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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】車両の後部構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/00 20060101AFI20231108BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20231108BHJP
   B62D 21/03 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B60K1/00
B62D25/20 G
B62D21/03
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019153763
(22)【出願日】2019-08-26
(65)【公開番号】P2021030911
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】児玉 侑都
(72)【発明者】
【氏名】嘉村 浩二
(72)【発明者】
【氏名】平川 太一
(72)【発明者】
【氏名】河村 利彦
(72)【発明者】
【氏名】久保田 陽満
(72)【発明者】
【氏名】佐々部 威
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-335202(JP,A)
【文献】特開2012-006507(JP,A)
【文献】特開2013-252772(JP,A)
【文献】特開2017-109691(JP,A)
【文献】特開2005-247063(JP,A)
【文献】特開2013-193634(JP,A)
【文献】特開2014-015171(JP,A)
【文献】特開2016-113110(JP,A)
【文献】特開2016-113109(JP,A)
【文献】特開2020-111154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00- 6/12,
7/00- 8/00,16/00
B62D 17/00-25/08,
25/14-29/04
B60L 1/00- 3/12,
7/00-13/00,
15/00-58/40
H01M 50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リヤフロアの前部における前側に前側クロスメンバが、後側に後側クロスメンバが、夫々車幅方向に延びるとともに互いに車両前後方向に間隔を空けて配設され、
上記リヤフロアの上面における、上記前側クロスメンバと上記後側クロスメンバとの間に、高電圧部品が配設された車両の後部構造であって、
上記前側クロスメンバは、上記リヤフロアに対して上面から配設されるとともに車幅方向の両端が、車体側部を上下に延びる左右のブレース部材の下端に接続される一方で、
上記後側クロスメンバは、上記リヤフロアに対して下面から配設されており、
上記高電圧部品は、上記前側クロスメンバに対し後方に間隔を空けて該前側クロスメンバよりも上記後側クロスメンバの側寄りに配設され、
さらに上記高電圧部品は、上記前側クロスメンバと上記後側クロスメンバとに取り付けられるとともに、上記前側クロスメンバに対しては車両前後方向の荷重に対し変形するブラケットを介して取り付けられ
上記ブラケットは、上記前側クロスメンバの上面部と高電圧部品の前面部とに締結され、
さらに上記ブラケットは、車両前後方向において上記前側クロスメンバへの締結部から上記前側クロスメンバの後面部までの前側クロスメンバ取付け部と、
上記前側クロスメンバの後面部から後方へ延びて上記間隔を空けた隙間に配置される後方延出部とを備え、
上記後方延出部は、上記前側クロスメンバ取付け部よりも車両前後方向に長い設定とした
車両の後部構造。
【請求項2】
上記後方延出部は、車両前後方向の少なくとも一部が屈曲し、上下方向に延びる上下方向延在部を備えた板状に形成され、
上記間隔は、上記上下方向延在部の板厚よりも車両前後方向に広く設定された
請求項1に記載の車両の後部構造。
【請求項3】
リヤフロアの前部における前側に前側クロスメンバが、後側に後側クロスメンバが、夫々車幅方向に延びるとともに互いに車両前後方向に間隔を空けて配設され、
上記リヤフロアの上面における、上記前側クロスメンバと上記後側クロスメンバとの間に、高電圧部品が配設された車両の後部構造であって、
上記前側クロスメンバは、上記リヤフロアに対して上面から配設されるとともに車幅方向の両端が、車体側部を上下に延びる左右のブレース部材の下端に接続される一方で、
上記後側クロスメンバは、上記リヤフロアに対して下面から配設されており、
上記高電圧部品は、上記前側クロスメンバに対し後方に間隔を空けて該前側クロスメンバよりも上記後側クロスメンバの側寄りに配設され、
さらに上記高電圧部品は、上記前側クロスメンバと上記後側クロスメンバとに取り付けられるとともに、上記前側クロスメンバに対しては車両前後方向の荷重に対し変形するブラケットを介して取り付けられ
上記高電圧部品は、上記リヤフロアを上方から覆うトランクボードの下方に配設されており、上記ブラケットは上記高電圧部品の前面部から前方に延び車両前後方向荷重に対し変形可能な下方湾曲部を備えた
車両の後部構造。
【請求項4】
上記前側クロスメンバに対して前方にシートが隣接して配設され、上記ブラケットは上記前側クロスメンバの上面部に取り付けられた
請求項に記載の車両の後部構造。
【請求項5】
上記ブラケットを、上記前側クロスメンバ内に備えた補強部材に取り付けた
請求項に記載の車両の後部構造。
【請求項6】
上記高電圧部品の後端を、上記後側クロスメンバの直上に配設するとともに上記後側クロスメンバ内に備えた補強部材に取り付けた
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の車両の後部構造。
【請求項7】
上記ブラケットは、上記高電圧部品のアースを兼用する構造とした
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の車両の後部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、リヤフロアの上面に高電圧ユニットが配設された車両の後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車などの車両において、特許文献1に例示されるように、バッテリや充電器などの高電圧部品をリヤフロア上に配置したものが知られている。
【0003】
特許文献1の車両の後部構造は、リヤフロアの前寄りの位置に前側クロスメンバと後側クロスメンバとが配設されている。これら前側クロスメンバと後側クロスメンバとは、車両前後方向に互いに間隔を空けて共にリヤフロアを横切るように車幅方向に延びている。
【0004】
そして、特許文献1の車両の後部構造は、高電圧部品をリヤフロア上に配置させるに際して、上述した前後のクロスメンバ間に配設させ、該高電圧部品の前後各側を、前後夫々に対応するクロスメンバに対して取り付けた構成を採用している。
【0005】
これにより、特許文献1の車両の後部構造は、高電圧部品の車体への取付剛性を確保できるとともに、後突時に車体後方から侵入してくる衝突物自体の侵入を後側クロスメンバによって止めることで高電圧部品に対してダイレクトに衝突物が衝突することを回避して高電圧部品の保護を図るものである。
【0006】
しかし、特許文献1の車両の後部構造は、高電圧部品が後突により潰れたリヤエンドパネルやリヤフロア等の自車の車体後部部材に押されることで危害が加わる懸念が残る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-18430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、後突時に車体に対する高電圧部品の取り付け状態を維持させつつ、高電圧部品を車両前方側に移動させることで該高電圧部品に危害が加わることを抑制させる車両の後部構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、リヤフロアの前部における前側に前側クロスメンバが、後側に後側クロスメンバが、夫々車幅方向に延びるとともに互いに車両前後方向に間隔を空けて配設され、上記リヤフロアの上面における、上記前側クロスメンバと上記後側クロスメンバとの間に、高電圧部品が配設された車両の後部構造であって、上記前側クロスメンバは、上記リヤフロアに対して上面から配設されるとともに車幅方向の両端が、車体側部を上下に延びる左右のブレース部材の下端に接続される一方で、上記後側クロスメンバは、上記リヤフロアに対して下面から配設されており、上記高電圧部品は、上記前側クロスメンバに対し後方に間隔を空けて該前側クロスメンバよりも上記後側クロスメンバの側寄りに配設され、さらに上記高電圧部品は、上記前側クロスメンバと上記後側クロスメンバとに取り付けられるとともに、上記前側クロスメンバに対しては、車両前後方向の荷重に対し変形するブラケットを介して取り付けられ、上記ブラケットは、車両前後方向において上記前側クロスメンバの上面部と高電圧部品の前面部とに締結され、さらに上記ブラケットは、上記前側クロスメンバへの締結部から上記前側クロスメンバの後面部までの前側クロスメンバ取付け部と、上記前側クロスメンバの後面部から後方へ延びて上記間隔を空けた隙間に配置される後方延出部とを備え、上記後方延出部は、上記前側クロスメンバ取付け部よりも車両前後方向に長い設定としたものである。
【0010】
上記構成によれば、高電圧部品を上記前側クロスメンバに対し後方に間隔を空けて配設するとともに、ブラケットは車両前後方向の荷重に対し変形するため、後突時に変形するリヤフロア等の自車の車体後部部材の衝突に対して、高電圧部品を前方に逃げるように移動させて高電圧部品に危害が加わることを抑制することができる。
【0011】
さらに、ブラケットは車両前後方向の荷重に対し変形することによって、前方へ移動しようとする高電圧部品の勢いを緩和できるため、高電圧部品の前側クロスメンバに対する取付けを維持し、高電圧部品が前側クロスメンバを越えて前方(乗員空間の側)へ移動することを規制できる。
【0012】
加えて、上記前側クロスメンバは、上記リヤフロアに対して上面から配設されるとともに車幅方向の両端が、車体側部を上下に延びる左右のブレース部材の下端に接続されているため、後突時に高電圧部品が前方へ押し出されても、前側クロスメンバによってしっかりと受け止めることができる。
【0013】
この発明の態様として、上記後方延出部は、車両前後方向の少なくとも一部が屈曲し、上下方向に延びる上下方向延在部を備えた板状に形成され、上記間隔は、上記上下方向延在部の板厚よりも車両前後方向に広く設定されたものである。
【0014】
またこの発明は、リヤフロアの前部における前側に前側クロスメンバが、後側に後側クロスメンバが、夫々車幅方向に延びるとともに互いに車両前後方向に間隔を空けて配設され、上記リヤフロアの上面における、上記前側クロスメンバと上記後側クロスメンバとの間に、高電圧部品が配設された車両の後部構造であって、上記前側クロスメンバは、上記リヤフロアに対して上面から配設されるとともに車幅方向の両端が、車体側部を上下に延びる左右のブレース部材の下端に接続される一方で、上記後側クロスメンバは、上記リヤフロアに対して下面から配設されており、上記高電圧部品は、上記前側クロスメンバに対し後方に間隔を空けて該前側クロスメンバよりも上記後側クロスメンバの側寄りに配設され、さらに上記高電圧部品は、上記前側クロスメンバと上記後側クロスメンバとに取り付けられるとともに、上記前側クロスメンバに対しては車両前後方向の荷重に対し変形するブラケットを介して取り付けられ、上記高電圧部品は、上記リヤフロアを上方から覆うトランクボードの下方に配設されており、上記ブラケットは上記高電圧部品の前面部から前方に延び、車両前後方向荷重に対し変形な下方湾曲部を備えたものである。
【0015】
ブラケットに下方湾曲部を備えることで、後突時にブラケットが車両前後方向に圧縮変形する際に、該下方湾曲部を下方へ突出するように変形させることができる。このため、該ブラケットは、変形した下方湾曲部が、上方に有するトランクボードと当接することで、車両前後方向の変形が阻害されることを回避することができる。
【0016】
この発明の態様として、上記前側クロスメンバに対して前方にシートが隣接して配設され、上記ブラケットは上記前側クロスメンバの上面部に取り付けられたものである。
【0017】
上記構成によれば、ブラケットの前側クロスメンバへの取り付けを容易化しながらブラケットのシートへの干渉を抑制することができる。
【0018】
この発明の態様として、上記ブラケットを、上記前側クロスメンバ内に備えた補強部材に取り付けたものである。
【0019】
上記構成によれば、後突時に上記ブラケットの前側クロスメンバとの取り付けを、より強固に維持することができ、結果的に後突時における高電圧部品の前方への変位をさらに抑制できる。
【0020】
この発明の態様として、上記高電圧部品の後端を、上記後側クロスメンバの直上に配設するとともに上記後側クロスメンバ内に備えた補強部材に取り付けたものである。
【0021】
上記構成によれば、上記高電圧部品の後端を上記後側クロスメンバの直上に配設することで、高電圧部品を後側クロスメンバの側に極力寄せて取り付けることができるため、高電圧部品と、その前方の前側クロスメンバとの間隔(車両前後方向のスペース)を極力確保することができる。
【0022】
これにより、後突により高電圧部品に対して衝突物から加わる前方への押圧力に対して該高電圧部品を前方へ移動させることで、高電圧部品の保護性能を高めることができる。
【0023】
さらに高電圧部品の後端を後側クロスメンバ内に備えた補強部材に締結固定することで、高電圧部品の後側の車体への取付けを高剛性化することができる。
【0024】
ここで上記高電圧部品の後端を上記後側クロスメンバの直上に配設するとは、高電圧部品の後端が、後側クロスメンバに対して車両前後方向においてラップ(重複)するように配設することを示す。
【0025】
この発明の態様として、上記ブラケットは、上記高電圧部品のアースを兼用する構造としたものである。
【0026】
上記構成によれば、リヤフロア前部における、前側に対してブラケットを介して高電圧部品をアース接続することができるため、後突に対して変形の大きい、上記高電圧部品の後側においてアース接続する構成と比して、アース接続を後突後においても確実に維持することができる。
【発明の効果】
【0027】
この発明によれば、後突時に車体に対する高電圧部品の取り付け状態を維持させつつ、高電圧部品を車両前方側に移動させることで該高電圧部品に危害が加わることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本実施形態の車両の後部構造の要部を後方かつ左側から視た斜視図。
図2】本実施形態の高電圧部品の車体への取付け構造を示す平面図。
図3】本実施形態の車両の後部構造の図2中のA-A線に沿った要部矢視断面図。
図4】本実施形態の車両の後部構造を図2中の矢視Bかつ上方から視た要部拡大斜視図。
図5】本実施形態の車両の後部構造を図2中の矢視Cかつ上方から視た要部拡大斜視図。
図6】高電圧部品の前側の車体への取付け構造を示す、図2中のA-A線に沿った要部拡大矢視断面図。
図7】高電圧部品の後側の車体への取付け構造を示す、図2中のA-A線に沿った要部拡大矢視断面図。
図8】本実施形態の環状構造体を、車室を取り囲むように配設された複数の骨格部材の延びる方向に沿って切断して示した車両左側片断面図。
図9】後突中期における、図2中のA-A線に沿った要部拡大矢視断面図。
図10】後突後期における、図2中のA-A線に沿った要部拡大矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
本実施形態の車両は、車載バッテリからの電力供給によって駆動する回転電機の出力を駆動力とする電動車両である。このような車両1の後部構造について、図1から図8を用いて詳しく説明する。
なお、図中において、矢印Fは車両前方向、矢印Rは車両右方向、矢印Lは車両左方向、矢印Uは車両上方向を示している。
【0030】
車両1は、図1に示すように、車両後部において、車幅方向に所定間隔を隔てて車両前後方向に延びる左右一対のリヤサイドフレーム2と、左右のリヤサイドフレーム2の間に配設されたリヤフロアパネル3と、リヤフロアパネル3の後端に配設されたリヤエンドパネル4(図3参照)と、左右のリヤサイドフレーム2の前部を車幅方向に連結する前側リヤクロスメンバ5と、前側リヤクロスメンバ5の車両後方で左右のリヤサイドフレーム2を車幅方向に連結する後側リヤクロスメンバ6とを備えている。
【0031】
リヤサイドフレーム2の具体的構造について省略するが、車幅方向に沿った縦断面において、車両上方に位置する断面略平板状のアッパフレーム2uと、アッパフレーム2uに対して車両下方に位置するとともに、車両上方が開口した断面略門型形状のロアフレーム2dとで構成されている(図8参照)。
【0032】
そして、リヤサイドフレーム2は、アッパフレーム2uとロアフレーム2dとを接合することで、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が断面略矩形の閉断面状の空間を形成している。
【0033】
また、リヤフロアパネル3は、図3に示すように、図示を省略した車両1の車室床面よりも車両後方において、車両1の荷室床面をなすパネル部材である。このリヤフロアパネル3は、図3に示すように、車両前後方向に沿った縦断面において、車室床面をなすフロントフロアパネル(図示省略)の後端から車両後方上方へ延設された斜面部31と、斜面部31の後端から後述する後側リヤクロスメンバ6の後端にかけて延設された略平板状の前方床面部32と、前方床面部32からさらに車両後方へ延設された後方床面部33とで一体形成されている。
【0034】
この後方床面部33の後部には、図1図3に示すように、車載部品(後述するオーディオ装置7)を収容可能な収容空間である収容部34が、車両下方へ向けて凹設されている。なお、収容部34は、車幅方向に長い平面視略長楕円形状に凹設されている。
【0035】
また、リヤエンドパネル4は、図3に示すように、リヤフロアパネル3の後端に接合されるとともに、車両後部における車体の後面を構成している。このリヤエンドパネル4は、リヤフロアパネル3の後端が接合されるアウタエンドパネル41と、アウタエンドパネル41に対して車幅方向内側に位置するとともに、アウタエンドパネル41の上部に接合されたインナエンドパネル42とで構成されている。
【0036】
また、前側リヤクロスメンバ5は、図3図6に示すように、車両前後方向に沿った縦断面における断面形状が車両上方に突出した断面略ハット状のアッパクロスメンバ51(図3図6参照)と、車両下方に突出した断面略ハット状のロアクロスメンバ52とで構成されている。なお、アッパクロスメンバ51とロアクロスメンバ52とは、リヤフロアパネル3の斜面部31を挟んで互いに接合されている。
【0037】
アッパクロスメンバ51は、図3図6に示すように、斜面部31の上面に接合されるとともに、リヤフロアパネル3の斜面部31とで、車両前後方向に沿った縦断面において、断面略矩形の閉断面状の空間51sを有するように形成されている(図6参照)。
【0038】
具体的には、アッパクロスメンバ51は、図4図6に示すように、車両前後方向に沿った縦断面において、リヤフロアパネル3に対して車両上方に所定間隔を隔てた位置で対面するアッパ上面部51aと、アッパ上面部51aの前端から車両下方へ向けて延設されたアッパ前面部51bと、アッパ前面部51bの下端から車両前方へ向けて延設されたアッパ前側フランジ部51cと、アッパ上面部51aの後端から車両下方へ向けて延設されたアッパ後面部51dと、アッパ後面部51dの下端から車両後方へ向けて延設されたアッパ後側フランジ部51eとで一体形成されている。
【0039】
そして、アッパクロスメンバ51は、アッパ前側フランジ部51c、及びアッパ後側フランジ部51eがリヤフロアパネル3の上面に接合されている。
さらに、アッパクロスメンバ51のアッパ上面部51aには、図2図4図6に示すように、後述する高電圧部品100を支持する前側ブラケット110を締結固定するための締結ボルト102の挿通を許容する複数(当例では2つ(図2図4参照))の挿通孔51hが開口形成されている。
【0040】
また図4図6に示すように、アッパクロスメンバ51の内部には、前側補強部材60を備えている。
前側補強部材60は、アッパクロスメンバ51自体を補強するとともに該アッパクロスメンバ51への後述する前側ブラケット110の取り付けを補強するものであって、少なくとも後述する前側ブラケット110における左右一対の車体側固定部114間を架け渡すことが可能な長さを有してアッパクロスメンバ51に沿って車幅方向に延びている。
【0041】
図6に示すように、前側補強部材60は、アッパクロスメンバ51と斜面部31との間に構成される閉断面状の空間に備え、該空間の側からアッパクロスメンバ51のアッパ上面部51aの下面に対して接合されている。
【0042】
具体的には図4図6に示すように、前側補強部材60は、車幅方向の直交断面視で、アッパ上面部51aに下面側から当接するように車幅方向に延びる上面部60aと、アッパ前面部51bに後面側から当接するように上面部60aの前端から車両下方向に延びる前面部60bと、アッパ後面部51dに前面側から当接するように上面部60aの後端から車両下方向に延びる後面部60c(図6参照)とで断面門形形状で一体形成されている。
【0043】
図6に示すように、前側補強部材60の上面部60aにおける、アッパ上面部51aに開口形成した複数の挿通孔51hに車両平面視で対応する各部位には、対応する挿通孔51hと上下方向に連通する挿通孔60hが開口形成されるとともに、上面部60aには、その下面から締結ボルト102が螺合する複数のウエルドナット53が接合されている。
【0044】
一方、ロアクロスメンバ52は、図6に示すように、リヤフロアパネル3の斜面部31の下面に接合されるとともに、該斜面部31とで、車両前後方向に沿った縦断面において、断面略矩形の閉断面状の空間52sを有するように形成されている。
【0045】
具体的には、ロアクロスメンバ52は、図6に示すように、車両前後方向に沿った縦断面において、リヤフロアパネル3に対して車両下方に所定間隔を隔てた位置で対面するロア底面部52aと、ロア底面部52aの前端から車両上方へ向けて延設されたロア前面部52bと、ロア前面部52bの上端から車両前方へ向けて延設されたロア前側フランジ部52cと、ロア底面部52aの後端から車両上方へ向けて延設されたロア後面部52dと、ロア後面部52dの上端から車両後方へ向けて延設されたロア後側フランジ部52eとで一体形成されている。
【0046】
そして、ロアクロスメンバ52は、ロア前側フランジ部52c、及びロア後側フランジ部52eが、それぞれリヤフロアパネル3の斜面部31を挟んで、アッパクロスメンバ51のアッパ前側フランジ部51c、及びアッパ後側フランジ部51eに接合されている。
【0047】
また、後側リヤクロスメンバ6は、図1図5図7に示すように、前側リヤクロスメンバ5に対して車両後方に所定間隔を隔てた位置で、リヤフロアパネル3における前方床面部32の後部下面に接合されている。図7に示すように、後側リヤクロスメンバ6は、前方床面部32の後部下面とで、車両前後方向に沿った縦断面において、断面略矩形の閉断面状の空間6sを有するように形成されている。
【0048】
具体的には、後側リヤクロスメンバ6は、図7に示すように、車両前後方向に沿った縦断面において、リヤフロアパネル3に対して車両下方に所定間隔を隔てた位置で対面する底面部6aと、底面部6aの前端から車両上方へ向けて延設された前面部6bと、前面部6bの上端から車両前方へ向けて延設された前側フランジ部6cと、底面部6aの後端から車両上方へ向けて延設された後面部6dと、後面部6dの上端から車両後方へ向けて延設された後側フランジ部6eとで一体形成されている。
そして、後側リヤクロスメンバ6は、前側フランジ部6c、及び後側フランジ部6eがリヤフロアパネル3の下面に接合されている。
【0049】
さらに、リヤフロアパネル3における、後側リヤクロスメンバ6との対向部には、後述する後側ブラケット120を締結固定するための締結ボルト102の挿通を許容する複数(当例では2つ(図2参照))の挿通孔3hが車幅方向に間隔を空けて開口形成されている。
【0050】
これら挿通孔3hは図2に示すように、リヤフロアパネル3の平面視における、後述する高電圧部品100に対して若干左右両外側の位置に夫々形成されると共に、後側リヤクロスメンバ6の車両前後方向の中間位置に形成されている。
【0051】
また図1図5図7に示すように、後側リヤクロスメンバ6の内部には、後側補強部材61を備えている。
後側補強部材61は、後側リヤクロスメンバ6自体を補強するとともに該後側リヤクロスメンバ6への後述する後側ブラケット120の取り付けを補強するものである。後側補強部材61は、車幅方向に延びる後側リヤクロスメンバ6における、後側ブラケット120の後述する左右の車体側固定部132に対応する各部位に複数(当例では2つ)備えている。すなわち、これら後側補強部材61は、後側リヤクロスメンバ6の内部の空間における、後述する高電圧部品100に対して若干左右両外側の位置において、後側リヤクロスメンバ6の前面部6bと後面部6dとを橋渡すように配設されている。これにより、後側補強部材61は、後側リヤクロスメンバ6の内部の空間6sを車幅方向に分断するように節状に形成されている。
【0052】
具体的には図2図4図5図7に示すように、後側補強部材61は、後側リヤクロスメンバ6の内部の空間6sにおいて車両前後方向に延びる上面部61aと、上面部61aの車幅方向の両縁から下方へ延びる左右一対の側面部61bと、左右各側の側面部61bの前端から前方に向けて延びるとともに、先端(前端)が前面部6bに沿って車幅方向において互いに相離反する方向へ曲げ形成された前側フランジ部61cと、左右各側の側面部61bの後端から後方に向けて延びるとともに、先端(後端)が後面部6dに沿って車幅方向において互いに相離反する方向へ曲げ形成された後側フランジ部61dとで一体形成されている。
【0053】
そして図2図5図7に示すように、左右の前側フランジ部61cが後側リヤクロスメンバ6の前面部6bに接合されるとともに、図2図4図7に示すように、左右の後側フランジ部61dが後側リヤクロスメンバ6の後面部6dに接合されている。
【0054】
図7に示すように、後側補強部材61の上面部61aにおける中央部には、後述する後側ブラケット120を締結固定するための締結ボルト102の挿通を許容する挿通孔61hが開口形成されるとともに、締結ボルト102が螺合するウエルドナット54が下面に接合されている。
【0055】
また図1図6に示すように、荷室内の空間の前方には、後席乗員の着座部を形成するシートクッション62aと後席乗員の背凭れ部を形成するシートバック62bとを備えたリヤシート62が配設されている。
なお、図2図4図6図9図10においてはリヤシート62の図示を省略している。
【0056】
リヤシート62は図6に示すように、アッパクロスメンバ51に対して前方にシートバック62bが隣接して配設されている。本実施形態のリヤシート62は、シートバック62bの下端がアッパクロスメンバ51のアッパ上面部51aよりも下方に位置するとともに、シートバック62bの後下端がアッパ上面部51aの前端よりも前方に位置するように配設されている。
【0057】
なお、リヤシート62は、リヤフロアパネル3よりも前方のフロアパネルに設置されている。フロアパネルの上方の乗員空間と、リヤフロアパネル3の上方の荷室空間とは、車両前後方向に互いに連通している。
【0058】
また、図6図7に示すように、リヤフロアパネル3の上面には、複数の成形トレイ81が設置されており、これら成形トレイ81は、後述する高電圧部品100(図1参照)やオーディオ装置7(同図参照)の周辺に隣接するように配置されている。
さらに同図に示すように、上述のリヤフロアパネル3の上方には、合成樹脂製のトランクボード82が起伏可能に設置されている。トランクボード82は、倒伏状態において、リヤフロアパネル3の上面部、すなわち、高電圧部品100、オーディオ装置7および複数の成形トレイ81を上方から覆うように配置され、平面状の荷室フロア部として形成される。
なお、図6図7以外の図面においては、トランクボード82や成形トレイ81の図示を省略している。
【0059】
また上述した成形トレイ81は、リヤフロアパネル3と、倒伏状態のトランクボード82との間における、高電圧部品100やオーディオ装置7の周辺の隙間を埋めるように配置されている。なお、成形トレイ81は、車両メンテナンス用工具やその他の荷物が格納できるように形状が異なる複数の収納凹部81a(図7参照)が上方に向けて開口形成されるとともに、全体が合成樹脂発泡体(いわゆる発泡ビーズ)で形成されている。
【0060】
図6に示すように、トランクボード82は、前側リヤクロスメンバ5のアッパ上面部51aよりも高い位置に配置され、前端が、前側ブラケット110に備えた下方湾曲部115よりも前方、且つリヤシート62のシートバック62b手前の位置まで前方に延びている。すなわち、前側ブラケット110の少なくとも下方湾曲部115は、トランクボード82によって覆われている。
【0061】
ところで図8に示すように、本実施形態の車両の後部構造においては、車両前後方向における前側リヤクロスメンバ5に略相当する部位には、前側リヤクロスメンバ5を含めた複数の骨格部材によって車室を車両正面視で取り囲む環状構造体90を構成している。
図8は、車両の後部構造を、車両前後方向における前側リヤクロスメンバ5に略相当する部位において、車両正面視で車室を取り囲むように配設された複数の骨格部材の延びる方向に沿って切断した断面図であって、左右対称形状であるため車両左側のみを片断面図により示している。
【0062】
具体的には図8に示すように、前側リヤクロスメンバ5(アッパクロスメンバ51)の両サイドに位置する車体側部には、ブレース部材91が、該車体側部の後部を形成するホイールハウスインナ98bの下端からサイドインナパネル92の上部にかけて上下方向に延びている。左右各側のブレース部材91の下端は、アッパクロスメンバ51の左右夫々に対応する端部にガセット91aを介して接続されている。
【0063】
上述した骨格部材としてのブレース部材91は、サイドインナパネル92およびホイールハウスインナ98bに対して車幅方向内側から接合されており、サイドインナパネル92およびホイールハウスインナ98bとの間に上下方向に延びる閉断面を構成している。
【0064】
さらに、前側リヤクロスメンバ5の両サイドに位置する車体側部には、サイドピラー93が、サイドインナパネル92の上端から下部にかけて上下方向に延びている。また、車両のルーフ部94の左右両側の側縁には、該側縁に沿って延びるルーフサイドレール95を備えており、上述した左右のサイドピラー93の上端は、左右夫々に対応するルーフサイドレール95に車幅方向外側から接合されている。
【0065】
上述した骨格部材としてのサイドピラー93は、サイドインナパネル92との間に上下方向に延びる閉断面を構成している。
【0066】
サイドピラー93の下部とブレース部材91の上部とは、サイドインナパネル92を介して互いに車幅方向に対向して配置されている。
【0067】
骨格部材としてのルーフサイドレール95は、ルーフサイドレールアウタ95aとルーフサイドレールインナ95bとを備え、これらの間(ルーフサイドレール95の内部)に車両前後方向に延びる閉断面を構成している。
【0068】
ルーフ部94には、左右のルーフサイドレール95を車幅方向に連結するルーフパネル96と、ルーフ部94の後端において左右のルーフサイドレール95を車幅方向に連結するとともに、車幅方向の直交断面が上方に向けて開口するハット形状のリヤヘッダ97とをさらに備えている。そして、骨格部材としてのリヤヘッダ97は、ルーフパネル96との間に車幅方向に延びる閉断面を構成している。
【0069】
本実施形態の車両においては、上述したように、車室の両サイドにおいて、上下方向に延びるサイドピラー93およびブレース部材91と、車室の上方において車幅方向に延びるリヤヘッダ97と、サイドピラー93とリヤヘッダ97とのコーナー部に位置するルーフサイドレール95と、車室の下方において車幅方向に延びる前側リヤクロスメンバ5とで、車室を車両正面視で取り囲む環状構造体90を構成している。
これにより、後突時に車体後方から侵入してくる衝突物によって、圧潰したリヤフロアパネル3やリヤエンドパネル4等の自車の車体後部部材が、前方(乗員空間の側)へ移動することを規制している。
【0070】
上述したような構成の車両1におけるリヤフロアパネル3の上面には、図1に示すように、収容部34に車載部品として収容されたオーディオ装置7と、前側リヤクロスメンバ5に支持された比較的高電圧な電気部品である高電圧部品100が配設されている。
【0071】
オーディオ装置7は、例えば、リヤウーハーユニットなどであって、図1に示すように、収容部34における車幅方向右寄りに収容されている。なお、オーディオ装置7は、図1に示すように、少なくとも車幅方向の一端が、リヤサイドフレーム2に締結固定されている。
【0072】
なお、図3図4図8図9においてはオーディオ装置7の図示を省略している。
【0073】
また、高電圧部品100は、例えば、車載バッテリ(図示省略)に電気的に接続された充電器であって、図1に示すように、前側リヤクロスメンバ5と後側リヤクロスメンバ6との間、すなわち前方床面部32において、車幅方向略中央よりも車幅方向右側に配設されている。
【0074】
詳しくは図1図5に示すように、高電圧部品100は、前方床面部32においてアッパクロスメンバ51に対し後方に間隔を空けて該アッパクロスメンバ51よりも後側リヤクロスメンバ6の側寄りに配設され、これにより図3図4図7に示すように、高電圧部品100の後部の直下に後側リヤクロスメンバ6が位置するように配設されている。
すなわち、高電圧部品100の後部は、車両平面視で後側リヤクロスメンバ6にラップするように配設されている。
【0075】
なお、高電圧部品100は、図6に示すように、車両1に搭載された状態において、前側リヤクロスメンバ5のアッパ上面部51aよりも車両上方に位置する上面と、リヤフロアパネル3の上面に近接する下面とを有する略ボック状に形成されている。
【0076】
上述した高電圧部品100は、図1及び図2に示すように、前端が前側リヤクロスメンバ5に締結固定された前側ブラケット110を介して、後端がリヤフロアパネル3に締結固定された後側ブラケット120を介して、夫々車体に支持されている。
【0077】
前側ブラケット110は、図2図4図6に示すように、所定の厚みを有する金属製平板を折曲成形して形成された部材であって、高電圧部品100の前面に締結固定された部品側固定部111と、部品側固定部111から延設された前方延設部112と、前方延設部112から延設された2つの上方延設部113と、上方延設部113から延設された2つの車体側固定部114とで一体形成されている。
【0078】
部品側固定部111は、図6に示すように、車両前後方向に厚みを有するとともに、前側リヤクロスメンバ5のアッパ上面部51aよりも車両上方、かつ下端が高電圧部品100の下面よりも僅かに車両上方に位置する略平板状に形成されている。
【0079】
具体的には、部品側固定部111は、図2図4及び図6に示すように、高電圧部品100の前面における車幅方向右側上部に締結ボルト101を介して締結固定された右側固定部分111a(図2図4参照)と、高電圧部品100の前面における車幅方向左側上部に締結ボルト101を介して締結固定された左側固定部分111bと、高電圧部品100の前面における車幅方向略中央下部に締結ボルト101を介して締結固定された中央固定部分111cとで一体形成されている。
【0080】
なお、部品側固定部111は、図4に示すように、右側固定部分111aの下端、及び左側固定部分111bの下端が、それぞれ車幅方向に略直線的に延びるように形成され、中央固定部分111cの下端が、車両下方へ突出した正面視略円弧状になるように形成されている。
【0081】
前方延設部112は、図5及び図6に示すように、部品側固定部111の左側固定部分111bの下端、右側固定部分111aの下端、及び中央固定部分111cの下端から一体的に車両前方へ向けて延設した形状に形成されている。
【0082】
上方延設部113は、図2図5に示すように、前方延設部112のうち、部品側固定部111の右側固定部分111aから延設された部分の前端、及び部品側固定部111の左側固定部分111bから延設された部分の前端から、車両前方上方へ向けて延設した形状に形成されている。
【0083】
車体側固定部114は、図4図6に示すように、前側リヤクロスメンバ5のアッパ上面部51aと略同じ車両上下方向の位置において、上方延設部113の上端から車両前方へ延設されている。この車体側固定部114には、図2及び図6に示すように、締結ボルト102が挿通する挿通孔114hが開口形成されている。
【0084】
そして図6に示すように、車体側固定部114、前側リヤクロスメンバ5のアッパ上面部51aおよび前側補強部材60の上面部60aに夫々開口形成した挿通孔114h,51h,60hにおいて、車体側固定部114と上面部60aとによってアッパ上面部51aを挟み込むように締結ボルト102およびウエルドナット53を用いて締結固定されている。
【0085】
このように前側リヤクロスメンバ5に対して前側ブラケット110に加えて前側補強部材60を共締めすることで前側ブラケット110と前側リヤクロスメンバ5との取付け部分を補強している。
【0086】
また、前側ブラケット110は換言すると、図4図6に示すように、その左右各側に高電圧部品100の前面部から前方に延び、前後方向荷重に対し変形する下方湾曲部115を備えている。
【0087】
具体的には図4図6に示すように、前側ブラケット110は、部品側固定部111における、上下方向に延びる右側固定部分111aと左側固定部分111bとの略全体が共に、車両前後方向延びる車体側固定部114よりも上方に位置している。
【0088】
部品側固定部111の左右各側の上部に位置する右側固定部分111aおよび左側固定部分111bよりも下側部分111dは、上方延設部113に対して後方で対向している。そして前側ブラケット110の左右各側には、左右夫々に対応する下側部分111dと、上方延設部113と、これらを車両前後方向に繋ぐ前方延設部112とで下方湾曲部115を構成している。下方湾曲部115は下方へ向けて凸状に形成され、図5図6に示すように、部品側固定部111の下側部分111dと、上方延設部113と前方延設部112とによって上方へ向けて開口する上方開口空間115sが画成される。
【0089】
下方湾曲部115は、車両前後方向の荷重に対して、上方開口空間115sが潰れるようにして車両前後方向に圧縮変形可能に形成している。
【0090】
具体的には、高電圧部品100は、全体を覆う金属製のケース105を備えている。また、前側ブラケット110は、上述したように金属製平板を折曲成形して形成された部材である。そして、全体が金属製(例えばアルミまたはアルミ合金製)の前側ブラケット110における部品側固定部111を、高電圧部品100に備えたケース105の前面部に対して鋼製の締結ボルト101を介して締結固定している。
【0091】
一方上述したように、前側ブラケット110は、前側ブラケット110の車体側固定部114を、鋼材から成る前側リヤクロスメンバ5のアッパ上面部51aに対して鋼製の締結ボルト101を介して締結固定されている。
【0092】
このように、前側ブラケット110は、前側ブラケット110と前側リヤクロスメンバ5(車体)とを電気的に接続することで、高電圧部品100を車体に対してアース接続するためのアース接続部材を兼用する構造としている。
【0093】
また図5図7に示すように、後側ブラケット120は、所定の厚みを有する金属製平板を折曲成形して形成された部材であって、高電圧部品100の後面に締結固定された部品側固定部131と、部品側固定部131の左右各側から延設された車体側固定部132とで一体形成されている。
【0094】
部品側固定部131は、車両前後方向に厚みを有するとともに、高電圧部品100の後面よりも低背の略平板状に形成されている。部品側固定部131は、下端がリヤフロアパネル3の上面に略達するまで上下方向(鉛直方向)に直線状に延びている。この部品側固定部131は、図5図7に示すように、高電圧部品100の後面における車幅方向外側下部に、締結ボルト103を介して締結固定されている。
【0095】
車体側固定部132は、部品側固定部131の下端の左右各側からリヤフロアパネル3の上面に沿って車両後方に向けて延設された略平板状に形成されている。
図7に示すように、車体側固定部132は、平面視で中央部に、後側ブラケット120をリヤフロアパネル3に締結固定するための締結ボルト104の挿通を許容する挿通孔132hが開口形成されている。
【0096】
図2に示すように、車体側固定部132は、後側補強部材61の上面部61aと車両平面視で重複しており、さらに、車体側固定部132に開口形成した挿通孔132hは、後側補強部材61の上面部61aに開口形成した挿通孔61hと平面視で一致する。
【0097】
そして、車体側固定部132、リヤフロアパネル3および後側補強部材61の上面部61aに夫々開口形成した挿通孔132h,3h,61hにおいて、車体側固定部132と、後側補強部材61の上面部61aとによってリヤフロアパネル3を挟み込むように締結ボルト102およびウエルドナット54を用いて締結固定されている。
【0098】
このようにリヤフロアパネル3に対して後側ブラケット120と後側補強部材61とを共締めすることで後側ブラケット120とリヤフロアパネル3との取付け部分を補強している。
【0099】
また上述した構成により、高電圧部品100の後端は、後側ブラケット120を介して後側リヤクロスメンバ6内に備えた後側補強部材61に取り付けられている。
【0100】
この状態において図5図7に示すように、高電圧部品100の後端は、リヤフロアパネル3を介して後側リヤクロスメンバ6の直上に配設されており、後側ブラケット120の後端(車体側固定部132の後端)も含めて後側リヤクロスメンバ6の後端(後側フランジ部6eの後端)よりも前側に位置するように配設されている。
【0101】
上述した車両の後方構造に対して、後方から衝突物Cが衝突した際の作用、効果について、図9図10を用いて説明する。
【0102】
まず、車両1に対して後方から衝突物Cが衝突すると、リヤエンドパネル4が車両前方へ押圧されることで、リヤフロアパネル3の後側リヤクロスメンバ6よりも後方に位置する後方床面部33は、収容部34(図1参照)を含めて折り畳まれるように変形しながら車両前後方向に押し潰される。
【0103】
ここで、高電圧部品100は、リヤフロアパネル3における、アッパクロスメンバ51と後側リヤクロスメンバ6との間、すなわち前方床面部32に配設されている。これにより、後側リヤクロスメンバ6が、車体後方から車両前方へ侵入してくる衝突物C自体の、それ以上の侵入を止めることで、高電圧部品100自体に衝突物Cが直接的に衝突することを回避することができる。
【0104】
但し、後側リヤクロスメンバ6より後方に有する、リヤフロアパネル3やリヤエンドパネル4等の自車の車体後部部材は、上述したように衝突物Cが車両後方から侵入するに伴って車両前後方向に押し潰されながら車両前方へ変位する。このため、図9に示すように、高電圧部品100は、後突により潰れた車体後部部材が後方から衝突することで前方へ押圧される。
【0105】
これにより、高電圧部品100の後部においては、高電圧部品100が後突により潰れた車体後部部材によって前方へ押し出されることによって、後側ブラケット120のリヤフロアパネル3に対して締結する締結ボルト104(図5図7参照)にせん断力が作用する等により、該リヤフロアパネル3に対して離脱するおそれがある。
【0106】
一方本実施形態においては上述したように、高電圧部品100の前部については、アッパクロスメンバ51よりも後側リヤクロスメンバ6の側寄りに配置して、アッパクロスメンバ51のアッパ後面部51dと高電圧部品100の前面部との間に車両前後方向の隙間Sを確保している(図2図6の特に図6参照)。さらに高電圧部品100は、アッパクロスメンバ51に対して、前後方向の荷重に対して圧縮変形可能な前側ブラケット110を介して取り付けるとともに、この前側ブラケット110を隙間Sに配置している(同図参照)。
【0107】
これらにより、後突時に高電圧部品100に加わる車両前方への押出し荷重によって、後側ブラケット120がリヤフロアパネル3に対して離脱した場合であっても図9に示すように、その荷重に対して高電圧部品100は、前側ブラケット110が車両前後方向に圧縮変形しながら隙間Sにおいて前方へ逃げるように変位する。
【0108】
これにより、高電圧部品100に対して、後突により潰れた車体後部部材から高電圧部品100に対して衝突荷重が直接的に加わることを阻止している。
【0109】
具体的に図9図10に示すように、前側ブラケット110は、車両前後方向の荷重に対して、下方湾曲部115は、下方へ突き出すように、換言すると、下方湾曲部115によって構成される上方開口空間115s(図5図6参照)が車両前後方向に潰れるように圧縮変形する。
【0110】
このように前側ブラケット110が圧縮変形することで、高電圧部品100が前方へ逃げるように変位することを許容しつつ、高電圧部品100の前側ブラケット110を介したアッパクロスメンバ51への取り付け状態を維持することができる。
【0111】
詳しくは、高電圧部品100に前方への押出し荷重が加わることによって、前側ブラケット110を介して該前側ブラケット110のアッパクロスメンバ51への締結部分の締結ボルト102に加わるせん断力を、前側ブラケット110が変形することによって緩和することができる。
【0112】
これにより、車両1の後部構造は、車両後部に加わった車両後方からの衝突荷重による高電圧部品100の損傷を防止することができる。
さらに、前側ブラケット110が車両前後方向の荷重に対して圧縮変形する際に、高電圧部品100に加わる前方への押出し荷重を吸収できるため、前方へ飛び出した高電圧部品100がリヤシート62のシートバック62b(図6参照)に勢いよく衝突することを回避することができる。
【0113】
加えて本実施形態においては、アッパクロスメンバ51が、リヤフロアパネル3に対して上面から配設されるとともに車幅方向の両端が、車体側部を上下に延びる左右のブレース部材91(車両左側のみ図示)の下端に接続されている(図1図8参照)。
【0114】
このため、後突時に、変形する自車の車体後部部材から高電圧部品100に加わる前方への押圧荷重を、前側ブラケット110の変形によって吸収しきれなかった場合においても、アッパクロスメンバ51によって高電圧部品100をしっかりと受け止めて該高電圧部品100が前方へ変位しないように規制することができる。
【0115】
特に、本実施形態においては、車両前後方向における前側リヤクロスメンバ5に略相当する部位に、前側リヤクロスメンバ5やブレース部材91を含めた複数の骨格部材によって車室を車両正面視で取り囲む環状構造体90を構成している(図8参照)。
これにより、後突時に、前方へ変位しようとする高電圧部品100をより一層しっかりと受け止めることができる。
【0116】
この発明の態様として、高電圧部品100の後端を、後側リヤクロスメンバ6の直上に配設するとともに後側リヤクロスメンバ6内の空間6sに備えた補強部材に取り付けたものである(図5図7参照)。
【0117】
上記構成によれば、高電圧部品100の後端を後側リヤクロスメンバ6の直上に配設することで、高電圧部品100を後側リヤクロスメンバ6の側に極力寄せて取り付けることができるため、高電圧部品100と、その前方のアッパクロスメンバ51との間の隙間S(車両前後方向のスペース)(図3図5参照)を極力確保することができる。
【0118】
これにより、後突により高電圧部品100に対して衝突物Cから加わる前方への押圧力に対して該高電圧部品100を前方へ逃げるように移動させることで、高電圧部品100の保護性能を高めることができる。
【0119】
さらに、高電圧部品100の後端を後側リヤクロスメンバ6内に備えた補強部材としての後側補強部材61に締結固定することで、高電圧部品100の後側の車体への取付けを高剛性化することができる。
【0120】
また本実施形態においては上述したように、高電圧部品100の後端を、後側リヤクロスメンバ6の直上に配設するとともに、後側ブラケット120の後端も含めて後側リヤクロスメンバ6の後端よりも前側に位置するように配設している。
【0121】
これにより、高電圧部品100の後端(厳密には後側ブラケット120)よりも後方に有する荷室スペース(後方床面部33の前後長)についても極力確保することができる。
【0122】
この発明の態様として、前側ブラケット110は、高電圧部品100のアースを兼用する構造としたものである。
【0123】
上記構成によれば、リヤフロアパネル3前部における、前側において前側ブラケット110を介して高電圧部品100とアース接続することができるため、後突に対して変形の大きい、高電圧部品100の後側を車体に対してアース接続する構成と比して、後突後においてもアース接続を確実に維持することができる。
【0124】
また、前側ブラケット110自体を高電圧部品100の車体への取り付け部材に加えてアース用接続部材としても兼用することで、高電圧部品100と車体とを繋ぐアース線を省略することができる。アース線を用いるよりも後突後においても車体とのアース接続を確実に維持することができる。
【0125】
この発明の態様として、高電圧部品100は、リヤフロアパネル3を上方から覆うトランクボード82の下方に配設されており(図6図7参照)、前側ブラケット110は高電圧部品100の前面部から前方に延び、前後方向荷重に対し変形な下方湾曲部115を備えたものである(図5参照)。
【0126】
上記構成によれば、前側ブラケット110に下方湾曲部115を備えることで、後突時に前側ブラケット110が車両前後方向に圧縮変形する際に、該下方湾曲部115が下方へ突出するように変形させることができる(図9図10参照)。
【0127】
このため、前側ブラケット110が車両前後方向に圧縮変形した際に、変形した下方湾曲部115が上方に有するトランクボード82と当接することを回避することで、該前側ブラケット110自体を車両前後方向にしっかりと変形させることができる。
【0128】
この発明の態様として、アッパクロスメンバ51に対して前方にリヤシート62(シート)が隣接して配設され(図1図5図6参照)、前側ブラケット110はアッパクロスメンバ51のアッパ上面部51a(上面部)に取り付けられたものである(図2図6参照)。
【0129】
上記構成によれば、前側ブラケット110のリヤシート62への干渉を抑制することができる。さらに、前側ブラケット110をアッパクロスメンバ51へ取り付け時に、アッパクロスメンバ51のアッパ上面部51aに対して作業者が荷室側からアクセスし易く、前側ブラケット110をアッパ上面部51aに対して容易に取り付けることができる。
【0130】
そして、このような構成においても前側ブラケット110は、後突時に衝突物Cから高電圧部品100に対して加わる前方への押圧力を吸収することで、前方へ移動する高電圧部品100がリヤシート62のシートバック62bに衝突した場合においても、その衝撃を抑制できる。
【0131】
この発明の態様として、前側ブラケット110を、アッパクロスメンバ51内に備えた前側補強部材60(補強部材)に取り付けたものである(図4図6参照)。
【0132】
上記構成によれば、後突時に前側ブラケット110のアッパクロスメンバ51との取り付けをより強固に維持することができるため、後突時における高電圧部品100の前方への変位をさらに抑制できる。
【0133】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、前側クロスメンバの上面部は、前側リヤクロスメンバ5のアッパ上面部51aに対応し、同様に
前側クロスメンバへの締結部は、前側ブラケット110のアッパクロスメンバ51への締結部分に対応し、
前側クロスメンバ取付け部は、車体側固定部114における、前側リヤクロスメンバ5のアッパ上面部51aへの当接部分に対応し、
前側クロスメンバの後面部は、アッパクロスメンバ51のアッパ後面部51dに対応し、
間隔を空けた隙間は、アッパクロスメンバ51のアッパ後面部51dと高電圧部品100の前面部との間に車両前後方向の隙間Sに対応し、
後方延出部は、前側ブラケット110における、アッパ後面部51dよりも後方部分に対応し、
上下方向延在部は、上方延設部113および下側部分111dに対応するが、この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく様々な実施形態で形成することができる。
【符号の説明】
【0134】
3…リヤフロアパネル(リヤフロア)
6…後側リヤクロスメンバ(後側クロスメンバ)
32…前方床面部(リヤフロアの上面における、上記前側クロスメンバと上記後側クロスメンバとの間)
51…アッパクロスメンバ(前側クロスメンバ)
51a…アッパクロスメンバのアッパ上面部(前側クロスメンバの上面部)
51d…アッパ後面部(前側クロスメンバの後面部)
61…後側補強部材(後側クロスメンバ内に備えた補強部材)
60…前側補強部材(前側クロスメンバ内に備えた補強部材)
62…リヤシート(シート)
82…トランクボード
91…ブレース部材
100…高電圧部品
110…前側ブラケット(ブラケット)
115…下方湾曲部
S…隙間
図1
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