(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】包装体とその製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 81/24 20060101AFI20231108BHJP
B65B 55/02 20060101ALI20231108BHJP
B65D 1/22 20060101ALI20231108BHJP
B65D 1/26 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B65D81/24 K
B65B55/02 A
B65D1/22
B65D81/24 M
B65D1/26
(21)【出願番号】P 2019115105
(22)【出願日】2019-06-21
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨手 政寛
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 公介
(72)【発明者】
【氏名】山本 久貴
(72)【発明者】
【氏名】大塚 康司
【審査官】永田 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-246030(JP,A)
【文献】特表平07-506795(JP,A)
【文献】特開2018-167862(JP,A)
【文献】特開2004-299759(JP,A)
【文献】特開2015-214354(JP,A)
【文献】特開2014-105008(JP,A)
【文献】特開2000-109130(JP,A)
【文献】特表2005-519003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/24
B65B 55/02
B65D 1/22
B65D 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱殺菌処理に対応した包装体であって、
加熱殺菌を必要とする内容物と、前記内容物が収容される収容空間を内部に有するトレイ形状の容器と、前記収容空間内に前記内容物が密封包装されるように前記容器をシールする蓋と、を備え、
前記容器が、容器外へ突出した状態と容器内へ突出した状態との切り替えが可能な形状可変部分の構成された底部を有し、
前記形状可変部分を構成する底部が、容器内からの力を受けると前記収容空間が大きくなるように容器外へ突出した状態となり、容器外からの力を受けると前記収容空間が小さくなるように容器内へ突出した状態となり、
前記形状可変部分を構成する底部において中心部分が周辺部分よりも薄くなっており、その不均一な肉厚により、前記容器内へ突出した状態の底部が、前記容器外へ突出した状態に対して対称な状態から、更に容器内へシフトした状態をと
り、
前記底部が環状部,側壁及び底壁から構成され、前記底壁の周囲を前記側壁が取り囲み、その周囲を前記環状部が取り囲むように配置され、
前記容器外へ突出した状態の底部では、前記環状部が平面状になっており、
前記容器内へ突出した状態の底部では、前記環状部と前記側壁が傾斜した曲面状になり、前記側壁と前記底壁で丸みのある曲面が構成されることを特徴とする包装体。
【請求項2】
前記環状部と前記側壁との境界及び前記側壁と前記底壁との境界が滑らかな曲面で構成されることを特徴とする請求項
1記載の包装体。
【請求項3】
前記容器において、前記内容物を出し入れするための開口が前記底部と対向するように形成されており、
前記容器が、開口周縁から外側に突出するように形成されたフランジ部と、前記底部と前記フランジ部とを連結する側面部と、を備えたことを特徴とする請求項1
又は2記載の包装体。
【請求項4】
前記容器は、前記底部と前記フランジ部と前記側面部とが一体的に形成された樹脂成形体であることを特徴とする請求項
3記載の包装体。
【請求項5】
加熱殺菌処理が施される前の容器において、前記形状可変部分が容器内へ突出した状態にあることを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項に記載の包装体。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の包装体の製造方法であって、
前記形状可変部分が容器外へ突出した状態にある容器を成形し、
前記形状可変部分を容器外から押圧することにより容器内へ突出した状態にすることを特徴とする包装体の製造方法。
【請求項7】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の包装体の製造方法であって、
前記形状可変部分が容器外へ突出した状態にある容器を成形し、
前記形状可変部分を容器外から押圧することにより容器内へ突出した状態にし、
前記収容空間内に前記内容物を収容し、
前記収容空間内に前記内容物が密封包装されるように前記蓋で前記容器をシールし、
加熱殺菌とその後の冷却を行うことを特徴とする包装体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装体とその製造方法に関するものであり、例えば、トレイ形状の容器に内容物として食品が密封包装された加熱殺菌対応の包装体と、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家事の負担軽減のため、コンビニエンスストア等におけるトレイタイプの包装食品(惣菜製品等の包装体)の需要が増大している。そのような食品の包装では、加熱殺菌(例えば、ボイル加熱やレトルト加熱)が行われることが多い。ただし、トレイ形状の容器を用いた包装では、容器と蓋との間のヘッドスペース(収容空間のうち内容物が占めていない空間)内の空気が、加熱殺菌により膨張して容器から蓋を剥離させるおそれがあるため、加熱殺菌中の加圧が必要になる。加圧加熱殺菌には密閉空間での加圧と加熱が可能なバッチ式(非連続式)の設備が必要であるため、例えば、90℃程度の加熱蒸気を用いたスプレー殺菌を連続式で行う製造工程のラインでは、トレイ形状の容器に対応することができない。
【0003】
容器と蓋との接着強度を大きくすれば、加圧しなくても蓋の剥離を抑えることは可能である。その場合、加熱殺菌によりヘッドスペース内の空気圧が高くなって容器は膨張し、その後の冷却によりヘッドスペース内の空気圧が低くなって容器は収縮する。しかし、容器は収縮しても元の形状に復帰せず、局所的に凹みが残ることがある。この問題を解決するため、形状復元性の良好な形状を有する容器が特許文献1で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の容器では、容器が変形前状態に復帰する際の局所的な凹みの発生を抑えることに重点が置かれている。そのため、ヘッドスペースが大きいと、ヘッドスペース内の空気が加熱殺菌により大きく膨張して、蓋や容器に大きく影響してしまう。例えば、蓋が変形して容器から剥離したり、その蓋の変形により容器がダメージ(割れ等)を受けたりするおそれがある。
【0006】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、加熱殺菌によりヘッドスペース内の空気が膨張してもその影響が小さい包装体とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明の包装体は、加熱殺菌処理に対応した包装体であって、
加熱殺菌を必要とする内容物と、前記内容物が収容される収容空間を内部に有するトレイ形状の容器と、前記収容空間内に前記内容物が密封包装されるように前記容器をシールする蓋と、を備え、
前記容器が、容器外へ突出した状態と容器内へ突出した状態との切り替えが可能な形状可変部分を有し、
前記形状可変部分が、容器内からの力を受けると前記収容空間が大きくなるように容器外へ突出した状態となり、容器外からの力を受けると前記収容空間が小さくなるように容器内へ突出した状態となることを特徴とする。
【0008】
第2の発明の包装体は、上記第1の発明において、前記容器が前記形状可変部分の構成された底部を有することを特徴とする。
【0009】
第3の発明の包装体は、上記第2の発明において、前記形状可変部分を構成する底部において中心部分が周辺部分よりも薄いことを特徴とする。
【0010】
第4の発明の包装体は、上記第2又は第3の発明において、前記容器において、前記内容物を出し入れするための開口が前記底部と対向するように形成されており、
前記容器が、開口周縁から外側に突出するように形成されたフランジ部と、前記底部と前記フランジ部とを連結する側面部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
第5の発明の包装体は、上記第4の発明において、前記容器は、前記底部と前記フランジ部と前記側面部とが一体的に形成された樹脂成形体であることを特徴とする。
【0012】
第6の発明の包装体は、上記第1~第5のいずれか1つの発明において、加熱殺菌処理が施される前の容器において、前記形状可変部分が容器内へ突出した状態にあることを特徴とする。
【0013】
第7の発明の製造方法は、上記第1~第6のいずれか1つの発明に係る包装体の製造方法であって、
前記形状可変部分が容器外へ突出した状態にある容器を成形し、
前記形状可変部分を容器外から押圧することにより容器内へ突出した状態にすることを特徴とする。
【0014】
第8の発明の製造方法は、上記第1~第6のいずれか1つの発明に係る包装体の製造方法であって、
前記形状可変部分が容器外へ突出した状態にある容器を成形し、
前記形状可変部分を容器外から押圧することにより容器内へ突出した状態にし、
前記収容空間内に前記内容物を収容し、
前記収容空間内に前記内容物が密封包装されるように前記蓋で前記容器をシールし、
加熱殺菌とその後の冷却を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、形状可変部分が容器内からの力を受けると容器外へ突出した状態となり、その結果、収容空間が大きくなるため、加熱殺菌によりヘッドスペース内の空気が膨張しても、その影響を小さくすることができる。例えば、加熱殺菌による蓋の剥離を防止したり、蓋の変形により容器がダメージ(割れ等)を受けることを防止したりすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】容器及び包装体の一実施の形態を示す平面図。
【
図4】
図1の容器及び包装体の製造工程を模式的な断面で示す端面図。
【
図5】
図1の容器における形状可変部分の状態切り替えを模式的な断面で示す端面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る包装体,その製造方法等を、図面を参照しつつ説明する。
図1の平面図に、包装体10の概略構成を示す。また、
図1のA-A’線断面図を
図2に示し、
図1のB-B’線断面図を
図3に示す。なお、
図2及び
図3では、
図1中のコーナーリブ7を図示省略する。
【0018】
包装体10は、
図1~
図3に示すように、容器1,蓋8,内容物9等を備えており、加熱殺菌処理に対応した構成になっている。ここでは、容器1内の収容空間1sに配置される内容物9として食品(例えば、ハンバーグ等の総菜類)を想定しているので、包装体10は包装食品に相当するが、内容物9は食品に限定されるものではない。食品以外の内容物9の具体例としては、加熱殺菌処理の必要な医薬品,医療用具,衛生用品等が挙げられる。
【0019】
容器1は、内部の収容空間1sに食品等の内容物9の収容が可能なトレイ形状を有している。この容器1は、主な構成要素として、底部2,フランジ部3及び側面部4を備えており、内容物9を出し入れするための開口1aが底部2と対向するように形成されている。開口1aと底部2は一方向に長い形状を有しており、フランジ部3は開口1aの周縁から外側に突出するように形成されており、底部2とフランジ部3とは側面部4で連結している。
【0020】
容器1は、ポリプロピレン(PP)等の熱可塑性樹脂からなる変形可能な樹脂成形体であり、射出成形,真空成形等の成形方法によって底部2とフランジ部3と側面部4とが一体的かつ薄肉(例えば、厚さ:0.45mm)に形成されている。容器1の材料としては、PPの他に、PP/EVOH(3%)/PP,フィラー入りPP(フィラーは石灰系等の無機物からなる)等が挙げられる(EVOH:エチレン-ビニルアルコールプラスチック)。容器1は、収容する内容物9として食品を想定しているため、ボイル加熱(例えば、90℃の加熱蒸気を用いたスプレー殺菌等)等の加熱殺菌処理に対応している。
【0021】
容器1の底部2には、その一部として環状部5が設けられている。環状部5の外側形状とフランジ部3の内側形状(開口1aの形状)と側面部4の内側形状及び外側形状は、曲線形状の4つの角部分とそれに隣接する2つの直線部分とを有する略矩形を成しており(ここでは略長方形を想定しているが、楕円形状等でもよい。)、互いに略相似の関係になっている。フランジ部3の外側形状に関しては、蓋8を手で容易に剥離可能とするため、一対の対角部分の曲率半径が小さくなっている。包装体10をレンジ加熱する際には、その曲率半径の小さい角から蓋8を少し剥がすことによって、レンジ加熱中の安全な蒸気抜きを可能としている。
【0022】
環状部5は、底部2の強度を向上させるために、底部2の周縁において容器1外(容器1の下方)に向けて突出するように形成されている(
図2,
図3)。環状部5の内側には、トラック形状(つまり、長方形と2つの半円形との合成形状)を有する側壁5a及び底壁5bが位置しており(
図1)、底壁5bが上方(開口1a側)に突出する形状によって環状部5が下方に向けて突出する形状を構成している(
図2,
図3)。
【0023】
底部2を構成している環状部5,側壁5a及び底壁5bは、
図1に示すように、底壁5bの周囲を側壁5aが取り囲み、その周囲を環状部5が取り囲むように配置されている。そのため、底部2は力を受けると底壁5bを中心とした変形が可能であり、
図2及び
図3に示すように、容器1外へ突出した状態(長い破線)と容器1内へ突出した状態(実線)との切り替えが可能な形状可変部分を構成している。この進退可能な構成により、例えば、底部2が容器1内からの力(矢印md)を受けると収容空間1sが大きくなるように容器1外へ突出した状態となり、底部2が容器1外からの力(矢印mu)を受けると収容空間1sが小さくなるように容器1内へ突出した状態となる。
【0024】
容器1外へ突出した状態(長い破線)の底部2では、環状部5が平面状になっているが、容器1内へ突出した状態(実線)の底部2では、環状部5が側壁5aと同様に傾斜した曲面状になり、側壁5aと底壁5bで丸みのある曲面が構成される。したがって、容器1外へ突出した状態の底部2と、容器1内へ突出した状態の底部2と、に形状の対称性はなく、容器1内へ突出した状態(実線)の底部2は、容器1外へ突出した状態(長い破線)に対して対称な状態(短い破線)から、更に容器1内へシフトした状態をとることになる。このため、容器1内のヘッドスペースHSを相対的に小さくすることができ、また、容器1の積載を容易に安定化することができる。なお、環状部5と側壁5aとの境界及び側壁5aと底壁5bとの境界を滑らかな曲面で構成すれば、局所的な凹みの発生を効果的に防止することができる。
【0025】
容器1の側面部4には、略長方形の長辺及び短辺の各上部寄りに、段差部4aが形成されている。また側面部4には、略長方形の4つの角部分にそれぞれコーナーリブ7(
図1)が2本ずつ容器1内に向けて突出するように形成されている。段差部4aとコーナーリブ7は、側面部4の強度を向上させるために設けられており、特にコーナーリブ7は側面部4の角部分を補強するうえで有効に作用する。また側面部4には、容器1の積み重ねを適正にするためのスタック部4sが形成されている。スタック部4sがフランジ部3との境界部分に位置することにより、フランジ部3との連結も強化される。
【0026】
容器1は、蓋8で開口1aを覆うようにシールされている。そのシールは、蓋8がフランジ部3の全面に接着されることにより行われている。蓋8は、変形が容易に可能な高い柔軟性を有しており、最外層を構成する基材フィルムと、容器1をシールするために開口1a側に位置するシーラントフィルム(熱接着性樹脂フィルム)と、の貼り合わせからなる積層構造を有している。
【0027】
具体的な蓋8の材料としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)12μm/ONY(二軸延伸ナイロン)15μm/EP(イージーピールシーラント材)50μm,PET12μm/EP50μm,ONY15μm/EP50μm等の積層フィルム材料が挙げられる。なお、蓋8は樹脂フィルムに限らず、紙,金属箔等からなる各層を組み合せた多層基材でもよく、熱接着層の代わりに接着剤を用いてもよい。また、ガスバリア性を必要とする場合には、アルミニウム箔層や蒸着フィルム層を蓋8の最外層や中間層として備えてもよい。
【0028】
ここで、容器1と包装体10の製造方法を説明する。
図4の端面図に、容器1と包装体(包装食品)10の製造工程を模式的な断面で示す。まず、
図4(A)に示すように、底部2が容器1外へ突出した状態にある容器1を真空成形等の成形方法によって成形する。そして、機械操作又は手動操作で底部2を容器1外から押圧することにより、
図4(B)に示すように、底部2を容器1内へ突出した状態にする。前述したように、容器1内へ突出した状態(実線)の底部2は、容器1外へ突出した状態に対して対称な状態(破線)から、更に容器1内へシフトした状態にあるため、収容空間1sに占めるヘッドスペースHSは相対的に小さくなる。
【0029】
次に、
図4(C)に示すように、開口1aから容器1の収容空間1s内に内容物(食品等)9を入れる。そして、
図4(D)に示すように、開口1aを覆うように蓋8を容器1上に配し、フランジ部3に対して蓋8を押圧しながら所定温度(例えば、150~300℃程度)で加熱する。蓋8は前述した樹脂製の積層フィルムからなっており、片面に熱接着性のシーラントフィルムを有している。そのシーラントフィルムによって、フランジ部3の上面の略全体にわたって蓋8が熱接着(ヒートシール)される。
【0030】
フランジ部3に蓋8が熱接着されることにより、内容物9は容器1内の収容空間1sに配置された状態で密封包装される。このようにして、収容空間1sを内部に有するトレイ形状の容器1と、収容空間1s内に収容されて加熱殺菌を必要とする内容物9と、内容物9が密封包装されるように容器1をシールする蓋8と、を備えた包装体10が得られる。
【0031】
蓋8で容器1の開口1aが閉じられた包装体10に、スチーム殺菌工程で90℃程度の加熱殺菌処理を施すと、収容空間1sのヘッドスペースHS内の空気圧が高くなって、
図4(E)に示すように、底部2と蓋8が変形する。つまり、ヘッドスペースHS内の空気の膨張による力で、底部2は容器1外へ突出した状態となり、蓋8は容器1外に向けてわずかに膨らんだ状態となる。
【0032】
容器1は、底部2が容器1外へ突出した状態(
図4(A))に成形されているため、その成形時(例えば、真空成形等における熱成形時)の形状を記憶している。したがって、底部2が容器1内へ突出した状態(
図4(D))にあっても、底部2が容器1内からの力(つまり、加熱殺菌によるヘッドスペースHS内の空気の膨張による力)を受けると、容器1外へ突出した状態(記憶形状)に容易に戻る。これにより、ヘッドスペースHSの空気が膨張した分は、底部2が容器1外へ突出する変形により吸収される。結果として、加熱殺菌によりヘッドスペースHSの空気が膨張しても、蓋8の変形はごくわずかであり、包装体10が破損するような蓋8の変形は生じない。例えば、蓋8が容器1から剥離することはなく、蓋8の変形により容器1がダメージ(割れ等)を受けることもない。
【0033】
そして、加熱殺菌後の冷却を行うと、収容空間1sのヘッドスペースHS内の空気圧が低くなり、蓋8と容器1は元の形状(
図4(D))に復帰する。このようにして、加熱殺菌によりヘッドスペースHS内の空気が膨張しても、その影響が小さい加熱殺菌処理済みの包装体10が得られる。
【0034】
底部2が形状可変部分として変形することによる状態切り替えを更に詳しく説明する。
図5の端面図に、容器1における底部2d,2uの状態切り替えを模式的な断面で示す。底部2dが容器1外からの力(矢印mu)を受けると、収容空間1sが小さくなるように容器1内へ突出した状態の底部2uとなり、底部2uが容器1内からの力(矢印md)を受けると、収容空間1sが大きくなるように容器1外へ突出した状態の底部2dとなる。容器1内へ突出した状態の底部2uは、容器1外へ突出した状態に対して対称な状態(破線)から、更に容器1内へシフトした状態をとっている。
【0035】
成形前の容器1の肉厚が均一であっても、容器1を真空成形等の成形方法によって成形することにより(
図4(A))、底部2の厚さに変化を生じさせることができる。その一例が、
図5中の容器1外に突出した状態の底部2dである。底部2dにおいて中心部分は周辺部分よりも肉薄になっている。つまり、底部2dは、環状部5と比較して底壁5bが薄くなっており、側壁5aでは底壁5b側に近づくほど薄くなっている。この不均一な肉厚により、底部2d,2uが変形しやすくなる。つまり、加熱殺菌時には底部2が容器1外へ突出しやすくなり、冷却時には底部2が容器1内へ突出しやすくなる。また、上記不均一な肉厚により、容器1外へ突出した状態に対して対称な状態(
図5中の破線)から容器1内に突出した状態へと、底部2uがシフトすることになる。
【0036】
さらに、容器1は成形時の形状になることで安定化されるため(形状記憶)、変形させても元の形状に戻ろうとする力が働いて、成形時の形状に戻りやすくなる。これにより、容器1内へ突出した状態(
図5中の底部2u,
図4(D))から容器1外へ突出した状態(
図5中の底部2d,
図4(E))への底部2の変形が容易になる。つまり、加熱殺菌時には底部2が容器1外へ突出しやすくなる。したがって、加熱殺菌時に変形した状態を想定した成形を行い(
図4(A))、容器1を成形してからフランジ部3に蓋8を熱接着するまでの間に、底部2を容器1内へ突出した状態にセットすれば(
図4(B),(C))、加熱殺菌を問題無く行うことが可能である。そして、加熱殺菌後の冷却により、加熱殺菌前状態(
図4(D),店頭陳列時の状態)に戻すことが可能である。
【0037】
上記実施の形態によれば、前述したように、形状可変部分が構成されている底部2が容器1内からの力を受けると容器1外へ突出した状態となり、その結果、収容空間1sが大きくなるため、加熱殺菌によりヘッドスペースHS内の空気が膨張しても、その影響を小さくすることができる。例えば、加熱殺菌による蓋8の剥離を防止したり、蓋8の変形により容器1がダメージ(割れ等)を受けることを防止したりすることが可能となる。
【0038】
上述した容器1では底部2dに形状可変部分が構成されているが、側面部4に形状可変部分を構成してもよい。側面部4には、その一部として段差部4aが形成されているため、側面部4の変形制御は容易である。例えば側面部4が、容器1内からの力を受けると収容空間1sが大きくなるように容器1外へ突出した状態となり、容器1外からの力を受けると収容空間1sが小さくなるように容器1内へ突出した状態となるようにすれば、底部2dと同様の形状可変により加熱殺菌処理に対応することが可能となる。
【符号の説明】
【0039】
1 容器
1a 開口
1s 収容空間
2 底部(形状可変部分)
2d 容器外突出状態の底部(形状可変部分)
2u 容器内突出状態の底部(形状可変部分)
3 フランジ部
4 側面部
4a 段差部
4s スタック部
5 環状部(形状可変部分,周辺部分)
5a 側壁(形状可変部分)
5b 底壁(形状可変部分,中心部分)
7 コーナーリブ
8 蓋
9 内容物(食品)
10 包装体(包装食品)
HS ヘッドスペース