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特許7379973推奨速度決定システム及び推奨速度決定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】推奨速度決定システム及び推奨速度決定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
G08G1/16 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019165869
(22)【出願日】2019-09-12
(65)【公開番号】P2021043744
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】坂井 孝光
【審査官】貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-95148(JP,A)
【文献】国際公開第2018/216066(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B60R 21/00 - 21/13
B60R 21/34 - 21/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周囲に存在する建物と前記車両の間の距離を取得する距離取得部と、
前記距離が短くなるほど遅い速度を前記車両の推奨速度として決定する推奨速度決定部と
を備え
前記車両の走行予定位置と、前記走行予定位置の周囲に存在する建物の間の前記距離とに基づいて、前記走行予定位置における前記推奨速度が決定される、推奨速度決定システム。
【請求項2】
前記建物の頂点のうち、前記車両の進行方向における前方かつ道路側の頂点を中心とする所定の半径の円のうち、前記建物よりも前方側の領域内に他の建物が存在しない場合に、前記推奨速度決定部により決定された前記推奨速度をより遅い速度に変更する推奨速度変更部をさらに備える、
請求項1に記載の推奨速度決定システム。
【請求項3】
前記距離は、前記車両の周囲に存在する複数の建物を含むブロックと前記車両の間の距離である、
請求項1又は2に記載の推奨速度決定システム。
【請求項4】
前記車両の走行中の車線が、走行方向が逆の複数の車線を含む道路において最も端の車線である場合と、前記車両の走行中の道路が一方通行の道路である場合と、の少なくとも一方の場合に、前記距離が短くなるほど遅い速度が前記車両の推奨速度として決定される
請求項1乃至3の何れか1項に記載の推奨速度決定システム。
【請求項5】
前記推奨速度を表示する表示部をさらに備える、
請求項1乃至の何れか1項に記載の推奨速度決定システム。
【請求項6】
コンピュータを、
車両の周囲に存在する建物と前記車両の間の距離を取得する距離取得部と、
前記距離が短くなるほど遅い速度を前記車両の推奨速度として決定する推奨速度決定部と
して機能させ
前記車両の走行予定位置と、前記走行予定位置の周囲に存在する建物の間の前記距離とに基づいて、前記走行予定位置における前記推奨速度が決定される、推奨速度決定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推奨速度決定システム及び推奨速度決定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両が周囲の障害物等と接触するリスクを考慮して、規範的な運転行動を提案したり、運転行動に係る情報を提供したりする技術が知られている。特許文献1には、移動体の有無を注視すべき注視枠に対する死角の割合に応じて対処行動を決定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2016/170647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術においては、建物形状などを含んだ高精度な地図データを用いて死角の判断を行っている。すなわち、建物に対する死角が生じる領域を建物や車両の進行方向毎に整備したデータが必要となり、コストが高くなってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、高精度な地図データを用いた演算を行うことなく、運転時のリスクを考慮した、車両の推奨速度を決定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の推奨速度決定システムは、車両の周囲に存在する建物と前記車両の間の距離を取得する距離取得部と、前記距離が短くなるほど遅い速度を前記車両の推奨速度として決定する推奨速度決定部とを備える。
【0007】
さらに、上記の目的を達成するため、推奨速度決定プログラムは、コンピュータを、車両の周囲に存在する建物と前記車両の間の距離を取得する距離取得部と、前記距離が短くなるほど遅い速度を前記車両の推奨速度として決定する推奨速度決定部として機能させる。
【0008】
このように、推奨速度決定システム及び推奨速度決定プログラムでは、建物と車両の間の距離が短くなるほど遅い速度を推奨速度として決定する。すなわち、推奨速度決定システム及び推奨速度決定プログラムは、高精度な地図データを用いた演算を行うことなく、建物との距離に応じて、車両の推奨速度を決定する。これにより、建物から人が出てくるといった、運転リスクに応じた速度を推奨速度として運転者に提示したり、運転行動を行ったりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】推奨速度決定システムの構成を示すブロック図。
図2図2A及び図2Bは、建物距離と推奨速度の関係の説明図。
図3図3A及び図3Bは、建物距離と推奨速度の関係の説明図。
図4】推奨速度決定処理を示すフローチャート。
図5】推奨速度の表示の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)推奨速度決定システムの構成:
(2)推奨速度決定処理:
(3)他の実施形態:
【0011】
(1)推奨速度決定システムの構成:
図1は、推奨速度決定システム10の構成を示すブロック図である。推奨速度決定システム10は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部20と記録媒体30とを備えている。制御部20は、記録媒体30やROMに記憶された種々のプログラムを実行することができる。本実施形態の制御部20は、このプログラムの1つとして、推奨速度決定プログラム21を実行することができる。制御部20は、推奨速度決定プログラム21の処理により、適宜、車両の推奨速度を決定し、これを運転者等のユーザに通知することができる。
【0012】
記録媒体30は、地図情報30aを記憶している。地図情報30aは、道路区間の端点に対応するノードの位置を示すノードデータ、ノード間の道路の形状を特定するための形状補間点の位置等を示す形状補間点データ、ノード同士を接続するリンクを示すリンクデータ等を含んでいる。ここで、ノードは、交差点に対応し、リンクは、交差点から交差点までの道路区間に対応する。地図情報30aは、車両の位置の特定や目的地までの経路探索、経路案内等に利用される。本実施形態において、リンクデータには、リンクデータが示す道路区間上で車両が進行可能な方向を示す情報が含まれている。また、リンクデータには、道路上に存在する車線の構造を示す情報が含まれている。車線の構造は、各進行方向のそれぞれにおいて、車両が走行可能な車線の数を示している。道路区間の一部(例えば、交差点に進入する直前の部分)で車線数が変化する場合、変化する位置及び変化前後の車線数を示す情報が定義されている。地図情報30aはさらに、建物情報を含んでいる。ここで、建物情報は、建物の位置、サイズ及び形状を示す二次元のポリゴンデータである。建物情報は、道路沿いの建物の位置の特定に利用される。
【0013】
車両にはさらに、GNSS受信部41と、車速センサ42と、ジャイロセンサ43と、ユーザI/F部44と、通信部45とが搭載されている。GNSS受信部41は、Global Navigation Satellite Systemの信号を受信する装置である。GNSS受信部41は、航法衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して、車両の位置を算出するための信号を出力する。制御部20は、この信号を取得して車両の位置を取得する。車速センサ42は、車両が備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車速を取得する。ジャイロセンサ43は、車両の水平面内の旋回についての角加速度を検出し、車両の向きに対応した信号を出力する。制御部20は、この信号を取得して車両の進行方向を取得する。車速センサ42およびジャイロセンサ43等は、車両の走行軌道を特定するために利用される。本実施形態においては、制御部20は、車両の出発地と走行軌道とに基づいて車両の位置を特定し、出発地と走行軌道とに基づいて特定された車両の位置をGNSS受信部41の出力信号に基づいて補正する。
【0014】
ユーザI/F部44は、ユーザの指示を入力し、また、ユーザに各種の情報を提供するためのインタフェース部であり、図示しないタッチパネル式のディスプレイやスイッチ等やスピーカー等を備えている。すなわち、ユーザI/F部44は画像や音声の出力部およびユーザによる指示の入力部を備えている。通信部45は、外部の装置と無線通信を行うための装置であり、制御部20は通信部45を介して事故管理サーバ装置50と通信することができる。
【0015】
推奨速度決定システム10の制御部20が実行する推奨速度決定プログラム21は、車両の走行中の推奨速度を決定するために、車両位置取得部21aと、走行軌道予測部21bと、距離取得部21cと、推奨速度決定部21dと、推奨速度変更部21eと、表示部21fと、を備えている。
【0016】
車両位置取得部21aは、車両の位置を取得する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。制御部20は、車両位置取得部21aの機能により、GNSS受信部41、車速センサ42及びジャイロセンサ43から取得した信号に従い、車両の位置を特定する。
【0017】
走行軌道予測部21bは、車両の走行道路上の位置を予測する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。制御部20は、走行軌道予測部21bの機能により、以下の処理を行う。すなわち、制御部20は、車両位置取得部21aにより得られた車両の位置の周囲の地図情報30aを特定する。そして、制御部20は、地図情報30aを参照し、高精度ロケーションの技術を用いることにより、道路上における車両の幅方向の位置を特定する。複数の車線が存在する場合には、道路上の幅方向の位置は、車両が存在する車線における幅方向の位置である。そして、制御部20は、車両の位置に基づいて、車両の走行軌道を予測する。ここで、高精度ロケーション技術とは、車両に搭載されたカメラ(不図示)から取り込んだ白線や路面ペイント情報を画像認識により検出し、白線や路面ペイント情報を予め記憶した地図情報30aと照合することにより、走行車線や高精度な車両の位置検出可能にする技術である。白線には、停止線と車線の境界線とが含まれる。制御部20は、車線の境界線の画像から、境界線と車両の位置関係を求め、車線内の幅方向における車両の位置を特定することができる。
【0018】
また、他の例としては、制御部20は、高精度ロケーションの技術を使うのに替えて、以下の処理により走行軌道の予測を行ってもよい。すなわち、車両が走行中の道路が一方通行の道路の場合には、制御部20は、道路の幅方向の中心を走行軌道として予測する。また、車両が走行中の道路が片側一車線の二車線道路の場合には、制御部20は、車両の通行する車線の幅方向の中心を走行軌道として予測する。
【0019】
なお、制御部20は、走行軌道予測部21bの機能により、車両の走行中の車線が、走行方向が逆の複数の車線を含む道路において最も端の車線であるか、車両の走行中の道路が一方通行の道路であるか、を判定する。ここで、走行方向が逆の複数の車線を含む道路において最も端の車線とは、例えば、左側走行の道路において、片側二車線以上の車線のうち最も左端の車線である。なお、片側一車線の場合には、走行中の車線は最も端の車線となる。
【0020】
制御部20は、具体的には、地図情報30aを参照し、車両が走行中のリンクに係るリンクデータから、一方通行の道路か否かを特定する。一方通行の道路でない場合には、制御部20は、リンクデータから、道路に含まれる車線数と道路の幅を特定する。そして、制御部20は、高精度ロケーションの技術により、車両の左右に存在する車線の境界線の種類を特定し、左右の車線の種類に基づいて車線を特定する。すなわち、複数の車線の最も端に存在する車線の左右の境界線の一方は実線、他方は破線である。複数の車線の中で端ではない車線(例えば、3車線の中央の車線等)の左右の境界線は双方とも破線である。従って、境界線の一方が実線である場合、制御部20は、車両が端の車線に存在すると判定することができる。そこで、左側通行の道路であれば、車両の左側に実線、右側に境界線がある場合、制御部20は、車両が走行中の車線が最も左端の車線であると判定する。
【0021】
そして、制御部20は、車両の走行中の車線が、最も端の車線及び一方通行の道路のいずれかに該当する場合に、推奨速度を決定する処理を行う。片側二車線以上の車線において、中央よりの車線を走行中には、建物との距離に応じた推奨速度は、車両の走行において利用される可能性は高くない。そこで、上記のように、制御部20は、推奨速度を決定する処理を行う場合を、最も端の車線又は一方通行の道路を走行中の場合に限ることとする。
【0022】
距離取得部20cは、建物距離を取得する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。ここで、建物距離とは、車両の周囲に存在する建物と車両の間の距離である。制御部20は、距離取得部21cの機能により、以下の処理を行う。すなわち、制御部20は、地図情報30aに含まれる建物情報を取得する。そして、制御部20は、建物情報から建物の位置を特定する。そして、制御部20は、走行軌道予測部21bの機能により得られた走行軌道と、車両の周囲の道路沿いに存在する建物の道路側の端との間の最短距離、すなわち走行軌道に垂直な方向において、建物の道路側の端から走行軌道までの距離を建物距離として取得する。例えば、図2Aに示す例においては、制御部20は、車両の走行軌道T1と建物A1との最短距離であるD1を、建物A1との建物距離として取得する。同様に、制御部20は、走行軌道T1と建物A2との最短距離であるD2を、建物A2との建物距離として取得する。
【0023】
推奨速度決定部21dは、建物距離が短くなるほど遅い速度を車両の推奨速度として決定する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。制御部20は、推奨速度決定部21dの機能により、建物距離と推奨速度の関数を用いることで、建物距離から推奨速度を決定する。ここで、関数は、建物距離が短くなるほど、遅い推奨速度が得られるような関数であり、予め設定されているものとする。なお、関数は、連続的な値をとり得るような連続関数でもよく、値が段階的に変化するような不連続関数でもよい。例えば、図2Aに示すように走行軌道T1を走行した場合には、図2Bに示すように、建物A1の横を走行中は、速度V12が推奨速度として決定され、建物A2の横を走行中は、速度V11が推奨速度として決定される。ここで、速度V11は、速度V12よりも遅い速度である。
【0024】
なお、上述のように、推奨速度決定部21dは、車両の走行中の車線が、走行方向が逆の複数の車線を含む道路において最も端の車線である場合と、車両の走行中の道路が一方通行の道路である場合と、の少なくとも一方の場合に、推奨速度の決定を行う。
【0025】
推奨速度変更部21eは、建物の終端を基準とした基準範囲内に他の建物が存在しない場合に、速度決定部21dにより決定された推奨速度をより遅い速度に変更する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。ここで、終端とは、建物の頂点のうち、走行軌道に沿って進行方向の前方かつ道路側の頂点である。基準範囲は、終端を中心とした所定の半径の円のうち、終端よりも、車両の進行方向の前方側の範囲である。なお、半径は、例えば50cm等、基準範囲に人物が存在し得るようなサイズであることが望ましい。この範囲に人物が存在した場合に、この人物が道路に飛び出す可能性があるためである。この範囲に建物が存在しない場合には、死角が存在するとして、制御部20は、推奨速度をより遅い速度に変更する。また、変更後の速度は予め定められているものとする。なお、変更後の速度は、死角となる領域から人物が飛び出してきた場合に、対処し得る程度に遅い速度であることが好ましい。
【0026】
図3Aに示す例においては、走行軌道T2に沿って、建物A3の先に建物A4が存在する。しかし、建物A4は、道路から奥まって建っているため、建物A3の終端A31を基準とした基準範囲Qには、建物は存在しない。この場合、建物A3の終端A31の先に死角Pが生じる。死角Pが生じていると、死角Pが生じていない場合と比較して、人の飛び出し等の可能性が高い。建物においても、例えば突然ドアが開き、ドアの裏の死角から人が出てくる、といった可能性があるが、死角Pのように建物の配置に応じて生じる死角から人が出てくるリスクは、建物から人が出てくるリスクよりも高いと考えられる。そこで、本実施形態の制御部20は、推奨速度変更部21eの機能により、死角Pに対応した領域の走行時の推奨速度を、建物距離から定まる推奨速度よりも遅い速度に変更する。
【0027】
これにより、例えば、図3Aに示すように走行軌道T2を走行した場合には、図3Bに示すように、建物A3の横を走行中は、速度V22が推奨速度として決定され、建物A3の終端A31を超えると、速度V22よりも遅い速度V21が推奨速度として決定される。さらに、死角Pを抜けると、建物A3との建物距離から定まる速度V23が推奨速度として決定される。ここで、速度V23は、速度V22よりも速い速度である。
【0028】
表示部21fは、推奨速度を表示する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。制御部20は、表示部21fの機能により、推奨速度決定部21dにより決定された推奨速度をユーザI/F部44のディスプレイに表示する。制御部20はまた、推奨速度変更部21eにより推奨速度が更新された場合には、更新後の推奨速度をディスプレイに表示する。
【0029】
以上のように、本実施形態に係る推奨速度決定システムは、車両と建物の間の距離である建物距離に応じて推奨速度を決定することができる。死角を考慮するだけでは、建物のドアを開けて人が出てくるというような状況変化に対応できない可能性がある。これに対し、本実施形態の推奨速度決定システムは、建物との距離が短くなるほど、遅い速度を推奨速度として決定する。これにより、推奨速度決定システムは、死角だけでなく、建物の状況の変化にも対応できるような推奨速度を決定ができる。推奨速度決定システムは、さらに運転者に対し、推奨速度を通知することができるので、運転者は、推奨速度に注意しながら運転することができる。このように、本実施形態に係る推奨速度決定システムは、高精度な地図データを用いた演算を行うことなく、運転時のリスクを考慮した、車両の推奨速度を決定できる。
【0030】
(2)推奨速度決定処理:
次に、推奨速度決定プログラム21の機能により実行される推奨速度決定処理を説明する。推奨速度決定処理は、車両の走行中に実行される処理である。図4は、推奨速度決定処理のフローチャートである。まず、制御部20は、車両位置取得部21aの機能により、車両の位置を取得する(ステップS100)。すなわち、制御部20は、GNSS41、車速センサ42、ジャイロセンサ43の出力信号に基づいて車両の位置を特定する。次に、制御部20は、走行軌道予測部21bの機能により、走行軌道を予測する(ステップS105)。具体的には、制御部20は、ステップS100において得られた車両の位置の周囲の地図情報30aを特定する。そして、制御部20は、地図情報30aを参照し、高精度ロケーションの技術を用いて、道路上における車両の位置を特定する。そして、制御部20は、車両の位置に基づいて、車両の走行軌道を予測する。
【0031】
次に、制御部20は、走行軌道予測部21bの機能により、車両が走行中の車線が道路の最も端の車線(左側走行においては左端)であるか否かを判定する(ステップS110)。制御部20は、車両の車線が最も端の車線でない場合には(ステップS110でN)、推奨速度決定処理を終了する。
【0032】
一方で、制御部20は、車両の車線が最も端の車線である場合には(ステップS110でY)、制御部20は、距離取得部21cの機能により、車両の位置の周囲の地図情報30aに含まれる建物情報を取得する(ステップS115)。次に、制御部20は、距離取得部21cの機能により、建物情報と、車両の走行軌道と、に基づいて、車両の位置の横に存在する建物との間の建物距離を取得する(ステップS120)。
【0033】
次に、制御部20は、推奨速度決定部21dの機能により、建物距離に基づいて、推奨速度を決定する(ステップS125)。次に、制御部20は、車両の位置が建物の終端に対応した位置である場合には(ステップS130でY)、制御部20は、推奨速度変更部21eの機能により、建物の終端を基準とした基準範囲内に他の建物が存在するか否かを判定する(ステップS135)。なお、建物の終端に対応した位置とは、走行軌道上において、終端に最も近い位置でもよく、終端に最も近い位置から所定距離だけ走行軌道に沿った進行方向手前の位置でもよい。基準範囲内に他の建物が存在しない場合には(ステップS135でN)、制御部20は、推奨速度変更部21eの機能により、推奨速度を、ステップS125において決定された推奨速度よりも遅い速度に変更する(ステップS140)。次に、制御部20は、表示部21fの機能により、推奨速度を表示する(ステップS145)。すなわち、ステップS140において、推奨速度が変更された場合には、ステップS145において、制御部20は、変更後の推奨速度を表示する。以上で、推奨速度決定処理が完了する。
【0034】
なお、ステップS130において、建物の終端でない場合は(ステップS130でN)、制御部20は、処理をステップS145へ進め、ステップS125において決定した推奨速度を表示する。また、ステップS135において、所定範囲内の他の建物が存在する場合も(ステップS135でY)、制御部20は、処理をステップS145へ進め、ステップS125において決定した推奨速度を表示する。
【0035】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は、本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、推奨速度決定システム10は、複数の装置(例えば、クライアントとサーバや、ナビゲーション装置内の制御部とユーザI/F部内の制御部等)によって実現されるシステムであってもよい。推奨速度決定システム10を構成する車両位置取得部21a、走行軌道予測部21b、距離取得部21c、推奨速度決定部21d、推奨速度変更部21e及び表示部21fのなくとも一部が複数の装置に分かれて存在してもよい。むろん、上述の実施形態の一部の構成が省略されてもよいし、処理の順序が変動または省略されてもよい。例えば、本実施形態においては、制御部20は、建物情報を取得する処理を、車両の位置を取得し、走行軌道を予測する処理よりも先に実行してもよい。
【0036】
本実施形態においては、建物と車両の間の距離を建物距離として取得したが、ここで、建物は、車両の走行軌道に沿った進行方向において、車両の横、またはより先の領域に存在する建物である。より先の領域の建物との建物距離を用いることにより、将来の走行予定時の推奨速度を決定することができる。
【0037】
また、建物距離は、走行軌道に垂直な方向における、建物の道路側の端から走行軌道までの距離に比例して変動するような距離であればよく、実施形態に限定されるものではない。他の例としては、建物距離は、建物の中心から、走行軌道までの距離であってもよい。
【0038】
本実施形態の制御部20は、推奨速度決定部21dの機能として、関数を用いて建物距離から推奨速度を決定したが、制御部20は、建物距離が短くなるほど推奨速度が遅くなるような関係を満たすような推奨速度を決定すればよく、そのための処理は実施形態に限定されるものではない。他の例としては、制御部20は、関数を用いるのに替えて、建物距離と推奨速度とを対応付けた対応テーブルを参照することで、推奨速度を決定してもよい。
【0039】
また、制御部20は、将来における走行予定位置と建物の間の距離を建物距離として、走行予定位置における推奨速度を決定してもよい。例えば、図5Aの例において、建物A5の手前に建物が存在しない場合には、制御部20は、建物A5の手前においては、建物距離に応じた推奨速度の決定は行わず、走行軌道T3に沿って、将来において、建物A5の横を走行する際の走行予定位置における、建物A5との間の建物距離D5に基づいて、推奨速度V31を決定する。さらに、制御部20は、図5Bに示すように、建物A1の手前から徐々にV31まで減速するような推奨速度を、建物A5の横を走行する前から、順次表示してもよい。これにより、無理のない減速を実現することができる。
【0040】
制御部20は、推奨速度変更部21eの機能により、より遅い速度に変更すればよく、変更後の速度は実施形態に限定されるものではない。他の例としては、制御部20は、基準範囲内に他の建物が存在しない場合には、推奨速度決定部21dにより決定された推奨速度から、所定の値だけ、又は所定の割合だけ遅い速度に変更してもよい。また、より遅い速度とは、死角からの飛び出しに対応可能な速度であることが好ましい。さらに、制御部20は、死角の大きさが大きいほど、より遅い速度に変更することとしてもよい。
【0041】
また、本実施形態においては、制御部20は、距離取得部21cの機能として、建物単位で、建物距離を取得したが、これに替えて、建物ブロック単位で建物ブロックと車両の間の距離を建物距離として取得してもよい。ここで、建物ブロックとは、走行軌道方向の所定距離内に存在する複数の建物のグループである。この場合には、制御部20は、グループに属する建物のうち、最も道路に近い建物との距離をグループに対する建物距離として取得する。このように、建物ブロック単位で処理を行うことにより、処理効率を向上させることができる。また、推奨距離が変更になる頻度が減少するので、推奨速度が頻繁に変化することに応じて表示が頻繁に変更になることによる利便性の低下を防ぐことができる。
【0042】
制御部20は、推奨速度に応じた情報を表示すればよく、表示内容や表示タイミングは実施形態に限定されるものではない。例えば、制御部20は、推奨速度を表示するのに加えて、「推奨速度に応じて、速度を落として下さい」というように、減速を促す情報を表示してもよい。また、制御部20は、死角が存在する領域においては、「死角が存在するため、速度を落として下さい」というように、死角が存在することを示す情報を表示してもよい。
【0043】
また、制御部20は、車両の運転を制御可能であり、推奨速度を利用した自動運転を行うような制御を行ってもよい。
【0044】
さらに、以上のようなシステム、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、複数の装置で共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、システムを制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのプログラムの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし半導体メモリであってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【符号の説明】
【0045】
10…推奨速度決定システム、20…制御部、21…推奨速度決定プログラム、21a…車両位置取得部、21b…走行軌道予測部、21c…距離取得部、21d…推奨速度決定部、21e…推奨速度変更部、21f…表示部、41…GNSS受信部、42…車速センサ、43…ジャイロセンサ、44…ユーザI/F部
図1
図2
図3
図4
図5