(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】画像形成装置および画像形成装置診断システム
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20231108BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20231108BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
G03G15/00 680
G03G21/00 510
H04N1/00 127A
H04N1/00 002A
(21)【出願番号】P 2019168559
(22)【出願日】2019-09-17
【審査請求日】2022-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】日高 真聡
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-221873(JP,A)
【文献】特開2009-223362(JP,A)
【文献】特開2011-078039(JP,A)
【文献】特開2018-107686(JP,A)
【文献】特開2004-032260(JP,A)
【文献】特開2014-136348(JP,A)
【文献】国際公開第2010/123044(WO,A1)
【文献】特開2012-133021(JP,A)
【文献】特開2010-066566(JP,A)
【文献】特開平11-352852(JP,A)
【文献】特開2012-145705(JP,A)
【文献】特開2004-184601(JP,A)
【文献】特開2017-016636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
G03G 21/00
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置であって、
記録シート上に画像を形成する画像形成処理を実行する画像形成部と、
前記画像形成部
を制御並びに監視するメカコン制御部と、
前記メカコン制御部に対して前記画像形成処理の実行を指示するコントローラー制御部と、
前記画像形成部の状態を検出する少なくとも一つのセンサーと、
前記メカコン制御部と前記コントローラー制御部との間に設けられた
、前記画像形成処理の実行に係るデータを
前記画像形成処理の実行中に伝送するための第1の伝送路及び故障診断または寿命予測に係る診断データを
前記画像形成処理の実行中に伝送するための前記第1の伝送路とは異なる第2の伝送路と、を備え、
前記メカコン制御部は、
前記画像形成処理の実行中に前記センサーにて検出した前記画像形成部の状態を表すセンサーデータから前記診断データを生成する生成手段と、
前記診断データを、
前記画像形成処理の実行中に前記第2の伝送路を介して、前記コントローラー制御部へ送信する送信手段と、を備える
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記コントローラー制御部は、前記メカコン制御部から受信した前記診断データを故障診断または寿命予測を行う診断サーバーへ送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記コントローラー制御部が高負荷状態であるか否か判定する負荷判定手段を備え、
前記コントローラー制御部は、前記負荷判定手段の判定結果が肯定的である場合に、前記メカコン制御部へ前記診断データの送信を一時的に停止させる指示を送信する停止指示手段を備え、
前記メカコン制御部は、前記診断データの送信を一時停止させる指示を受信した場合、前記診断データの送信を再開させる指示を受信するまで、前記送信手段による前記診断データの送信を停止させる
ことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記送信手段による診断データの送信の要否を判定する判定手段と、
前記判定手段による判定結果が否定的である場合に、前記送信手段による診断データの送信を禁止させる禁止手段と、を備える
ことを特徴とする請求項1または3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記画像形成部の状態を検出する前記センサーを複数備え、
前記診断データは、前記センサーのいずれかから得るセンサーデータを圧縮しない状態で含む
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記画像形成部の状態を検出する前記センサーを複数備え、
前記診断データは、前記センサーのいずれかから得るセンサーデータを圧縮した状態で含む
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記診断データは、前記センサーデータと、前記センサーデータを圧縮したデータとを含み、
前記センサーデータ並びに圧縮データには、どのセンサーデータを圧縮したデータであるかを識別するための識別データが付与されている
ことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記センサーデータを圧縮するか否かの指示を受け付ける受付手段を備え、
前記診断データは、
前記受付手段にて前記センサーデータを圧縮するとの指示を受け付けた場合には、前記センサーデータを圧縮した状態で含み、
前記受付手段にて前記センサーデータを圧縮しないとの指示を受け付けた場合には、前記センサーデータを圧縮しない状態で含む
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記メカコン制御部は、
前記センサーデータを圧縮する圧縮手段と、
前記センサーデータと、当該センサーデータを圧縮した圧縮データとを関連付ける識別データを、前記センサーデータと前記圧縮データとに付与する関連付け手段と、を備え、
前記メカコン制御部の前記送信手段は、
前記第2の伝送路を介して、前記コントローラー制御部へ前記圧縮データを送信し、
前記第2の伝送路を介して、前記診断データとして、前記センサーデータを前記コントローラー制御部へ送信する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記圧縮手段は、前記圧縮データとして、所定個数のセンサーデータの平均値、最大値および最小値の少なくとも1つを算出する
ことを特徴とする請求項6から9のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記画像形成部は、
画像形成に用いる記録シートを収容する給紙トレイと、
前記給紙トレイから記録シートを搬出する給紙ローラーと、
記録シートが、前記給紙ローラーよりも下流側の第1の位置から、前記第1の位置よりも下流側の第2の位置まで、搬送されるのに要する用紙到達時間を検出する用紙到達時間検出手段と、を備え、
前記診断データは、前記用紙到達時間である
ことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記画像形成部は、
電子写真方式によってトナー像を形成するための感光体と、
感光体の表面状態を検出する表面状態センサーと、を備え、
前記診断データは、前記表面状態センサーの出力値である
ことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記画像形成部は、
画像形成に用いる回転部材と、
前記回転部材を回転駆動する駆動モーターと、
前記駆動モーターのトルクを指標するセンサーデータを検出するトルクセンサーと、を備え、
前記診断データは、前記トルクセンサーが出力するセンサーデータである
ことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記画像形成部は、
タンデム方式の画像形成部であって、
1次転写されたトナー像を2次転写位置まで搬送する中間転写ベルトと、
中間転写ベルトが担持するトナーの付着量を検出する付着量センサーと、を備え、
前記診断データは、前記付着量である
ことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記画像形成部は、
トナー像を記録シートに静電転写する転写手段と、
前記静電転写するための転写電圧を検出する電圧検出手段と、を備え、
前記診断データは、前記転写電圧である
ことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項16】
請求項1から15のいずれかに記載の画像形成装置と、
前記画像形成装置から診断データを受信して、前記画像形成装置の故障診断又は寿命予測を行う診断サーバーと、を備える
ことを特徴とする画像形成装置診断システム。
【請求項17】
画像形成装置と、
前記画像形成装置から診断データを受信して、前記画像形成装置の故障診断又は寿命予測を行う診断サーバーと、
診断親サーバーと、を備え、
前記画像形成装置は、
記録シート上に画像を形成する画像形成処理を実行する画像形成部と、
前記画像形成部を制御並びに監視するメカコン制御部と、
前記メカコン制御部に対して前記画像形成処理の実行を指示するコントローラー制御部と、
前記画像形成部の状態を検出する少なくとも一つのセンサーと、
前記メカコン制御部と前記コントローラー制御部との間に設けられた、前記画像形成処理の実行に係るデータを伝送するための第1の伝送路及び故障診断または寿命予測に係る診断データを伝送するための前記第1の伝送路とは異なる第2の伝送路と、を備え、
前記メカコン制御部は、
前記センサーにて検出した前記画像形成部の状態を表すセンサーデータから前記診断データを生成する生成手段と、
前記診断データを、前記第2の伝送路を介して、前記コントローラー制御部へ送信する送信手段と、
前記センサーデータを圧縮する圧縮手段と、
前記センサーデータと、当該センサーデータを圧縮した圧縮データとを関連付ける識別データを、前記センサーデータと前記圧縮データとに付与する第1の関連付け手段と、を備え、
前記メカコン制御部の前記送信手段は、
前記第2の伝送路を介して、前記コントローラー制御部へ前記圧縮データを送信し、
前記第2の伝送路を介して、前記診断データとして、前記センサーデータを前記コントローラー制御部へ送信し、
前記コントローラー制御部は、さらに前記圧縮データを前記診断親サーバーへ送信し、
前記診断サーバーは、
前記センサーデータを参照して、診断結果を生成する診断手段と、
前記診断結果を生成するために参照した前記センサーデータに付与されている前記識別データを、当該診断結果に付与する第2の関連付け手段と、
前記識別データを付与された前記診断結果を前記診断親サーバーへ送信する結果送信手段と、を備え、
前記診断親サーバーは、
前記識別データを付与された圧縮データを前記画像形成装置から受信する圧縮データ受信手段と、
前記識別データを付与された診断結果を前記診断サーバーから受信する診断結果受信手段と、
前記識別データによって関連付けられた前記圧縮データと前記診断結果とを参照して、前記診断結果を解析する解析手段と、
前記解析結果を前記診断サーバーへ送信する解析結果送信手段と、を備え、
前記診断サーバーは前記診断親サーバーから前記解析結果を受信すると、当該解析結果に応じて診断方法を更新する
ことを特徴とする画像形成装置診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成装置および画像形成装置診断システムに関し、特に、画像形成装置の診断精度を改善するために診断データの取得頻度を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、診断サーバーを用いて、画像形成装置の故障診断や寿命予測を遠隔実施するシステムがある。画像形成装置は、画像形成処理を実行するためのメカ制御を行うメカコン制御部と、ユーザーからジョブを受け付けてメカコン制御部に実行させるコントローラー制御部とを備えており、メカコン制御部が各種センサーの出力を参照して取得したセンサーデータをコントローラー制御部が診断サーバーへ送信する。このセンサーデータを用いて、画像形成装置や診断サーバーは故障診断や寿命予測を行う。
【0003】
メカコン制御部からコントローラー制御部へセンサーデータを送信する通信経路は、コントローラー制御部からメカコン制御部への動作指示やモード等にも使用される。このような用途は、近年リアルタイム性が要求されているため、コントローラー制御部からメカコン制御部への動作指示やモードの遅延を許容することはできない。しかしながら、センサーデータの送信量が多くなり過ぎると、動作指示やモード等の通信が遅滞してしまう恐れがある。
【0004】
例えば、1枚の画像を形成するたびにコントローラー制御部とメカコン制御部とのあいだで200バイトのデータが送受信される場合、画像形成装置のユーザーが1日に1,000枚プリントする場合には、1日当たり200キロバイトのデータが送受信される。また、1日に3,000枚プリントする場合には、1日当たりの送受信データ量も3倍の600キロバイトになる。
【0005】
また、このようなデータは、1日24時間にわたって満遍なく分散して送受信されるのではなく、特定の時間帯に集中して送受信されることもしばしばであり、そのような時間帯にはコントローラー制御部とメカコン制御部との間の通信負荷が高くならざるを得ない。
【0006】
このため、画像形成データを送受信する通信路を兼用してセンサーデータを頻繁に送信すると、時間帯によっては画像形成処理のため通信を遅延させ、ひいては画像形成処理そのものも遅延させたり、画像品質の低下を招いたりするおそれがある。
【0007】
このような問題に対して、例えば、メカコン制御部にてセンサーデータの平均値や最大値、最小値を求めて、当該平均値等のみをコントローラー制御部へ送信すれば、センサーデータの送信量を抑制することができる。従って、他の用途の通信を遅滞させることなく円滑に行わせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2006-30258号公報
【文献】特開2018-92593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、平均値を求めるために使用するセンサーデータの標本数を多くすると、突発的な変化が発生したときの標本値が通常の標本値に埋没して分かり難くなるおそれがある。また、最大値、最小値はある程度長さの期間ごとに求めるため、センサーデータの突発的な変化が発生したときのデータ値を診断サーバーへ送信することはできるものの、当該変化がいつ発生したか、および発生した回数が何回であるかについては十分な情報を伝えることができない。このため、平均値等を用いる場合には、故障診断や寿命予測の精度を高めるのにどうしても限界がある。
【0010】
しかしながら、すべてのセンサーデータをメカコン制御部からコントローラー制御部へ送信しようとすると、上述のような画像形成時の動作指示やモードなど、他の用途の通信を阻害する恐れがある。
【0011】
本開示は、上述のような問題に鑑みて為されたものであって、画像形成装置における他の処理を阻害することなく、故障診断や寿命予測の精度を向上させることができる画像形成装置および画像形成装置診断システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本開示の一形態に係る画像形成装置は、記録シート上に画像を形成する画像形成処理を実行する画像形成部と、前記画像形成部を制御並びに監視するメカコン制御部と、前記メカコン制御部に対して前記画像形成処理の実行を指示するコントローラー制御部と、前記画像形成部の状態を検出する少なくとも一つのセンサーと、前記メカコン制御部と前記コントローラー制御部との間に設けられた、前記画像形成処理の実行に係るデータを前記画像形成処理の実行中に伝送するための第1の伝送路及び故障診断または寿命予測に係る診断データを前記画像形成処理の実行中に伝送するための前記第1の伝送路とは異なる第2の伝送路と、を備え、前記メカコン制御部は、前記画像形成処理の実行中に前記センサーにて検出した前記画像形成部の状態を表すセンサーデータから前記診断データを生成する生成手段と、前記診断データを、前記画像形成処理の実行中に前記第2の伝送路を介して、前記コントローラー制御部へ送信する送信手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、前記コントローラー制御部は、前記メカコン制御部から受信した前記診断データを故障診断または寿命予測を行う診断サーバーへ送信してもよい。
【0014】
前記コントローラー制御部が高負荷状態であるか否か判定する負荷判定手段を備え、前記コントローラー制御部は、前記負荷判定手段の判定結果が肯定的である場合に、前記メカコン制御部へ前記診断データの送信を一時的に停止させる指示を送信する停止指示手段を備え、前記メカコン制御部は、前記診断データの送信を一時停止させる指示を受信した場合、前記診断データの送信を再開させる指示を受信するまで、前記送信手段による前記診断データの送信を停止させてもよい。
【0015】
前記送信手段による診断データの送信の要否を判定する判定手段と、前記判定手段による判定結果が否定的である場合に、前記送信手段による診断データの送信を禁止させる禁止手段と、を備えてもよい。
【0016】
前記画像形成部の状態を検出する複数のセンサーを備え、前記診断データは、前記複数のセンサーのいずれかから得るセンサーデータを圧縮しない状態で含んでもよい。また、前記診断データは、前記複数のセンサーのいずれかから得るセンサーデータを圧縮した状態で含んでもよい。
【0017】
前記診断データは、前記センサーデータと、前記センサーデータを圧縮したデータとを含み、前記センサーデータ並びに圧縮データには、どのセンサーデータを圧縮したデータであるかを識別するための識別データが付与されていてもよい。
【0018】
前記センサーデータを圧縮するか否かの指示を受け付ける受付手段を備え、前記診断データは、前記受付手段にて前記センサーデータを圧縮するとの指示を受け付けた場合には、前記センサーデータを圧縮した状態で含み、前記受付手段にて前記センサーデータを圧縮しないとの指示を受け付けた場合には、前記センサーデータを圧縮しない状態で含んでもよい。
【0019】
前記メカコン制御部は、前記センサーデータを圧縮する圧縮手段と、前記センサーデータと、当該センサーデータを圧縮した圧縮データとを関連付ける識別データを、前記センサーデータと前記圧縮データとに付与する関連付け手段と、を備え、前記メカコン制御部の前記送信手段は、前記第2の伝送路を介して、前記コントローラー制御部へ前記圧縮データを送信し、前記第2の伝送路を介して、前記診断データとして、前記センサーデータを前記コントローラー制御部へ送信してもよい。
【0020】
前記圧縮手段は、前記圧縮データとして、所定個数のセンサーデータの平均値、最大値および最小値の少なくとも1つを算出してもよい。
【0021】
前記画像形成部は、画像形成に用いる記録シートを収容する給紙トレイと、前記給紙トレイから記録シートを搬出する給紙ローラーと、記録シートが、前記給紙ローラーよりも下流側の第1の位置から、前記第1の位置よりも下流側の第2の位置まで、搬送されるのに要する用紙到達時間を検出する用紙到達時間検出手段と、を備え、前記診断データは、前記用紙到達時間であってもよい。
【0022】
前記画像形成部は、電子写真方式によってトナー像を形成するための感光体と、感光体の表面状態を検出する表面状態センサーと、を備え、前記診断データは、前記表面状態センサーの出力値であってもよい。
【0023】
前記画像形成部は、画像形成に用いる回転部材と、前記回転部材を回転駆動する駆動モーターと、前記駆動モーターのトルクを指標するセンサーデータを検出するトルクセンサーと、を備え、前記診断データは、前記トルクセンサーが出力するセンサーデータであってもよい。
【0024】
前記画像形成部は、タンデム方式の画像形成部であって、1次転写されたトナー像を2次転写位置まで搬送する中間転写ベルトと、中間転写ベルトが担持するトナーの付着量を検出する付着量センサーと、を備え、前記診断データは、前記付着量であってもよい。
【0025】
前記画像形成部は、トナー像を記録シートに静電転写する転写手段と、前記静電転写するための転写電圧を検出する電圧検出手段と、を備え、前記診断データは、前記転写電圧であってもよい。
【0026】
また、本開示の一形態に係る画像形成相違診断システムは、本開示の一形態に係る画像形成装置と、前記画像形成装置から診断データを受信して、前記画像形成装置の故障診断又は寿命予測を行う診断サーバーと、を備えることを特徴とする。
【0027】
また、本開示の別の一形態に係る画像形成相違診断システムは、画像形成装置と、前記画像形成装置から診断データを受信して、前記画像形成装置の故障診断又は寿命予測を行う診断サーバーと、診断親サーバーと、を備え、前記画像形成装置は、記録シート上に画像を形成する画像形成処理を実行する画像形成部と、前記画像形成部を制御並びに監視するメカコン制御部と、前記メカコン制御部に対して前記画像形成処理の実行を指示するコントローラー制御部と、前記画像形成部の状態を検出する少なくとも一つのセンサーと、前記メカコン制御部と前記コントローラー制御部との間に設けられた、前記画像形成処理の実行に係るデータを伝送するための第1の伝送路及び故障診断または寿命予測に係る診断データを伝送するための前記第1の伝送路とは異なる第2の伝送路と、を備え、前記メカコン制御部は、前記センサーにて検出した前記画像形成部の状態を表すセンサーデータから前記診断データを生成する生成手段と、前記診断データを、前記第2の伝送路を介して、前記コントローラー制御部へ送信する送信手段と、前記センサーデータを圧縮する圧縮手段と、前記センサーデータと、当該センサーデータを圧縮した圧縮データとを関連付ける識別データを、前記センサーデータと前記圧縮データとに付与する第1の関連付け手段と、を備え、前記メカコン制御部の前記送信手段は、前記第2の伝送路を介して、前記コントローラー制御部へ前記圧縮データを送信し、前記第2の伝送路を介して、前記診断データとして、前記センサーデータを前記コントローラー制御部へ送信し、前記コントローラー制御部は、さらに前記圧縮データを前記診断親サーバーへ送信し、前記診断サーバーは、前記センサーデータを参照して、診断結果を生成する診断手段と、前記診断結果を生成するために参照した前記センサーデータに付与されている前記識別データを、当該診断結果に付与する第2の関連付け手段と、前記識別データを付与された前記診断結果を前記診断親サーバーへ送信する結果送信手段と、を備え、前記診断親サーバーは、前記識別データを付与された圧縮データを前記画像形成装置から受信する圧縮データ受信手段と、前記識別データを付与された診断結果を前記診断サーバーから受信する診断結果受信手段と、前記識別データによって関連付けられた前記圧縮データと前記診断結果とを参照して、前記診断結果を解析する解析手段と、前記解析結果を前記診断サーバーへ送信する解析結果送信手段と、を備え、前記診断サーバーは前記診断親サーバーから前記解析結果を受信すると、当該解析結果に応じて診断方法を更新することを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
このようにすれば、メカコン制御部が、画像形成処理を実行に係るデータを伝送するための第1の伝送路ではなく、診断データを伝送するための第2の伝送路を介して、診断データをコントローラー制御部に送信するため、画像形成処理の実行を阻害することなく、診断データの送信を行うことができる。これによって、診断サーバーへ診断データを送信する頻度を向上させ、診断サーバーでの故障診断および寿命診断の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本開示の第1の実施の形態に係る画像形成装置診断システムの主要な構成を示す図である。
【
図3】画像形成装置100における記録シートの搬送経路を説明する図である。
【
図4】メカコン制御部200並びにコントローラー制御部201の主要な構成を示すブロック図である。
【
図5】表面状態センサー431の構成と作像部における配置を示す図である。
【
図6】トナーカートリッジ601とサブホッパー603の構成を示す図である。
【
図7】メカコン制御部200の動作を説明するフローチャートである。
【
図8】用紙到達時間Tの受信日時と値とを例示する表である。
【
図9】メカコン制御部200の診断データを送信する処理の詳細を説明するフローチャートである。
【
図10】メカコン制御部200の診断データ送信通常状態と診断データ送信一時停止状態との間の状態遷移を説明する状態遷移図である。
【
図11】コントローラー制御部201の動作を説明するフローチャートである。
【
図12】画像形成装置の実行中のジョブとコントローラー制御部201の負荷状態の判定結果とを例示する表である。
【
図13】第2の実施の形態に係るメカコン制御部200の動作を説明するフローチャートである。
【
図14】第3の実施の形態に係るメカコン制御部200の動作を説明するフローチャートである。
【
図15】(a)は、用紙到達時間Tと平均値とを例示する表であり、(b)は、診断サーバー101の蓄積データを例示する表である。
【
図16】(a)は、記録シートの滑りが発生した場合の計数枚数カウント、用紙到達時間Tおよび平均値を例示する表であり、(b)記録シートの滑りが発生していない場合の計数枚数カウント、用紙到達時間Tおよび平均値を例示する表である。
【
図17】第4の実施の形態に係るメカコン制御部200の動作を説明するフローチャートである。
【
図18】(a)は、用紙到達時間Tと平均値とを例示する表であり、(b)は、診断データを例示する表であり、(c)は、診断サーバー101の蓄積データを例示する表である。
【
図19】第5の実施の形態に係る画像形成装置診断システム1の主要なシステム構成を示す図である。
【
図20】(a)は、第5の実施の形態に係るメカコン制御部200の動作を説明するフローチャートであり、(b)は、メカコン制御部200とコントローラー制御部201との間の通信負荷との主要な構成を示すブロック図である。
【
図21】(a)は、用紙到達時間Tと平均値とを例示する表であり、(b)は、診断サーバーへ送信する診断データである用紙到達時間Tを例示する表であり、(c)は、診断サーバーへ送信する診断データである平均値を例示する表であり、(d)は、診断サーバー101の蓄積データを例示する表である。
【
図22】(a)は、診断サーバー101から診断親サーバー2201への送信データを例示する表であり、(b)は、診断親サーバーの蓄積データを例示する表である。
【
図23】第10の実施の形態に係るメカコン制御部200の動作を説明するフローチャートである。
【
図24】(a)は、用紙到達時間Tと最大値とを例示する表であり、(b)は、診断サーバー101へ送信する診断データである最大値を例示する表であり、(c)は、診断サーバー101の蓄積データを例示する表である。
【
図25】(a)は、用紙到達時間Tと最小値とを例示する表であり、(b)は、診断サーバー101へ送信する診断データである最小値を例示する表であり、(c)は、診断サーバー101の蓄積データを例示する表である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本開示に係る画像形成装置および画像形成装置診断システムの実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
[1]第1の実施の形態
第1の実施の形態に係る画像形成装置診断システムについて説明する。
(1-1)画像形成装置診断システムの構成
まず、画像形成装置診断システムの構成について説明する。
【0031】
図1に示すように、画像形成装置診断システム1は、複数の画像形成装置100、診断サーバー兼画像形成装置管理サーバー(以下、単に「診断サーバー」という。)101およびパーソナルコンピューター(PC)102を通信ネットワーク110にて接続したものである。通信ネットワーク110は、LAN(Local Area Network)であってもよいし、LANとインターネットとの両方で構成されていてもよい。
【0032】
画像形成装置100は、所謂タンデム方式のカラー複合機(MFP: Multi-Function Peripheral)であって、様々なセンサーを備えており、これらのセンサーの検出値(センサーデータ)を通信ネットワーク110経由で診断サーバー101へ送信する。診断サーバー101は、受信したセンサーデータを蓄積して、画像形成装置100の故障個所を特定する故障診断や部品ごとの寿命予測を行う。センサーデータを解析し、解析結果を故障診断や寿命予測を行うためのアルゴリズムにフィードバックすれば、診断制度や予測精度を向上させることができる。この解析は、診断サーバー101が自動的に行ってもよいし、人が行ってもよい。
PC102は画像形成装置100に印刷ジョブを送信して、画像形成処理を実行させる。
(1-2)画像形成装置100の構成
次に、画像形成装置100の構成について説明する。
【0033】
図2に示すように、画像形成装置100は、画像読み取り部210、本体部220および給紙部230を備えており、また、これらの動作を制御するためにメカコン制御部200とコントローラー制御部201とを備えている。なお、本体部220と給紙部230とを合わせて画像形成部という。画像読み取り部210は、シートスルー方式で原稿を読み取る場合には、自動原稿搬送装置(ADF: Automatic Document Feeder)212を用いて、原稿台トレイ211に載置された原稿束から原稿を1枚ずつ送り出して読み取り、画像データを生成する。読み取った原稿は、排紙トレイ213上に排出される。
【0034】
コントローラー制御部201は通信ネットワーク110を経由してパーソナルコンピューター102から印刷ジョブを受け付けて、当該印刷ジョブの実行をメカコン制御部200に指示する。コントローラー制御部201は、画像読み取り部210が生成した画像データを用いてメカコン制御部200に対して給紙部230に記録シートを供給させ本体部220に画像形成処理を実行させるよう指示することもできる。また、コントローラー制御部201は、メカコン制御部から診断データ(本体部220および給紙部230に設けられた各種センサーの検出値(センサーデータ)、および/または、これを加工したデータ)を受信して診断サーバー101に送信する。
【0035】
メカコン制御部200は、コントローラー制御部201からの指示を受け付けると、本体部220および給紙部230を制御して、画像形成処理を実行させる。メカコン制御部200は、また、センサーデータを取得して、コントローラー制御部201へ送信する。センサーデータは、コントローラー制御部201からの指示とは異なる伝送路を介してコントローラー制御部201へ送信される。
【0036】
なお、本実施の形態においては、本体部220が所謂タンデム方式のカラープリンターである場合を例にとって説明するが、他の方式のカラープリンターであってもよいし、モノクロプリンターであってもよい。
【0037】
給紙部230は、本体部220が画像形成処理を実行する際に、画像形成装置100のユーザーが印刷ジョブ、または操作パネル202で指定した記録シートを供給する。本実施の形態において、給紙部230は、記録シート束を収容した給紙トレイを2段備えているが、1段であってもよいし、3段以上でもよい。
【0038】
本体部220には、トナーカートリッジ扉カバー222と前カバー223とが設けられている。トナーカートリッジ扉カバー222を開くと、YMCK各色のトナーカートリッジを着脱することができる。前カバー223を開くと電源スイッチにアクセスすることができる。トナーカートリッジ扉カバー222と前カバー223は、後述するように、カバーの開閉状態を検出するセンサーがそれぞれ配設されている。
(1-3)コントローラー制御部201の構成
次に、コントローラー制御部201の構成について説明する。
【0039】
図4に示すように、コントローラー制御部201は、CPU(Central Processing Unit)411、ROM(Read Only Memory)412およびRAM(Random Access Memory)413等を備えており、CPU411はリセットされると、ROM413からブートプログラムを読み出して起動し、RAM413を作業用記憶領域として、HDD(Hard Disk Drive)414から読み出したOS(Operating System)やアプリケーション・プログラムを実行する。
【0040】
また、コントローラー制御部201は、LANインターフェイス419、画像メモリ416、DIP(Digital Image Processing)部415、UART(Universal Asynchronous Receiver / Transmitter)417、418を備えている。
【0041】
LANインターフェイス419は、コントローラー制御部201が、通信ネットワーク110を経由して診断サーバー101やPC102や他の装置と通信するための処理を実行する。画像メモリ416は、画像読み取り部210が生成した画像データや、PC102等の装置から受信した画像データを格納する記憶装置である。メカコン制御部200は、画像メモリ416に格納されている画像データを読み出すことができる。DIP部415は、画像メモリ416に格納されている画像データに対して画像処理を施す。当該画像処理は、例えば、ビットマップ形式以外の形式の画像データをビットマップ形式の画像データに変換するビットマップ展開処理などである。
【0042】
UART417は、パラレルのデジタル信号をシリアル信号に変換してシリアル伝送路420に送信する。例えば、UART417は、CPU411から受け取った画像形成処理の実行に係るコマンドをシリアル信号に変換してシリアル伝送路420に送信することにより、メカコン制御部200に画像形成処理の実行を指示する。また、UART417は、シリアル伝送路420から受信したシリアル信号をパラレルのデジタル信号に変換する。例えば、シリアル伝送路420から紙詰まりや扉の開閉といった情報のシリアル信号を受信して変換することにより、メカコン制御部200から紙詰まりや扉の開閉といった情報を取得する。
【0043】
UART418は、シリアル伝送路421から受信したシリアル信号をパラレルのデジタル信号に変換する。例えば、シリアル伝送路421から診断データのシリアル信号を受信して変換することにより、メカコン制御部200から診断データを取得する。また、UART418は、パラレルのデジタル信号をシリアル信号に変換してシリアル伝送路421に送信する。例えば、UART418は、CPU411から受け取った診断データの送信の一時停止や送信再開を指示するコマンドをシリアル信号に変換してシリアル伝送路420に送信することにより、メカコン制御部200に診断データの送信の一時停止や送信再開を指示する。
【0044】
コントローラー制御部201は、アプリケーション・プログラムを実行することによって、コントローラー制御部201は、PC102から印刷ジョブを受け付けて、当該印刷ジョブに係る印刷データを画像メモリ416に格納して、DIP部415によって当該印刷データに画像処理を施したり、画像読み取り部210が生成した画像データに画像処理を施したりすることができる。
【0045】
また、コントローラー制御部201は、操作パネル202を制御して、画像形成装置100のユーザーに対して情報を提示したり、当該ユーザーの操作入力を受け付けたりする。
(1-4)メカコン制御部200の構成
次に、メカコン制御部200の構成について説明する。
【0046】
図4に示すように、メカコン制御部200は、CPU401、ROM402、RAM403およびタイマー404等を備えており、CPU401はリセットされると、ROM403からブートプログラムを読み出して起動し、RAM403を作業用記憶領域として、ROM402から読み出した制御プログラムを実行する。CPU401はタイマー404を参照して現時刻を取得する。また、上述のように、コントローラー制御部201の画像メモリ416から画像データを読み出すことができる。
【0047】
また、メカコン制御部200は、UART405、406を備えている。
【0048】
UART405は、シリアル伝送路420から受信したシリアル信号をパラレルのデジタル信号に変換する。また、UART405は、パラレルのデジタル信号をシリアル信号に変換してシリアル伝送路420に送信する。
【0049】
UART406は、パラレルのデジタル信号をシリアル信号に変換してシリアル伝送路421に送信する。また、UART406は、シリアル伝送路421から受信したシリアル信号をパラレルのデジタル信号に変換する。
(1-5)コントローラー制御部201の動作
本実施の形態の画像形成装置は、コントローラー制御部の処理負荷が高いときは、診断サーバーへの診断データの送信を一時的に停止し、コントローラー制御部の処理負荷が通常のときに、診断サーバーへ診断データを送信する仕組みを有する。
【0050】
コントローラー制御部201は、電源投入時の初期設定処理、ジョブの受付処理、受け付けたジョブの実行指示など、従来の画像形成装置と同様の処理と並行して、コントローラー制御部201の処理負荷を監視し、高負荷状態であるか否かに応じて、診断データの送信を一時停止させる。
【0051】
コントローラー制御部201における診断サーバーへの診断データの送信を一時的に停止させる処理について、
図11を用いて説明する。
【0052】
コントローラー制御部201は、診断データの送信を一時停止している場合(S1101:YES)、現在の処理負荷を確認する(S1102)。
【0053】
現在の処理負荷が高負荷状態である場合(S1103:YES)、診断データの送信の一時停止を維持すると決定する(S1104)。
【0054】
他方、現在の処理負荷が高負荷状態でない場合(S1103:NO)、診断データの送信を再開すると決定し(S1105)、メカコン制御部200へ診断データの送信を再開させるコマンドを送信する(S1106)。
【0055】
コントローラー制御部201が診断データの送信を一時停止していない場合(S1101:NO)、現在の処理負荷を確認する(S1107)。
【0056】
現在の処理負荷が高負荷状態である場合(S1108:YES)、診断データの送信を一時停止すると決定し(S1109)、メカコン制御部200へ診断データの送信を一時停止させるコマンドを送信する(S1110)。
【0057】
現在の処理負荷が高負荷状態でない場合(S1108:NO)、診断データの送信を維持すると決定する(S1111)。
【0058】
ステップS1104、S1106、S1110、S1111の処理の後、所定時間(例えば、1000ミリ秒)待機し(S1112)、ステップS1101に戻り処理を繰り返す。
【0059】
ステップS1102、S1107におけるコントローラー制御部201の処理負荷が高負荷状態であるか否かの判定について、
図12を用いて説明する。コントローラー制御部201は、印刷ジョブ(プリントジョブ)が実行中でなく、かつ、画像読み取りジョブ(スキャンジョブ)も実行中でない場合、通常負荷である、すなわち、高負荷ではないと判定する。印刷ジョブが実行中であり、かつ、画像読み取りジョブが実行中でない場合、通常負荷である、すなわち、高負荷ではないと判定する。印刷ジョブが実行中でなく、かつ、画像読み取りジョブが実行中である場合、通常負荷である、すなわち、高負荷ではないと判定する。印刷ジョブが実行中であり、かつ、画像読み取りジョブが実行中である場合、高負荷であると判定する。理由は、コントローラー制御部201のDIP部415がプリントジョブでは受信したジョブデータをYMCKのデータに変換し、γ補正などの各種補正を含む画像処理を実行しつつ、スキャンジョブでは、読み取られたデータシェーディング補正などの各種補正を施して画像データを生成する処理を並行して行わなければならず、CPU411の処理負担が、他の場合よりも大幅に増えるからである。
【0060】
コントローラー制御部200の処理負荷が高い場合に、一時的に診断データに係る通信を停止し、処理負荷が通常に戻ってから診断データに係る通信を再開することで、画像形成装置100における他の処理の実行を阻害することなく、診断サーバー101へ診断データの送信を行うことができる。
(1-6)メカコン制御部200の動作
メカコン制御部は、電源投入時の初期化・設定読込、画像形成処理の実行制御など、従来の画像形成装置と同様の処理に加えて、診断データの作成・送信を行う。
【0061】
ここでは、診断データとして用紙到達時間Tを算出して送信する処理について説明する。
【0062】
用紙到達時間Tとは、画像形成時に記録シートがシート搬送経路上で所定の出発位置から所定の目的位置まで到達するのに要した時間である。
【0063】
例えば、1段目の給紙トレイに収容されている記録シートに画像形成処理を実行する場合には、
図3に示すように、1段目ピックアップローラー301aを用いて、1段目の給紙トレイに収容されている記録シート束の最上位の記録シートを送り出し、1段目捌きローラー303aを用いて下位の記録シートの重送を防止しながら、1段目給紙ローラー302aを用いて最上位の記録シートを搬送経路へ供給する。
【0064】
1段目給紙センサー331aは、1段目給紙ローラー302aが供給した記録シートの先端を検出すると、出力信号をオフからオンに切り替える。これによって、メカコン制御部200は、1段目給紙センサー331aが記録シートを検出したタイミングT1aを検出する。
【0065】
その後、記録シートは不図示の搬送ガイドによって、タイミングセンサー333の検出位置まで導かれる。タイミングセンサー333は、記録シートの先端を検出すると、出力信号をオフからオンに切り替える。これによって、タイミングセンサー333が記録シートを検出したタイミングT2bを検出すると、メカコン制御部200は、タイミングT1aからタイミングT2bまでの用紙到達時間Tを算出し、この算出値をセンサーデータとして診断サーバー101へ送信する。
【0066】
この場合におけるメカコン制御部200の処理を詳述すると、
図7に示すように、メカコン制御部200は、記録シートを給紙する際には(S701:YES)、指定された紙種を収容した給紙トレイに対応する給紙モーター321の駆動を開始するとともに(S702)、タイマー404を参照し、駆動開始時刻T0として現在時刻を取得する(S703)。
【0067】
その後、タイマー404を参照して、現在時刻T1を取得し(S704)、駆動開始時刻からの経過時間(T1-T0)が所定の閾値#1よりも大きい場合には(S705:YES)、記録シートの先端が給紙センサー331に到達せずに、紙詰まりが発生したと考えられるので、コントローラー制御部201に対して紙詰まりの発生を通知する(S712)。
【0068】
紙詰まりの発生を通知されると、コントローラー制御部201は、その旨を操作パネル202に表示して画像形成装置100のユーザーに通知する。メカコン制御部200は、紙詰まりの発生を診断サーバー101にも通知してもよい。
【0069】
駆動開始時刻からの経過時間(T1-T0)が所定の閾値#1よりも大きくなる前に(S705:NO)、給紙センサー331が記録シートの先端を検出したら(S706:YES)、現時刻(給紙センサー331によって記録シートの先端を検出した時刻)T1を保持したまま次の処理に移る。
【0070】
すなわち、タイマー404を参照し、現時刻T2を取得する(S707)。給紙センサー331によって記録シートの先端を検出してからの経過時間(T2-T1)を算出して、当該経過時間(T2-T1)が所定の閾値#2よりも大きい場合には(S708:YES)、1段目の給紙トレイから給紙した記録シートの先端がタイミングセンサー333に到達することなく、または2段目の給紙トレイから給紙した記録シートの先端が2段目縦搬送センサー332に到達することなく、紙詰まりが発生したと考えられるので、コントローラー制御部201に対して紙詰まりの発生を通知する(S712)。
【0071】
この場合も上記の場合(S706:YES)と同様に、紙詰まりの発生を通知されたコントローラー制御部201は、その旨を操作パネル202に表示して画像形成装置100のユーザーに通知する。メカコン制御部200は、紙詰まりの発生を診断サーバー101にも通知してもよい。
【0072】
給紙センサー331によって記録シートの先端を検出してからの経過時間(T2-T1)が所定の閾値#2よりも大きくなる前に(S708:NO)、タイミングセンサー333または2段目縦搬送センサー332によって記録シートの先端を検出したら(S709:YES)、現時刻(タイミングセンサー333または2段目縦搬送センサー332によって記録シートの先端を検出した時刻)T2から時刻T1を減算して用紙到達時間Tを算出する(S710)。メカコン制御部200は、当該用紙到達時間Tを診断データとしてコントローラー制御部201へ送信する(S711)。この場合は、画像形成処理の実行に係る指示等の伝送に用いられる伝送路420ではなく、診断データの伝送に専用に用いられる伝送路421を介してコントローラー制御部201へ診断データを送信する。これにより、画像形成処理等の画像形成装置における他の処理の実行を阻害することなく、診断データをコントローラー制御部201へ送信することができる。そして、コントローラー制御部201は、受信した診断データを診断サーバー101へ送信する。
【0073】
その後、ステップS701へ進んで、上記の処理を繰り返す。
【0074】
ここで、用紙到達時間T等の診断データをコントローラー制御部201へ送信する処理(S711)について、さらに
図9、10を用いて説明する。
【0075】
メカコン制御部200は、診断データの送信を一時停止している診断データ送信一時停止状態と、診断データの送信を通常通り行う診断データ送信通常状態の2つの状態の間で遷移する。
図10に示すように、メカコン制御部200は、初期状態(電源投入時)は、診断データ送信通常状態であり、コントローラー制御部201から診断データの送信を一時停止させるコマンドを受信することにより、診断データ送信一時停止状態へ遷移する。そして、メカコン制御部200は、診断データ送信一時停止状態のとき、コントローラー制御部201から診断データの送信を再開させるコマンドを受信することにより、診断データ送信通常状態へ遷移する。
【0076】
現在の状態が診断データ送信一時停止状態である場合には(S901:YES)、RAM403に送信対象の診断データを一時保存する(S906)。
【0077】
現在の状態が診断データ送信一時停止状態でない場合には(S901:NO)、RAM403に一時保存の診断データが記憶されているかを確認する(S902)。
【0078】
RAM403に一時保存の診断データが記憶されている場合(S902:YES)、RAM403に記憶されている一時保存の診断データを、伝送路421を介してコントローラー制御部201へ送信し(S903)、一時保存の診断データをRAM403から削除する(S904)。
【0079】
RAM403に一時保存の診断データが記憶されていない場合(S902:NO)、または、一時保存の診断データの削除後、送信対象の診断データを、伝送路421を介してコントローラー制御部201へ送信する(S905)。
(1-7)診断データとして用紙到達時間Tを計算することについて
ピックアップローラー301、給紙ローラー302または捌きローラー303が劣化したり、これらのローラーに紙粉が付着したりすると、これらのローラーと記録シートとの間で滑りが発生して、用紙到達時間Tが延長する。この用紙到達時間Tを診断サーバー110に通知する際に、従来はメカコン制御部200とコントローラー制御部201との間の通信負荷を抑制するために、例えば、用紙到達時間Tを50回算出するたびに50回分の用紙到達時間Tの平均値を求めて診断サーバー101へ送信している。
【0080】
このため、ローラーと記録シートとの間の滑りの発生頻度が低い場合には、滑りによる用紙到達時間Tが延長しても、その平均値があまり変動しないため、診断サーバー101でローラーの劣化等を検出することができない。
【0081】
また、例えば、用紙到達時間Tを50回算出するたびに50回分の用紙到達時間Tの最大値を求めて診断サーバー101へ送信する場合には、50回分の平均値を送信する場合と同様に通信負荷を抑制することができるものの、50回のうちの1回目で滑りが発生した場合には、診断サーバーによるローラーの劣化の検出が遅れてしまうという問題もある。
【0082】
また、劣化したローラーの交換頻度を適正化するために、滑りの発生頻度がある程度以上になるのを待ちたい場合には、最大値のみを通知するのでは、滑りの発生頻度を把握することができないので、不適当である。
【0083】
これに対して、本実施の形態では、診断データの伝送に専用に用いられる伝送路421を介してコントローラー制御部201へ用紙到達時間Tを通知するので、画像形成処理等の画像形成装置における他の処理の実行を阻害することなく、用紙到達時間Tを算出するたびに通知を行うことができる。
【0084】
従って、画像形成装置100毎に個々の用紙到達時間Tを診断サーバーに通知すれば、過剰な平均化によって用紙到達時間Tの最大値が埋没したり、最大値のみを通知する場合に発生タイミングや発生頻度が不明になったりすることなく、診断サーバー101に記録シートの滑りを確実かつ即時に検出させて、対応させることができる。
【0085】
例えば、
図8に示す表では、画像形成装置#1の用紙到達時間Tが2018年5月10日10時0分3秒には270ミリ秒であるのに対して、他のタイミングでは概ね250ミリ秒程度に留まっている。例えば、用紙到達時間Tが270ミリ秒となるのが1回だけで、他の49回は250ミリ秒である場合、50回分の平均値は(270+250×49)/50=251ミリ秒である。
【0086】
記録シートの滑りを検出するための用紙到達時間Tの閾値が260ミリ秒である場合、251ミリ秒は当該閾値よりも小さいので、診断サーバー101は記録シートの滑りを検出することができない。一方、本実施の形態においては、平均値を算出することなく、すべての用紙到達時間Tを診断サーバー101へ通知し、かつ、2018年5月10日10時0分3秒における用紙到達時間Tである270ミリ秒は当該閾値よりも大きいので、診断サーバー101は記録シートの滑りを検出することができる。
【0087】
また、例えば、2018年5月10日10時0分3秒における用紙到達時間Tが270ミリ秒となって、閾値を超えたのを契機として、診断サーバー101が、画像形成装置100に画像形成処理を停止させれば、引き続く画像形成処理において、記録シートの滑りによって紙詰まりが発生するのを防止することができる。従来技術のように、例えば50回分の、用紙到達時間Tの最大値を決定してから、当該最大値を診断サーバー101に通知するのでは、記録シートの滑りに起因する紙詰まりを確実に防止することができない。
【0088】
そして、診断データの伝送に専用に用いられる伝送路421を介してコントローラー制御部201へ用紙到達時間Tを通知するので、画像形成処理等の画像形成装置における他の処理の実行を阻害することなく、円滑に画像形成処理を実行することができる。
【0089】
なお、メカコン制御部200とコントローラー制御部201とはUARTに代えて、共有メモリを用いて画像形成処理のための通信を行ってもよい。
【0090】
また、メカコン制御部200は、診断サーバー101による故障診断や寿命予測の精度が許す範囲内で、複数個の用紙到達時間Tをまとめて送信してもよい。診断サーバー101自体の故障やメンテナンスが原因となって、用紙到達時間Tを通知することができない場合には、通知が可能になるまでメカコン制御部200またはコントローラー制御部201にて用紙到達時間Tを保持しておき、通知が可能になったら保持している用紙到達時間Tをまとめて診断サーバー101に通知してもよい。
(1-8)他の診断データの例
他の診断データとして、以下のような診断データを例示することができる。
(1-8-1)感光体ドラム311の累積回転数
メカコン制御部200は、診断データとして感光体ドラム311の累積回転数を診断サーバー101へ送信してもよい。
【0091】
感光体ドラム311は、帯電、露光によって静電潜像を形成する感光体層を保護層で被覆した構成を備えており、保護層が摩耗すると、保護層の下に設けられた感光体層が摩耗して、帯電ムラや露光ムラ、現像ムラが発生し、トナー像の画質が低下する恐れがある。
【0092】
保護層や感光体層の摩耗状態は、感光体ドラム311の累積回転数に相関するため、メカコン制御部200が診断データとして感光体ドラム311の累積回転数を診断サーバー101へ送信すれば、診断サーバー101は受信した累積回転数から感光体ドラム311の摩耗状態を推定し、寿命予測することができる。
【0093】
図5は、画像形成装置100の作像部の主要な構成を示す図であって、
図3に示すYMCK各色の感光体ドラム311Y、311M、311Cおよび311Kがまとめて感光体ドラム311と表記されている。
【0094】
図5に示すように、画像形成装置100は、画像形成時には、感光体ドラム311を矢印D方向に回転駆動しながら、帯電装置501が感光体ドラム311の外周面を均一に帯電させ、露光装置502が画像データに応じて変調されたレーザー光Lを、感光体ドラム311の外周面に照射することによって静電潜像を形成し、現像装置503が当該色のトナーを供給することによって静電潜像を顕像化してトナー像とし、1次転写ローラー504がトナー像を中間転写ベルト310の外周面上に静電転写する(1次転写)。
【0095】
メカコン制御部200は、YMCK各色の感光体ドラム311ごとに累積回転数を計数し、当該感光体ドラム311が所定の回転数だけ回転するたびに、当該感光体ドラム311の累積回転数を診断データとして、診断サーバー101へ送信する。
【0096】
メカコン制御部200は、LANインターフェイス400を用いて、コントローラー制御部201を経由することなく、YMCK各色の感光体ドラム311ごとに累積回転数を診断サーバー101へ送信するので、コントローラー制御部201との間の通信量を増大させることなく、累積回転数の送信頻度を高めて、診断サーバー101による故障診断や寿命予測の精度を向上させることができる。
【0097】
なお、感光体ドラム311の外周面上に所定のトナーパッチを形成し、上述の表面状態センサー431を用いて、当該トナーパッチにおける正反射光量を検出すれば、感光体ドラム311の外周面上に付着したトナー量を検出することができる。感光体ドラム311の外周面上に付着するトナー量は、感光体ドラム311の外周面の状態に応じて変動し得る。このため、メカコン制御部200が、トナーパッチにおける正反射光量を診断データとして診断サーバー101へ送信すれば、やはり診断サーバー101は感光体ドラム311の寿命を予測することができる。
(1-8-2)定着ヒーターの供給電圧
メカコン制御部200は、診断データとして定着ヒーターの供給電圧値を診断サーバー101へ送信してもよい。
【0098】
画像形成装置100は、定着ローラー312を昇温するための定着ヒーター(図示省略)に高圧電力を供給しており、この供給電圧は定着ヒーターの経時劣化に応じて変動する。このため、メカコン制御部200が、当該定着ヒーターへの供給電圧値を診断データとして診断サーバー101へ送信すれば、診断サーバーは当該定着ヒーターの故障診断や寿命予測を行うことができる。
(1-8-3)カートリッジモーターの回転量
メカコン制御部200は、診断データとしてカートリッジモーターの回転量を診断サーバー101へ送信してもよい。
【0099】
図6に示すように、トナーカートリッジ601内に収容されている現像剤は、カートリッジモーター437を駆動して、スパイラルバネ602を回転させることによって、矢印E方向に搬送され、サブホッパー603内に落下する。カートリッジモーター437は、例えば、ステッピングモーターであって、スパイラルバネ602の回転量を制御することによって、サブホッパー603内に落下させる現像剤量が調整される。サブホッパー603内に落下した現像剤は、サブホッパーモーター438が不図示のパドルを回転させることによって、現像装置503へ搬送される。なお、サブホッパー603内にはピエゾセンサー432が配設されており、サブホッパー603内の現像剤量を検出する。
【0100】
メカコン制御部200は、トナーカートリッジ扉カバーセンサー435の出力信号を参照して、トナーカートリッジ扉カバー222が開閉されたことを検出すると、トナーカートリッジ(TC: Toner Cartridge)セットセンサー434の出力信号を参照する。トナーカートリッジ(TC: Toner Cartridge)セットセンサー434の出力信号から、トナーカートリッジ601が装着されたことを検出すると、メカコン制御部200は、カートリッジモーター437を駆動して、現像剤の供給を開始する。
【0101】
トナーカートリッジ601にアクセスするために開閉すべきカバーが前カバー223である場合には、メカコン制御部200は、前カバー223の開閉状態を検出する前カバーセンサー436の出力信号を参照することによって同様の処理を行うことができる。
【0102】
また、現像装置503は、内部に現像剤を貯蔵するようになっており、貯蔵されている現像剤のトナー濃度を検出するために、TCR(Toner Carrier Ratio)センサー433が内蔵されている。TCRセンサー433としては、例えば、透磁率センサーを用いることができる。すなわち、現像剤を構成するトナーとキャリアとで透磁率が異なることに着目すれば、現像剤の透磁率を検出することによってトナー濃度を特定することができる。
【0103】
メカコン制御部200は、TCRセンサー433の出力信号を参照して、現像装置503内のトナー濃度が低下していること判明した場合にも、カートリッジモーター437を駆動して、トナーカートリッジ601から現像装置503に現像剤を補給する。
【0104】
このため、メカコン制御部200がカートリッジモーター327の回転量を診断データとして診断サーバー101へ送信すれば、診断サーバー101は、当該診断データを用いてトナーカートリッジ601内のトナー残量を知ることができるので、トナーカートリッジ601の寿命を予測することができる。
(1-8-4)感光体ドラム311の表面状態
メカコン制御部200は、診断データとして感光体ドラム311の表面状態を診断サーバー101へ送信すれば、診断サーバー101は感光体ドラム311の表面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給部材505の寿命を予測することができる。
【0105】
図5に示すクリーニング装置507は、1次転写後に中間転写ベルト310の外周面上に残留するトナーを、クリーニングブレード507aを用いて掻き取って廃棄する。このクリーニングの際に、感光体ドラム311とクリーニングブレード507aとの間の摩擦が大き過ぎると、当該摩擦力によってクリーニングブレード507aが捲れると残留トナーを掻き取り難くなる。
【0106】
そこで、当該摩擦力を軽減するために、潤滑剤供給部材505を用いて感光体ドラム311に潤滑剤を塗布する。しかしながら、潤滑剤供給部材505が経年劣化により消耗すると潤滑剤の塗布量が減少して、感光体ドラム311とクリーニングブレード507aとの間の摩擦力を十分軽減することができなくなる恐れがある。
【0107】
表面状態センサー431は、感光体ドラム311の回転方向における現像装置503から1次転写ローラーに至るまでの間において、感光体ドラム311の外周面に対向して配設された正反射型の表面状態センサーである。表面状態センサー431は、発光ダイオード(LED: Light Emitting Diode)からなる発光素子431aとホトトランジスタからなる受光素子431bとからなる。発光素子431aは感光体ドラム311の外周面に対して45°の入射角度でレーザー光を照射し、受光素子431bは、感光体ドラム311からの正反射光、すなわち、反射角度45°の反射光を受光する。
【0108】
感光体ドラム311の表面に潤滑剤が適正量存在する状態では、感光体ドラム311の表面は白濁状態であり、乱反射性を示すが、感光体表面上の潤滑剤の量が減少するに従って、感光体ドラム311の表面は鏡面に近くなり、感光体ドラム311の反射光には正反射光の成分が多くなる。
【0109】
従って、受光素子431bが受光する正反射光量は感光体ドラム311の外周面上の潤滑剤量に比例して変動する。表面状態センサー431の出力信号、言い換えると受光素子431bの出力信号はメカコン制御部200に入力される。メカコン制御部200が、表面状態センサー431の出力信号を参照して、診断データを生成して、診断サーバー101へ送信すると、診断サーバー101は当該診断データを参照して潤滑剤供給部材505の寿命予測を行うことができる。
(1-8-5)他の用紙到達時間T
用紙到達時間Tとしては、上述の用紙到達時間Tの他に以下のようなものを挙げることができる。
【0110】
例えば、2段目の給紙トレイに収容されている記録シートに画像形成処理を実行する場合には、2段目ピックアップローラー301bを用いて、2段目の給紙トレイに収容されている記録シート束の最上位の記録シートを送り出し、2段目捌きローラー303bを用いて下位の記録シートの重送を防止しながら、2段目給紙ローラー302bを用いて最上位の記録シートを搬送経路へ供給する。
【0111】
2段目給紙センサー331bは、2段目給紙ローラー302bが供給した記録シートの先端を検出すると、出力信号をオフからオンに切り替える。これによって、メカコン制御部200は、2段目給紙センサー331bが記録シートを検出したタイミングT1bを検出する。
【0112】
その後、記録シートは不図示の搬送ガイドによって、2段目縦搬送センサー332の検出位置まで導かれる。2段目縦搬送タイミングセンサー332は、記録シートの先端を検出すると、出力信号をオフからオンに切り替える。これによって、2段目縦搬送センサー332が記録シートを検出したタイミングT2bを検出すると、メカコン制御部200は、タイミングT1bからタイミングT2bまでの2段目用紙到達時間Tを算出し、この算出値をセンサーデータとして診断サーバー101へ送信する。
【0113】
なお、1段目ピックアップローラー301a、1段目給紙ローラー302aおよび1段目捌きローラー302aは、1段目給紙モーター321aによって回転駆動され、2段目ピックアップローラー301b、2段目給紙ローラー302bおよび2段目捌きローラー302bは、2段目給紙モーター321bによって回転駆動される。メカコン制御部200は、1段目給紙モーター321aおよび2段目給紙モーター321bを駆動制御する。
【0114】
画像形成装置100は、1段目給紙トレイおよび2段目給紙トレイの他にマルチ手差し給紙トレイからも記録シートを供給することができる。マルチ手差し給紙ユニットにセットされた記録シートについては、マルチ手差し給紙モーター323によって回転駆動されるマルチ手差し給紙ローラー305を用いて最上位の記録シートから1枚ずつ供給される。
【0115】
以上のようにして供給された記録シートは、更に以下のように搬送され、画像を形成される。
【0116】
タイミングモーター324は、記録シートの到達に先立って、タイミングローラー306を回転停止させており、タイミングセンサー332が記録シートの先端を検出してから所定の時間を経過した後、タイミングローラー306の回転駆動を開始する。このようにすれば、回転停止中のタイミングローラー306の搬送ニップに記録シートの先端を突き当てた状態で、当該記録シートを搬送し、ループを形成するので、記録シートのスキューを補正することができる。また、タイミングローラー306の回転を開始するタイミングを制御することによって、記録シート上の適切な位置にトナー像を転写することができる。
【0117】
作像部341は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の各色のトナー像を形成するための感光体ドラム311Y、311M、311Cおよび311Kを備えており、不図示の帯電装置、露光装置および現像装置を用いて、感光体ドラム311Y、311M、311Cおよび311Kの外周面上に順次YMCK各色のトナー像を形成する。
【0118】
YMCK各色のトナー像は、不図示の一次転写ローラーによって感光体ドラム311Y、311M、311Cおよび311Kの外周面上から中間転写ベルト310の外周面上で互いに重なり合ってカラートナー像を形成するように静電転写される。中間転写ベルト310は駆動ローラー308と従動ローラー309とに掛け回されており、メインモーター325が駆動ローラー308を回転駆動することによって矢印A方向に回転走行する。
【0119】
駆動ローラー308には中間転写ベルト310を挟んで二次転写ローラー307が圧接されており、これによって二次転写ニップが形成される。中間転写ベルト310がカラートナー像を搬送するのに合わせて、タイミングローラー306が記録シートを二次転写ニップへ搬送すると、二次転写ニップにおいてカラートナー像が記録シートに静電転写される。
【0120】
カラートナー像を静電転写された記録シートは、定着ローラー312によってカラートナー像を熱定着された後、排紙前ローラー313によって更に搬送される。シート搬送方向における排紙前ローラー313よりも下流側には、排紙センサー334が配設されており、記録シートの先端を検出する。この排紙センサー334による記録シートの先端の検出タイミングに応じて、反転経路切り替えソレノイド337が切り替え爪314の向きを切り替える。
【0121】
これによって、記録シートの搬送経路が排紙経路341と用紙反転経路342とのどちらかへ切り替えられる。特に、複数ページに亘って両面印刷を行う場合には、交互に、片面だけ印刷した記録シートを用紙反転経路342へ導いたり、両面とも印刷した記録シートを排紙経路341へ導いたりするために、排紙センサー334が記録シートの先端を検出するために、切り替え爪314の向きを切り替える。
【0122】
排紙経路341へ導かれた記録シートは、排紙モーター327が排紙ローラー315を回転駆動することによって装置外へ排出される。一方、用紙反転経路342へ導かれた記録シートは、反転モーター327が反転ローラー316を矢印B方向へ回転駆動することによって、更に用紙反転経路342へ引き込まれた後、反転モーター327が逆回転して反転ローラー316を矢印C方向へ回転駆動することによって、ADU(Automatic Duplex Unit)搬送ローラー317へ向かって送り出される。
【0123】
記録シートは、ADU搬送ローラー317、318、319および320によって用紙反転経路342に沿って、シート先端がタイミングローラー306に突き当たるまで搬送される。
【0124】
なお、ADU搬送ローラー317、318はADU搬送モーター329によって回転駆動され、ADU搬送ローラー319、320はADU搬送モーター330によって回転駆動される。また、ADU搬送センサー335、336が記録シートの先端を検出するタイミングを監視することによって、用紙反転経路342上での紙詰まり(ジャム)を検出することができる。
【0125】
用紙反転経路342を経由して二次転写ニップに進入した記録シートは、裏面にカラートナー像を静電転写され、当該カラートナー像を定着ローラー312によって熱定着された後、切り替え爪314によって排紙経路341へ導かれ、装置外に排出される。
【0126】
このような構成を有する画像形成装置100において、メカコン制御部200は、1段目給紙センサー331a、2段目給紙センサー331b、2段目縦搬送センサー332、タイミングセンサー333、排紙センサー334、ADU搬送センサー335、336といった用紙センサー331等の出力信号を参照して、当該用紙センサーの検出位置に、記録シートの先端や後端が到達したタイミングを検出する。
【0127】
これによって、1段目給紙モーター321a、2段目給紙モーター321b、2段目縦搬送モーター322、マルチ手差し給紙モーター323、タイミングモーター324、メインモーター325、定着モーター326、排紙モーター327、反転モーター328、ADU搬送モーター329、330といった搬送モーター321等および反転経路切り替えソレノイド337が駆動制御される。
【0128】
また、上記の到達タイミングの遅れから、メカコン制御部200は紙詰まりの発生を検出する。
【0129】
また、メカコン制御部200が、上記の到達タイミングを指標する用紙到達時間Tを算出して、診断サーバーへ送信すれば、診断サーバーは受信した用紙到達時間Tを参照することによって、タイミングローラー306、二次転写ローラー307、定着ローラー312、排紙前ローラー313、排紙ローラー315、反転ローラー316、ADU搬送ローラー317、318、319および320における摩耗などの劣化、紙粉の付着などの汚損を判定し、故障診断や寿命予測を行うことができる。
(1-8-6)搬送モーター321等のトルク値
メカコン制御部200は、搬送モーター321等の駆動電流を参照することによって各モーターのトルク値を算出し、診断データとして診断サーバーへ送信してもよい。
【0130】
搬送モーター321等のトルクは、1段目ピックアップローラー301a、1段目給紙ローラー302a、1段目捌きローラー303a、2段目ピックアップローラー301b、2段目給紙ローラー302b、2段目捌きローラー303b、2段目搬送ローラー304、マルチ手差し給紙ローラー305、タイミングローラー306、二次転写ローラー307、定着ローラー312、排紙前ローラー313、排紙ローラー315、反転ローラー316、ADU搬送ローラー317、318、319および320といった搬送ローラー301等の摩耗状態に応じて変動する。
【0131】
このため、メカコン制御部200が、搬送モーター321等のトルク値を診断データとして診断サーバー101へ送信すれば、診断サーバー101は搬送ローラー301等の寿命を予測することができる。
[2]第2の実施の形態
本実施の形態に係る画像形成装置診断システム1は、診断データの送信の許可・禁止が設定可能であり、診断データの送信が許可に設定されており、かつ画像形成装置100のユーザーが診断サーバー101による診断サービスを利用する旨の契約を行っている場合にのみ、診断サーバー101へ診断データを送信する。
【0132】
本実施の形態においては、操作パネル202を用いて、診断データの送信の「許可」又は「禁止」が設定される。この設定値は、例えば、コントローラー制御部201のHDD414に記憶され、電源投入時などにコントローラー制御部201からメカコン制御部200へ通知される。また、診断サービスの契約をしているかどうかの契約内容も、コントローラー制御部201のHDD414に記憶され、電源投入時などにコントローラー制御部201からメカコン制御部200へ通知される。
【0133】
図13に示すように、メカコン制御部200は、画像形成装置100の電源投入時にコントローラー制御部201から通知された設定値を参照して、診断データの送信が禁止されているかどうかを確認する(S1301)。
【0134】
診断データの送信が禁止されている場合には(S1302:YES)、メカコン制御部200からコントローラー制御部201を介した診断サーバー101への診断データの送信を禁止する(S1306)。
【0135】
診断データの送信が禁止されていない場合には(S1302:NO)、画像形成装置100の電源投入時にコントローラー制御部201から通知された契約内容を参照して、診断サービスの契約をしているかどうかを確認する(S1303)。診断サービスの契約をしていない場合には(S1304:NO)、メカコン制御部200からコントローラー制御部201を介した診断サーバー101への診断データの送信を禁止する(S1306)。
【0136】
一方、診断サービスの契約をしている場合には(S1304:YES)、メカコン制御部200からコントローラー制御部201を介した診断サーバー101への診断データの送信を許可する(S1305)。
【0137】
このようにすれば、メカコン制御部200が診断データを診断サーバー101に送信する必要がないにもかかわらず送信してしまい、メカコン制御部200やコントローラー制御部201や診断サーバー101の処理負荷が増大したり、通信ネットワーク110の負荷が増大したりするのを防止することができる。特に、診断サーバー101の配下の画像形成装置100の台数が多い場合には、診断サーバー101の処理負荷を低減するために有効である。
[3]第3の実施の形態
本実施の形態に係るメカコン制御部200は、診断サーバー101が記録シートの滑りを検出することができる範囲内で、用紙到達時間Tの平均値をとって診断サーバー101へ送信する。
【0138】
図14はメカコン制御部200の動作を説明するフローチャートであって、
図7のステップS709でYESであった場合の処理が示されている。
【0139】
図14に示すように、メカコン制御部200は、用紙到達時間Tを算出した後(S1401)、当該用紙到達時間Tの算出が、前回用紙到達時間Tの平均値を診断サーバー101へ送信した後、3回目の算出である場合には(S1402:YES)、当該3回分の用紙到達時間Tの平均値を算出して(S1403)、当該平均値を、コントローラー制御部201を介して、診断サーバー101へ送信する(S1404)。当該算出が3回目の算出でない場合には(S1402:NO)、当該用紙到達時間Tを後で平均値を算出するために記憶しておく(S1405)。ステップS1504、S1505の処理の後、
図7のステップS701へ進んで、前述のような処理を繰り返す。
【0140】
図15(a)に示すように、本実施の形態においては、計測枚数カウントが1から3までの3つの用紙到達時間Tの平均値を算出し、個々の用紙到達時間Tを診断サーバー101へ送信することなく、平均値のみを診断サーバー101へ送信する。また、
図15(b)に示すように、複数の画像形成装置100のいずれも平均値のみを診断サーバー101へ送信する。
【0141】
例えば、画像形成速度が1分間に60枚である画像形成装置100が、用紙到達時間Tをすべて診断サーバー101へ送信すると、用紙到達時間Tを毎秒送信することになる。また、画像形成装置100が複数台ある場合には、画像形成装置100の台数と同じ個数の用紙到達時間Tを毎秒送信することになって、通信ネットワーク110の負荷が大きくなってしまう。
【0142】
これに対して、用紙到達時間Tに代えて、その平均値を診断サーバー101へ送信することにすれば、診断データの送信回数を平均値の算出に用いる用紙到達時間Tの個数分の1に減少させることができる。この意味において、診断データのデータ量を圧縮することができる。
【0143】
また、平均値の算出に用いる用紙到達時間Tの個数を少なくすれば、記録シートの滑りを精度よく検出することができる。例えば、
図16(a)に示すように、記録シートの滑りが発生した場合の用紙到達時間Tが1個だけの場合であっても、平均値をとる用紙到達時間Tの個数が3個である場合には、
図16(b)に示すように、記録シートの滑りが発生しなかった場合の平均値261.3ミリ秒と比較して6.7ミリ秒だけ平均値が大きくなる。
【0144】
すなわち、記録シートの滑りが発生した場合の方が発生しなかった場合よりも平均値が必ず大きくなるように、平均値をとる用紙到達時間Tの個数を採用すれば、これら2種類の平均値の中間の値を閾値として、当該閾値と用紙到達時間Tの平均値とを比較することによって、記録シートの滑り、言い換えると給紙ローラー302等の劣化を精度よく検出することができる。
[4]第4の実施の形態
本実施の形態においては、メカコン制御部200からコントローラー制御部201を介して診断サーバー101へすべての用紙到達時間Tを送信するか、用紙到達時間Tの平均値のみを送信するかを選択させる。診断サーバー101へ送信する診断データの形式(以下、「診断データ形式」という。)は、例えば、操作パネル202を用いて、診断データ形式が、すべての用紙到達時間Tを送信する「全データ」であるか、それとも用紙到達時間Tの平均値のみを送信する「平均値」であるかが設定される。診断データ形式の設定値は、例えば、コントローラー制御部201のHDD414に記憶され、電源投入時などにコントローラー制御部201からメカコン制御部200へ通知される。
【0145】
図17はメカコン制御部200の動作を説明するフローチャートであって、
図7のステップS709でYESであった場合の処理が示されている。
【0146】
図17に示すように、メカコン制御部200は、用紙到達時間Tを算出した後(S1701)、診断サーバー101へ送信する診断データの形式が「全データ」である場合には(S1702:YES)、算出した用紙到達時間Tをそのままコントローラー制御部201を介して診断サーバー101へ送信する(S1703)。
【0147】
一方、診断データ形式が「平均値」である場合には、ステップS1701での用紙到達時間Tの算出が、前回用紙到達時間Tの平均値を診断サーバー101へ送信した後、3回目の算出である場合には(S1704:YES)、当該3回分の用紙到達時間Tの平均値を算出し(S1705)、当該平均値を、コントローラー制御部201を介して、診断サーバー101へ送信する(S1706)。当該算出が3回目の算出でない場合には(S1704:NO)、当該用紙到達時間Tを後で平均値を算出するために記憶しておく(S1707)。ステップS1706、S1707の処理の後、
図7のステップS701へ進んで、前述のような処理を繰り返す。
【0148】
図18(a)に例示するように、本実施の形態においては、診断データ形式が、「全データ」である場合には、用紙到達時間Tのみが算出され、その都度、診断サーバー101へ送信される。
【0149】
診断データ形式が「平均値」である場合には、引き続く3個の用紙到達時間Tの平均値が算出され、
図18(b)に例示するように、平均値のみが診断サーバー101へ送信され、用紙到達時間Tは送信されない。この場合には、
図18(c)に例示するように、診断サーバー101には、用紙到達時間Tの平均値が順に記憶される。
【0150】
このようにすれば、通信ネットワーク110の負荷に応じて、診断データ形式を選択することによって、画像形成装置100が診断サーバー101に診断データを通知することによって、通信ネットワーク110が過負荷になるのを防止することができる。
【0151】
また、通信ネットワーク110の負荷が低い場合や、通信ネットワーク110の通信容量が十分に大きい場合には、診断データ形式として「全データ」を選択することによって、診断サーバー101による故障診断や寿命予測の精度を向上させることができる。
【0152】
なお、画像形成装置100がどの診断データ形式で診断データを送信するかについては、個々の診断データに診断データ形式を表す情報を付与してもよいし、画像形成装置100に診断データ形式を設定する際に、併せて診断サーバー101に診断データ形式を通知してもよい。
【0153】
診断データ形式を切り替えると、診断サーバー101に蓄積される診断データに、用紙到達時間Tとその平均値とが混在してしまう可能性もあるが、診断データを受信するたびに、診断サーバー101は、当該診断データが用紙到達時間Tであるか、その平均値であるかを判別して記憶することができるので、故障診断や寿命予測の精度の際に両者を区別して取り扱うことができる。
[5]第5の実施の形態
本実施の形態においては、診断サーバー101により用紙到達時間Tを用いた故障診断や寿命予測を行うのに加えて、診断親サーバーにより平均値および診断サーバー101の診断結果を解析し、当該解析結果を診断親サーバーから診断サーバー101にフィードバックすることによって、故障診断や寿命予測のアルゴリズムを更新し、診断精度を向上させる。
【0154】
図19に示すように、本実施の形態に係る画像形成装置診断システム1は、画像形成装置100、診断サーバー101およびPC102をLAN2202に接続した社内システムを複数備えており、LAN2202はルーター2203を用いてインターネット2204に接続されている。インターネット2204には診断親サーバー2201が接続されており、各診断サーバー101とインターネット2204等を介して通信する。
【0155】
図20(a)はメカコン制御部200の動作を説明するフローチャートであって、
図7のステップS709でYESであった場合の処理が示されている。
【0156】
図20(a)に示すように、メカコン制御部200は、用紙到達時間Tを算出する(S2001)。
図21(a)は、メカコン制御部200が算出した用紙到達時間Tを例示する表である。その後、メカコン制御部200は用紙到達時間Tを、コントローラー制御部201を介して、診断サーバー101へ送信する(S2002)。
図21(b)は、メカコン制御部200が診断サーバー101へ送信する用紙到達時間Tを例示する。
【0157】
この場合において、
図20(b)に示すように、メカコン制御部200はUART406を用いてコントローラー制御部201へ用紙到達時間Tを送信する。コントローラー制御部201は、UART418を用いて当該用紙到達時間Tを受信すると、LAN2202を経由して、診断サーバー101へ送信される。診断サーバー101は、当該用紙到達時間Tを
図21(d)に例示するように蓄積し、蓄積した用紙到達時間Tを用いて故障診断や寿命予測を行い、LAN2202並びにインターネット2204を経由して、診断結果を診断親サーバー2201へ送信する。
【0158】
次に、最後に用紙到達時間Tの平均値を診断親サーバー2201へ送信してから用紙到達時間Tを算出した回数を参照して、用紙到達時間Tを算出した回数が所定の回数、例えば、100回目に達していない場合は(S2003:NO)、算出した用紙到達時間Tを記憶する(S2006)。用紙到達時間Tの算出回数が100回に達した場合は(S2003:YES)、100回分の用紙到達時間Tの平均値を算出する(S2004)。
【0159】
図21(a)には、用紙到達時間Tの平均値が例示されている。メカコン制御部200は、当該平均値を、コントローラー制御部201を介して、診断親サーバー2201へ送信する(S2005)。
図21(c)は、メカコン制御部200が、コントローラー制御部201を介して、診断親サーバー2201へ送信する平均値を例示する。
【0160】
この場合において、
図21(b)に示すように、メカコン制御部200はUART406を用いてコントローラー制御部201へ平均値を送信する。コントローラー制御部201は、UART418を用いて当該平均値を受信すると、LANインターフェイス419を用いて、LAN2202並びにインターネット2204を経由して、診断親サーバー2201へ当該平均値を送信する。診断親サーバー2201は受信した平均値を蓄積する。
【0161】
なお、用紙到達時間T、当該用紙到達時間Tを用いて算出された平均値、および当該用紙到達時間Tを用いた診断結果には、互いの対応関係を示す識別情報が付与されている。診断親サーバー2201は、画像形成装置100から受信した平均値を解析する際に、診断サーバー101から受信した診断結果の識別情報を参照して、当該平均値に対応する診断結果を参考にする。診断親サーバー2201による解析結果は、診断サーバー101による故障診断や寿命予測のアルゴリズムにフィードバックされ、診断精度の向上に用いられる。
【0162】
診断サーバー101は、例えば、1週間に1回、午前0時に故障診断や寿命予測を行い、診断結果を診断親サーバー2201へ送信する。
図22(a)は、診断サーバー101が診断親サーバー2201へ送信する診断結果として、寿命予測結果を例示する。診断親サーバー2201は、診断サーバー101から診断結果を受信すると、受信した診断結果を順次蓄積して解析する。
図22(b)は、診断親サーバー2201が蓄積したデータを例示する。
【0163】
図22(b)に例示するように、診断親サーバー2201は、画像形成装置100から受信した用紙到達時間Tの平均値と、診断サーバーから受信した診断結果とを順次蓄積する。この場合において、当該平均値と診断結果は、互いの関連を明示するためのID、用紙到達時間Tの算出回数である計数枚数カウント、および画像形成装置IP(Internet Protocol)アドレスが付与された状態で、診断親サーバー2201に送信される。診断親サーバー2201は平均値および診断結果に付与されたこれらの情報もまた蓄積する。
[6]第6の実施の形態
本実施の形態においては、画像形成装置100が診断サーバー101に用紙到達時間Tの最大値を送信する。
【0164】
図23は、本実施の形態に係るメカコン制御部200の動作を説明するフローチャートであって、
図7のステップS709でYESであった場合の処理が示されている。
【0165】
図23に示すように、メカコン制御部200は、用紙到達時間Tを算出すると(S2301)、当該用紙到達時間Tと用紙到達時間の最大値Tmaxとを比較して、新たに算出した用紙到達時間Tの方が大きければ(S2302:YES)、新たに算出した用紙到達時間Tを用紙到達時間の最大値Tmaxにする(S2303)。
【0166】
新たに算出した用紙到達時間Tが最大値Tmax以下である場合(S2302:NO)、並びにステップS2303の処理の後、当該用紙到達時間Tの算出が、最後に用紙到達時間の最大値Tmaxを診断サーバー101へ送信してから10回目の算出である場合には(S2304:YES)、用紙到達時間の最大値Tmaxを診断サーバー101へ送信し(S2305)、当該最大値Tmaxの値を0に初期化する(S2306)。
【0167】
用紙到達時間Tの算出が、最後に用紙到達時間の最大値Tmaxを診断サーバー101へ送信してから10回目の算出でない場合(S2304:NO)、並びにステップS2306の処理の後、ステップS701へ進んで上述のような処理を繰り返す。
【0168】
図24(a)の例では、記録シート10枚分の用紙到達時間Tを算出して、その最大値が262ミリ秒になっている。このため、メカコン制御部200は、10枚目の記録シートの用紙到達時間Tを確認した後、最大値262ミリ秒を診断サーバー101へ送信する。この場合において、
図24(b)に例示するように、記録シート10枚毎ごとの用紙到達時間Tの最大値であることを示す形式情報を付加してもよい。
【0169】
このようにすれば、すべての記録シートの用紙到達時間Tを送信する場合と、最大値だけを送信する場合とを診断サーバー101に識別させて、故障診断や寿命予測を行わせることができる。診断サーバー101は、
図24(c)に示すように、メカコン制御部200から受信した最大値を蓄積して、故障診断や寿命予測を行うために利用する。
【0170】
このようにすれば、メカコン制御部200からコントローラー制御部201を介して診断サーバー101へ平均値を送信する場合と比較して、突発的な発生データをそのまま診断サーバー101へ送信することができる。また、10枚毎の最大値のため、突発データが発生してから、最大値が診断サーバー101へ送信されるまでのタイムラグを最小限に留めることができる。
【0171】
なお、最大値に代えて最小値を用いてもよいし、最大値と最小値との両方をメカコン制御部200からコントローラー制御部201を介して診断サーバー101へ送信してもよい。いずれの場合においても、最大値を送信する場合と同様に、診断データのデータ量を圧縮することができる。
【0172】
例えば、最小値のみを送信する場合には、
図25(a)に示すように、まず相前後して画像形成に用いられる10枚の記録シートについて、それぞれ用紙到達時間を算出し、最小値を決定する。
図25(a)の例では、最小値は260ミリ秒である。
【0173】
メカコン制御部200からコントローラー制御部201を介して診断サーバー101へ最小値を送信する際には、
図25(b)に示すように、最小値260ミリ秒に加えて、形式情報として値1を送信する。形式情報は、記録シート10枚毎の用紙到達時間Tの最小値を送信する場合には値1をとり、すべての記録シートの用紙到達時間Tを送信する場合には値0をとる。このようにすれば、診断サーバー101に診断データの形式に応じて適切な故障診断や寿命予測を行わせることができる。
[7]変形例
以上、本開示を実施の形態に基づいて説明してきたが、本開示が上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例を実施することができる。
(7-1)上記実施の形態においては、主に診断データとして用紙到達時間Tを用いる場合を例にとって説明したが、本開示がこれに限定されないのは言うまでもなく、これに代えて、或いはこれに加えて以下のような診断データを用いてもよい。
【0174】
例えば、診断データとして感光体電流値を用いてもよい。感光体電流は、帯電させた感光体ドラム311を露光することにより電位が減衰する際に感光体ドラム311からアースに流れる電流である。感光体ドラムの膜厚dが小さくなると、それに伴って感光体ドラム311の静電容量Cが大きくなるので、感光体電流が大きくなる。
【0175】
この点に着目すれば、メカコン制御部200が感光体電流モニターを用いて感光体電流を測定して、診断サーバー101へ送信すれば、診断サーバー101は感光体の膜厚を推定することができるので、感光体ドラム311の寿命を予測することができる。感光体電流を測定する際には、感光体表面の複数個所(例えば、10点)において感光体電流を測定し、得られた測定値をすべて診断サーバー101に送信してもよい。
【0176】
また、診断データとして、定着モーター326の駆動電流値を用いてもよい。定着ローラー312の表面が劣化すると、定着ローラー312を回転駆動するためのトルクが大きくなるので、定着モーター326の駆動電流値が多くなる。このため、メカコン制御部200が定着モーター326の駆動電流値を診断サーバー101へ送信して、診断サーバー101にて定着ローラー312の故障診断や寿命予測を行ってもよい。
【0177】
定着モーター326の駆動電流値は、記録シートを通紙したり、定着モーター312の温度が変動したりすると変動するため、所定の条件(測定モード)の下で10回測定し、10回分すべての測定値を診断サーバー101へ送信するのが望ましい。
【0178】
また、メカコン制御部200は、画像安定化処理などの際に、所定のトナーパッチを中間転写ベルト310上に形成し、IDC(Image Density Control)センサーを用いて、当該トナーパッチの濃度を、例えば10点、測定して、10点の測定値すべてを診断サーバー101へ送信してもよい。診断サーバー101は、当該診断データを参照することによって、中間転写ベルトや1次転写ローラー、感光体ドラム等の故障診断や寿命予測を行うことができる。
【0179】
また、メカコン制御部200は、転写電圧モニターを用いて、2次転写電圧を所定の測定条件の下で、例えば10点測定し、当該10点の電圧値を診断サーバー101へ送信してもよい。診断サーバー101は、2次転写電圧を参照することによって、2次転写ローラー307や中間転写ベルト310の故障診断や寿命予測を行うことができる。
(7-2)上記実施の形態においては特に言及しなかったが、診断サーバー101や診断親サーバーは所謂コンピューターであってもよいし、クラウドサーバーであってもよく、いずれの場合においても本開示を適用すれば上記実施の形態において述べた効果を得ることができる。
(7-3)上記実施の形態においては、画像形成装置100がタンデム方式のカラー複合機である場合を例にとって説明したが、本開示がこれに限定されないのは言うまでもなく、タンデム方式以外の方式のカラー複合機であってもよいし、モノクロ複合機でもよい。また、プリンター装置、コピー装置あるいはファクシミリ装置といった単機能機であっても、本開示を適用することによって同様の効果を得ることができる。
(7-4)上記実施の形態においては、コントローラー制御部201から診断サーバー101へ診断データを送信して、診断サーバー101が受信した診断データに基づいて故障診断や寿命予測を行うものとしたが、本開示はこれには限らない。画像形成装置100が故障診断や寿命予測を行う診断機能を備え、画像形成装置100が画像形成装置100の故障診断や寿命予測を行うとしてもよい。この場合、診断データを診断サーバー101に送信する構成はなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0180】
本開示に係る画像形成装置および画像形成装置診断システムは、診断データの取得頻度を向上させることによって画像形成装置の診断精度を改善した装置として有用である。
【符号の説明】
【0181】
1…………画像形成装置診断システム
100……画像形成装置
101……診断サーバー
200……メカコン制御部
201……コントローラー制御部
2201…診断親サーバー