(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】スタッカクレーン
(51)【国際特許分類】
B65G 1/04 20060101AFI20231108BHJP
B66F 9/07 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B65G1/04 537A
B66F9/07 C
B66F9/07 J
(21)【出願番号】P 2019150607
(22)【出願日】2019-08-20
【審査請求日】2022-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】後藤 歩
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-272606(JP,A)
【文献】特開2011-126709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/04
B66F 9/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行台車と、
前記走行台車から立設するマストと、
前記マストに沿って昇降する昇降台と、
前記マストを前記走行台車の走行方向に押す及び/又は引く押引部と、
前記走行方向における前記マストの基準位置に対する前記マストの
傾き量、及び、傾き量の時間的変化を把握する把握部と、
前記把握部により把握される前記マストの
傾き量、及び、傾き量の時間的変化に基づいて、前記マストが前記基準位置に位置するように前記押引部を制御する押引制御を実行する押引制御部と、
を備えるスタッカクレーン。
【請求項2】
前記押引制御部は、前記走行台車の加速中、及び/又は、定速走行中に前記押引制御を実行する、請求項1に記載のスタッカクレーン。
【請求項3】
前記昇降台に設けられ荷の移載を行う移載装置をさらに備え、
前記押引制御部は、前記移載装置により前記荷の移載を行う際に前記押引制御を実行する、請求項1又は2に記載のスタッカクレーン。
【請求項4】
前記押引部は、
前記昇降台に設けられ前記マストを押す及び/又は引く第1押引部と、前記昇降台において前記第1押引部よりも下方に設けられ前記第1押引部により押引される位置よりも下で前記マストを押す及び/又は引く第2押引部と、を有する、請求項1~3のいずれかに記載のスタッカクレーン。
【請求項5】
前記押引制御部は、前記押引制御として、前記第1押引部により前記マストを押す及び/又は引く方向と、前記第2押引部により前記マストを押す及び/又は引く方向と、を互いに逆向きとする制御を実行する、
請求項4に記載のスタッカクレーン。
【請求項6】
前記第1押引部が前記マストを押す及び/又は引く力と、前記第2押引部が前記マストを押す及び/又は引く力の合力は0である、請求項5に記載のスタッカクレーン。
【請求項7】
前記走行台車を制御する走行制御部をさらに備え、
前記走行制御部は、前記走行台車の走行中に、前記走行台車の速度を測定し、前記走行台車の走行中に実施された前記押引制御による速度の増減を監視し、前記走行台車の速度が目標の速度となるよう前記走行台車に供給する電力を制御する、
請求項1~6のいずれかに記載のスタッカクレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタッカクレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
ラックの棚との間で荷を移載し、ラックに沿って走行して荷を搬送するスタッカクレーンが実用化されている。一般的に、ラックは高さ方向に複数段の棚を有しているため、スタッカクレーンは、マストに沿って昇降する昇降台を備えている。これにより、スタッカクレーンは、昇降台を昇降させることで、複数段の棚のうちの所望の棚との間で荷の移載を実行できる。
【0003】
マストを有するスタッカクレーンにおいては、荷の移載を行うためにスタッカクレーンが減速して所定位置に停止する際に、マストが揺れる。この揺れに従って昇降台が揺れるため、昇降台の揺れが収まるのを待って荷を移載する必要があった。これを解決するため、荷の移載の際に、マストが揺れても昇降台が棚に対して停止しているように見せかける制御を昇降台に対して行うことが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、マストの揺れに対して昇降台の位置を安定させることはできる一方、マストが基準位置(直立状態)で停止していない可能性がある。スタッカクレーンと棚との間で荷を移載するときにマストが傾いた状態で停止すると、荷の移載精度が確保できない。そのため、スタッカクレーンを停止する際には、マストは直立状態とする必要がある。
【0006】
本発明の目的は、スタッカクレーンを停止させる際に、マストの揺れを抑制しつつ、マストを基準位置で停止させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一見地に係るスタッカクレーンは、走行台車と、マストと、昇降台と、押引部と、把握部と、押引制御部と、を備える。マストは、走行台車から立設する。昇降台は、マストに沿って昇降する。押引部は、マストを走行台車の走行方向に押す及び/又は引く。把握部は、走行方向におけるマストの基準位置に対するマストの状態を把握する。押引制御部は、押引制御を実行する。押引制御は、把握部により把握されるマストの状態に基づいて、マストが基準位置に位置するように押引部を制御する制御である。
【0008】
上記のスタッカクレーンでは、押引制御部が、基準位置に対するマストの状態に基づいて押引部を制御して、マスト自体を傾いた状態から積極的に基準位置に戻す制御を実行している。これにより、マストの揺れを抑制しつつ、マストを基準位置で停止させることができる。
【0009】
押引制御部は、走行台車の加速中、及び/又は、定速走行中に押引制御を実行してもよい。これにより、加速後に発生するマストの振動の最大振幅を小さくできる。その結果、スタッカクレーンの加速度や速度を現行の運用値よりも大きくできる。
【0010】
上記のスタッカクレーンは、移載装置をさらに備えてもよい。移載装置は、昇降台に設けられ、荷の移載を行う。この場合、押引制御部は、移載装置により荷の移載を行う際に押引制御を実行してもよい。
これにより、荷を移載したときの慣性により、スタッカクレーン(マスト)が振動することがあっても、その振動を抑制できる。その結果、荷の移載精度の低下を抑制できる。
【0011】
押引部は昇降台に設けられてもよい。これにより、マストの上部においてマストを押引する場合と比較して、弱い力でマストを押引できる。
【0012】
押引部は、第1押引部と第2押引部とを有してもよい。第1押引部は、昇降台に設けられ、マストを押す及び/又は引く。第2押引部は、昇降台において第1押引部よりも下方に設けられ、第1押引部により押引される位置よりも下でマストを押す及び/又は引く。
この場合、押引制御部は、押引制御として、第1押引部によりマストを押す及び/又は引く方向と、第2押引部によりマストを押す及び/又は引く方向と、を互いに逆向きとする制御を実行する。
これにより、第1押引部と第2押引部により振動抑制のためのモーメントを与えて、マストの振動を抑制するとともに、マストを基準位置(直立状態)で停止できる。
【0013】
第1押引部がマストを押す及び/又は引く力と、第2押引部がマストを押す及び/又は引く力の合力は0であってもよい。これにより、第1押引部と第2押引部によりモーメントを適切にマストに加えることができる。
【0014】
上記のスタッカクレーンは、走行制御部をさらに備えてもよい。走行制御部は、走行台車を制御する。この場合、走行制御部は、走行台車の走行中に、走行台車の速度を測定し、走行台車の走行中に実施された押引制御による速度の増減を監視し、走行台車の速度が目標の速度となるよう走行台車に供給する電力を制御する。
これにより、押引部によるマストの押引により生じる走行への影響を打ち消して、意図した通りの走行を実現できる。
【発明の効果】
【0015】
スタッカクレーンを停止させる際に、マストの揺れを抑制しつつ、マストを基準位置で停止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態が採用された自動倉庫の概略平面図。
【
図5】制御ユニットによるスタッカクレーンの制御構成を示すブロック図。
【
図6】スタッカクレーンの全体動作を示すフローチャート。
【
図7A】マストが傾いている状態の例を示す図(その1)。
【
図7B】マストが傾いている状態の例を示す図(その2)。
【
図7C】マストが傾いている状態の例を示す図(その3)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.第1実施形態
(1)自動倉庫
図1及び
図2を用いて、自動倉庫1を説明する。
図1は、本発明の一実施形態が採用された自動倉庫の概略平面図である。
図2は、自動倉庫の概略正面図である。
自動倉庫1は、複数のラック5を有している。ラック5は、複数段の棚5aを有している。複数のラック5は、
図1において、左右方向に延びて並列的に配置されている。棚5aは、
図2に示すように、集品棚部材25又はパレットPを収納可能である。パレットPには、容器23又は段ボール箱28が載置される。
集品棚部材25は、複数段の支持部を有する棚構造を有しており、複数の容器23及び段ボール箱28を収納可能である。容器23は、商品を収納可能な部材である。なお、集品棚部材25の底面はパレットPの底面と同様の構造を有しており、それによりスタッカクレーン11によって支持及び搬送される。また、
図1においてアルファベットが付されているのは、ラック5に収納されたパレットPである。また、図示しない別のラック5には容器23や段ボール箱28が収納されている。
【0018】
自動倉庫1は、ラック5に沿って設けられた天井レール7を有している。具体的には、天井レール7は、ラック5の間の通路5bの上方に配置されている。天井レール7は、ラック5より高い位置、すなわち、複数段の棚5aより高い位置に設けられている。また、天井レール7は、平面レイアウトにおいて、曲線部を有する複数の周回ルートを有しており、さらに分岐部、合流部を有している。
自動倉庫1は、ラック5に沿って設けられた下部ガイドレール9を有している。具体的には、下部ガイドレール9は、ラック5の間の通路5bの床面に配置されている。
【0019】
自動倉庫1は、スタッカクレーン11を有する。スタッカクレーン11は、天井レール7及び下部ガイドレール9に沿って走行し、棚5aとの間で荷(集品棚部材25、パレットPなど)をやりとりする。なお、スタッカクレーン11の走行方向(ラック5が延びる方向)を「走行方向」として、図では矢印X(X方向)で表す。また、走行方向に直交する水平方向を「左右方向」として、図では矢印Y(Y方向)で表す。さらに、高さ方向を図では矢印Z(Z方向)で表す。
【0020】
(2)スタッカクレーン
図2及び
図3を用いて、スタッカクレーン11を詳細に説明する。
図3は、スタッカクレーン11の側面図である。本実施形態において、スタッカクレーン11は、懸垂式スタッカクレーンである。「懸垂式」とは、上部構造が、走行及び分岐を行い、さらには下部構造を懸垂していることをいう。具体的には、スタッカクレーン11は、
図2に示すように、天井レール7から懸垂した状態で走行する。
【0021】
スタッカクレーン11は、上部走行台車12(走行台車の一例)を有している。上部走行台車12は、駆動力を発生することで天井レール7に沿って移動する装置である。具体的には、上部走行台車12は、走行方向に並んで配置された複数の駆動台車13を有している。
この実施形態では、駆動台車13は8台設けられている。具体的には、4台の駆動台車13が走行方向前側の上部フレーム15に対応して配置されており、4台の駆動台車13が走行方向後側の上部フレーム15に対応して配置されている。特に、4台の駆動台車13の走行方向中心が上部フレーム15(スプロケット21b)の中心に対応するように、4台の駆動台車13が配置されている。以上の構成により、マスト18から作用する荷重を駆動台車13が均等に支持できる。
【0022】
駆動台車13は、例えば、リニアモータによる駆動力により、天井レール7の走行壁の上に置かれている走行車輪が回転することで、上部走行台車12を天井レール7が延びる方向(走行方向)に沿って移動させる。
複数の駆動台車13は、ボギー構造14を介して、一対の上部フレーム15に対して、スタッカクレーン11の上下方向に延びる軸回りに回動自在に接続されている。ボギー構造14は、周回軌道のカーブを安定して走行させるための構造である。
【0023】
一対の上部フレーム15は、走行方向に延びる上部ベース部材15aにより、走行方向に所定の距離を空けて配置されている。
【0024】
スタッカクレーン11は、走行方向に延びた下部フレーム16を有している。下部フレーム16には、その両端に、下部ガイドレール9に沿って移動する下部走行台車17が取り付けられている。下部走行台車17は、下部ガイドレール9に沿って案内される。
【0025】
スタッカクレーン11は、走行方向すなわち前後方向に並んだ一対のマスト18を有している。一対のマスト18は、上下方向に長く延びている。
一対のマスト18の上端は、それぞれ、走行方向とは垂直な水平方向(Y方向)に延びるピン19aにより、対応する上部フレーム15にピン支持されている。一方、一対のマスト18の下端は、走行方向とは垂直な水平方向(Y方向)に延びるピン19bにより、下部フレーム16にピン支持されている。
これにより、一対のマスト18は、走行方向とは垂直な水平軸回り(Y軸回り)に回動自在となっており、走行方向に揺動可能である。一対のマスト18が走行方向に揺動可能であることにより、スタッカクレーン11において、制振制御と機体重量低減が実現される。
【0026】
例えば、ピン19aと一対のマスト18との接続部分には、一対のマスト18の基準位置に対するマスト18の状態を把握する把握部19cが設けられる。把握部19cは、上記マスト18の状態として、マスト18の基準位置に対する傾き量θ、傾き量θの時間的変化(角速度)を把握する。
基準位置は、移載装置32(後述)が予め想定されている、走行方向(X方向)における移載位置に位置するときの一対のマスト18の位置をいう。具体的には、基準位置は、一対のマスト18が鉛直方向から傾いていないときの位置をいう。このときの傾き量θを0とする。把握部19cは、例えば、タコメータ、角度センサなどである。
【0027】
スタッカクレーン11は、一対の上部フレーム15に対して昇降可能に吊り下げられた昇降台20を有している。昇降台20は、上部フレーム15に設けられた昇降装置21の駆動により、一対のマスト18に沿って高さ方向(Z方向)に昇降する。なお、昇降台20の構成の詳細については、後ほど説明する。
昇降装置21は、例えば、一端が昇降台20に接続されたチェーン21aと、チェーン21aを移動させるスプロケット21bと、スプロケット21bを回転させる昇降駆動モータ21cなどからなる装置である。
【0028】
スタッカクレーン11は、一対のマスト18の一方の下端から少し距離を空けた位置に装着された制御ユニット22を有する。制御ユニット22は、例えば、プロセッサ(例えば、CPU)と、記憶装置(例えば、ROM、RAM、HDD、SSDなど)と、各種インターフェース(例えば、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、通信インターフェースなど)を有するコンピュータシステムである。制御ユニット22は、記憶部(記憶装置の記憶領域の一部又は全部に対応)に保存されたプログラムを実行することで、スタッカクレーン11の各種制御動作を行う。
制御ユニット22は、単一のプロセッサで構成されていてもよいが、各制御のために独立した複数のプロセッサから構成されていてもよい。なお、制御ユニット22による具体的な制御構成については、後ほど説明する。
【0029】
(3)昇降台の詳細構成
以下、
図3及び
図4を用いて、昇降台20のより詳細な構成を説明する。
図4は、スタッカクレーン11の昇降台20近傍の拡大図である。
昇降台20は、フレーム31を有する。フレーム31は、直方体形状を有し、昇降台20の本体を構成する。なお、フレーム31の上部には、チェーン21aが接続されている。
昇降台20は、移載装置32を有する。移載装置32は、フレーム31の下部に設けられ、棚5aとの間で荷(集品棚部材25又はパレットP)を移載可能である。移載装置32は、例えば、Y方向に伸縮可能なスライドフォークを有するスライドフォーク式の移載装置である。
【0030】
昇降台20は、複数のガイドローラ33を有する。複数のガイドローラ33は、フレーム31の上下左右に設けられる。また、複数のガイドローラ33は、フレーム31のY方向の両端にも設けられる。本実施形態では、フレーム31の上下左右及びY方向の両端のそれぞれに、4つのガイドローラ33が設けられる。つまり、昇降台20の全体では32のガイドローラ33が設けられている。
フレーム31の端部のそれぞれに設けられた4つのガイドローラ33は、当該端部に対応する位置において、マスト18をX方向(走行方向)の両側から挟み込んだ状態で配置される。具体的には、4つのガイドローラ33のうち2つがX方向の一方からマスト18に当接し、他の2つがX方向の他方からマスト18に当接する。
【0031】
なお、昇降台20(フレーム31)がマスト18に沿って昇降する際、複数のガイドローラ33のそれぞれは、マスト18上でY軸回りに回動する。
【0032】
昇降台20は、第1押引部34(押引部の一例)を有する。第1押引部34は、フレーム31の上部の四隅に設けられる。第1押引部34は、スタッカクレーン11の走行方向(X方向)に伸縮する第1押引軸34aを有する。第1押引軸34aは、保持部材34bにより、対応する4つのガイドローラ33を保持する。
この構成により、第1押引部34は、第1押引軸34aをX方向に伸縮させることで、昇降台20の上部においてマスト18を押引できる(押すか、又は、引くことができる)。ここで、押引部がマスト18を押すとは、押引軸が伸びる方向に駆動されることをいう。一方、引くとは、押引軸が縮む方向に駆動されることをいう。第1押引部34は、例えば、電動シリンダ、油圧シリンダ、エアシリンダである。
【0033】
昇降台20は、第2押引部35(押引部の一例)を有する。第2押引部35は、フレーム31の下部の四隅に設けられる。第2押引部35は、スタッカクレーン11の走行方向(X方向)に伸縮する第2押引軸35aを有する。第2押引軸35aは、保持部材35bにより、対応する4つのガイドローラ33を保持する。
この構成により、第2押引部35は、第2押引軸35aをX方向に伸縮させることで、昇降台20の下部においてマスト18を押引できる(押すか、又は、引くことができる)。第2押引部35は、高さ方向(Z方向)においては、第1押引部34よりも下に設けられている。従って、第2押引部35は、第1押引部34により押引される位置よりも下でマスト18を押引することとなる。
第2押引部35は、例えば、電動シリンダ、油圧シリンダ、エアシリンダである。
【0034】
第1押引部34及び第2押引部35を昇降台20に設けることにより、マスト18の上部においてマスト18を押引する場合と比較して、弱い力でマスト18を押引できる。
なぜなら、昇降台20の高さ方向の長さは、一般的には、ピン19aとマスト18の上部との間の距離よりも長いので、マスト18の上部でマスト18を押引する場合と比較して、第1押引部34及び第2押引部35により同じ力でマスト18を押引する方が、より大きなモーメントを発生できるからである。
逆にいうと、同じモーメントを発生させたい場合、第1押引部34及び第2押引部35によりマスト18を押引することで、マスト18の上部でマスト18を押引する場合よりも押引力を小さくできる。
【0035】
また、第1押引部34及び第2押引部35を昇降台20に設けることにより、これら押引部を他の箇所に設ける場合と比較して、スタッカクレーン11をコンパクトにできる。
【0036】
さらに、第1押引部34及び第2押引部35がガイドローラ33を保持する構成とすることで、第1押引部34及び第2押引部35は、昇降台20の昇降中に転動するガイドローラ33を介して、マスト18を押す、及び/又は、引くことができる。その結果、第1押引部34及び第2押引部35は、昇降台20の昇降中であっても、マスト18を押す、及び/又は、引くことができる。
また、ガイドローラ33を介してマスト18を押す、及び/又は、引く構成とすることで、ブロック状の部材で昇降台20の昇降中にマスト18を押す及び/又は引く場合と比較して、昇降中にマスト18を押したり引いたりする際に生じる抵抗を軽減できる。
【0037】
(4)制御ユニットによる制御構成
図5を用いて、制御ユニット22によるスタッカクレーン11の制御構成を説明する。
図5は、制御ユニット22によるスタッカクレーン11の制御構成を示すブロック図である。以下の制御ユニット22の各機能ブロックの一部及び/又は全部は、記憶装置に保存されたプログラムを実行することで実現される。その他、制御ユニット22の機能ブロックの一部は、カスタムICにより構成されていてもよい。
制御ユニット22には、図示しないが、荷物の大きさ、形状及び位置検出するセンサ、スタッカクレーン11の各装置の状態を検出するためのセンサ及びスイッチ、並びに情報入力装置が接続されている。
【0038】
制御ユニット22は、走行制御部41を有する。走行制御部41は、スタッカクレーン11の各駆動台車13の動作を制御することで、上部走行台車12を制御する。走行制御部41は、例えば、スタッカクレーン11の走行速度を測定し、スタッカクレーン11の速度が目標の速度となるよう各駆動台車13に供給する電力を供給するフィードバック制御を実行する。なお、スタッカクレーン11の走行速度は、例えば、各駆動台車13の走行車輪の回転速度をエンコーダなどにより測定するか、及び/又は、スタッカクレーン11の走行経路に沿って設けられたバーコードの識別情報に基づいて測定できる。
【0039】
また、走行制御部41は、後述する押引制御部42から第1押引部34及び第2押引部35への制御指令を入力し、その制御指令に基づいて、第1押引部34及び第2押引部35がマスト18を走行方向(X方向)に押引することで生じるスタッカクレーン11の走行への影響を打ち消すよう上部走行台車12(駆動台車13)をフィードバック制御する。
【0040】
制御ユニット22は、押引制御部42を有する。押引制御部42は、把握部19cにより検知されるマスト18の傾き量θに基づいて、マスト18が基準位置に位置するように第1押引部34及び第2押引部35を制御する。マスト18が基準位置に位置するように第1押引部34及び第2押引部35を制御することを、「押引制御」と呼ぶ。
把握部19cは傾き量θ(角度)の角速度を測定できるので、本実施形態において、押引制御部42は、この角速度に基づいた実時間最適制御を用いて上記の押引制御を実行する。なお、押引制御で用いる実時間最適制御は、公知のものであるので、ここでは説明を省略する。
【0041】
すなわち、本実施形態の把握部19cは、マスト18の基準位置に対するマスト18の状態として、傾き量θ、傾き量θの角速度(時間的変化)を把握する。押引制御部42は、把握部19cにより把握されるマスト18の基準位置に対するマスト18の状態(傾き量θ、角速度)に基づいて、押引制御を実行する。
【0042】
制御ユニット22は、昇降制御部43を有する。昇降制御部43は、昇降装置21の昇降駆動モータ21cを制御して、昇降台20の昇降を制御する。
制御ユニット22は、移載制御部44を有する、移載制御部44は、移載装置32を制御して、棚5aとの間の荷の移載を制御する。
【0043】
制御ユニット22は、上位コントローラ50と交信可能である。上位コントローラ50は、CPU、RAM、ROM等からなりプログラムを実行するコンピュータである。上位コントローラ50は、自動倉庫1全体を制御し、特に、スタッカクレーン11による荷の移載と搬送、及びこれらによる出庫物品の荷揃えを制御する。上位コントローラ50は、スタッカクレーン11を管理し、これらに走行指令又は搬送指令を割り付ける割り付け機能を有している。なお、「搬送指令」は、走行指令、及び荷つかみ位置と荷おろし位置を含む移載指令を含んでいる。
【0044】
(5)スタッカクレーンの動作
(5-1)スタッカクレーンの全体動作
以下、
図6を用いて、第1実施形態に係る自動倉庫1におけるスタッカクレーン11の動作を説明する。
図6は、スタッカクレーン11の全体動作を示すフローチャートである。以下では、上位コントローラ50から受信した搬送指令に従って、スタッカクレーン11が目的の棚5aの位置までガイドレールに沿って走行して当該位置で停止後、移載装置32を用いて棚5aとの間で荷の移載をするまでの動作を説明する。
上位コントローラ50から搬送指令を受信すると、制御ユニット22が、受信した搬送指令から、目的の棚5aの位置を識別する。その後、走行制御部41が、ステップS1において、スタッカクレーン11を目的の棚5aの位置まで移動させるための走行指令を生成し、それに基づいた制御電力を駆動台車13に出力する。その結果、スタッカクレーン11が走行を開始する。
【0045】
スタッカクレーン11が走行中、押引制御部42は、把握部19cにより把握されたマスト18の状態を監視する。具体的には、押引制御部42は、マスト18の傾き量θ(傾き角度)のみでなく、傾き量θの速度、及び、これらの向きを、マスト18の基準位置に対する状態として監視する。傾き量θの速度は、単位時間あたりの傾き量θの変化量であり、角速度に対応する。
スタッカクレーン11が走行中、押引制御部42は、ステップS2において、監視中のマスト18の状態(例えば、傾き量θ)に変動があったか否かを判定する。なお、「傾き量θの変動」とは、傾き量θが0でないこと、及び/又は、傾き量θの0でない速度が検知されたことを意味する。
【0046】
マスト18の状態に変動があった場合(ステップS2で「Yes」)、押引制御部42は、ステップS3で、マスト18の傾き、揺れを抑制するために、把握部19cにより把握されるマスト18の状態(例えば、傾き量θ)に基づいて、マスト18が基準位置に位置するように第1押引部34及び第2押引部35を制御する押引制御を実行する。
また、本実施形態では、ステップS3においてスタッカクレーン11の走行中に押引制御が実行されると、ステップS4において、走行制御部41は、第1押引部34及び第2押引部35がマスト18を走行方向に押引することで生じる走行への影響を打ち消すよう上部走行台車12(駆動台車13)を制御する。
押引制御、及び、マスト18を押引することによる走行への影響を打ち消す制御については、後ほど詳しく説明する。
【0047】
一方、マスト18の状態に変動がない場合(ステップS2で「No」)、例えば、マスト18が基準位置から傾いておらず、かつ、傾き量θの速度が0である場合、スタッカクレーン11は、押引制御を実行することなく、走行を継続する。
【0048】
スタッカクレーン11が走行中、ステップS5において、走行制御部41は、スタッカクレーン11が目的位置に到達したか否かを判定する。
スタッカクレーン11が目的位置に到達していない場合には(ステップS5で「No」)、ステップS2に戻り、マスト18の状態を監視しつつ、スタッカクレーン11の走行を継続する。
【0049】
一方、スタッカクレーン11が目的位置に到達して停止すると(ステップS5で「Yes」)、この停止に起因して振動が発生したか否かを確認する。具体的には、ステップS6において、スタッカクレーン11の停止により把握部19cがマスト18の状態の変動を把握したか否かを判定する。
スタッカクレーン11の停止時にマスト18の状態に変動があった場合(ステップS6で「Yes」)、ステップS7において、上記のステップS3と同様の押引制御が実行される。その後、マスト18が基準位置に位置すると(ステップS6で「No」)、荷の移載が実行される。
【0050】
具体的には、ステップS8において、昇降制御部43が昇降装置21を制御して、高さ方向(Z方向)において目的の棚5aが存在する位置まで昇降台20を昇降させる。その後、移載制御部44が移載装置32を制御して、荷の移載を実行する。
【0051】
荷の移載を実行中、押引制御部42は、ステップS9において、把握部19cにより把握されたマスト18の状態を監視し、マスト18の状態に変動があったか否かを判定する。
荷の移載中にマスト18の状態に変動があった場合(ステップS9で「Yes」)、ステップS10において、上記のステップS3と同様の押引制御が実行される。これにより、荷を移載したときの慣性により、スタッカクレーン11(マスト18)が振動することがあっても、その振動を抑制して荷の移載精度の低下を抑制できる。
一方、荷の移載中にマスト18の状態に変動がない場合(ステップS9で「No」)、押引制御が実行されることなく、荷の移載が継続される。
【0052】
荷の移載を実行中、ステップS11において、移載制御部44は、荷の移載が完了したか否かを判定する。荷の移載が完了していない場合には(ステップS11で「No」)、ステップS9に戻り、マスト18の状態を監視しつつ、荷の移載を継続する。
一方、荷の移載が完了した場合には(ステップS11で「Yes」)、現在の搬送指令を終了する。次の搬送指令を上位コントローラ50から受信したときに、当該搬送指令に従って、上記のステップS1~S11が実行される。
【0053】
(5-2)押引制御
次に、上記のステップS3、S7、及びS10で実行される押引制御をより詳細に説明する。以下では、マスト18が
図7A~
図7Cに示すような状態で傾いている場合を例にとって、本実施形態の押引制御を説明する。
図7A~
図7Cは、マスト18が傾いている状態の例を示す図である。なお、以下の
図7A~
図7Cにおいて、マスト18の基準位置を一点鎖線にて示し、マスト18の中心軸を破線にて示す。
まず、
図7Aに示すように、マスト18が、基準位置に対してXの負方向の成分を有する第1方向(
図7Aにおいて内部に「第1方向」と示した矢印の方向)に傾いており、及び/又は、第1方向に傾き量θの0でない速度が存在する場合の押引制御を説明する。
【0054】
この場合、押引制御部42は、実時間最適制御により、第1押引部34に対しては、マスト18に第1方向の力を加えるよう指令する。一方、第2押引部35に対しては、マスト18に第1方向とは逆向きの力を加えるよう指令する。すなわち、第1押引部34と第2押引部35に対して互いに逆方向の力をマスト18に加えるよう指令する。
これにより、第1方向側の第1押引部34は、マスト18を第1方向に押す力を生じ、それとは反対側の第1押引部34は、マスト18を第1方向に引く力を生じる。一方、第1方向側の第2押引部35は、マスト18を第1方向とは逆方向に引く力を生じ、それとは反対側の第2押引部35は、マスト18を第1方向とは逆方向に押す力を生じる。
【0055】
スタッカクレーン11において、仮に第1押引部34又は第2押引部35のみによりマスト18を押引すると、マスト18の押引の反力により、昇降台20に対してマスト18が離間するため、押引部による押引力がマスト18に伝わらない。
その一方で、上記のように、昇降台20上部の第1押引部34の押引方向と下部の第2押引部35の押引方向とが互いに逆向きである力をマスト18に加える、すなわち、第1押引部34と第2押引部35がマスト18を上下で互いに逆方向に押引することで、ピン構造の懸垂式のスタッカクレーン11に対しても、マスト18にモーメントを加えることができる。
【0056】
また、
図7Aに示す場合において、上部の第1押引部34がマスト18に第1方向の力を加え、下部の第2押引部35がマスト18に第1方向とは逆向きの力を加えることで、第1方向とは逆方向(
図7Aのハッチングを施した矢印の方向)、すなわち、傾き量θの変動とは逆方向のモーメントがマスト18に加えられる。
傾き量θの変動とは逆方向のモーメントをマスト18に加えることにより、マスト18自体を傾いた状態から積極的に基準位置に戻して、マスト18の揺れを抑制しつつ、マスト18を基準位置で停止させることができる。
【0057】
上記のようにマスト18にモーメントを加えるときに、第1押引部34がマスト18を押す又は引く力と、第2押引部35がマスト18を押す又は引く力の合力を0とする。
これにより、第1押引部34と第2押引部35によりモーメントを適切にマスト18に加えることができる。その結果、マスト18が変形するなどの異常が発生することを防止できる。
【0058】
なお、第1押引部34と第2押引部35によりマスト18に押す力及び/又は引く力を加える場合に、X方向の同じ側に存在する第1押引部34が加える力と第2押引部35が加える力の合計を0としてもよいし、全ての第1押引部34が加える力と全ての第2押引部35が加える力の合計が0となるようにしてもよい。
【0059】
次に、
図7Bに示すように、マスト18が、基準位置に対してXの正方向の成分を有する第2方向(
図7Bにおいて内部に「第2方向」と示した矢印の方向)に傾いており、及び/又は、第2方向に傾き量θの0でない速度が存在する場合を考える。この場合には、押引制御部42は、実時間最適制御により、第1押引部34に対してマスト18に第2方向の力を加えるよう指令し、第2押引部35に対して第2方向とは逆方向の力を加えるよう指令する。
これにより、
図7Bの場合でも
図7Aの場合と同様に、マスト18には、傾き量θの変動方向である第2方向とは逆方向(
図7Bのハッチングを施した矢印の方向)のモーメントを加えることができる。
【0060】
さらに、
図7Cに示すように、基準位置に対してマスト18はXの負方向の成分を有する向きに傾いている一方、傾き量θの速度の方向がマスト18の傾斜方向とは逆の第3方向(
図7Cにおいて内部に「第3方向」と示した矢印の方向)である場合、すなわち、マスト18が基準位置に復帰する方向に移動している場合を考える。
この場合、押引制御部42は、実時間最適制御により、第1押引部34に対してマスト18に第3方向の力を加えるよう指令し、第2押引部35に対して第3方向とは逆方向の力を加えるよう指令する。この結果、マスト18には、傾き量θの速度の方向とは逆方向(
図7Cのハッチングを施した矢印の方向)のモーメントが加えられる。
【0061】
このように、傾き量θの速度の方向とは逆方向のモーメントをマスト18に加えることで、マスト18が「揺り戻し」により基準位置を超えてさらに反対側に傾くことを抑制できる。その結果、マスト18の揺れを抑制しつつ、より速い時間でマスト18を基準位置で停止させることができる。
すなわち、「マスト18を基準位置に位置させる」とは、
図7Cのように、基準位置からマスト18が離れる方向にモーメントを作用させることも含まれている。
【0062】
また、マスト18を基準位置に位置させる押引制御では、マスト18の速度ベクトルと逆方向にモーメントを作用させる。さらに、押引制御では、マスト18に作用するモーメントの作用方向は、昇降台20(フレーム31)の下部に設けられた第2押引部35による力の作用方向と一致する。
これにより、押引制御は、マスト18が
図7A、
図7Bに示すような状態の場合には、マスト18の揺れの振幅を小さくできる。一方、マスト18が
図7Cに示すような状態の場合には、マスト18が基準位置に戻るときの速度を減少できる。
【0063】
また、傾き量θの変動は、特に、スタッカクレーン11が加速又は減速する際に見られる。その結果、スタッカクレーン11の走行中においては、上記の押引制御は、スタッカクレーン11(上部走行台車12)の加速中、定速走行中、減速中に実行される。
押引制御が特にスタッカクレーン11の加速中に実行されることで、加速中のマスト18の振動の振幅量を小さくできる。その結果、スタッカクレーン11の加速度や速度を現行の運用値よりも大きくできる。また、スタッカクレーン11の定速走行中に押引制御が実行されることで、スタッカクレーン11の加速により生じたマスト18の傾きを定速走行中に基準位置に位置できる。それにより、加速が原因で生じるマスト18の振動の最大振幅を小さくできる。
【0064】
(5-3)マストの押引による走行への影響を打ち消す制御
以下、上記のステップS4で実行される、マスト18の押引による走行への影響を打ち消す制御の詳細を説明する。
スタッカクレーン11の走行中に上記の押引制御が実行されてマスト18にモーメントが加えられた場合、そのモーメントにより、スタッカクレーン11の走行方向に加速度又は減速度が生じる。スタッカクレーン11が走行中にこのような加速度又は減速度が生じると、スタッカクレーン11をステップS1で生成した走行指令の通りに制御できなくなる場合がある。
【0065】
従って、走行制御部41は、スタッカクレーン11の走行中に、スタッカクレーン11の速度を測定することで、スタッカクレーン11の走行中に実施された押引制御による速度の増減を監視し、スタッカクレーン11の走行速度が目標の速度となるよう、上部走行台車12(駆動台車13)に供給する電力を調整するフィードバック制御を実行する。
これにより、第1押引部34及び第2押引部35によるマスト18の押引により生じる走行への影響を打ち消して、走行指令に示された意図した通りの走行を実現できる。
【0066】
なお、他の実施形態として、走行制御部41が、例えば、予め決められたパターンの制御電力を上部走行台車12に加えてスタッカクレーン11の走行を制御する場合、すなわち、フィードバック制御ではない制御を実行する場合には、当該予め決められた電力供給パターンを示す指令値(制御信号)を、押引制御による速度への影響を考慮して調整することによっても、同様の効果を得られる。
【0067】
2.実施形態の特徴
前記実施形態は下記のようにも説明できる。
スタッカクレーン(例えば、スタッカクレーン11)は、走行台車(例えば、上部走行台車12)と、マスト(例えば、マスト18)と、昇降台(例えば、昇降台20)と、押引部(例えば、第1押引部34、第2押引部35)と、把握部(例えば、把握部19c)と、押引制御部(例えば、押引制御部42)と、を備える。マストは、走行台車から立設する。昇降台は、マストに沿って昇降する。押引部は、マストを走行台車の走行方向に押引する。把握部は、走行方向におけるマストの基準位置に対するマストの状態(例えば、傾き量θ、傾き量θの角速度)を把握する。押引制御部は、押引制御を実行する。押引制御は、把握部により把握されるマストの状態に基づいて、マストが基準位置に位置するように押引部を制御する制御である。
【0068】
上記のスタッカクレーンでは、押引制御部が、基準位置に対するマストの状態に基づいて押引部を制御して、マスト自体を傾いた状態から積極的に基準位置に戻す制御を実行している。これにより、マストの揺れを抑制しつつ、マストを基準位置で停止させることができる。
【0069】
3.他の実施形態
以上、本発明の複数の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
また、
図6のフローチャートに示した各ステップの処理内容、及び、処理の順番は、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更できる。例えば、上位コントローラ50からの指令が荷の移載を伴わない場合には、荷の移載に関するステップS6~S9は省略(実行をスキップ)できる。または、上位コントローラ50からの指令によっては、スタッカクレーン11の走行に関するステップS1~S5、及び/又は、荷の移載に関するステップS6~S9は、複数回実行されてもよい。
【0070】
(A)X方向(走行方向)の一方に設けられた第1押引部34及び第2押引部35によるマスト18を押引する力と、X方向の他方に設けられた第1押引部34及び第2押引部35によるマスト18を押引する力とは、大きさが異なっていてもよい。
一対のマスト18のそれぞれの総重量によって、上記押引部がマスト18を押引する力を調節してもよい。例えば、制御ユニット22が取り付けられた側のマスト18を押引する力を、制御ユニット22が取り付けられていないマスト18を押引する力より大きくすることができる。
【0071】
(B)例えば、マスト18を押すだけの押引部を走行台車(上部走行台車12)の左右に設け、当該左右の押引部がマスト18を交互に押す構成としてもよい。
【0072】
(C)下部走行台車17、下部フレーム16、下部ガイドレール9は無くてもよい。これにより、スタッカクレーン11に対する作業性を向上できる。
【0073】
(D)押引部(第1押引部34及び第2押引部35)は、スタッカクレーン11のスペースの関係上、昇降台20に設けることが好ましいが、十分なモーメントを発生できるのであれば、押引部をマスト18の上部に設けることもできる。その他、マスト18の下部(例えば、下部フレーム16)に押引部を設けることもできる。
【0074】
(E)上記の第1実施形態に係るスタッカクレーン11においては、マスト18は一対設けられていたが、マスト18が1つしか設けられていないスタッカクレーン11に対しても上記の押引制御を実行できる。
【0075】
(F)上記のマスト18を押引して揺れを抑制する方法は、マスト18がピン支持されていないスタッカクレーン11に対しても適用できる。ピン支持されていないマスト18の傾き量は、例えば、上部走行台車12の走行方向における位置と、下部走行台車17の走行方向における位置とのずれから算出できる。
上部走行台車12の走行方向における位置、及び、下部走行台車17の走行方向における位置は、例えば、スタッカクレーン11の走行経路に沿って設けられたバーコードの識別情報から把握できる。
【0076】
(G)昇降台20以外に押引部を設ける場合には、1つの押引部によりマスト18を押引することによっても、マスト18の揺れを抑制できる。
【0077】
(H)ピン19aとマスト18の接続部分に把握部19cを設けなくてもよい。この場合、押引制御部42は、例えば、走行制御部41が生成する走行指令に示された加速度及び減速度からマスト18の傾き量θ(の変動)を算出してもよい。
【0078】
(I)スタッカクレーン11において、走行制御部41は、各駆動台車13に対して公知の制振制御を適用してマスト18の揺れを抑制してもよい。
また、例えば、ピン19aと上部フレーム15との接続部分に制振部材を設けることで、マスト18の揺れを抑制してもよい。さらに、上記の制振制御による揺れの抑制と制振部材による揺れの抑制とを組み合わせて用いてもよい。
【0079】
(J)マスト18を押す又は引く押引部の設置数は、昇降台20(フレーム31)の走行方向の同じ側にそれぞれ上下2個の合計4個に限られない。例えば、押引部を、昇降台20(フレーム31)の走行方向(X方向)の一方において上下2個設け、他方の上側に1個設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、スタッカクレーンに広く適用できる。
【符号の説明】
【0081】
1 自動倉庫
5 ラック
5a 棚
5b 通路
7 天井レール
9 下部ガイドレール
11 スタッカクレーン
12 上部走行台車
13 駆動台車
14 ボギー構造
15 上部フレーム
15a 上部ベース部材
16 下部フレーム
17 下部走行台車
18 マスト
19a、19b ピン
19c 把握部
20 昇降台
21 昇降装置
21a チェーン
21b スプロケット
21c 昇降駆動モータ
22 制御ユニット
23 容器
25 集品棚部材
28 段ボール箱
31 フレーム
32 移載装置
33 ガイドローラ
34 第1押引部
34a 第1押引軸
34b 保持部材
35 第2押引部
35a 第2押引軸
35b 保持部材
41 走行制御部
42 押引制御部
43 昇降制御部
44 移載制御部
50 上位コントローラ
P パレット
θ 傾き量