーテルポリオールとしては、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)及びポリ(テトラメチレングリコール)、ポリ(メチルテトラメチレングリコール)等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0015】
上記の長鎖ポリオールの数平均分子量は、1,000~5,000の範囲内であることが好ましい。かかる数平均分子量を有する長鎖ポリオールを使用することにより、上記した反発性や生産性などの種々の特性に優れたポリウレタン組成物からなるゴルフボールを確実に得ることができる。長鎖ポリオールの数平均分子量は、1,500~4,000の範囲内であることがより好ましく、1,700~3,500の範囲内であることが更に好ましい。
【0016】
なお、上記の数平均分子量とは、JIS-K1557に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均分子量である(以下、同様。)。
【0017】
鎖延長剤としては、従来のポリウレタンに関する技術において使用されるものを好適に用いることができ、特に制限されるものではない。本発明では、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上有し、かつ分子量が2,000以下である低分子化合物を用いることができ、その中でも炭素数2~12の脂肪族ジオールを好適に用いることができる。具体的には、1,4-ブチレングリコール、1,2-エチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール等を挙げることができ、その中でも特に1,4-ブチレングリコールを好適に使用することができる。
【0018】
ポリイソシアネートとしては、従来のポリウレタンに関する技術において使用されるものを好適に用いることができ、特に制限はない。具体的には、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン1,5-ジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ダイマー酸ジイソシアネートからなる群から選択された1種又は2種以上を用いることができる。ただし、イソシアネート種によっては射出成形中の架橋反応をコントロールすることが困難なものがある。
【0019】
また、上記ポリウレタン形成反応における活性水素原子:イソシアネート基の配合比は適宜好ましい範囲にて調整することができる。具体的には、上記の長鎖ポリオール、ポリイソシアネート化合物及び鎖延長剤を反応させてポリウレタンを製造するに当たり、長鎖ポリオールと鎖延長剤とが有する活性水素原子1モルに対して、ポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基が0.95~1.05モルとなる割合で各成分を使用することが好ましい。
【0020】
ポリウレタンの製造方法は特に限定されず、長鎖ポリオール、鎖延長剤及びポリイソシアネート化合物を使用して、公知のウレタン化反応を利用して、プレポリマー法、ワンショット法のいずれで製造してもよい。そのうちでも、実質的に溶剤の不存在下に溶融重合することが好ましく、特に多軸スクリュー型押出機を用いて連続溶融重合により製造することが好ましい。
【0021】
上述したポリウレタンとしては、熱可塑性ポリウレタン材料を用いることが好ましい。熱可塑性ポリウレタン材料としては、市販品を好適に用いることができ、例えば、ディーアイシーコベストロポリマー社製の商品名「パンデックス」や、大日精化工業社製の商品名「レザミン」などを挙げることができる。
【0022】
ポリウレア
ポリウレアは、(i)イソシアネートと(ii)アミン末端化合物との反応により生成するウレア結合を主体にした樹脂組成物である。この樹脂組成物について以下に詳述する。
【0023】
(i)イソシアネート
イソシアネートは、従来のポリウレタンに関する技術において使用されるものを好適に用いることができ、特に制限はなく、上記ポリウレタン材料で説明したものと同様のものを用いることができる。
【0024】
(ii)アミン末端化合物
アミン末端化合物は、分子鎖の末端にアミノ基を有する化合物であり、本発明では、以下に示す長鎖ポリアミン及び/又はアミン系硬化剤を用いることができる。
【0025】
長鎖ポリアミンは、イソシアネート基と反応し得るアミノ基を分子中に2個以上有し、かつ数平均分子量が1,000~5,000であるアミン化合物である。本発明では、より好ましい数平均分子量は1,500~4,000であり、更に好ましくは1,900~3,000である。上記長鎖ポリアミンの具体例としては、アミン末端を持つ炭化水素、アミン末端を持つポリエーテル、アミン末端を持つポリエステル、アミン末端を持つポリカーボネート、アミン末端を持つポリカプロラクトン、及びこれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。これらの長鎖ポリアミンは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
一方、アミン系硬化剤は、イソシアネート基と反応し得るアミノ基を分子中に2個以上有し、かつ数平均分子量が1,000未満であるアミン化合物である。本発明では、より好ましい数平均分子量は800未満であり、更に好ましくは600未満である。上記アミン系硬化剤の具体例としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1-メチル-2,6-シクロヘキシルジアミン、テトラヒドロキシプロピレンエチレンジアミン、2,2,4-及び2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、4,4’-ビス-(sec-ブチルアミノ)-ジシクロヘキシルメタン、1,4-ビス-(sec-ブチルアミノ)-シクロヘキサン、1,2-ビス-(sec-ブチルアミノ)-シクロヘキサン、4,4’-ビス-(sec-ブチルアミノ)-ジシクロヘキシルメタンの誘導体、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4-シクロヘキサン-ビス-(メチルアミン)、1,3-シクロヘキサン-ビス-(メチルアミン)、ジエチレングリコールジ-(アミノプロピル)エーテル、2-メチルペンタメチレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、プロピレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジプロピレントリアミン、イミド-ビス-プロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、イソホロンジアミン、4,4’-メチレンビス-(2-クロロアニリン)、3,5-ジメチルチオ-2,4-トルエンジアミン、3,5-ジメチルチオ-2,6-トルエンジアミン、3,5-ジエチルチオ-2,4-トルエンジアミン、3,5-ジエチルチオ-2,6-トルエンジアミン、4,4’-ビス-(sec-ブチルアミノ)-ジフェニルメタン及びその誘導体、1,4-ビス-(sec-ブチルアミノ)-ベンゼン、1,2-ビス-(sec-ブチルアミノ)-ベンゼン、N,N’-ジアルキルアミノ-ジフェニルメタン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、トリメチレングリコール-ジ-p-アミノベンゾエート、ポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエート、4,4’-メチレンビス-(3-クロロ-2,6-ジエチレンアニリン)、4,4’-メチレンビス-(2,6-ジエチルアニリン)、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、及びこれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。これらのアミン系硬化剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
(iii)ポリオール
ポリウレアには、必須成分ではないが、上述した(i)成分及び(ii)成分に加えて更にポリオールを配合することができる。このポリオールとして、従来のポリウレタンに関する技術において使用されるものを好適に用いることができ、特に制限はないが、具体例として、以下に示す長鎖ポリオール及び/又はポリオール系硬化剤を例示することができる。
【0028】
長鎖ポリオールとしては、従来からポリウレタンに関する技術において使用されるものはいずれも使用でき、特に制限されるものではないが、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、共役ジエン重合体系ポリオール、ひまし油系ポリオール、シリコーン系ポリオール、ビニル重合体系ポリオールなどを挙げることができる。これらの長鎖ポリオールは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
上記長鎖ポリオールの数平均分子量は、1,000~5,000であることが好ましく、より好ましくは1,700~3,500である。この数平均分子量の範囲であれば、反発性及び生産性等がより一層優れるものとなる。
【0030】
ポリオール系硬化剤としては、従来のポリウレタンに関する技術において使用されるものを好適に用いることができ、特に制限されるものではない。本発明では、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上有し、かつ分子量が1000未満である低分子化合物を用いることができ、その中でも炭素数2~12の脂肪族ジオールを好適に用いることができる。具体的には、1,4-ブチレングリコール、1,2-エチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール等を挙げることができ、その中でも特に1,4-ブチレングリコールを好適に使用することができる。また、上記ポリオール系硬化剤の、好ましい数平均分子量は800未満であり、より好ましくは600未満である。
【0031】
上記ポリウレアの製造方法については、公知の方法を採用し得、プレポリマー法、ワンショット法等の公知の方法を適宜選択すればよい。
【0032】
上記のポリウレタン等の樹脂をベース樹脂として用いる場合、その配合量は、所望の製品の要求特性に応じて適宜選定されるが、下限値としては、組成物100質量%に対して50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。
【0033】
本発明では、上述した高分子材料を用いると共に、溶出可能な水溶性微粉末を組成物中に配合する。このような水溶性微粉末としては、その平均粒子径が1~800μmであることが好適であり、より好ましくは2~600μm、更に好ましくは5~400μmである。平均粒子径(代表粒径などとも言う)とは、水溶性微粉末を光学顕微鏡などで拡大観察し得られた写真から大きい粒子を30個抽出し、それぞれの粒子の縦横長さの平均値を測定し、測定n数の30で除した値を平均粒子径と言う。
【0034】
また、水溶性微粉末は、その融点が100℃以上であることが好適であり、より好ましくは200℃以上、さらに好ましくは300℃以上である。この融点は、高分子材料の成型温度で融解しないようにするため該高分子材料の成型温度より高い方が好ましく、例えば、ゴルフボールの成型温度では150~270℃であるので、この温度よりも高い融点を有する微粉末、例えば、塩化ナトリウム(800℃)、塩化カリウム(776℃)、塩化マグネシウム(714℃)等が例示される。
【0035】
また、用いる水溶性微粉末としては、成形後に容易に溶出除去するためには、その溶解度が、20℃、水100gあたりで1g以上であることが好ましく、より好ましくは10g以上、さらに好ましくは30g以上である。
【0036】
水溶性微粉末としては、代表的なものとしては、塩や糖などの水溶性化合物を採用することができ、微粉末化し易く、熱可塑性樹脂の成型加工温度において分解せず、且つ、成型後は水によって容易に抽出できる化合物であることが好適である。
【0037】
上記水溶性微粉末として具体的には、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、四ホウ酸カルシウム、可溶性デンプン、単糖類、二糖類、三糖類、少糖類、多糖類、及びこれらの水和物から選ばれる。これらを1種類又は2種以上混合して用いることができる。特に、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムを好適に用いることができる。
【0038】
水溶性微粉末の配合量については、発泡部材の求める発泡倍率や発泡セルの大きさ等の発泡形態に応じて適宜選定されるものであるが、通常、本発明に用いる上記高分子材料100質量部に対して1~600質量部であり、好ましくは1~400質量部である。例えば、ゴルフボールのカバー材を発泡部材とする場合は、求める打感やアプローチ時のコントロール性の点から、通常、ポリウレタン系樹脂100質量部に対して1~600質量部であり、好ましくは1~400質量部であり、より好ましくは1~200質量部であり、更に好ましくは1~100質量部である。また、ゴルフボールのカバー材を目視で認識可能な発泡部材とする場合は、求める打感や見た目から得られるソフト感、アプローチショット時のコントロール性の点から、ポリウレタン系樹脂100質量部に対して、好ましくは100~500質量部、より好ましくは200~400質量部である。
【0039】
本発明の組成物には、上記の成分のほかに、必要に応じて、種々の添加剤を配合することができ、例えば顔料、分散剤、酸化防止剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、離型剤等を適宜配合することができる。但し、本発明では化学発泡剤等の各種の発泡剤は含まれない。
【0040】
上記発泡組成物は、例えば、混練型(単軸又は)2軸押出機,バンバリー,ニーダー等の各種混練機を用いて上述した各成分を混合し、練り込むことにより得ることができる。
【0041】
本発明では、上記発泡組成物を成形して中実成形体を得、その後に該中実成形体に含まれる水溶性微粉末を溶出及び除去することにより、該水溶性微粉末の粒子形状を気孔(空隙)とする連続又は独立な多孔質体(発泡体)を得るものである。
【0042】
上記発泡組成物の成形方法については、成形物である製品の形状や性質に応じて適宜選定することができる。例えば、ゴルフボールのカバーを成形する方法としては、例えば、射出成形機に上述の発泡組成物を供給し、コアの周囲に溶融した発泡組成物を射出することによりカバーを成形することができる。この場合、成形温度としては、使用する発泡組成物によって異なるが、ポリウレタン又はポリウレアであれば、通常150~270℃の範囲である。また、他の方法としては、例えば溶融した発泡組成物を金型でプレス成型しハーフキャップ状の発泡成型体を得た後、コアを2つのハーフキャップ状発泡成型体で包み、プレス機などで加温圧縮することでゴルフボールのカバーを成型することができる。
【0043】
上記発泡組成物の成形物については、該成形物に含まれる水溶性微粉末を溶出及び除去する。この具体的な方法については、特に制限はないが、5~100℃、好ましくは10~80℃、更に好ましくは20~60℃程度の水または温水により、水溶性微粉末を溶出させることができる。作業効率の観点から高温短時間で溶出除去できることが好ましく、例えば上記の温度の水に十分に水溶性微粉末が溶出及び除去できる時間、例えば10分~12時間、好ましくは30分~8時間、更に好ましくは1~6時間浸漬させることで溶出及び除去させることができる。更に、溶出除去を促進する方法を、適宜選択・付加することもできる。例えば、振動、撹拌、搖動、エアレーション、マイクロバブル、超音波、高圧噴射、ブラシ等で物理的に除去する方法など、様々な方法を適宜選択・付加することができ、その方法はこの限りではない。そして、水溶性微粉末を溶出及び除去した後に十分乾燥させることで発泡成形体を得ることができる。乾燥させる具体的な方法としては、特に制限はないが、乾燥機や除湿乾燥機などを用いて、例えば120℃以下、好ましくは80℃以下、更に好ましくは60℃以下の乾燥温度で乾燥させることで、付着した水を十分除去した後、所望の発泡成形体を得ることができる。
【0044】
上記発泡組成物の成形物の発泡セルの形態については、高分子材料に配合される水溶性微粉末の粒子径や配合量によって適宜選定される。例えば、ポリウレタンに水溶性微粉末である塩化ナトリウムを混合し、ゴルフボールのカバー材として成型した後、水又は温水によって塩化ナトリウムを溶出させた場合、塩化ナトリウム含有量が少ないと、ゴルフボールのカバーの表面に存在する塩化ナトリウムのみが溶出され、表面のみ穴があき、内部には塩化ナトリウムが残存することになる。一方、塩化ナトリウム含有量が多いと、塩化ナトリウム同士が隣り合っており、連続して溶出していくため連続発泡体となり、ほぼ全ての塩化ナトリウムが溶出除去される。但し、塩化ナトリウムをポリウレタン中に練り込む工程、及びポリウレタンと塩化ナトリウムとを含有する発泡組成物から発泡成形物であるゴルフボールのカバーを成型する工程で加えられるせん断応力などによって更に細かくなった塩化ナトリウムはウレタン中に取り込まれることとなり、このウレタン中に取り込まれた塩化ナトリウムは水と接触しないため多少は残存する。
【0045】
上記発泡組成物の成形物(発泡体)については、比重が0.2~1.2であることが好適である。また、ゴルフボールのカバー部材として用いる場合、通常は、耐擦過傷性を良好に維持することとアプローチショット時の初速を小さくすることの両観点から、比重は1.0~1.2であることが好適である。求められる物性がよりソフトな打感、より見た目でもソフトさが求められる場合などは、比重は1.0以下がより好適である。
【0046】
また、上記発泡体は、ゴルフボール製品に用いる場合は、ゴルフボールの飛び性能やスピン性能等の点から、反発弾性が、JIS-K 6255規格の測定で9~62%であることが好ましく、より好ましくは20~60%である。
【0047】
本発明では、上記により得られた発泡部材(発泡成形体)は、特に、芯材となる部材の表面又は周囲に形成されるための被覆部材として好適に採用される。例えば、ゴルフボールの他、野球のボール、ビリヤードの球、ボーリングの球などの各種ボール、グリップ、電気ケーブル、グローブや靴などのファブリック用品、タイヤ、ローラー等が挙げられる。ゴルフボールの場合は、芯材としては、ゴム製等の単層又は複数のコアであり、発泡部材は、上記コアを直接又は間接的に被覆する被覆層(中間層、包囲層、カバー層等とも呼ばれる。)に相当する。
【実施例】
【0048】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0049】
〔実施例1~10、比較例1〕
表1に示す配合により、全ての例に共通するゴルフボール用コアのゴム組成物を調製・加硫成形することにより直径38.6mmのコアを作製した。
【0050】
【0051】
上記コア材料の詳細は下記のとおりである。
・「cis-1,4-ポリブタジエン」JSR社製、商品名「BR01」
・「アクリル酸亜鉛」日本触媒社製
・「酸化亜鉛」堺化学工業社製
・「硫酸バリウム」堺化学工業社製
・「老化防止剤」商品名「ノクラックNS6」(大内新興化学工業社製)
・「有機過酸化物(1)」ジクミルパーオキサイド、商品名「パークミルD」(日油社製)
・「有機過酸化物(2)」1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンとシリカの混合物、商品名「パーヘキサC-40」(日油社製)
・「ステアリン酸亜鉛」日油社製
【0052】
次に、全ての例に共通する中間層樹脂材料を配合した。この中間層樹脂材料は、酸含量18質量%のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体のナトリウム中和物50質量部と、酸含量15質量%のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体の亜鉛中和物50質量部との合計100質量部とするブレンド物である。この樹脂材料を、上記で得た直径38.6mmのコアの周囲に射出成形し、厚さ1.25mmの中間層を有する中間層被覆球体を製造した。
【0053】
カバー樹脂組成物の調製
全ての例において、熱可塑性ポリウレタンエラストマーとして、ディーアイシーコベストロポリマー社製の商品名「パンデックス」、エーテルタイプの熱可塑性ポリウレタン(ショアD硬度40)を用い、これに、水溶性微粉末として塩化ナトリウム(平均粒子径350μm、融点800℃、水への溶解度36g/100g(20℃))を添加した。下記表1に示すように、水溶性微粉末の添加量を適宜変化させて各実施例のカバー樹脂組成物を調製した。
【0054】
【0055】
評価用シートサンプルの成型(作成)
上記表1の配合物を混練機で練った後、熱プレスにてプレスし、厚さ2mmのシートを成型した。その後、温度55℃の温水に4時間浸漬し、55℃で12時間乾燥させ任意の発泡シートサンプルを得た。
【0056】
ゴルフボールの作製
次に、上記の中間層被覆球体(外径41.1mm、質量40.8g)の周囲に、上記のカバー樹脂組成物を被覆させた。その後、成形後の厚さ0.8mmのカバー(最外層)を被覆した球体を温度55℃の温水に4時間浸漬し、55℃、12時間で乾燥させた。その後、上記カバー被覆球体に塗装を施し、直径42.7mmのスリーピースゴルフボールを作製した。
【0057】
上記により作製した各実施例及び比較例1のゴルフボールについて、打感、耐擦過傷性、アプローチショット時のボール初速及び操作性(コントロール性能)の各評価を下記の方法により行った。その結果を表2に示す。
【0058】
[アプローチショット時のボール初速]
ゴルフ打撃ロボットにサンドウェッジ(SW)を装着し、ヘッドスピード(HS)20m/sで打撃した直後のボールの初速を初期条件計測装置により測定した。また、比較例1のボール初速を基準として、各例のボール初速の減少分(ΔV)を算出した。
【0059】
[アプローチショット時の操作性(コントロール性能)の評価]
アプローチショット時のクラブの操作性(コントロール性能)について下記のとおり官能評価を行った。使用クラブはサンドウェッジ(SW)を用いた。
◎ … 操作性に非常に優れる。
○ … 操作性に優れる。
× … 操作性がやや劣る。
【0060】
[アプローチショット時の打感の評価]
アプローチショット時の打感について下記のとおり官能評価を行った。使用クラブはサンドウェッジ(SW)を用いた。
◎ … 非常に打感がソフトで芯を感じやすい。
○ … 打感がソフトで芯を感じやすい。
× … 球離れが早く芯を感じられない。
【0061】
[耐擦過傷性の評価]
ボールを23℃に保温するとともに、スウィングロボットマシンを用い、クラブはピッチングウェッジを使用して、ヘッドスピード33m/sで各ボールを各5球ずつ打撃し、打撃傷を以下の基準で目視にて評価した。
◎ … やや傷がついているか、ほとんど傷が目立たない。
○ … 表面がやや毛羽立っているか、ディンプルがやや欠けている。
× … ディンプルが完全に削り取られている。
【0062】