(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】光トランシーバ
(51)【国際特許分類】
G02B 6/42 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
G02B6/42
(21)【出願番号】P 2019080279
(22)【出願日】2019-04-19
【審査請求日】2022-03-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】沖 和重
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-008105(JP,A)
【文献】特開2009-049333(JP,A)
【文献】特開2001-077569(JP,A)
【文献】特開2003-069263(JP,A)
【文献】特開2003-168772(JP,A)
【文献】特開2011-086666(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0162761(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/26 - 6/27
G02B 6/30 - 6/34
G02B 6/42 - 6/43
H01S 5/00 - 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間と、前記内部空間を画成する内面とを有する筐体と、
発熱体を収容するパッケージと、前記パッケージに取り付けられたスリーブとを有し、前記スリーブが前記筐体に固定されると共に、前記パッケージが前記内面と非接触の状態で前記内部空間に収容される光モジュールと、
前記パッケージと前記内面との間に介在し、前記内面に接触する放熱材と、
放熱性を有し、前記放熱材及び前記パッケージのそれぞれに接触すると共に、前記放熱材と前記パッケージとの間に介在して前記パッケージへの前記放熱材の油性成分の透過を抑制するシート部材と、
を備え、
前記発熱体によって前記パッケージに生じた熱が、前記シート部材及び前記放熱材を介して前記筐体に放熱され、
前記放熱材は、前記内面及び前記シート部材によって封止されて
おり、
前記筐体は、前記内面に前記内面の面外方向に突出して形成され、前記内面に沿って前記放熱材を囲むと共に、前記内面の面外方向に最も突出した部分に前記内面の面外方向と垂直な平坦面を有する凸部を有し、
前記平坦面に前記シート部材が貼り付けられており、
前記放熱材は、前記凸部及び前記シート部材によって封止されている、
光トランシーバ。
【請求項2】
前記内面における前記凸部の内側に形成されており、前記放熱材の一部分を収容する凹部を有する、
請求項
1に記載の光トランシーバ。
【請求項3】
前記シート部材の厚さが0.2mm以上且つ0.8mm以下である、
請求項1
または請求項2に記載の光トランシーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、光トランシーバに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、発光素子が実装される光サブアセンブリと、ICが実装される回路基板とを備えた光トランシーバが記載されている。光サブアセンブリと回路基板は放熱カバーによって覆われている。光サブアセンブリはセラミックパッケージによって構成されており、セラミックパッケージの回路基板側の背面には放熱面が設けられている。放熱面は、放熱カバーの放熱接触面に直交するように配置され、放熱面には放熱ブロックが熱結合される。放熱ブロックは、放熱カバーの放熱接触面にスライド可能に密接するように固定されている。
【0003】
特許文献2には、スリーブ部及びボックス部を有するバタフライ型の光モジュールと、光モジュールを収容するハウジングとを備えた光トランシーバの放熱構造が記載されている。スリーブ部はハウジングの内面に直接固定されており、ボックス部は補助部材を介してハウジングの内面に固定されている。ボックス部と補助部材との間には熱伝導性グリス及び弾性部材が介在している。
【0004】
特許文献3には、光通信用モジュールが記載されている。光通信用モジュールは、発光素子及びTECを有する光送信部と、受光素子を有する光受信部と、光送信部及び光受信部を収容する筐体とを備える。光送信部と筐体の内面との間には、光送信部に接触する第1接続材と、筐体の内面に接触する第2接続材と、第1接続材及び第2接続材の間に介在する金属板とが設けられる。第1接続材の熱伝導率、及び第2接続材の熱伝導率は、共に金属板の熱伝導率よりも小さい。このように、光送信部と筐体とは、第1接続材、金属板及び第2接続材を介して熱的に接続されている。
【0005】
特許文献4には、筐体と、光送信素子と、複数の放熱シートと、回路基板と、グラファイトシート部材とを備えた光通信モジュールが記載されている。筐体は、光送信素子、グラファイトシート部材、複数の放熱シート、及び回路基板を収容する。グラファイトシート部材は、光送信素子と筐体の底壁に載せられた放熱シートとの間から、他の放熱シートと筐体の底壁との間に延び出している。このように、光送信素子は、筐体の底壁に載せられた放熱シート及びグラファイトシート部材を介して当該底壁と熱的に接続されている。
【0006】
特許文献5には、キャビネットと、カバーとを備えた光モジュールが記載されている。キャビネットの内部には、電気基板と、光トランシーバ部と、固定部材と、熱伝導性シートとが収容されている。固定部材はカバーの内面に接触しており、固定部材と光トランシーバ部との間に熱伝導性シートが介在している。これにより、光トランシーバ部の熱は、熱伝導性シート及び固定部材を介してカバーに伝達される。
【0007】
特許文献6には、回路基板と、光サブアセンブリと、熱伝導材と、ハウジングとを備えた光トランシーバが記載されている。回路基板、光サブアセンブリ及び熱伝導材はハウジングに収容されている。熱伝導材は光サブアセンブリと回路基板との間に配置され、熱伝導材の一部はハウジングの外部に延び出している。熱伝導材は、光サブアセンブリにおいて生じた熱を、熱伝導材を介してハウジングの外部に放熱する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2012-64936号公報
【文献】特開2007-155863号公報
【文献】特開2011-215620号公報
【文献】特開2014-119712号公報
【文献】米国特許出願公開2009/0010653号明細書
【文献】米国特許出願公開2005/0158052号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、光トランシーバは、光サブアセンブリ等の光モジュールと、外部のホストシステムに電気的に接続される電気プラグに接続される回路基板と、光モジュール及び回路基板を収容する筐体とを備える。筐体の一端には光コネクタが挿入される光レセプタクルが一体化されており、筐体の他端には電気プラグが露出している。光モジュールはパッケージとパッケージから延び出すスリーブとを有し、スリーブはパッケージにYAG溶接によって固定される。
【0010】
光モジュールは発熱部品となりうるため、光モジュールからの熱を放熱させることが求められる。例えば、光モジュールは、光信号と電気信号との相互変換を行うために電力を消費してジュール熱を発生する。特に、電気信号から光信号を生成して送信する場合、光パワーの大きな光信号を生成するために、それだけ大きい電力を必要とする。ジュール熱の放熱が不十分な場合、光モジュールの温度が過度に上昇して安定した動作が得られなくなる虞がある。
【0011】
そこで、例えば、パッケージ上面から放熱を行う場合に、光モジュールのパッケージの下面と筐体の内面との間に空間を形成すると共に、パッケージの上面と筐体の内面との間に放熱ゲルを介在させることが考えられる。しかしながら、放熱ゲルは、油性成分を含んでおり且つゲル状とされているため、パッケージの上面と筐体の内面との間から漏れることが想定される。このように、放熱ゲルが漏れる場合、放熱ゲルの油性成分がパッケージの内部に浸透する可能性がある。
【0012】
本発明の一側面は、放熱材の漏れを抑制することができる光トランシーバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一側面に係る光トランシーバは、内部空間と、内部空間を画成する内面とを有する筐体と、発熱体を収容するパッケージと、パッケージに取り付けられたスリーブとを有し、スリーブが筐体に固定されると共に、パッケージが内面と非接触の状態で内部空間に収容される光モジュールと、パッケージと内面との間に介在し、内面に接触する放熱材と、放熱性を有し、放熱材及びパッケージのそれぞれに接触すると共に、放熱材とパッケージとの間に介在してパッケージへの放熱材の油性成分の透過を抑制するシート部材と、を備え、発熱体によってパッケージに生じた熱が、シート部材及び放熱材を介して筐体に放熱される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、放熱材の漏れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る光トランシーバを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の光トランシーバの内部構造を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1の光トランシーバのハウジングの内面、放熱材及びシート部材を示す平面図である。
【
図6】
図6は、
図5のハウジングの内面に放熱材が充填された状態の例を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、
図6の放熱材にシート部材が載せられた状態の例を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、
図1の光トランシーバの内部構造を模式的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に、本願発明の実施形態の内容を列記して説明する。本願発明の一実施形態に係る光トランシーバは、内部空間と、内部空間を画成する内面とを有する筐体と、発熱体を収容するパッケージと、パッケージに取り付けられたスリーブとを有し、スリーブが筐体に固定されると共に、パッケージが内面と非接触の状態で内部空間に収容される光モジュールと、パッケージと内面との間に介在し、内面に接触する放熱材と、放熱性を有し、放熱材及びパッケージのそれぞれに接触すると共に、放熱材とパッケージとの間に介在してパッケージへの放熱材の油性成分の透過を抑制するシート部材と、を備え、発熱体によってパッケージに生じた熱が、シート部材及び放熱材を介して筐体に放熱される。
【0017】
この光トランシーバは、内部空間、及び当該内部空間を画成する内面を有する筐体と、筐体の内部空間に設けられる光モジュールとを備える。光モジュールは、筐体の内部空間に収容されると共に発熱体を収容するパッケージと、パッケージに取り付けられると共に筐体に固定されるスリーブとを有する。パッケージと筐体の内面との間には放熱材が介在し、放熱材は当該内面に接触する。従って、パッケージの内部の発熱体から生じた熱は放熱材を介して筐体の内面に伝達されるので、光モジュールの放熱性を高めることができる。また、放熱材とパッケージとの間には放熱性を有するシート部材が介在し、シート部材はパッケージへの放熱材の油性成分の透過を抑制する。従って、パッケージへの放熱材の漏れを抑制することができると共に、放熱材の油性成分のパッケージ内部への浸透を回避することができる。
【0018】
また、前述した光トランシーバでは、筐体は、内面に内面の面外方向に突出して形成され、内面に沿って放熱材を囲むと共に、内面の面外方向に最も突出した部分に内面の面外方向と垂直な平坦面を有する凸部を有し、平坦面にシート部材が貼り付けられていてもよい。この場合、凸部に放熱材が囲まれるので、放熱材の漏れをより確実に抑制することができる。また、シート部材は放熱材を囲む凸部に貼り付けられるので、凸部及びシート部材によって放熱材は互いに異なる複数の方向から囲まれる。従って、放熱材の油性成分のパッケージへの浸透をより確実に回避することができる。
【0019】
また、前述した光トランシーバは、内面における凸部の内側に形成されており、放熱材の一部分を収容する凹部を有してもよい。この場合、筐体の内面に放熱材の一部分が押し出される凹部が形成される。よって、充填された放熱材のうちの余剰分を凹部に押し出すことができるので、放熱材を多めに充填することにより筐体の内面及びシート部材に対する放熱材の密着性をより高めることできる。従って、パッケージの内部の発熱部品から生じるジュール熱をシート部材及び放熱材を介してより十分に筐体に伝達させることができる。その結果、パッケージの内部の発熱部品の光トランシーバ外部への放熱をより効果的に行うことができる。
【0020】
また、シート部材の厚さが0.2mm以上且つ0.8mm以下であってもよい。この場合、パッケージへの放熱材の油性成分の透過を抑制することができると共に、シート部材の厚さを厚くなりすぎないように薄くすることができる。
【0021】
[本願発明の実施形態の詳細]
本願発明の実施形態に係る光トランシーバの具体例を、以下で図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以降の例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の範囲内における全ての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解を容易にするため、一部を簡略化又は誇張している場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0022】
図1は、本願発明の実施形態に係る光トランシーバ1を示す斜視図である。
図2は、光トランシーバ1の内部構造を示す斜視図である。
図1及び
図2に示されるように、光トランシーバ1は、例えば、QSFP28規格に準拠しており、全二重双方向光通信を行う。光トランシーバ1は、その長手方向である方向D1に沿って、通信装置であるホストシステムに設けられたケージに挿抜(挿入及び抜出)される。光トランシーバ1は筐体3及びプルタブ4を備えており、筐体3及びプルタブ4は共に方向D1に沿って延びる形状とされている。筐体3は金属製である。方向D1に垂直な筐体3の断面形状は、例えば、長方形状である。筐体3は、方向D1に延びる一対の側面3aを有する。
【0023】
プルタブ4は、例えば、樹脂製であり、可撓性を有する材料によって構成されている。プルタブ4は、筐体3の方向D1の端部から延び出す一対のアーム部4aと、一対のアーム部4aの先端同士を接続する接続部4bとを有する。例えば、プルタブ4を指で摘まんでプルタブ4を方向D1に引くことにより、ホストシステムに対する光トランシーバ1の係合が解除されてホストシステムから光トランシーバ1を引き抜くことが可能となる。
【0024】
筐体3は、光ファイバケーブルの先端に設けられた光コネクタが係合する光レセプタクル5を備える。光レセプタクル5は、筐体3の方向D1の一端に設けられる。筐体3は、更に、ホストシステムのケージの内部に設けられた電気コネクタに接続される電気プラグ6を、方向D1の他端に備える。なお、以下の説明では、筐体3の一端側(光レセプタクル5側)を前方と称し、筐体3の他端側(電気プラグ6側)を後方と称することがある。
【0025】
筐体3は、下筐体7と上筐体8とを含んでいる。下筐体7及び上筐体8は、ガスケットGが介在した状態で複数のネジNによって互いに接合される。筐体3の内部には、TOSA(Transmitter Optical Sub-Assembly)9、ROSA(Receiver Optical Sub-Assembly)10及びリテーナ11が収容される。TOSA9及びROSA10は、光トランシーバ1の幅方向である方向D2に沿って並置される光モジュールである。リテーナ11は、例えば、導電性材料によって構成されている。
【0026】
図3は、光トランシーバ1の内部空間Sに配置されたTOSA9を示す断面図である。
図2及び
図3に示されるように、TOSA9は、パッケージ9aと、パッケージ9aから延び出すスリーブ9bとを備える。パッケージ9aの内部には複数の光学部品等の発熱部品が実装されている。なお、
図3では、パッケージ9aの内部の図示を省略している。スリーブ9bは光レセプタクル5に固定され、スリーブ9bには前述した光コネクタが挿入される。パッケージ9aは直方体状を呈し、スリーブ9bはパッケージ9aの側面(前面)から円筒状に突出する。ROSA10は、パッケージ9a及びスリーブ9bと同様、パッケージ10a及びスリーブ10bを備える。スリーブ9b及びスリーブ10bはリテーナ11によって上筐体8に固定される。
【0027】
また、スリーブ9bの前側、及びスリーブ10bの前側は、後方から光レセプタクル5の内部に向かって突出するように配置される。スリーブ9b及びスリーブ10bのそれぞれには光ファイバが挿入されており、当該光ファイバとTOSA9及びROSA10のそれぞれに搭載されている半導体デバイス(LD,PD等)とは光学調芯によって光学的に結合されている。
【0028】
前述の光学調芯では、スリーブ9b及びスリーブ10bのそれぞれを当該光ファイバの光軸に直交する方向(XY方向)に移動させながらTOSA9及びROSA10の外部で当該光ファイバを通る光信号の検知を行い、検知した光信号がピークとなる位置でスリーブ9b及びスリーブ10bのそれぞれがパッケージ9a及びパッケージ10aのそれぞれに固定される。検知した光信号がピークとなるのは、例えば、スリーブ9bの光軸とパッケージ9aの光軸とが互いに略一致した状態にあることを示し、前述した光学調芯を行うことによって最適な結合効率を得ることができる(スリーブ10bの光軸とパッケージ10aの光軸についても同様)。
【0029】
TOSA9の光学系では、当該光学系を構成する部品の寸法、又は当該光学系の部品の組み立て位置に公差若しくは誤差があることにより、光軸の位置が設計値を中心としてばらつくことがある。前述した光学調芯は、当該光軸の位置ずれによる結合効率の低下を補償するために行われる。スリーブ9b及びスリーブ10bは、例えば、SUS製であり、パッケージ9a及びパッケージ10aのそれぞれにYAG溶接によって固定される。
【0030】
光トランシーバ1の内部空間Sには、2枚のFPC基板12,13及び回路基板14が収容される。FPC基板12はTOSA9と回路基板14とを電気的に接続し、FPC基板13はROSA10と回路基板14とを電気的に接続する。ROSA10は、光トランシーバ1の外部から受信した光信号を電気信号に変換し、当該電気信号はFPC基板13を介して回路基板14に伝送される。
【0031】
回路基板14が搭載する回路は、当該電気信号に信号処理を施し、当該電気信号は電気プラグ6を介してホストシステムに出力される。一方、ホストシステムからは回路基板14に電気プラグ6を介して送信用の電気信号が入力される。当該電気信号は、回路基板14が搭載する回路によって処理された後、FPC基板12を介してTOSA9に伝送される。TOSA9は、当該電気信号を光信号に変換した後、当該光信号を光トランシーバ1の外部に出力する。
【0032】
光トランシーバ1において、下筐体7と上筐体8との間には光トランシーバ1の内部空間Sが形成される。下筐体7及び上筐体8は、それぞれ内面7a,8aを有し、下筐体7の内面7aと上筐体8の内面8aとが対向するように上筐体8は下筐体7に固定される。例えば、上述のように、ガスケットGを間に挟んで複数のネジNによって互いに接合される。下筐体7及び上筐体8のそれぞれの内面7a、8aにより内部空間Sが画成される。下筐体7及び上筐体8は、光トランシーバ1が業界規格(例えば、MSA(Multi Source Agreement))に準拠するようにそれぞれの外形が定められる。内部空間Sには、光トランシーバ1が所定の機能を行うのに必要な構成要素(部品)が収容される。例えば、光トランシーバ1の内部空間Sには、更に、放熱ゲル15(放熱材)及びシート部材16が収容される。また、筐体3(上筐体8)は、内部空間Sを画成する内面8aを有する。放熱ゲル15及びシート部材16は上筐体8の内面8aに載せられ、シート部材16にはTOSA9が載せられる。すなわち、放熱ゲル15はTOSA9のパッケージ9aと内面8aとの間に介在し、シート部材16は放熱ゲル15とパッケージ9aとの間に介在する。シート部材16は、例えば、放熱ゲル15と同様、放熱性を有する。
【0033】
図4は、上筐体8の内面8a、放熱ゲル15及びシート部材16を示す平面図である。
図3及び
図4に示されるように、上筐体8の内面8aには、光トランシーバ1の内側(下筐体7側)に突出する凸部17と、光トランシーバ1の外側(下筐体7の反対側)に窪む凹部18と、凹部18の凸部17との反対側において凹部18に対して突出する凸部19とが形成されている。凹部18に対する凸部19の高さは、凹部18に対する凸部17の高さよりも低い。
【0034】
凹部18及び凸部19は放熱ゲル15が入り込む部位であり、凸部17は放熱ゲル15を覆うシート部材16が載せられる部位である。例えば、凹部18は凸部19を囲む枠状に形成されており、凸部17は凹部18を囲む枠状に形成されている。一例として、凸部19は方向D1及び方向D2の双方に延びる長方形状とされており、凹部18及び凸部17は方向D1及び方向D2の双方に延びる矩形枠状とされている。
【0035】
凸部19及び凹部18には放熱ゲル15が充填され、凹部18には余剰とされた放熱ゲル15が入り込む。すなわち、凹部18は、余剰の放熱ゲル15を入り込ませるために設けられる。放熱ゲル15は、例えば、弾性を有すると共に伝熱性を有する放熱部材(熱伝導性ゲル)である。放熱ゲル15は、凹部18及び凸部19の上に載せられて、シート部材16及び上筐体8の内面8aに密着する。これにより、放熱ゲル15は、シート部材16を介してTOSA9に熱的且つ物理的に接触する。よって、TOSA9の熱は、シート部材16及び放熱ゲル15を介して上筐体8に伝導し、上筐体8から光トランシーバ1の外部に放出される。
【0036】
放熱ゲル15は、油性成分を含んでおり、例えばシリコーンオイルを含んでいる。この場合、シリコーンの架橋が少ないことによって放熱ゲル15の浸透圧が低いので、ブリードしやすいことがある。ブリードとは、放熱ゲル15の油性成分がゆっくりと広がり浸透していくことを示している。よって、例えば放熱ゲル15がTOSA9に直接接触する場合、TOSA9のパッケージ9aの内部、又はスリーブ9bに放熱ゲル15の油性成分が侵入する可能性がある。
【0037】
そこで、本実施形態では、放熱ゲル15とTOSA9のパッケージ9aとの間にシート部材16が介在する。シート部材16は、上筐体8の凸部17に、例えば、粘着テープによって固定される。シート部材16により、パッケージ9aがシート部材16を介して放熱ゲル15に押し付けられた場合でも、放熱ゲル15がTOSA9のスリーブ9b、すなわち、前述したYAG溶接がされた部分に回り込むことを抑制することが可能となる。
【0038】
シート部材16は、放熱ゲル15の油性成分を透過させないシート状の部材であって、高い熱伝導性を有する。例えば、シート部材16の熱伝導率は、0.5W(m・K)以上且つ5.0W(m・K)であり、一例として0.72W/(m・K)である。シート部材16の厚さは、例えば、0.2mm以上且つ0.8mm以下であり、一例として0.5mmである。シート部材16は、更に、高い絶縁性を有していてもよい。また、シート部材16は、再貼付性を有していてもよく(貼り直しが可能であってもよく)、この場合、リワークを容易に行うことが可能となる。シート部材16は帯電性が低い材料であってもよい。例えば、シート部材16は、ポリイミドテープ、カプトンテープ又はグラファイトシートである。
【0039】
次に、放熱ゲル15及びシート部材16を配置する手順について
図5~
図7を参照しながら説明する。まず、
図5に示されるように、上筐体8を用意し、例えば上筐体8の内面8a(凸部17、凹部18及び凸部19)を上に向けた状態とする。そして、
図6に示されるように、上筐体8の内面8aの凸部17の内側に位置する凹部18及び凸部19に放熱ゲル15を充填する。
【0040】
このとき、例えば、放熱ゲル15の高さが凸部17の高さと同程度以上となるように放熱ゲル15を充填する。続いて、
図7に示されるように、放熱ゲル15及び凸部17にシート部材16を貼り付ける。なお、シート部材16は、透明であってもよい。この場合、シート部材16の下に放熱ゲル15が十分に充填されているか否かを確認することが可能となる。但し、シート部材16は半透明又は不透明であってもよい。上記の貼り付けでは、シート部材16の外縁部を凸部17に貼り付けて放熱ゲル15を封止すると共に、放熱ゲル15を押し込んで余剰となった放熱ゲル15を凹部18に入り込ませる。その後、シート部材16にTOSA9を載せ、上筐体8の内部への各部品の配置を行って下筐体7を接合することにより、光トランシーバ1の組み立てが完了する。
【0041】
次に、本実施形態に係る光トランシーバ1から得られる作用効果について詳細に説明する。
図8に模式的に示されるように、光トランシーバ1は、内部空間S、及び内部空間Sを画成する内面8aを有する筐体3と、筐体3の内部空間Sに設けられるTOSA9とを備える。TOSA9は、筐体3の内部空間Sに収容されると共に発熱体を収容するパッケージ9aと、パッケージ9aに取り付けられると共に筐体3に固定されるスリーブ9bとを有する。パッケージ9aと筐体3の内面8aとの間には放熱性を有するシート部材16及び放熱ゲル15が介在し、放熱ゲル15は内面8aに接触する。
【0042】
従って、パッケージ9aの内部の発熱体から生じた熱はシート部材16及び放熱ゲル15を介して筐体3の内面8aに伝達されるので、TOSA9の放熱性を高めることができる。また、放熱ゲル15とパッケージ9aとの間には放熱性を有するシート部材16が介在し、シート部材16はパッケージ9aへの放熱ゲル15の油性成分の透過を抑制する。従って、パッケージ9aへの放熱ゲル15の漏れを抑制することができると共に、放熱ゲル15の油性成分のパッケージ9a内部への浸透を回避することができる。
【0043】
また、本実施形態に係る光トランシーバ1は、筐体3は、内面8aに内面8aの面外方向に突出して形成され、内面8aに沿って放熱ゲル15を囲むと共に、内面8aの面外方向に最も突出した部分に内面8aの面外方向と垂直な平坦面を有する凸部17を有し、当該平坦面にシート部材16が貼り付けられている。よって、凸部17に放熱ゲル15が囲まれるので、放熱ゲル15の漏れをより確実に抑制することができる。また、シート部材16は放熱ゲル15を囲む凸部17に貼り付けられるので、凸部17及びシート部材16によって放熱ゲル15は互いに異なる複数の方向から囲まれる。すなわち、凸部17及びシート部材16によって放熱ゲル15は封止される。従って、放熱ゲル15の油性成分のパッケージ9aへの浸透をより確実に回避することができる。
【0044】
また、本実施形態に係る光トランシーバ1は、内面8aにおける凸部17の内側に形成されており、放熱ゲル15の一部分を収容する凹部18を有する。すなわち、筐体3の内面8aに放熱ゲル15の一部分が押し出される凹部18が形成される。よって、充填された放熱ゲル15のうちの余剰分を凹部18に押し出すことができるので、放熱ゲル15を多めに充填することにより筐体3の内面8a及びシート部材16に対する放熱ゲル15の密着性をより高めることができる。従って、パッケージ9aの内部の発熱部品から生じるジュール熱をシート部材16及び放熱ゲル15を介してより十分に筐体3に伝達させることができる。その結果、パッケージ9aの内部の発熱部品の光トランシーバ1外部への放熱をより効果的に行うことができる。
【0045】
また、本実施形態において、シート部材16の厚さが0.2mm以上且つ0.8mm以下である。従って、パッケージ9aへの放熱ゲル15の油性成分の透過を抑制することができると共に、シート部材16の厚さを厚くなりすぎないように薄くすることができる。
【0046】
以上、本発明に係る光トランシーバの実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されない。すなわち、本発明が特許請求の範囲に記載された要旨の範囲内において種々の変形及び変更が可能であることは、当業者によって容易に認識される。例えば、シート部材16の形状、大きさ、材料、数及び配置態様は適宜変更可能である。
【0047】
例えば、前述の実施形態では、放熱ゲル15が入り込む凸部17が枠状とされる例について説明した。しかしながら、凸部17は、枠状以外の他の形状であってもよい。例えば、凸部17に代えて、回路基板14側が開放された形状(一例としてコの字形)の凸部を備えていてもよく、この場合も、シート部材16によってTOSA9(スリーブ9b)への放熱ゲル15の漏れを抑制することができる。更に、凹部18及び凸部19の形状、大きさ、数及び配置態様も適宜変更可能である。
【0048】
また、前述の実施形態では、パッケージ9a及びスリーブ9bを備えるTOSA9が光モジュールとしてシート部材16及び放熱ゲル15に載せられる例について説明した。しかしながら、光モジュールは、例えば、ROSA10であってもよいし、TOSA9又はROSA10以外の光モジュールであってもよい。このように、本発明は、種々の光モジュールに適用可能である。更に、前述の実施形態では、QSFP28規格に準拠しており全二重双方向光通信を行う光トランシーバ1について説明した。しかしながら、本発明に係る光トランシーバは、例えばSFP規格等、QSFP28規格以外の規格に準拠した光トランシーバであってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…光トランシーバ
3…筐体、3a…側面
4…プルタブ、4a…アーム部、4b…接続部
5…光レセプタクル
6…電気プラグ
7…下筐体(筐体)
8…上筐体(筐体)、8a…内面
9…TOSA(光モジュール)、9a…パッケージ、9b…スリーブ
10…ROSA(光モジュール)、10a…パッケージ、10b…スリーブ
11…リテーナ
12,13…FPC基板
14…回路基板
15…放熱ゲル(放熱材)
16…シート部材
17…凸部
18…凹部
19…凸部
D1,D2…方向
G…ガスケット
N…ネジ
S…内部空間。