(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】吸収式ヒートポンプ装置
(51)【国際特許分類】
F25B 37/00 20060101AFI20231108BHJP
F25B 15/14 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
F25B37/00
F25B15/14
(21)【出願番号】P 2019142827
(22)【出願日】2019-08-02
【審査請求日】2022-07-19
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成28年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「エネルギー使用合理化技術開発など(未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】坪内 修
【審査官】関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-026260(JP,A)
【文献】特開2000-266495(JP,A)
【文献】特表平07-504741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 37/00
F25B 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃縮吸収液に冷媒蒸気を吸収させる吸収式ヒートポンプ装置であって、
冷媒を蒸発させる蒸発器と、
前記蒸発器で蒸発した前記冷媒蒸気を前記濃縮吸収液に吸収させて希釈吸収液を生成する吸収器とを備え、
前記吸収器は、
前記濃縮吸収液が塗布される外表面を有し、前記外表面に塗布された前記濃縮吸収液への前記冷媒蒸気の吸収熱を除去する熱交換器と、
前記吸収器に供給される前記濃縮吸収液を前記熱交換器の前記外表面に沿って塗布する回転塗布体と、
前記熱交換器を取り囲むように覆い、前記希釈吸収液を透過させることなく前記冷媒蒸気を透過させる膜部材と、
前記膜部材を前記膜部材の内周側から保持する膜形状保持部と、
前記膜形状保持部の内周に設けられ、前記回転塗布体から飛散する前記希釈吸収液が前記膜部材の内周面に付着することを抑制する複数の翼部とを含
み、
前記吸収器は、生成された前記希釈吸収液を溜める液溜まり部をさらに含み、
前記複数の翼部は、前記液溜まり部よりも上方に配置されるとともに、前記回転塗布体の回転中心軸線回りの周方向に沿って所定角度ごとに前記膜形状保持部の内周に配置されており、
前記複数の翼部は、多孔質体により形成されており、
前記吸収器は、多孔質体により形成され、前記複数の翼部の根元部が接続される枠部をさらに含む、吸収式ヒートポンプ装置。
【請求項2】
前記熱交換器の前記外表面は、前記回転塗布体の
前記回転中心軸線回りの
前記周方向に沿う円形状を有し、
前記複数の翼部の各々は、前記回転塗布体の回転方向に沿って、前記回転塗布体の
前記回転中心軸線の延びる方向に直交する径方向に対して傾斜した状態で前記膜部材を内側から覆っている、請求項
1に記載の吸収式ヒートポンプ装置。
【請求項3】
前記吸収器は
、前記膜形状保持部の下部に配置され、前記液溜まり部が内部に設けられたトレ
イをさらに含む、請求項1
または2に記載の吸収式ヒートポンプ装置。
【請求項4】
前記膜形状保持部は、前記膜形状保持部の表面に付着した前記希釈吸収液をはじく撥水部材により形成されている、請求項1~
3のいずれか1項に記載の吸収式ヒートポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収式ヒートポンプ装置に関し、特に、濃縮吸収液に冷媒蒸気を吸収させる吸収式ヒートポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、濃縮吸収液に冷媒蒸気を吸収させる吸収式ヒートポンプ装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、濃液(濃縮吸収液)に冷媒蒸気を吸収させる吸収式ヒートポンプ装置が開示されている。この吸収式ヒートポンプ装置は、蒸発器と、吸収器とを備えている。蒸発器は、凝縮水となった冷媒を低温低圧の条件下で蒸発(気化)させるように構成されている。吸収器は、濃液状態で供給された吸収液に蒸発器において蒸発した冷媒蒸気を吸収させるように構成されている。
【0004】
上記特許文献1の吸収器は、回転塗布体と、熱交換器と、膜部材とを含んでいる。回転塗布体は、熱交換器の外表面に沿って回転し、熱交換器の外表面に濃液を塗布するように構成されている。熱交換器は、熱交換器の外表面に塗布された濃液に冷媒蒸気を吸収させた際に生じる吸収熱を除去するように構成されている。この際、熱交換器の外表面には、希液が生成されている。膜部材は、吸収液を透過させずに冷媒蒸気を透過可能に構成されている。また、膜部材は、回転塗布体および熱交換器を取り囲むように覆っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の吸収式ヒートポンプ装置では、回転塗布体を熱交換器の外表面に沿って回転させる際、熱交換器の外表面に生成された希液が回転塗布体の回転に起因して飛散する。そして、飛散した希液が、膜部材の内周面に付着すると、希液の粘性に起因して膜部材の内周面に付着したまま残る場合がある。この場合、吸収式ヒートポンプ装置では、冷媒蒸気の膜部材に対する透過量が減少することになる。このため、回転塗布体(回転塗布体)の回転に伴って飛散した希液(希釈吸収液)が膜部材の内周面に付着することを抑制することが望まれている。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、回転塗布体の回転に伴って飛散した希釈吸収液が膜部材の内周面に付着することを抑制することにより、冷媒蒸気の膜部材に対する透過量が減少することを抑制可能な吸収式ヒートポンプ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における吸収式ヒートポンプ装置は、濃縮吸収液に冷媒蒸気を吸収させる吸収式ヒートポンプ装置であって、冷媒を蒸発させる蒸発器と、蒸発器で蒸発した冷媒蒸気を濃縮吸収液に吸収させて希釈吸収液を生成する吸収器とを備え、吸収器は、濃縮吸収液が塗布される外表面を有し、外表面に塗布された濃縮吸収液への冷媒蒸気の吸収熱を除去する熱交換器と、吸収器に供給される濃縮吸収液を熱交換器の外表面に沿って塗布する回転塗布体と、熱交換器を取り囲むように覆い、希釈吸収液を透過させることなく冷媒蒸気を透過させる膜部材と、膜部材を膜部材の内周側から保持する膜形状保持部と、膜形状保持部の内周に設けられ、回転塗布体から飛散する希釈吸収液が膜部材の内周面に付着することを抑制する複数の翼部とを含み、吸収器は、生成された希釈吸収液を溜める液溜まり部をさらに含み、複数の翼部は、液溜まり部よりも上方に配置されるとともに、回転塗布体の回転中心軸線回りの周方向に沿って所定角度ごとに膜形状保持部の内周に配置されており、複数の翼部は、多孔質体により形成されており、吸収器は、多孔質体により形成され、複数の翼部の根元部が接続される枠部をさらに含む。
【0009】
この発明の一の局面による吸収式ヒートポンプ装置では、上記のように、膜形状保持部の内周に設けられ、回転塗布体から飛散する希釈吸収液が膜部材の内周面に付着することを抑制する複数の翼部を設ける。これにより、回転塗布体を熱交換器の外表面に沿って回転させる際、熱交換器の外表面に生成された希釈吸収液が回転塗布体の回転に起因して飛散したとしても、回転塗布体の回転に伴って膜部材に向かって飛散した希釈吸収液を複数の翼部に付着させることができる。その結果、回転塗布体の回転に伴って膜部材に向かって飛散した希釈吸収液が膜部材の内周面に付着することを抑制することにより、冷媒蒸気の膜部材に対する透過量が減少することを抑制することができる。また、膜部材の内部の圧力が低下して膜部材が収縮した場合でも、膜部材を膜部材の内周側から保持する膜形状保持部により、膜部材の形状を保持することができる。その結果、膜部材の収縮に起因する熱交換器への膜部材の接触を抑制することができるので、膜部材への希釈吸収液の付着を抑制することができる。これによっても、冷媒蒸気の膜部材に対する透過量が減少することを抑制することができる。
また、回転塗布体の回転に起因して飛散する希釈吸収液が膜部材に付着する箇所である液溜まり部よりも上方において複数の翼部を配置することにより、より効果的に膜部材に向かって飛散する希釈吸収液を翼部に付着させることができる。また、所定角度ごとに膜形状保持部の内周に複数の翼部を配置することにより、複数の翼部の各々の大きさに合わせて、膜部材の内周面を覆うように適切に複数の翼部を配置することができる。これらの結果、複数の翼部により回転塗布体の回転に伴って飛散した希釈吸収液をより一層効果的に翼部に付着させることができる。
また、複数の翼部および枠部に付着させた希釈吸収液を、複数の翼部および枠部に染み込ませて複数の翼部および枠部内にトラップする(捕らえる)ことができるとともに、染み込んだ希釈吸収液を多孔質体の翼部から多孔質体の枠部に毛細管現象により流動させて液溜まり部に流出させることができる。その結果、枠部および複数の翼部に希釈吸収液が付着したまま残ったことに起因して希釈吸収液が膜部材の内周面に付着することを抑制することができる。
【0014】
上記一の局面による吸収式ヒートポンプ装置において、好ましくは、熱交換器の外表面は、回転塗布体の回転中心軸線回りの周方向に沿う円形状を有し、複数の翼部の各々は、回転塗布体の回転方向に沿って、回転塗布体の回転中心軸線の延びる方向に直交する径方向に対して傾斜した状態で膜部材を内側から覆っている。
【0015】
このように構成すれば、回転塗布体の回転に伴って飛散する希釈吸収液の飛散方向に合わせて複数の翼部を傾斜して設けているので、複数の翼部により回転塗布体の回転に伴って飛散した希釈吸収液をより効果的に翼部に付着させることができるとともに、複数の翼部のうちの隣り合う翼部同士の間の隙間から十分な量の冷媒蒸気を熱交換器に供給することができる。
【0016】
上記一の局面による吸収式ヒートポンプ装置において、好ましくは、膜形状保持部の下部に配置され、液溜まり部が内部に設けられたトレイをさらに含む。
【0017】
このように構成すれば、膜部材の下部に希釈吸収液を貯留する場合と異なり、トレイ内の液溜まり部に希釈吸収液を貯留させることにより、希釈吸収液の荷重に起因する膜部材の変形を防止することができる。その結果、膜部材の変形に起因する熱交換器への膜部材の接触を抑制することができるので、膜部材への希釈吸収液の付着をより抑制することができる。
【0018】
上記一の局面による吸収式ヒートポンプ装置において、好ましくは、膜形状保持部は、膜形状保持部の表面に付着した希釈吸収液をはじく撥水部材により形成されている。
【0019】
このように構成すれば、膜形状保持部に付着した希釈吸収液を付着したまま残らないようにすることができるので、翼部を超えて希釈吸収液が膜形状保持部に付着した場合にも、膜形状保持部に付着した希釈吸収液が膜部材の内周面に付着することを抑制することができる。
【0020】
なお、本出願では、上記一の局面による吸収式ヒートポンプ装置とは別に、以下のような他の構成も考えられる。
【0021】
(付記項1)
上記撥水部材により形成された膜形状保持部を備える吸収式ヒートポンプ装置において、膜部材は、膜部材の内周面に設けられ、膜部材の内周面に付着した希釈吸収液をはじく撥水部を有する。
【0022】
このように構成すれば、翼部同士の隙間を通過した希釈吸収液が膜部材に付着した場合にも、膜部材に付着した希釈吸収液を付着したまま残らないようにすることができるので、膜部材に希釈吸収液が付着したことに起因する冷媒蒸気の膜部材に対する透過量の減少をより抑制することができる。
【0023】
(付記項2)
上記一の局面による吸収式ヒートポンプ装置において、複数の翼部は、回転塗布体の回転中心軸線回りの周方向において、隣り合う一方側の翼部および他方側の翼部を有し、一方側の翼部の先端部と他方側の翼部の根元部とは、回転塗布体の回転方向の接線方向から視てオーバーラップしている。
【0024】
このように構成すれば、複数の翼部により回転塗布体の回転に伴って飛散した希釈吸収液をより確実に翼部に付着させることができるので、冷媒蒸気の膜部材に対する透過量が減少することをより抑制することができる。
【0025】
(付記項3)
上記一の局面による吸収式ヒートポンプ装置において、膜形状保持部は、回転塗布体の回転中心軸線の延びる方向に間隔を空けて複数並んで配置され、複数の翼部は、回転塗布体の回転中心軸線の延びる方向において、複数の膜形状保持部以外の部分に分割して配置されている。
【0026】
このように構成すれば、回転塗布体の回転に伴って飛散した希釈吸収液が膜部材に付着する箇所である、複数の膜形状保持部以外の部分に絞って複数の翼部を配置することにより、複数の翼部により回転塗布体の回転に伴って飛散した希釈吸収液をより効果的に翼部に付着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】一実施形態による吸収式ヒートポンプ装置の全体構成を示した図である。
【
図2】一実施形態による吸収式ヒートポンプ装置の吸収器を示した斜視図である。
【
図3】一実施形態による吸収式ヒートポンプ装置の吸収器を示した正面図である。
【
図4】
図4(A)は吸収器の膜部材、翼部、膜形状保持部およびトレイを外した状態を示した斜視図である。
図4(B)は熱交換器、回転塗布体、冷却水供給管、冷却水排出管および濃液供給管を示した斜視図である。
【
図5】
図3に示す吸収式ヒートポンプ装置の吸収器のX1方向側の膜部材を外した状態を示した正面図である。
【
図6】一実施形態による吸収式ヒートポンプ装置の吸収器の翼部および膜形状保持部を示した斜視図である。
【
図7】一実施形態による吸収式ヒートポンプ装置の吸収器の翼部および枠部を切り起こして形成する過程を示した模式図である。
【
図8】一実施形態による吸収式ヒートポンプ装置の吸収器の翼部および枠部を流動する希釈吸収液の状態を示した正面図である。
【
図9】一実施形態による吸収式ヒートポンプ装置の吸収器の翼部、膜形状保持部およびトレイを示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0029】
図1~
図9を参照して、本実施形態による吸収式ヒートポンプ装置100の構成について説明する。
【0030】
(吸収式ヒートポンプ装置の構成)
吸収式ヒートポンプ装置100では、冷媒としての水と、吸収液としての臭化リチウム(LiBr)水溶液とが用いられる。また、吸収式ヒートポンプ装置100は、エンジンEを備えた車両に搭載されるとともに車内の空調システムに適用されるように構成されている。
【0031】
吸収式ヒートポンプ装置100は、
図1に示すように、冷却水回路1と、再生器2(二点鎖線枠内)と、凝縮器3と、蒸発器4と、吸収器5とを備える。
【0032】
冷却水回路1は、冷却水を循環させるように構成されている。冷却水回路1は、凝縮器3における冷媒蒸気の冷却と、吸収器5における冷媒の吸収液への吸収時に発生する吸収熱の除去とに用いられる。
【0033】
具体的には、冷却水回路1は、冷却水循環路10と、ポンプ11と、放熱部12とを含む。また、冷却水循環路10には、後述する熱交換器31と、後述する熱交換器52(
図4(B)参照)とが配置されている。冷却水循環路10は、ポンプ11により吐出された冷却水を流通させるように構成されている。熱交換器31は、凝縮器3に配置されている。熱交換器31は、凝縮器3における冷媒蒸気の冷却に用いられている。熱交換器52は、吸収器5に配置されている。熱交換器52は、吸収器5における吸収熱の除去に用いられている。放熱部12では、熱交換器31および熱交換器52を流通した冷却水が送風機12aにより送風された空気(外気)によって冷却(放熱)される。
【0034】
再生器2は、吸収器5から供給される希釈吸収液から冷媒蒸気(高温水蒸気)を分離して濃縮吸収液を生成するように構成されている。
【0035】
具体的には、再生器2は、加熱部21と、気液分離部22とを含む。加熱部21は、希釈吸収液を加熱するように構成されている。加熱部21では、エンジンEから引き回された排気管6を流通する高温の排気ガスと吸収液とが熱交換される。気液分離部22は、加熱部21により加熱された吸収液から冷媒蒸気を分離するように構成されている。
【0036】
凝縮器3は、再生器2で分離された冷媒蒸気を凝縮(液化)させるように構成されている。詳細には、凝縮器3は、再生器2において分離された冷媒水蒸気と冷却水回路1から供給された冷却水とを熱交換器31において熱交換させることにより、冷媒として凝縮(液化)させるように構成されている。
【0037】
蒸発器4は、凝縮器3において凝縮された冷媒を低温低圧の条件下で蒸発(気化)させるように構成されている。詳細には、蒸発器4は、冷却水回路1を流れる冷却水から凝縮器3において凝縮された冷媒が熱を奪うことによって、冷媒を蒸発させるように構成されている。
【0038】
具体的には、蒸発器4は、容器41と、ポンプ42および噴射器43と、熱交換器44とを含んでいる。容器41は、内部を絶対圧力で約1kPa以下の真空状態に保持可能に構成されている。容器41の下部には、凝縮器3において凝縮した冷媒が貯留されている。ポンプ42は、容器41の下部に貯留された冷媒を汲み上げるように構成されている。噴射器43は、ポンプ42により汲み上げられた冷媒を熱交換器44に向けて噴霧するように構成されている。熱交換器44では、噴霧された冷媒(水)が蒸発して冷媒蒸気になる際に冷却水から潜熱(蒸発潜熱)を奪うことにより、冷却水が冷却される。
【0039】
(吸収器)
吸収器5は、再生器2において生成された濃縮吸収液に蒸発器4で気化した冷媒蒸気を吸収させるように構成されている。つまり、吸収器5は、濃縮吸収液に冷媒を吸収させることにより、濃縮吸収液を希釈した状態の希釈吸収液を生成するように構成されている。ここで、吸収器5は、蒸発器4における容器41の内部に設置されている。
【0040】
図2および
図3に示すように、具体的には、吸収器5は、膜部材51(ハッチングにより示す)と、複数(3個)の熱交換器52と、回転軸53と、複数(3個)の回転塗布体54とを含んでいる。また、吸収器5には、冷却水供給管55(
図4(A)参照)、冷却水排出管56、濃液供給管57および希液排出管(図示せず)が設けられている。
【0041】
ここで、回転塗布体54の回転方向(周方向)をR方向とする。また、回転塗布体54の回転中心軸線Cの延びる方向をX方向とし、蒸発器4側をX1方向とし、その反対側をX2方向とする。また、回転塗布体54の回転中心軸線Cの延びる方向に直交する径方向をD方向とする。また、上下方向をZ方向とし、上方向をZ1方向とし、下方向をZ2方向とする。
【0042】
膜部材51は、熱交換器52を取り囲むように覆い、希釈吸収液を透過させることなく冷媒蒸気を透過させるように構成されている。膜部材51は、樹脂製の疎水性多孔質膜(たとえば、ポリテトラフルオロエチレンなど)により形成されている。すなわち、膜部材51は、容器41内において希釈吸収液を透過させることなく蒸発器4からの冷媒蒸気を透過可能な材料により形成されている。ここで、膜部材51は、膜部材51の内周面51a(
図5参照)に設けられ、膜部材51の内周面51aに付着した希釈吸収液をはじく撥水部を有している。すなわち、膜部材51が、内周面51aに配置される撥水部としての撥水コーティング層を有している。なお、膜部材51そのものを撥水部として撥水性を有する材質で形成してもよい。
【0043】
また、膜部材51は、複数の熱交換器52をX1方向側およびZ1方向側から覆っている。一方、膜部材51は、複数の熱交換器52をX2方向側およびZ2方向側から覆っていない。膜部材51のX2方向側の端部は、蒸発器4の容器41の内壁面41aに溶着(接合)されている。膜部材51のZ2方向側の端部は、トレイ155のZ1方向側の部分に溶着(接合)されている。
【0044】
このように、膜部材51は、熱交換器52および回転塗布体54が一体化された構造を取り囲むように覆っている。また、膜部材51の内部は、蒸発器4の容器41内の冷媒蒸気を内部に取り込むために、膜部材51の外部の圧力よりも低い圧力(たとえば、絶対圧力で約0.5kPa以下)の真空状態に保持されている。なお、膜部材51の内部とは、熱交換器52などが配置された膜部材51の内側空間のことであり、膜部材51の外部とは、熱交換器44などが配置された膜部材51の外側空間のことである。
【0045】
図4(A)および
図4(B)に示すように、複数の熱交換器52の各々は、冷却水と濃縮吸収液との熱交換を行うように構成されている。複数の熱交換器52は、X方向に一直線状に並んで配置されている。ここで、複数の熱交換器52の各々は同一の構造を有しているので、最もX1方向側に配置された熱交換器52について説明する。
【0046】
熱交換器52は、Z方向の長さに対してX方向の長さが小さい扁平状の中空円盤形状に形成されている。すなわち、熱交換器52の内部には、内部空間52aが形成されている。ここで、熱交換器52には、冷却水供給管55、冷却水排出管56、濃液供給管57、濃液供給ポート58および希液排出管(図示せず)が接続されている。冷却水供給管55および冷却水排出管56の各々は、冷却水循環路10に接続されている。濃液供給管57は、再生器2から流出した濃縮吸収液を流す流路に接続されている。希液供給管は、吸収器5から再生器2に希釈吸収液を流す流路に接続されている。
【0047】
冷却水供給管55は、熱交換器52のZ2方向側の端部に取り付けられている。冷却水供給管55は、熱交換器52の内部空間52aのZ2方向側の端部から冷却水を供給している。冷却水排出管56は、熱交換器52のZ1方向側の端部に取り付けられている。冷却水排出管56は、熱交換器52の内部空間52aのZ1方向側の端部から冷却水を排出している。濃液供給ポート58は、濃液供給管57から濃縮吸収液を供給可能に濃液供給管57に取り付けられている。濃液供給ポート58の表面には複数の孔部58aが形成されている。複数の孔部58aは、濃液供給管57から供給される濃縮吸収液を熱交換器52の外表面52bに供給している。
【0048】
このように、熱交換器52は、濃縮吸収液が塗布される外表面52bを有している。そして、熱交換器52は、外表面52bに塗布された濃縮吸収液への冷媒蒸気の吸収熱を除去するように構成されている。
【0049】
回転軸53は、複数の回転塗布体54をR方向に回転させるように構成されている。回転軸53は、複数の熱交換器52の各々を貫通している。回転軸53には、複数の回転塗布体54のD方向の中心部分が接続されている。また、回転軸53には、回転軸53をR方向に回転させるモータ(図示せず)が接続されている。
【0050】
回転塗布体54は、吸収器5に供給される濃縮吸収液を熱交換器52の外表面52bに沿って塗布するように構成されている。回転塗布体54は、一対のブラシ部材54aを有している。一対のブラシ部材54aは、R方向に所定角度(約180度)間隔で配置されている。一対のブラシ部材54aは、濃液供給ポート58から流下された濃縮吸収液を外表面52bに沿ってR方向に回転移動することにより、熱交換器52の外表面52bに薄く塗布するように構成されている。これにより、熱交換器52の外表面52bに塗布された濃縮吸収液に膜部材51を透過した冷媒蒸気を吸収しやすくなるとともに、吸収熱の除去を効率よく行うことができる。そして、一対のブラシ部材54aは、熱交換器52の外表面52bに沿ってR方向に回転移動することにより、熱交換器52の外表面52bに残留する希釈吸収液の除去をしつつ、希釈吸収液を除去した部分に濃縮吸収液を新たに塗布するように構成されている。
【0051】
〈翼部、膜形状保持部およびトレイ〉
図5に示すように、本実施形態の吸収器5は、膜部材51内において生成された希釈吸収液の膜部材51への付着を抑制するように構成されている。すなわち、吸収器5は、回転塗布体54の回転の際の遠心力により飛散した希釈吸収液に起因する膜部材51の目詰まりを抑制するように構成されている。ここで、
図5では、膜部材51のX1方向側の部分の記載および濃液供給ポート58を説明の便宜上省略している。
【0052】
具体的には、吸収器5は、複数(23個)の翼部151と、枠部152と、複数(3個)の膜形状保持部153と、液溜まり部154が内部に設けられたトレイ155とを含んでいる。ここで、液溜まり部154には、生成された希釈吸収液が溜められている。
【0053】
複数の翼部151は、多孔質体により形成されている。詳細には、複数の翼部151は、セラミック、樹脂(たとえば、ポリテトラフルオロエチレンなど)または金属により形成された板状の多孔質体により形成されている。また、複数の翼部151は、多孔質体であり、かつ、撥水性を有する材料により形成されていることがより好ましい。
【0054】
複数の翼部151は、膜形状保持部153の内周に設けられ、回転塗布体54から飛散する希釈吸収液が膜部材51の内周面51aに付着することを抑制するように構成されている。すなわち、複数の翼部151は、回転塗布体54から飛散する希釈吸収液が膜部材51の内周面51aに到達する前に飛散する希釈吸収液に衝突することにより、衝突した希釈吸収液をトラップする(捕らえる)ように構成されている。
【0055】
具体的には、複数の翼部151は、回転塗布体54の回転中心軸線C側から視て、膜部材51の内周面51aを覆うように構成されている。詳細には、複数の翼部151の各々は、R方向に沿って、D方向に対して傾斜した状態で膜部材51を内側から覆っている。また、複数の翼部151は、液溜まり部154よりもZ1方向に配置されるとともに、R方向に沿って所定角度θ1ごとに膜形状保持部153の内周に配置されている。ここで、膜部材51の内周面51aのうち複数の翼部151が配置されていない領域は、回転塗布体54の回転中心軸線C側から視て、トレイ155により覆われている。
【0056】
複数の翼部151は、均一な所定角度θ1(約15度)ごとに配置されている。すなわち、複数の翼部151は、R方向において、隣り合う一方側の翼部151aおよび他方側の翼部151bを有している。
【0057】
一方側の翼部151aの先端部351と他方側の翼部151bの根元部451とは、回転塗布体54の回転方向の接線方向であるT方向から視てオーバーラップしている。具体的には、複数の翼部151の各々は、回転塗布体54の回転方向および回転速度に合わせて、膜形状保持部153に対して所定角度θ2傾斜して所定長さL1突出している。ここで、所定角度θ2および所定長さL1により、R方向において、隣り合う一方側の翼部151aの先端部351と他方側の翼部151bの根元部451との隙間Sが形成されている。隙間Sは、所定のエンジン回転数の際、飛散する希釈吸収液の液滴の大きさによって設定されている。すなわち、所定角度θ2および所定長さL1は、所定のエンジン回転数の際の飛散する希釈吸収液の液滴の大きさによって設定されている。
【0058】
また、膜部材51を透過した冷媒水蒸気は、隣り合う一方側の翼部151aの先端部351と他方側の翼部151bの根元部451との隙間Sを通過し、熱交換器52の外表面52bに供給されている。したがって、隙間Sは、膜部材51を透過した冷媒水蒸気の流れの圧力損失の増大を抑制可能な大きさであることが好ましい。
【0059】
図6および
図7に示すように、複数の翼部151は、X方向に延びるとともに、複数の膜形状保持部153以外の部分に複数(3個)に分割して配置されている。ここで、複数の翼部151の各々は、X方向において、複数(3個)の分割翼部251を有している。複数の分割翼部251は、X方向に並んで配置されている。複数の分割翼部251の各々は、同様に、膜形状保持部153に対して所定角度θ2(
図5参照)傾斜して所定長さL1(
図5参照)突出している。
【0060】
複数の分割翼部251は、板状の多孔質体に曲げ加工を行うことにより形成されている。具体的には、複数の分割翼部251は、所定長さL1およびX方向における所定長さL2または所定長さL3に相当する長さを有する複数のスリットを形成した板状の多孔質体に対して、曲げ加工を行うことにより形成される。この際、複数のスリットの内側部分が、Up方向に板状部分から離れていく(切り起こされる)。これにより、複数の分割翼部251が形成されている。複数の分割翼部251の各々は、D方向の外側から視て、略矩形形状を有している。なお、複数の分割翼部251の各々の形状は、略矩形形状に限定されない。また、曲げ加工による切り起こし量が十分でない場合には、曲げ加工後に切り起こし量の調整を行ってもよい。
【0061】
枠部152は、多孔質体により形成され、複数の翼部151の根元部451が接続されている。すなわち、枠部152は、板状の多孔質体における翼部151以外の部分により構成されている。枠部152は、複数の第1枠部152aおよび複数の第2枠部152bを有している。
【0062】
複数の第1枠部152aは、X方向において、複数の分割翼部251の互いの間に形成されている。複数の第1枠部152aの各々は、R方向に沿って延びている。複数の第1枠部152aは、X方向に複数並んで配置されている。複数の第1枠部152aの各々は、C方向への曲げ加工により円環状に形成されている。このように、複数の翼部151は、複数の第1枠部152aによりX方向において分割されている。
【0063】
第2枠部152bは、R方向において、複数の分割翼部251の互いの間に形成されている。複数の第2枠部152bの各々は、X方向に沿って延びている。複数の第2枠部152bの各々は、X方向において、第1枠部152aにより複数(3個)に分割されている。複数の第2枠部152bの各々は、R方向に複数並んで配置されている。このように、複数の分割翼部251は、複数の第2枠部152bによりR方向において分割されている。これにより、R方向において、隣り合う一方側の翼部151aの先端部351と他方側の翼部151bの根元部451とは、D方向において、オーバーラップしない。
【0064】
図8に示すように、複数の翼部151は、表面に付着した希釈吸収液を枠部152を介して液溜まり部154に流すように構成されている。すなわち、複数の翼部151は、枠部152により液溜まり部154に繋がっている。ここで、複数の翼部151に付着した希釈吸収液の流れを、
図8において点線で示す。
【0065】
複数の翼部151および枠部152は、共に、多孔質体により形成されている。これにより、複数の翼部151の各々に付着した希釈吸収液は、多孔質体である複数の翼部151の毛細管現象により、複数の翼部151の内部に染み込む。そして、複数の翼部151の各々の内部に流入した希釈吸収液は、多孔質体である複数の翼部151および枠部152の毛細管現象により、複数の翼部151、枠部152の第1枠部152aおよび枠部152の第2枠部152bの順に流動し、液溜まり部154に流出する。
【0066】
図6に示すように、複数の膜形状保持部153は、柔軟な材質により形成される膜部材51の形状を保持するように構成されている。すなわち、複数の膜形状保持部153は、膜部材51が翼部151に張り付かないように、D方向において膜部材51と翼部151との間に隙間を形成している。
【0067】
複数の膜形状保持部153の各々は、X1方向側から視て、円弧形状を有している。複数の膜形状保持部153は、X方向に間隔を空けて並んで配置されている。複数の膜形状保持部153の各々は、翼部151の第1枠部152aを挟み込むように第1枠部152aに取り付けられている。
【0068】
複数の膜形状保持部153の各々は、表面に付着した希釈吸収液が留まりにくい部材で形成されている。すなわち、複数の膜形状保持部153の各々は、膜形状保持部153の外表面52bに付着した希釈吸収液をはじく撥水部材により形成されている。
【0069】
図9に示すように、トレイ155は、複数の翼部151においてトラップするとともに複数の翼部151および枠部152により流動した希釈級吸収液を貯留するように構成されている。
【0070】
具体的には、膜形状保持部153のZ2方向側部分に配置され、液溜まり部154が内部に設けられている。トレイ155は、膜部材51と容易に接合可能な材質により形成されている。トレイ155は、樹脂により形成されていることが好ましい。トレイ155は、膜形状保持部153に樹脂製の薄板を取り付けることにより形成されている。トレイ155は、膜形状保持部153に合わせてX1方向側から視て略半円状に形成されている。なお、トレイ155は、膜部材51と容易に接合可能な材質であれば金属などの他の材質であってもよい。
【0071】
複数の翼部151のいずれもが、液溜まり部154外に配置されている。また、少なくとも第1枠部152aのZ2方向側の部分は、液溜まり部154内に配置されている。これにより、複数の翼部151および枠部152を流動した希釈吸収液は、液溜まり部154に供給される。そして、希釈吸収液は、希液排出管を介して吸収器5の外部に排出されている。また、希釈吸収液は、回転塗布体54により掻き上げられて熱交換器52の外表面52bに塗布されている。
【0072】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0073】
本実施形態では、上記のように、吸収式ヒートポンプ装置100に、膜形状保持部153の内周に設けられ、回転塗布体54から飛散する希釈吸収液が膜部材51の内周面51aに付着することを抑制する複数の翼部151を設ける。これにより、回転塗布体54を熱交換器52の外表面52bに沿って回転させる際、熱交換器52の外表面52bに生成された希釈吸収液が回転塗布体54の回転に起因して飛散したとしても、回転塗布体54の回転に伴って膜部材51に向かって飛散した希釈吸収液を複数の翼部151に付着させることができる。この結果、回転塗布体54の回転に伴って膜部材51に向かって飛散した希釈吸収液が膜部材51の内周面51aに付着することを抑制することにより、冷媒蒸気の膜部材51に対する透過量が減少することを抑制することができる。また、膜部材51の内部の圧力が低下して膜部材51が収縮した場合でも、膜部材51を膜部材51の内周側から保持する膜形状保持部153により、膜部材51の形状を保持することができる。この結果、膜部材51の収縮に起因する熱交換器52への膜部材51の接触を抑制することができるので、膜部材51への希釈吸収液の付着を抑制することができる。これによっても、冷媒蒸気の膜部材51に対する透過量が減少することを抑制することができる。
【0074】
また、本実施形態では、上記のように、吸収器5に、生成された希釈吸収液を溜める液溜まり部154を設ける。複数の翼部151を、液溜まり部154よりも上方に配置されるとともに、R方向に沿って所定角度θ1ごとに膜形状保持部153の内周に配置する。これにより、回転塗布体54の回転に起因して飛散する希釈吸収液が膜部材51に付着する箇所である液溜まり部154よりも上方に絞って複数の翼部151を配置することにより、より効果的に膜部材51に向かって飛散する希釈吸収液を翼部151に付着させることができる。また、所定角度θ1ごとに膜形状保持部153の内周に複数の翼部151を配置することにより、複数の翼部151の各々の大きさに合わせて、膜部材51の内周面51aを覆うように適切に複数の翼部151を配置することができる。これらの結果、複数の翼部151により回転塗布体54の回転に伴って飛散した希釈吸収液をより一層効果的に翼部151に付着させることができる。
【0075】
また、本実施形態では、上記のように、複数の翼部151を、多孔質体により形成する。吸収器5に、多孔質体により形成され、複数の翼部151の根元部451が接続される枠部152を設ける。これにより、複数の翼部151および枠部152に付着させた希釈吸収液を、枠部152および複数の翼部151に染み込ませて複数の翼部151および枠部152内にトラップする(捕らえる)ことができるとともに、染み込んだ希釈吸収液を多孔質体の翼部151から多孔質体の枠部152に毛細管現象により流動させて液溜まり部154に流出させることができる。この結果、枠部152および複数の翼部151に希釈吸収液が付着したまま残ったことに起因して希釈吸収液が膜部材51の内周面51aに付着することを抑制することができる。
【0076】
また、本実施形態では、上記のように、熱交換器52の外表面52bを、R方向に沿う円形状に設ける。複数の翼部151の各々は、R方向に沿って、D方向に対して傾斜した状態で膜部材51を内側から覆っている。これにより、回転塗布体54の回転に伴って飛散する希釈吸収液の飛散方向に合わせて複数の翼部151を傾斜して設けているので、複数の翼部151により回転塗布体54の回転に伴って飛散した希釈吸収液をより効果的に翼部151に付着させることができるとともに、複数の翼部151のうちの隣り合う翼部151同士の間の隙間Sから十分な量の冷媒蒸気を熱交換器52に供給することができる。
【0077】
また、本実施形態では、上記のように、吸収器5に、生成された希釈吸収液を溜める液溜まり部154と、膜形状保持部153の下部に配置され、液溜まり部154が内部に設けられたトレイ155を設ける。これにより、膜部材51の下部に希釈吸収液を貯留する場合と異なり、トレイ155内の液溜まり部154に希釈吸収液を貯留させることにより、希釈吸収液の荷重に起因する膜部材51の変形を防止することができる。この結果、膜部材51の変形に起因する熱交換器52への膜部材51の接触を抑制することができるので、膜部材51への希釈吸収液の付着をより抑制することができる。
【0078】
また、本実施形態では、上記のように、膜形状保持部153を、膜形状保持部153の外表面52bに付着した希釈吸収液をはじく撥水部材により形成する。これにより、膜形状保持部153に付着した希釈吸収液を付着したまま残らないようにすることができるので、翼部151を超えて希釈吸収液が膜形状保持部153に付着した場合にも、膜形状保持部153に付着した希釈吸収液が膜部材51の内周面51aに付着することを抑制することができる。
【0079】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0080】
たとえば、上記実施形態では、吸収器5は、複数(23個)の翼部151を含んでいる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、吸収器は、2~22個または24個以上の翼部を含んでいてもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、円弧形状の複数の膜形状保持部153の各々が、第1枠部152aに挟み込むように取り付けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、膜形状保持部は、冷媒蒸気の通気および膜部材の形状保持を達成できるのであれば、円弧形状に限らず、たとえば、複数の通気孔が形成された円筒状などに形成されてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、吸収器5は、トレイ155を含んでいる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、吸収器にトレイを設けずに、膜部材に希釈吸収液を貯留してもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、枠部152および複数の翼部151は、多孔質体により形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、枠部および複数の翼部は、多孔質体でない材質により形成されていてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、枠部152および複数の翼部151は、板状の多孔質内にスリットを設けて切り起こすことにより一体に形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数の翼部は、枠部とは別体に設けて、枠部に接続されてもよい。この場合、複数の翼部の各々は、膜形状保持部以外の部分に分割することなく、膜形状保持部に跨って設けられてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、複数の翼部151の各々は、D方向に対して傾斜している例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数の翼部の各々は、D方向に沿って延びていてもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、膜形状保持部153は、撥水部材により形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、膜形状保持部は、撥水コーティング剤により表面に撥水コーティング層としての撥水部が形成された部材により形成されてもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、膜部材51は、内表面に撥水部を有している例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、膜部材は、撥水部を有していなくてもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、トレイ155は、膜保持部材に樹脂製の薄板を取り付けることにより形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、トレイは、たとえば、受け皿により形成され、枠部のZ2方向側の部分に支持されていてもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、吸収式ヒートポンプ装置100は、エンジンEを備えた車両に搭載されるとともに車内の空調システムに適用されるように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、吸収式ヒートポンプ装置は、電動車両に搭載されるとともに車内の空調システムに適用されるように構成されていてもよい。なお、電動車両とは、電気自動車だけでなく、駆動用モータおよびエンジンを有するハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、および、レンジエクステンダーを備えた車両などを含む広い概念である。
【0090】
また、上記実施形態では、複数の翼部151は、均一な所定角度θ1(約15度)ごとに配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数の翼部の各々は、異なる所定角度ごとに配置されてもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、吸収器5は、複数(3個)の膜形状保持部153を含んでいる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、吸収器は、1~2個または4個以上の膜形状保持部を含んでいてもよい。
【符号の説明】
【0092】
4 蒸発器
5 吸収器
51 膜部材
52 熱交換器
52b 外表面
54 回転塗布体
100 吸収式ヒートポンプ装置
151 翼部
153 膜形状保持部
154 液溜まり部
155 トレイ
351 先端部
451 根元部
C 回転中心軸線
θ1 所定角度