(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】積層コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 27/29 20060101AFI20231108BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
H01F27/29 123
H01F17/00 D
(21)【出願番号】P 2019133935
(22)【出願日】2019-07-19
【審査請求日】2022-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】數田 洋一
(72)【発明者】
【氏名】飛田 和哉
(72)【発明者】
【氏名】志賀 悠人
(72)【発明者】
【氏名】濱地 紀彰
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-367833(JP,A)
【文献】特開2017-157770(JP,A)
【文献】特開2019-036589(JP,A)
【文献】特開2018-200966(JP,A)
【文献】特開2017-073536(JP,A)
【文献】特開2017-005104(JP,A)
【文献】国際公開第2007/080680(WO,A1)
【文献】特開2019-062182(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0207018(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104810133(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106531399(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-19/08、27/29
H01G 4/228-4/252、4/30
H01C 1/14-1/148
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の誘電体層を有していると共に、互いに対向している一対の端面と、互いに対向している一対の主面と、複数の前記誘電体層の積層方向において互いに対向している一対の側面と、を有し、一方の前記主面が実装面である素体と、
前記素体内に配置されており、前記積層方向に沿ってコイル軸が延在しているコイルと、
前記コイルに接続されていると共に、前記素体の一対の前記端面側のそれぞれにおいて前記素体に埋設されている一対の端子電極と、を備え、
一対の前記端子電極のそれぞれは、異なる形状を有する複数の電極層が前記積層方向において積層されて形成されていると共に、前記端面、前記実装面及び前記一対の側面に露出しており、
前記積層方向から見て、前記素体の前記側面に露出すると共に一の前記電極層によって形成されている前記端子電極の一の電極部分は、一の前記電極層と前記積層方向において隣り合う他の前記電極層によって形成されている他の電極部分の少なくとも一部と重なっている重複部分と、他の前記電極部分と重なっていない非重複部分と、を有して
おり、
他の前記電極部分は、前記積層方向から見て一の前記電極部分と重なっていない部分を有する、積層コイル部品。
【請求項2】
他の前記電極部分は、前記積層方向から見て、一対の前記主面の対向方向に沿って延在する第一部分と、一対の前記端面の対向方向に沿って延在する第二部分と、を有し、
一の前記電極部分の前記非重複部分は、前記積層方向から見て、前記第一部分及び前記第二部分により形成されている隅部に対応する領域を含む、請求項1に記載の積層コイル部品。
【請求項3】
一の前記電極部分の前記非重複部分は、前記積層方向から見て、前記コイルから離間する方向に向かって凸状に湾曲する部分を有している、請求項1又は2に記載の積層コイル部品。
【請求項4】
一の前記電極部分の前記非重複部分は、前記積層方向から見て、凹凸部分を有している、請求項1又は2に記載の積層コイル部品。
【請求項5】
前記積層方向から見て、一対の前記端子電極のそれぞれと前記コイルとが重なっていない、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層コイル部品。
【請求項6】
一対の前記端面の対向方向から見て、一対の前記端子電極のそれぞれと前記コイルとが重なっていない、請求項1~5のいずれか一項に記載の積層コイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の積層コイル部品として、たとえば、特許文献1に記載されているものが知られている。特許文献1に記載の積層コイル部品は、素体と、素体内に配置されていると共に素体の一対の側面の対向方向い沿ってコイル軸が延在しているコイルと、素体に埋設されていると共に素体の端面及び実装面にわたって配置されている一対の端子電極と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
積層コイル部品では、特性の向上を図るために、コイルの径を大きくすることが望まれる。しかし、端子電極が素体内に配置されている構成では、コイルの径を大きくすると、端子電極とコイルとの間の距離が短くなる。これにより、コイルと端子電極とにより形成される浮遊容量(寄生容量)が大きくなり、特性が低下するという問題が生じる。そのため、従来の積層コイル部品のように、コイルと端子電極との間の距離を確保するために、端子電極をL字形状としている。
【0005】
また、積層コイル部品では、回路基板などに対してはんだによって強固に固着させるために、素体の側面にも端子電極を露出させ、素体の側面に位置する端子電極にもはんだを形成できる構成が採用され得る。このような構成を有する積層コイル部品は、コイルを構成する導体パターン及び端子電極を構成する電極層を積層して製造する。複数の電極層の形状が同じである場合、各電極層において素体との接触(対向)面の面積を確保し難い。そのため、特に、端子電極を構成する複数の電極層のうち、素体の側面に露出する最外層の電極層は、その製造工程において剥離することがあり、不具合が発生し易い。そのため、形成された端子電極に不具合が生じ得る。
【0006】
本発明の一側面は、端子電極における不具合の発生を抑制できる積層コイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る積層コイル部品は、積層された複数の誘電体層を有していると共に、互いに対向している一対の端面と、互いに対向している一対の主面と、複数の誘電体層の積層方向において互いに対向している一対の側面と、を有し、一方の主面が実装面である素体と、素体内に配置されており、積層方向に沿ってコイル軸が延在しているコイルと、コイルに接続されていると共に、素体の一対の端面側のそれぞれにおいて素体に埋設されている一対の端子電極と、を備え、一対の端子電極のそれぞれは、異なる形状を有する複数の電極層が積層方向において積層されて形成されていると共に、端面、実装面及び一対の側面に露出しており、積層方向から見て、素体の側面に露出すると共に一の電極層によって形成されている端子電極の一の電極部分は、一の電極層と積層方向において隣り合う他の電極層によって形成されている他の電極部分の少なくとも一部と重なっている重複部分と、他の電極部分と重なっていない非重複部分と、を有している。
【0008】
本発明の一側面に係る積層コイル部品では、端子電極における一の電極部分は、他の電極部分の少なくとも一部と重なっている重複部分と、他の電極部分と重なっていない非重複部分とを有している。これにより、積層コイル部品では、素体の側面に露出する一の電極部分の非重複部分において、素体と対向する面で素体との接触面積を確保できる。したがって、積層コイル部品では、端子電極と素体との接合強度を確保できるため、端子電極が素体から剥離することを抑制できる。その結果、積層コイル部品では、端子電極における不具合の発生を抑制できる。
【0009】
一実施形態においては、他の電極部分は、積層方向から見て、一対の主面の対向方向に沿って延在する第一部分と、一対の端面の対向方向に沿って延在する第二部分と、を有し、一の電極部分の非重複部分は、積層方向から見て、第一部分及び第二部分により形成されている隅部に対応する領域を含んでいてもよい。この構成では、非重複部分において、素体との接触面積をより確実に確保できる。したがって、積層コイル部品では、端子電極が素体から剥離することを抑制でき、端子電極における不具合の発生を抑制できる。
【0010】
一実施形態においては、一の電極部分の非重複部分は、積層方向から見て、コイルから離間する方向に向かって凸状に湾曲する部分を有していてもよい。この構成では、非重複部分において、素体との接触面積を確保しつつ、コイルとの間に発生する浮遊容量を小さくすることができる。
【0011】
一実施形態においては、一の電極部分の非重複部分は、積層方向から見て、凹凸部分を有していてもよい。この構成では、非重複部分において、素体との接触面積を確保しつつ、コイルとの間に発生する浮遊容量を小さくすることができる。
【0012】
一実施形態においては、積層方向から見て、一対の端子電極のそれぞれとコイルとが重なっていなくてもよい。この構成では、一対の端子電極のそれぞれとコイルとの間に発生する浮遊容量を小さくすることができる。これにより、積層コイル部品では、特性の向上が図れる。
【0013】
一実施形態においては、一対の端面の対向方向から見て、一対の端子電極のそれぞれとコイルとが重なっていなくてもよい。この構成では、一対の端子電極のそれぞれとコイルとの間に発生する浮遊容量を小さくすることができる。これにより、積層コイル部品では、特性の向上が図れる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一側面によれば、端子電極における不具合の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、第一実施形態に係る積層コイル部品を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す積層コイル部品の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、積層コイル部品の構成を示す側面図である。
【
図4】
図4(a)は、第二方向に沿った断面構成を示す図であり、
図4(b)は、第一方向に沿った断面構成を示す図である。
【
図5】
図5は、第二実施形態に係る積層コイル部品の構成を示す側面図である。
【
図6】
図6は、
図5に示す積層コイル部品の分解斜視図である。
【
図7】
図7(a)は、第二方向に沿った断面構成を示す図であり、
図7(b)は、第一方向に沿った断面構成を示す図である。
【
図8】
図8は、第三実施形態に係る積層コイル部品の構成を示す側面図である。
【
図9】
図9は、
図8に示す積層コイル部品の分解斜視図である。
【
図10】
図10(a)は、第二方向に沿った断面構成を示す図であり、
図10(b)は、第一方向に沿った断面構成を示す図である。
【
図11】
図11(a)及び
図11(b)は、他の実施形態に係る積層コイル部品の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
[第一実施形態]
図1に示されるように、積層コイル部品1は、直方体形状を呈している素体2と、一対の端子電極4,5と、を備えている。一対の端子電極4,5は、素体2の両端部にそれぞれ配置されている。直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状が含まれる。
【0018】
素体2は、互いに対向している一対の端面2a,2bと、互いに対向している一対の主面2c,2dと、互いに対向している一対の側面2e,2fと、を有している。一対の主面2c,2dの対向方向、すなわち、端面2a,2bに平行な方向が、第一方向D1である。一対の端面2a,2bの対向方向、すなわち、主面2c,2dに平行な方向が、第二方向D2である。一対の側面2e,2fの対向方向が、第三方向D3である。本実施形態では、第一方向D1は、素体2の高さ方向である。第二方向D2は、素体2の長手方向であり、第一方向D1と直交している。第三方向D3は、素体2の幅方向であり、第一方向D1と第二方向D2とに直交している。
【0019】
一対の端面2a,2bは、一対の主面2c,2dの間を連結するように第一方向D1に延在している。一対の端面2a,2bは、第三方向D3、すなわち、一対の主面2c,2dの短辺方向にも延在している。一対の側面2e,2fは、一対の主面2c,2dの間を連結するように第一方向D1に延在している。一対の側面2e,2fは、第二方向D2、すなわち、一対の端面2a,2bの長辺方向にも延在している。積層コイル部品1は、電子機器(たとえば、回路基板又は電子部品)に、たとえば、はんだ実装される。積層コイル部品1では、主面2dが、電子機器に対向する実装面を構成する。
【0020】
図2に示されるように、素体2は、第三方向D3に複数の誘電体層6が積層されて構成されている。素体2は、積層されている複数の誘電体層6を有している。素体2では、複数の誘電体層6の積層方向が、第三方向D3と一致する。実際の素体2では、各誘電体層6は、各誘電体層6の間の境界が視認できない程度に一体化されている。各誘電体層6は、たとえば、磁性材料により構成されている。磁性材料は、たとえば、Ni-Cu-Zn系フェライト材料、Ni-Cu-Zn-Mg系フェライト材料、又はNi-Cu系フェライト材料を含んでいる。各誘電体層6を構成する磁性材料は、Fe合金を含んでいてもよい。各誘電体層6は、非磁性材料から構成されていてもよい。非磁性材料は、たとえば、ガラスセラミック材料又は誘電体材料を含んでいる。本実施形態では、各誘電体層6は、磁性材料を含むグリーンシートの焼結体から構成されている。
【0021】
図3に示されるように、端子電極4は、素体2の端面2a側に配置されている。端子電極5は、素体2の端面2b側に配置されている。一対の端子電極4,5は、第二方向D2で互いに離間している。各端子電極4,5は、素体2に埋設されている。端子電極4は、端面2a及び主面2dにわたって配置されている。端子電極5は、端面2b及び主面2dにわたって配置されている。本実施形態では、端子電極4の表面は、端面2a及び主面2dのそれぞれと略面一である。端子電極5の表面は、端面2b及び主面2dのそれぞれと略面一である。
【0022】
各端子電極4,5は、導電性材料を含んでいる。導電性材料は、たとえば、Ag又はPdを含んでいる。各端子電極4,5は、導電性材料粉末を含む導電性ペーストの焼結体として構成されている。導電性材料粉末は、たとえば、Ag粉末又はPd粉末を含んでいる。各端子電極4,5の表面には、めっき層が形成されていてもよい。めっき層は、たとえば、電気めっき又は無電解めっきにより形成される。めっき層は、たとえば、Ni、Sn、又はAuを含んでいる。
【0023】
端子電極4は、端面2a、主面2d及び側面2e,2fに露出している。端子電極4は、複数の電極部分4a,4b,4c,4d,4eを有している。本実施形態では、電極部分4a,4b,4c,4d,4eは、一体的に形成されている。電極部分(一の電極部分)4aは、第三方向D3の一端部に配置されており、端面2a,主面2d及び側面2eに露出している。電極部分(他の電極部分)4bは、電極部分4aに隣接して配置されており、端面2a及び主面2dに露出している。電極部分4cは、電極部分4bに隣接して配置されており、端面2a及び主面2dに露出している。電極部分(他の電極部分)4dは、電極部分4cに隣接して配置されており、端面2a及び主面2dに露出している。電極部分(一の電極部分)4eは、第三方向D3の他端部に配置されており、端面2a、主面2d及び側面2fに露出している。
【0024】
図3及び
図4(a)に示されるように、電極部分4a,4eは、第三方向D3から見て、多角形状を呈している。電極部分4a,4eは、長方形の一角部を直線的に切り欠いた形状を呈している。具体的には、電極部分4a,4eは、第三方向D3から見て、三辺が素体2と接触している。当該三辺のうち、第一辺は、第一方向D1に沿って延在しており、第二辺は、第二方向D2に沿って延在しており、第三辺は、第一辺の主面2c側の端部と第二辺の端面2b側の端部とを接続すると共に、主面2d側に向かって傾斜している。
【0025】
図3に示されるように、電極部分4b,4dは、第三方向D3から見て、L字形状を呈している。電極部分4b,4dは、第一方向D1に沿って延在する第一部分と、第二方向D2に沿って延在する第二部分と、を有しており、第一部分と第二部分とが素体2の稜線部において接続されている。電極部分4cは、直方体形状を呈している。電極部分4cは、第二方向D2及び第三方向D3に沿って延在している。
【0026】
電極部分4e(4a)は、第三方向D3から見て、電極部分4d(4b)と重なる重複部分A1と、電極部分4d(4b)と重ならない非重複部分A2と、を有している。すなわち、電極部分4e(4a)は、第三方向D3において隣り合う電極部分と重なる部分及び重ならない部分を有している。電極部分4e(4a)において、電極部分4d(4b)と重ならない非重複部分A2は、L字形状を呈する電極部分4d(4b)の第一部分及び第二部分が形成している隅部に対応する領域を含んでおり、たとえば、三角形状を呈している。非重複部分A2において、第三方向D3の一方の側面は、露出しており、他方の側面は、素体2に接触している。
【0027】
図2に示されるように、端子電極4は、複数の電極層10と、複数の電極層12と、複数の電極層14と、が積層されて構成されている。本実施形態では、電極層10の数は、「2」であり、電極層12の数は、「4」であり、電極層14の数は、「7」である。電極層10,12,14は、対応する誘電体層6に形成されている欠損部に設けられている。電極層10,12,14は、グリーンシートに形成された欠損部内に位置している導電性ペーストが焼成されることによって、形成される。グリーンシートと導電性ペーストとは同時に焼成される。したがって、グリーンシートから誘電体層6が得られる際に、導電性ペーストから電極層10,12,14が得られる。実際の端子電極4では、各電極層10,12,14は、各電極層10,12,14の間の境界が視認できない程度に一体化されている。
【0028】
各電極層10は、第三方向D3において、端子電極4の最外部に配置されている。すなわち、各電極層10は、電極部分4a,4eを構成している。各電極層12は、第三方向D3から見て、L字状を呈している。電極層12は、電極部分4b,4dを構成している。電極層12は、複数の層部分12a,12bを有している。層部分12aは、第一方向D1に沿って延在している。層部分12bは、第二方向D2に沿って延在している。各電極層14は、第三方向D3から見て、直線状を呈している。電極層14は、第二方向D2に沿って延在している。電極層14は、電極部分4cを構成している。
【0029】
端子電極5は、端面2b、主面2d及び側面2e,2fに露出している。端子電極5は、複数の電極部分5a,5b,5c,5d,5e(
図4(b)参照)を有している。本実施形態では、電極部分5a,5b,5c,5d,5eは、一体的に形成されている。電極部分(一の電極部分)5aは、第三方向D3の一端部に配置されており、端面2b,主面2d及び側面2eに露出している。電極部分(他の電極部分)5bは、電極部分5aに隣接して配置されており、端面2b及び主面2dに露出している。電極部分5cは、電極部分5bに隣接して配置されており、端面2b及び主面2dに露出している。電極部分(他の電極部分)5dは、電極部分5cに隣接して配置されており、端面2b及び主面2dに露出している。電極部分(一の電極部分)5eは、第三方向D3の他端部に配置されており、端面2b、主面2d及び側面2fに露出している。
【0030】
電極部分5a,5eは、第三方向D3から見て、多角形状を呈している。電極部分5a,5eは、長方形の一角部を直線的に切り欠いた形状を呈している。具体的には、電極部分5a,5eは、第三方向D3から見て、三辺が素体2と接触している。当該三辺のうち、第一辺は、第一方向D1に沿って延在しており、第二辺は、第二方向D2に沿って延在しており、第三辺は、第一辺の主面2c側の端部と第二辺の端面2a側の端部とを接続すると共に、主面2d側に向かって傾斜している。
【0031】
電極部分5b,5dは、第三方向D3から見て、L字形状を呈している。電極部分5b,5dは、第一方向D1に沿って延在する第一部分と、第二方向D2に沿って延在する第二部分と、を有しており、第一部分と第二部分とが素体2の稜線部において接続されている。電極部分45は、直方体形状を呈している。電極部分5cは、第二方向D2及び第三方向D3に沿って延在している。
【0032】
図3に示されるように、電極部分5e(5a)は、第三方向D3から見て、電極部分5d(5b)と重なる重複部分A1と、電極部分5d(5b)と重ならない非重複部分A2と、を有している。すなわち、電極部分5e(5a)は、第三方向D3において隣り合う電極部分と重なる部分及び重ならない部分を有している。電極部分5e(5a)において、電極部分5d(5b)と重ならない非重複部分A2は、L字形状を呈する電極部分5d(5b)の第一部分及び第二部分が形成している隅部に対応する領域を含んでおり、たとえば、三角形状を呈している。非重複部分A2において、第三方向D3の一方の側面は、露出しており、他方の側面は、素体2に接触している。
【0033】
図2に示されるように、端子電極5は、複数の電極層11と、複数の電極層13と、複数の電極層15と、が積層されて構成されている。本実施形態では、電極層11の数は、「2」であり、電極層13の数は、「4」であり、電極層15の数は、「7」である。電極層11,13,15は、対応する誘電体層6に形成されている欠損部に設けられている。電極層11,13,15は、グリーンシートに形成された欠損部内に位置している導電性ペーストが焼成されることによって、形成される。グリーンシートと導電性ペーストとは同時に焼成される。したがって、グリーンシートから誘電体層6が得られる際に、導電性ペーストから電極層11,13,15が得られる。実際の端子電極4では、各電極層11,13,15は、各電極層11,13,15の間の境界が視認できない程度に一体化されている。
【0034】
各電極層11は、第三方向D3において、端子電極5の最外部に配置されている。すなわち、各電極層11は、電極部分5a,5eを構成している。各電極層13は、第三方向D3から見て、L字状を呈している。電極層13は、電極部分5b,5dを構成している。電極層13は、複数の層部分13a,13bを有している。層部分13aは、第一方向D1に沿って延在している。層部分13bは、第二方向D2に沿って延在している。各電極層15は、第三方向D3から見て、直線状を呈している。電極層15は、第二方向D2に沿って延在している。電極層15は、電極部分5cを構成している。
【0035】
積層コイル部品1は、
図3に示されるように、素体2内に配置されているコイル8を備えている。コイル8のコイル軸AXは、第三方向D3に沿って延在している。コイル8は、第三方向D3から見て、略楕円形状を呈している。
【0036】
コイル8は、
図2に示されるように、第一コイル導体22と、第二コイル導体23と、第三コイル導体24と、第四コイル導体25と、第五コイル導体26と、を有している。第一コイル導体22、第二コイル導体23、第三コイル導体24、第四コイル導体25及び第五コイル導体26は、第三方向D3に沿って、第一コイル導体22、第二コイル導体23、第三コイル導体24、第四コイル導体25及び第五コイル導体26の順に配置されている。第一コイル導体22、第二コイル導体23、第三コイル導体24、第四コイル導体25及び第五コイル導体26は、ループの一部が途切れた形状を略呈しており、一端と他端とを有している。第一コイル導体22、第二コイル導体23、第三コイル導体24、第四コイル導体25及び第五コイル導体26は、所定の幅で形成されている。
【0037】
積層コイル部品1は、端子電極5とコイル8の一端とを接続する第一接続導体20及び第二接続導体21と、端子電極4とコイル8の他端とを接続する第三接続導体27及び第四接続導体28と、を有している。第一接続導体20、第二接続導体21、第三接続導体27及び第四接続導体28は、直線状を呈している。第一接続導体20、第二接続導体21、第三接続導体27及び第四接続導体28は、所定の幅で形成されている。
【0038】
第一接続導体20は、一つの電極層12と一つの電極層13と同じ層に位置している。第一接続導体20は、連結導体20aを介して、電極層13に連結されている。連結導体20aは、第一接続導体20と同じ層に位置している。第一接続導体20の一端が、連結導体20aと接続されている。連結導体20aは、層部分13aと接続されている。連結導体20aは、第一接続導体20と電極層13とを連結している。連結導体20aは、層部分13bと接続されていてもよい。第一接続導体20は、同じ層に位置している電極層12から離間している。本実施形態では、第一接続導体20、連結導体20a及び電極層13は、一体に形成されている。
【0039】
第二接続導体21は、一つの電極層14と一つの電極層15と同じ層に位置している。第二接続導体21は、同じ層に位置している電極層14,15から離間している。第一接続導体20と第二接続導体21とは、第三方向D3で互いに隣り合っている。第三方向D3から見て、第一接続導体20と第二接続導体21とは、互いに重なっている。
【0040】
第一コイル導体22は、一つの電極層14と一つの電極層15と同じ層に位置している。第一コイル導体22は、同じ層に位置している電極層14,15から離間している。第二接続導体21と第一コイル導体22とは、第三方向D3で互いに隣り合っている。第三方向D3から見て、第二接続導体21の一部と、第一コイル導体22の一部とが、互いに重なっている。
【0041】
第二コイル導体23は、一つの電極層14と一つの電極層15と同じ層に位置している。第二コイル導体23は、同じ層に位置している電極層14,15から離間している。第一コイル導体22と第二コイル導体23とは、第三方向D3で互いに隣り合っている。第三方向D3から見て、第一コイル導体22の一部と、第二コイル導体23の一部とが、互いに重なっている。
【0042】
第三コイル導体24は、一つの電極層14と一つの電極層15と同じ層に位置している。第三コイル導体24は、同じ層に位置している電極層14,15から離間している。第二コイル導体23と第三コイル導体24とは、第三方向D3で互いに隣り合っている。第三方向D3から見て、第二コイル導体23の一部と、第三コイル導体24の一部とが、互いに重なっている。
【0043】
第四コイル導体25は、一つの電極層14と一つの電極層15と同じ層に位置している。第四コイル導体25は、同じ層に位置している電極層14,15から離間している。第三コイル導体24と第四コイル導体25とは、第三方向D3で互いに隣り合っている。第三方向D3から見て、第三コイル導体24の一部と、第四コイル導体25の一部とが、互いに重なっている。
【0044】
第五コイル導体26は、一つの電極層14と一つの電極層15と同じ層に位置している。第五コイル導体26は、同じ層に位置している電極層14,15から離間している。第四コイル導体25と第五コイル導体26とは、第三方向D3で互いに隣り合っている。第三方向D3から見て、第四コイル導体25の一部と、第五コイル導体26の一部とが、互いに重なっている。
【0045】
第三接続導体27は、一つの電極層14と一つの電極層15と同じ層に位置している。第三接続導体27は、同じ層に位置している電極層14,15から離間している。第五コイル導体26と第三接続導体27とは、第三方向D3で互いに隣り合っている。第三方向D3から見て、第五コイル導体26の一部と、第三接続導体27の一部とが、互いに重なっている。
【0046】
第四接続導体28は、一つの電極層12と一つの電極層13と同じ層に位置している。第四接続導体28は、連結導体28aを介して、電極層12に連結されている。連結導体28aは、第四接続導体28と同じ層に位置している。第四接続導体28の一端が、連結導体28aと接続されている。連結導体28aは、層部分12aと接続されている。連結導体28aは、第四接続導体28と電極層12とを連結している。連結導体28aは、層部分12bと接続されていてもよい。第四接続導体28は、同じ層に位置している電極層13から離間している。本実施形態では、第四接続導体28、連結導体28a及び電極層12は、一体に形成されている。
【0047】
第一接続導体20、第二接続導体21、第一コイル導体22、第二コイル導体23、第三コイル導体24、第四コイル導体25、第五コイル導体26、第三接続導体27及び第四接続導体28は、電気的に接続されている。第一コイル導体22、第二コイル導体23、第三コイル導体24、第四コイル導体25及び第五コイル導体26は、コイル8を構成している。コイル8は、第一接続導体20及び第二接続導体21を通して、端子電極5と電気的に接続されている。コイル8は、第三接続導体27及び第四接続導体28を通して、端子電極4と電気的に接続されている。
【0048】
第一コイル導体22、第二コイル導体23、第三コイル導体24、第四コイル導体25及び第五コイル導体26、第一接続導体20、第二接続導体21、第三接続導体27及び第四接続導体28、及び、連結導体20a,28aは、導電性材料を含んでいる。導電性材料は、Ag又はPdを含んでいる。第一コイル導体22、第二コイル導体23、第三コイル導体24、第四コイル導体25及び第五コイル導体26、第一接続導体20、第二接続導体21、第三接続導体27及び第四接続導体28、及び、連結導体20a,28aは、導電性材料粉末を含む導電性ペーストの焼結体として構成されている。導電性材料粉末は、たとえば、Ag粉末又はPd粉末を含んでいる。
【0049】
本実施形態では、第一コイル導体22、第二コイル導体23、第三コイル導体24、第四コイル導体25及び第五コイル導体26、第一接続導体20、第二接続導体21、第三接続導体27及び第四接続導体28、及び、連結導体20a,28aは、各端子電極4,5と同じ導電性材料を含んでいる。第一コイル導体22、第二コイル導体23、第三コイル導体24、第四コイル導体25及び第五コイル導体26、第一接続導体20、第二接続導体21、第三接続導体27及び第四接続導体28、及び、連結導体20a,28aは、各端子電極4,5と異なる導電性材料を含んでいてもよい。
【0050】
第一コイル導体22、第二コイル導体23、第三コイル導体24、第四コイル導体25及び第五コイル導体26、第一接続導体20、第二接続導体21、第三接続導体27及び第四接続導体28、及び、連結導体20a,28aは、対応する誘電体層6に形成されている欠損部に設けられている。第一コイル導体22、第二コイル導体23、第三コイル導体24、第四コイル導体25及び第五コイル導体26、第一接続導体20、第二接続導体21、第三接続導体27及び第四接続導体28、及び、連結導体20a,28aは、グリーンシートに形成された欠損部内に位置している導電性ペーストが焼成されることによって、形成される。上述したようにグリーンシートと導電性ペーストとは同時に焼成される。したがって、グリーンシートから誘電体層6が得られる際に、導電性ペーストから第一コイル導体22、第二コイル導体23、第三コイル導体24、第四コイル導体25及び第五コイル導体26、第一接続導体20、第二接続導体21、第三接続導体27及び第四接続導体28、及び、連結導体20a,28aが得られる。
【0051】
グリーンシートに形成される欠損部は、たとえば、以下の過程によって形成される。まず、誘電体層6の構成材料及び感光性材料を含む素体ペーストを基材上に付与することにより、グリーンシートを形成する。基材は、たとえば、PETフィルムである。素体ペーストに含まれる感光性材料は、ネガ型及びポジ型のどちらであってもよく、公知のものを用いることができる。次に、欠損部に対応するマスクを用い、フォトリソグラフィ法によりグリーンシートを露光及び現像し、基材上のグリーンシートに欠損部を形成する。欠損部が形成されたグリーンシートは、素体パターンである。
【0052】
電極層10,11,12,13,14,15、第一コイル導体22、第二コイル導体23、第三コイル導体24、第四コイル導体25及び第五コイル導体26、第一接続導体20、第二接続導体21、第三接続導体27及び第四接続導体28、及び、連結導体20a,28aは、たとえば、以下の過程によって形成される。
【0053】
まず、感光性材料を含む導電性ペーストを基材上に付与することにより、導体材料層を形成する。導電性ペーストに含まれる感光性材料は、ネガ型及びポジ型のどちらであってもよく、公知のものを用いることができる。次に、欠損部に対応するマスクを用い、フォトリソグラフィ法により導体材料層を露光及び現像し、欠損部の形状に対応する導体パターンを基材上に形成する。
【0054】
積層コイル部品1は、たとえば、上述した過程に続く以下の過程によって得られる。導体パターンが、素体パターンの欠損部に組み合わされることにより、素体パターンと導体パターンとが同一層とされたシートが用意される。用意した所定枚数のシートを積層して得られた積層体を熱処理した後に、積層体から、複数のグリーンチップを得る。本過程では、たとえば、切断機で、グリーン積層体をチップ状に切断する。これにより、所定の大きさを有する複数のグリーンチップが得られる。次に、グリーンチップを焼成する。この焼成により、積層コイル部品1が得られる。積層コイル部品1では、端子電極4,5とコイル8とが一体に形成されている。
【0055】
図2に示されるように、第三方向D3から見て、端子電極4とコイル8とは重なっていない。同様に、第三方向D3から見て、端子電極5とコイル8とは重なっていない。また、
図4(b)に示されるように、第二方向D2から見て、端子電極4とコイル8とは重なっていない。同様に、第二方向D2から見て、端子電極5とコイル8とは重なっていない。
【0056】
積層コイル部品1の製造工程では、上記のように、基材上に所定枚数のシートを積層して積層体を得て、積層体を切断する。積層体を切断する際、積層体を基材から剥離する。このとき、電極層10,11と誘電体層6との接着力が小さい場合、基材上に配置されていた電極層10,11が基材に付着して欠損したり、電極層10,11の一部が積層体から剥離したりすることがある。また、切断機によって切断する際には、基材に接していた面を切断機の刃の進入面とする。このとき、切断機の刃によって、電極層10,11が剥離するおそれがあり、特に、電極層10,11の一部が既に剥離していた場合には、刃が進入したときに電極層10,11が容易に剥離し得る。電極層10,11が剥離した状態でバレル研磨を行うと、端子電極4,5が素体2から剥離することがある。
【0057】
上記の問題に関して、本実施形態に係る積層コイル部品1では、端子電極4における電極部分4a,4eは、電極部分4b,4dの少なくとも一部と重なっている重複部分A1と、電極部分4b,4dと重なっていない非重複部分A2と、を有している。これにより、積層コイル部品1では、素体2の側面2e,2fに露出する電極部分4a,4eの非重複部分A2において、素体2と対向する面で素体2との接触面積を確保できる。電極部分4a,4b,4c,4d,4e同士の接着力よりも、電極部分a,4b,4c,4d,4eと素体2との接着力の方が大きい。端子電極5についても同様の構成を有している。したがって、積層コイル部品1では、端子電極4,5と素体2との接合強度を確保することによって、端子電極4,5が素体2から剥離することを抑制できる。その結果、積層コイル部品1では、端子電極4,5における不具合の発生を抑制できる。
【0058】
本実施形態に係る積層コイル部品1では、電極部分4b,4dは、第三方向D3から見て、L字状を呈しており、第一方向D1に沿って延在する第一部分と、第二方向D2に沿って延在する第二部分と、を有している。電極部分4a,4eの非重複部分A2は、第一部分及び第二部分により形成されている隅部に対応する領域を含んでいる。この構成では、非重複部分A2において、素体2との接触面積をより確実に確保できる。したがって、積層コイル部品1では、端子電極4,5が素体2から剥離することを抑制でき、端子電極4,5における不具合の発生を抑制できる。
【0059】
本実施形態に係る積層コイル部品1では、第三方向D3から見て、一対の端子電極4,5のそれぞれとコイル8とが重なっていない。この構成では、一対の端子電極4,5のそれぞれとコイル8との間に発生する浮遊容量を小さくすることができる。これにより、積層コイル部品1では、特性の向上が図れる。
【0060】
本実施形態に係る積層コイル部品1では、第二方向D2から見て、一対の端子電極4,5のそれぞれとコイル8とが重なっていない。この構成では、一対の端子電極4,5のそれぞれとコイル8との間に発生する浮遊容量を小さくすることができる。これにより、積層コイル部品1では、特性の向上が図れる。
【0061】
[第二実施形態]
続いて、第二実施形態について説明する。
図5、
図7(a)及び
図7(b)に示されるように、積層コイル部品1Aは、素体2と、一対の端子電極4A,5Aと、を備えている。積層コイル部品1Aは、端子電極4A,5Aについて、積層コイル部品1と構成が異なっている。
【0062】
端子電極4Aは、端面2a、主面2d及び側面2e,2fに露出している。端子電極4Aは、複数の電極部分4Aa,4Ab,4Ac,4Ad,4Aeを有している。電極部分4Aa,4Ac,4Aeは、積層コイル部品1の電極部分4a,4c,4eと同じ構成である。
【0063】
電極部分4Ab,4Adは、第三方向D3から見て、L字形状を呈している。電極部分4Ab,4Adは、第一方向D1に沿って延在する第一部分と、第二方向D2に沿って延在する第二部分と、を有しており、第一部分と第二部分とが素体2の稜線部において接続されている。
図7(b)に示されるように、電極部分4Abは、側面2e側の一部が、側面2f側よりも第一方向D1において低くなっている。電極部分4Adは、側面2f側の一部が、側面2e側よりも第一方向D1において低くなっている。
【0064】
電極部分4Ae(4Aa)は、第三方向D3から見て、電極部分4Ad(4Ab)と重なる重複部分A1と、電極部分4Ad(4Ab)と重ならない非重複部分A2と、を有している。すなわち、電極部分4Ae(4Aa)は、第三方向D3において隣り合う電極部分と重なる部分及び重ならない部分を有している。電極部分4Ae(4Aa)において、電極部分4Ad(4Ab)と重ならない非重複部分A2は、L字形状を呈する電極部分4Ad(4Ab)の第一部分及び第二部分が形成している隅部に対応する領域を含んでおり、たとえば、三角形状を呈している。非重複部分A2において、第三方向D3の一方の側面は、露出しており、他方の側面は、素体2に接触している。
【0065】
図6に示されるように、端子電極4Aは、複数の電極層10と、複数の電極層12と、複数の電極層14と、複数の電極層16と、が積層されて構成されている。本実施形態では、電極層10の数は、「2」であり、電極層12の数は、「2」であり、電極層14の数は、「7」であり、電極層16の数は、「2」である。電極層16は、電極部分4Ab,4Adを構成している。電極層16は、電極層12よりも、第一方向における高さが低い。これにより、電極層12及び電極層16により構成される電極部分4Ab,4Adは、主面2c側の端部が段差状となっている。
【0066】
図5、
図7(a)及び
図7(b)に示されるように、端子電極5Aは、端面2b、主面2d及び側面2e,2fに露出している。端子電極5Aは、複数の電極部分5Aa,5Ab,5Ac,5Ad,5Aeを有している。電極部分5Aa,5Ac,5Aeは、積層コイル部品1の電極部分5a,5c,5eと同じ構成である。
【0067】
電極部分5Ab,5Adは、第三方向D3から見て、L字形状を呈している。電極部分5Ab,5Adは、第一方向D1に沿って延在する第一部分と、第二方向D2に沿って延在する第二部分と、を有しており、第一部分と第二部分とが素体2の稜線部において接続されている。
図7に示されるように、電極部分5Abは、側面2e側の一部が、側面2f側よりも第一方向D1において低くなっている。電極部分5Adは、側面2f側の一部が、側面2e側よりも第一方向D1において低くなっている。
【0068】
電極部分5Ae(5Aa)は、第三方向D3から見て、電極部分5Ad(5Ab)と重なる重複部分A1と、電極部分5Ad(5Ab)と重ならない非重複部分A2と、を有している。すなわち、電極部分5Ae(5Aa)は、第三方向D3において隣り合う電極部分と重なる部分及び重ならない部分を有している。電極部分5Ae(5Aa)において、電極部分5Ad(5Ab)と重ならない非重複部分A2は、L字形状を呈する電極部分5Ad(5Ab)の第一部分及び第二部分が形成している隅部に対応する領域を含んでおり、たとえば、三角形状を呈している。非重複部分A2において、第三方向D3の一方の側面は、露出しており、他方の側面は、素体2に接触している。
【0069】
図6に示されるように、端子電極5Aは、複数の電極層11と、複数の電極層13と、複数の電極層15と、複数の電極層17と、が積層されて構成されている。本実施形態では、電極層11の数は、「2」であり、電極層13の数は、「2」であり、電極層15の数は、「7」であり、電極層17の数は、「2」である。電極層17は、電極部分5Ab,5Adを構成している。電極層17は、電極層13よりも、第一方向における高さが低い。これにより、電極層13及び電極層17により構成される電極部分5Ab,5Adは、主面2c側の端部が段差状となっている。
【0070】
以上説明したように、本実施形態に係る積層コイル部品1Aでは、積層コイル部品1と同様の作用効果を奏する。
【0071】
[第三実施形態]
続いて、第三実施形態について説明する。
図8、
図10(a)及び
図10(b)に示されるように、積層コイル部品1Bは、素体2と、一対の端子電極4B,5Bと、を備えている。積層コイル部品1Bは、端子電極4B,5Bについて、積層コイル部品1と構成が異なっている。
【0072】
端子電極4Bは、端面2a、主面2d及び側面2e,2fに露出している。端子電極4Bは、複数の電極部分4Ba,4Bb,4Bc,4Bd,4Beを有している。電極部分4Ba,4Bc,4Beは、積層コイル部品1の電極部分4a,4c,4eと同じ構成である。
【0073】
電極部分4Bb,4Bdは、第三方向D3から見て、L字形状を呈している。電極部分4Bb,4Bdは、第一方向D1に沿って延在する第一部分と、第二方向D2に沿って延在する第二部分と、を有しており、第一部分と第二部分とが素体2の稜線部において接続されている。
図10(b)に示されるように、電極部分4Bbは、側面2f側の一部が、側面2e側よりも第一方向D1において低くなっている。電極部分4Bdは、側面2e側の一部が、側面2f側よりも第一方向D1において低くなっている。
【0074】
電極部分4Be(4Ba)は、第三方向D3から見て、電極部分4Bd(4Bb)と重なる重複部分A1と、電極部分4Bd(4Bb)と重ならない非重複部分A2と、を有している。すなわち、電極部分4Be(4Ba)は、第三方向D3において隣り合う電極部分と重なる部分及び重ならない部分を有している。電極部分4Be(4Ba)において、電極部分4Bd(4Bb)と重ならない非重複部分A2は、L字形状を呈する電極部分4Bd(4Bb)の第一部分及び第二部分が形成している隅部に対応する領域を含んでおり、たとえば、三角形状を呈している。非重複部分A2において、第三方向D3の一方の側面は、露出しており、他方の側面は、素体2に接触している。
【0075】
図9に示されるように、端子電極4Bは、複数の電極層10と、複数の電極層12と、複数の電極層14と、複数の電極層18と、が積層されて構成されている。本実施形態では、電極層10の数は、「2」であり、電極層12の数は、「2」であり、電極層14の数は、「7」であり、電極層18の数は、「2」である。電極層18は、電極部分4Bb,4Bdを構成している。電極層18は、電極層12よりも、第一方向における高さが低い。これにより、電極層12及び電極層18により構成される電極部分4Bb,4Bdは、主面2c側の端部が段差状となっている。
【0076】
図8、
図10(a)及び
図10(b)に示されるように、端子電極5Bは、端面2b、主面2d及び側面2e,2fに露出している。端子電極5Bは、複数の電極部分5Ba,5Bb,5Bc,5Bd,5Beを有している。電極部分5Ba,5Bc,5Beは、積層コイル部品1の電極部分5a,5c,5eと同じ構成である。
【0077】
電極部分5Bb,5Bdは、第三方向D3から見て、L字形状を呈している。電極部分5Bb,5Bdは、第一方向D1に沿って延在する第一部分と、第二方向D2に沿って延在する第二部分と、を有しており、第一部分と第二部分とが素体2の稜線部において接続されている。
図10(b)に示されるように、電極部分5Bbは、側面2f側の一部が、側面2e側よりも第一方向D1において低くなっている。電極部分5Bdは、側面2e側の一部が、側面2f側よりも第一方向D1において低くなっている。
【0078】
電極部分5Be(5Ba)は、第三方向D3から見て、電極部分5Bd(5Bb)と重なる重複部分A1と、電極部分5Bd(5Bb)と重ならない非重複部分A2と、を有している。すなわち、電極部分5Be(5Ba)は、第三方向D3において隣り合う電極部分と重なる部分及び重ならない部分を有している。電極部分5Be(5Ba)において、電極部分5Bd(5Bb)と重ならない非重複部分A2は、L字形状を呈する電極部分5Bd(5Bb)の第一部分及び第二部分が形成している隅部に対応する領域を含んでおり、たとえば、三角形状を呈している。非重複部分A2において、第三方向D3の一方の側面は、露出しており、他方の側面は、素体2に接触している。
【0079】
図9に示されるように、端子電極5Bは、複数の電極層11と、複数の電極層13と、複数の電極層15と、複数の電極層19と、が積層されて構成されている。本実施形態では、電極層11の数は、「2」であり、電極層13の数は、「2」であり、電極層15の数は、「7」であり、電極層19の数は、「2」である。電極層19は、電極部分5Bb,5Bdを構成している。電極層19は、電極層13よりも、第一方向における高さが低い。これにより、電極層13及び電極層19により構成される電極部分5Bb,5Bdは、主面2c側の端部が段差状となっている。
【0080】
以上説明したように、本実施形態に係る積層コイル部品1Bでは、積層コイル部品1と同様の作用効果を奏する。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0082】
上記実施形態では、端子電極4の電極部分4a,4e(4Aa,4Ae,4Ba,4Be)の形状が
図3に示される形状である形態を一例に説明した。しかし、端子電極4の電極部分4a,4eの形状はこれに限定されない。例えば、
図11(a)に示されるように、積層コイル部品1Cにおける端子電極4Cの電極部分4Ceは、湾曲部分を有していてもよい。湾曲部分は、コイル8から離間する方向に向かって凸状に湾曲している。また、
図11(b)に示されるように、積層コイル部品1Dにおける電極部分4Dの電極部分4Deは、凹凸部分を有していてもよい。このような構成では、素体2との接触面積を確保しつつ、コイル8との間に発生する浮遊容量を低減できる。端子電極5Cの電極部分5Ce及び端子電極5Dの電極部分5Deについても同様である。
【0083】
上記実施形態では、コイル8が、第一コイル導体22、第二コイル導体23、第三コイル導体24、第四コイル導体25及び第五コイル導体26を有している形態を一例に説明した。しかし、コイル8を構成する複数のコイル導体の数は上述した値に限られない。
【0084】
上記実施形態では、端子電極4の電極部分4b,4dが第一部分及び第二部分を有しており、電極部分4b,4dが第三方向D3から見てL字形状を呈している形態を一例に説明した。電極部分4b,4dの第一部分は、第三方向D3から見て、全体として第一方向D1に沿って延在していればよい。また、電極部分4b,4dの第二部分は、第三方向D3から見て、全体として第二方向D2に沿って延在していればよい。そのため、電極部分4b,4dの第一部分及び第二部分において、素体2と接触(対向)する面には、凹凸が設けられていてもよい。端子電極4A,4B、及び、端子電極5,5A,5Bについても同様である。
【0085】
上記実施形態では、端子電極4の電極部分4b,4dの第一部分及び第二部分が形成している隅部が、略直角を成す第一部分及び第二部分によって画成されている形態を一例に説明した。しかし、隅部は、第一部分から第二部分に向かって湾曲する面で画成されていてもよいし、第一部分から第二部分に向かって直線的に傾斜する面によって画成されていてもよい。端子電極4A,4B、及び、端子電極5,5A,5Bについても同様である。
【符号の説明】
【0086】
1,1A,1B,1C,1D…積層コイル部品、2…素体、2a,2b…端面、2c,2d…主面(実装面)、2e,2f…側面、4…端子電極、4a,4b,4c,4d,4e,4Aa,4Ab,4Ac,4Ad,4Ae,4Ba,4Bb,4Bc,4Bd,4Be…電極部分、5…端子電極、5a,5b,5c,5d,5e,5Aa,5Ab,5Ac,5Ad,5Ae,5Ba,5Bb,5Bc,5Bd,5Be…電極部分、6…誘電体層、8…コイル、A1…重複部分、A2…非重複部分、AX…コイル軸。