(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】ソフトコンタクトレンズ用眼科組成物及び眼科用製品
(51)【国際特許分類】
A61K 31/07 20060101AFI20231108BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20231108BHJP
A61K 47/08 20060101ALI20231108BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20231108BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20231108BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
A61K31/07
A61K9/08
A61K47/08
A61K47/10
A61K47/36
A61P27/02
(21)【出願番号】P 2019145020
(22)【出願日】2019-08-07
【審査請求日】2022-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 真嘉
【審査官】篭島 福太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-116689(JP,A)
【文献】特開2016-027039(JP,A)
【文献】特開2013-237638(JP,A)
【文献】特開2009-173638(JP,A)
【文献】特開平07-118147(JP,A)
【文献】特開2018-008944(JP,A)
【文献】特開2014-129328(JP,A)
【文献】国際公開第2018/074421(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/003796(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/07
A61K 9/08
A61K 47/08
A61K 47/10
A61K 47/36
A61P 27/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ビタミンA3.5万単位/100mL以上、
(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール0.05w/v%以上、
(C)コンドロイチン硫酸エステル及びその塩から選ばれる1種以上
、及び
(D)ビタミンE
を含有し、ジブチルヒドロキシトルエン及びジブチルヒドロキシアニソールの合計含有量が0.001w/v%以下であ
り、
(C)/(B)で表される、(B)成分と(C)成分の含有質量比が0.03~2.5であるソフトコンタクトレンズ用眼科組成物
(但し、(a)フラビンアデニンジヌクレオチド、ピリドキシン、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種と、(b)コンドロイチン硫酸、アミノエチルスルホン酸、アスパラギン酸、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種とを含有する、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物を除く。)。
【請求項2】
組成物のpHが7.4~8.0である、請求項1記載のソフトコンタクトレンズ用眼科組成物。
【請求項3】
(A)成分の含有量が5万単位/100mL以上である、請求項1又は2記載のソフトコンタクトレンズ用眼科組成物。
【請求項4】
(A)成分の含有量が6万~6.5万単位/100mLである、請求項3記載のソフトコンタクトレンズ用眼科組成物。
【請求項5】
(C)/(B)で表される、(B)成分と(C)成分の含有質量比が0.0
5~
1である請求項1~4のいずれか1項記載のソフトコンタクトレンズ用眼科組成物。
【請求項6】
(B)成分(g)/(A)成分(万単位)で表される、(A)成分と(B)成分の含有質量比が0.007~0.5である請求項1~5のいずれか1項記載のソフトコンタクトレンズ用眼科組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項記載のソフトコンタクトレンズ用眼科組成物と、このソフトコンタクトレンズ用眼科組成物が充填された容器と、この容器を包装する包囲体とを有する眼科用製品であって、
(1)包囲体内への不活性ガス注入、(2)包囲体内への酸素吸収剤の同梱、(3)酸素吸収能を有する容器、又は(4)酸素吸収能を有する包囲体のいずれか1以上の手段を用いた眼科用製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビタミンAを含有するソフトコンタクトレンズ用眼科組成物及び眼科用製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビタミンAは、角膜・結膜や皮膚粘膜の角化症、角膜上皮障害等の予防や治療に有効な成分として注目されている。コンタクトレンズ使用者は角膜上皮障害を受けやすいため、ビタミンAは有用である。
【0003】
一方、脂溶性ビタミンであるビタミンAは、空気、光、熱、酸、金属イオン等に非常に敏感であり、特に、水溶液中では不安定であるため、眼科用組成物に安定に配合する技術が求められていた。特にビタミンAの有効性が発揮される高濃度では、ビタミンAを安定に配合することが困難であった。
【0004】
ビタミンAの安定化技術としては、ポリエチレン硬化ヒマシ油等の非イオン界面活性剤や、ジブチルヒドロキシトルエン、ジブチルヒドロキシアニソール等を配合する技術(特許文献1:特開昭48-48617号公報)が提案されている。
【0005】
ジブチルヒドロキシトルエン、ジブチルヒドロキシアニソールは、ビタミンAの安定性には効果を有するものの、ソフトコンタクトレンズ装着時に使用すると、ソフトコンタクトレンズへ吸着し(特許文献2:特開2011-116688号公報)、吸着による眼への影響、ソフトコンタクトレンズ物性への影響が懸念されるため、ソフトコンタクトレンズ用眼科組成物に配合することは好ましくない。
【0006】
以上のことから、ビタミンAを含有するソフトコンタクトレンズ用眼科組成物において、ジブチルヒドロキシトルエン、ジブチルヒドロキシアニソールが低濃度であっても、ビタミンAの安定性をさらに高める技術が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭48-48617号公報
【文献】特開2011-116688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、ビタミンAを3.5万単位/100mL以上を含有するソフトコンタクトレンズ用眼科組成物において、ジブチルヒドロキシトルエン、ジブチルヒドロキシアニソールが低濃度であっても、ビタミンAの安定性に優れたソフトコンタクトレンズ用点眼剤及び眼科用製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、(A)ビタミンAを3.5万単位/100mL以上含有するソフトコンタクトレンズ用眼科組成物に、特定量以上の(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、及び(C)コンドロイチン硫酸エステル及びその塩から選ばれる1種以上を配合することで、ジブチルヒドロキシトルエン及びジブチルヒドロキシアニソールの合計含有量が低濃度であるにもかかわらず、(A)ビタミンAを安定化できることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0010】
従って、本発明は、下記ソフトコンタクトレンズ用眼科組成物及び眼科用製品を提供する。
1.(A)ビタミンA3.5万単位/100mL以上、
(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール0.05w/v%以上、及び
(C)コンドロイチン硫酸エステル及びその塩から選ばれる1種以上
を含有し、ジブチルヒドロキシトルエン及びジブチルヒドロキシアニソールの合計含有量が0.001w/v%以下であるソフトコンタクトレンズ用眼科組成物。
2.さらに、(D)ビタミンEを含有する1記載のソフトコンタクトレンズ用眼科組成物。
3.(A)成分の含有量が5万単位/100mL以上である1又は2記載のソフトコンタクトレンズ用眼科組成物。
4.(A)成分の含有量が6万~6.5万単位/100mLである3記載のソフトコンタクトレンズ用眼科組成物。
5.(C)/(B)で表される、(B)成分と(C)成分の含有質量比が0.01~5である1~4のいずれかに記載のソフトコンタクトレンズ用眼科組成物。
6.(B)成分(g)/(A)成分(万単位)で表される、(A)成分と(B)成分の含有質量比が0.007~0.5である1~5のいずれかに記載のソフトコンタクトレンズ用眼科組成物。
7.1~6のいずれかに記載のソフトコンタクトレンズ用眼科組成物と、このソフトコンタクトレンズ用眼科組成物が充填された容器と、この容器を包装する包囲体とを有する眼科用製品であって、
(1)包囲体内への不活性ガス注入、(2)包囲体内への酸素吸収剤の同梱、(3)酸素吸収能を有する容器、又は(4)酸素吸収能を有する包囲体のいずれか1以上の手段を用いた眼科用製品。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ビタミンAを3.5万単位/100mL以上含有するソフトコンタクトレンズ用点眼剤において、ジブチルヒドロキシトルエン、ジブチルヒドロキシアニソールが低濃度であっても、ビタミンAの安定性に優れたソフトコンタクトレンズ用点眼剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
[(A)ビタミンA]
ビタミンAは、角膜・結膜や皮膚粘膜の角化症、角膜上皮障害等の予防や治療に有効な成分であり、涙液油層安定化効果も有する。特に、コンタクトレンズ使用者は角膜上皮障害を受けやすいため、ビタミンAは有用である。ビタミンAとしては、例えば、ビタミンAそれ自体の他に、ビタミンA油等のビタミンA含有混合物、ビタミンA脂肪酸エステル等のビタミンA誘導体等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。具体的には、レチノールパルミチン酸エステル、レチノール酢酸エステル、レチノール、レチノイン酸、レチノイド等が挙げられる。中でも、レチノールパルミチン酸エステルが好ましい。
【0013】
(A)成分のソフトコンタクトレンズ用眼科組成物(以下、眼科用組成物と略す場合がある。)中の含有量は、3.5万単位/100mL以上が好ましく、4万~6.5万単位/100mLがより好ましく、4.5万~6.5万単位/100mLがさらに好ましく、角膜上皮障害等の予防や治療への有効性の観点から、5万単位/100mL以上、5~6.5万単位/100mLの順で特に好ましい。本発明によれば、(A)成分の含有量が6万~6.5万単位/100mLの範囲であっても、(A)成分の高い安定性効果が得られる。よって、上記(A)成分の高い有効性と安定性を両立できる点から、6万~6.5万単位/100mLが最も好ましい。例えば、174万国際単位/gの場合、液体眼科用組成物中の(A)成分の含有量は、0.020w/v%以上が好ましく、0.023~0.037w/v%がより好ましく、0.026~0.037w/v%がさらに好ましく、0.029w/v%以上、0.029~0.037w/v%の順で特に好ましく、0.034~0.037w/v%が最も好ましい。
【0014】
[(B)成分]
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(EOPO)は、(A)成分の安定性を向上させるものであり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールは特に限定されるものではなく、医薬品添加物規格(薬添規)に記載されたものを用いることができる。エチレンオキシドの平均重合度は4~200が好ましく、20~200がより好ましく、プロピレンオキシドの平均重合度は5~100が好ましく、20~70がより好ましく、ブロック共重合体でもランダム重合体でもよい。具体的には、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコール:Lutrol F127(BASF社製)、ユニルーブ70DP-950B(日本油脂(株)製)等、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール:LutrolF127、BASFジャパン社製等、ポリオキシエチレン(120)ポリオキシプロピレン(40)グリコール:プルロニックF-87(BASF社製)、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール:プルロニックF-68(BASF社製)、プロノン#188P(日本油脂(株)製)等、ポリオキシエチレン(42)ポリオキシプロピレン(67)グリコール:プルロニックP123(BASF社製)、ポリオキシエチレン(54)ポリオキシプロピレン(39)グリコール:プルロニックP85(BASF社製)、プロノン#235P(日本油脂(株)製)等、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(20)グリコール:プルロニックL-44、テトロニック(BASF社製)等が挙げられる。中でも、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコール、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコールが好ましい。
【0015】
(B)成分の含有量は、眼科用組成物中0.05w/v%以上であり、0.1~2w/v%が好ましく、0.2~1.5w/v%がより好ましく、0.3~1.2w/v%がさらに好ましく、0.5~1.0w/v%が特に好ましい。このような範囲とすることで、(A)ビタミンAの安定性がより向上する。
【0016】
[(C)成分]
コンドロイチン硫酸エステル又はその塩は、(A)成分の安定性を向上させるものであり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。コンドロイチン硫酸エステル塩としては、薬学的に許容される塩であれば特に限定されないが、例えば、ナトリウム塩等が挙げられる。
【0017】
(C)成分の含有量は、眼科用組成物中0.01~1.0w/v%が好ましく、0.02~0.8w/v%がより好ましく、0.04~0.5w/v%がさらに好ましく、0.05~0.5w/v%が特に好ましい。このような範囲とすることで、(A)ビタミンAの安定性がより向上する。
【0018】
(C)/(B)で表される、(B)成分と(C)成分の含有質量比は0.01~5が好ましく、0.03~2.5がより好ましく、0.04~1.5がさらに好ましく、0.05~1が特に好ましい。なお、この比率はw/v%比であるが、質量比と同じである。
【0019】
(B)成分(g)/(A)成分(万単位)で表される、(A)成分と(B)成分の含有質量比は0.008~0.5が好ましく、0.01~0.3がより好ましく、0.05~0.2がさらに好ましい。
【0020】
(C)成分(g)/(A)成分(万単位)で表される、(A)成分と(C)成分の含有質量比は0.005~0.15が好ましく、0.006~0.1がより好ましく、0.007~0.09がさらに好ましく、0.007~0.08が特に好ましい。
【0021】
本発明の眼科用組成物中、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)及びジブチルヒドロキシアニソール(BHA)の合計含有量は0.001w/v%以下であり、0.0005w/v%以下がより好ましく、0.0001w/v%以下がさらに好ましく、0w/v%でもよい。本発明によれば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)及びジブチルヒドロキシアニソール(BHA)の合計含有量が上記以下となっても、(A)ビタミンAの安定性が得られる共に、これらの含有量を減らすことで、ジブチルヒドロキシトルエン、ジブチルヒドロキシアニソールのソフトコンタクトレンズへの吸着による眼への影響、ソフトコンタクトレンズ物性への影響を防ぐことができる。
【0022】
[(D)成分]
本発明の眼科用組成物には、(A)ビタミンAの安定化の点から、(D)ビタミンEを配合することが好ましい。(D)ビタミンEとしては、例えば、トコフェロール、トコトリエノール、これらの塩、誘導体(エステル)等が挙げられる。具体的には、例えば、d-α-トコフェロール、dl-α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール等があり、これらの誘導体としては、例えば、ビタミンE酢酸エステル(酢酸トコフェロール)、ビタミンEニコチン酸エステル、ビタミンEコハク酸エステル、ビタミンEリノレン酸エステル等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0023】
(D)成分の含有量は、眼科用組成物中0.01~1w/v%が好ましく、0.02~0.08w/v%がより好ましく、0.03~0.05w/v%がさらに好ましい。このような範囲とすることで、(A)ビタミンAの安定性がより向上する。
【0024】
[その他の成分]
本発明の眼科用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、眼科用組成物に配合されるその他の成分を適量配合することができる。その他の成分としては下記のものが例示され、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0025】
(B)成分以外の非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(POEソルビタン脂肪酸エステル)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0026】
ポリオキシエチレンヒマシ油(POEヒマシ油)は、ヒマシ油に酸化エチレン(EO)を付加重合することによって得られる化合物であり、酸化エチレンの平均付加モル数が異なるいくつかの種類が知られている。ポリオキシエチレンヒマシ油における酸化エチレンの平均付加モル数については、特に限定はないが、3~60モルが例示される。具体的にはポリオキシエチレンヒマシ油3(EO平均付加モル数3)、ポリオキシエチレンヒマシ油10(EO平均付加モル数10)、ポリオキシエチレンヒマシ油20(EO平均付加モル数20)、ポリオキシエチレンヒマシ油35(EO平均付加モル数35)、ポリオキシエチレンヒマシ油40(EO平均付加モル数40)、ポリオキシエチレンヒマシ油50(EO平均付加モル数50)、ポリオキシエチレンヒマシ油60(EO平均付加モル数60)等が挙げられる。中でも、ポリオキシエチレンヒマシ油35が好ましい。
【0027】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(POE硬化ヒマシ油)は、水添したヒマシ油に酸化エチレンを付加重合することによって得られる化合物であり、酸化エチレンの平均付加モル数が異なるいくつかの種類が知られている。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油における酸化エチレンの平均付加モル数については、特に限定はないが、5~100モルが例示される。具体的にはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油5(EO平均付加モル数5)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10(EO平均付加モル数10)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20(EO平均付加モル数20)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油30(EO平均付加モル数30)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(EO平均付加モル数40)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50(EO平均付加モル数50)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(EO平均付加モル数60)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油80(EO平均付加モル数80)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油100(EO平均付加モル数100)等が挙げられる。中でも、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60が好ましい。
【0028】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(POEソルビタン脂肪酸エステル)としては、モノラウリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート80)が挙げられる。中でも、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート80)が好ましい。
【0029】
ポリエチレングリコール脂肪酸エステルとしては、ステアリン酸ポリエチレングリコール-25、ステアリン酸ポリエチレングリコール-40等が挙げられ、中でもステアリン酸ポリエチレングリコール-40が好ましい。
【0030】
(B)成分以外の非イオン性界面活性剤を配合する場合、その含有量は、眼科用組成物中0.01~1.5w/v%が好ましく、0.05~1.0w/v%がより好ましく、0.1~0.5w/v%がさらに好ましい。
【0031】
(B)成分/非イオン界面活性剤(但し、(B)成分を含む)で表される含有質量比は、(A)ビタミンAの安定性の点から、0.1~1が好ましく、0.3~1がより好ましい。0.5~1がさらに好ましい。
【0032】
ジブチルヒドロキシトルエン、ジブチルヒドロキシアニソール及び(D)ビタミンE以外の安定化剤(抗酸化剤)としては、例えば、エデト酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム水和物、シクロデキストリン、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、乾燥亜硫酸ナトリウム(無水亜硫酸ナトリウム)、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム等の亜硫酸塩等が挙げられる。これらのジブチルヒドロキシトルエン、ジブチルヒドロキシアニソール及び(D)ビタミンE以外の安定化剤を配合する場合、その含有量は、眼刺激軽減の観点から、眼科用組成物中0.5w/v%以下が好ましく、0.3w/v%以下、0.2w/v%以下、0.1w/v%以下の順で好ましい。
【0033】
糖類としては、例えば、グルコース、シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。なお、これらは、d体、l体又はdl体のいずれでもよい。糖類を配合する場合の含有量は、眼科用組成物中0.001~5.0w/v%が好ましく、0.001~1w/v%がより好ましく、0.001~0.1w/v%がさらに好ましい。
【0034】
緩衝剤としては、例えば、ホウ酸又はその塩(ホウ砂等)、トロメタモール、クエン酸又はその塩(クエン酸ナトリウム等)、リン酸又はその塩(リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等)、酒石酸又はその塩(酒石酸ナトリウム等)、グルコン酸又はその塩(グルコン酸ナトリウム等)、酢酸又はその塩(酢酸ナトリウム等)、炭酸又はその塩(炭酸水素ナトリウム等)、各種アミノ酸類(イプシロン-アミノカプロン酸、アスパラギン酸カリウム、アミノエチルスルホン酸、グルタミン酸、グルタミン酸ナトリウム)等が挙げられる。中でも、ホウ酸、ホウ砂、トロメタモールが好ましい。緩衝剤を配合する場合の含有量は、組成物中0.001~5.0w/v%が好ましく、0.001~3w/v%がより好ましく、0.001~2w/v%がさらに好ましい。
【0035】
pH調整剤としては、例えば、無機酸又は無機アルカリ剤が挙げられる。具体的には、無機酸としては(希)塩酸が挙げられる。無機アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。組成物のpHは3.5~8.0が好ましく、5.5~8.0がより好ましい。凍結融解における析出抑制効果の観点から、6.0~8.0がさらに好ましい。なお、pHの測定は、25℃でpHメータ(HM-25R、東亜ディーケーケー(株))を用いて行う。
【0036】
等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、乾燥炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム等が挙げられる。涙液油層不安定化が引き起こす諸症状をより改善する点から、塩化ナトリウム又は塩化カリウムを配合し、等張化されていることが好ましい。組成物の対生理食塩水浸透圧比は、0.60~2.00が好ましく、0.60~1.55がより好ましく、0.83~1.20が最も好ましい。なお、浸透圧の測定は、25℃で自動浸透圧計(A2O、アドバンスドインストルメンツ社)を用いて行う。
【0037】
清涼化剤としては、例えば、メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、リナロール等が挙げられる。d体、l体又はdl体のいずれでもよい。清涼化剤を配合する場合の含有量は、組成物中0.0001~0.2w/v%が好ましい。
【0038】
多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。多価アルコールを配合する場合の含有量は、眼科用組成物中0.001~5.0w/v%が好ましく、0.001~1w/v%がより好ましく、0.001~0.1w/v%がさらに好ましい。
【0039】
粘稠剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー等が挙げられる。粘稠剤を配合する場合、その含有量は組成物中0.001~5.0w/v%が好ましく、0.001~1w/v%がより好ましく、0.001~0.5w/v%がさらに好ましい。
【0040】
防腐剤としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ソルビン酸及びその塩、チメロサール、フェニルエチルアルコール、アルキルアミノエチルグリシン、クロルヘキシジングルコン酸、パラオシキ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル等が挙げられる。これらは、組成物中0.1w/v%以下が好ましく、0.01w/v%以下がより好ましく、0.001w/v%以下がさらに好ましく、0.0001w/v%以下が最も好ましく、配合しなくてもよい。
【0041】
油性成分としては、流動パラフィン、ヒマシ油、大豆油、オリーブ油、ゴマ油、コーン油、ヤシ油、アーモンド油、中鎖脂肪酸トリグリセリド、白色ワセリン、ミックストコフェロール、流動パラフィン、ワックスエステル、ステロールエステル等が挙げられる。油性成分を配合する場合その含有量は、眼科用組成物中0.001~1.0w/v%が好ましい。
【0042】
薬物(薬学的有効成分)としては、例えば、充血除去成分(例えば、エピネフリン、塩酸エピネフリン、エフェドリン塩酸塩、塩酸テトラヒドロゾリン、ナファゾリン硝酸塩、フェニレフリン塩酸塩、dl-メチルエフェドリン塩酸塩等)、消炎・収斂剤(例えば、ネオスチグミンメチル硫酸塩、イプシロン-アミノカプロン酸、アラントイン、ベルベリン塩化物水和物、ベルベリン硫酸塩水和物、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、リゾチーム塩酸塩等)、抗ヒスタミン剤(例えば、ジフェンヒドラミン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩等)、水溶性ビタミン類(フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、塩酸ピリドキシン、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム等)、アミノ酸類(例えば、L-アスパラギン酸カリウム、L-アスパラギン酸マグネシウム、L-アスパラギン酸カリウム・マグネシウム(等量混合物)、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸エステルナトリウム等)、サルファ剤等が挙げられる。薬物を配合する場合、薬物の配合量は、各薬物の有効な適性量を選択することができるが、眼科用組成物中0.001~5w/v%が好ましく、0.001~1w/v%がより好ましく、0.001~0.1w/v%がさらに好ましい。
【0043】
なお、抗充血薬(塩酸テトラヒドロゾリン、ナファゾリン塩酸塩等)、クロロブタノール、塩化ベンザルコニウム等の第4級アンモニウム塩等は、本発明の眼科用組成物には含まれないことが好ましい。
【0044】
水としては、精製水、滅菌水等を用いることができ、水の含有量は、組成物の残部とすることができる。具体的には、組成物中90~99.9w/v%が好ましく、93~98w/v%がより好ましい。
【0045】
[製造方法]
本発明の眼科用組成物の製造方法は特に限定されないが、例えば、(A),(D)成分等の油性成分と、(B)成分等の界面活性剤成分との混合溶液を、(C)成分等の水性成分を含む水溶液と混合して乳化し、pH調整後、総体積を水により調整することにより得ることができる。各液体の混合方法は、一般的な方法でよく、パルセーター、プロペラ羽根、パドル羽根、タービン羽根等を用いて適宜行われるが、回転数は特に限定されず、激しく泡立たない程度に設定することが好ましい。各液体の混合温度は特に限定しないが、油性成分と界面活性剤成分が共に融解温度以上であることが好ましく、具体的には40~95℃の範囲から適宜選定される。
【0046】
[ソフトコンタクトレンズ用眼科組成物]
本発明は、ソフトコンタクトレンズ用眼科用組成物であり、ソフトコンタクトレンズを装着する者が使用できるものである。具体的には、ソフトコンタクトレンズ用点眼剤(ソフトコンタクトレンズ装着中に使用可能)、ソフトコンタクトレンズ用装着液、ソフトコンタクトレンズ取り外し液等が挙げられるが、特にソフトコンタクトレンズ用点眼剤として好適に使用できる。ソフトコンタクトレンズ用点眼剤として使用する場合、1回につき10~50μL、好ましくは10~30μLを1~3滴1日につき1~6回点眼することができる。ソフトコンタクトレンズとしては特に限定されず、FDAによる4分類(グループI~IV)の全てのソフトコンタクトレンズに用いることができる。また、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズにも用いることができる。
【0047】
本発明の組成物は眼への適用を容易にする点から液体が好ましく、25℃における粘度は、1~50mPa・sが好ましく、1~30mPa・sがより好ましく、1~10mPa・sがさらに好ましい。なお、粘度の測定は、コーンプレート型粘度計(DV2T、英弘精機(株))を用いて行う。
【0048】
[眼科用製品]
本発明は、眼科用組成物と、この眼科用組成物が充填された容器と、この容器を包装する包囲体とを有する眼科用製品であって、眼科用組成物中の酸素濃度が低減された状態で保存される手段を用いて、(A)ビタミンAの安定化をより向上できる。手段としては、(1)包囲体内への不活性ガス注入、(2)包囲体内への酸素吸収剤の同梱、(3)酸素吸収能を有する容器、又は(4)酸素吸収能を有する包囲体等が挙げられる。なお、包囲体は容器を密封できるものが好ましい。
【0049】
容器としては、プラスチック製容器が好ましく、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル等の材質又はこれら材質の複合体からなるもの等を用いることができる。特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。容器の酸素透過係数は、10cc/(m2・24hr・atm)以上が好ましい。製品中の眼科用組成物の量は、製品及びその使用方法に応じて適宜選択することができ、例えば点眼剤の場合、2~20mLが好ましく、5~20mLがより好ましい。また、容器の容量は、充填する眼科用組成物の量に応じて適切に選定することが好ましく、充填する眼科用組成物の量に対して100~150%が好ましい。例えば点眼剤の場合、2~30mLが好ましい。点眼剤は特に限定されず、マルチドーズ点眼剤でもディスポーザブル点眼剤でもよい。
【0050】
中栓、キャップは、公知の眼科用製品の容器に使用される材質のキャップを使用することができる。中栓の材質としては、メルトフローレート2.0以下、好ましくは1.2~1.8のポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。キャップの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。
【0051】
包囲体としては、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ナイロン、セロファン、ポリ塩化ビニルフィルム、アルミ箔、アルミニウムを蒸着したポリビニルアルコール系・ポリアミド系フィルム、アルミナを蒸着したポリエチレンテレフタレート、酸化ケイ素を蒸着したポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニリデンをコートしたフィルム又はラミネートフィルム等、これらの複合、多層フィルム等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン多層フィルム、アルミナを蒸着したポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン多層フィルムが好ましい。包囲体の酸素透過係数は、10cc/(m2・24hr・atm)以下(即ち、0~10cc/(m2・24hr・atm))の酸素非透過性包囲体が好ましい。
【0052】
(1)包囲体内への不活性ガス注入
不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン等が挙げられる。中でも窒素ガスが好ましい。不活性ガスの濃度は、包囲体とプラスチック製容器との間に形成された空間容積中、好ましくは50容積%以上、より好ましくは80容積%以上、さらに好ましくは90容積%以上である。上限は特に限定されず、100容積%以下である。このような濃度にするためには、包囲体とプラスチック製容器との間に形成された空間を、不活性ガスで置換すればよい。
【0053】
(2)包囲体内への酸素吸収剤の同梱
具体的には、三菱ガス化学(株)製のエージレス(登録商標)(FX、SP、SS、SPE、ZP、Z-PT、Z-PT15、Z-PKC、GLS、GL-M、Z-20PKヤ)、ファーマキープ、(株)常盤産業製のバイタロン、(株)博洋製のサンソレス、パウダーテック(株)製のワンダーキープ、アイリス・ファインプロダクツ(株)製のサンソカット等を用いることができる。
【0054】
(3)酸素吸収能を有する容器
具体的には、東洋製罐(株)製のオキシブロック、三菱ガス化学(株)製のオキシヴァニッシュ等を用いることができる。
【0055】
(4)酸素吸収能を有する包囲体
具体的には、共同印刷(株)製のオキシキャッチ(登録商標)ICA、シールドエアー社製のCryovac(登録商標) OSフィルム、スタープラスチック工業(株)製のハイスターO2、三菱ガス化学(株)製のエージレスオーマック、東洋製罐(株)製のオキシデック等を用いることができる。
【0056】
上記手段は適宜組み合わせることができ、(2)、(4)が好ましく、(1)+(2)、(1)+(4)がより好ましい。
【0057】
[(A)ビタミンAの安定化方法]
本発明は、(A)ビタミンAを含有し、ジブチルヒドロキシトルエン及びジブチルヒドロキシアニソールの合計含有量が0.001w/v%以下であるソフトコンタクトレンズ用眼科組成物に、
(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン0.05w/v%以上、及び
(C)コンドロイチン硫酸エステル及びその塩から選ばれる1種以上
を配合する、(A)ビタミンAの安定化方法である。なお、好適な成分、及びその含有量等は上記と同じである。
【実施例】
【0058】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0059】
[実施例1,2、比較例1~3]
下記表に示す(C)成分を含む各水性成分を90mLの水に溶解し、90℃、15分間加温混合して水性成分水溶液を得た。別途、(A)成分(必要に応じて(D)成分)及び(B)成分の混合溶液を作製し、90℃、15分間加熱混合した。次に、得られた混合溶液を上記水性成分水溶液に所定量加え、さらに90℃、15分間加熱混合した。その後、室温まで冷却し、100mLになるように水を加え、ソフトコンタクトレンズ用眼科用組成物を得た。
【0060】
<ビタミンAの安定性試験>(レチノールパルミチン酸エステルの残存率(%))
眼科用組成物15mLを、15mLのポリエチレンテレフタレート容器に充填した。これを、酸素吸収剤(エージレス(型番:Z-PT15)、三菱ガス化学株式会社製)を同梱し、包囲体[アルミナを蒸着したポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン多層フィルム、酸素透過度0.2cc/(m2・24hr・atm)、W9.0×L6.5(cm))]でフィルム包装を施して密封して眼科用製品を得た。得られた眼科用製品を40℃・75%RH6ヶ月保存した。眼科用組成物中のレチノールパルミチン酸エステル含量を、製造直後及び40℃・75%RHで6ヶ月保存後に測定した。測定は、高速液体クロマトグラフ法を用いて測定を行った。得られたレチノールパルミチン酸エステル含量から、下記式に基づき、レチノールパルミチン酸エステルの残存率(%)を算出した。
レチノールパルミチン酸エステル残存率(%)
=保存後のレチノールパルミチン酸エステル含量/製造直後のレチノールパルミチン酸エステル含量×100
【0061】
【0062】
比較例2は、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)0.005w/v%を配合しているため、レチノールパルミチン酸エステル残存率(%)が高いが、ソフトコンタクトレンズ用眼科用組成物としては好適ではない。比較例1で明らかであるように、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)が配合されないと、レチノールパルミチン酸エステル残存率(%)が低下した。
実施例では、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)無配合であっても、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を配合した比較例2よりも高いレチノールパルミチン酸エステル残存率(%)が得られた。
比較例3では、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの代わりに、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60を用いると、(C)コンドロイチン硫酸エステルナトリウムによるレチノールパルミチン酸エステル安定化効果が得られなかった。
【0063】
[実施例3~13]
上記実施例と同様の方法で、下記表に記載された組成のソフトコンタクトレンズ用眼科用組成物を得た。得られたソフトコンタクトレンズ用眼科用組成物を上記実施例と同様の方法で眼科用製品を得た。得られた眼科用製品は上記実施例と同様のレチノールパルミチン酸エステル残存率(%)であった。
【0064】
【0065】
【0066】
上記例で使用した原料を下記に示す。なお、特に明記がない限り、表中の各成分の量は純分換算量である。
レチノールパルミチン酸エステル:レチノールパルミチン酸エステル[174万I.U./g]、DSM社製
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール:ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール(LutrolF127、BASFジャパン社製)
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油:HCO-60、日本サーファクタント工業(株)製
コンドロイチン硫酸エステルナトリウム:コンドロイチン硫酸エステルナトリウム、マルハニチロ(株)製
酢酸d-α-トコフェロール:理研Eアセテートα、理研ビタミン社製
ジブチルヒドロキシトルエン:ジブチルヒドロキシトルエン、富士フイルム和光純薬(株)製
ヒドロキシプロピルメチルセルロース:メトローズ 60SH-4000、信越化学工業(株)製
ポリビニルピロリドン:Kollidon 90F、BASF
ヒアルロン酸ナトリウム:バイオヒアルロン酸(SZE)、(株)資生堂