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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】スクレーパコンベアの監視装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 43/02 20060101AFI20231108BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20231108BHJP
   G03B 15/02 20210101ALI20231108BHJP
【FI】
B65G43/02 Z
G03B15/00 T
G03B15/02 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019126923
(22)【出願日】2019-07-08
(65)【公開番号】P2021011364
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】梶山 慎介
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特公昭63-065562(JP,B2)
【文献】登録実用新案第3220135(JP,U)
【文献】特許第5902283(JP,B1)
【文献】特開平09-315588(JP,A)
【文献】特開2016-196351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 43/02
G03B 15/00;
15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベアケースの内部に複数のスクレーパを備えたスクレーパコンベアの監視装置であって、
前記スクレーパの位置を検知するトリガ検知センサと、
搬送対象物を搬送しない前記スクレーパの復路において該スクレーパの撮影を行う撮影カメラと、
前記トリガ検知センサと前記撮影カメラとをそれぞれ制御可能な撮影制御手段と、を少なくとも備え、
前記撮影制御手段は、
前記トリガ検知センサによる検知信号に基づいて、前記撮影カメラによって前記スクレーパを撮影させる撮影指示部と、
前記撮影カメラが撮影した前記スクレーパの撮影画像に基づいて、該スクレーパにおける異常の有無を判定可能な状態判定部と、を有し、
前記状態判定部は、前記スクレーパの撮影画像から算出される該スクレーパの面積及び/又は該スクレーパの端部の直線度合いを所定の閾値と比較することによって該スクレーパの劣化状態を判定可能である
ことを特徴とするスクレーパコンベアの監視装置。
【請求項2】
前記撮影制御手段は、
前記トリガ検知センサによる検知信号に基づいて、各スクレーパに対して固有の識別情報を付与する識別情報設定部を有し、
前記状態判定部による判定結果に対して前記識別情報を紐付ける
請求項1に記載のスクレーパコンベアの監視装置。
【請求項3】
さらに、前記撮影カメラによる前記スクレーパの撮影を可能にする透明監視窓と、該透明監視窓を清掃可能な窓清掃装置と、を備え、
前記撮影制御手段は、
前記窓清掃装置によって前記透明監視窓を清掃させる窓清掃指示部と、
前記トリガ検知センサによる検知信号の検知時間間隔を監視する検知間隔監視部と、を有し、
前記検知間隔監視部は、前記検知時間間隔を所定の時間閾値と比較した結果に基づいて、前記窓清掃装置によって前記透明監視窓を清掃させる
請求項1又は2に記載のスクレーパコンベアの監視装置。
【請求項4】
前記撮影制御手段は、
前記トリガ検知センサによる検知信号の検知時間間隔を監視する検知間隔監視部を有し、
前記検知間隔監視部は、前記検知時間間隔を所定の時間閾値と比較し、特定の時間間隔で前記検知時間間隔が該所定の時間閾値を超えた場合に、前記スクレーパが脱落していると判断する
請求項1~3のいずれかに記載のスクレーパコンベアの監視装置。
【請求項5】
前記撮影制御手段は、
前記スクレーパが特定方向に移動している状況下で算出された該スクレーパの面積を補正する画像面積補正部を有し、
前記状態判定部は、
前記スクレーパが前記特定方向に移動している場合は、前記画像面積補正部によって補正された前記スクレーパの補正面積を所定の面積閾値と比較し、
前記スクレーパが前記特定方向とは異なる方向に移動している場合は、前記画像面積補正部による補正を行うことなく、前記スクレーパの撮影画像から算出される該スクレーパの面積を前記所定の面積閾値と比較して、該スクレーパの劣化状態を判定可能である
請求項1~4のいずれかに記載のスクレーパコンベアの監視装置。
【請求項6】
さらに、前記コンベアケースの内部の前記透明監視窓の近傍に照明装置を備え、
前記照明装置により、前記スクレーパの撮影位置に近接する前記コンベアケースの内壁面へ光を照射し、前記スクレーパの該内壁面への映り込みを抑制することが可能である
請求項に記載のスクレーパコンベアの監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクレーパコンベアにおけるスクレーパの摩耗や欠け、脱落状態などの異常を検出することが可能な、スクレーパコンベアの監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、共同乾燥調製施設、精米工場などの穀物サイロ群のように、複数個の穀物投入口が略等高位置に適宜な間隔で配置される場合、特許文献1に記載されているようなスクレーパコンベアが採用されていた。そして、当該スクレーパコンベアは、多数の掻出用羽根板であるスクレーパが所定間隔で無端体に取り付けられており、当該無端体の回動によって穀粒などを上記穀物投入口まで移送することが可能となっている。
【0003】
ところで、スクレーパコンベアで使用される上記スクレーパは樹脂材で形成された消耗部品である。したがって、スクレーパコンベアの稼働中に、スクレーパに摩耗や欠けが発生したり、無端体からスクレーパ自体が脱落することがある。このような不具合に対しては、従来から目視確認によって行われ、作業員等が不具合を発見した場合に、必要に応じてスクレーパの交換等が行われていた。
【0004】
また、自動的に不具合を検知する技術として、特許文献2には沈殿砂泥掻寄用のコンベアに関する技術が開示されている。当該特許文献2には、スクレーパの掻き寄せ負荷を検知したり、近接検知器によって各スクレーパの通過時間の間隔を監視して、駆動チェーンの破断や、スクレーパの脱落を早期に検出する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭60-153323号公報
【文献】特公昭63-065562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような従来型の目視による不具合の監視方法では、適切な対応を迅速に行うことはできず、特に、スクレーパコンベアなどのスクレーパを目視確認し難い設備に対しては、非稼働時に実施される定期的な点検でしか、スクレーパの不具合を発見することはできない。
【0007】
また、仮に、上記特許文献2に開示されたような技術を、スクレーパコンベアに適用したとしても、スクレーパの脱落など、比較的大きな不具合に対しては検出可能であるものの、スクレーパの摩耗状態や、欠けなど、比較的軽微な損傷や劣化状態を判定することはできない。
【0008】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、スクレーパの脱落などの大きな不具合から、スクレーパの摩耗や、欠けなど、比較的軽微な損傷や劣化状態を判定することが可能な、スクレーパコンベアの監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願請求項1に係る発明は、コンベアケースの内部に複数のスクレーパを備えたスクレーパコンベアの監視装置であって、前記スクレーパの位置を検知するトリガ検知センサと、前記スクレーパの撮影を行う撮影カメラと、前記トリガ検知センサと前記撮影カメラとをそれぞれ制御可能な撮影制御手段と、を少なくとも備え、前記撮影制御手段は、前記トリガ検知センサによる検知信号に基づいて、前記撮影カメラによって前記スクレーパを撮影させる撮影指示部と、前記撮影カメラが撮影した前記スクレーパの撮影画像に基づいて、該スクレーパにおける異常の有無を判定可能な状態判定部と、を有し、前記状態判定部は、前記スクレーパの撮影画像から算出される該スクレーパの面積及び/又は該スクレーパの端部の直線度合いを所定の閾値と比較することによって該スクレーパの劣化状態を判定可能であることを特徴とするスクレーパコンベアの監視装置。
【0010】
本願請求項2に係る発明は、前記撮影制御手段は、前記トリガ検知センサによる検知信号に基づいて、各スクレーパに対して固有の識別情報を付与する識別情報設定部を有し、前記状態判定部による判定結果に対して前記識別情報を紐付ける請求項1に記載のスクレーパコンベアの監視装置。
【0011】
本願請求項3に係る発明は、さらに、前記撮影カメラによる前記スクレーパの撮影を可能にする透明監視窓と、該透明監視窓を清掃可能な窓清掃装置と、を備え、前記撮影制御手段は、前記窓清掃装置によって前記透明監視窓を清掃させる窓清掃指示部と、前記トリガ検知センサによる検知信号の検知時間間隔を監視する検知間隔監視部と、を有し、前記検知間隔監視部は、前記検知時間間隔を所定の時間閾値と比較した結果に基づいて、前記窓清掃装置によって前記透明監視窓を清掃させる請求項1又は2に記載のスクレーパコンベアの監視装置。
【0012】
本願請求項4に係る発明は、前記撮影制御手段は、前記トリガ検知センサによる検知信号の検知時間間隔を監視する検知間隔監視部を有し、前記検知間隔監視部は、前記検知時間間隔を所定の時間閾値と比較し、特定の時間間隔で前記検知時間間隔が該所定の時間閾値を超えた場合に、前記スクレーパが脱落していると判断する請求項1~3のいずれかに記載のスクレーパコンベアの監視装置。
【0013】
本願請求項5に係る発明は、前記撮影制御手段は、前記スクレーパが特定方向に移動している状況下で算出された該スクレーパの面積を補正する画像面積補正部を有し、前記状態判定部は、前記スクレーパが前記特定方向に移動している場合は、前記画像面積補正部によって補正された前記スクレーパの補正面積を前記所定の面積閾値と比較し、前記スクレーパが前記特定方向とは異なる方向に移動している場合は、前記画像面積補正部による補正を行うことなく、前記スクレーパの撮影画像から算出される該スクレーパの面積を前記所定の面積閾値と比較して、該スクレーパの劣化状態を判定可能である請求項1~4のいずれかに記載のスクレーパコンベアの監視装置。
【0014】
本願請求項6に係る発明は、さらに、前記コンベアケースの内部の前記透明監視窓の近傍に照明装置を備え、前記照明装置により、前記スクレーパの撮影位置に近接する前記コンベアケースの内壁面へ光を照射し、前記スクレーパの該内壁面への映り込みを抑制することが可能である請求項1~5のいずれかに記載のスクレーパコンベアの監視装置。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、トリガ検知センサ12によるスクレーパ332の位置検知に基づいて、撮影カメラ11により、上記スクレーパ332の撮影画像が取得されるように構成されている。そして、撮影制御手段110の状態判定部によって上記撮影画像から算出されるスクレーパ332の面積及び/又はスクレーパ332の端部の直線度合いを所定の閾値と比較することによって、スクレーパ332の劣化状態(摩耗や欠けなど)が判定可能となっている。このような構成により、常にスクレーパ332の劣化状態等が監視されるので、適切なタイミングで劣化状態にあるスクレーパ332を交換することが可能となる。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、さらに、撮影制御手段110は、トリガ検知センサ12による検知信号に基づいて、各スクレーパ332に対して固有の識別情報を付与するように構成され、判定結果に対して当該識別情報を紐付けるように構成されている。このような構成により、交換や修理が必要なスクレーパ332の位置を即座に特定することができ、交換作業などの作業性を向上させることが可能となる。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、さらに、撮影カメラ11によるスクレーパ332の撮影を可能にする透明監視窓22と、該透明監視窓22を清掃可能な窓清掃装置24とを備え、例えば、穀物の殻やホコリなどによって透明監視窓22が汚れても、窓清掃装置24によって透明監視窓22の透明度が維持され、トリガ検知センサ12による誤検知を防ぐことが可能となる。また、鮮明な撮影画像が得られるため、スクレーパ332の劣化状態を正確に判定することが可能となる。
【0018】
加えて、撮影制御手段110は、トリガ検知センサ12による検知信号の検知時間間隔を所定の時間閾値と比較した結果に基づいて、窓清掃装置24によって透明監視窓22を清掃させることが可能となっている。すなわち、本来、一定間隔で配置されるスクレーパ332は、一定の所定時間間隔でトリガ検知センサ12により検知されるはずであるが、上記したように、穀物の殻やホコリなどによって透明監視窓22が汚れていた場合は、トリガ検知センサ12がスクレーパ332を検知できない場合がある。このような場合、本構成によって、窓清掃装置24による透明監視窓22の清掃を行わせ、継続してトリガ検知センサ12及び撮影カメラ11を正常に機能させることが可能となる。
【0019】
請求項4に係る発明によれば、さらに、撮影制御手段110は、トリガ検知センサ12による検知信号の検知時間間隔を所定の時間閾値と比較した結果に基づいて、スクレーパ332が脱落するなどの不具合を発見できるように構成されている。すなわち、本来、一定間隔で配置されるスクレーパ332は、一定の所定時間間隔でトリガ検知センサ12により検知されるはずであるが、例えば、何らかの原因でスクレーパ332がスクレーパブラケット331から外れて脱落したような場合は、トリガ検知センサ12がスクレーパ332を検知することができない。このような検知結果に基づいて、スクレーパ332が脱落したことを判断できるので、直ちにスクレーパ332の取付け補修作業を実施することが可能となる。
【0020】
請求項5に係る発明によれば、さらに、撮影制御手段110は、スクレーパ332が正転している時と、スクレーパ332が逆転している時とにおいて、共通の面積閾値を用いて比較判定するように構成されている。すなわち、例えば図7(b)に示されるように、スクレーパコンベア30が逆転運転している場合は、拡大して撮影された画像から算出された面積S2に対して、拡大率を逆算する演算補正を行い、予め設定された上記面積閾値と比較してスクレーパ332の摩耗の程度を判定することが可能となっている。
【0021】
したがって、上記のような演算補正を行うことにより、スクレーパコンベア30の運転方向に対応して、別々のトリガ検知センサ12と撮影カメラ11を設ける必要がなく、設備コストを抑制することが可能となる。
【0022】
請求項6に係る発明によれば、さらに、コンベアケース31の内部の透明監視窓22の近傍に照明装置21を設け、当該照明装置21によってスクレーパ332の撮影位置に近接するコンベアケース31の内壁面へ光を照射するように構成している。したがって、スクレーパ332の上記内壁面への映り込みを抑制することが可能となり、撮影画像からスクレーパ332の面積を算出する際に、誤って映り込んだスクレーパ332の面積を算出するような不都合を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態における、スクレーパコンベアの監視装置の設置態様を示す斜視図(a)と正面図(b)である。
図2】本発明の一実施形態における、スクレーパコンベアの監視装置の設置態様を示す側面図(a)と俯瞰図(b)である。
図3】本発明の一実施形態における、スクレーパコンベアの監視装置のブロック図(a)と、スクレーパの監視態様を示した模式断面図(b)である。
図4】本発明の一実施形態における、スクレーパの状態監視の流れを示したフロー図である。
図5】本発明の一実施形態における、トリガ検知センサの異常判断処理の流れを示したフロー図である。
図6】本発明の一実施形態における、正転時のスクレーパの撮像位置を説明する模式断面図(a)と、逆転時のスクレーパの撮像位置を説明する模式断面図(b)である。
図7】本発明の一実施形態における、正転時のスクレーパの撮影画像(a)と、逆転時のスクレーパの撮影画像(b)との面積補正について説明する図である。
図8】本発明の一実施形態における、各スクレーパの位置を特定する方法を説明する模式断面図(a)と、各センサの検出態様等を示したタイミングチャート(b)である。
図9】本発明の一実施形態における、スクレーパの直線度合いの判定箇所を説明する正面図(a)と、スクレーパコンベア内におけるスクレーパの映り込みを防止する技術構成を説明する正面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のスクレーパコンベアの監視装置における一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
図1には、本発明の一実施形態における、スクレーパコンベアの監視装置の斜視図(a)及び正面図(b)が図示され、図2には、スクレーパコンベアの監視装置の側面図(a)及び俯瞰図(b)が図示されている。各図に示されるように、本実施形態では公知のスクレーパコンベア30のコンベアカバー32上に、撮影ユニット10と監視窓ユニット20が図示される態様で設置されている。
【0026】
(撮影ユニット10の構成)
より詳細に説明すると、本実施形態の撮影ユニット10は、コンベアカバー32上を前後方向に位置調整が可能な架台14が設置され、当該架台14の上方には、撮影カメラ11と、トリガ検知センサ12と、カメラ照明13とが、いずれも上下方向に角度調整可能に取り付けられている。
【0027】
そして、撮影カメラ11は、監視窓ユニット20の透明監視窓22に向けられ、コンベアケース31内で移動する各スクレーパ部材33を撮影することが可能となっている。また同様に、トリガ検知センサ12も透明監視窓22に向けられ、監視窓ユニット20内の所定位置にスクレーパ部材33が存在することを検知することが可能となっている。
【0028】
より詳細に説明すると、上記トリガ検知センサ12は、撮影カメラ11によるスクレーパ部材33の撮影タイミングの契機となる検知信号を、撮影ユニット10に対して出力するように構成されており、監視窓ユニット20内の撮影位置に近づいたスクレーパ部材33を検知して、検知信号を撮影ユニット10に出力している。
【0029】
本実施形態では、トリガ検知センサ12としてカラーセンサを使用しており、撮影位置に近づいたスクレーパ部材33のスクレーパ332の色を検知したタイミングで、検知信号を撮影ユニット10に出力している。なお、上記したように本実施形態の撮影ユニット10や監視窓ユニット20は、スクレーパコンベア30の上部に設置されており、搬送対象物が存在しない各スクレーパ部材33の復路でスクレーパ部材33が撮影されるように構成されている。したがって、搬送対象物に影響を受けることなく、スクレーパコンベアの監視が可能となっている。
【0030】
なお、本実施形態では、上記したようにトリガ検知センサ12としてカラーセンサを使用しているが、必ずしもこのようなセンサに限定されるものではなく、例えば、近接センサやフォトセンサ、光電センサ、レーザセンサなど、公知の物体を検知するセンサを適宜採用することが可能である。
【0031】
(監視窓ユニット20の構成)
本実施形態の監視窓ユニット20は、図1及び図2に図示されるように、コンベアカバー32の図示しない開口部の上部に設けられており、前述した撮影カメラ11によるスクレーパ部材33の撮影、及び、トリガ検知センサ12によるスクレーパ部材33の検知を可能とするため、透明監視窓22が設けられている。なお、本実施形態では、透明監視窓22を透明な強化プラスチック樹脂により形成しているが、ガラス製とすることも可能である。
【0032】
さらに、監視窓ユニット20には、当該監視窓ユニット20の内部空間を照らす照明装置21と、前述の透明監視窓22を清掃する窓清掃装置24と、監視窓ユニット20内を外部から目視点検することが可能な点検窓23が設けられている。
【0033】
これにより、例えば、スクレーパコンベア30で搬送する穀物の殻やホコリ等で透明監視窓22が汚れ、撮影カメラ11によるスクレーパ部材33の撮影や、トリガ検知センサ12によるスクレーパ部材33の検知が困難となった場合には、上記窓清掃装置24によって透明監視窓22を清掃させることにより、スクレーパ部材33の監視が可能となっている。
【0034】
なお、本実施形態では、窓清掃装置24としてエアレーション装置を使用しており、空気圧を利用することで、特に食品等を移送するスクレーパコンベア30などでは異物の混入を防ぐことが可能となり、好適に使用することができる。もちろん、公知のワイパー装置等の使用を必ずしも否定するものではなく、適宜、他の代替清掃装置を使用することも可能である。
【0035】
(制御ブロック構成)
続いて、図3(a)には、本実施形態におけるスクレーパコンベア30の監視装置の制御ブロック図が図示されている。本実施形態では、撮影カメラ11及びトリガ検知センサ12は撮影制御手段110と相互通信可能に接続され、さらに当該撮影制御手段110は、撮影画像を含む種々のデータを送受信可能なデータサーバ120と、装置全体の制御を司る状態監視制御PC100と、窓清掃装置24の動作を制御する清掃装置制御部240にそれぞれ接続されている。
【0036】
なお、本実施形態では図3(a)に示される態様で各デバイスを配置しているが、必ずしもこのような態様に限定されるものではなく、例えば、データサーバ120を状態監視制御PC100に接続してもよいし、清掃装置制御部240を状態監視制御PC100に接続して制御することも可能である。
【0037】
続いて、図3(b)には、スクレーパコンベア30の模式断面図が図示されている。図示されるように、コンベアケース31の内部では、無端ベルト34に複数のスクレーパ部材33が取り付けられ、矢印方向に移動するように構成されている。また、図9(a)に模式的に示されているように、上記スクレーパ部材33は、無端ベルト34に取り付けられるスクレーパブラケット331と、当該スクレーパブラケット331に着脱可能に取り付けられる樹脂製のスクレーパ332とから構成されており、スクレーパ332は青色に着色又は青色の樹脂で成形された樹脂成形品となっている。
【0038】
加えて、前述したようにスクレーパコンベア30には、スクレーパ部材33が所定位置に存在することを検知可能なトリガ検知センサ12と、トリガ検知センサ12の検知に基づいてスクレーパ部材33を撮影可能な撮影カメラ11が設置されている。本実施形態では、トリガ検知センサ12として公知のカラーセンサを使用しており、青色に着色又は青色の樹脂で成形されたスクレーパ332を検知することによって検知信号を撮影制御手段110へ出力するように構成されている。
【0039】
(スクレーパの状態監視フロー)
続いて、図4及び図5のフローに基づいて、本実施形態におけるスクレーパコンベア30の監視装置の基本的な状態監視フローについて以下に説明する。
【0040】
スクレーパの状態監視装置による状態監視が開始されると、トリガ検知センサ12によるスクレーパ部材33の位置検知(S101)が行われる。撮影位置近傍の所定位置において、トリガ検知センサ12によりスクレーパ部材33が検知されると、トリガ検知センサ12から検知信号が撮影制御手段110に出力され、当該撮影制御手段110内の撮影指示部は撮影カメラ11に対して撮影指示信号を送信し、撮影カメラ11によるスクレーパ部材33の撮影(S102)が行われる。
【0041】
撮影されたスクレーパ部材33の撮影画像は、データサーバ120へ送信されて保存されると同時に、スクレーパ332に摩耗や欠けがないか劣化判断処理(S103)が実行される。当該劣化判断処理では、撮影された画像から、図9(a)に示されるように青色のスクレーパ332の面積Sの算出と、スクレーパ332の端部の横方向及び左右の縦方向の直線度合いが算出される。
【0042】
上記したようにして算出されたスクレーパ332の面積Sと、直線度合いは、事前に設定された面積閾値、直線度合い閾値との対比が行われ、摩耗や欠けなど劣化状態の有無が判定(S104)される。ここで、スクレーパ332の交換などの対応が必要な劣化状態にあると判断されると、図示しない警報報知手段において警報が報知(S105)される。以上が、基本的な状態監視のフローである。
【0043】
なお、本実施形態においては、上記劣化判断処理を撮影制御手段110における状態判定部で実行しているが、必ずしもこのような形態に限定されるものではなく、例えば、状態監視制御PC100において処理を実行することも可能である。
【0044】
(スクレーパの脱落判定)
続いて、スクレーパ332の脱落判定処理について説明する。本来、複数のスクレーパ332が一定の間隔で設置され、所定のスピードで移動する場合は、当然ながら略一定の時間間隔でトリガ検知センサ12から検知信号が出力される。
【0045】
そこで、本実施形態では、トリガ検知センサ12から出力される検知信号の検知時間間隔を監視し、当該検知時間間隔が所定の時間閾値を超過した場合に、単に透明監視窓22が汚れていてスクレーパ332を検知できないのか、それとも、スクレーパ332がスクレーパブラケット331から脱落した状態にあるのか、判定できるように構成されている。
【0046】
すなわち、図4のフロー図に示されるように、トリガ検知センサ12の検知信号に基づく状態監視処理(S1011)が実行されており、検知信号の検知時間間隔に異常が認められると(S1012)、撮影制御手段110の窓清掃指示部から清掃装置制御部240に対して清掃指示の制御信号が送信され、当該清掃装置制御部240によって窓清掃装置24を動作(S1013)させて透明監視窓22を清掃するように構成している。
【0047】
そして、検知信号の検知時間間隔の異常が改善したか否かが判定(S1014)され、検知時間間隔が改善されれば、当該処理が終了する。一方、窓清掃装置24による清掃後も上記検知時間間隔が改善されなければ、スクレーパ332がスクレーパブラケット331から脱落した状態にある可能性が高いため、図示しない警報手段において警報が報知(S1015)されるように構成されている。
【0048】
図5には上記した検知時間間隔に対する判定処理態様がより詳細に図示されている。すなわち、本実施形態では、予め、時間閾値としてα1及びα2が設定されており、検知信号の検知時間間隔Δtが、α1≦Δtx≦α2の時間の範囲内であれば、スクレーパ332の脱落等の可能性は無く、正常であると判断される。
【0049】
一方、Δtx<α1となった場合は、トリガ検知センサ12の検知感度が異常に高くなっているか、又は、透明監視窓22への異物の付着等によって誤検知が発生している可能性がある。したがって、このような場合は、撮影制御手段110から清掃装置制御部240に対し、窓清掃装置24による透明監視窓22の清掃を指示するように構成されている。
【0050】
そして、透明監視窓22の清掃後もα1≦Δtx≦α2の正常な時間間隔とならなければ、トリガ検知センサ12の検知感度が異常に高くなっている可能性が高いため、図示しない警報報知手段でセンサ感度調整警報を報知するように構成している。
【0051】
また、検知時間間隔がα2<Δtxとなった場合は、透明監視窓22への異物の付着等によって、正しくスクレーパ332を検知できないか、或いは、スクレーパ332が脱落してしまっている可能性があるため、撮影制御手段110から清掃装置制御部240に対し、窓清掃装置24による透明監視窓22の清掃を指示するように構成されている。
【0052】
そして、透明監視窓22の清掃後もα1≦Δtx≦α2の正常な時間間隔とならなければ、スクレーパ332が脱落している可能性が高いので、図示しない警報報知手段でスクレーパ脱落警報を報知するように構成している。
【0053】
なお、本実施形態においては、撮影制御手段110に設置された検知間隔監視部で、スクレーパ332の脱落判定処理を実行したが、必ずしもこのような形態に限定されるものではなく、例えば、検知間隔監視部を状態監視制御PC100に設置して脱落判定処理を実行することも可能である。
【0054】
(スクレーパの劣化判断処理)
続いて、前述したスクレーパ332に摩耗や欠けがないかの劣化判断処理(S103)の方法について説明する。本実施形態ではスクレーパ332の摩耗や欠けがないかの劣化状態を判定するために、前述したように撮影カメラ11によって撮影されたスクレーパ332の撮影画像に基づいて判定を行っている。
【0055】
上記したスクレーパ332の撮影画像に基づく判定項目としては、図9(a)のスクレーパ部材33の正面図に示されるように、スクレーパ332の端部である横直線及び左縦直線、右縦直線を検出し、その直線度合いによって、局所的な摩耗や欠けなどがないか、所定の直線度合い閾値と比較して判定している。また、スクレーパ332の撮影画像における濃淡を検出して、ひび割れの発生状態についても判定することが可能である。
【0056】
さらに、青色に着色又は青色の樹脂で成形されたスクレーパ332の面積Sを算出し、所定の面積閾値と比較することで、スクレーパ332の摩耗の状態を判定している。なお、本実施形態では、許容するスクレーパ332の減少面積の下限値を、予め面積閾値として設定しておき、当該面積閾値を下回った場合には、スクレーパ332の交換などの対応が必要な劣化状態にあることを、図示しない警報報知手段において報知するように構成されている。
【0057】
(スクレーパの移動方向による補正処理)
スクレーパコンベア30は、必ずしも一方向にのみ無端ベルト34を回転させてスクレーパ部材33を移動させるわけではなく、図6(a)に図示されるように、正転させる場合もあれば、図6(b)に図示されるように、逆転させて使用する場合もある。
【0058】
したがって、スクレーパ部材33の運転方向に関わらず、共通のトリガ検知センサ12と撮影カメラ11を使用した場合、図6(a)及び(b)に示されるように、トリガ検知センサ12によるスクレーパ部材33の検知位置は変わらないものの、検知されてから撮影されるまでのΔtの時間、スクレーパ部材33の移動方向の違いによって、スクレーパ部材33の撮影位置が図示されるように異なる。
【0059】
そうすると、正転時に撮影位置で撮影された撮影画像から算出されるスクレーパ332の面積は、図7(a)のように面積S1となり、逆転時に撮影位置で撮影された画像から算出されるスクレーパ332の面積は、図7(b)のように正転時の面積S1よりも大きい面積S2となる。
【0060】
そこで本実施形態では、判定基準である面積閾値を「S1」としているが、逆転時に撮影位置で撮影された画像から算出されるスクレーパ332の面積S2と、正確に対比判定できるように、当該面積S2に対し、拡大率を逆算する演算補正を行い、予め設定された面積閾値である「S1」と比較して、スクレーパ332の摩耗の程度を判定するようにしている。
【0061】
上記のような演算補正を行うことにより、スクレーパコンベア30の運転方向に対応して、別々のトリガ検知センサ12と撮影カメラ11を設ける必要がなくなる。なお、本実施形態では、図示しないスクレーパコンベア30のラインPCから、状態監視制御PC100若しくは撮影制御手段110へ、スクレーパコンベア30の運転方向(正転又は逆転)が出力され、運転方向(正転又は逆転)に応じて、状態監視制御PC100若しくは撮影制御手段110の画像面積補正部で上記演算補正を行うように構成されている。
【0062】
(異常判定されたスクレーパの特定処理)
以上、スクレーパ332の劣化状態の判定や、脱落等による異常判定の方法について説明したが、当然、異常判定の結果に応じて、スクレーパ部材33の取付けや、交換、修理などの対処が必要となり、効率的にこれらの対処作業を行うためには、複数あるスクレーパ部材33の内、対処の必要なスクレーパ部材33の位置を特定することが必要となる。
【0063】
そこで、本実施形態では、複数あるスクレーパ部材33のうち、任意の一のスクレーパ部材33のスクレーパブラケット331に、金属製のブラケットを使用し、図8(a)に図示されるように、当該金属製のスクレーパブラケット331のみを検知する特定トリガ検知センサ12Aを追加的に設置している。このような構成とすることで、複数あるスクレーパ部材33の回転サイクルの起点を特定して設定することが可能となる。
【0064】
また、図8(b)には、特定トリガ検知センサ12A及びトリガ検知センサ12のタイミングチャートに加えて、撮影画像判定結果のタイミングチャートが図示されている。本実施形態では、前述したように、上記特定トリガ検知センサ12Aの検知信号に基づいて、複数のスクレーパ部材33の回転周期における起点(金属製のスクレーパブラケット331使用位置)が特定されるため、トリガ検知センサ12からの検知信号に対して固有の識別情報を付与することが可能となり、例えば、各スクレーパ部材33に対してX0~X19までの識別情報が付与され、併せて、各スクレーパ332の撮影画像や各種算出結果、判定結果に対しても識別情報が紐づけされる。
【0065】
上記のような処理が撮影制御手段110の識別情報設定部において実行されることにより、撮影画像の判定結果として異常判定が行われると、図示されるように、対象となるスクレーパ部材33が「X0」であることを即座に特定することが可能となる。
【0066】
また、本実施形態では、前述したようにトリガ検知センサ12による検知時間間隔(t1~t20)も監視しているので、検知時間間隔に異常が発生した場合(図示される例ではt2)においても、対象となるスクレーパ部材33が「X2」であることを即座に特定することができるため、例えば、スクレーパ332の脱落箇所を直ちに特定して、必要な処置を施すことが可能となる。
【0067】
(誤判定の防止)
次に、本実施形態における誤判定の防止方法について以下に説明する。一般的に、図1に示されるようなスクレーパコンベア30を構成するコンベアカバー32やコンベアケース31などは金属製であり、特に食品である穀物類などを搬送するスクレーパコンベア30においては光沢のあるステンレス製とされる場合が多い。そうすると、図9(b)に示されるように、光沢を有するコンベアケース31の内壁面に対して、スクレーパ部材33の鏡像が映し出される場合がある。
【0068】
上記のように、スクレーパ部材33に近接するコンベアケース31の内壁面に、当該スクレーパ部材33の鏡像が映し出されると、撮影カメラ11によって鏡像がスクレーパ部材33と共に撮影される可能性があり、劣化判断処理において、スクレーパ332の鏡像の面積を算出してしまうという誤った処理が行われる可能性がある。このような誤った処理が行われると、実際の面積よりも過少の算出結果が出力されたり、エラー発生の原因となる。
【0069】
そこで、本実施形態では、監視窓ユニット20内部に設置された照明装置21でスクレーパ部材33を照明しつつ、当該照明装置21の光を、スクレーパ部材33近傍のコンベアケース31の内壁面に照射し、スクレーパ部材33の鏡像が映し出されないように構成している。このように構成することで、上記したような不都合を解消することが可能となっている。
【0070】
[その他の実施形態]
以上、本発明のスクレーパコンベア30の監視装置における実施形態について説明したが、前述の実施形態に必ずしも限定されるものではなく、例えば以下のような種々の変形が可能である。
【0071】
例えば、前述の実施形態では、各スクレーパ部材33への識別情報付与に際して、金属製のスクレーパブラケット331のみを検知する特定トリガ検知センサ12Aを追加的に設置したが、必ずしもこのような形態に限られるものではない。
【0072】
すなわち、複数色の色を識別して検知することが可能なトリガ検知センサ12を採用し、各スクレーパ部材33の回転周期を特定可能な、スクレーパ332の色(実施形態では青色。)とは異なる色のマーキングやタグ等をスクレーパ部材33に設置して、一のトリガ検知センサ12で上記回転周期と各スクレーパ332を検知するように構成してもよい。このように構成することで、新たに別個の特定トリガ検知センサ12Aを設置する手間を削減することが可能である。
【0073】
加えて、撮影カメラ11に、トリガ検知センサ12、12Aの機能を追加してもよく、これにより、撮影カメラ11によって各スクレーパ部材33の検知と撮影を行わせるようにして、設備コストを低減することが可能となる。
【0074】
また、前述の実施形態では、図3のブロック図に基づいて各処理構成を説明したが、これは言うまでもなく一実施形態に過ぎず、各デバイスの接続や処理制御をどのようなデバイスで実行するようにするのかは、適宜設定することが可能である。
【0075】
また、前述の実施形態では、一のスクレーパコンベア30に対する監視装置の構成について説明したが、必ずしもこのような場合に限定されるものではなく、複数台のスクレーパコンベア30を一のデータサーバ120や一の状態監視制御PC100によって制御、監視するように構成することも可能である。さらに、スクレーパコンベア30を運転、コントロールするラインPCにスクレーパコンベア30の監視装置の機能を付加するようにして、本発明のスクレーパコンベア30の監視装置をスリム化することも当然可能である。
【0076】
また、前述の実施形態では、スクレーパコンベア30の運転速度が一定であることを前提に、その実施形態を説明したが、運転速度が変化するような場合でも、本発明を実施することが可能であり、例えば、前述した面積閾値や時間閾値、演算補正の割合などは、各運転速度に応じて設定することで、スクレーパコンベア30の監視が可能である。
【0077】
また、本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。また、上記各実施形態に記載された具体的な数値範囲、デバイスの寸法形状・機能等は本発明の課題を解決する範囲において変更が可能である。
【符号の説明】
【0078】
11 撮影カメラ
110 撮影制御手段
12 トリガ検知センサ
21 照明装置
22 透明監視窓
24 窓清掃装置
30 スクレーパコンベア
31 コンベアケース
332 スクレーパ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9