(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
B66F 11/04 20060101AFI20231108BHJP
B66C 23/74 20060101ALI20231108BHJP
B66F 9/06 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B66F11/04
B66C23/74 B
B66F9/06 B
(21)【出願番号】P 2019124882
(22)【出願日】2019-07-04
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋口 昌宏
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-123360(JP,A)
【文献】国際公開第2017/065066(WO,A1)
【文献】特開2006-225054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00-11/04
B66C 19/00-23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に設けられた旋回台と、
前記旋回台に設けられたブームと、
前記旋回台の内部に設けられたカウンタウエイトと、を備え、
前記旋回台は、
前記車体に旋回可能に立設したポストと、
前記ポストの上端から旋回半径外側に向かって傾斜した後傾体と、を備え、
前記後傾体は底板と該底板の両縁に立設した一対の側壁とを有し、
前記ブームの基端部は前記後傾体の後端に設けられたフートピンに軸支されており、
前記ブームを起伏する起伏シリンダの基端部は前記後傾体の中間部に設けられた連結ピンに軸支されており、
前記カウンタウエイトは、前記底板と前記一対の側壁と最倒伏状態の前記ブームとで囲まれた内部空間のうち前記連結ピンより後方の空間
の形状に合わせて複数の板状ウエイトを積み重ねて構成されるとともに、該空間内に配置されており、
前記底板と前記一対の側壁とは、一枚の板材を屈曲して一体形成されている
ことを特徴とする作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車に関する。さらに詳しくは、本発明は、旋回台にカウンタウエイトが設けられた作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
移動式クレーン、高所作業車などの作業車には、安定モーメントを大きくするためにカウンタウエイトが設けられる。例えば、特許文献1に開示された高所作業車は車体の後端部にカウンタウエイトが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カウンタウエイトの設置箇所として、車体の後端部のほかに、旋回台が考えられる。しかし、特許文献1に開示された高所作業車のように旋回台が荷台の前寄りに配置されている場合、旋回台にカウンタウエイトを取り付けると、カウンタウエイトと運転室とが干渉し、旋回台が旋回できなくなる。このように、旋回台にカウンタウエイトを設ける場合には、他の構造物と干渉しないようにする必要がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、旋回台に設けられたカウンタウエイトと他の構造物とが干渉しない作業車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の作業車は、車体と、前記車体に設けられた旋回台と、前記旋回台に設けられたブームと、前記旋回台の内部に設けられたカウンタウエイトと、を備え、前記旋回台は、前記車体に旋回可能に立設したポストと、前記ポストの上端から旋回半径外側に向かって傾斜した後傾体と、を備え、前記後傾体は底板と該底板の両縁に立設した一対の側壁とを有し、前記ブームの基端部は前記後傾体の後端に設けられたフートピンに軸支されており、前記ブームを起伏する起伏シリンダの基端部は前記後傾体の中間部に設けられた連結ピンに軸支されており、前記カウンタウエイトは、前記底板と前記一対の側壁と最倒伏状態の前記ブームとで囲まれた内部空間のうち前記連結ピンより後方の空間に配置されており、前記底板と前記一対の側壁とは、一枚の板材を屈曲して一体形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、カウンタウエイトが旋回台の内部に設けられているので、カウンタウエイトと他の構造物とが干渉することがない。また、カウンタウエイトが連結ピンより後方の内部空間に配置されているので、カウンタウエイトがブームの起伏動作と干渉することがない。また、カウンタウエイトを旋回中心から離れた位置に配置できるので、安定モーメントを大きくできる。さらに、一枚の板材を屈曲して後傾体が形成されているので、後傾体の剛性を保ちつつ軽量化できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る高所作業車の側面図である。
【
図4】
図3におけるIV-IV線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の一実施形態に係る作業車は、移動式クレーン、高所作業車、軌陸車などの、ブームを備える作業車である。以下、高所作業車の場合を例に説明する。
【0010】
図1に示すように、高所作業車AAは車体10を有する。車体10の前方部分は運転室11であり、後方部分は荷台12である。車体10には、車両走行用の駆動源、車輪のほか、作業中の安定を確保するアウトリガなどが設けられている。
【0011】
荷台12には旋回台20が搭載されている。旋回台20は旋回モータにより上下方向を軸として旋回可能である。旋回台20にはブーム13が起伏自在に設けられている。旋回台20とブーム13との間には起伏シリンダ14が設けられている。起伏シリンダ14が伸縮することでブーム13が起伏する。ブーム13はテレスコピック状に構成されている。ブーム13は内部に設けられた伸縮シリンダにより伸縮する。
【0012】
ブーム13の先端にはレベリングシリンダにより姿勢が水平に維持されたデッキ15が設けられている。ブーム13の旋回、起伏、伸縮を組み合わせることで、立体空間内の任意の位置にデッキ15を移動させることができる。これにより、デッキ15に乗り込んだ作業員による高所での作業が可能となる。
【0013】
図2に示すように、旋回台20は主にポスト21と後傾体22とからなる。ポスト21は柱状の部材であり、荷台12に旋回可能に立設している。旋回台20の旋回中心はポスト21の中心とほぼ一致する。
【0014】
後傾体22は梁状の部材であり、その一端がポスト21の上端に固定されている。後傾体22はポスト21の上端から旋回半径外側に向かって傾斜している。具体的には、後傾体22はポスト21に向かって下がるよう傾斜して配置されている。
【0015】
後傾体22の後端(ポスト21とは逆側の端部)にはフートピン23が設けられている。ブーム13の基端部はこのフートピン23に軸支されている(
図3参照)。また、後傾体22の中間部には連結ピン24が設けられている。起伏シリンダ14の基端部(シリンダチューブのキャップ側端部)はこの連結ピン24に軸支されている(
図3参照)。なお、起伏シリンダ14の先端部(ロッドの先端部)はブーム13にピン連結されている。
【0016】
図1に示すように、旋回台20は荷台12の前寄りに配置されている。すなわち、旋回台20は運転室11の近くに配置されている。ブーム13の先端部を後方に向けると、後傾体22の後部が運転室11の上方に張り出した状態となる。換言すれば、ポスト21の高さおよび後傾体22の傾斜角度は、旋回台20が旋回する際に後傾体22と運転室11とが干渉しないように設定されている。
【0017】
図4に示すように、後傾体22の断面形状は略U字形である。後傾体22は底板22aと、底板22aの両縁に立設した一対の側壁22b、22bとからなる。ブーム13を倒伏させると、ブーム13は一対の側壁22b、22bの間に収められる。底板22aと一対の側壁22b、22bとは、一枚の板材をU字形に屈曲することにより一体形成されている。すなわち、後傾体22は一枚の板材を屈曲して形成されている。このような構成であるから、薄い板材を用いても後傾体22として必要な剛性を保つことができる。したがって、後傾体22の剛性を保ちつつ軽量化できる。
【0018】
また、後傾体22が一枚の板材を屈曲して形成されていることから、
図3に示すように、後傾体22の底板22aは平板状となっている。平板状の底板22aとブーム13とは離隔しており、その間に起伏シリンダ14が配置される。起伏シリンダ14より後方には、底板22aとブーム13との間に空間が生じる。この空間にカウンタウエイト30が設けられている。
【0019】
より詳細には、底板22aと一対の側壁22b、22bと最倒伏状態のブーム13とで囲まれた旋回台20の内部空間のうち、起伏シリンダ14の連結ピン24より後方の空間にカウンタウエイト30が配置されている。連結ピン24の後方には台座25が設けられている。カウンタウエイト30は底板22aおよび台座25に載せられている。また、カウンタウエイト30はボルト31で底板22aに締結されている(
図4参照)。
【0020】
カウンタウエイト30が配置された空間は、ブーム13を起伏させてもブーム13および起伏シリンダ14が掃引することなく、確保されている。そのため、カウンタウエイト30がブーム13の起伏動作と干渉することがない。
【0021】
また、カウンタウエイト30は後傾体22の後部に配置される。すなわち、カウンタウエイト30は旋回台20の中でも旋回中心から離れた位置に配置される。そのため、安定モーメントを大きくできる。必要な安定モーメントが得られる限り、カウンタウエイト30を軽くしてもよい。
【0022】
カウンタウエイト30が旋回台20の内部に設けられることから、カウンタウエイト30の取り付けの前後で、旋回台20の外形が変わらない。カウンタウエイト30が旋回台20の外部に突出することがないので、旋回台20の旋回に伴いカウンタウエイト30と他の構造物とが干渉することがない。
【0023】
また、カウンタウエイト30が旋回台20の内部に設けられることから、仮にボルト31が緩んで外れたとしても、カウンタウエイト30は旋回台20の内部に留まる。カウンタウエイト30が路上に落下する恐れがない。
【符号の説明】
【0024】
AA 高所作業車
10 車体
13 ブーム
14 起伏シリンダ
15 デッキ
20 旋回台
21 ポスト
22 後傾体
23 フートピン
24 連結ピン
30 カウンタウエイト