(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】サーバ装置およびその制御方法、端末およびその制御方法、移動体支援システムおよび方法、並びにコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/017 20060101AFI20231108BHJP
G08G 1/04 20060101ALI20231108BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
G08G1/017
G08G1/04 C
G08G1/09 F
(21)【出願番号】P 2019082377
(22)【出願日】2019-04-24
【審査請求日】2022-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099933
【氏名又は名称】清水 敏
(74)【代理人】
【識別番号】100124028
【氏名又は名称】松本 公雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145207
【氏名又は名称】酒本 裕明
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【氏名又は名称】神野 直美
(72)【発明者】
【氏名】小川 明紘
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/146882(WO,A1)
【文献】特開2017-098794(JP,A)
【文献】特開2010-085256(JP,A)
【文献】特開2013-174540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G16Y 10/00 - 40/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路側に設けられたインフラセンサ設備装置、もしくは移動体に備えられた移動体センサ、またはその双方からセンサデータを受信し解析して移動体の位置およびその
状態を示す属性を検出する移動体検出装置と、
端末との通信により、当該端末の位置情報を維持する位置情報維持装置と、
前記移動体検出装置により検出された第1の移動体の位置と、前記位置情報維持装置により維持されている第1の端末の位置とが所定の関係を充足することを検出して、当該第1の端末を備えた移動体として当該第1の移動体を同定する同定装置と、
前記第1の端末を備えた移動体として同定された前記第1の移動体について前記移動体検出装置が検出した属性を表す属性情報を前記第1の端末に送信する情報送信装置とを含む、サーバ装置。
【請求項2】
前記情報送信装置は、
前記第1の移動体について前記移動体検出装置が検出した前記属性が所定の属性か否かを判定する属性判定装置と、
前記第1の移動体の属性が前記所定の属性であると前記属性判定装置が判定したことに応答して、当該所定の属性を表す属性情報を前記第1の端末に送信する送信処理部とを含む、請求項1に記載のサーバ装置。
【請求項3】
前記サーバ装置はさらに、前記属性情報の各々について、属性情報の有効期間を記憶した有効期間記憶部を含み、
前記情報送信装置は、前記第1の移動体について前記移動体検出装置が検出した属性を表す属性情報および当該属性情報に対して前記有効期間記憶部に記憶された有効期間を前記第1の端末に送信する送信装置とを含む、請求項1に記載のサーバ装置。
【請求項4】
前記有効期間は、移動体の属性の変化に要する期間の長さと正の相関を持つように予め定められる、請求項3に記載のサーバ装置。
【請求項5】
前記有効期間記憶部が記憶する有効期間は0から無限大までの任意の値である、請求項4に記載のサーバ装置。
【請求項6】
前記移動体検出装置は、前記センサデータを所定周期で受信し解析して移動体の最新の位置およびその最新の属性を検出する最新移動体検出装置を含み、
前記位置情報維持装置は、移動体が保持する端末との通信により所定周期で当該端末の最新の位置情報を維持する最新位置情報維持装置を含み、
前記情報送信装置は、前記最新移動体検出装置が前記第1の移動体の位置および属性を検出している限り、前記最新移動体検出装置が検出した最新の属性を表す属性情報を前記第1の端末に送信する装置を含む、請求項1に記載のサーバ装置。
【請求項7】
前記センサデータおよび前記位置情報には、それぞれ、当該センサデータおよび当該位置情報が取得された時刻を表す時刻情報が付されており、
前記同定装置は、
前記移動体検出装置により検出された第1の移動体の位置およびそのときの時刻と、前記位置情報維持装置により維持されている第1の端末の位置およびそのときの時刻との間で計算される距離が所定値以内であることを検出して、当該第1の端末を備えた移動体として当該第1の移動体を同定する、請求項1に記載のサーバ装置。
【請求項8】
位置情報を取得する位置情報取得装置と、
前記位置情報を所定の外部サーバに送信する第1の送信装置と、を含む端末であって、
外部サーバから前記端末を有する移動体の
状態を示す属性を表す属性情報を受信する属性情報受信装置と、
前記属性情報受信装置が受信した属性情報を記憶する属性情報記憶装置と、
前記属性情報受信装置が前記外部サーバから前記属性情報を受信しなくなったことに応答して、前記属性情報を外部
の車両に送信する処理を開始する第2の送信装置とを含む、端末。
【請求項9】
前記位置情報を取得したときの時刻を表す時刻情報を取得する時刻情報取得装置をさらに含み、
前記第1の送信装置は、前記位置情報が取得されたときに前記時刻情報取得装置が取得した時刻情報とともに当該位置情報を前記外部サーバに送信する位置・時刻情報送信装置を含む、請求項8に記載の端末。
【請求項10】
前記属性情報記憶装置は、前記属性情報受信装置が新たな前記属性情報を受信するたびに、当該属性情報記憶装置に記憶されていた属性情報を、前記新たな前記属性情報で更新する属性情報更新装置を含む、請求項8または請求項9に記載の端末。
【請求項11】
前記属性情報には、当該属性情報の有効期間が付されており、
前記属性情報記憶装置は、前記属性情報受信装置が受信した属性情報およびその有効期間をともに記憶し、
さらに、前記第2の送信装置による前記属性情報の送信が開始されてからの経過時間を計時する計時装置と、
前記属性情報記憶装置に記憶されている属性情報の各々について、当該計時装置により計時された経過時間が当該属性情報に付された有効期間以上となったことに応答して、前記第2の送信装置による当該属性情報の送信を中止する属性送信中止装置とを含む、請求項9または請求項10に記載の端末。
【請求項12】
前記属性送信中止装置は、前記属性情報記憶装置に記憶されている属性情報の各々について、前記計時装置により計時された経過時間が当該属性情報に付された有効期間以上となったことに応答して、当該属性を前記属性情報記憶装置から削除する属性情報削除装置を含む、請求項11に記載の端末。
【請求項13】
前記第2の送信装置による処理が開始された後、前記属性情報受信装置が前記外部サーバから新たな前記属性情報を受信したことに応答して、前記第2の送信装置による送信処理を中止させる中止装置をさらに含む、請求項8~請求項12のいずれか1項に記載の端末。
【請求項14】
請求項1に記載のサーバ装置と、請求項8に記載の端末とを含む、移動体支援システム。
【請求項15】
コンピュータが、路側に設けられたインフラセンサ設備装置、もしくは移動体に備えられた移動体センサ、またはその双方からセンサデータを受信し解析して移動体の位置およびその
状態を示す属性を検出するステップと、
コンピュータが、端末との通信により、当該端末の位置情報を維持するステップと、
コンピュータが前記属性を検出するステップにおいて検出された第1の移動体の位置と、前記位置情報を維持するステップにより維持されている第1の端末の位置とが所定の関係を充足することを検出して、当該第1の端末を備えた移動体として当該第1の移動体を同定するステップと、
コンピュータが、
前記第1の端末を備えた移動体として同定された前記第1の移動体について前記属性を検出するステップで検出した属性情報を前記第1の端末に対し送信するステップとを含む、移動体支援方法。
【請求項16】
コンピュータを、
路側に設けられたインフラセンサ設備装置、もしくは移動体に備えられた移動体センサ、またはその双方からセンサデータを受信し解析して移動体の位置およびその
状態を示す属性を検出する移動体検出装置と、
端末との通信により、当該端末の位置情報を維持する位置情報維持装置と、
前記移動体検出装置により検出された第1の移動体の位置と、前記位置情報維持装置により維持されている第1の端末の位置とが所定の関係を充足することを検出して、当該第1の端末を備えた移動体として当該第1の移動体を同定する同定装置と、
前記第1の端末を備えた移動体として同定された前記第1の移動体について前記移動体検出装置が検出した属性情報を前記第1の端末に対し送信する情報送信装置として機能させる、コンピュータプログラム。
【請求項17】
コンピュータが、位置情報を取得するステップと、
コンピュータが、前記位置情報を所定の外部サーバに送信する第1の送信ステップと、を含む端末の制御方法であって、
コンピュータが、外部サーバから前記端末を有する移動体の
状態を示す属性を表す属性情報を受信するステップと、
コンピュータが、前記属性情報を受信するステップで受信した属性情報を記憶装置に記憶するステップと、
コンピュータが、前記属性情報を受信するステップで前記外部サーバから前記属性情報を受信しなくなったことに応答して、前記属性情報を外部
の車両に送信する処理を開始するステップとを含む、端末の制御方法。
【請求項18】
コンピュータを、
位置情報を取得する位置情報取得装置と、
前記位置情報を所定の外部サーバに送信する第1の送信装置と、を含む端末として機能させるコンピュータプログラムであって、さらに、コンピュータを、
外部サーバから前記端末を有する移動体の
状態を示す属性を表す属性情報を受信する属性情報受信装置と、
前記属性情報受信装置が受信した属性情報を記憶する属性情報記憶装置と、
前記属性情報受信装置が前記外部サーバから前記属性情報を受信しなくなったことに応答して、前記属性情報を外部
の車両に送信する処理を開始する第2の送信装置として機能させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、サーバ装置およびその制御方法、端末およびその制御方法、移動体支援システムおよび方法、並びにコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両を運行する際には、運転者は、自車の動きだけではなく、他車の動きにも十分に注意する必要がある。車両に加えて、歩行者が存在している場合には運転者は特に注意することが必要である。従来、
図1に示すように、このような実空間50に存在する移動体を、LiDAR(Light Detection And Ranging)、カメラ等の多数のセンサで検知し、その属性(大人、子供、車両、二輪車等)を推定し、仮想空間上で予め準備された高精度な道路地図データを用いて交通状況俯瞰マップ52を作成する技術がある。
【0003】
このような交通状況俯瞰マップ52を作成するためには、交通状況俯瞰マップ52を作成するためのサーバは、多数のセンサの出力であるセンサデータを、それらセンサが搭載されている車両、および、路側に設けられたカメラ等のインフラセンサ設備装置から収集する必要がある。そのために、サーバ、車両およびインフラセンサ設備装置の間の通信に第5世代移動通信システム(いわゆる「5G」)を用いることが考えられる。
【0004】
交通状況俯瞰マップ52を用いて運転支援を行うことにより、特に歩行者等、いわゆる交通弱者を有効に保護できるという効果がある。交通状況俯瞰マップ52を用いて交通弱者を保護するシステムとして、後掲の特許文献1に記載されたシステムがある。特許文献1に記載されたシステムは交通弱者の信号横断支援と題されたものである。このシステムでは、歩行者が持つ無線タグに、予め交通弱者であることを示す属性情報を記憶させておく。横断歩道の歩行者用信号機にこの無線タグの属性情報を受信する路側機を設ける。路側機が無線タグに対する問い合わせ信号を送信する。無線タグがこの問合せ信号を受信すると、無線タグはその記憶した属性情報を路側機に送信する。路側機が無線タグから属性情報を受信し、その属性情報が交通弱者であることを示すときには、路側機は歩行者用信号機における青信号の点灯時間を延長させるなどの交通弱者支援のための処理を実行する。路側機は同時に、この交通弱者の位置座標をセンタにアップロードし、センタから各車両の運転者に交通弱者の位置を通知できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の開示によれば、交通弱者に対する交通支援が可能になるとともに、車両の運転者に交通弱者の位置を通知してその注意を喚起するので、交通安全に資する効果がある。
【0007】
しかし、特許文献1の開示にはさらに改良の余地がある。その1つは、無線タグに記憶された情報が静的なものであるため、その持ち主の状態の変化に対応できないという問題である。例えば、足にケガをして松葉杖をついて歩いている人の場合には交通弱者といえるが、松葉杖をついていることを示す無線タグでは、ケガがなおって松葉杖を使わずに歩けるようになったときにその人の状態の変化を表すことができない。無線タグをそのたびに新しいものに交換することも、無線タグの内容を書換える装置を使うことも考えられるが、いずれの場合にもその持ち主が意識して特定の処理を行う必要がある。持ち主がそうした処理を行わない場合には、誤った情報が運転者に配信されることになり、好ましくない。またそれまで支障なく歩いていた歩行者が路上で何らかの原因でケガをしたりしたときには、そのケガによりその歩行者の状態が変わったことが無線タグでは周囲に通知できないという問題がある。
【0008】
また、無線タグを持っている歩行者であっても、その無線タグと通信できる装置が存在しない領域にいる場合には、その無線タグを歩行者保護に利用できないという問題がある。そのような場合でも、周囲の車両に歩行者の存在を通知できるようにすることが望まれている。
【0009】
こうした問題は必ずしも交通弱者の場合には限らない。車両の場合でも、例えば車両の運転者に何らかの異変が生じ運転が異常になったときに、それを周囲に遅滞なく通知する仕組みがあれば好ましい。
【0010】
特許文献1に記載の技術ではこうした問題を解決できない。
【0011】
それ故にこの開示の目的は、交通参加者の状態の変化に応じて、周囲の車両などにその情報を遅滞なく通知できるサーバ装置およびその制御方法、端末およびその制御方法、移動体支援システムおよび方法、並びにコンピュータプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この開示の第1の局面に係るサーバ装置は、路側に設けられたインフラセンサ設備装置、もしくは移動体に備えられた移動体センサ、またはその双方からセンサデータを受信し解析して移動体の位置およびその属性を検出する移動体検出装置と、端末との通信により、当該端末の位置に関する情報を維持する位置情報維持装置と、移動体検出装置により検出された第1の移動体の位置と、位置情報維持装置により維持されている第1の端末の位置とが所定の関係を充足することを検出して、当該第1の端末を備えた移動体として当該第1の移動体を同定する同定装置と、第1の移動体について移動体検出装置が検出した属性を表す属性情報を第1の端末に送信する情報送信装置とを含む。
【0013】
この開示の第2の局面に係る端末は、位置情報を取得する位置情報取得装置と、位置情報を所定のサーバに送信する第1の送信装置と、を含む端末であって、サーバから端末の属性を表す属性情報を受信する属性情報受信装置と、属性情報受信装置が受信した属性情報を記憶する属性情報記憶装置と、属性情報受信装置がサーバから属性情報を受信しなくなったことに応答して、属性情報を外部に送信する処理を開始する第2の送信装置とを含む。
【0014】
この開示の第3の局面に係る移動体支援システムは、上記したサーバ装置と、上記した端末とを含む。
【0015】
この開示の第4の局面に係る移動体支援方法は、コンピュータが、路側に設けられたインフラセンサ設備装置、もしくは移動体に備えられた移動体センサ、またはその双方からセンサデータを受信し解析して移動体の位置およびその属性を検出するステップと、コンピュータが、端末との通信により、当該端末の位置情報を維持するステップと、コンピュータが属性を検出するステップにおいて検出された第1の移動体の位置と、位置情報を維持するステップにより維持されている第1の端末の位置とが所定の関係を充足することを検出して、当該第1の端末を備えた移動体として当該第1の移動体を同定するステップと、コンピュータが、第1の移動体について属性を検出するステップで検出した属性情報を第1の端末に対し送信するステップとを含む。
【0016】
この開示の第5の局面に係るコンピュータプログラムは、コンピュータを、路側に設けられたインフラセンサ設備装置、もしくは移動体に備えられた移動体センサ、またはその双方からセンサデータを受信し解析して移動体の位置およびその属性を検出する移動体検出装置と、端末との通信により、当該端末の位置情報を維持する位置情報維持装置と、移動体検出装置により検出された第1の移動体の位置と、位置情報維持装置により維持されている第1の端末の位置とが所定の関係を充足することを検出して、当該第1の端末を備えた移動体として当該第1の移動体を同定する同定装置と、第1の移動体について移動体検出装置が検出した属性情報を第1の端末に対し送信する情報送信装置として機能させる。
【0017】
この開示の第6の局面に係る端末の制御方法は、コンピュータが、位置情報を取得するステップと、コンピュータが、位置情報を所定のサーバに送信する第1の送信ステップと、を含む端末の制御方法であって、コンピュータが、サーバから端末の属性を表す属性情報を受信するステップと、コンピュータが、属性情報を受信するステップで受信した属性情報を記憶装置に記憶するステップと、コンピュータが、属性情報を受信するステップでサーバから属性情報を受信しなくなったことに応答して、属性情報を外部に送信する処理を開始するステップとを含む。
【0018】
この開示の第7の局面に係るコンピュータプログラムは、コンピュータを、位置情報を取得する位置情報取得装置と、位置情報を所定のサーバに送信する第1の送信装置と、を含む端末として機能させるコンピュータプログラムであって、さらに、コンピュータを、サーバから端末の属性を表す属性情報を受信する属性情報受信装置と、属性情報受信装置が受信した属性情報を記憶する属性情報記憶装置と、属性情報受信装置がサーバから属性情報を受信しなくなったことに応答して、属性情報を外部に送信する処理を開始する第2の送信装置として機能させる。
【0019】
なお、この開示は、このような特徴的な処理部を備える装置として実現できるだけでなく、上に記載したような特徴的な処理をステップとする方法として実現したり、それらステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現したりできる。また、装置の一部または全部を実現する半導体集積回路として実現したり、それら装置を含むシステムとして実現したりできる。
【発明の効果】
【0020】
以上のようにこの開示によれば、交通参加者の状態の変化に応じて、周囲の車両などにその情報を遅滞なく通知できるサーバ装置およびその制御方法、端末およびその制御方法、移動体支援システムおよび方法、並びにコンピュータプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、現実の道路状況と交通状況俯瞰マップとの関係を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、この開示の第1の実施の形態に係る交通支援システムの概略を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、この開示の第1の実施の形態に係る交通システムにおいて、歩行者が持つ携帯電話と歩行者との同定処理の原理的構成を示す模式図である。
【
図4】
図4は、この開示の第1の実施の形態に係る交通支援システムで使用されるエッジサーバの機能的構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、ライフタイムテーブルに記憶された属性値とそのライフタイム設定値との組合せの例を表形式で示す図である。
【
図6】
図6は、
図4に示すエッジサーバを実現するコンピュータの外観図である。
【
図7】
図7は、
図6に示すコンピュータのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、
図7に示すコンピュータで実行されるコンピュータプログラム(以下、「プログラム」という)の制御構造を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、この開示の第1の実施の形態で使用される携帯電話の機能的ブロック図である。
【
図12】
図12は、
図10に示す携帯電話のコントローラが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、
図12に示すプログラムで属性情報について更新する処理を実現するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、第2の実施の形態に係る携帯電話のコントローラが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、第3の実施の形態に係る携帯電話の機能的構成を示すブロック図である。
【
図16】
図16は、第3の実施の形態に係る携帯電話のコントローラが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[この発明の実施の形態の説明]
以下の説明および図面では、同一の部品には同一の参照番号を付してある。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。なお、以下の実施の形態の少なくとも一部を任意に組合せても良い。
【0023】
(1)この開示の第1の局面に係るサーバ装置は、路側に設けられたインフラセンサ設備装置、もしくは移動体に備えられた移動体センサ、またはその双方からセンサデータを受信し解析して移動体の位置およびその属性を検出する移動体検出装置と、端末との通信により、当該端末の位置情報を維持する位置情報維持装置と、移動体検出装置により検出された第1の移動体の位置と、位置情報維持装置により維持されている第1の端末の位置とが所定の関係を充足することを検出して、当該第1の端末を備えた移動体として当該第1の移動体を同定する同定装置と、第1の移動体について移動体検出装置が検出した属性を表す属性情報を第1の端末に送信する情報送信装置とを含む。
【0024】
位置情報維持装置は、各端末との通信により各端末の位置情報を維持する。端末は携帯電話なども含む。移動体検出装置は、センサデータを解析し、移動体の位置およびそれらの属性を検出する。こうして検出された第1の移動体の位置と、位置情報維持装置が維持している第1の端末の位置とが所定の関係を充足しているとき、同定装置は第1の端末を保持している移動体として第1の移動体を同定する。情報送信装置がこの第1の端末に第1の移動体に関する属性情報を送信することで、第1の端末には、その端末を有する移動体の属性情報が格納される。第1の端末がこの情報を周囲に送信することで、外部の車両などの移動体は第1の移動体の属性を知ることができる。第1の端末がその位置情報も同時に送信すれば、第1の端末の位置情報は第1の移動体の位置も示していると考えられ、周囲の移動体は第1の移動体の位置およびその属性を知ることができる。周囲の移動体は、これら情報を用いてその運転者の運転支援を行える。その結果、第1の移動体という交通参加者の状態の変化に応じて、周囲の車両などにその情報を遅滞なく通知できる。
【0025】
(2)好ましくは、情報送信装置は、第1の移動体について移動体検出装置が検出した属性が所定の属性か否かを判定する属性判定装置と、第1の移動体の属性が所定の属性であると属性判定装置が判定したことに応答して、当該所定の属性を表す属性情報を第1の端末に送信する送信処理部とを含む。
【0026】
属性判定部が第1の移動体の属性が所定の属性であると判定したときには、その所定の属性を表す属性情報が第1の端末に送信される。第1の端末はその属性情報を周囲の車両等に送信できる。特に交通参加者として運転者が注意すべき属性を所定の属性として選択することで、第1の移動体がその属性をそなえているときには、その周囲の車両に十分注意すべきことを通知でき、交通の安全を図ることができる。
【0027】
(3)より好ましくは、サーバ装置はさらに、属性情報の各々について、属性情報の有効期間を記憶した有効期間記憶部を含み、情報送信装置は、第1の移動体について移動体検出装置が検出した属性を表す属性情報および当該属性情報に対して有効期間記憶部に記憶された有効期間を第1の端末に送信する送信装置とを含む。
【0028】
移動体の属性とその値として種々考えられる。例えば移動体が人の場合、体の向き、顔の向き等については常に変化する。一方、大人と子供のような、年齢に関する属性についてはその値は通常の期間では変化しない。移動体の属性の値が変化するまでの期間はその属性により様々である。それらの期間を無視して属性を送信すると、移動体の周囲の車両等に誤った情報を与えるおそれがある。そこで、移動体の属性情報については有効期間を設けるようにしておく。第1の移動体の持つ端末では、その有効期間を見て周囲にその属性情報を送信すべきか否かを判定できる。その結果、誤った属性情報が車両等に通知されることを防止できるので、交通を安全にできる。
【0029】
(4)さらに好ましくは、有効期間は、移動体の属性の変化に要する期間の長さと正の相関を持つように予め定められる。
【0030】
移動体の属性の中には、常に変化するものと、非常に長い期間が経過しないと変化しないものとがあり、属性の性質によりその間の様々な値をとり得る。誤った属性を車両等に通知しないことを目的とするならば、常に変化する属性については有効期間を短くし、長い期間を経て初めて変化する属性については有効期間を長くし、変化する期間がその間にある属性については、その期間の長さに応じた有効期間を付与することが望ましい。したがって、移動体の属性の変化に要する期間の長さと正の相関を持つようにその有効期間を定めることにより、車両等に移動体に関する誤った属性情報を通知する危険性を小さくできる。その結果、交通をより安全にできる。
【0031】
(5)好ましくは、有効期間記憶部が記憶する有効期間は0から無限大までの任意の値である。
【0032】
常に変化する属性については、端末は常にその端末を有する移動体の属性の変化に追従して属性情報を維持すべきである。一方、全く変化しない(または変化するには非常に長い期間を有する)属性の場合には、その有効期間を非常に長くしても問題は生じない。したがって、前者の場合に有効期間を例えば0とし、後者の場合には例えば有効期間を無限大とし、その中間の期間で変化する属性についてはその中間の長さの有効期間とすればよい。こうすることで、車両等に移動体に関する誤った属性情報を通知する危険性を小さくできる。その結果、交通をより安全にできる。
【0033】
(6)より好ましくは、移動体検出装置は、センサデータを所定周期で受信し解析して移動体の最新の位置およびその最新の属性を検出する最新移動体検出装置を含み、位置情報維持装置は、移動体が保持する端末との通信により所定周期で当該端末の最新の位置情報を維持する最新位置情報維持装置を含み、情報送信装置は、最新移動体検出装置が第1の移動体の位置および属性を検出している限り、最新移動体検出装置が検出した最新の属性を表す属性情報を第1の端末に送信する装置を含む。
【0034】
位置情報維持装置は所定周期で移動体の最新の位置およびその最新の属性を検出する。最新位置情報維持装置は、所定周期で当該端末の最新の位置情報を維持する。情報送信装置は、最新移動体検出装置が第1の移動体の位置および属性を検出している限り、最新移動体検出装置が検出した最新の属性を表す属性情報を第1の端末に送信する。第1の端末にはサーバ装置との通信が可能であれば常に第1の端末を保持している移動体に関する属性情報が送信される。サーバ装置との通信ができなくなったときにも、それまでの最新の属性情報を記憶しているので、属性情報の有効期間内はその属性情報を周囲の車両等に送信できる。その結果、端末がサーバ装置と通信ができない領域でも第1の移動体の安全を図るために周囲に第1の移動体に関する正しい属性情報を送信できる。
【0035】
(7)さらに好ましくは、センサデータおよび位置情報には、それぞれ、当該センサデータおよび当該位置情報が取得された時刻を表す時刻情報が付されており、同定装置は、移動体検出装置により検出された第1の移動体の位置およびそのときの時刻と、位置情報維持装置により維持されている第1の端末の位置およびそのときの時刻との間で計算される距離が所定値以内であることを検出して、当該第1の端末を備えた移動体として当該第1の移動体を同定する。
【0036】
センサデータを取得するタイミングと、端末の位置情報を取得するタイミングとは必ずしも同じではなく、それらの周期も一致するとは限らない。したがって、時刻と位置との関係についてはある幅をもたせて両者が一致するか否かを判断する方が好ましい。そのためには、時刻と位置とにより定義される両者の距離を計算し、第1の移動体から所定距離内に存在する端末があるか否かによりその端末を有する移動体を判定するという方法がある。こうすることにより、移動体と端末との関係を柔軟かつ的確に推定できる。移動体の属性情報を正しくその端末に送信できる可能性が高くなる。端末を有する移動体に関して正しい属性情報をその端末が周囲の車両等に伝えることができる可能性が高くなる。その結果、実社会の交通環境におけるその移動体に関する安全を図ることができる。
【0037】
(8)この開示の第2の局面に係る端末は、位置情報を取得する位置情報取得装置と、位置情報を所定の外部サーバに送信する第1の送信装置と、を含む端末であって、外部サーバから端末を有する移動体の属性を表す属性情報を受信する属性情報受信装置と、属性情報受信装置が受信した属性情報を記憶する属性情報記憶装置と、属性情報受信装置が外部サーバから属性情報を受信しなくなったことに応答して、属性情報を外部に送信する処理を開始する第2の送信装置とを含む。
【0038】
この端末においては、位置情報取得手段が取得した位置情報を第1の送信装置が外部サーバに送信する。外部サーバではこの情報に基づいて端末装置の位置を維持できる。その外部サーバから属性情報受信装置が属性情報を受信した場合、その属性情報はその端末装置を有する移動体の属性を表す。属性情報受信装置が外部サーバから属性情報を受信しなくなったということは、そのときに端末装置が存在している領域では外部サーバによる交通支援が行われていない可能性が高い。そうした領域では、属性情報受信装置がサーバから受信した属性情報を第2の送信装置が外部に送信する。外部の車両等ではこの属性情報に基づき、端末装置を有する移動体の属性を知ることができる。外部の車両等はこの属性情報に応じて的確な運転支援を行うことが可能になる。
【0039】
(9)好ましくは、端末は、位置情報を取得したときの時刻を表す時刻情報を取得する時刻情報取得装置をさらに含み、第1の送信装置は、位置情報が取得されたときに時刻情報取得装置が取得した時刻情報とともに当該位置情報をサーバに送信する位置・時刻情報送信装置を含む。
【0040】
端末を有する移動体が時間とともに移動する場合、サーバに送信される位置情報も変化する。この場合、端末を有する移動体を同定するためには、どの時刻にどの位置にいたかに関する情報が利用できなければ移動体の同定は正確にはできない可能性がある。そこで時刻情報取得装置により、端末の位置情報を取得したときの時刻を表す時刻情報を取得し、その時刻情報をサーバに送信する。サーバでこの情報を利用して端末を有する移動体の同定を行う。その結果、端末を有する移動体の同定がより正確に行え、サーバから端末に送信されてくる属性情報はその端末を有する移動体に関するものである可能性が高くなる。その結果、移動体に関する正しい属性情報が外部の車両などに送信されるようになり、移動体が安全に移動できる可能性が高くなる。
【0041】
(10)より好ましくは、属性情報記憶装置は、属性情報受信装置が新たな属性情報を受信するたびに、当該属性情報記憶装置に記憶されていた属性情報を、新たな属性情報で更新する属性情報更新装置を含む。
【0042】
属性情報受信装置が受信した属性情報は最新のものと考えられる。過去の属性情報を記憶しておくと、誤って古い属性情報が外部に送信される危険性がある。そこで新たに受信した属性情報で過去の属性情報を更新することでそうした間違いが予防できる。
【0043】
(11)さらに好ましくは、属性情報には、当該属性情報の有効期間が付されており、属性情報記憶装置は、属性情報受信装置が受信した属性情報およびその有効期間をともに記憶し、端末はさらに、第2の送信装置による属性情報の送信が開始されてからの経過時間を計時する計時装置と、属性情報記憶装置に記憶されている属性情報の各々について、当該計時装置により計時された経過時間が当該属性情報に付された有効期間以上となったことに応答して、第2の送信装置による当該属性情報の送信を中止する属性送信中止装置とを含む。
【0044】
移動体の属性は時間の経過とともに変化する。その変化に要する期間は属性によって様々である。人の場合、体の向きおよび顔の向き等の属性は常に変化する。一方、大人と子供ように年齢に関係する属性が変化するには長い期間が必要である。これらを同様に扱うことは相当でない。そこで、サーバで各属性にそれらに応じた有効期間を付し、端末に送信してくる。端末は、受信した属性情報について有効期間を経過したときにはその属性情報の送信を中止する。時間の経過とともに古くなった移動体の属性を移動体からその外部に送信すると、その属性が正しくない可能性がある。属性送信中止装置が有効期間内の属性のみを外部に送信するよう第2の送信装置を制御するので、外部に誤った属性情報が送信される危険性を小さくできる。
【0045】
(12)好ましくは、属性送信中止装置は、属性情報記憶装置に記憶されている属性情報の各々について、計時装置により計時された経過時間が当該属性情報に付された有効期間以上となったことに応答して、当該属性を属性情報記憶装置から削除する属性情報削除装置を含む。
【0046】
属性情報削除装置は、有効期間を経過した属性情報を削除する。属性情報自体を削除するので、誤って古い属性情報が周囲の車両等に送信される危険性をなくすことができる。
【0047】
(13)より好ましくは、端末はさらに、第2の送信装置による処理が開始された後、属性情報受信装置がサーバから新たな属性情報を受信したことに応答して、第2の送信装置による送信処理を中止させる中止装置を含む。
【0048】
属性情報受信装置がサーバから新たな属性情報を受信したということは、サーバと端末との通信が可能になったということである。その場合、その領域ではサーバが交通支援のための情報提供を端末の周囲の車両に対して行っていると考えられる。端末から周囲の車両に属性情報を送信する利益はない。属性情報の送信を中止することで、無駄な通信を行わずに済む。それだけではなく、過去の属性情報を送信することで誤った属性情報が周囲に送信されることを防止できる。
【0049】
(14)この開示の第3の局面に係る移動体支援システムは、上記したサーバ装置と、上記した端末とを含む。
【0050】
移動体検出装置が検出した第1の移動体の位置と、第1の端末の位置とが所定の関係を充足しているとき、同定装置は第1の端末を保持している移動体として第1の移動体を同定する。情報送信装置がこの第1の端末に第1の移動体に関する属性情報を送信する。第1の端末には、その端末を有する移動体の属性情報が格納される。第1の端末がサーバから属性情報を受信した場合、その属性情報はその端末装置を有する移動体の属性を表す。属性情報受信装置がサーバから属性情報を受信しなくなったということは、そのときに端末装置が存在している領域ではサーバによる交通支援が行われていないことを意味する。そうした領域では、属性情報受信装置がサーバから受信した属性情報を第2の送信装置が外部に送信する。外部の車両等ではこの属性情報に基づき、端末装置を有する移動体の属性を知ることができる。外部の車両等はこの属性情報に応じて的確な運転支援を行うことが可能になる。その結果、第1の移動体という交通参加者の状態の変化に応じて、周囲の車両などにその情報を遅滞なく通知できる。
【0051】
(15)この開示の第4の局面に係る移動体支援方法は、コンピュータが、路側に設けられたインフラセンサ設備装置、もしくは移動体に備えられた移動体センサ、またはその双方からセンサデータを受信し解析して移動体の位置およびその属性を検出するステップと、コンピュータが、端末との通信により、当該端末の位置情報を維持するステップと、コンピュータが、属性を検出するステップにおいて検出された第1の移動体の位置と、位置情報を維持するステップにより維持されている第1の端末の位置とが所定の関係を充足することを検出して、当該第1の端末を備えた移動体として当該第1の移動体を同定するステップと、コンピュータが、第1の移動体について属性を検出するステップで検出した属性情報を第1の端末に対し送信するステップとを含む。
【0052】
属性を検出するステップで、コンピュータがセンサデータを解析し移動体の位置およびその属性を検出する。維持するステップで、コンピュータが各端末との通信により各端末の位置情報を検出し維持する。同定するステップでは、コンピュータが、第1の移動体の位置と、第1の端末の位置とが所定の関係を充足しているとき、第1の端末を保持している移動体として第1の移動体を同定する。送信するステップでは、コンピュータがこの第1の端末に第1の移動体に関する属性情報を送信する。第1の端末には、その端末を有する移動体の属性情報が格納される。第1の端末がこの情報を周囲に送信することで、外部の車両などの移動体は第1の移動体の属性を知ることができる。第1の端末がその位置情報も同時に送信すれば、第1の端末の位置情報は第1の移動体の位置も示していると考えられ、周囲の移動体は第1の移動体の位置およびその属性を知ることができる。周囲の移動体は、これら情報を用いてその運転者の運転支援を行える。その結果、第1の移動体という交通参加者の状態の変化に応じて、周囲の車両などにその情報を遅滞なく通知できる。
【0053】
(16)この開示の第5の局面に係るコンピュータプログラムは、コンピュータを、路側に設けられたインフラセンサ設備装置、もしくは移動体に備えられた移動体センサ、またはその双方からセンサデータを受信し解析して移動体の位置およびその属性を検出する移動体検出装置と、端末との通信により、当該端末の位置情報を維持する位置情報維持装置と、移動体検出装置により検出された第1の移動体の位置と、位置情報維持装置により維持されている第1の端末の位置とが所定の関係を充足することを検出して、当該第1の端末を備えた移動体として当該第1の移動体を同定する同定装置と、第1の移動体について移動体検出装置が検出した属性情報を第1の端末に対し送信する情報送信装置として機能させる。
【0054】
コンピュータは、位置情報維持装置として機能し、各端末との通信により各端末の位置情報を維持する。コンピュータは、移動体検出装置としても機能し、センサデータを解析し、移動体の位置およびそれらの属性を検出する。こうして検出された第1の移動体の位置と、位置情報維持装置が維持している第1の端末の位置とが所定の関係を充足しているとき、コンピュータは同定装置として機能し、第1の端末を保持している移動体として第1の移動体を同定する。コンピュータが情報送信装置として機能してこの第1の端末に第1の移動体に関する属性情報を送信することで、第1の端末には、その端末を有する移動体の属性情報が格納される。第1の端末がこの情報を周囲に送信することで、外部の車両などの移動体は第1の移動体の属性を知ることができる。第1の端末がその位置情報も同時に送信すれば、第1の端末の位置情報は第1の移動体の位置も示していると考えられ、周囲の移動体は第1の移動体の位置およびその属性を知ることができる。周囲の移動体は、これら情報を用いてその運転者の運転支援を行える。その結果、第1の移動体という交通参加者の状態の変化に応じて、周囲の車両などにその情報を遅滞なく通知できる。
【0055】
(17)この開示の第6の局面に係る端末の制御方法は、コンピュータが、位置情報を取得するステップと、コンピュータが、位置情報を所定のサーバに送信する第1の送信ステップと、を含む端末の制御方法であって、コンピュータが、サーバから端末を有する移動体の属性を表す属性情報を受信するステップと、コンピュータが、属性情報を受信するステップで受信した属性情報を記憶装置に記憶するステップと、コンピュータが、属性情報を受信するステップでサーバから属性情報を受信しなくなったことに応答して、属性情報を外部に送信する処理を開始するステップとを含む。
【0056】
取得するステップでは、コンピュータが位置情報を取得する。第1の送信ステップでコンピュータは位置情報を所定のサーバに送信する。受信するステップでは、コンピュータがサーバから端末を有する移動体の属性を表す属性情報を受信する。記憶するステップでは、コンピュータは属性情報を記憶装置に記憶する。サーバから属性情報を受信しなくなったことに応答して、コンピュータは、処理を開始するステップにおいて属性情報を外部に送信する処理を開始する。端末を有する移動体の属性情報が移動体の周囲に送信されるので、エッジサーバによる運転支援が行われないような領域でも周囲の車両等はその属性を受信し、運転支援に利用できる。
【0057】
(18)この開示の第7の局面に係るコンピュータプログラムは、コンピュータを、位置情報を取得する位置情報取得装置と、位置情報を所定のサーバに送信する第1の送信装置と、を含む端末として機能させるコンピュータプログラムであって、さらに、コンピュータを、サーバから端末の属性を表す属性情報を受信する属性情報受信装置と、属性情報受信装置が受信した属性情報を記憶する属性情報記憶装置と、属性情報受信装置がサーバから属性情報を受信しなくなったことに応答して、属性情報を外部に送信する処理を開始する第2の送信装置として機能させる。
【0058】
コンピュータは、位置情報取得装置として機能し、位置情報を取得する。コンピュータは第1の送信装置としても機能し、この位置情報を所定のサーバに送信する。コンピュータは属性情報受信装置として機能し、サーバから端末の属性を表す属性情報を受信する。コンピュータは属性情報記憶装置として機能し、この属性情報を記憶する。サーバから属性情報を受信しなくなったことに応答して、コンピュータは第2の送信装置として機能し、属性情報記憶装置に記憶されている属性情報を周囲に送信する処理を開始する。端末を有する移動体の属性情報が移動体の周囲に送信されるので、エッジサーバによる運転支援が行われないような領域でも周囲の車両等はその属性を受信し、運転支援に利用できる。
【0059】
[実施の形態の詳細な説明]
<第1の実施の形態>
〈構成〉
《全体構成》
図2を参照して、この実施の形態に係る第5世代移動通信システムを用いた交通支援システムは、実空間50(
図1)における路側に設けられたインフラセンサ設備装置80、路側カメラ82、および車両90等の移動体に搭載された車両センサおよび車載装置と、歩行者84が保持する携帯電話86と、これらからのセンサ情報を集約し解析して上記した交通状況俯瞰マップ52を生成し交通支援情報を車両90等に配信するエッジサーバ70とを含む。エッジサーバ70はこうして得られた交通支援情報を各車両に配信することで車両の運転者に対する運転支援を行う。例えばインフラセンサ設備装置80はLiDARであり、インフラセンサ設備装置80からインフラセンサ設備装置80の周囲の物体までの距離を一定周期で測定し、その情報を点群データとしてエッジサーバ70に送信する機能を持つ。路側カメラ82はこの実施の形態では周囲の所定範囲のカラー映像が取得可能なカメラであり、取得した映像信号をエッジサーバ70に送信する機能を持つ。携帯電話86はGPS(Global Position System)モジュールを搭載しており、エッジサーバ70との通信が可能な位置に歩行者84がいるときには、自己の位置座標を示す位置情報をそのときの時刻情報とともにエッジサーバ70に送信する機能を持つ。ただしエッジサーバ70との通信が可能でない位置に歩行者88がいるときには、携帯電話86は、歩行者88の属性情報と位置情報(位置・属性情報)とを車両90等に直接送信する処理を行う。そのために必要な構成について以下に説明する。
【0060】
なお、以下の実施の形態では、端末装置として携帯電話(スマートフォン)を用いている。携帯電話の場合には、後述するプログラムをいわゆるアプリの形でインストールできるので便利である。しかしこの開示はそのような実施の形態には限定されない。端末装置としては、例えば専用端末のように人が携帯できるものでもよいし、車載装置等、車両と一緒に移動するものでもよい。なお、人が携帯する端末装置の場合には、属性情報として人に関係するものが用いられるが、車載装置の場合には、その車載装置を搭載した車両、車載装置、運転等に関する属性情報を用いることができる。
【0061】
この実施の形態では、エッジサーバ70は、その領域に入った歩行者が持つ携帯電話から、その歩行者の位置および属性情報を外部に送信させるための領域に関する情報を予め記憶しておく。そうした領域とは、エッジサーバ70が携帯電話と通信できない領域、交通量が多い交差点、歩行者に関連する事故が多発することが分かっている地点等である。その領域では携帯電話がエッジサーバ70と通信できない場合はもちろん、これらの領域では仮にエッジサーバ70と通信が可能であったとしても、歩行者に関する情報が車両に確実に送信されるとは限らない。そこで、この実施の形態では、携帯電話がエッジサーバ70と通信可能なときに、エッジサーバ70がその携帯電話を持している歩行者に関する属性情報を検出し、その携帯電話に予め送信し格納させる。携帯電話を保持する歩行者がそれら領域に入ったら、携帯電話から歩行者の位置情報および属性情報を送信すれば、周囲に存在する車両がその情報を確実に受信できる。各車両がその情報を受信すれば、車載装置がその情報を確実に運転支援に利用できる。その結果、車両がエッジサーバ70からの交通支援情報を受信できなかったり、不完全な通信しかできなかったりする場合でも、歩行者の保護を図ることができる。
【0062】
エッジサーバ70は、携帯電話86の位置については携帯電話86からの位置情報(時刻情報を含む)により把握する。一方、歩行者の位置についてエッジサーバ70は、インフラセンサ設備装置80、路側カメラ82、および車両90等からのセンサデータを解析して初めて把握できる。したがって、どの歩行者がどの携帯電話を持っているかはエッジサーバ70には直ちには分からない。そこでこの実施の形態では、エッジサーバ70は、以下のようにして携帯電話と歩行者とを関係づける。
【0063】
図3を参照して、エッジサーバ70は、各種センサから得た情報を総合して解析することである歩行者の存在を検知し、その位置も把握する。その位置情報と、携帯電話86から受信した位置情報とを照合し、両者の間に一定の関係が成立すればそのある歩行者が携帯電話86を保持していると推定する。ただしこの場合、
図3に示すように、路側カメラ82等からエッジサーバ70に送信されるセンサデータの取得タイミングおよび周期と、基地局72が携帯電話86との通信により把握しエッジサーバ70に通知してくる携帯電話86の位置情報の取得タイミングおよび周期とは必ずしも一致しない。また歩行者は移動していることが通常であり、上記したタイミングのずれにより携帯電話86の位置が取得されたときの歩行者の位置と、各種センサからのセンサデータにより特定された歩行者の位置とではずれが生じる可能性が常にある。
【0064】
そこでこの実施の形態では、各センサおよび携帯電話86の位置とその位置が取得された時刻を表す時刻情報を各センサおよび携帯電話86からそれぞれエッジサーバ70に送信する。そして、携帯電話86の位置およびその位置が取得された時刻と、センサ情報から特定された歩行者の位置およびその位置に歩行者がいた時刻との間に定義される距離を算出し、この距離が一定範囲内にあればその歩行者がその携帯電話86を保持しているものと推定する。
【0065】
ただし、
図3のように複数の歩行者がある一定領域内にいる場合には、その領域内に携帯電話86が1台のみ存在することが分かったとしても、歩行者のうちの誰がその携帯電話86を保持しているか判定できない。これを判定しなければエッジサーバ70は上記した処理が行えない。そこでこれを解決するために以下のような手法を用いる。すなわち、センサデータの解析から推定された歩行者の位置を中心として、歩行者の移動速度を考慮した一定半径の移動範囲100を考え、この領域内に存在する携帯電話のみを考慮の対象とする。この移動範囲100内に歩行者が1人しかおらず、かつその領域に携帯電話が1台しかない場合には、その歩行者がその携帯電話を保持していると判定できる。移動範囲100内に
図3に示すように歩行者が複数いる場合には、経時的に移動範囲102、移動範囲104、および移動範囲106のように歩行者の移動とともにその移動範囲も移動させ、複数回の判定を行なう。移動範囲106のように移動範囲106内に歩行者が1人しかいなくなった時点で、かつ移動範囲106内に携帯電話86が存在しているときにはその歩行者が携帯電話を保持していると判定する。
【0066】
上記した移動範囲100のように、ある範囲内に複数の歩行者がいるときには、携帯電話がその範囲内に1台しかない場合も複数台ある場合も、そのままでは携帯電話を保持している歩行者を同定できない。したがってこの場合には、携帯電話をある歩行者と関連付けることはしない。
【0067】
携帯電話86の位置情報の取得については、以下の実施の形態では携帯電話86が持つGPSモジュールの出力を用いるものとするが、5G通信では、
図3に示すように基地局72による通信波のビームフォーミングで携帯電話86の位置を特定しその情報を用いることもできる。
【0068】
この実施の形態で使用する距離としては以下の式(1)に示すユークリッド距離を用いる。
【0069】
【数1】
ただし、添字のtおよびpはそれぞれ携帯電話および歩行者を表し、x,y,zは携帯電話または歩行者の位置座標を表し、Tはセンサデータ等が取得された時刻を表す。なお、距離としてはこれに限らず、数学的に距離の定義を満たすものであり空間および時間の間に定義可能なものであればどのようなものを用いても良い。例えばマンハッタン距離を用いることもできる。また、個々の座標を別々に比較しても良い。
【0070】
《エッジサーバ70の構成》
図4を参照して、この交通支援システムにおけるエッジサーバ70は、機能的には、
図2に示すインフラセンサ設備装置80、路側カメラ82、車両90等の車両センサからのセンサデータ、および携帯電話86等からの位置情報を受信し、それらセンサデータを必要な処理部に振分ける機能を持つ受信処理部210と、受信処理部210が受信したセンサデータを解析して移動体を検出してその位置を推定し、追跡を行うための動体追跡部212とを含む。
【0071】
エッジサーバ70はさらに、受信処理部210が受信したセンサデータを解析して、各移動体を検出し、その属性を検出してその属性を表す属性情報を出力する属性検出部216と、属性検出部216が検出した移動体の属性情報を記憶する解析結果記憶部218と、受信処理部210が受信したデータのうち、移動体の位置情報に基づき車両および携帯電話等の位置を維持し、端末を追跡するための車両・端末追跡部220と、車両・端末追跡部220により得られた車両・端末等の位置情報を過去の位置情報を含めて記憶するための車両・端末情報記憶部222とを含む。
【0072】
エッジサーバ70はさらに、解析結果記憶部214に記憶された移動体の位置に関する解析結果と、解析結果記憶部218に記憶された各移動体の属性情報とを統合する処理を行う統合処理部224と、統合処理部224により各移動体について統合された解析結果を記憶するための解析結果記憶部226とを含む。
【0073】
エッジサーバ70はさらに、移動体の属性情報とその属性情報の有効期間を示すライフタイム情報とを示すライフタイムテーブルを記憶したライフタイムテーブル記憶部234と、予め歩行者の持つ携帯電話が周囲の車両などにその位置情報および歩行者の属性情報を送信すべき領域(位置送信エリア)に関する情報(位置送信エリア情報)を記憶する位置送信エリア情報記憶部236と、車両・端末情報および各移動体の解析結果に基づいて携帯電話を保持している歩行者を同定し、ライフタイムテーブルを参照してその属性を表す属性情報とそのライフタイム情報とその携帯電話を特定する情報とをまとめて出力するための歩行者・端末同定部232とを含む。歩行者・端末同定部232はこのとき、位置送信エリア情報記憶部236に記憶されている位置送信エリア情報も携帯電話に送信するための処理を行う。
【0074】
エッジサーバ70はさらに、解析結果記憶部226に記憶された解析結果に基づき、車両・端末情報記憶部222に記憶されている各車両に関する情報を使用して各車両に送信するための情報を生成する処理と、歩行者・端末同定部232にから出力される属性情報に基づき、車両・端末情報記憶部222に格納されている対応する携帯電話に関する情報を使用して当該携帯電話に送信するための情報を生成する処理と、歩行者・端末同定部232から出力される位置送信エリア情報を同じ携帯電話に送信するための情報を生成する処理とを実行する情報送信部228と、情報送信部228から出力される情報を対象車両および対象携帯電話にネットワークを介して送信する送信処理部230とを含む。
【0075】
図5に、
図4のライフタイムテーブル記憶部234に記憶されているライフタイムテーブルの例示内容を示す。
図5を参照して、ライフタイムテーブルには、属性として簡易識別属性、詳細識別、状態、体の向き、顔の向き等が記憶されている。簡易識別属性の属性値としては車両および歩行者がある。詳細識別属性の属性値のうち、歩行者の属性値として大人、子供がある。車両の属性値としては、乗用車、自転車、大型車等がある。状態の属性値として、歩行者の場合には、歩きながらスマートフォンを見ている状態、松葉杖をついている状態、千鳥足の状態等の値があり、車両の場合には、蛇行運転、徐行運転、高速運転等の値がある。体の向きとしては例えば体の正面を0度として45度ずつ8方向を示す属性値がある。顔の向きとしては、上記した体の向きに加え、上、正面、下を示す属性値がある。なお、これ以外にも歩行者の属性は色々考えられるが、交通支援に必要な属性を歩行者の携帯電話86に送信する必要はない。また、この実施の形態では、歩行者の属性のうちのいくつかを選択して歩行者に対してそれらを無条件で送信している。しかしこの開示はそのような実施の形態には限定されない。特定の属性の値がある所定の値のときのみ、その歩行者の携帯電話86に対して歩行者の属性情報を送信するようにしてもよい。例えば状態属性が特に交通支援で重要な値(スマートフォンを見ている歩行者等)および詳細識別属性の値が同じく重要な値(子供、2人乗りの自転車等)についてのみ属性情報を送信するようにしてもよい。
【0076】
図5に示すように、簡易識別属性のライフタイム設定値は1日、詳細識別属性のライムタイム設定値も1日、状態属性のライムタイム設定値は1分、体の向き、顔の向きについてのライフタイム設定値は0分となっている。
【0077】
ここでライフタイム設定値とは、その属性の値が有効な期間のことをいう。その属性の値が最後に更新されてから、その後に更新されることなくこのライフタイム設定値により定められた期間が経過すると、その属性の値は無効となる。この実施の形態では、携帯電話に属性値とそのライフタイム設定値が送信され携帯電話に格納された後、その値が更新されずにライフタイム設定値により定まる時間だけ経過すると、その属性値は削除される。
【0078】
図5を参照して、車両および歩行者の区別、歩行者における大人および子供の区別、車両における乗用車、自転車、大型車の区別は、短期間で変化することはない。一方、状態属性については、より変化しやすい。例えばスマートフォンを見ていた歩行者は、それほど長い時間が経過する前にスマートフォンをしまって歩き出すことが多い。また体の向き、顔の向きなどについては常に変化していると考えたほうがよい。
【0079】
ライフタイム設定値は0から∞までの任意の値をとることができる。ただし、簡易識別属性および詳細識別属性のように変化しにくい属性(値が変化するには長い期間が必要な属性)については、体の向き、顔の向きのように変化しやすい属性(値が変化する時間が短い属性)よりもライフタイム設定値を長くする。状態属性のようにその中間の属性については、両者の間の任意の値とする。すなわち、属性の値が変化する期間と正の相関をとるようにライフタイム設定値を定める。特にこの実施の形態では、体の向きおよび顔の向きについてはライフタイム設定値を0としてある。この場合、属性値を携帯電話から外部に送信するのは、携帯電話がエッジサーバ70からの通信を受信できなくなった直後の1回だけとなる。
【0080】
図6に示すように、エッジサーバ70は、DVDドライブ250を持つコンピュータ240と、コンピュータ240に接続されたモニタ242、キーボード246およびマウス248を含む。
【0081】
図7を参照して、エッジサーバ70のコンピュータ240は、CPU(Central Processing Unit)260と、CPU260に接続され、CPU260とコンピュータ240の他のモジュールとの間のデータおよびコマンドの通信路となるバス262とを含む。
【0082】
コンピュータ240はさらに、いずれもバス262に接続された、GPU(Graphics Processing Unit)264と、ROM(Read-Only Memory)266と、RAM(Random Access Memory)268と、不揮発性の補助記憶装置であるハードディスクドライブ270と、DVD252が装着可能な前述のDVDドライブ250と、CPU260に対してネットワーク254への接続を提供するネットワークインターフェイス(I/F)272と、バス262に接続され、半導体メモリ256が着脱可能な半導体メモリポート274を含む。
【0083】
図8を参照して、
図4に示すようなエッジサーバ70の各部の機能を実現するプログラムは以下のような制御構造を持つ。すなわち、このプログラムは、受信処理部210が受信した車両センサ、インフラセンサおよび携帯電話からのセンサデータを集約し解析して交通状況俯瞰マップ52(
図1)を生成し、この交通状況俯瞰マップ52に基づいて交通支援情報を生成するステップ310と、ステップ310で生成された交通支援情報を、
図4の車両・端末情報記憶部222に記憶された各車両・端末に関する情報に基づいて各車両・端末に配信するステップ312と、ステップ310の処理の結果、交通状況俯瞰マップ52上に歩行者が検出されたか否かを判定し、判定結果にしたがって制御の流れを分岐させるステップ314とを含む。歩行者が検出されなかった場合には制御はステップ310に戻り、次回の処理を実行する。この結果、エッジサーバ70から携帯電話86に対しては常に最新の処理で検出された属性が送信されることになる。
【0084】
このプログラムはさらに、ステップ314の判定が肯定のときに、以下に説明する処理318を、検出された各歩行者について実行するステップ316を含む。
【0085】
処理318は、処理対象の歩行者について、その歩行者の位置を中心として位置座標および時刻情報から式(1)により計算される距離が一定の範囲内に存在している他の歩行者および携帯電話を確認するステップ330と、ステップ330で確認された他の歩行者が1人以上いるか否かを判定し、判定が肯定のときには対象歩行者に対する処理318を終了するステップ332と、ステップ332の判定が否定のときに、ステップ330で確認された携帯電話が存在するか否かを判定し、判定が否定のときには対象歩行者に対する処理を終了するステップ334と、ステップ334の判定が肯定のときに、その携帯電話(複数の場合も含む)を保持している歩行者として対象歩行者を同定して両者を関係付けるステップ336と、対象歩行者の属性ごとに、そのライフタイム設定値を設定するステップ338と、対象歩行者の属性情報とのライフタイム設定値とをステップ330で確認された携帯電話に送信して保存させ、対象歩行者に対するこの処理318の実行を終了するステップ340とを含む。
【0086】
《携帯電話》
図9に、歩行者が携帯する端末の1例である携帯電話86の機能的構成を示す。
図9を参照して、携帯電話86は、エッジサーバ70からの交通支援情報、携帯電話86を保持している歩行者に関する属性情報、および携帯電話86から周囲に対して属性情報を送信すべきエリアを特定する位置送信エリア情報を受信して、それらの種別に応じて異なる記憶部に振分けて格納する受信処理部350と、受信処理部350が受信した属性情報を記憶する属性情報記憶部352と、受信処理部350が受信した交通支援情報を記憶する交通支援情報記憶部354と、受信処理部350が受信した位置送信エリア情報を記憶する位置送信エリア情報記憶部356と、交通支援情報記憶部354が記憶した交通支援情報を用いて携帯電話86を保持する歩行者に対する交通支援を行う交通支援処理部368とを含む。
【0087】
携帯電話86はさらに、GPSモジュールを含む位置情報取得部358と、位置情報取得部358から取得した携帯電話86の位置情報を定期的にエッジサーバ70に送信する情報を生成する位置情報送信部360と、位置情報取得部358から得た位置情報により、携帯電話86が位置送信エリア情報記憶部356に記憶された位置送信エリア情報により示される位置送信エリア内にあるか否かを判定し、判定が肯定のときに、属性情報記憶部352に記憶された属性情報を周囲に送信するための情報を生成する属性情報送信部362と、属性情報送信部362が生成した情報を携帯電話86の周囲に、位置情報送信部360が生成した情報をエッジサーバ70に、それぞれ送信するために必要な処理を行う情報送信部364と、情報送信部364の出力する情報をそれぞれ情報送信部364により指定される宛先に送信する送信処理部366とを含む。
【0088】
図10に、歩行者が携帯する端末である携帯電話86の外観を示し、
図11にそのハードウェア構成を示す。
図11を参照して携帯電話86は、コントローラ400と、コントローラ400に接続されたGPSモジュール402と、コントローラ400に接続されたメモリ404と、コントローラ400のための電源回路406と、コントローラ400に接続されたオーディオ回路408およびカメラ409とを含む。
【0089】
携帯電話86はさらに、いずれもコントローラ400に接続されたLCD(Liquid Crystal Display)を含むモニタ410と、タッチパネル412と、加速度センサ、傾きセンサ、温度センサ、湿度センサ、圧力センサ、照度センサ等を含む各種センサ414と、電話機能を提供するためのRF(Radio Frequency)・ベースバンド回路416と、Wi―Fi通信等の無線通信を提供する無線通信モジュール418とを含む。
【0090】
コントローラ400は、実質的にはコンピュータであって、CPU450と、CPU450とコントローラ400内の各部との間のデータおよび命令の伝送経路となるバス452とを含む。コントローラ400はさらに、バス452に接続され、CPU450のコマンドにしたがってメモリ404の制御を行ってデータの書込および読出を行うメモリコントローラ454と、CPU450による制御にしたがって電源回路406の管理を行う電源管理回路456と、コントローラ400内の各部の動作タイミング等を管理するためのシステム管理回路458とを含む。
【0091】
コントローラ400はさらに、バス452に接続され、オーディオ回路408およびカメラ409とのインターフェイスとなるメディア処理回路460と、バス452を介してCPU450から送信されるコマンドおよびパラメータにしたがってモニタ410を制御するための表示コントローラ462と、タッチパネル412、各種センサ414およびRF・ベースバンド回路416等の外部モジュールとバス452とに接続され、CPU450およびメモリ404と外部モジュールとの間のインターフェイスとなる入出力I/F464と、バス452に接続され、CPU450から委任されたグラフィック処理および並列計算等を行ってバス452を介して結果をCPU450に返す処理を実行するGPU466とを含む。
【0092】
図12に、携帯電話86がエッジサーバ70から受信する情報に基づいて、周囲にその保持者の属性情報を送信する処理を実現するプログラムの制御構造をフローチャート形式で示す。
図12を参照して、このプログラムは、ステップ500から所定時間内に何らかの通信を受信したか否かを判定し、判定にしたがって制御の流れを分岐させるステップ500と、ステップ500の判定が肯定であり、受信した情報が属性情報であるときに、受信した属性情報とライフタイム情報とを属性情報記憶部352(
図9)に上書き保存するステップ502と、受信した情報が位置送信エリア情報であるときに、その交通支援情報を交通支援情報記憶部354(
図9)に上書き保存するステップ504と、受信した情報が交通支援情報であるときに、その情報を位置送信エリア情報記憶部356(
図9)に上書き保存するステップ506と、ステップ500の判定が否定のときに、自己の位置情報と、属性情報記憶部352に記憶されている属性情報とを周囲に送信するステップ508とを含む。
【0093】
このプログラムはさらに、ステップ502、504および506の後に実行され、携帯電話86の位置情報に基づいて、携帯電話86を持つ歩行者が位置送信エリア内にいるかどうかを判定し、判定が肯定のときに制御をステップ508に移行するステップ580と、ステップ580の判定が否定のとき、およびステップ508の完了後に実行され、属性情報記憶部352に記憶されている属性情報のうち、そのライフタイム情報により指定された期間が経過したものを削除する属性情報管理を行うステップ509と、ステップ509の後に実行され、携帯電話86の位置情報をエッジサーバ70に送信するタイミングか否かを判定し、判定が否定なら制御をステップ500に戻すステップ510と、ステップ510の判定が肯定のときに、携帯電話86の位置情報とそのときの現在時刻とをエッジサーバ70に送信するステップ512とを含む。エッジサーバ70との通信ができないときにはステップ512で情報を送信してもエッジサーバ70には届かないが、いずれかのタイミングでエッジサーバ70との通信が可能になるとエッジサーバ70では携帯電話86の位置情報が受信できる。この実施の形態では現在時刻は図示しないタイマから取得するが、
図11に示したGPSモジュール402から取得してもよい。
【0094】
図13に、
図12のステップ509の詳細を示す。
図13を参照して、このプログラムは、新しいライフタイムテーブルを作成するためのメモリ上の作業領域を初期化するステップ550と、ステップ550に続き、属性情報記憶部352に保存されている属性情報ファイルを読出すステップ552とを含む。この例では属性情報はファイル形式でメモリに記憶されているが、他の形式、例えば他の情報とともにデータベースに保存されていてもよい。
【0095】
このプログラムはさらに、ステップ552で読出された属性情報ファイルに記載されている属性ごとに、以下の処理556を実行するステップ554と、ステップ554の後に作業領域の値で属性情報記憶部352に記憶されている属性情報ファイルを上書きし属性情報管理処理を終了する処理558とを含む。
【0096】
処理556は、処理対象の属性に対して、現在時刻が、その属性の値の生成時刻(エッジサーバ70がその属性の値を推定した最新の時刻)と、その属性情報に付されているライフタイムにより定められる期間との和より後か否かを判定し、判定が肯定なら対象の属性に対する処理556を終了するステップ570と、ステップ570の判定が否定であるときに、すなわち、その属性の値の生成時刻とその属性情報に付されているライフタイムにより定められる期間との和が、現在時刻より後であるときには、その属性情報とライフタイム情報とを作業領域に転記して処理556を終了するステップ572とを含む。
【0097】
〈動作〉
《エッジサーバ70》
上記したシステムは以下のように動作する。
図5を参照して、ライフタイムテーブル記憶部234は、属性ごとに、その値とライフタイム設定値とを対応付けて記憶している。
図2に示すインフラセンサ設備装置80、路側カメラ82、および車両90に搭載された車載装置等は、センサデータをそれぞれ所定周期でエッジサーバ70に送信する。車載装置(車両)および歩行者84の保持する携帯電話86等は、自己の位置情報をエッジサーバ70に送信する。
【0098】
図4を参照して、エッジサーバ70の受信処理部210はこれら情報を受信する。受信処理部210は、受信したデータのうち、車載装置および携帯電話86等からの位置情報を車両・端末追跡部220に格納する。受信処理部210は、受信したデータの中のセンサデータを動体追跡部212および属性検出部216に与える。
【0099】
動体追跡部212は、受信処理部210から受けたセンサデータを解析して実空間における移動体を検出してその位置を推定し、追跡を行う。動体追跡部212は、解析結果を解析結果記憶部214に格納する。属性検出部216は、受信処理部210から受けたセンサデータを解析して、実空間における各移動体の画像から各移動体の属性を検出してその属性を表す属性情報を出力する。解析結果記憶部218は、属性検出部216が検出した移動体の属性情報を移動体ごとに記憶する。車両・端末追跡部220は、受信処理部210から受けたデータのうち、移動体の位置情報に基づき、車両および携帯電話等の位置を常に更新して維持し、端末の識別情報、位置、および速度等を追跡する。車両・端末情報記憶部222は、車両・端末追跡部220により得られた車両・端末等に関する情報を過去の情報を含めて記憶する。
【0100】
エッジサーバ70の統合処理部224は、解析結果記憶部214に記憶された移動体の位置に関する解析結果と、解析結果記憶部218に記憶された各移動体の属性情報とを統合する。解析結果記憶部226は、統合処理部224により各移動体について統合された解析結果を記憶する(以上、
図8のステップ310)。情報送信部228は、解析結果記憶部226に記憶されている解析結果に基づき、交通支援情報を生成し、送信処理部230を介して各車両に送信する(
図8のステップ312)。
【0101】
歩行者・端末同定部232は、車両・端末追跡部220に記憶された車両・端末情報および解析結果記憶部226に記憶された各移動体の解析結果に含まれる属性情報とに基づき、歩行者がいるか否かを判定する(
図8のステップ314)。歩行者がいない場合には歩行者・端末同定部232は何もせず次回のセンサデータの受信まで待機する(
図8のステップ314の判定がNO)。歩行者・端末同定部232は、歩行者が1人でも検出されると(
図8のステップ314の判定がYES)、歩行者ごとに、
図8の処理318を実行する。処理318では、歩行者・端末同定部232は、処理対象の歩行者を中心とする、所定半径の移動範囲(
図3の移動範囲100、102、104および106等)を想定し、その領域内に携帯電話および歩行者が検出されているか否かを判定する(ステップ330)。このときの移動範囲の半径として、歩行者・端末同定部232は、空間的な距離だけではなく、時間的な距離も含めた上記式(1)を用いて移動範囲を定める。
【0102】
歩行者・端末同定部232は、ステップ330の処理の結果、処理対象の歩行者を中心とする移動範囲内に他の歩行者がいるか否かを判定する(ステップ332)。この判定が肯定であれば、その移動範囲内に仮に携帯電話が存在していてもその携帯電話の持ち主を同定することは不可能である。したがってその場合(
図8のステップ332でYES)には、処理対象の歩行者に対する処理318の実行を終了する。
【0103】
処理対象の歩行者を中心とする移動範囲内に他の歩行者が存在していないとき(
図8のステップ332でNO)、すなわちその移動範囲内には対象歩行者しかいないときには、歩行者・端末同定部232はその移動範囲内に携帯電話があるか否かを判定する(ステップ334)。その移動範囲内に携帯電話が1つもなければ(ステップ334でNO)、歩行者・端末同定部232は処理対象の歩行者に対する処理318の実行を終了する。その移動範囲内に携帯電話が1つでもあれば(ステップ334でYES)、歩行者・端末同定部232はその携帯電話の保持者として、処理対象の歩行者を同定する(ステップ336)。その移動範囲内に複数の携帯電話があるときでも、歩行者・端末同定部232はそれら全ての携帯電話の保持者として処理対象の歩行者を同定する。
【0104】
歩行者・端末同定部232はさらに、ライフタイムテーブル記憶部234に記憶されているライフタイムテーブルを参照し、同定された歩行者の属性の値を表す属性情報と、そのライフタイム情報と、その歩行者が保持している携帯電話を特定する情報とをまとめる(ステップ338)。歩行者・端末同定部232は、このようにして生成された属性情報とライフタイムとを含むデータをステップ334で存在が確認された携帯電話の全てに送信するために、このデータを携帯電話のアドレスとともに情報送信部228に出力する。情報送信部228は、このデータを、送信処理部230を介して指定された携帯電話のアドレスに送信する(ステップ340)。
【0105】
《携帯電話86》
携帯電話86は以下のように動作する。
図9を参照して、位置情報取得部358は周期的に位置情報を取得し、位置情報送信部360および属性情報送信部362に与えている。
【0106】
図9および
図12を参照して、携帯電話86がエッジサーバ70と通信可能なときには、携帯電話86の受信処理部350はエッジサーバ70からその保持者の属性情報、交通支援情報、および位置送信エリア情報を受信する(
図12のステップ500でYES)。属性情報記憶部352、交通支援情報記憶部354および位置送信エリア情報記憶部356がこれら情報をそれぞれ保存する(
図12のステップ502、ステップ506、およびステップ504)。交通支援処理部368は、交通支援情報記憶部354に記憶された交通支援情報を用い、携帯電話86の保持者の操作に応じて交通支援のための処理を行う。
【0107】
ステップ502、504および506の後、ステップ580の判定が行われる。携帯電話86を持つ歩行者が位置送信エリア内にいれば(ステップ580でYES)、ステップ508が実行される。すなわち、歩行者の位置情報および属性情報が周囲の車両に送信される。歩行者が位置送信エリアにいなければ(ステップ580でNO)制御はステップ509に移る。
【0108】
ステップ580の判定が否定のとき、およびステップ508の処理が実行された後には、ステップ509の属性情報管理の処理が実行される。
図13を参照して、
図11に示すCPU450は、属性情報管理処理の最初に、メモリ404内の作業領域を初期化する(ステップ550)。CPU450は、メモリ404内に保存されていた属性情報ファイルを読出す(ステップ552)。CPU450は、読出した属性情報ファイルに記載されている属性ごとに、処理556を実行する。
【0109】
処理556ではCPU450は、位置情報取得部358の出力する現在時刻と、処理対象の属性の生成時刻とそのライフタイムとを加算した値とを比較する(ステップ570)。前者が後者より大きければ(ステップ570においてYES)何もしない。すなわちその属性については作業領域には転記されない。一方、前者が後者以前であればCPU450はその属性情報を作業領域に転記する。
【0110】
こうして、全ての属性についてステップ554が完了した後、処理558で作業領域の情報を用いて属性情報ファイルを更新する。この処理によって、属性情報ファイルに記載されている属性情報のうち、生成されてからライフタイムが経過した属性情報については削除され、それ以外の属性情報のみが属性情報ファイルに残る。ライフタイムは、変化するために必要な期間の長さと正の相関を持つように定められている。したがって、例えば大人と子供のように変化するために必要な期間が長い属性については短期間でその値が変わることがない。一方、体の向き、顔の向きのように常に変化する可能性がある属性については短期間でその値が更新される。
【0111】
ステップ509が終了すると、ステップ510でサーバにこの携帯電話の位置情報を送信するタイミングとなったか否かを判定する。判定がYESなら携帯電話はその位置情報をエッジサーバ70に送信する。携帯電話の位置によってはこの送信がエッジサーバ70によって受信されるか否かは分からないが、受信が確認できない場合でも携帯電話はそれ以上なにもしない。ステップ510の判定が否定なら携帯電話は何もしない。いずれの場合も制御はステップ500に戻る。
【0112】
より具体的に
図2を参照してこの実施の形態のシステムの動作について説明する。携帯電話86を持つ歩行者が歩行者84の位置にいる場合、携帯電話86はその位置情報をエッジサーバ70に送信する。エッジサーバ70には、インフラセンサ設備装置80、路側カメラ82、および車両90の車両センサ等からのセンサデータも送信される。エッジサーバ70はこれら情報を解析し
図1に示す交通状況俯瞰マップ52を生成・管理する。エッジサーバ70は各車両に対して交通状況俯瞰マップ52から得られた交通支援情報を送信する。
【0113】
エッジサーバ70はまた、携帯電話86を保持している歩行者として歩行者84を同定することを試みる。携帯電話86を保持する歩行者としてエッジサーバ70が歩行者84を同定できた場合には、エッジサーバ70は歩行者84の属性情報とそのライフタイム設定値、および位置送信エリア情報を携帯電話86に送信する。そうでない場合には、エッジサーバ70は携帯電話86に対してこれら情報を送信しない。携帯電話86およびエッジサーバ70は、互いの間の通信が可能である間、この処理を繰返す。
【0114】
歩行者84が、歩行者88の位置に移動したものとする。この領域が位置送信エリアとして位置送信エリア情報記憶部236に予め登録されていた場合、またはこの領域では携帯電話86がエッジサーバ70と通信できない場合には、携帯電話86はエッジサーバ70から予め受信し格納していた歩行者88の属性情報とその位置情報(位置・属性情報)を周囲の車両に送信する。周囲の車両はこの位置・属性情報を受信して歩行者の位置および属性を知ることができる。その結果、各車両はその情報を運転支援に利用できる。この間、携帯電話86から送信される属性情報のうち、ライフタイム設定値が長い属性情報について、携帯電話86は継続して周囲に送信する。しかしライフタイム設定値が短い属性情報については、携帯電話86はごく短期間だけ送信しライフタイム設定値が経過するとその送信を止める。エッジサーバ70との通信が可能になれば携帯電話86は位置・属性情報の外部への送信を止める。
【0115】
この結果、周囲の車両は、歩行者88の属性として変化しにくいものについては受信し続け、短い時間で変化するものは短い時間だけ受信してそれ以後は受信しない。ただし、エッジサーバ70と携帯電話86との通信が可能である場合には、位置・属性情報は常に新しい値に更新される。そのため、無駄な情報が送信されることはなく、また各車両には適切な情報のみが送信される。
【0116】
以上のようにこの開示によれば、歩行者が保持する携帯電話がエッジサーバ等の交通支援サーバと通信可能な位置にあるときに、交通支援サーバはその携帯電話の歩行者の同定を試みる。歩行者の同定ができれば、交通支援サーバはその携帯電話に対し、様々なセンサデータに基づいて推定したその歩行者の属性とそのライフタイムとを送信する。あわせて交通支援サーバは、位置送信エリア情報もその携帯電話に送信する。
【0117】
携帯電話を持つ歩行者が位置送信エリアに入った場合、またはその歩行者がいる領域では携帯電話とエッジサーバ70との通信ができない場合には、携帯電話はその歩行者に関する位置・属性情報を周囲の車両に送信する。周囲の車両はその歩行者の位置を確認し、その属性を知ることができる。その結果、交通支援サーバによる交通支援が受けられなかったり、不完全なサービスしか受けられなかったりする場合でも、歩行者を保護できるという効果がある。なお、歩行者がいる領域で携帯電話とエッジサーバ70との通信が可能な場合でも、その領域が位置送信エリア内であったり、歩行者が携帯電話に特に指示したりした場合には、携帯電話から周囲にその歩行者に関する位置・属性情報を送信するような形態も可能である。
【0118】
<第2の実施の形態>
〈構成〉
上記第1の実施の形態に係る交通支援システムでは、
図12に示すように、エッジサーバ70と携帯電話86との通信ができなくなったとき(ステップ500でNO)、および携帯電話86(および携帯電話86を保持している歩行者)が位置送信エリア内に入ったときに、携帯電話86が歩行者の位置・属性情報を周囲の車両に送信する。しかしこの開示はそのような実施の形態には限定されない。例えば、エッジサーバ70と携帯電話86との通信ができなくなったときのみ、携帯電話86が歩行者に関する情報を周囲に送信するようにしてもよい。この第2の実施の形態に係る交通支援システムはそうしたシステムである。
【0119】
この第2の実施の形態におけるエッジサーバの構成は、
図4のエッジサーバ70から位置送信エリア情報記憶部236を除いたものとなる。歩行者・端末同定部232は、位置送信エリア情報を携帯電話86に送信することはない。それ以外の点ではこの実施の形態に係るエッジサーバは
図4のエッジサーバ70と同じである。
【0120】
一方、この実施の形態に係る携帯電話は、
図9に示す携帯電話86において位置送信エリア情報記憶部356を除いたものとなる。またこの携帯電話が実行するプログラムの制御構造は、
図14に示すものとなる。それ以外の点ではこの携帯電話は
図9に示す携帯電話86と同一である。
【0121】
図14を参照して、この実施の形態に係る携帯電話の実行するプログラムが
図12に示すものと異なるのは、
図12に示すステップ504およびステップ580を持たない点である。それ以外の点でこのプログラムは
図12に示すものと同一である。
【0122】
〈動作〉
この実施の形態では、エッジサーバと携帯電話とが通信可能なときには、エッジサーバから携帯電話にはその携帯電話を保持している歩行者の同定を試みる。エッジサーバが歩行者を同定できれば、エッジサーバはその携帯電話にその歩行者の属性情報をライフタイム設定値とともに送信する。第1の実施の形態とは異なり、エッジサーバには位置送信エリア情報は保存されていない。エッジサーバが位置送信エリア情報を携帯電話に送信することもない。
【0123】
携帯電話がエッジサーバと通信可能な位置にあり、エッジサーバがその携帯電話を保持している歩行者の同定ができたものとする。すると携帯電話はエッジサーバからその歩行者の属性情報とライフタイム設定値とを受信する(
図14のステップ500→502)。携帯電話がエッジサーバから位置送信エリア情報を受信することはなく、仮に受信してもこの携帯電話はその情報に対しては何もしない。
【0124】
携帯電話がエッジサーバと通信できなくなると、
図14のステップ500の判定が否定となり、制御はステップ508に進む。ステップ508では携帯電話はステップ502で受信した属性情報およびライフタイム情報と、
図9の位置情報取得部358から得た位置情報とを含む位置・属性情報を周囲の車両に送信する。
【0125】
この後、ステップ509以下の処理が実行されるのは第1の実施の形態と同様である。
【0126】
この第2の実施の形態では、携帯電話がその保持者の位置・属性情報を周囲に送信する領域を予め指定できない。しかし、携帯電話がエッジサーバと通信できなくなったときに、同様の処理を実行する。したがって、エッジサーバ70と通信できない領域では第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。位置送信エリア情報を指定する必要がなく、それを記憶するための記憶領域を準備する必要もない。したがって、第1の実施の形態と比較して容易に導入できるという効果がある。
【0127】
<第3の実施の形態>
〈構成〉
第1の実施の形態では、携帯電話86がエッジサーバ70と通信できなくなったとき、および携帯電話86が位置送信エリア内に入ったときに携帯電話86を保持する歩行者の位置・属性情報を周囲に送信する。第2の実施の形態では、携帯電話がエッジサーバと通信できなくなったときのみ、携帯電話を保持する歩行者の位置・属性情報を周囲に送信する。しかしこの開示はそのような実施の形態には限定されない。この第3の実施の形態に係るシステムは、携帯電話がエッジサーバと通信できなくなったとき、および携帯電話が周囲の車両等から属性情報と位置情報との送信要求を受けたときに、歩行者の位置・属性情報を周囲の車両に送信する。
【0128】
この実施の形態に係るエッジサーバの構成は第1の実施の形態におけるものと同一である。一方、携帯電話の機能的構成を
図15に、この携帯電話が実行するプログラムの制御構造を
図16に、それぞれ示す。
【0129】
図15を参照して、この携帯電話600が
図9に示す第1の実施の形態の携帯電話86と異なるのは、属性情報送信部362に替えて、受信処理部350が周囲の車両から属性情報の送信要求を受けたことに応答して、属性情報記憶部352に記憶されている属性情報と位置情報取得部358により取得した位置とを含む位置・属性情報を周囲の車両に送信する属性情報送信部610を含む点である。なお属性情報送信部610は、
図9に示す属性情報送信部362と同様、エッジサーバと通信ができなくなったときに位置・属性情報を周囲の車両に送信する機能、および位置情報取得部358が取得した位置情報と位置送信エリア情報記憶部356に記憶された位置送信エリア情報とを比較して、携帯電話600の位置が位置送信エリア情報により特定される領域内にあるときに、位置・属性情報を周囲に送信する機能も持つ。
【0130】
この第3の実施の形態に係る携帯電話600のハードウェア構成は、
図11に示すものと同一である。
【0131】
図16に、この第3の実施の形態に係る携帯電話600のコントローラが実行するプログラムの制御構造をフローチャート形式で示す。
図16を参照して、このプログラムが
図12に示す第1の実施の形態のものと異なるのは、ステップ500の前に、所定時間内に外部から何らかの通信を受信したか否かを判定し、受信したときには制御をステップ500に移し、そうでないときには制御をステップ508に移すステップ630を含む点、および、ステップ500の判定が否定のとき(ステップ630で受信した通信がエッジサーバからの通信でないと判定されたとき)に、ステップ630で受信した通信が外部の車両からの位置・属性情報の送信要求か否かを判定し、判定が肯定のときには制御をステップ508に移し、判定が否定のときには制御をステップ509に移すステップ632とを含む点である。その他の点では
図16に示すフローチャートは
図12に示すものと同一である。
【0132】
〈動作〉
この実施の形態に係るエッジサーバは、第1の実施の形態に係るエッジサーバ70と同様に動作する。
【0133】
この実施の形態に係る携帯電話は、第1の実施の形態に係る携帯電話86と同様の動作をするのに加え、以下のような動作をする。すなわち、外部の車両から位置・属性情報の送信要求を受信すると(
図16のステップ630でYES、ステップ500でNO、ステップ632でYES)、
図15の属性情報記憶部352に記憶されている属性情報と位置情報取得部358がステップ508の実行時に取得した携帯電話600の位置座標とを含む位置・属性情報を周囲の車両に送信する。
【0134】
この結果、この実施の形態に係る携帯電話600では、携帯電話600がエッジサーバと通信ができなくなったとき、位置送信エリア内に携帯電話600が存在するとき、および周囲の車両から位置情報の送信要求があったとき、のいずれの場合にも周囲に携帯電話600を保持する歩行者の位置・属性情報を送信することになる。
【0135】
以上のようにこの実施の形態によれば、携帯電話600を保持する歩行者が、携帯電話600とエッジサーバとの通信ができない領域に入ったときに、携帯電話600は自動的に周囲に携帯電話600の位置と携帯電話600を持つ歩行者の属性情報とを含む位置・属性情報を周囲に送信する。したがって、エッジサーバによる交通支援が受けられない領域でも歩行者の周囲の車両に対する運転支援が行える。なお、前述したとおり、携帯電話600とエッジサーバとの通信が可能な領域でも、携帯電話から周囲にその歩行者に関して記憶した位置・属性情報を送信するような形態も可能である。
【0136】
携帯電話600を保持する歩行者が、位置送信エリア内に進入したときにも、携帯電話600は自動的に周囲に携帯電話600の位置と携帯電話600を持つ歩行者の属性情報とを含む位置・属性情報を周囲に送信する。したがって、交通量が多い交差点、歩行者に関連する交通事故の多発する地点等を位置送信エリアとして予め携帯電話600に登録しておくことで、エッジサーバとの通信ができない領域以外に、そうした地点でも歩行者を保護するための運転支援を周囲の車両に対して行える。
【0137】
車両が周囲の歩行者に対してその位置・属性情報の送信要求を送った場合、携帯電話600は、その送信要求に応答して、携帯電話600の位置座標と、携帯電話600を保持する歩行者の属性情報とを含む位置・属性情報を周囲に送信する。その結果、エッジサーバとの通信ができない領域および予め位置送信エリアとして登録されている領域以外でも歩行者を保護するための運転支援を周囲の車両に対して行える。
【0138】
上記実施の形態では、エッジサーバ70との送信ができないときに携帯電話から位置情報を周囲に送信している。しかしこの開示はそうした実施の形態には限定されない。上記3つの実施の形態において携帯電話の機能として説明した機能の任意の組合せを携帯電話に組込んでもよい。
【0139】
[コンピュータによる実現]
図6および
図7に示したとおり、上記実施の形態において使用されるエッジサーバはいずれもコンピュータハードウェアとその周辺機器およびその上で実行されるプログラムにより実現できる。また
図10および
図11に示したとおり、上記実施の形態において使用される携帯電話はいずれも、コンピュータハードウェアとその周辺機器および周辺モジュール、およびそのコンピュータハードウェア上で実行されるプログラムにより実現できる。
【0140】
コンピュータ240を上記した各実施の形態に係るエッジサーバの各機能部として機能させるためのコンピュータプログラムは、DVDドライブ250に装着されるDVD252、または半導体メモリポート274に装着される半導体メモリ256に記憶されて流通し、これらからさらにハードディスクドライブ270に転送される。または、プログラムはネットワーク254およびネットワークI/F272を通じてコンピュータ240に送信されハードディスクドライブ270に記憶されてもよい。プログラムは実行の際にRAM268にロードされる。DVD252から、またはネットワーク254およびネットワークI/F272を介して、直接にRAM268にプログラムをロードしてもよい。なおROM266にはコンピュータ240を起動するためのプログラムを記憶している。RAM268およびハードディスクドライブ270は、センサデータ、解析結果、車両情報等のデータを記憶するために使用される。GPU264は、数値計算等を並列で高速に実行するためのものである。多数のセンサからのセンサデータを解析する際などに使用される。モニタ242、キーボード246およびマウス248は、エッジサーバの管理者がエッジサーバを操作する際に使用する。
【0141】
このプログラムは、コンピュータ240を、上記各実施の形態に係るエッジサーバおよびその各機能部として機能させるための複数個の命令を含む命令列を含む。コンピュータ240にこの動作を行わせるのに必要な基本的機能のいくつかはコンピュータ240上で動作するオペレーティングシステムもしくはサードパーティのプログラムまたはコンピュータ240にインストールされる、ダイナミックリンク可能な各種プログラミングツールキットまたはプログラムライブラリにより提供される。したがって、このプログラム自体はこの実施の形態のシステム、装置および方法を実現するのに必要な機能全てを必ずしも含まなくてよい。このプログラムは、命令のうち、所望の結果が得られるように制御されたやり方で適切な機能またはプログラミングツールキットまたはプログラムライブラリ内の適切なプログラムを実行時に動的に呼出すことにより、上記したシステム、装置または方法としての機能を実現する命令のみを含んでいればよい。もちろん、プログラムのみで必要な機能を全て提供してもよい。
【0142】
同様に、
図11に示すコントローラ400を上記した各実施の形態に係る携帯電話の各機能部として機能させるためのコンピュータプログラムは、この実施の形態では、RF・ベースバンド回路416または無線通信モジュール418による無線通信で外部ネットワークからコントローラ400に送信され、メモリコントローラ454を介してメモリ404に格納される。携帯電話がメモリカードの処理モジュールを持っていれば、そのメモリカードからプログラムをメモリ404に転送できる。メモリ404に格納されたプログラムは実行の際にCPU450により読出され、解釈され、実行される。実行結果は、プログラムにより定まるアドレスに転送される。データはこのアドレスにより指定されるメモリに格納され、または所定のモジュールに転送され処理される。プログラムをメモリカード等から直接実行しても良い。
【0143】
このプログラムは、コントローラ400を、上記各実施の形態に係る携帯電話およびその各機能部として機能させるための複数個の命令を含む命令列を含む。コントローラ400にこの動作を行わせるのに必要な基本的機能のいくつかはコントローラ400上で動作するオペレーティングシステムもしくはサードパーティのプログラムまたはコントローラ400にインストールされる、ダイナミックリンク可能な各種プログラミングツールキットまたはプログラムライブラリにより提供される。したがって、このプログラム自体はこの実施の形態のシステム、装置および方法を実現するのに必要な機能全てを必ずしも含まなくてよい。このプログラムは、命令のうち、所望の結果が得られるように制御されたやり方で適切な機能またはプログラミングツールキットまたはプログラムライブラリ内の適切なプログラムを実行時に動的に呼出すことにより、上記したシステム、装置または方法としての機能を実現する命令のみを含んでいればよい。もちろん、プログラムのみで必要な機能を全て提供してもよい。
【0144】
図7に示すコンピュータ240および
図11に示すコントローラ400およびそれらの周辺機器の動作は周知であるか、またはこの開示とは特に関係がない。したがって、それらについての詳細な構成およびその動作についてはこの明細書ではこれ以上は説明しない。
【0145】
今回開示された実施の形態は単に例示であって、この開示が上記した実施の形態のみに制限されるわけではない。この開示の範囲は、開示の詳細な説明の記載を参酌した上で、特許請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味および範囲内での全ての変更を含む。
【符号の説明】
【0146】
50 実空間
52 交通状況俯瞰マップ
70 エッジサーバ
72 基地局
80 インフラセンサ設備装置
82 路側カメラ
84、88 歩行者
86、600 携帯電話
90 車両
100、102、104、106 移動範囲
210、350 受信処理部
212 動体追跡部
214、218、226 解析結果記憶部
216 属性検出部
220 車両・端末追跡部
222 車両・端末情報記憶部
224 統合処理部
228、364 情報送信部
230、366 送信処理部
232 歩行者・端末同定部
234 ライフタイムテーブル記憶部
236、356 位置送信エリア情報記憶部
240 コンピュータ
242、410 モニタ
246 キーボード
248 マウス
250 DVDドライブ
252 DVD
254 ネットワーク
256 半導体メモリ
260、450 CPU
262、452 バス
264 GPU
266 ROM
268 RAM
270 ハードディスクドライブ
272 ネットワークI/F
274 半導体メモリポート
310、312、314、316、330、332、334、336、338、340、500、502、504、506、508、509、510、512、550、552、554、570、572、580、630、632 ステップ
318、556、558 処理
352 属性情報記憶部
354 交通支援情報記憶部
356 位置送信エリア情報記憶部
358 位置情報取得部
360 位置情報送信部
362、610 属性情報送信部
368 交通支援処理部
400 コントローラ
402 GPSモジュール
404 メモリ
406 電源回路
408 オーディオ回路
409 カメラ
412 タッチパネル
414 各種センサ
416 RF・ベースバンド回路
418 無線通信モジュール
454 メモリコントローラ
456 電源管理回路
458 システム管理回路
460 メディア処理回路
462 表示コントローラ
464 入出力I/F