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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20231108BHJP
   H01M 8/04014 20160101ALI20231108BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20231108BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/04 J
H01M8/04 Z
H01M8/04014
H01M8/12 101
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019085840
(22)【出願日】2019-04-26
(65)【公開番号】P2020181774
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 孝忠
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ライシッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ベアント ライター
(72)【発明者】
【氏名】ヨルグ マテ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス クラウス
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン プラニッツァー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンセント ローラー
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン レヒバーガー
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-027890(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102008009063(DE,A1)
【文献】特開2008-277280(JP,A)
【文献】特表2008-535766(JP,A)
【文献】特開2006-056722(JP,A)
【文献】特開2014-005168(JP,A)
【文献】特開2009-140695(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0009221(US,A1)
【文献】特開2003-282113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04 - 8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
前記燃料電池のオフガスラインに備わる燃焼器と、
前記燃料電池のカソード供給ラインに、前記燃焼器で生じさせた燃焼ガスを高温流体として動作可能に構成されたカソード側熱交換器と、
前記燃料電池のアノード供給ラインに、前記燃焼ガスを高温流体として動作可能に構成されたアノード側熱交換器と、
前記燃焼器と前記カソード側およびアノード側の各熱交換器とを接続し、前記燃焼ガスを前記カソード側熱交換器と前記アノード側熱交換器とのそれぞれに案内する燃焼ガス通路であって、前記燃焼器から延びる集合部と、前記集合部を流れる前記燃焼ガスを各熱交換器に向けて分岐させる分岐部と、を有する燃焼ガス通路と、
前記燃焼ガスの流れに関して前記分岐部よりも上流側に設けられ、前記分岐部に向かう前記燃焼ガスの温度性状の均質化を促す、前記燃焼ガスの均質化装置と、
を備え
前記均質化装置が、前記燃焼ガスの流れの乱れを増長させる装置として構成され、
前記均質化装置が、その上流側および下流側について夫々定められる前記流れの流路中心線を互いに交差せずかつ非平行な状態にずらす、前記燃焼ガス通路のオフセット部を有する、
燃料電池システム。
【請求項2】
燃料電池と、
前記燃料電池のオフガスラインに備わる燃焼器と、
前記燃料電池のカソード供給ラインに、前記燃焼器で生じさせた燃焼ガスを高温流体として動作可能に構成されたカソード側熱交換器と、
前記燃料電池のアノード供給ラインに、前記燃焼ガスを高温流体として動作可能に構成されたアノード側熱交換器と、
前記燃焼器と前記カソード側およびアノード側の各熱交換器とを接続し、前記燃焼ガスを前記カソード側熱交換器と前記アノード側熱交換器とのそれぞれに案内する燃焼ガス通路であって、前記燃焼器から延びる集合部と、前記集合部を流れる前記燃焼ガスを各熱交換器に向けて分岐させる分岐部と、を有する燃焼ガス通路と、
前記燃焼ガスの流れに関して前記分岐部よりも上流側に設けられ、前記分岐部に向かう前記燃焼ガスの温度性状の均質化を促す、前記燃焼ガスの均質化装置と、
を備え、
前記均質化装置が、前記燃焼ガスの流れに旋回を生じさせる装置として構成される、
料電池システム。
【請求項3】
前記カソード側熱交換器と前記アノード側熱交換器とが、前記燃焼器に対して水平方向に配置された、
請求項1~のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記燃焼器、前記カソード側熱交換器および前記アノード側熱交換器が、前記燃料電池に対して水平方向に配置された、
請求項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記燃焼器が、燃焼促進触媒が担持された燃焼部を有し、
前記均質化装置が、前記燃焼ガスの流れに関して前記燃焼部よりも下流側に設けられた、
請求項1~のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池のオフガスラインに燃焼器が備わる燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃料電池のオフガスラインに燃焼器が備わる燃料電池システムに関し、カソード供給ラインとアノード供給ラインとに熱交換器を夫々設置し、燃焼器で生じさせた燃焼ガスをこれらの熱交換器に導入する燃焼ガス通路を、互いに並列に形成することが開示されている。特許文献1において、カソード側の熱交換器は、空気を予熱する手段として構成され、アノード側の熱交換器は、燃料を予熱しおよび改質する手段として構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-277280号公報(段落0009および0042、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃焼器の出口における燃焼ガスは、温度性状が一様でなく、例えば、温度にムラがある。特許文献1に記載の技術によると、燃焼器からカソード側およびアノード側の各熱交換器までの燃焼ガスの経路に構成上の制約があり、例えば、長さが制限されることから、燃焼器を出た燃焼ガスを各熱交換器に向けて分岐させるまでに充分に撹拌し、温度分布を解消することが困難である。これにより、温度分布が残存したままの状態で燃焼ガスを分岐させることとなり、カソード側とアノード側とで熱交換により回収される熱量に偏りが生じる。そして、これがシステム全体での動作効率に影響を及ぼすことが懸念される。
【0005】
本発明は、以上の問題を考慮し、熱交換器に供給される燃焼ガスの温度性状の均質化を図り、システム全体としてより高い動作効率を実現可能な燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態では、燃料電池と、燃料電池のオフガスラインに備わる燃焼器と、燃料電池のカソード供給ラインに、燃焼器で生じさせた燃焼ガスを高温流体として動作可能に構成されたカソード側熱交換器と、燃料電池のアノード供給ラインに、燃焼ガスを高温流体として動作可能に構成されたアノード側熱交換器と、燃焼器とカソード側およびアノード側の各熱交換器とを接続し、燃焼ガスをカソード側熱交換器とアノード側熱交換器とのそれぞれに案内する燃焼ガス通路であって、燃焼器から延びる集合部と、集合部を流れる燃焼ガスを各熱交換器に向けて分岐させる分岐部と、を有する燃焼ガス通路と、燃焼ガスの流れに関して分岐部よりも上流側に設けられ、分岐部に向かう燃焼ガスの温度性状の均質化を促す、燃焼ガスの均質化装置と、を備える燃料電池システムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、分岐部を介してカソード側熱交換器およびアノード側熱交換器のそれぞれに向かう燃焼ガスの温度性状の均質化を促し、構成上の制約によらず、各熱交換器に対する性状分布が抑制された燃焼ガスの供給を可能として、カソード側とアノード側とで熱交換により回収される熱量に偏りが生じるのを抑え、システム全体での動作効率の向上を図ることができる。他方で、燃焼ガスの性状分布の均質化を促進可能なことで、燃焼ガス通路の短縮を図ることが可能となり、レイアウトの簡素化を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る燃料電池システムの基本的な構成を示す概略図である。
図2図2は、同上実施形態に係る燃料電池システムの均質化装置の一例を示す概略図である。
図3図3は、同上実施形態に係る燃料電池システムの均質化装置の他の例を示す概略図である。
図4図4は、同上実施形態に係る燃料電池システムの均質化装置の更に別の例を示す概略図である。
図5図5は、同上実施形態に係る燃料電池システムの均質化装置の更に別の例を示す概略図である。
図6図6は、同上実施形態に係る燃料電池システムの均質化装置の更に別の例を示す概略図である。
図7図7は、同上実施形態に係る燃料電池システムの均質化装置の更に別の例を示す概略図である。
図8図8は、同上実施形態に係る燃料電池システムの均質化装置の更に別の例を示す概略図である。
図9図9は、同上実施形態に係る燃料電池システムの均質化装置の更に別の例を示す概略図である。
図10図10は、燃焼器、カソード側熱交換器およびアノード側熱交換器の位置関係を示す概略図である。
図11図11は、燃焼器、カソード側熱交換器およびアノード側熱交換器の、燃料電池スタックに対する相対位置を示す概略図である。
図12図12は、本発明の他の実施形態に係る燃料電池システムの基本的な構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
(燃料電池システムの全体構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る燃料電池システムS1の基本的な構成を示している。
【0011】
本実施形態に係る燃料電池システム(以下「燃料電池システム」といい、単に「システム」という場合がある)S1は、電動車両に搭載可能であり、当該車両に備わる走行用の電動モータに供給される電力を発生させる。
【0012】
燃料電池システムS1は、本実施形態に関わる主な構成要素として、燃料電池スタック1、アノード側熱交換器2、カソード側熱交換器3および燃焼器4を備える。本実施形態において、「熱交換器」とは、温度の異なる複数の流体を受容し、高温流体が有する熱量を加熱対象の流体に移動可能に構成された熱機器全般をいうものとする。この意味で、「熱交換器」には、加熱対象の流体が単に暖められるだけでその化学的な変化が伴わない、いわゆる熱交換式の加熱器のほか、加熱対象の流体に化学的な変化が生じ、加熱後の流体が流入時とは異なる組成の流体として流出する場合のものが含まれる。
【0013】
燃料電池スタック(以下、単に「スタック」という場合がある)1は、複数の燃料電池または燃料電池単位セルを積層して構成され、発電源である個々の燃料電池は、例えば、固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。燃料電池システムS1は、アノードガス供給ライン11およびカソードガス供給ライン12を備え、燃料電池スタック1は、アノードガス供給ライン11を介して燃料ガスの供給を受け、カソードガス供給ライン12を介して酸化剤ガスの供給を受ける。本実施形態において、燃料ガスは、水素であり、酸化剤ガスは、酸素である。固体酸化物形燃料電池のアノード極およびカソード極での発電に係る反応は、次式により表すことができる。
アノード極: 2H2+4O2- → 2H2O+4e- …(1.1)
カソード極: O2+4e- → 2O2- …(1.2)
【0014】
発電反応後のオフガスは、燃料電池スタック1からオフガス排出ラインに排出される。図1は、アノード側およびカソード側のオフガス排出ラインのうち、アノード側の排出ライン(アノードオフガス排出ライン)13のみを、燃料電池スタック1から延びる状態で示している。カソードオフガスについても排出ライン(カソードオフガス排出ライン)が設けられ、これが燃料電池スタック1から延びる状態にあることは、言うまでもない。
【0015】
アノード側熱交換器2は、アノードガス供給ライン11に介装され、後に述べる燃焼器4で生じさせた燃焼ガスが導入されて、これを高温流体として動作する。本実施形態において、アノード側熱交換器2は、燃料ガスの供給を受け、燃料ガスを燃焼ガスとの熱交換により燃料電池スタック1への供給前に加熱する。この意味で、本実施形態に係るアノード側熱交換機2は、燃料予熱器と呼ぶこともできる。燃料ガスは、原燃料を燃料ガスに転換する改質器を備える場合に、原燃料の改質により取得することが可能であり、図示しない燃料ガスタンクを備える場合は、このタンクから供給することが可能である。
【0016】
カソード側熱交換器3は、カソードガス供給ライン12に介装され、燃焼器4で生じさせた燃焼ガスが導入されて、これを高温流体として動作する。カソード側熱交換器3は、酸化剤ガスの供給を受け、酸化剤ガスを燃焼ガスとの熱交換により燃料電池スタック1への供給前に加熱する。大気中の空気を図示しないエアコンプレッサによりカソードガス供給ライン12に取り込み、カソード側熱交換器3を介して燃料電池スタック1に供給することで、発電反応に用いられる酸素をカソード極に供給することが可能である。本実施形態に係るカソード側熱交換器3は、空気予熱器と呼ぶことができる。
【0017】
燃焼器4は、アノードオフガス排出ライン13に接続され、暖機後の通常システム運転時において、燃料電池スタック1から排出されるアノードオフガスを受容し、このオフガス中の残燃料(つまり、残水素)を燃焼させ、燃焼ガスを生成する(以下、燃焼器4を特に「排気燃焼器」と呼ぶ)。本実施形態において、排気燃焼器4は、燃焼促進用の触媒が担持された燃焼部を有する触媒型の燃焼器である。排気燃焼器4には、これに限らず、拡散燃焼器を採用することも可能である。さらに、本実施形態では、排気燃焼器4に燃料供給管14が接続され、排気燃焼器4に対し、燃料供給管14を介して燃焼に必要な燃料を供給する。しかし、これに限らず、このシステムS1のカソードオフガス排出ラインを排気燃焼器4に接続し、排気燃焼器4に対し、カソードオフガスを導入して、このオフガスに残る酸化剤ガス(つまり、残酸素)を供給してもよい。
【0018】
排気燃焼器4は、燃焼ガス通路15を介してアノード側熱交換器2およびカソード側熱交換器3に接続されている。排気燃焼器4で生じさせた燃焼ガスは、燃焼ガス通路15を通じてアノード側熱交換器2およびカソード側熱交換器3に夫々供給される。
【0019】
本実施形態では、排気燃焼器4からアノード側およびカソード側の各熱交換器2、3への燃焼ガスの供給は、燃焼ガス通路15を介して並列的になされる。具体的には、燃焼ガス通路15は、排気燃焼器4から延びる集合部151と、集合部151の下流側に接続し、集合部151を流れる燃焼ガスを各熱交換器2、3に向けて分岐させる分岐部152、153と、を有する。分岐部152、153は、分岐点Pdで集合部151から二股に分かれ、分岐点Pdとアノード側熱交換器2とをつなぐ第1分岐部152と、分岐点Pdとカソード側熱交換器3とをつなぐ第2分岐部153と、を有する。このような構成に基づき、燃焼ガスは、排気燃焼器4を出た後、集合部151を流れ、分岐点Pdで第1分岐部152および第2分岐部153に分かれ、第1分岐部152を介してアノード側熱交換器2に、第2分岐部153を介してカソード側熱交換器3に、夫々供給される。
【0020】
ここで、排気燃焼器4の出口における燃焼ガスは、温度性状が一様でなく、例えば、温度にムラがある。アノード側およびカソード側の各熱交換器2、3が排気燃焼器4に対して単に並列に接続されただけの比較例による燃料電池システムでは、排気燃焼器4から各熱交換器2、3までの燃焼ガスの経路に構成上の制約(例えば、設置空間が限られ、長さが制限されること)があることから、燃焼ガスを分岐点Pdに達するまでに充分に撹拌し、温度分布を解消することが困難である。これにより、温度分布が残存したままの状態で燃焼ガスを分岐させることとなり、アノード側とカソード側とで熱交換により回収される熱量に偏りが生じ、システムS1全体での動作効率に影響を及ぼす懸念がある。
【0021】
そこで、本実施形態では、アノード側熱交換器2およびカソード側熱交換器3のそれぞれに供給される燃焼ガスについて、その温度性状の積極的な均質化を図り、システムS1全体としてより高い動作効率を実現可能とする。
【0022】
具体的には、燃焼ガス通路15の集合部151に、燃焼ガスの温度性状の均質化を促す手段(均質化装置)5を設置し、燃焼ガスの性状分布、特に温度のムラを、分岐点Pdに達するまでに解消しまたは少なくとも部分的に解消する。
【0023】
図2は、本実施形態に係る均質化装置5の概略的な構成を示している。図2(a)は、燃焼ガス通路15を鉛直方向上方からみた平面視の状態を示し、同図(b)は、燃焼ガス通路15を図1および2(a)に矢印Aで示す方向からみた側面視の状態を示している(後に述べる図3、6~9についても同様である)。
【0024】
均質化装置5は、温度性状の均質化を、燃焼ガスの生成後、物理的な作用により、具体的には、流体力学的な作用により促す手段として構成される。本実施形態では、特に燃焼ガスの流れの乱れを増長させる手段として構成され、具体的には、燃焼ガス通路15を形成する導管の曲げ部51により具現される。排気燃焼器4を流出した燃焼ガス(図2~9において、その流れの方向を矢印Gcにより示す)は、曲げ部51を通過する際に乱れが増長され、性状分布の解消が図られる。曲げ部51における導管の曲率および偏向の角度は、性状分布の解消という目的から、適宜に設定することが可能である。
【0025】
図3~8は、本実施形態の変形例に係る均質化装置5を示している。図3~8に示す均質化装置5は、図2に示すのと同様に、いずれも燃焼ガスの流れの乱れを増長させる手段として構成される。
【0026】
図3は、第1変形例に係る均質化装置5の概略的な構成を示している。
【0027】
第1変形例では、均質化装置5は、燃焼ガス通路15を形成する導管に形成された、複数の曲げ部52a~52cにより具現される。第1変形例では、均質化装置5が3つの曲げ部52a~52cにより具現される場合について示すが、均質化装置5が有することのできる曲げ部の数は、3つに限らず、適宜に設定することが可能である。排気燃焼器4を流出した燃焼ガスGcは、曲げ部52a~52cを通過する際に乱れが増長され、性状分布の解消が図られる。
【0028】
図4は、第2変形例に係る均質化装置5の概略的な構成を、燃焼ガス通路15を鉛直方向上方からみた平面視の状態で示している。
【0029】
第2変形例では、均質化装置5は、燃焼ガスの流れの流路断面積を拡大または縮小させる、燃焼ガス通路15の断面変化部(拡大部53aまたは縮小部53b)により具現される。図4(a)は、燃焼ガス通路15を形成する導管に拡大部53aを設けた場合の例を示し、同図(b)は、この導管に縮小部53bを設けた場合の例を示している。排気燃焼器4を流出した燃焼ガスGcは、拡大部53aまたは縮小部53bを通過する際に乱れが増長され、性状分布の解消が図られる。
【0030】
図5は、第3変形例に係る均質化装置5の概略的な構成を、燃焼ガス通路15を鉛直方向上方からみた平面視の状態で示している。
【0031】
第3変形例では、均質化装置5は、第2変形例におけると同様に、燃焼ガス通路15の断面変化部(拡大部54aおよび縮小部54b)により具現されるが、これらの断面変化部54a、54bが対で設けられている。図5(a)は、燃焼ガスの流れに関して上流側に縮小部54bを、下流側に拡大部54aを設けた場合の例を示し、同図(b)は、燃焼ガスの流れに関して上流側に拡大部54aを、下流側に縮小部54bを設けた場合の例を示している。排気燃焼器4を流出した燃焼ガスGcは、拡大部54aおよび縮小部54bを通過する際に乱れが増長され、性状分布の解消が図られる。
【0032】
ここで、図5(a)に示す例では、拡大部54aに対し、縮小部54bを介して増速した流れが流入するので、拡大部54aの下流側で乱れがより増長される。図5(b)に示す例では、縮小部54bに対し、拡大部54aを介して乱れが促されることにより撹拌の進んだ流れが調量的に流入するので、分岐点Pdに向けて性状分布が抑えられた燃焼ガスが安定的に供給される。
【0033】
図6は、第4変形例に係る均質化装置5の概略的な構成を示している。
【0034】
図4に示す第2実施例および図5に示す第3変形例では、流れの方向が一定であるなかで流路断面積を変化させたが、第4変形例では、流れの方向を変化させる前後で流路断面積を変化させる。具体的には、均質化装置5は、燃焼ガス通路15を形成する導管に形成された曲げ部55により具現され、この曲げ部55の前後で導管の断面積が拡大されている。第4変形例では、流路断面積を拡大させる場合について示すが、これに限らず、流路断面積を縮小させてもよい。排気燃焼器4を流出した燃焼ガスGcは、曲げ部55を通過する際に、流れの方向が変わることと流路断面積が変わることとの双方による作用を受けて乱れが増長され、性状分布の解消が図られる。そして、流路断面積を拡大させた場合は、曲り部55の上流側で、曲り部55に向けて比較的速い流れが形成される。そして、この流れは、相応の勢いを伴って曲り部55に進入し、対向する内壁に衝突することから、燃焼ガスの撹拌がより促進される。
【0035】
図7は、第5変形例に係る均質化装置5の概略的な構成を示している。
【0036】
第5変形例では、均質化装置5は、第4変形例におけると同様に、燃焼ガス通路15を形成する導管に形成された曲げ部56bを有し、この曲げ部56bの前後で流路断面積を変化(具体的には、縮小)させているが、断面変化部が、曲げ部56b以外にも設けられている。つまり、第5変形例に係る均質化装置5は、断面変化部を兼ねる曲げ部56b以外に、複数の(本実施形態では、2つの)断面変化部をも有して具現されたものである。図8は、曲げ部56bで流路断面積を縮小させるとともに、燃焼ガスの流れに関してその上流側および下流側の双方に拡大部56a、56cを設けた場合の例を示している。曲げ部56bで流路断面積を拡げるか狭めるか、曲げ部56b以外の断面変化部56a、56cで流路断面積を拡げるか狭めるかは、適宜に設定することが可能である。排気燃焼器4を流出した燃焼ガスGcは、断面変化部56a~56cの作用を受けて乱れが増長されるとともに、曲げ部56bを通過する際に乱れがさらに増長され、性状分布の一層の解消が図られる。
【0037】
図8は、第6変形例に係る均質化装置5の概略的な構成を示している。
【0038】
第6実施例では、均質化装置5は、その上流側と下流側とのそれぞれについて定められる流れの流路中心線Cu、Cdを互いに交差せずかつ非平行な状態にずらす、燃焼ガス通路15のオフセット部57aにより具現される。ここで、「非平行な状態」とは、平行な状態以外のあらゆる状態をいい、垂直な状態を包含する(図8(a))。さらに、「交差せず」とは、互いに非平行な状態にある流路中心線Cu、Cd同士が同一の平面内にないことをいう(図8(b))。本実施形態では、オフセット部57aは、燃焼ガス通路15を形成する導管に形成された曲げ部57aにより形成される。具体的には、比較的内径が小さい上流側の導管と、これによりも内径が大きい下流側の導管と、が曲げ部57bで接続される。そして、上流側の導管が、下流側の導管に対して側方から、下流側の導管の径方向を定める直線上からずらして接続されることで、オフセット部が形成される。排気燃焼器4を流出した燃焼ガスGcは、上流側の導管を出て、曲げ部57aに進入する際に、周方向の速度成分が助長されることにより乱れが増長され、性状分布の更なる解消が図られる。
【0039】
図8は、上流側の導管と下流側の導管との接続点(以下、単に「導管の接続点」という)Pcを、下流側の導管に対して鉛直方向上側にオフセットさせ、燃焼ガスを下流側の導管に対してその上半分の領域から導入する場合の例を示すが、これに限らず、導管の接続点Pcを下側にオフセットさせ、燃焼ガスを下流側の導管の下半分の領域から導入することも可能である。
【0040】
図10は、本実施形態に係るアノード側熱交換器2、カソード側熱交換器3および燃焼器4の位置関係を、図1に示す矢印Aの方向からみた側方視により概略的に示し、これらの熱機器2~4に対する均質化装置5の相対的な位置を併せて示している。
【0041】
本実施形態では、アノード側熱交換器2、カソード側熱交換器3および燃焼器4が互いに水平方向Hに並べて配置され、これらの熱機器2~4に対し、均質化装置5も、総体的に等しい高さに配置されている。図10(a)は、アノード側熱交換器2、カソード側熱交換器3および燃焼器4が互いに等しい高さにあり、換言すれば、これらの熱機器2~4の鉛直方向の中心が互いに等しい高さにある場合の例を示すが、車上における実際の設置空間との関係で、中心の位置に鉛直方向のずれがあってもよい。均質化装置5は、水平方向Hにおいて、燃焼器4に対してその少なくとも一部(好ましくは、全体)が重なり合っている。
【0042】
図10(a)は、カソード側熱交換器3を中心として、その水平方向Hの各側にアノード側熱交換器2および燃焼器4が備わり、燃焼器4に対し、均質化装置5の全体が水平方向Hに重なる場合の例を示している。しかし、熱機器2~4および均質化装置5の位置関係は、これに限らず、図10(b)に示すように、燃焼器4を中心に置き、アノード側熱交換器2およびカソード側熱交換器3をその両側に配置したり、同図(c)に示すように、燃焼器4を中心とするだけでなく、燃焼器4を両側の熱交換器2、3に対して相対的に上方または下方にオフセットさせて配置したりすることも可能である。均質化装置5は、そのような場合であっても燃焼器4に対して少なくとも一部で重なり合うとよく、図10(b)に示す例では全体が、同図(c)に示す例ではその一部が、燃焼器4に対して水平方向Hに重なり合っている。均質化装置5の一部が重なる例は、例えば、図3に示す実施形態により具現可能である。
【0043】
図11は、本実施形態に係るアノード側熱交換器2、カソード側熱交換器3および燃焼器4の、燃料電池スタック1に対する相対位置を、図1に示す矢印Bの方向からみた側方視により概略的に示している。
【0044】
本実施形態では、アノード側熱交換器2、カソード側熱交換器3および燃焼器4が、燃料電池スタック1に対して水平方向Hに並べられ、総体的に等しい高さに配置されている。図11は、アノード側熱交換器2、カソード側熱交換器3および燃焼器4が燃料電池スタック1に対して等しい高さにあり、換言すれば、これらの熱機器2~4の鉛直方向の中心と燃料電池スタック1の鉛直方向の中心とが等しい高さにある場合の例を示すが、車上における実際の設置空間との関係で、中心の位置に鉛直方向のずれがあってもよい。
【0045】
均質化装置5と燃料電池スタック1との位置関係は、図10に関する説明から理解することが可能である。
【0046】
(作用効果の説明)
本実施形態に係る燃料電池システムS1は、以上のように構成され、本実施形態により得られる作用および効果について、以下に説明する。
【0047】
第1に、均質化装置5により、燃焼ガス通路15の分岐部152、153を介してアノード側熱交換器2およびカソード側熱交換器3に向かう燃焼ガスの温度性状の均質化を促し、各熱交換器2、3に対し、レイアウト等、構成上の制約によらず、性状分布が抑制された燃焼ガスの供給を可能として、カソード側とアノード側とで熱交換により回収される熱量に偏りが生じるのを抑え、システムS1全体での動作効率の向上を図ることができる。
【0048】
他方で、温度性状の均質化を積極的に促進可能なことで、燃焼ガス通路15の短縮を図り、レイアウトの簡素化を促すことができる。
【0049】
第2に、均質化装置5を、燃焼ガスの流れの乱れを増長させる手段として構成したことで、温度性状の均質化を確実に促し、動作効率のより確実な向上を図ることができる。
【0050】
第3に、均質化装置5として、燃料ガス通路15の曲げ部51、52a~52cを設けたことで、均質化の促進を容易に実現することが可能である。
【0051】
第4に、均質化装置5として、燃焼ガス通路15の拡大部53a、54aまたは縮小部53b、54bを設けたことで、燃焼ガス通路15の直線部で均質化の促進を行うことが可能である。
【0052】
第5に、均質化装置5として、燃焼ガス通路15のオフセット部57aを設けたことで、流路の断面全体に亘って撹拌を生じさせ、均質化をより適切に促すことが可能である。
【0053】
第6に、アノード側熱交換器2、カソード側熱交換器3および排気燃焼器4を互いに水平方向Hに並べて配置したことで、高さに制約がある設置空間を有効に利用して、これらの熱機器2~4を効率的に設置することが可能である。
【0054】
さらに、アノード側熱交換器2、カソード側熱交換器3および燃焼器4を、燃料電池スタック1に対して水平方向Hに並べて配置したことで、高さに制約がある設置空間において、燃料電池システムS1を構成する各要素を効率的に設置することが可能である。
【0055】
そして、本実施形態によれば、設置空間の制約から燃焼ガス通路15の長さを均質性確保の観点から充分に確保することが困難な場合であっても均質化装置5により燃焼ガスを撹拌させ、温度性状の均質化を促すことができるので、設置空間の制約を克服しながら、動作効率の向上を図ることが可能である。
【0056】
以上の説明では、流路の形状(具体的には、流れの方向および流路断面積)を変更することにより「流れの乱れを増長させる」場合について説明した。流れの乱れは、これに限らず、流路の形状が一定であっても渦流発生器を設置することなどにより増長させることが可能である。この意味で、「流れの乱れを増長させる」ことには、既に存在する乱れを大きくする場合に限らず、新たな乱れを生じさせる場合が含まれる。
【0057】
さらに、以上の説明では、燃焼ガスの流れの乱れを増長させることで、温度性状の均質化を促す場合について説明した。温度性状の均質化は、これに限らず、燃焼ガスの流れに旋回を生じさせることによっても促すことが可能である。図9は、燃焼ガス通路15にスワラまたは静的ミキサ58a、58bを設置する場合の例を示している。均質化装置5は、スワラまたは静的ミキサ58a、58bにより具現される。スワラまたは静的ミキサ58a、58bにより、流路の断面全体に亘って燃焼ガスの流れに周方向の速度成分が付与される。このように、旋回を生じさせる手段によっても性状分布の解消を通じて熱回収量に偏りが生じるのを抑え、動作効率の向上を図ることが可能である。
【0058】
図9に示す例では、流れの方向に2段のスワラ58a、58bが設けられているが、スワラまたは静的ミキサ58a、58bの段数は、これに限らず、求められる燃焼ガスの均質性に応じて適宜に設定することが可能である。
【0059】
図12は、本発明の他の実施形態に係る燃料電池システムS2の基本的な構成を示している。
【0060】
本実施形態に係る燃料電池システムS2も、電動車両に搭載して、当該車両に備わる走行用の電動モータに供給される電力を発生可能であることは、先に述べた実施形態におけると同様である。
【0061】
本実施形態では、アノードガス供給ライン11に、燃料蒸発器21および燃料改質器22が介装される。燃料蒸発器21および燃料改質器22により、本実施形態に係るアノード側熱交換器2が構成される。アノード側熱交換器2以外にシステムS2に備わる熱機器およびその周辺構造は、先に述べた実施形態におけると同様である。先に述べた実施形態のものと同一の構成要素には、図1に示したのと同一の符号を付し、その再度の説明を省略する。
【0062】
本実施形態において、アノード側熱交換器2は、一次燃料である原燃料の供給を受け、これを処理して、燃料電池での発電反応に用いられる燃料ガスに変換する。この意味で、本実施形態に係るアノード側熱交換器2は、燃料処理器と呼ぶこともできる。原燃料は、含酸素燃料と水との混合物であってよく、アノードガス供給ライン11に接続された、図示しない燃料タンクに貯蔵される。本実施形態に適用可能な原燃料として、エタノールと水との混合物(つまり、エタノール水溶液)を例示することができる。
【0063】
燃料蒸発器21は、燃料タンクから原燃料であるエタノール水溶液の供給を受け、高温流体である燃焼ガスによりこれを加熱して蒸発させ、エタノールガスおよび水蒸気を生成する。
【0064】
燃料改質器22は、原燃料の流れに関して燃料蒸発器21の下流側に配置され、気体の状態にあるエタノールから、水蒸気改質により水素を生成する。水蒸気改質は、次式により表すことができる。生成された水素は、燃料改質器22を出た後、燃料ガスとして燃料電池スタック1に供給される。
25OH+3H2O → 6H2+2CO2 …(2)
【0065】
このように、燃料蒸発器21および燃料改質器22によりアノード側熱交換器2を構成した場合にあっても先に述べたのと同様の効果を得ることが可能である。具体的には、均質化装置5により、燃焼ガス通路15の集合部151を流れる燃焼ガスの性状分布を解消し、カソード側とアノード側とで熱交換により回収される熱量に偏りが生じるのを抑えて、システムS2全体での動作効率の向上を図ることができる。
【0066】
そして、温度性状の均質化を積極的に促進可能なことで、燃焼ガス通路15の短縮を図り、レイアウトの簡素化を促すことができる。
【0067】
以上の説明では、燃焼ガスの均質化装置5を燃焼ガス通路15の集合部151に設置する場合について説明した。しかし、均質化装置5を設置する位置についてはこれに限定されるものではなく、排気燃焼器4の燃焼部(換言すれば、燃焼促進触媒が担持された触媒ベッド部)よりも下流側であり、燃焼ガス通路15の分岐点Pdよりも下流側である範囲において、適宜に選択することが可能である。集合部151に限らず、例えば、排気燃焼器4のケーシングの内部にスワラないし静的ミキサを設置するなどして、排気燃焼器4に内蔵させることも可能である。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は、本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を、上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。上記実施形態に対し、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内で様々な変更および修正が可能である。
【符号の説明】
【0069】
S1、S2…燃料電池システム
1…燃料電池スタック
2…アノード側熱交換器
3…カソード側熱交換器
4…排気燃焼器
5…均質化装置
11…アノードガス供給ライン
12…カソードガス供給ライン
13…オフガス排出ライン(アノードオフガス排出ライン)
14…燃料供給管
15…燃焼ガス通路
151…集合部
152、153…分岐部
21…燃料蒸発器
22…燃料改質器
Pd…分岐部
図1
図2
図3
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図8
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図10
図11
図12