(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】光学フィルム用ドープの製造方法および光学フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20231108BHJP
C08J 3/02 20060101ALI20231108BHJP
C08L 33/04 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
G02B5/30
C08J3/02 A CEY
C08L33/04
(21)【出願番号】P 2019153179
(22)【出願日】2019-08-23
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 栞
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/168960(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/035273(WO,A1)
【文献】特開2009-084574(JP,A)
【文献】特開2000-178399(JP,A)
【文献】特開2017-181990(JP,A)
【文献】特開2015-210474(JP,A)
【文献】特開2014-084362(JP,A)
【文献】国際公開第2015/159645(WO,A1)
【文献】特開2016-186061(JP,A)
【文献】特開2001-343526(JP,A)
【文献】国際公開第2015/076101(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/175674(WO,A1)
【文献】特開2001-183528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
C08J 3/02
C08J 5/18
C08L 33/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋度が0.25~4質量%であるゴム状重合体を含むゴム粒子を含むゴム粒子分散液を調製する工程と、
前記ゴム粒子分散液と、メタクリル系樹脂と、第二溶媒とを混合して、前記メタクリル系樹脂と、前記ゴム粒子と、溶媒とを含むドープを調製する工程と
を含み、
前記ゴム粒子分散液を調製する工程は、
前記ゴム粒子を有機溶媒中で分散させる工程と、
前記有機溶媒中に分散された前記ゴム粒子に水を添加する工程と
を含み、
前記水の含有量は、前記ドープに含まれる前記溶媒に対して0.5~3質量%である、
光学フィルム用のドープの製造方法。
【請求項2】
前記ゴム粒子は、前記ゴム状重合体を含むコア部と、前記ゴム状重合体にグラフト重合した他の重合体を含むシェル部とを有するコアシェル型の粒子である、
請求項1に記載の光学フィルム用のドープの製造方法。
【請求項3】
前記ゴム状重合体は、アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を主成分として含むアクリル系ゴム状重合体であり、
前記他の重合体は、メタクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を主成分として含むメタクリル系重合体である、
請求項2に記載の光学フィルム用のドープの製造方法。
【請求項4】
前記メタクリル系樹脂は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を、前記メタクリル系樹脂を構成する全構造単位に対して80質量%以上含む、
請求項3に記載の光学フィルム用のドープの製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の光学フィルム用のドープの製造方法により、ドープを準備する工程と、
前記ドープを支持体上に流延した後、剥離して膜状物を得る工程と
を含む、
光学フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム用ドープの製造方法、光学フィルム用ドープ、光学フィルム、偏光板および光学フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置などの表示装置に用いられる偏光板は、偏光子と、その両面に配置された保護フィルムとを含む。近年、スマートホンの屋外での使用など、使用環境の多様化に伴い、偏光板を構成する保護フィルムは、高温・高湿の過酷な環境下であっても、表示装置において表示ムラを生じにくいことが求められている。そのような観点から、保護フィルムとしては、従来のセルロースエステルフィルムよりも、吸湿性が低く、寸法安定性に優れた(メタ)アクリル系樹脂フィルムの使用が検討されている。
【0003】
一方で、メタクリル系樹脂フィルムは脆いことから、脆さを解消するために、ゴム粒子がさらに添加されることがある。
【0004】
例えば、グルタルイミド(メタ)アクリル系樹脂と、グラフト共重合体(ゴム粒子)とを含むフィルムが知られている(例えば特許文献1)。当該グラフト重合体は、(メタ)アクリル系架橋重合体を含むコア部と、それにグラフト結合したメタクリル系重合体を含むシェル部とを有するコアシェル型のゴム粒子であり、シェル部を構成するメタクリル系重合体がシアン化ビニル単量体に由来する構造単位を含む。それにより、コアシェル型のゴム粒子の表面の極性を、グルタルイミド(メタ)アクリル系樹脂の極性に近づけることができるため、ゴム粒子とグルタルイミド(メタ)アクリル系樹脂との相溶性を高めることができ、ゴム粒子の凝集を抑制できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、通常、溶融流延法(メルト法)で製造される(特許文献1参照)。一方で、高分子量の樹脂を使用できるなど、使用する材料に対する制限が少ないなどの観点から、溶液流延法(キャスト法)で製造されることが望まれている。
【0007】
溶液流延法では、(メタ)アクリル系樹脂と、ゴム粒子とを溶媒に溶解または分散させて、ドープを調製する工程と、得られたドープを支持体上に流延し、乾燥させた後、剥離して膜状物を得る工程と、を経て(メタ)アクリル系樹脂フィルムを得る。しかしながら、ゴム粒子と(メタ)アクリル系樹脂との相溶性が低いため、ゴム粒子が凝集しやすい。そのため、得られるフィルムに十分な靱性(しなやかさまたは可撓性)を付与できないだけでなく、透明性が損なわれやすいという問題があった。また、ドープを流延して得られる膜状物を支持体から剥離する際に、ゴム粒子の凝集体が膜状物から脱落しやすく、支持体(ベルト)を汚染しやすいという問題もあった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ゴム粒子の凝集を抑制することができ、透明性を損なうことなく、十分な靱性を有する光学フィルムを付与しうる光学フィルム用のドープの製造方法、光学フィルム用のドープ、光学フィルム、偏光板ならびに光学フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、以下の構成によって解決することができる。
【0010】
本発明の光学フィルム用のドープの製造方法は、架橋度が0.25~4質量%であるゴム状重合体を含むゴム粒子を、第一溶媒中で分散させて、ゴム粒子分散液を調製する工程と、前記ゴム粒子分散液と、メタクリル系樹脂と、第二溶媒とを混合して、前記メタクリル系樹脂と、前記ゴム粒子と、溶媒とを含むドープを調製する工程とを含み、前記第一溶媒と前記第二溶媒の少なくとも一方が、水を含み、かつ前記溶媒中の前記水の量が、0.5~3質量%である。
【0011】
本発明の光学フィルム用のドープは、メタクリル系樹脂と、架橋度が0.25~4質量%であるゴム状重合体を含むゴム粒子と、溶媒とを含む光学フィルム用のドープであって、
前記溶媒は、0.5~3質量%の水を含む。
【0012】
本発明の光学フィルムは、メタクリル系樹脂と、架橋度が0.25~4質量%であるゴム状重合体を含むゴム粒子とを含む光学フィルムであって、前記光学フィルムを、23℃55%環境下で24時間調湿したときに測定されるヘイズをヘイズ1、60℃90%環境下で1000時間保存した後、23℃55%環境下で24時間調湿したときに測定されるヘイズをヘイズ2としたとき、下記式(1)で表されるヘイズ変化量が、0.3以下である。
式(1):ヘイズ変化量=ヘイズ2-ヘイズ1
【0013】
本発明の偏光板は、偏光子と、その少なくとも一方の面に配置された本発明の光学フィルムとを有する。
【0014】
本発明の光学フィルムの製造方法は、本発明の光学フィルム用のドープの製造方法により、ドープを準備する工程と、前記ドープを支持体上に流延した後、剥離して膜状物を得る工程とを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ゴム粒子の凝集を抑制することができ、透明性を損なうことなく、十分な靱性を有する光学フィルムを付与しうる光学フィルム用のドープの製造方法、光学フィルム用のドープ、光学フィルム、偏光板ならびに光学フィルムの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者らは、溶液流延法で光学フィルムを製造する際に、ゴム粒子が凝集する機構について、以下のように推測した。
【0017】
溶液流延法では、ゴム粒子を有機溶媒に分散させやすくする観点などから、溶融流延法で用いられるゴム粒子よりも、架橋度の低いゴム状重合体を含むゴム粒子を用いている。一方で、架橋度の低いゴム状重合体(特に、架橋度の低いアクリル系ゴム状重合体など)を含むゴム粒子は、メタクリル系樹脂との親和性が低く、ゴム粒子が凝集しやすいという問題があった。
【0018】
これに対し、架橋度の低いゴム状重合体を含むコア部を、メタクリル系樹脂との相溶性が良好な他の重合体を含むシェル部で被覆したコアシェル型の粒子を用いることで、ゴム粒子とメタクリル系樹脂との相溶性をある程度は改善できる。しかしながら、コア部を構成する架橋度が低いゴム状重合体は、有機溶媒によって膨潤しやすく、シェル部を突き破って、ゴム粒子の表面に露出しやすい。ゴム粒子の表面に露出した架橋度の低いゴム状重合体は、メタクリル系樹脂との親和性が低いことから、ゴム粒子の凝集を十分には抑制できなかった。
【0019】
本発明者らは、鋭意検討した結果、ゴム粒子を溶媒中に分散させて、ゴム粒子分散液を調製する工程(ゴム粒子分散工程)と、得られたゴム粒子分散液と、メタクリル系樹脂と、溶媒とを混合して、ドープを調製する工程(ドープ調製工程)とを含むドープの製造方法において、ゴム粒子を「水を含む溶媒中」で分散させることで、ゴム粒子とメタクリル系樹脂との相溶性を高めることができること、それにより、ゴム粒子の凝集を抑制できることを見出した。
【0020】
この理由は明らかではないが、以下のように推測される。すなわち、ゴム状重合体の極性とは大きく離れた極性を示す水を敢えて添加することで、架橋度が低いゴム状重合体の膨潤を少なくすることができる。それにより、架橋度が低いゴム状重合体が、シェル部を突き破って、ゴム粒子の表面に露出するのを抑制できるため、ゴム粒子とメタクリル系樹脂との相溶性が損なわれるのを抑制することができる。
【0021】
なお、水の添加タイミングは、特に制限されないが、ゴム粒子分散工程において、有機溶媒中でゴム粒子を分散させた後に、水を添加してゴム粒子をさらに分散させることが好ましい。すなわち、有機溶媒中でゴム粒子の凝集体をある程度ほぐした後に、膨潤したゴム粒子1つ1つを、水によって確実に引き締める(膨潤を抑制する)ことができるため、ゴム粒子を高度に分散させやすい。以下、本発明の各構成について説明する。
【0022】
1.ドープの製造方法
本発明のドープの製造方法は、1)ゴム粒子を、第一溶媒中で分散させて、ゴム粒子分散液を調製する工程(ゴム粒子分散工程)と、2)得られたゴム粒子分散液と、メタクリル系樹脂と、第二溶媒とを混合して、ドープを調製する工程(ドープ調製工程)とを含む。
【0023】
そして、ゴム粒子分散工程における第一溶媒と、ドープ調製工程における第二溶媒の少なくとも一方が、水を含む。すなわち、ゴム粒子分散工程とドープ調製工程の少なくとも一方において、ゴム粒子を、水を含む溶媒中で分散させる。
【0024】
中でも、ゴム粒子の凝集をより高度に抑制する観点では、ゴム粒子分散工程における第一溶媒が水を含むこと;すなわち、ゴム粒子分散工程において、ゴム粒子を、水を含む第一溶媒中で分散させることが好ましい。以下、ゴム粒子分散工程において、ゴム粒子を、水を含む第一溶媒中に分散させる例で説明する。
【0025】
1-1.ゴム粒子分散工程
ゴム粒子を第一溶媒中で分散させて、ゴム粒子分散液を得る。
【0026】
(ゴム粒子)
ゴム粒子は、光学フィルムに靱性(しなやかさ)を付与する機能を有しうる。ゴム粒子は、ゴム状重合体を含む粒子である。ゴム状重合体は、ガラス転移温度が20℃以下の軟質な架橋重合体である。そのような架橋重合体の例には、ブタジエン系架橋重合体、(メタ)アクリル系架橋重合体、およびオルガノシロキサン系架橋重合体が含まれる。中でも、(メタ)アクリル系樹脂との屈折率差が小さく、光学フィルムの透明性が損なわれにくい観点では、(メタ)アクリル系架橋重合体が好ましく、アクリル系架橋重合体(アクリル系ゴム状重合体)がより好ましい。
【0027】
すなわち、ゴム粒子は、アクリル系ゴム状重合体(a)を含む粒子であることが好ましい。
【0028】
アクリル系ゴム状重合体(a)について:
アクリル系ゴム状重合体(a)は、アクリル酸エステルに由来する構造単位を主成分として含む架橋重合体である。主成分として含むとは、アクリル酸エステルに由来する構造単位の含有量が後述する範囲となることをいう。アクリル系ゴム状重合体(a)は、アクリル酸エステルに由来する構造単位と、それと共重合可能な他の単量体に由来する構造単位と、1分子中に2以上のラジカル重合性基(非共役な反応性二重結合)を有する多官能性単量体に由来する構造単位とを含む架橋重合体であることが好ましい。
【0029】
アクリル酸エステルは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸n-オクチルなどのアルキル基の炭素数1~12のアクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。アクリル酸エステルは、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0030】
アクリル酸エステルに由来する構造単位の含有量は、アクリル系ゴム状重合体(a)を構成する全構造単位に対して40~80質量%であることが好ましく、50~80質量%であることがより好ましい。アクリル酸エステルの含有量が上記範囲内であると、光学フィルムに十分な靱性を付与しやすい。
【0031】
共重合可能な他の単量体は、アクリル酸エステルと共重合可能な単量体のうち、多官能性単量体以外のものである。すなわち、共重合可能な単量体は、2以上のラジカル重合性基を有しない。共重合可能な単量体の例には、メタクリル酸メチルなどのメタクリル酸エステル;スチレン、メチルスチレンなどのスチレン類;(メタ)アクリロニトリル類;(メタ)アクリルアミド類;(メタ)アクリル酸が含まれる。中でも、共重合可能な他の単量体は、スチレン類を含むことが好ましい。共重合可能な他の単量体は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0032】
共重合可能な他の単量体に由来する構造単位の含有量は、アクリル系ゴム状重合体(a)を構成する全構造単位に対して5~55質量%であることが好ましく、10~45質量%であることがより好ましい。
【0033】
多官能性単量体の例には、アリル(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジビニルアジペート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチルロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトロメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが含まれる。
【0034】
多官能性単量体に由来する構造単位の含有量は、アクリル系ゴム状重合体(a)を構成する全構造単位に対して0.05~10質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることがより好ましい。多官能性単量体の含有量が0.05質量%以上であると、得られるアクリル系ゴム状重合体(a)の架橋度を高めやすいため、得られるフィルムの硬度、剛性が損なわれすぎず、10質量%以下であると、フィルムの靱性が損なわれにくい。
【0035】
アクリル系ゴム状重合体(a)を構成する単量体組成は、例えば熱分解GC-MSにより検出されるピーク面積比により測定することができる。
【0036】
アクリル系ゴム状重合体(a)を含む粒子は、アクリル系ゴム状重合体(a)からなる粒子、または、ガラス転移温度が20℃以上の硬質な架橋重合体(c)からなる硬質層と、その周囲に配置されたアクリル系ゴム状重合体(a)からなる軟質層とを有する粒子(これらを、「エラストマー」ともいう)であってもよいし;アクリル系ゴム状重合体(a)の存在下で、メタクリル酸エステルなどの単量体の混合物を、少なくとも1段以上重合して得られるアクリル系グラフト共重合体からなる粒子であってもよい。アクリル系グラフト共重合体からなる粒子は、アクリル系ゴム状重合体(a)を含むコア部と、それを覆うシェル部とを有するコアシェル型の粒子であってもよい。
【0037】
アクリル系ゴム状重合体を含むコアシェル型のゴム粒子について:
(コア部)
コア部は、アクリル系ゴム状重合体(a)を含み、必要に応じて硬質な架橋重合体(c)をさらに含んでもよい。すなわち、コア部は、アクリル系ゴム状重合体からなる軟質層と、その内側に配置された硬質な架橋重合体(c)からなる硬質層とを有してもよい。
【0038】
架橋重合体(c)は、メタクリル酸エステルを主成分とする架橋重合体でありうる。すなわち、架橋重合体(c)は、メタクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位と、それと共重合可能な他の単量体に由来する構造単位と、多官能性単量体に由来する構造単位とを含む架橋重合体であることが好ましい。
【0039】
メタクリル酸アルキルエステルは、前述のメタクリル酸アルキルエステルであってよく;共重合可能な他の単量体は、前述のスチレン類やアクリル酸エステルなどであってよく;多官能性単量体は、前述の多官能性単量体とした挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0040】
メタクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位の含有量は、架橋重合体(c)を構成する全構造単位に対して40~100質量%でありうる。共重合可能な他の単量体に由来する構造単位の含有量は、他の架橋重合体(c)を構成する全構造単位に対して60~0質量%でありうる。多官能性単量体に由来する構造単位の含有量は、他の架橋重合体を構成する全構造単位に対して0.01~10質量%でありうる。
【0041】
(シェル部)
シェル部は、アクリル系ゴム状重合体(a)にグラフト結合した、メタクリル酸エステルに由来する構造単位を主成分として含むメタクリル系重合体(b)(他の重合体)を含む。主成分として含むとは、メタクリル酸エステルに由来する構造単位の含有量が後述する範囲となることをいう。
【0042】
メタクリル系重合体(b)を構成するメタクリル酸エステルは、メタクリル酸メチルなどのアルキル基の炭素数1~12のメタクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。メタクリル酸エステルは、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0043】
メタクリル酸エステルの含有量は、メタクリル系重合体(b)を構成する全構造単位に対して50質量%以上であることが好ましい。メタクリル酸エステルの含有量が50質量%以上であると、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を主成分として含むメタクリル系樹脂との相溶性が得られやすい。メタクリル酸エステルの含有量は、上記観点から、メタクリル系重合体(b)を構成する全構造単位に対して70質量%以上であることがより好ましい。
【0044】
メタクリル系重合体(b)は、メタクリル酸エステルと共重合可能な他の単量体に由来する構造単位をさらに含んでもよい。共重合可能な他の単量体の例には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチルなどのアクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチルなどの脂環、複素環または芳香環を有する(メタ)アクリル系単量体(環含有(メタ)アクリル系単量体)が含まれる。
【0045】
共重合可能な単量体に由来する構造単位の含有量は、メタクリル系重合体(b)を構成する全構造単位に対して50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
【0046】
ゴム粒子におけるグラフト成分の比率(グラフト率)は、10~250質量%であることが好ましく、15~150質量%であることがより好ましい。グラフト率が一定以上であると、グラフト成分、すなわち、メタクリル酸エステルに由来する構造単位を主成分とするメタクリル系重合体(b)の割合が適度に多いため、ゴム粒子とメタクリル系樹脂との相溶性を高めやすく、ゴム粒子を一層凝集させにくい。また、フィルムの剛性などが損なわれにくい。グラフト率が一定以下であると、アクリル系ゴム状重合体(a)の割合が少なくなりすぎないため、フィルムの靱性や脆性改善効果が損なわれにくい。
【0047】
グラフト率は、以下の方法で測定される。
1)コアシェル型の粒子2gを、メチルエチルケトン50mlに溶解させ、遠心分離機(日立工機(株)製、CP60E)を用い、回転数30000rpm、温度12℃にて1時間遠心し、不溶分と可溶分とに分離する(遠心分離作業を合計3回セット)。
2)得られた不溶分の重量を下記式に当てはめて、グラフト率を算出する。
グラフト率(質量%)=[{(メチルエチルケトン不溶分の質量)-(アクリル系ゴム状重合体(a)の質量)}/(アクリル系ゴム状重合体(a)の質量)]×100
【0048】
(架橋度)
ゴム粒子に含まれるゴム状重合体の架橋度は、0.25~4質量%であることが好ましい。ゴム状重合体の架橋度が0.25質量%以上であると、ゴム状重合体が柔軟になりすぎないため、当該ゴム状重合体が、膨潤したシェル部の隙間から粒子表面に流出(露出)しにくくしうる。そのため、ゴム粒子とメタクリル系樹脂との相溶性の低下を抑制しやすい。また、ゴム粒子が柔軟になりすぎないため、過度に変形することもなく、フィルムに良好な滑り性を付与しうる。ゴム状重合体の架橋度が4質量%以下であると、溶液流延法による製膜時に、ゴム粒子を有機溶媒に分散させやすくしうる。また、ゴム状重合体が硬くなりすぎないため、ゴム粒子の割れや欠けを生じにくくしうる。ゴム粒子に含まれるゴム状重合体の架橋度は、上記観点から、0.3~3質量%であることがより好ましい。
【0049】
ゴム状重合体の架橋度は、ゴム状重合体を構成する構造単位の総量(ゴム状重合体を構成する単量体の総量)に対する、ゴム状重合体を構成する多官能性単量体に由来する構造単位の総量(ゴム状重合体を構成する多官能性単量体の総量)の比率として表される。ゴム状重合体の架橋度は、ゴム状重合体の調製時の単量体の仕込み比から算出することができる。
【0050】
(ガラス転移温度(Tg))
ゴム粒子に含まれるゴム状重合体のガラス転移温度(Tg)は、0℃以下であることが好ましく、-10℃以下であることがより好ましい。ゴム状重合体のガラス転移温度(Tg)が0℃以下であると、フィルムに適度な靱性を付与しうる。ゴム状重合体のガラス転移温度(Tg)は、前述と同様の方法で測定される。
【0051】
ゴム状重合体のガラス転移温度(Tg)は、ゴム状重合体の組成によって調整することができる。例えばアクリル系ゴム状重合体(a)のガラス転移温度(Tg)を低くするためには、アクリル系ゴム状重合体(a)中の、アルキル基の炭素原子数が4以上のアクリル酸エステル/共重合可能な他の単量体の質量比を多くする(例えば3以上、好ましくは4~10とする)ことが好ましい。
【0052】
(平均粒子径)
ゴム粒子の平均粒子径は、100~500nmであることが好ましい。ゴム粒子の平均粒子径が100nm以上であると、光学フィルムに十分な靭性または柔軟性を付与しやすく、500nm以下であると、光学フィルムのヘイズの増大を抑制しやすい。ゴム粒子の平均粒子径は、200~400nmであることがより好ましい。
【0053】
ゴム粒子の平均粒子径(分散粒径)は、ゼータ電位・粒径測定システム(大塚電子株式会社製 ELSZ-2000ZS)で測定することができる。
【0054】
ゴム粒子の含有量は、ドープに含まれるメタクリル系樹脂に対する量が後述する範囲となるように設定される。
【0055】
以下、ゴム粒子分散工程における第一溶媒、および、ドープ調製工程における第二溶媒に関する説明をする。本発明では、前述の通り、ゴム粒子分散工程における第一溶媒と、ドープ調製工程における第二溶媒の少なくとも一方が、水を含む。すなわち、ゴム粒子分散工程とドープ調製工程の少なくとも一方において、ゴム粒子を、水を含む溶媒中で分散させる。中でも、少なくともゴム粒子分散工程における第一溶媒が水を含むことが好ましい。
【0056】
(第一溶媒)
第一溶媒は、有機溶媒と、水とを含む。
【0057】
有機溶媒は、少なくともメタクリル系樹脂を溶解させる非極性溶媒(良溶媒)を含む。非極性溶媒の例には、ジクロロメタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、クロロホルム、酢酸エチル、テトラヒドロフランが含まれる。中でも、ジクロロメタンが好ましい。
【0058】
また、有機溶媒は、溶液流延法による製膜工程において、金属支持体からの剥離性を高める観点などから、水以外の極性溶媒(貧溶媒)をさらに含むことが好ましい。極性溶媒の例には、γ-ブチロラクトン、アセトン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)のような非プロトン性極性溶媒;炭素原子数1~4の脂肪族アルコール(メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ブタノールなど)、酢酸、エチレンジアミンなどのプロトン性極性溶媒が含まれる。中でも、炭素原子数1~4の脂肪族アルコールが好ましく、メタノール、エタノールがより好ましい。
【0059】
第一溶媒における極性溶媒の含有量は、第一溶媒における非極性溶媒と極性溶媒の合計含有量に対して5~30質量%であることが好ましく、10~20質量%であることがより好ましい。極性溶媒の含有量が一定以上であると、溶液流延法による製膜工程において、膜状物を金属支持体から剥離しやすいだけでなく、水を溶解させやすいため、得られる光学フィルムの外観が損なわれにくい。また、極性溶媒の含有量が一定以下であると、(メタ)アクリル系樹脂の溶解性が損なわれにくい。
【0060】
第一溶媒中の水の含有量、すなわち、ゴム粒子分散工程で添加される水の量は、得られるドープに含まれる溶媒中の水の含有量が後述する範囲(0.5~3質量%)となるように設定されればよい。ゴム粒子分散工程における水の添加量は、ゴム粒子分散液と第二溶媒との混合比率にもよるが、ゴム粒子分散液に含まれる第一溶媒全体に対して、例えば2~8質量%、好ましくは3~7.5質量%としうる。ゴム粒子分散工程における水の添加量が一定以上であると、ゴム粒子中のゴム状重合体を過度には膨潤させにくくし、当該ゴム状重合体が粒子表面に露出しにくくしうる。それにより、ゴム粒子とメタクリル系樹脂との相溶性を損ないにくくし、ゴム粒子の凝集を抑制しやすくしうる。一方、ゴム粒子分散工程における水の添加量が一定以下であると、水と他の溶媒との親和性が過度には損なわれないため、ゴム粒子とメタクリル系樹脂との相溶不良によるフィルムの外観不良(ゴム粒子の凝集物によるざらつきおよびヘイズ上昇)、および溶媒とメタクリル系樹脂との相溶不良によるヘイズ上昇を抑制しうる。
【0061】
水の添加タイミングは、特に限定されず、ゴム粒子を有機溶媒中で分散処理する前であってもよいし、ゴム粒子を有機溶媒中で分散処理するのと同時またはその後であってもよい。ゴム粒子の凝集を高度に抑制しやすくする観点では、水の添加は、ゴム粒子を有機溶媒中である程度分散させた後に行うことが好ましい。すなわち、ゴム粒子分散工程は、1)ゴム粒子を有機溶媒中で分散させる工程と、2)得られた溶液に水をさらに添加して、ゴム粒子をさらに分散させる工程とを含むことが好ましい。有機溶媒中である程度分散されたゴム粒子の1つ1つを、水の添加によって引き締めることで、ゴム粒子を高度に分散させうるからである。
【0062】
(分散方法)
ゴム粒子を第一溶媒中で分散させる際の、ゴム粒子の分散手段は、特に制限されず、超音波分散機、攪拌機(例えばディゾルバーなどの高速撹拌機)、分散機(例えばマイルダーなどの分散機)でありうる。中でも、高エネルギーを付与することによって、ゴム粒子を高度に分散させやすくする観点から、少なくともディゾルバーなどの高速撹拌機を用いて分散することが好ましい。
【0063】
1-2.ドープ調製工程について
得られたゴム粒子分散液と、メタクリル系樹脂と、溶媒(第二溶媒)とを混合して、ドープを調製する。
【0064】
(メタクリル系樹脂)
メタクリル系樹脂は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を主成分として含む重合体である。すなわち、メタクリル系樹脂は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を含む単独重合体であってもよいし、メタクリル酸メチルに由来する構造単位と、それと共重合可能なメタクリル酸メチル以外の他の単量体に由来する構造単位とを含む共重合体であってもよい。
【0065】
共重合可能な他の単量体は、特に制限されず、
(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの、メタクリル酸メチル以外のアルキル基の炭素数1~18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;
(メタ)アクリル酸などのα,β-不飽和酸;
マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和基含有二価カルボン酸;
スチレン、α-メチルスチレンなどの芳香族ビニル類;
アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのα,β-不飽和ニトリル類;
マレイミド、N-置換マレイミド(例えばフェニルマレイミド)などのマレイミド類;
無水マレイン酸、グルタル酸無水物が含まれる。共重合可能な他の単量体は、1種類で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0066】
中でも、共重合可能な他の単量体は、極性が比較的低い単量体、例えばスチレンなどの芳香族ビニル類;メタクリル酸フェニル、メタクリル酸アダマンチルなどの環含有メタクリル酸エステル;フェニルマレイミドなどのマレイミド類であることがより好ましい。このような共重合可能な他の単量体に由来する構造単位を有するメタクリル系樹脂は、ゴム粒子に含まれるゴム状重合体との親和性が低いことから、水添加による凝集抑制効果が得られやすいからである。
【0067】
メタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量は、メタクリル系樹脂を構成する全構造単位に対して80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。このように、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を多く含むメタクリル系樹脂は、ゴム粒子に含まれるゴム状重合体との親和性が低いため、水添加による凝集抑制効果が得られやすい。メタクリル系樹脂のモノマーの種類や組成は、1H-NMRにより特定することができる。
【0068】
メタクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、90℃以上であることが好ましく、100~150℃であることがより好ましい。メタクリル系樹脂のTgが90℃以上である光学フィルムは、良好な耐熱性を有しうる。
【0069】
メタクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS K 7121-2012またはASTM D 3418-82に準拠して測定することができる。
【0070】
メタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、30万~300万であることが好ましく、100万~200万であることがより好ましい。(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量が上記範囲であると、製膜性を損なうことなく、フィルムに十分な機械的強度(靱性)を付与しうる。
【0071】
メタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算にて測定することができる。具体的には、東ソー社製 HLC8220GPC)、カラム(東ソー社製 TSK-GEL G6000HXL-G5000HXL-G5000HXL-G4000HXL-G3000HXL 直列)を用いて測定することができる。測定条件は、後述する実施例と同様としうる。
【0072】
メタクリル系樹脂の含有量は、ドープの固形分に対する量が後述する範囲となるように設定される。
【0073】
(第二溶媒)
第二溶媒は、少なくとも有機溶媒を含む。有機溶媒は、前述と同様に、非極性溶媒(良溶媒)を含み、水以外の極性溶媒(貧溶媒)をさらに含むことが好ましい。非極性溶媒や極性溶媒としては、前述と同様のものを用いることができる。
【0074】
第二溶媒における極性溶媒の含有量は、ゴム粒子分散液の第一溶媒の組成にもよるが、第二溶媒における非極性溶媒と極性溶媒の合計含有量に対して18質量%以下であることが好ましく、8~16質量%であることがより好ましい。
【0075】
第二溶媒は、必要に応じて水をさらに含んでもよい。すなわち、ゴム粒子分散液と、メタクリル系樹脂と、水を含む第二溶媒とを混合して、ドープを調製してもよい。
【0076】
その際、ゴム粒子分散液と、水を含む第二溶媒との混合タイミングは、特に限定されず、メタクリル系樹脂の添加前であってもよいし、メタクリル系樹脂の添加と同時または添加後であってもよい。ゴム粒子の凝集を高度に抑制しやすくする観点では、ゴム粒子分散液と、水を含む第二溶媒との混合は、メタクリル系樹脂の添加前に行うことが好ましい。すなわち、ドープの調製工程は、1)ゴム粒子分散液と、水を含む第二溶媒とを混合する工程と、2)得られた混合液にメタクリル系樹脂を添加して、ドープを調製する工程とを含んでもよい。なお、水を含む第二溶媒を添加する際は、水と有機溶媒とを同時に添加してもよいし、別々に添加してもよい。
【0077】
第二溶媒中の水の含有量、すなわち、ドープ調製工程で添加される水の量は、得られるドープの溶媒全体(少なくとも第一溶媒と第二溶媒とを混合して得られる溶媒)に対して0.5~3質量%となる範囲であればよい。
【0078】
(他の成分)
ドープには、必要に応じて上記以外の他の成分をさらに添加してもよい。他の成分の例には、フィルムに滑り性を付与するためのマット剤が含まれる。マット剤は、シリカ粒子などの無機微粒子であってもよいし、ガラス転移温度が80℃以上の有機微粒子であってもよい。
【0079】
(混合方法)
各成分の混合手段は、特に制限されず、攪拌機(例えばディゾルバーなど)でありうる。
【0080】
また、ドープを調製する際、上記以外の他の分散液または溶液をさらに混合してもよい。例えば、有機微粒子を含む光学フィルムを得る場合、有機微粒子を分散させた第二分散液をさらに混合してもよい。
【0081】
2.ドープ
本発明のドープは、前述のドープの製造方法で得られたものであり、メタクリル系樹脂と、ゴム粒子と、溶媒とを含む。
【0082】
メタクリル系樹脂の含有量は、ドープの固形分に対して75質量%以上であることが好ましく、80~90質量%であることがより好ましい。
【0083】
ゴム粒子の含有量は、ドープに含まれるメタクリル系樹脂に対して10~25質量%であることが好ましく、15~20質量%であることがより好ましい。
【0084】
ドープに含まれる溶媒は、前述の第一溶媒と第二溶媒とを含むことから、それらに由来する少量の水を含む。
【0085】
具体的には、ドープにおける水の含有量は、ドープに含まれる溶媒全体に対して0.5~3質量%であることが好ましい。溶媒中の水の含有量が0.5質量%以上であると、ゴム粒子を過度には膨潤させにくく、ゴム粒子中の(メタクリル系樹脂との親和性が低い)ゴム状重合体が粒子表面に露出しにくくしうる。それにより、ゴム粒子とメタクリル系樹脂との相溶性を損ないにくくし、ゴム粒子の凝集を抑制しやすい。一方、溶媒中の水の含有量が3質量%以下であると、メタクリル系樹脂の溶解性が損なわれにくい。水の含有量は、上記観点から、ドープに含まれる溶媒全体に対して1~3質量%となる範囲であればよい。
【0086】
得られたドープは、ゴム粒子の凝集が高度に抑制されており、良好に分散している。ゴム粒子が良好に分散しているかどうかは、例えばドープ中のゴム粒子の分散粒径(平均粒子径)を測定することによって確認することができる。
【0087】
具体的には、ドープを、当該ドープを構成する有機溶媒と同組成の有機溶媒で固形分1質量%になるまで希釈した希釈液中のゴム粒子の分散粒径(平均粒子径)が、(一次粒子径+300nm)以下であることが好ましく、(一次粒子径+100nm)以下であることがより好ましく、(一次粒子径+50nm)以下であることがより好ましい。
【0088】
ドープ中のゴム粒子の分散粒径(平均粒子径)は、ゼータ電位・粒径測定システム(大塚電子株式会社製 ELSZ-2000ZS)で測定することができる。
【0089】
なお、一次粒子径は、以下の方法で測定された値とする。ドープから製膜して得られた光学フィルムを切断し、切断面をTEM観察する。そして、任意の微粒子100個の粒子径の円相当径をそれぞれ測定し、それらの平均値を「一次粒子径」とする。
【0090】
3.光学フィルムの製造方法
本発明の光学フィルムは、1)前述のドープを準備する工程と、2)得られたドープを支持体上に流延した後、乾燥および剥離して、膜状物を得る工程と、3)得られた膜状物を、必要に応じて延伸しながら乾燥させる工程とを経て製造されうる。
【0091】
1)の工程について
前述のドープの調製方法により、メタクリル系樹脂、ゴム粒子および溶媒を含むドープを準備する。
【0092】
2)の工程について
得られたドープを、支持体上に流延する。ドープの流延は、流延ダイから吐出させて行うことができる。
【0093】
次いで、支持体上に流延されたドープ中の溶媒を蒸発させ、乾燥させる。乾燥されたドープを支持体から剥離して、膜状物を得る。
【0094】
支持体から剥離する際のドープの残留溶媒量(剥離時の膜状物の残留溶媒量)は、例えば25質量%以上であることが好ましく、30~37質量%であることがより好ましい。剥離時の残留溶媒量が37質量%以下であると、剥離による膜状物が伸びすぎるのを抑制しやすい。
【0095】
剥離時のドープの残留溶媒量は、下記式で定義される。以下においても同様である。
ドープの残留溶媒量(質量%)=(ドープの加熱処理前質量-ドープの加熱処理後質量)/ドープの加熱処理後質量×100
尚、残留溶媒量を測定する際の加熱処理とは、140℃30分の加熱処理をいう。
【0096】
剥離時の残留溶媒量は、支持体上でのドープの乾燥温度や乾燥時間、支持体の温度などによって調整することができる。
【0097】
3)の工程について
得られた膜状物を乾燥させる。乾燥は、一段階で行ってもよいし、多段階で行ってもよい。また、乾燥は、必要に応じて延伸しながら行ってもよい。
【0098】
例えば、膜状物の乾燥工程は、膜状物を予備乾燥させる工程(予備乾燥工程)と、膜状物を延伸する工程(延伸工程)と、延伸後の膜状物を乾燥させる工程(本乾燥工程)とを含んでもよい。
【0099】
(予備乾燥工程)
予備乾燥温度(延伸前の乾燥温度)は、延伸温度よりも高い温度でありうる。具体的には、メタクリル系樹脂のガラス転移温度をTgとしたとき、(Tg-50)~(Tg+50)℃であることが好ましい。予備乾燥温度が(Tg-50)℃以上であると、溶媒を適度に揮発させやすいため、搬送性(ハンドリング性)を高めやすく、(Tg+50)℃以下であると、溶媒が揮発しすぎないため、この後の延伸工程における延伸性が損なわれにくい。初期乾燥温度は、テンター延伸機やローラーで搬送しながら非接触加熱型で乾燥させる場合は、延伸機内温度または熱風温度などの雰囲気温度として測定されうる。
【0100】
(延伸工程)
延伸は、求められる光学特性に応じて行えばよく、少なくとも一方の方向に延伸することが好ましく、互いに直交する二方向に延伸(例えば、膜状物の幅方向(TD方向)と、それと直交する搬送方向(MD方向)の二軸延伸)してもよい。
【0101】
光学フィルムを製造する際の延伸倍率は、5~100%であることが好ましく、20~100%であることがより好ましい。二軸延伸する場合は、各方向にける延伸倍率が、それぞれ上記範囲内であることが好ましい。
【0102】
延伸倍率(%)は、(延伸後のフィルムの延伸方向大きさ-延伸前のフィルムの延伸方向大きさ)/(延伸前のフィルムの延伸方向大きさ)×100として定義される。なお、二軸延伸を行う場合は、TD方向とMD方向のそれぞれについて、上記延伸倍率とすることが好ましい。
【0103】
延伸温度(延伸時の乾燥温度)は、前述と同様に、メタクリル系樹脂のガラス転移温度をTgとしたとき、Tg(℃)以上であることが好ましく、(Tg+10)~(Tg+50)℃であることがより好ましい。延伸温度がTg(℃)以上、好ましくは(Tg+10)℃以上であると、溶媒を適度に揮発させやすいため、延伸張力を適切な範囲に調整しやすく、(Tg+50)℃以下であると、溶媒が揮発しすぎないため、延伸性が損なわれにくい。延伸温度は、例えば90℃以上としうる。延伸温度は、前述と同様に、延伸機内温度などの雰囲気温度を測定することが好ましい。
【0104】
延伸開始時の膜状物中の残留溶媒量は、剥離時の膜状物中の残留溶媒量と同程度であることが好ましく、例えば20~30質量%であることが好ましく、25~30質量%であることがより好ましい。
【0105】
膜状物のTD方向(幅方向)の延伸は、例えば膜状物の両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げる方法(テンター法)で行うことができる。膜状物のMD方向の延伸は、例えば複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用する方法(ロール法)で行うことができる。
【0106】
(本乾燥工程)
残留溶媒量をより低減させる観点から、延伸後に得られた膜状物をさらに乾燥させることが好ましい。例えば、延伸後に得られた膜状物を、ロールなどで搬送しながらさらに乾燥させることが好ましい。
【0107】
本乾燥温度(未延伸の場合は乾燥温度)は、メタクリル系樹脂のガラス転移温度をTgとしたとき、(Tg-50)~(Tg-30)℃であることが好ましく、(Tg-40)~(Tg-30)℃であることがより好ましい。後乾燥温度が(Tg-50)℃以上であると、延伸後の膜状物から溶媒を十分に揮発除去しやすく、(Tg-30)℃以下であると、膜状物の変形などを高度に抑制しうる。本乾燥温度は、前述と同様に、熱風温度などの雰囲気温度を測定することが好ましい。
【0108】
4.光学フィルム
光学フィルムは、前述の光学フィルムの製造方法で得られたものであり、前述のメタクリル系樹脂と、ゴム粒子とを含む。
【0109】
光学フィルムの組成は、ドープの固形分組成と同じである。ゴム粒子は、前述の通り、架橋度が0.25~4質量%のゴム状重合体を含む。ゴム状重合体の架橋度は、前述の通り、ゴム状重合体の調製時の単量体の仕込み比から算出することができる。
【0110】
(ヘイズ)
光学フィルムのヘイズは、1.5%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがより好ましく、0.7%以下であることがさらに好ましい。光学フィルムのヘイズは、25℃、60%RHの環境下で24時間調湿した後、ヘイズメーター(NDH 2000:日本電色工業(株)製)を用いて測定することができる。
【0111】
(ヘイズ変化量)
光学フィルムは、前述の製造工程で添加された水に由来する残留水分を含む。このように、残留水分を含む光学フィルムは、高温・高湿下で一定時間曝されても、残留水分を含まない光学フィルムよりもヘイズの変化が少ない。
【0112】
具体的には、光学フィルムを、23℃55%環境下で24時間調湿したときに測定されるヘイズをヘイズ1、60℃90%環境下で1000時間保存した後、23℃55%環境下で24時間調湿したときに測定されるヘイズをヘイズ2としたとき、下記式(1)で表されるヘイズ変化量は、0.3以下であることが好ましく、0.15以下であることがより好ましく、0.1以下であることがさらに好ましい。
式(1):ヘイズ変化量=ヘイズ2-ヘイズ1
【0113】
光学フィルムのヘイズやヘイズ変化量は、使用されるドープ中のゴム粒子の分散性によって調整されうる。例えば、光学フィルムのヘイズやヘイズ変化量を低くするためには、使用されるドープ中のゴム粒子の分散性を高めることが好ましい。ドープ中のゴム粒子の分散性は、前述の通り、ゴム粒子分散工程やドープ調製工程で添加される水の量や、水の添加タイミングによって調整されうる。光学フィルムのヘイズを一定以下とし、ヘイズ変化量を一定以下とするためには、光学フィルム用のドープの製造方法において添加される水の量を上記範囲内とすることが好ましく、さらに水の添加を、ゴム粒子分散工程で行うことがより好ましい。
【0114】
(ガラス転移温度)
光学フィルムのガラス転移温度(Tg)は、例えば90~150℃であることが好ましい。光学フィルムのTgが90℃以上であると、光学フィルムの耐熱性を高めうるだけでなく、溶液流延法による光学フィルムの製造時において、乾燥温度を高めることができるため、乾燥性を高めやすい。光学フィルムのTgが150℃以下であると、剛直な単量体に由来する構造単位の含有量を少なくできるため、光学フィルムの靱性が損なわれにくい。光学フィルムのTgは、95~140℃であることがより好ましい。光学フィルムのガラス転移温度は、前述と同様の方法で測定することができる。
【0115】
光学フィルムのガラス転移温度は、例えば、メタクリル系樹脂の単量体組成によって調整される。
【0116】
(位相差RoおよびRt)
光学フィルムは、例えばIPSモード用の位相差フィルムとして用いる観点では、測定波長550nm、23℃55%RHの環境下で測定される面内方向の位相差Roは、0~10nmであることが好ましく、0~5nmであることがより好ましい。光学フィルムの厚み方向の位相差Rtは、-20~20nmであることが好ましく、-10~10nmであることがより好ましい。
【0117】
RoおよびRtは、それぞれ下記式で定義される。
式(2a):Ro=(nx-ny)×d
式(2b):Rt=((nx+ny)/2-nz)×d
(式中、
nxは、フィルムの面内遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)の屈折率を表し、
nyは、フィルムの面内遅相軸に直交する方向の屈折率を表し、
nzは、フィルムの厚み方向の屈折率を表し、
dは、フィルムの厚み(nm)を表す。)
【0118】
光学フィルムの面内遅相軸は、自動複屈折率計アクソスキャン(Axo Scan Mueller Matrix Polarimeter:アクソメトリックス社製)により確認することができる。
【0119】
RoおよびRtは、以下の方法で測定することができる。
1)光学フィルムを23℃55%RHの環境下で24時間調湿する。このフィルムの平均屈折率をアッベ屈折計で測定し、厚みdを市販のマイクロメーターを用いて測定する。
2)調湿後のフィルムの、測定波長550nmにおけるリターデーションRoおよびRtを、それぞれ自動複屈折率計アクソスキャン(Axo Scan Mueller Matrix Polarimeter:アクソメトリックス社製)を用いて、23℃55%RHの環境下で測定する。
【0120】
光学フィルムの位相差RoおよびRtは、例えば、メタクリル系樹脂の単量体組成や延伸条件によって調整することができる。
【0121】
(残留溶媒量)
光学フィルムは、好ましくは溶液流延法で製膜されることから、残留溶媒をさらに含みうる。残留溶媒量は、光学フィルムに対して700ppm以下であることが好ましく、30~700ppmであることがより好ましい。残留溶媒の含有量は、光学フィルムの製造工程における、支持体上に流延させたドープの乾燥条件によって調整されうる。
【0122】
光学フィルムの残留溶媒量は、ヘッドスペースガスクロマトグラフィーにより測定することができる。ヘッドスペースガスクロマトグラフィー法では、試料を容器に封入し、加熱し、容器中に揮発成分が充満した状態で速やかに容器中のガスをガスクロマトグラフに注入し、質量分析を行って化合物の同定を行いながら揮発成分を定量するものである。ヘッドスペース法では、ガスクロマトグラフにより、揮発成分の全ピークを観測することを可能にするとともに、電磁気的相互作用を利用した分析法を用いることによって、高精度で揮発性物質や単量体などの定量も併せて行うことができる。
【0123】
(厚み)
光学フィルムの厚みは、特に制限されないが、10~60μmであることが好ましく、10~40μmであることがより好ましい。
【0124】
5.偏光板
本発明の偏光板は、偏光子と、その少なくとも一方の面に配置された本発明の光学フィルムとを有する。
【0125】
具体的には、本発明の偏光板は、偏光子と、その一方の面に配置された本発明の光学フィルムと、他方の面に配置された対向フィルムと、偏光子と光学フィルムとの間、および、偏光子と対向フィルムとの間に配置された接着層とを有しうる。
【0126】
5-1.偏光子
偏光子は、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、ポリビニルアルコール系偏光フィルムである。ポリビニルアルコール系偏光フィルムには、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと、二色性染料を染色させたものとがある。
【0127】
ポリビニルアルコール系偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系フィルムを一軸延伸した後、ヨウ素または二色性染料で染色したフィルム(好ましくはさらにホウ素化合物で耐久性処理を施したフィルム)であってもよいし;ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素または二色性染料で染色した後、一軸延伸したフィルム(好ましくは、さらにホウ素化合物で耐久性処理を施したフィルム)であってもよい。偏光子の吸収軸は、通常、最大延伸方向と平行である。
【0128】
例えば、特開2003-248123号公報、特開2003-342322号公報等に記載のエチレン単位の含有量1~4モル%、重合度2000~4000、けん化度99.0~99.99モル%のエチレン変性ポリビニルアルコールが用いられる。
【0129】
偏光子の厚みは、5~30μmであることが好ましく、偏光板を薄型化するため等から、5~20μmであることがより好ましい。
【0130】
5-2.光学フィルム
本発明の光学フィルムは、偏光子の一方の面(好ましくは液晶セルと対向する面)に配置されている。光学フィルムは、偏光板保護フィルム(好ましくは位相差フィルム)として機能しうる。
【0131】
5-3.対向フィルム
対向フィルムは、本発明の光学フィルムであってもよいし、それ以外の他の光学フィルムであってもよい。他の光学フィルムの例には、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタックKC8UX、KC5UX、KC4UX、KC8UCR3、KC4SR、KC4BR、KC4CR、KC4DR、KC4FR、KC4KR、KC8UY、KC6UY、KC4UY、KC4UE、KC8UE、KC8UY-HA、KC2UA、KC4UA、KC6UA、KC8UA、KC2UAH、KC4UAH、KC6UAH、以上コニカミノルタ(株)製、フジタックT40UZ、フジタックT60UZ、フジタックT80UZ、フジタックTD80UL、フジタックTD60UL、フジタックTD40UL、フジタックR02、フジタックR06、以上富士フィルム(株)製)が含まれる。
【0132】
対向フィルムの厚みは、例えば5~100μm、好ましくは40~80μmでありうる。
【0133】
5-3.接着層
接着層は、偏光子と光学フィルムとの間、および偏光子と対向フィルムとの間にそれぞれ配置されうる。
【0134】
接着剤層は、水系接着剤から得られる層であってもよいし、活性エネルギー線硬化性接着剤の硬化物層であってもよい。
【0135】
水系接着剤の例には、ポリビニルアルコール系樹脂を含む水接着剤(完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液など)が含まれる。活性エネルギー線硬化性接着剤は、光ラジカル重合性組成物であってもよいし、光カチオン重合性組成物であってもよく、好ましくはエポキシ系化合物と、光カチオン重合開始剤とを含む光カチオン重合性組成物でありうる。
【0136】
接着剤層の厚みは、特に限定されないが、例えば0.01~10μmであり、好ましくは0.01~5μm程度でありうる。
【0137】
5-4.他の層
本発明の偏光板は、必要に応じて上記以外の他の層をさらに有してもよい。他の層の例には、偏光板を液晶セルに固定するための粘着剤層が含まれる。例えば、偏光板が、本発明の光学フィルムが液晶セル側となるように配置される場合、偏光板は、光学フィルム上に配置された粘着剤層をさらに有しうる。
【0138】
粘着剤層は、ベースポリマー、架橋剤および溶媒を含む粘着剤組成物を、乾燥および部分架橋させたものであることが好ましい。粘着剤組成物の例には、(メタ)アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤組成物、シリコーン系ポリマーをベースポリマーとするシリコーン系粘着剤組成物、ゴムをベースポリマーとするゴム系粘着剤組成物が含まれる。中でも、透明性、耐候性、耐熱性、加工性の観点では、アクリル系粘着剤組成物が好ましい。
【0139】
粘着剤層の厚みは、通常、3~100μm程度であり、好ましくは5~50μmである。
【0140】
なお、粘着剤層の表面は、離型処理が施された剥離フィルム(例えばポリエステルフィルム、フッ素樹脂フィルムなど)で保護されうる。
【0141】
5-5.偏光板の製造方法
本発明の偏光板は、偏光子と本発明の光学フィルムとを、接着剤を介して貼り合わせる工程を経て得ることができる。偏光子と光学フィルムとの接着性を高める観点から、貼り合わせる工程の前に、必要に応じてコロナ処理などの表面処理を施す工程をさらに行ってもよい。
【0142】
6.画像表示装置
本発明の光学フィルムは、液晶表示装置や有機EL表示装置などの画像表示装置の光学フィルム、好ましくは液晶表示装置の偏光板保護フィルムとして用いることができる。
【0143】
すなわち、本発明の液晶表示装置は、液晶セルと、液晶セルの一方の面に配置された第一偏光板と、液晶セルの他方の面に配置された第二偏光板とを含む。
【0144】
液晶セルの表示モードは、例えばSTN(Super-Twisted Nematic)、TN(Twisted Nematic)、OCB(Optically Compensated Bend)、HAN(Hybridaligned Nematic)、VA(Vertical Alignment、MVA(Multi-domain Vertical Alignment)、PVA(Patterned Vertical Alignment))、IPS(In-Plane-Switching)などでありうる。例えば、液晶表示装置がスマートホンなどに用いられる場合、IPSモードが好ましい。
【0145】
第一偏光板と第二偏光板は、第一偏光板の偏光子の吸収軸と第二偏光板の偏光子の吸収軸とが直交するように(クロスニコルとなるように)配置されうる。
【0146】
第一偏光板および第二偏光板の少なくとも一方が、本発明の偏光板である。本発明の偏光板は、本発明の光学フィルムが液晶セル側となるように配置されることが好ましい。
【実施例】
【0147】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0148】
1.ドープおよび光学フィルムの材料
(1)メタクリル系樹脂
PMMA:ポリメチルメタクリレート(重量平均分子量100万、ガラス転移温度105℃)
MMA/PMI:メタクリル酸メチル・フェニルマレイミド共重合体(85/15質量比)(重量平均分子量100万、ガラス転移温度120℃)
【0149】
なお、重量平均分子量およびガラス転移温度(Tg)は、以下の方法で測定した。
【0150】
(重量平均分子量)
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(東ソー社製 HLC8220GPC)、カラム(東ソー社製 TSK-GEL G6000HXL-G5000HXL-G5000HXL-G4000HXL-G3000HXL 直列)を用いて測定した。試料20mg±0.5mgをテトラヒドロフラン10mlに溶解し、0.45mmのフィルターで濾過した。この溶液をカラム(温度40℃)に100ml注入し、検出器RI温度40℃で測定し、スチレン換算した値を用いた。
【0151】
(ガラス転移温度)
樹脂のガラス転移温度(Tg)は、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS K 7121-2012に準拠して測定した。
【0152】
(2)ゴム粒子
<ゴム粒子A1の調製>
撹拌機付き8L重合装置に、以下の化合物を仕込んだ。
脱イオン水:175質量部
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸:0.104質量部
ホウ酸:0.4725質量部
炭酸ナトリウム:0.04725質量部
【0153】
重合機内を窒素ガスで充分に置換した後、内温を80℃にし、モノマー混合物(c’)27質量部(メタクリル酸メチル:96.5質量%、アクリル酸ブチル:3質量%、およびメタクリル酸アリル:0.5質量%)を重合機に一括で追加し、その後、ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレート0.0645質量部、エチレンジアミン四酢酸-2-ナトリウム0.0056質量部、硫酸第一鉄0.0014質量部、t-ブチルハイドロパーオキサイド0.0207質量部を追加し、その15分後にt-ブチルハイドロパーオキサイド0.0345質量部を追加し、さらに15分重合を継続させた。
次に、水酸化ナトリウム0.0098質量部を2質量%水溶液の形態で、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸0.0852質量部をそのまま追加し、上記混合物の残り74質量%を60分かけて連続的に添加した。添加終了30分後に、t-ブチルハイドロパーオキサイド0.069質量部を追加し、さらに30分重合を継続することにより、硬質な架橋重合体(c)を得た。
【0154】
その後、水酸化ナトリウム0.0267質量部を2質量%水溶液の形態で、過硫酸カリウム0.08質量部を2質量%水溶液の形態で添加し、次いで、モノマー混合物(a’)50質量部(アクリル酸ブチル:73質量%、メタクリル酸メチル:25.2質量%、およびメタクリル酸アリル:1.8質量%)を150分かけて連続的に添加した。添加終了後、過硫酸カリウム0.015質量部を2質量%水溶液の形態で添加し、120分重合を継続し、アクリル系ゴム状重合体(a)を得た。
【0155】
その後、過硫酸カリウム0.023質量部を2質量%水溶液の形態で添加し、モノマー混合物(b1)15質量部(メタクリル酸メチル:95質量%、アクリル酸ブチル:5質量%)を45分かけて連続的に添加し、さらに30分重合を継続した。
【0156】
その後、モノマー混合物(b2)8質量部(メタクリル酸メチル:52質量%、アクリル酸ブチル:48質量%)を25分かけて連続的に添加し、さらに60分重合を継続することにより、グラフト共重合体ラテックスを得た。
【0157】
得られたラテックスを塩化マグネシウムで塩析、凝固し、水洗、乾燥を行い、白色粉末状のグラフト共重合体(ゴム粒子A1)を得た。
【0158】
得られたゴム粒子A1のグラフト率は24質量%であり、平均粒子径は200nmであった。また、ゴム粒子A1に含まれるアクリル系ゴム状重合体(a)のガラス転移温度(Tg)は-30℃であり、アクリル系ゴム状重合体(a)を構成する全構造単位に対するメタクリル酸アリルに由来する構造単位の含有量(架橋度)は、1.8質量%であった。
【0159】
<ゴム粒子A2~A7の調製>
モノマー混合物(a’)の組成を調整して、得られるグラフト共重合体中の架橋度を表1に示されるように変更した以外はゴム粒子A1と同様にして、グラフト共重合体(ゴム粒子)を得た。
【0160】
ゴム粒子A1~A7の構成および物性を、表1に示す。
【0161】
【0162】
ゴム粒子の架橋度、平均粒子径、およびガラス転移温度(Tg)は、以下の方法で測定した。
【0163】
(1)架橋度
架橋度は、ゴム状重合体の調製に用いた単量体の総質量に対する、ゴム状重合体の調製に用いた2官能性以上の多官能性単量体の合計質量の比率(質量%)を、架橋度とした。
【0164】
(2)平均粒子径
得られた分散液中のゴム粒子の分散粒径を、ゼータ電位・粒径測定システム(大塚電子株式会社製 ELSZ-2000ZS)で測定した。
【0165】
(3)ガラス転移温度(Tg)
前述と同様の方法で測定した。
【0166】
2.ドープの調製
<ドープ101の調製>
(ゴム粒子分散液1の調製)
10.5質量部のゴム粒子A1と、168質量部のメチレンクロライドと、32質量部のエタノールとを、ディゾルバーで50分間撹拌混合した後、マイルダー分散機(大平洋機工株式会社製)を用いて1500rpm条件下で分散させた。次いで、得られた溶液に水を7.13質量部添加し、ディゾルバーで30分間撹拌混合して、ゴム粒子分散液1(第一溶媒中の水の含有量:3.4質量%)を得た。
【0167】
(ドープの調製)
次いで、下記組成のドープを調製した。まず、加圧溶解タンクにメチレンクロライド、およびエタノールを添加した。これに、PMMAを撹拌しながら投入した後、上記調製したゴム粒子分散液1をさらに投入して、撹拌しながら、PMMAを完全に溶解させた。得られた溶液を、(株)ロキテクノ製のSHP150を使用して濾過し、ドープ101を得た。
ポリメタクリル酸メチル(PMMA):100質量部
メチレンクロライド(第二溶媒):393質量部
エタノール(第二溶媒):42質量部
ゴム粒子分散液1:500質量部
【0168】
<ドープ102の調製>
(ゴム粒子分散液2の調製)
10.5質量部のゴム粒子A1と、168質量部のメチレンクロライド(非極性溶媒:B)と、32質量部のエタノール(極性溶媒:A)と、水を7.13質量部とを、ディゾルバーで50分間撹拌混合した後、マイルダー分散機マイルダー分散機(大平洋機工株式会社製)を用いて1500rpm条件下で分散させて、ゴム粒子分散液2を得た。
【0169】
(ドープの調製)
得られたゴム粒子分散液2を用いた以外はドープ101の調製と同様にしてドープ102を得た。
【0170】
<ドープ103の調製>
(ゴム粒子分散液3の調製)
水を添加しなかった以外はゴム粒子分散液1と同様にしてゴム粒子分散液3を得た。
【0171】
(ドープの調製)
次いで、下記組成のドープを調製した。まず、加圧溶解タンクにメチレンクロライド、およびエタノールを添加した。これに、表2に示される量の水を添加して、ディゾルバーで10分間撹拌した。次いで、これに上記調製したゴム粒子分散液3を撹拌しながら投入した後、PMMAをさらに投入して撹拌し、PMMAを溶解させた。得られた溶液を、(株)ロキテクノ製のSHP150を使用して濾過し、ドープ103を得た。
ポリメタクリル酸メチル(PMMA):100質量部
メチレンクロライド:393質量部
エタノール:42質量部
水:16.7質量部
ゴム粒子分散液3:500質量部
【0172】
<ドープ104の調製>
(ゴム粒子分散液4の調製)
ゴム粒子の種類を表2に示されるものに変更した以外はゴム粒子分散液1と同様にして、ゴム粒子分散液4を得た。
【0173】
(ドープの調製)
得られたゴム粒子分散液4を用いた以外はドープ101の調製と同様にしてドープ104を得た。
【0174】
<ドープ105の調製>
上記ゴム粒子分散液3(水添加なし)を用いた以外はドープ101の調製と同様にしてドープ105を得た。
【0175】
<ドープ106の調製>
(ゴム粒子分散液5の調製)
10.5質量部のゴム粒子A1と、168質量部のメチレンクロライドと、32質量部のエタノールとを、ディゾルバーで50分間撹拌混合した後、マイルダー分散機(大平洋機工株式会社製)を用いて1500rpm条件下で分散させた。次いで、得られた溶液に水を4.96質量部添加し、ディゾルバーで30分間撹拌混合して、ゴム粒子分散液5(第一溶媒中の水の含有量:2.4質量%)を得た。
【0176】
(ドープの調製)
下記組成のドープを調製した。まず、加圧溶解タンクにメチレンクロライド、およびエタノールを添加した。これに、表2に示される量の水を添加して、ディゾルバーで10分間撹拌した。次いで、これに上記調製したゴム粒子分散液1を撹拌しながら投入した後、PMMAをさらに投入して撹拌し、PMMAを溶解させた。得られた溶液を、(株)ロキテクノ製のSHP150を使用して濾過し、ドープ106を得た。
ポリメタクリル酸メチル(PMMA):100質量部
メチレンクロライド:393質量部
エタノール:42質量部
水:4.96質量部
ゴム粒子分散液5:500質量部
【0177】
<ドープ107~111の調製>
(ゴム粒子分散液6~10の調製)
ゴム粒子の架橋度を表2に示されるように変更した以外はゴム粒子分散液1と同様にしてゴム粒子分散液6~10を得た。
【0178】
(ドープの調製)
得られたゴム粒子分散液を用いた以外はドープ101の調製と同様にしてドープ107~111を得た。
【0179】
<ドープ112~114および116の調製>
(ゴム粒子分散液11~13および15の調製)
ゴム粒子分散液の調製時に添加する水の量を調整して、得られるドープ中の非極性溶媒全体に対する水の量が表2に示される量となるようにした以外はゴム粒子分散液1と同様にしてゴム粒子分散液11~13および15を得た。
【0180】
(ドープの調製)
得られたゴム粒子分散液を用いた以外はドープ101の調製と同様にしてドープ112~114および116を得た。
【0181】
<ドープ115の調製>
(ゴム粒子分散液14の調製)
ゴム粒子分散液の調製時に用いる非極性溶媒の種類を表2に示されるように変更した以外はゴム粒子分散液1と同様にしてゴム粒子分散液14を得た。
【0182】
(ドープの調製)
得られたゴム粒子分散液を用い、かつドープの調製時に用いる非極性溶媒の種類を表2に示されるように変更した以外はドープ101の調製と同様にしてドープ115を得た。
【0183】
<ドープ117の調製>
ポリメタクリル酸メチル(PMMA)を、メタクリル酸メチル/フェニルマレイミド共重合体(MMA/PhMI=85/15質量比)に変更した以外はドープ101の調製と同様にしてドープ117を得た。
【0184】
<評価>
得られたドープ101~117中のゴム粒子の分散状態を、以下の方法で評価した。
【0185】
(ゴム粒子の分散状態)
得られたドープを、当該ドープ中の有機溶媒の組成と同じになるように調製した有機溶媒で固形分1質量%になるまで希釈した。得られた希釈ドープ中のゴム粒子の分散粒径(平均粒子径)を、ゼータ電位・粒径測定システム(大塚電子株式会社製 ELSZ-2000ZS)で測定した。そして、以下の基準に基づいて、ドープ中のゴム粒子の分散状態を評価した。
5:希釈ドープ中の平均粒子径が一次粒子径+50nm以下
4:希釈ドープ中の平均粒子径が一次粒子径+50nm超+100nm以下
3:希釈ドープ中の平均粒子径が一次粒子径+100nm超+300nm以下
2:希釈ドープ中の平均粒子径が一次粒子径+300nm超+500nm以下
1:希釈ドープ中の平均粒子径が一次粒子径+500nm超
【0186】
なお、ゴム粒子の一次粒子径は、以下の方法で測定した値を用いた。
すなわち、得られた光学フィルムを切断し、切断面をTEM観察した。そして、任意の微粒子100個の粒子径の円相当径をそれぞれ測定し、それらの平均値を「一次粒子径」とした。
【0187】
ドープ101~117の製造条件および評価結果を、表2に示す。
【0188】
【0189】
3.光学フィルムの作製および評価
<光学フィルム201~217の作製>
無端ベルト流延装置を用い、表3に示されるドープを温度30℃、1800mm幅でステンレスベルト支持体上に均一に流延した。ステンレスベルトの温度は28℃に制御した。
【0190】
ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したドープ中の残留溶媒量が30質量%になるまで溶媒を蒸発させた。次いで、剥離張力128N/mで、ステンレスベルト支持体から剥離し、膜状物を得た。剥離時の膜状物の残留溶媒量は30質量%であった。
【0191】
次いで、剥離したフィルムを多数のローラーで搬送させながら、得られた膜状物を、テンターにて(Tg+10)℃(Tg:メタクリル系樹脂のTg)の条件下で幅方向(TD方向)に20%延伸した。その後、ロールで搬送しながら、(Tg-30)℃でさらに乾燥させ、テンタークリップで挟んだ端部をスリットして巻き取り、膜厚40μmの光学フィルム201~217を得た。
【0192】
<評価>
得られた光学フィルム201~217のベルト汚れ、MIT屈曲性およびヘイズ変化量(ΔHz)を、以下の方法で測定した。
【0193】
(1)ベルト汚れ
ステンレスバンド支持体上に流延したドープを、当該ステンレスバンド支持体から剥離したときのベルト汚れを、以下の基準で評価した。
5:どの評価者もムラを全く確認できない
4:評価者によってはかすかにムラを確認できる場合もあるが、全く問題なく製品として使えるレベル
3:評価者によってはかすかにムラを確認できる場合もあるが、製品として使えるレベル
2:評価者によってはムラを確認できる場合があり、製品としては使えないレベル
1:多くの評価者でムラを確認できる
3以上であれば、良好と判断した。
【0194】
(2)MIT屈曲性
得られた光学フィルムを、幅15mm×長さ150mmに切り出して、試験片とした。この試験片を、温度25℃、相対湿度65%RHの状態に1時間以上静置させた後、荷重500gの条件で、JIS P8115:2001に準拠してMIT屈曲試験を行い、破断するまでの回数を測定した。MIT屈曲試験は、耐折度試験機(テスター産業株式会社製、MIT、BE-201型、折り曲げ曲率半径0.38mm)を用いて行った。そして、下記の評価基準で評価した。
5:破断するまでの回数が6万回以上
4:破断するまでの回数が4万回以上6万回未満
3:破断するまでの回数が2万回以上4万回未満
2:破断するまでの回数が1万回以上2万回未満
1:破断するまでの回数が1万回未満
破断するまでの回数が多いほど屈曲性に優れており、繰り返しの折り曲げ耐性に優れていることを表す。
3以上であれば、良好と判断した。
【0195】
(3)ヘイズ(初期値、変化量(ΔHz))
1)得られた光学フィルムの幅方向5点(フィルムの中央部、端部(両端からそれぞれ全幅の5%の位置)、および中央部と端部との中間部2点)を、長手方向に100mごとにサンプリングし、5cm2の大きさのサンプルを準備した。
2)次いで、得られた各サンプルについて、25℃、60%RHの環境下で24時間調湿後、ヘイズメーター(NDH 2000:日本電色工業(株)製)を用いてヘイズを測定し、それらの平均値をヘイズ1(初期値)とした。
3)次いで、得られた各サンプルを、60℃、90%RHの環境下で1000時間放置した。その後、25℃、60%RHの環境下で24時間調湿後、前述と同様にして、各サンプルのヘイズを測定し、それらの平均値をヘイズ2(耐久試験後)とした。
4)上記2)で得られたヘイズ1(初期値)と、上記3)で得られたヘイズ2(耐久試験後)を、下記式に当てはめて、ヘイズの変化量(ΔHz)を算出した。
式(1):ヘイズ変化量(ΔHz)=ヘイズ2(耐久試験後)-ヘイズ1(初期値)
5:ヘイズ変化量(ΔHz)が0.1以下
4:ヘイズ変化量(ΔHz)が0.1超0.15以下
3:ヘイズ変化量(ΔHz)が0.15超0.3以下
2:ヘイズ変化量(ΔHz)が0.3超0.4以下
1:ヘイズ変化量(ΔHz)が0.4超
3以上であれば、良好と判断した。
【0196】
光学フィルム201~217の評価結果を、表3に示す。
【0197】
【0198】
表3に示されるように、ゴム粒子分散工程とドープ調製工程の少なくとも一方に適量の水を添加して得られる光学フィルム201~204、206~209、212~215および217(本発明)は、ベルト汚れが少ないことがわかる。これは、ゴム粒子の凝集が抑制されたためと考えられる。また、これらの光学フィルムは、製造過程で水が添加されたことに起因して、元々の適量の水を含むため、耐久試験前後によるヘイズの変化が小さいこともわかる。
【0199】
これに対して、ゴム粒子分散工程とドープ調製工程のいずれにも水を添加しなかった光学フィルム205(比較例)は、ベルト汚れが生じることがわかる。これは、ゴム粒子の凝集体を多く含むためであると考えられる。また、光学フィルム205は、製造過程で水が添加されていないため、元々の含水量が少なく、耐久試験前後によるヘイズの変化が大きいこともわかる。
【0200】
また、水の添加量が少ないと、ゴム粒子の凝集を十分には抑制できないため、ベルト汚れやヘイズの変化が大きいことがわかる(光学フィルム216)。一方、水の添加量が多すぎると、樹脂の溶媒への溶解が不十分となり、相溶不良となるため、初期のヘイズ値が増大しやすく、屈曲性も低いことがわかる(光学フィルム214)。
【0201】
また、ゴム粒子の架橋度が低いと、ゴム粒子が凝集しやすいため、ベルト汚れを生じやすいことがわかる(光学フィルム210)。一方、ゴム粒子の架橋度が高すぎると、フィルムのMIT屈曲性が不十分であることがわかる(光学フィルム211)。
【産業上の利用可能性】
【0202】
本発明によれば、ゴム粒子の凝集を抑制することができ、透明性を損なうことなく、十分な靱性を有する光学フィルムを付与しうる光学フィルム用のドープの製造方法を提供する。