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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】マグネット式ロッドレスシリンダ
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/06 20060101AFI20231108BHJP
   F16H 25/22 20060101ALI20231108BHJP
   F16H 49/00 20060101ALI20231108BHJP
   F16H 25/20 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
H02K7/06 A
F16H25/22 Z
F16H49/00 A
F16H25/20 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019157149
(22)【出願日】2019-08-29
(65)【公開番号】P2021035311
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000241588
【氏名又は名称】豊和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】森山 義見
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-217857(JP,A)
【文献】特開2014-080995(JP,A)
【文献】特開2017-20598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/06
F16H 25/22
F16H 49/00
F16H 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台に支持されるエンドキャップとハウジングとの間に直線状のシリンダチューブが架設され、前記シリンダチューブに形成した横断面円形のシリンダ孔内に、回転駆動するネジ軸と、前記ネジ軸にねじ送りされる内部移動体と、前記内部移動体の回り止め手段とがそれぞれ収容される一方、
前記シリンダチューブの外側に、前記内部移動体と磁気結合される外部移動体が設けられるマグネット式ロッドレスシリンダであって、
前記回り止め手段を、前記シリンダ孔の内周面に沿って収容され、前記シリンダ孔の軸線方向と平行に延びるガイド部を備え、前記シリンダチューブよりも径方向に肉厚となる筒状の案内部材と、
前記内部移動体に設けられて前記ガイド部に係合する係合部とから形成し
前記ガイド部は、前記案内部材の軸線方向全長に亘って設けられたスリットであり、
前記案内部材は、前記ハウジングに固定された第1の回り止めブロックが前記スリットに係合することで前記シリンダチューブ内で回転規制される一方、
前記エンドキャップには、前記ネジ軸の端部を支持する受け部材が回転可能に取り付けられて、前記受け部材に、前記スリットに係合する第2の回り止めブロックが固定されていることを特徴とするマグネット式ロッドレスシリンダ。
【請求項2】
前記シリンダ孔は密閉されて、内部に潤滑油が供給されていることを特徴とする請求項に記載のマグネット式ロッドレスシリンダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直線状のシリンダチューブに形成した横断面円形のシリンダ孔に、回転駆動するネジ軸と、ネジ軸にねじ送りされる内部移動体とを収容する一方、シリンダチューブの外側に、内部移動体と磁気結合される外部移動体を設けて、内部移動体と共に外部移動体を往復動させるマグネット式ロッドレスシリンダに関する。
【背景技術】
【0002】
マグネット式ロッドレスシリンダは、直線状のシリンダチューブに形成した横断面円形のシリンダ孔に、回転駆動するネジ軸と、ネジ軸にねじ送りされる内部移動体とを収容している。シリンダチューブの外側には、内部移動体と磁気結合される外部移動体を設けて、内部移動体に追従して外部移動体を往復動させるようになっている。
この場合、ネジ軸の回転に伴って内部移動体が回転しないように、シリンダチューブ内で内部移動体の回転を規制する回り止め手段が設けられている。
この回り止め手段として、特許文献1に記載の電動式ロッドレスシリンダには、シリンダチューブである円筒体内に、内部移動体であるボールナットを貫通する回り止め部材を架設した構造が開示されている。
また、特許文献2に記載のアクチュエータには、シリンダチューブであるシリンダボディの内面に、軸線方向に沿って溝部を形成し、その溝部に、内部移動体であるピストンに設けた回り止め部材を嵌合させる構造が開示されている。
さらに、特許文献3に記載の電動アクチュエータには、シリンダチューブであるボディの内面に、軸線方向に沿って4つの溝を形成する一方、内部移動体であるピストンに、4つの突出部を備えた回転規制部材を装着して、突出部を溝に嵌合させる構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平1-180849号公報
【文献】特許第5417588号公報
【文献】特許第5427647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の回り止め構造において、特許文献1の回り止め部材は、シリンダチューブ内に架設されるロッド状であるため、剛性が低いと、回り止め部材がたわんだりして内部移動体にこじれが生じ、内部移動体の往復動がスムーズに行えない場合がある。また、内部移動体が繰り返し往復動することで回り止め部材の耐久性が早期に低下するおそれも生じる。
一方、特許文献2,3のようにシリンダチューブの内面に溝を設ける構造の場合、シリンダチューブの剛性が低下しないようにシリンダチューブを肉厚にする必要が生じ、シリンダチューブが大径化して製品寸法の大型化に繋がる。また、シリンダチューブに余計な加工が必要となるため、コストアップも招くことになる。
【0005】
そこで、本発明は、コストアップを抑えた簡単な構成で、シリンダチューブの大径化や剛性低下を招くことなく、耐久性及び信頼性の高い内部移動体の回り止めが可能となるマグネット式ロッドレスシリンダを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、基台に支持されるエンドキャップとハウジングとの間に直線状のシリンダチューブが架設され、シリンダチューブに形成した横断面円形のシリンダ孔内に、回転駆動するネジ軸と、ネジ軸にねじ送りされる内部移動体と、内部移動体の回り止め手段とがそれぞれ収容される一方、シリンダチューブの外側に、内部移動体と磁気結合される外部移動体が設けられるマグネット式ロッドレスシリンダであって、
回り止め手段を、シリンダ孔の内周面に沿って収容され、シリンダ孔の軸線方向と平行に延びるガイド部を備え、シリンダチューブよりも径方向に肉厚となる筒状の案内部材と、内部移動体に設けられてガイド部に係合する係合部とから形成し
ガイド部は、案内部材の軸線方向全長に亘って設けられたスリットであり、
案内部材は、ハウジングに固定された第1の回り止めブロックがスリットに係合することでシリンダチューブ内で回転規制される一方、
エンドキャップには、ネジ軸の端部を支持する受け部材が回転可能に取り付けられて、受け部材に、スリットに係合する第2の回り止めブロックが固定されていることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項の構成において、シリンダ孔は密閉されて、内部に潤滑油が供給されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、回り止め手段として筒状の案内部材を採用したことで、内部移動体の往復動に影響を与えることなく回り止めを行うことができ、案内部材の耐久性も確保できる。また、シリンダチューブに余分な加工を行わないため、シリンダチューブを肉厚にして剛性を確保する必要もなくなる。よって、シリンダチューブの大径化や剛性低下を招くことなく、コストアップを抑えた簡単な構成で、耐久性及び信頼性の高い内部移動体の回り止めが可能となる。
特に、ガイド部を、案内部材の軸線方向全長に亘って設けられたスリットとしているので、内部移動体のより確実なガイドが可能となる。
また、シリンダチューブを支持するエンドキャップには、ネジ軸の端部を支持する受け部材が回転可能に取り付けられて、受け部材に、シリンダチューブのスリットに係合する第2の回り止めブロックが固定されているので、エンドキャップの取付時には、受け部材を周方向へ回転させて第2の回り止めブロックをスリットへ容易に係合させることができる。
請求項に記載の発明によれば、上記効果に加えて、シリンダ孔を密閉して内部に潤滑油を供給しているので、効果的な潤滑が可能となり、補充や排出も容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】マグネット式ロッドレスシリンダの正面図である。
図2】マグネット式ロッドレスシリンダの拡大左側面図である。
図3図2のA-A線断面図である。
図4図3のピストン及びスライダ部分の拡大図である。
図5図4のB-B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、マグネット式ロッドレスシリンダの一例を示す正面図、図2はその拡大左側面図、図3はA-A線断面図、図4はピストン及びスライダ部分の拡大図である。
マグネット式ロッドレスシリンダ(以下単に「ロッドレスシリンダ」という。)1は、左右両端に、図示しない基台に支持されるエンドキャップ2とハウジング3とを有する。エンドキャップ2とハウジング3との左右の対向面間には、非磁性材料からなる直線状のシリンダチューブ4が架設されている。シリンダチューブ4の外側には、非磁性材料からなるスライダ5(外部移動体)が、シリンダチューブ4の貫通状態で左右方向へ相対移動可能に設けられている。
なお、ここでいう「非磁性材料」とは、アルミニウム等の非磁性金属の他、アルミニウム等の表面にコーティング処理を施したものや、セラミック、SUS(ステンレス鋼)、樹脂材料に特殊表面コーティングを施したもの等も含む。以下に登場する場合も同じである。
【0010】
シリンダチューブ4は、図5に示すように、横断面外形が円形を呈して内部には横断面円形のシリンダ孔6を同軸で形成している。シリンダチューブ4の両端部は、エンドキャップ2とハウジング3とに気密に嵌合されて、シリンダ孔6の内部には、潤滑油が所定量供給されている。
また、シリンダ孔6の内部には、ネジ軸としてのボールネジ7が、シリンダ孔6と同軸で回転可能に収容されている。このボールネジ7は、左端部が、エンドキャップ2に設けた受け部材8に軸受9を介して支持され、右端部が、ハウジング3に軸受10を介して支持されている。ハウジング3の右側には、モータ12を収容したモータボックス11が結合されて、モータ12の出力軸13が、ハウジング3内でカップリング14を介してボールネジ7の右端部と結合されている。
【0011】
ボールネジ7には、非磁性材料からなるボールナット15が螺合されて、ボールナット15の径方向外側に、連結ピン16を介して、非磁性材料からなる筒状のピストン17が連結されている。ピストン17の径方向外側には、ドーナツ状のインナマグネット18,18・・と、同形状のインナヨーク19,19・・とが交互に嵌め込まれている。各インナマグネット18の磁極は、SN,NS,SN,NSと同極同士が軸線方向において対向するように配設されている。左右両端のインナヨーク19,19の左右外側には、樹脂製のインナウェアリング20,20が外装されている。
そして、ピストン17の径方向外側で連結ピン16より右側には、係合ブロック21が、径方向外側へ突出する向きで取り付けられている。
【0012】
一方、シリンダチューブ4内には、係合ブロック21が係合するスリット23を軸線方向の全長に亘って形成した筒状の案内部材22が設けられている。
この案内部材22は、シリンダチューブ4よりも肉厚の非磁性材料からなり、スリット23に、ハウジング3にピン24を介して結合された右回り止めブロック25が係合することで、シリンダチューブ4内で回転規制されている。右回り止めブロック25より左側でハウジング3の左端部には、ピストン17が当接するストッパ26が設けられている。
エンドキャップ2側では、受け部材8がボルト27によってエンドキャップ2へ回転可能に取り付けられており、この受け部材8にピン28を介して結合された左回り止めブロック29が、案内部材22のスリット23に係合している。エンドキャップ2の取付時には、受け部材8を周方向へ回転させて左回り止めブロック29をスリット23へ容易に係合させることができる。
こうしてシリンダチューブ4内で回転規制される案内部材22のスリット23に、ピストン17に設けた係合ブロック21が係合することで、ボールナット15及びピストン17は、回り止めされた状態でシリンダ孔6の軸線方向へのみ往復動可能となっている。
【0013】
一方、スライダ5は、シリンダチューブ4が貫通する同軸の貫通孔30を備えて上面が平坦となる筒状を有する。スライダ5の左右両端は、エンドプレート31,31で閉塞されて、各エンドプレート31の内周に、シリンダチューブ4の外周面と当接するゴム製のスクレーパ32が設けられている。
スライダ5の貫通孔30内には、シリンダチューブ4の周囲を囲むドーナツ状のアウタマグネット33,33・・と、同形状のアウタヨーク34,34・・とが軸線方向へ交互に並設されている。このアウタマグネット33とアウタヨーク34とは、左右に配置した筒状のホルダ35,35と、その左右外側の止め輪36,36とにより、スライダ5内で固定されている。ホルダ35,35の径方向内側には、樹脂製のアウタウェアリング37が設けられ、その左右外側には、ゴム製のスクレーパ38,38が設けられている。
アウタマグネット33の磁極は、軸線方向で同極同士が対向し、且つピストン17のインナマグネット18の磁極とは異極同士が対向するように、NS,SN,NS,SNと配設されている。よって、ピストン17とスライダ5とは、インナマグネット18とアウタマグネット33との磁気結合力によってシリンダチューブ4越しに一体化されることになる。
【0014】
以上の如く構成されたロッドレスシリンダ1においては、モータ12が駆動して出力軸13が回転すると、ボールネジ7が回転する。すると、案内部材22に係合ブロック21が係合するピストン17は、ボールナット15と共にシリンダ孔6内でその軸線方向へねじ送りされる。すると、インナマグネット18とアウタマグネット33との磁気結合力によってピストン17と一体化されるスライダ5が追従してシリンダチューブ4に沿って直線移動する。出力軸13が逆回転するとスライダ5は反対側へ直線移動する。
このとき、ピストン17のインナウェアリング20,20は、案内部材22の内周面の全周に亘って摺接する。案内部材22は、シリンダ孔6の内周面の略全周に亘って当接しているので、ピストン17が往復動する際の負荷は、筒状の案内部材22の全体を介してシリンダチューブ4で受けられる。よって、好適な耐久性が得られる。
【0015】
また、シリンダ孔6の内部に潤滑油を密封しているので、ピストン17が往復動する際の摺動抵抗を低減させることができる。特に、潤滑油はピストン17が移動する際にインナウェアリング20で押しのけられてシリンダ孔6の全体(案内部材22の全体)に行き渡るため、好適な潤滑が可能となる。また、流体であるため劣化した際の排出も容易に行える。潤滑油の給排出は、ボルト27を取り外すことでエンドキャップ2側から可能となっている。
【0016】
このように、上記形態のロッドレスシリンダ1によれば、ピストン17(内部移動体)の回り止め手段を、シリンダ孔6の内周面に沿って収容され、シリンダ孔6の軸線方向と平行に延びるスリット23(ガイド部)を備えた筒状の案内部材22と、ピストン17に設けられてスリット23に係合する係合ブロック21(係合部)とから形成したことで、ピストン17の往復動に影響を与えることなく回り止めを行うことができ、案内部材22の耐久性も確保できる。また、シリンダチューブ4に余分な加工を行わないため、シリンダチューブ4を肉厚にして剛性を確保する必要もなくなる。よって、コストアップを抑えた簡単な構成で、シリンダチューブ4の大径化や剛性低下を招くことなく、耐久性及び信頼性の高いピストン17の回り止めが可能となる。
【0017】
特にここでは、ガイド部を、案内部材22の軸線方向全長に亘って設けられたスリット23としているので、ピストン17のより確実なガイドが可能となる。
また、シリンダ孔6は密閉されて、内部に潤滑油が供給されているので、効果的な潤滑が可能となり、補充や排出も容易に行える。
【0018】
なお、上記形態では、案内部材のガイド部をスリットとしているが、案内部材の内周面に凹設した溝としてもよい。スリット及び溝の位置も上記形態のような真上に限定しない。また、ガイド部として溝を採用する場合は、1箇所に限らず、案内部材の周方向に所定間隔をおいて複数箇所に設けて、内部移動体に同じ位相で設けた複数の係合部をそれぞれ溝に係合させることもできる。
内部移動体の係合部も、上記形態のような1つの係合ブロックに限らず、シリンダ孔の軸線方向に複数の係合ブロックを配置したり、ブロックでなく軸線方向に延びるキーとしたりしても差し支えない。また、別体のブロックやキーを用いず、ピストンに直接係合部を突設してガイド部に係合させてもよい。
【0019】
その他、ロッドレスシリンダの形状も上記形態に限らない。例えば、シリンダ孔を1つにせず、横断面長円形のシリンダチューブ内に一対のシリンダ孔を形成し、各シリンダ孔にそれぞれピストンを収容してスライダと磁気結合させたロッドレスシリンダであっても、各シリンダ孔ごとに本発明の回り止め手段は適用可能である。
【符号の説明】
【0020】
1・・マグネット式ロッドレスシリンダ、2・・エンドキャップ、3・・ハウジング、4・・シリンダチューブ、5・・スライダ、6・・シリンダ孔、7・・ボールネジ、12・・モータ、15・・ボールナット、17・・ピストン、18・・インナマグネット、21・・係合ブロック、22・・案内部材、23・・スリット、33・・アウタマグネット。
図1
図2
図3
図4
図5