(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】画像形成方法
(51)【国際特許分類】
B41M 5/00 20060101AFI20231108BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20231108BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20231108BHJP
C09D 11/32 20140101ALI20231108BHJP
D06B 11/00 20060101ALI20231108BHJP
D06C 23/00 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B41M5/00 100
B41J2/01 501
B41J2/18
B41M5/00 114
B41M5/00 120
C09D11/32
D06B11/00 A
D06C23/00
(21)【出願番号】P 2019169691
(22)【出願日】2019-09-18
【審査請求日】2022-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仁藤 謙
(72)【発明者】
【氏名】中村 正樹
【審査官】高草木 綾音
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-202817(JP,A)
【文献】特開2018-111289(JP,A)
【文献】特開2018-043511(JP,A)
【文献】特開2010-155928(JP,A)
【文献】国際公開第2010/109867(WO,A1)
【文献】特開2005-281523(JP,A)
【文献】特開2019-155838(JP,A)
【文献】特開2011-132536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00-5/52
B41J 2/01
B41J 2/165-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク室と、前記インク室から供給されるインクを吐出するノズルと、前記ノズルごとに複数設けられ、かつ前記インク室から前記ノズルの吐出口へ供給されるインクの一部を取り出す排出流路とを有するインクジェットヘッドと、
前記排出流路で取り込んだインクを前記インク室に戻して、インクを循環させるインク循環部と
を有する画像形成装置を用いた画像形成方法であって、
前記インクジェットヘッドのノズルからインクを吐出する工程を含み、
前記インクの吐出周波数は、20kHz以上であり、
前記インクは、固体着色剤と、溶媒とを含み、
前記インクの25℃における粘度は、6~20cpである、
画像形成方法。
【請求項2】
前記工程では、インクを吐出して、布帛上に画像を形成する、
請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記固体着色剤の含有量は、前記インクに対して4~15質量%である、
請求項1または2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記溶媒は、水溶性有機溶剤をさらに含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記水溶性有機溶剤は、多価アルコール類を含む、
請求項4に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記多価アルコール類は、3価以上のアルコール類を含む、
請求項5に記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記多価アルコール類の含有量は、前記インクに対して25質量%以上である、
請求項5または6に記載の画像形成方法。
【請求項8】
前記インクは、疎水性高分子をさらに含む、
請求項1~7のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項9】
前記疎水性高分子は、前記高分子分散剤と前記水分散性樹脂とを含み、
前記疎水性高分子の総量は、前記インクに対して1~20質量%である、
請求項8に記載の画像形成方法。
【請求項10】
前記疎水性高分子は、ウレタン樹脂、ブタジエン系樹脂およびアクリル系樹脂からなる群より選ばれる水分散性樹脂を含む、
請求項8
または9に記載の画像形成方法。
【請求項11】
前記排出流路の下記式(1)で表されるインピーダンスZをZa、前記ノズルの下記式(1)で表されるインピーダンスZをZbとしたとき、5≦ΣZa/Zb≦7を満たす、
請求項1~
10のいずれか一項に記載の画像形成方法。
式(1):Z=(R
2+2πfM
2)
1/2
(式(1)において、
Zは、前記排出流路または前記ノズルのインピーダンスであり、
fは、吐出周波数(Hz)であり、
Rは、下記式(2)で表される、前記排出流路または前記ノズル内を流れる前記インクの粘性抵抗であり、
Mは、下記式(3)で表される、前記排出流路または前記ノズル内を流れる前記インクのイナータンスである)
式(2):R=8ηL(h+w
2)/(hw)
3
式(3):M=ρL/hw
(式(2)および(3)において、
ηは、前記インクの流体粘度(Pa・s)であり、
ρは、前記インクの密度(kg/m
3)であり、
Lは、前記排出流路または前記ノズルを直方体流路と仮定したときの、前記排出流路または前記ノズルの長さ(μm)であり、
hは、前記排出流路または前記ノズルを直方体流路と仮定したときの、前記排出流路または前記ノズルの高さ(μm)であり、
wは、前記排出流路または前記ノズルを直方体流路と仮定したときの、前記排出流路または前記ノズルの幅(μm)である)
【請求項12】
前記ノズルごとに設けられる少なくとも2つの前記排出流路の前記インピーダンスは、互いに異なっている、
請求項
11に記載の画像形成方法。
【請求項13】
前記インク循環部は、前記排出流路で取り込んだインクを前記インク室に戻して、インクを循環させる循環流路と、前記循環流路に配置されたフィルターユニットとを有する、
請求項1~
12のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項14】
前記インクの吐出周波数は、20~50kHzである、
請求項1~
13のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、繊布、不繊布などの布帛上に、文字、絵、図柄などの画像を形成する方法として、インクジェット記録装置を用いた画像形成方法(インクジェット捺染方法)が用いられている。
【0003】
インクジェット記録装置は、通常、圧力室と、当該圧力室内のインクを吐出するためのノズルとを有するインクジェットヘッドを有する。そして、インクジェットヘッドに設けられたノズルから、インクの液滴を吐出させて、被印刷物である布帛上に画像を形成する。
【0004】
このようなインクジェット捺染方法に用いられるインクとしては、色材として染料を含む染料インクや、顔料を含む顔料インクが知られている。中でも、複数の繊維種に対応できるなどの観点から、顔料や分散染料などの固体着色剤を溶媒に分散させた分散系インクを用いることが望まれる。しかしながら、分散系インクをインクジェットヘッドから吐出させる際、ノズル付近でインクが滞留しやすく、インクが乾燥して固形分が付着したり、固体着色剤の凝集や沈降を生じたりしやすく、ノズル詰まりを生じやすいという問題があった。
【0005】
これに対して、インクジェットヘッド内でインクを循環させるための排出流路を有するインクジェットヘッドを用いた画像形成方法、具体的には、圧力室と、当該圧力室内のインクを吐出させるノズルと、ノズルごとに1つの排出流路とを有するインクジェットヘッドを用いた画像形成方法が提案されている(例えば特許文献1および2)。
【0006】
また、インクジェットヘッドとしては、ノズルごとに複数の排出流路を有するインクジェットヘッドも提案されている(例えば特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-51049号公報
【文献】特開2019-14239号公報
【文献】特開2018-202817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、分散系インクを用いて画像形成を行う際に、特に特許文献3に示されるようなノズルごとに複数の排出流路を有するインクジェットヘッドを用いることで、ノズル付近でのインクの滞留を効果的に抑制できることを見出した。それにより、ノズル近傍でのインクの乾燥や固形着色剤の凝集および沈降を抑制でき、ノズル詰まりを生じにくくすることができる。
【0009】
しかしながら、ノズルごとに複数の排出流路を有するインクジェットヘッドでは、ノズルの吐出口近傍に複数の排出流路が設けられるため、排出流路を有しないインクジェットヘッドやノズルごとに1つしか排出流路を有しないインクジェットヘッドを用いた場合と比べて、ノズル近傍でのインクのメニスカス(液面)が不安定になりやすく、射出安定性が低下しやすいという問題があった。
【0010】
特に記録速度のさらなる高速化が求められていることから、インクジェットヘッドからインクを吐出させる際の吐出周波数も高くすることが望まれる。しかしながら、吐出周波数を高くすると、ノズル近傍でインクのメニスカスが一層不安定になりやすく、それにより射出安定性が一層低下しやすい。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、インクジェットヘッドのノズル近傍でのインクの滞留に起因するノズル詰まりを抑制しつつ、射出安定性の低下を抑制可能な画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以下の画像形成方法に関する。
本発明の画像形成方法は、インク室と、前記インク室から供給されるインクを吐出するノズルと、前記ノズルごとに複数設けられ、かつ前記インク室から前記ノズルの吐出口へ供給されるインクの一部を取り出す排出流路とを有するインクジェットヘッドと、前記排出流路で取り込んだインクを前記インク室に戻して、インクを循環させるインク循環部と
を有する画像形成装置を用いた画像形成方法であって、前記インクジェットヘッドのノズルからインクを吐出する工程を含み、前記インクは、固体着色剤と、溶媒とを含み、
前記インクの25℃における粘度は、6~20cpである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ノズル付近でのインクの滞留に起因するノズル詰まりを抑制しつつ、射出安定性を高めることができる画像形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の画像形成方法に用いられる画像形成装置の構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、
図1の画像形成装置におけるインクジェットヘッドの斜視図である。
【
図3】
図3は、インクジェットヘッドの分解斜視図である。
【
図4】
図4は、インクジェットヘッドの断面図である。
【
図7】
図7は、ヘッドチップのY方向に沿った部分断面図である。
【
図8】
図8は、ヘッドチップのX方向に沿った部分断面図である。
【
図9】
図9は、インク循環部の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
前述の通り、ノズルごとに複数の排出流路を有するインクジェットヘッドを用いた画像形成方法では、ノズルの吐出口近傍でインクのメニスカスが不安定になりやすく、高い吐出周波数で吐出させる際に射出不良を生じやすい。
【0016】
これに対して、本発明者らは、上記のようなインクジェットヘッドを用いて画像形成する際に、インクの粘度を適度に高くすること、具体的には25℃におけるインクの粘度が6~20cpの範囲内に調整することが有効であることを見出した。それにより、ノズルの吐出口近傍におけるインクのメニスカスを安定にすることができるため、(インクの滞留に起因するノズル詰まりを抑制しつつ)高い吐出周波数で吐出させても、射出安定性の低下を抑制することができる。
【0017】
すなわち、本発明の画像形成方法は、ノズルごとに複数の排出流路を有するインクジェットヘッドを用いた画像形成方法であって、粘度が適度に高いインクを用いるものである。まず、本発明の画像形成方法に用いられる画像形成装置およびインクの構成について、それぞれ説明する。
【0018】
1.画像形成装置
図1は、本発明の画像形成方法に用いられる画像形成装置200の構成を示す模式図である。
【0019】
図1に示されるように、画像形成装置200は、搬送装置210と、インクジェットヘッド100と、(インク循環部8を有する)インク供給装置220と、メインタンク230とを有する。
【0020】
搬送装置210は、インクジェットヘッド100に対して布帛(被印刷物)240を搬送するための装置である。搬送装置210は、例えばベルトコンベア211と、回転自在な送りローラー212とを有する。ベルトコンベア211は、回転自在なプーリー213a、213bと、これらのプーリー213a、213bに張設されている無端状のベルト214とを有する。送りローラー212は、布帛240の搬送方向Xにおける上流側のプーリー213aに対向する位置に、ベルト214と布帛240を挟持してベルト214上に布帛240を送り出すように配置されている。
【0021】
インクジェットヘッド100は、例えば画像を形成すべき布帛240の搬送方向Xを横切る方向に走査自在に配置されている。インクジェットヘッド100は、インク滴を、被印刷物である布帛240に吐出するための複数のノズルを有する。インクジェットヘッド1は、例えば、色の異なる複数種のインクがそれぞれ対応するノズルに供給されるように構成されている。インクジェットヘッド100の構成については後述する。
【0022】
インク供給装置220は、インクジェットヘッド100と一体的に配置されている。インク供給装置220は、インクの種類ごとに配置されている。例えば、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)およびK(ブラック)の4色のインクを用いる場合、4つのインク供給装置220が、インクジェットヘッド100に配置される。そして、インク供給装置220は、インクジェットヘッド100内からインクを取り出し、再度、インクジェットヘッド100内に導入して、インクを循環させるインク循環部8を有する(
図9参照)。
【0023】
インク供給装置220には、メインタンク230に接続された流路251および弁254を介して、メインタンク230内のインクが供給される。また、インク供給装置220は、流路252を介してインクジェットヘッド100の後述する共通インク室51(インク室)と連通し、各色のインクを、共通インク室51と連通する後述の第1インクポート53へ供給可能に接続されている。
【0024】
インクジェットヘッド100は、流路251から分岐するバイパス流路253によってメインタンク230にも接続されている。流路251とバイパス流路253との分岐点には、これら流路251およびバイパス流路253の一方または両方にインクの流路を切換、設定可能な弁254が配置されている。流路251、流路252、およびバイパス流路253は、例えばいずれも可撓性を有するチューブである。弁254は、例えば三方弁である。
【0025】
メインタンク230は、インクジェットヘッド100に供給されるべきインクを収容するためのタンクである。メインタンク230は、インクジェットヘッド100とは分離して配置されている。メインタンク230は、たとえば、不図示の撹拌装置を有する。メインタンク230は、画像形成装置200の画像形成性能や大きさなどに応じて適宜に決めることが可能である。例えば、画像形成装置200の画像形成速度が1~3m2/分である場合、メインタンク230の容量は、例えば1Lである。
【0026】
(インクジェットヘッド100)
図2は、
図1の画像形成装置200におけるインクジェットヘッド100の斜視図であり、
図3は、インクジェットヘッド100の分解斜視図である。
図4は、インクジェットヘッド100の断面図である。なお、
図3および4では、カバー部材9は省略している。
【0027】
本実施形態のインクジェットヘッド100は、
図3に示されるように、ヘッドチップ1と、配線基板2と、フレキシブル基板3と、駆動回路基板4と、マニホールド5と、筐体6と、キャップ受板7と、カバー部材9(
図2参照)とを有する。以下、これらの部材の積層方向をZ方向、Z方向と直交する面内において、後述する排出流路121が延設される方向と平行な方向をY方向、それと直交する方向をX方向とする。
【0028】
ヘッドチップ1は、ノズル基板11と、流路スペーサー基板12と、圧力室基板13とを有する。ヘッドチップ1の構成は、後で詳細に説明する。
【0029】
配線基板2は、略中央に開口部22を有する。配線基板2の一方の面には、開口部22に対応するようにマニホールド5が配置され、他方の面には、開口部22に対応するようにヘッドチップ1が配置される。つまり、配線基板2は、開口部22を介して、マニホールド5とヘッドチップ1とを連通させる。具体的には、配線基板2にヘッドチップ1が取り付けられた状態において、開口部22は、ヘッドチップ1の後述する圧力室131の入口と、第2共通排出流路135の出口とを露出させるようになっている。配線基板2の外縁部には、マニホールド5の下端部が固定されている。
【0030】
フレキシブル基板3は、駆動回路基板4と配線基板2の電極部とを電気的に接続している。それにより、駆動回路基板4からの信号を、フレキシブル基板3を介してヘッドチップ1内の隔壁136に設けられた駆動電極に印加できるようになっている。
【0031】
マニホールド5は、配線基板2を介してヘッドチップ1上に配置され、配線基板2を介してヘッドチップ1の圧力室131と連通している(
図4参照)。マニホールド5は、共通インク室51(インク室)を構成する中空状の本体部52と、インク流路を構成する第1~第4インクポート53~56と、排出液室57とを有する。
【0032】
共通インク室51は、その内部にインク中の異物を除去するためのフィルターFを有する。それにより、共通インク室51は、第1液室51aと、第2液室51bとに区画されている。共通インク室51は、圧力室131に導入するインクを貯留する。
【0033】
第1インクポート53は、第1液室51aと連通しており、共通インク室51へのインクの導入に用いられる。すなわち、第1インクポート53は、インクジェットヘッド100にインクを導入するためのインレットとして機能する。第1インクポート53の先端部には、第1ジョイント81aが外挿されている。
【0034】
第2インクポート54は、第1液室51aと連通しており、第1液室51a内の気泡を除去するために用いられる。第2インクポート54の先端部には、第2ジョイント81bが外挿されている。
【0035】
第3インクポート55は、第2液室51bと連通しており、第2液室51b内の気泡を除去するために用いられる。また、第3インクポート55の先端部には、第3ジョイント82aが外挿されている。
【0036】
第4インクポート56は、ヘッドチップ1の第2共通排出流路135に連通する排出用液室57と連通している。第4インクポート56を通してヘッドチップ1から排出されたインクは、第4インクポート56を通して、インクジェットヘッド100の外部に排出される。すなわち、第4インクポート56は、インクジェットヘッド100の外部にインクを排出するアウトレットとして機能する。
【0037】
排出液室57は、ヘッドチップ1の後述する第2共通排出流路135と第4インクポート56との間に配置されており、これらを接続している。それにより、第2共通排出流路135から排出されるインクを、第4インクポート56に導入できるようになっている。
【0038】
筐体6は、その内側にヘッドチップ1や配線基板2、フレキシブル基板3、マニホールド5などを収納可能に形成されている(
図3参照)。筐体6の底面は、開放されている。また、筐体6のX方向の両端部には、当該筐体6をプリンタ本体側に取り付けるための取付用孔68がそれぞれ形成されている。
【0039】
キャップ受板7は、略中央にノズル用開口部71を有している。そして、キャップ受板7は、ノズル基板11を、ノズル用開口部71を介して露出させつつ、筐体6の底面開口を塞ぐように取り付けられている。
【0040】
カバー部材9は、筐体6に取り付けられている(
図2参照)。
【0041】
(ヘッドチップ1について)
図5は、ヘッドチップ1の分解斜視図である。
図6は、圧力室基板の底面図である。
図7は、ヘッドチップ1のY方向に沿った部分断面図(
図6のA-A線に沿ったヘッドチップ1の部分断面図)である。
図8は、ヘッドチップ1のX方向に沿った部分断面図(
図6のB-B線に沿ったヘッドチップ1の部分断面図)である。
【0042】
図5に示されるように、ヘッドチップ1は、ノズル基板11と、流路スペーサー基板12と、圧力室基板13とを有する。
【0043】
ノズル基板11は、複数のノズル111を有する。ノズル111は、ノズル基板11の一方の面から他方の面にわたって貫通しており、流路スペーサー基板12から圧力室基板13にわたって形成された圧力室131と連通している。そして、ノズル111は、共通インク室51から圧力室131を介して供給されたインクを、吐出口から吐出する。
【0044】
流路スペーサー基板12は、複数の圧力室用連通孔120と、複数の排出流路121とを有する(
図7参照)。
【0045】
圧力室用連通孔120は、圧力室131を形成するための貫通孔であって、ノズル基板11のノズル111に対応する位置に設けられている。そして、圧力室用連通孔120は、圧力室基板13の圧力室用連通孔130と接続されて、圧力室131となる。
【0046】
排出流路121は、インク循環部8の後述する循環流路87を構成する流路であって、ノズル111ごとに複数設けられている。排出流路121は、圧力室131に連通していてもよいし、圧力室131とノズル111の吐出口との間に連通していていてもよい。本実施の形態では、排出流路121は、圧力室131と連通している。すなわち、排出流路121は、一端が圧力室用連通孔120と接続されており、他端が第1共通排出流路134と接続されている。それにより、排出流路121は、共通インク室51から(圧力室131を介して)ノズル111の吐出口へ供給されるインクの一部を取り出し、第1共通排出流路134に流入させることができる。ノズル111ごとに設けられる排出流路121の数は、2以上であれば特に制限されないが、本実施の形態では2つである。
【0047】
本実施の形態では、排出流路121は、第1排出流路122と、第2排出流路123とを有する(
図7参照)。
【0048】
第1排出流路122は、Y方向に沿って延設されている。第2排出流路123は、Z方向に沿って延設されている。そして、第1排出流路121と第2排出流路123との連結部は、インクの流れる向きを変える屈曲部121aとなっている。それにより、圧力波が個別インク排出路121の流路壁に当たりやすくなるので、排出流路121内で圧力波を効率的に吸収し、圧力波が第1共通排出流路134などに漏れにくくなる。
【0049】
圧力室基板13は、複数の圧力室用連通孔131aと、空気室132と、第1共通排出流路134と、第2共通排出流路135とを有する(
図5~7参照)。
【0050】
圧力室用連通孔131aは、圧力室131を形成する貫通孔であり、流路スペーサー基板12の圧力室用連通孔121に対応する位置に設けられている。そして、圧力室基板13と流路スペーサー基板12とが積層されることで、圧力室用連通孔131aと圧力室用連通孔121とが接続されて、圧力室131となる。圧力室131は、その体積変動によって、ノズル111から吐出されるインクに吐出圧力を付与する。
【0051】
空気室132は、圧力発生手段としての隔壁によって圧力室131と隔てられている。空気室132は、圧力室131とは異なり、共通インク室51には連通されておらず、空気室132内にインクが流れ込まないようになっている。また、空気室132は、ノズル111にも連通されていない(
図5および8参照)。
【0052】
隔壁(不図示)は、空気室132と圧力室131との間に配置されており、圧力発生手段として機能する。隔壁には、駆動電極(不図示)が設けられており、当該駆動電極に電圧が印加されると、隣接する圧力室131間の隔壁部分がシェアモード型の変位を繰り返すことで、圧力室131内のインクに圧力が加えられる。
【0053】
第1共通排出流路134は、循環流路87(後述の
図9参照)を構成するとともに、X方向に延設されている(
図5および8参照)。第1共通排出流路134は、隣り合う2つのノズル111のうち一方と連通する排出流路121および他方と連通する排出流路121とそれぞれ連通している(
図7参照)。
【0054】
第2共通排出流路135は、圧力室基板13のX方向の端部に、Z方向に沿って設けられている(
図5および8参照)。また、第2共通排出流路135の一方の端部は、第1共通排出流路134と連通し、他方の端部は、排出用液室57と連通している。それにより、第2共通排出流路135は、第1共通排出流路134から流れてきたインクを、排出用液室57に向かってヘッドチップ1の外部に排出できるようになっている。また、第2共通排出流路135は、圧力室131よりも大きな容積を有するように設けられている。それにより、インクの排出効率を高めることができる。
【0055】
このように構成されたインクジェットヘッド100では、互いに連通されたマニホールド5の共通インク室51と、圧力室基板13から流路スペーサー基板12にわたって設けられた圧力室131(圧力室用連通孔131aと圧力室用連通孔121)と、ノズル基板11のノズル111とが、吐出口へのインクの供給流路を構成する。
【0056】
また、互いに連通された流路スペーサー基板12の排出流路121、圧力室基板13の第1共通排出流路134および第2共通排出流路135は、共通インク室51から圧力室131を介してノズル111の吐出口へ供給されるインクの一部を取り出して(分岐させて)、一旦、インクジェットヘッド100の外部へ排出させた後、再度、共通インク室51に戻して循環させるインク循環部8(循環流路87)を構成する。
【0057】
【0058】
インク循環部8は、インクジェットヘッド100において、圧力室131から排出流路121へのインクの循環流を発生させる機構である。インク循環部8は、供給用サブタンク81と、循環用サブタンク82と、それらの間を連通する流路252、85および86と、流路85上に配置されたフィルターユニット90とを有する。
【0059】
供給用サブタンク81は、インクジェットヘッド100の共通インク室51に供給するためのインクが充填されており、流路252を介してインクジェットヘッド100の第1インクポート53と接続されている。なお、供給用サブタンク81は、流路251とポンプ89を介してメインタンク230と接続されており、メインタンク230からインクが供給できるようになっている。
【0060】
循環用サブタンク82は、インクジェットヘッド100の排出用液室57(
図4参照)から排出されたインクが充填されており、流路85を介してインクジェットヘッド100の第4インクポート56と接続されている。また、フィルターユニット90は、流路85上に配置されており、排出用液室57から排出されたインク中の異物を除去できるようになっている。
【0061】
供給用サブタンク81と循環用サブタンク82は、ヘッドチップ1のノズル面(以下、「位置基準面」ともいう)に対して、Z方向(重力方向)に異なる位置に設けられている。これによって、当該位置基準面と供給用サブタンク81の水頭差による圧力P1と、当該位置基準面と循環用サブタンク82との水頭差による圧力P2が生じている。
【0062】
供給用サブタンク81と循環用サブタンク82とは、流路86を介して接続されている。そして、ポンプ88によって加えられた圧力によって、循環用サブタンク82から供給用サブタンク81にインクを戻すことができる。
【0063】
すなわち、供給用サブタンク81、流路252、インクジェットヘッド100内の流路(共通インク室51、圧力室131、排出流路121、第1共通排出流路134、第2共通排出流路135、排出用液室57)、流路85、循環用サブタンク82、および流路86が、インク循環部8の循環流路87を構成する。
【0064】
また、各サブタンク内のインク充填量と、各サブタンクのZ方向(重力方向)の位置とを適宜変更することによって、圧力P1および圧力P2を調整することができる。そして、圧力P1および圧力P2の圧力差によって、適宜の循環流速で、インクジェットヘッド100内のインクを循環できる。これにより、ヘッドチップ1内に発生した気泡や異物をフィルターユニット90で除去しつつ、ノズル111の詰まりや、射出不良を抑制することができる。
【0065】
(インクジェットヘッド100の動作)
第1インクポート53から、共通インク室51の第1液室51aに、インクが導入される。導入されたインクは、フィルターFを介して第2液室51bを通り、圧力室131の入口に導入される。
【0066】
圧力室131に導入されたインクは、隔壁に設けられた駆動電極に電圧が印加されると、隔壁が変位して、圧力室131内のインクに圧力が加えられる。このような圧力の発生により、圧力室131内のインクは、ノズル111の先端(吐出口)から布帛240に向けて吐出される。
【0067】
そして、共通インク室51から圧力室131を介してノズル111の吐出口へ供給されるインクの一部は、圧力室131から分岐している2つの排出流路121からそれぞれ取り出され、インク循環部8内でそれぞれ循環される(
図9参照)。具体的には、2つの排出流路121から取り出されたインクは、それぞれ第1共通排出流路134へ集められ、第2共通排出流路135、排出液室57、および第4インクポート56を介してインクジェットヘッド100の外部へ排出される。その後、流路85の途中にあるフィルターユニット90を経由して、インクジェットヘッド100外に設置している供給用サブタンク81へ戻り、再度、流路251を通って第1インクポート53から導入され、共通インク室51に至る(
図9参照)。そして、共通インク室51に戻されたインクは、再び圧力室131へ供給される。
【0068】
このようなインクジェットヘッド100内におけるインクの循環は、ポンプ88を駆動させることによって、インクの吐出時だけでなく、非吐出時にも行われる。それにより、インクがノズル111の吐出口付近で滞留しにくいため、ノズル111の吐出口近傍でのインクの乾燥や固形着色剤の沈殿および凝集を生じにくくし、ノズル詰まりを抑制することができる。
【0069】
一方で、1つのノズル111あたりに複数の排出流路121を有する上記インクジェットヘッド100では、排出流路121を有しないインクジェットヘッドや、1つのノズル111あたりに排出流路121を1つしか有しないインクジェットヘッドよりも、ノズル111の吐出口付近の圧力が、排出流路121の影響により不安定になりやすい。その結果、高い吐出周波数でインクを吐出させる際に、ノズル111の吐出口のインクのメニスカスが従来よりも不安定になりやすく、射出不良を生じやすいという問題があった。このようなインクのメニスカスの不安定性は、インクの粘度が低いほど顕著であった。
【0070】
これに対して本発明者らは、上記のような1つのノズル111あたりに複数の排出流路121を有するインクジェットヘッド100を有する画像形成装置200を用いて画像形成する際は、まず、インクの粘度を適度に高くすること、具体的には25℃におけるインクの粘度が6~20cPの範囲内に調整することが有効であることを見出した。それにより、ノズル111の吐出口近傍におけるインクのメニスカスを安定化させることができるため、インクの滞留に起因するノズル詰まりを抑制しつつ、高い吐出周波数で吐出させたときの射出安定性の低下を抑制することができる。インクの構成については、後で詳細に説明する。
【0071】
さらに、排出流路121とノズル111との間、または、複数の排出流路121間で、インピーダンスを調整することで、ノズル111の吐出口近傍におけるインクのメニスカスをさらに安定化させることができる。
【0072】
すなわち、排出流路121の下記式(1)で表されるインピーダンスZをZa、ノズル111の下記式(1)で表されるインピーダンスZをZbとしたとき、5≦ΣZa/Zb≦7を満たすようにすることが好ましい。ただし、ΣZaは、ノズル111ごとに接続される複数の排出流路121のインピーダンスZaの和を示す。
式(1):Z=(R2+2πfM2)1/2
【0073】
式(1)のZは、排出流路121またはノズル111のインピーダンスを示し、fは、吐出周波数を示す。
【0074】
式(1)のRは、下記式(2)で表される、排出流路121またはノズル111内を流れるインクの粘性抵抗を示す。Mは、下記式(3)で表される、排出流路121またはノズル111内を流れるインクのイナータンスを示す。
式(2):R=8ηL(h+w2)/(hw)3
式(3):M=ρL/hw
【0075】
式(2)および(3)において、ηは、インクの粘度(Pa・s)である。ρは、インクの密度(kg/m3)である。
Lは、排出流路121またはノズル111を直方体流路と仮定したときの、排出流路12またはノズル111の長さ(μm)である。
hは、排出流路121またはノズル111を直方体流路と仮定したときの、排出流路12またはノズル111の高さ(μm)である。
wは、排出流路121またはノズル111を直方体流路と仮定したときの、排出流路12またはノズル111の幅(μm)である。
【0076】
インピーダンス比ΣZa/Zbが5以上であると、排出流路121の流路抵抗が適度に高いため、排出流路121にインクが流れすぎて、ノズル111にインクが流れなくなるのを抑制しやすい。一方、インピーダンス比ΣZa/Zbが7以下であると、排出流路121内の流路抵抗が高すぎないため、排出流路121にインクが全く流れなくなるのを抑制しうる。
【0077】
本実施の形態では、排出流路121は、第1排出流路122と第2排出流路123とが連結されたものであるため、排出流路121のインピーダンスは、第1排出流路122のインピーダンスと第2排出流路123のインピーダンスの和として求めることができる。
【0078】
図7では、例えば、第1排出流路122の長さL(
図7ではL
1~L
4)は、インクの流れ方向(Y方向)における長さを意味する。第1排出流路122を長さLの直方体流路としたとき、インクの流れ方向に直交する断面(XZ面と平行な断面)において、第1排出流路122の高さhは、Z方向の長さを意味し、幅wは、X方向の長さを意味する。
【0079】
第2排出流路123の長さLは、インクの流れ方向(Z方向)における長さを意味する。第2排出流路123を長さLの直方体流路としたとき、インクの流れ方向に直交する断面(XY面と平行な断面)において、第2排出流路123の高さhは、Y方向の長さを意味し、幅wは、X方向の長さを意味する。
【0080】
同様に、ノズル111の長さLは、インクの流れ方向(Z方向)における長さを意味する。ノズル111を長さLの直方体流路としたとき、インクの流れ方向に直交する断面(XY面と平行な断面)において、ノズル111の高さhは、Y方向の長さを意味し、幅wは、X方向の長さを意味する。
【0081】
また、1つのノズル111に接続される複数の排出流路121(本実施の形態では2つの排出流路121)のそれぞれのインピーダンスは、異なることが好ましい。このように、複数の排出流路121間のインピーダンスが異なっていると、ノズル111の吐出口近傍のインクの流れが適度に乱されやすく、撹拌効果が得られやすいため、ノズル111の吐出口付近におけるインクの滞留を一層抑制しうる。
【0082】
具体的には、複数の排出流路121のうちインピーダンスが最大となる排出流路121のインピーダンスZmaxと、インピーダンスが最小となる排出流路121のインピーダンスZminとの比(Zmax/Zmin)は、2~7であることが好ましい。Zmax/Zminが2以上であると、排出流れに差が生じやすく、ノズル111の吐出口近傍のインクの撹拌効果が効果的に高められやすい。Zmax/Zminが7以下であると、一部の排出流路121にインクを取り出せなくなるおそれがない。
【0083】
排出流路121のインピーダンスやインピーダンス比(ΣZa/Zb)は、インクの物性にもよるが、例えば排出流路121やノズル111の長さL(インクの流通方向の長さ)や流路断面積(高さhや幅w)により調整することができる。
【0084】
次に、本発明の画像形成方法に用いられるインク(インクジェットインク)の構成について説明する。
【0085】
2.インク
インクは、固体着色剤と、疎水性高分子と、水とを含む。そして、インクの25℃における粘度は、6~20cpの範囲に調整されている。
【0086】
インクの粘度が6cp以上であると、1つのノズル111あたりに複数の排出流路122を有するインクジェットヘッド100を用いて、高い吐出周波数で吐出させても、ノズル111の吐出口付近でのインクのメニスカスが不安定になりにくいため、射出安定性の低下を抑制できる。インクの粘度が20cp以下であると、インクの粘度が高すぎないため、ノズル詰まりを抑制できる。インクの粘度は、同様の観点から、7~15cpであることがより好ましい。
【0087】
インクの粘度は、E型粘度計により、25℃で測定することができる。回転数は、粘度に応じて設定されうるが、例えば10rpmまたは20rpmとしうる。
【0088】
インクの粘度は、インク組成、例えば固体着色剤の含有量や、疎水性高分子の含有量、溶剤組成などによりで調整することができる。インクの粘度を適度に高める観点では、固体着色剤の含有量を一定以上としたり、水溶性有機溶剤として、粘度が高いもの、例えばグリセリンなどの3価以上のアルコール類を含む多価アルコール類の含有量を一定以上としたり、疎水性高分子の含有量を一定以上としたりすることが好ましく、これらの二以上を組み合わせることがより好ましい。
【0089】
前述の通り、インクジェットインクは、固体着色剤と、疎水性高分子と、水とを含む。
【0090】
2-1.固体着色剤
固体着色剤は、特に制限されず、例えば固体の染料または顔料でありうる。
【0091】
(顔料)
顔料は、特に限定されないが、例えばカラーインデックスに記載される下記番号の有機顔料または無機顔料でありうる。
【0092】
赤またはマゼンタ顔料の例には、Pigment Red 3、5、19、22、31、38、43、48:1、48:2、48:3、48:4、48:5、49:1、53:1、57:1、57:2、58:4、63:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、88、104、108、112、122、123、144、146、149、166、168、169、170、177、178、179、184、185、208、216、226、257、Pigment Violet 3、19、23、29、30、37、50、88、Pigment Orange 13、16、20、36が含まれる。
【0093】
青またはシアン顔料の例には、Pigment Blue 1、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17-1、22、27、28、29、36、60が含まれる。
【0094】
緑顔料の例には、Pigment Green 7、26、36、50が含まれる。黄顔料の例には、Pigment Yellow 1、3、12、13、14、17、34、35、37、55、74、81、83、93、94,95、97、108、109、110、137、138、139、153、154、155、157、166、167、168、180、185、193が含まれる。
【0095】
黒顔料の例には、Pigment Black 7、28、26が含まれる。
【0096】
顔料の市販品の例には、クロモファインイエロー2080、5900、5930、AF-1300、2700L、クロモファインオレンジ3700L、6730、クロモファインスカーレット6750、クロモファインマゼンタ6880、6886、6891N、6790、6887、クロモファインバイオレット RE、クロモファインレッド6820、6830、クロモファインブルーHS-3、5187、5108、5197、5085N、SR-5020、5026、5050、4920、4927、4937、4824、4933GN-EP、4940、4973、5205、5208、5214、5221、5000P、クロモファイングリーン2GN、2GO、2G-550D、5310、5370、6830、クロモファインブラックA-1103、セイカファストエロー10GH、A-3、2035、2054、2200、2270、2300、2400(B)、2500、2600、ZAY-260、2700(B)、2770、セイカファストレッド8040、C405(F)、CA120、LR-116、1531B、8060R、1547、ZAW-262、1537B、GY、4R-4016、3820、3891、ZA-215、セイカファストカーミン6B1476T-7、1483LT、3840、3870、セイカファストボルドー10B-430、セイカライトローズR40、セイカライトバイオレットB800、7805、セイカファストマルーン460N、セイカファストオレンジ900、2900、セイカライトブルーC718、A612、シアニンブルー4933M、4933GN-EP、4940、4973(大日精化工業製); KET Yellow 401、402、403、404、405、406、416、424、KET Orange 501、KET Red 301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、336、337、338、346、KET Blue 101、102、103、104、105、106、111、118、124、KET Green 201(大日本インキ化学製);Colortex Yellow 301、314、315、316、P-624、314、U10GN、U3GN、UNN、UA-414、U263、Finecol Yellow T-13、T-05、Pigment Yellow1705、Colortex Orange 202、Colortex Red101、103、115、116、D3B、P-625、102、H-1024、105C、UFN、UCN、UBN、U3BN、URN、UGN、UG276、U456、U457、105C、USN、Colortex Maroon601、Colortex BrownB610N、Colortex Violet600、Pigment Red 122、ColortexBlue516、517、518、519、A818、P-908、510、Colortex Green402、403、Colortex Black 702、U905(山陽色素製);Lionol Yellow1405G、Lionol Blue FG7330、FG7350、FG7400G、FG7405G、ES、ESP-S(東洋インキ製)、Toner Magenta E02、Permanent RubinF6B、Toner Yellow HG、Permanent Yellow GG-02、Hostapeam BlueB2G(ヘキストインダストリ製);Novoperm P-HG、Hostaperm Pink E、Hostaperm Blue B2G(クラリアント製);カーボンブラック#2600、#2400、#2350、#2200、#1000、#990、#980、#970、#960、#950、#850、MCF88、#750、#650、MA600、MA7、MA8、MA11、MA100、MA100R、MA77、#52、#50、#47、#45、#45L、#40、#33、#32、#30、#25、#20、#10、#5、#44、CF9(三菱化学製)が含まれる。
【0097】
(染料)
染料は、固体の染料であれば特に限定されないが、例えば分散染料でありうる。
【0098】
分散染料の例には、
C.I.Disperse Yellow:3、4、5、7、9、13、23、24、30、33、34、42、44、49、50、51、54、56、58、60、63、64、66、68、71、74、76、79、82、83、85、86、88、90、91、93、98、99、100、104、108、114、116、118、119、122、124、126、135、140、141、149、160、162、163、164、165、179、180、182、183、184、186、192、198、199、202、204、210、211、215、216、218、224、227、231、232;
C.I.Disperse Orange:1、3、5、7、11、13、17、20、21、25、29、30、31、32、33、37、38、42、43、44、45、46、47、48、49、50、53、54、55、56、57、58、59、61、66、71、73、76、78、80、89、90、91、93、96、97、119、127、130、139、142;
C.I.Disperse Red:1、4、5、7、11、12、13、15、17、27、43、44、50、52、53、54、55、56、58、59、60、65、72、73、74、75、76、78、81、82、86、88、90、91、92、93、96、103、105、106、107、108、110、111、113、117、118、121、122、126、127、128、131、132、134、135、137、143、145、146、151、152、153、154、157、159、164、167、169、177、179、181、183、184、185、188、189、190、191、192、200、201、202、203、205、206、207、210、221、224、225、227、229、239、240、257、258、277、278、279、281、288、298、302、303、310、311、312、320、324、328、337、343;
C.I.Disperse Violet:1、4、8、23、26、27、28、31、33、35、36、38、40、43、46、48、50、51、52、56、57、59、61、63、69、77;
C.I.Disperse Green9;
C.I.Disperse Brown:1、2、4、9、13、19;
C.I.Disperse Blue:3、7、9、14、16、19、20、26、27、35、43、44、54、55、56、58、60、62、64、71、72、73、75、77、79、79:1、79:2、81、82、83、87、91、93、94、95、96、102、106、108、112、113、115、118、120、122、125、128、130、139、141、142、143、146、148、149、153、154、158、165、167、171、173、174、176、181、183、185、186、187、189、197、198、200、201、205、207、211、214、224、225、257、259、267、268、270、281、284、285、287、288、291、291:1、293、295、297、301、315、330、333、373;
C.I.Disperse Black1、3、10、24
が含まれる。
【0099】
これらの中でも、インクの構成成分に対して良好な分散性を有し、かつ耐候性に優れることから、顔料が好ましい。
【0100】
固体着色剤の含有量は、特に限定されないが、インクの粘度を上記範囲内に調整しやすく、かつ高濃度の画像を形成可能にする観点では、インクに対して4~15質量%であることが好ましい。固体着色剤の含有量が4質量%以上であると、インクの粘度を適度に高めうるだけでなく、高濃度の画像を形成しやすい。固体着色剤の含有量が15質量%以下であると、インクの粘度が高くなりすぎないため、ノズル詰まりなどを生じにくい。固体着色剤の含有量は、同様の観点から、インクに対して5~15質量%であることがより好ましく、6.5~12質量%であることがさらに好ましい。
【0101】
2-2.疎水性高分子
疎水性高分子は、水分散性高分子であり、高分子分散剤や水分散性樹脂(バインダ樹脂)などでありうる。
【0102】
(高分子分散剤)
高分子分散剤の種類は、特に制限されないが、その例には、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマル酸、フマル酸誘導体から選ばれた2種以上の単量体からなるブロック共重合体、ランダム共重合体およびこれらの塩、ポリオキシアルキレン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどが含まれる。
【0103】
高分子分散剤がカルボキシル基などの酸性基を有する場合、酸性基は、中和塩基で中和されていることが好ましい。中和塩基の例には、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリンなどの有機塩基が含まれる。
【0104】
(水分散性樹脂)
水分散性樹脂の例には、ウレタン系樹脂、ブタジエン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレンなどが含まれる。ブタジエン系樹脂の例には、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体が含まれる。アクリル系樹脂の例には、アクリル酸エステル共重合体、スチレン-アクリル共重合体、シリコン-アクリル共重合体、アクリル変性フッ素樹脂が含まれる。中でも、ウレタン系樹脂やスチレン-アクリル共重合体が好ましい。
【0105】
スチレン-アクリル共重合体の例には、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体が含まれる。(メタ)アクリル酸エステルの例には、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノールEO変性(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートが含まれる。
【0106】
ウレタン樹脂は、ポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させて得られる重合体である。ポリオールの例には、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(ジエチレンアジペート)、ポリ(プロピレンアジペート)、ポリ(テトラメチレンアジペート)、ポリ(ヘキサメチレンアジペート)、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)、シリコーンポリオールが含まれる。イソシアネートの例には、トリレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソサネート、水素化4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートが含まれる。
【0107】
水分散性樹脂のTgは、特に制限されないが、例えば-30~100℃、好ましくは-10~50℃、より好ましくは20~40℃でありうる。
【0108】
水分散性樹脂の酸価は、特に制限されないが、分散安定性を高める観点などから、44mgKOH/g以上であることが好ましく、60mgKOH/g以上であることがより好ましい。酸価の上限値は、例えば110mgKOH/gとしうる。酸価は、JIS K 0070に準じて測定することができる。
【0109】
水分散性樹脂の平均粒子径は、特に制限されないが、インクジェットヘッドのノズル詰まりを生じにくくする観点では、300nm以下であることが好ましく、130nm以下であることがより好ましい。水分散性樹脂の平均粒子径は、レーザ回折散乱式粒子径分布測定で測定することができる。
【0110】
疎水性高分子の含有量は、その種類に応じて適宜設定される。例えば、疎水性高分子が高分子分散剤である場合、高分子分散剤の含有量は、インクに対して例えば4質量%以下、好ましくは0.8~2質量%であることが好ましい。高分子分散剤が0.8質量%以上であると、顔料などの固体着色剤の分散性を十分に高めやすく、4質量%以下であると、粘度の過剰な上昇を抑制しやすい。
【0111】
疎水性高分子が水分散性樹脂(バインダ樹脂)である場合は、インクの粘度を上記範囲内に調整しやすくする観点などから、水分散性樹脂(バインダ樹脂)の含有量は、インクに対して1~15質量%であることが好ましい。水分散性樹脂の含有量が1質量%以上であると、インクの粘度を適度に高めやすいため、射出安定性をより高めうるだけでなく、得られる画像の布帛への密着性や耐擦過性も高めやすい。水分散性樹脂の含有量が15質量%以下であると、インクの粘度が高くなりすぎないため、ノズル詰まりなどを生じにくい。水分散性樹脂の含有量は、同様の観点から、インクに対して2~10質量%であることがより好ましい。
【0112】
疎水性高分子が高分子分散剤と水分散性樹脂の両方を含む場合、インクの粘度を上記範囲に調整しやすくする観点から、疎水性高分子の総量は、インクに対して1~20質量%であることが好ましく、2~15質量%であることが好ましい。
【0113】
2-3.水溶性有機溶剤
水溶性有機溶剤は、水と相溶するものであれば特に制限されないが、その例には、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの2価のアルコール類、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどの3価以上のアルコール類);多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル);1価アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール);アミン類(例えば、エタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、モルホリン、N-エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン);アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド);複素環類(例えば、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、2-オキサゾリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジン)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド);およびスルホン類(例えば、スルホラン)が含まれる。
【0114】
中でも、インクの粘度を適度に高めやすくする観点では、水溶性有機溶剤は、多価アルコール類を含むことが好ましい。多価アルコール類は、インクの粘度を高めやすくする観点から、3価以上のアルコール類を含むことが好ましく、グリセリンを含むことがより好ましい。
【0115】
多価アルコール類の含有量は、適度に多いことが好ましい。具体的には、多価アルコール類の含有量が、インクに対して25~50質量%であることが好ましい。多価アルコール類の含有量が一定以上であると、インクの粘度を高めやすく、一定以下であると、インクの粘度が高くなりすぎることによるノズル詰まりを抑制しやすい。同様の観点から、多価アルコール類の含有量は、インクに対して30~45質量%であることがより好ましい。
【0116】
2-3.他の成分
インクジェットインクは、必要に応じて他の成分をさらに含みうる。他の成分の例には、溶剤、界面活性剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤、pH調整剤などが含まれる。
【0117】
(界面活性剤)
水系インクジェットインクは、その表面張力を制御するため、界面活性剤をさらに含んでいてもよい。
【0118】
界面活性剤の例には、アニオン系、カチオン系、両性、ノニオン系のものが使用される。アニオン系の界面活性剤の例には、脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩が含まれる。カチオン系の界面活性剤の例には、アミン塩、テトラアルキル4級アンモニウム塩、トリアルキル4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルキノリニウム塩が含まれる。ノニオン系の界面活性剤の例には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリプロピレングリコールのエチレンオキサイド付加物、アセチレングリコール、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物が含まれる。
【0119】
(防腐剤、防黴剤)
防腐剤または防黴剤の例には、芳香族ハロゲン化合物(例えば、PreventolCMK)、メチレンジチオシアナート、含ハロゲン窒素硫黄化合物、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン(例えば、PROXELGXL)等が含まれる。
【0120】
(pH調整剤)
pH調整剤の例には、尿素、水酸化ナトリウムなどが含まれる。
【0121】
次に、
図1を参照しながら、本発明の画像形成方法について説明する。
【0122】
3.画像形成方法
本発明の画像形成方法は、上記インクを、
図1の画像形成装置100のインクジェットヘッド1から吐出させて、布帛140上に画像を形成するものである。
【0123】
具体的には、本発明の画像形成方法は、1)インクジェットヘッド1からインクを吐出させて、布帛140上にインクの液滴を付与する工程(インク付与工程)と、2)布帛140に付与したインクを乾燥させる工程(乾燥工程)とを含む。
【0124】
1)の工程(インク付与工程)について
インク付与工程では、少なくとも前述のインクを、
図1の画像形成装置200のインクジェットヘッド100から吐出させて、布帛140上にインクを付与する。
【0125】
布帛240を構成する繊維素材は、特に制限はないが、綿(セルロース繊維)、絹、羊毛などの天然繊維や、ナイロン、レーヨン、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル樹脂などの化学繊維、またはこれらを組み合わせた複合繊維の織布、編物、不織布などでありうる。
【0126】
インクジェットヘッド100による吐出周波数は、高速プリントを可能にする観点では、20~50kHzであることが好ましい。
【0127】
本発明では、前述の通り、
図1の画像形成装置200のインクジェットヘッド100からインクを吐出させる。インクジェットヘッド100内では、上記インク循環部8の循環流路87、すなわち、ノズル111ごとに複数設けられた排出流路121中にインクを常時、流通および循環させるため、ノズル111の吐出口近傍のインクの滞留やそれに起因するノズル詰まりを抑制できる。また、インクの粘度が適度に高められた前述のインクを用いる。それにより、ノズル111ごとに複数設けられた排出流路121を有するインクジェットヘッド100を用いたときに生じやすい、ノズル111の吐出口付近のインクのメニスカスの不安定性に起因する射出安定性の低下を抑制できる。
【0128】
インクが付与される布帛240の表面は、加熱されていてもよい。それにより、インクを付与した後の乾燥速度を高めることができ、画像の滲みなどを抑制しやすくしうる。インクが付与されるときの布帛240の表面温度は、35~70℃であることが好ましい。
【0129】
加熱方法は、特に制限されないが、布帛240の、インクが付与される面とは反対側の面から加熱することができる。加熱手段は、特に制限はなく、赤外線ヒーター、電熱線、UVランプ、ガス、熱風ドライヤーなどのいずれであってもよい。中でも、電熱線、赤外線ヒーターによる加温が、安全性やエネルギー効率の点から好ましい。
【0130】
2)の工程(乾燥工程)について
乾燥工程では、布帛240に付与したインクを乾燥させて、インク中の水分や溶剤成分を除去させる。
【0131】
乾燥方法は、特に制限されず、ヒーター、温風乾燥機、加熱ローラーなどを用いた方法でありうる。中でも、温風乾燥機とヒーターを用いて、布帛140の両面を加熱して乾燥させることが好ましい。
【0132】
ヒーターなどの加熱手段を用いて乾燥させる場合、加熱手段を、インクジェットヘッド100の、布帛240の搬送方向の下流側に配置して乾燥させてもよいし、インクジェットヘッド100の、布帛240の搬送方向の上流側に配置して、インクジェットヘッド1によるインクの吐出前に布帛240に蓄熱させておいた熱によってインクを乾燥させてもよいし、インクジェットヘッド100の、布帛240の搬送方向の上流側と下流側の両方に配置して乾燥させてもよい。
【0133】
乾燥温度は、特に制限されないが、例えば160℃以下としうる。乾燥時間は、乾燥温度にもよるが、例えば0.5~30分間程度としうる。
【0134】
また、本発明の画像形成方法は、インクジェットインクの種類によって、上記以外の他の工程をさらに有してもよい。例えば、1)の工程の前に、3)布帛140に前処理剤を付与する工程(前処理工程)を行ってもよいし、2)の工程の後に、4)画像が形成された布帛140を乾燥させて、画像を布帛140に定着させる工程(定着工程)をさらに行ってもよい。
【0135】
3)の工程(前処理工程)について
本発明による画像形成方法において、インクの滲みを防止したり、定着性を向上させたりする観点から、必要に応じて、水、多価金属イオンや高分子を含む前処理剤によって前処理された布帛240に、画像形成してもよい。
【0136】
前処理は、前処理剤を付与した布帛240に対して画像形成を行うオフライン処理によって行ってもよいし、画像形成と連続的に前処理を行うインライン処理によって行ってもよい。
【0137】
前処理剤の付与方法は、特に制限はなく、インクジェット法であってもよいし、コーターなどによる塗布法であってもよい。
【0138】
4)の工程(定着工程)について
定着工程では、布帛140上で乾燥させたインクを加熱して、布帛140に定着させる。それにより、固体着色剤を布帛140に定着させて、インク本来の色相を発現させる。
【0139】
定着方法としては、例えば、常圧スチーム法、高圧スチーム法、サーモフィックス法等による加熱処理が挙げられる。加熱処理の際の温度は、120~200℃が好ましく、より好ましくは、140~180℃である。
【0140】
また、上記4)の工程の後に、5)布帛240へ染着できなかった染料や前処理剤を除去する工程(洗浄工程)や6)洗浄された布帛240を乾燥する工程(乾燥工程)をさらに行ってもよい。
【0141】
5)の工程(洗浄工程)について
洗浄工程では、定着工程後に布帛240へ染着できなかった固体着色剤や前処理剤を除去する。布帛240へ定着させることができなかった固体着色剤の除去は、従来公知の洗浄方法を用いることができる。例えば、セルロース繊維は、水洗、湯洗の後に非イオン系洗浄剤を含むソーピング浴で処理後、湯洗、水洗を行うことが一般的である。未染着の固体着色剤の除去を行うことで、洗濯堅牢性、耐水堅牢性、耐汗堅牢性が良好になりやすい。
【0142】
6)の工程(乾燥工程)について
乾燥工程では、洗浄工程の後に行われ、洗浄された布帛240を乾燥させる。乾燥方法は、特に制限されないが、洗浄された布帛240を絞ったり、干したり、乾燥機(ヒートロール、アイロンなど)を使用して乾燥させたりする方法でありうる。
【0143】
なお、本発明の画像形成方法に用いられるインクジェットヘッドとして、
図2~7のインクジェットヘッド100では、排出流路121が圧力室131と接続される例を示したが、これに限定されず、圧力室131とノズル111の吐出口との間の途中に接続されてもよい。
【0144】
また、
図9では、フィルターユニット90が、流路85に配置される例を示したが、これに限定されない。フィルターユニット90は、例えばインク循環部8の循環流路87のいずれかに配置されればよい。
【0145】
また、
図9では、インク循環部8の一例として、水頭差によってインクの循環を制御する方法を説明したが、インクの循環流を発生できる構成であれば、適宜変更可能である。
【0146】
また、
図2~7のインクジェットヘッド100では、吐出方式がピエゾ方式である例を示したが、これに限定されず、サーマル方式であってもよい。
【0147】
また、
図1の画像形成装置200の印字方式は、特に制限されず、シングルパス方式であってもよいし、スキャン方式であってもよい。高速印刷に効果的である点では、シングルパス方式が好ましい。シングルパス方式の画像形成装置としては、ラインヘッド方式のインクジェットヘッドを使用することが好ましい。
【実施例】
【0148】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0149】
1.インクの構成成分
(1)固体着色剤
Pigment Black7
Disperse Blue60
Cab-o-jet 400(自己分散顔料、CABOT社製、ブラック水性顔料分散液)
【0150】
(2)疎水性高分子
(高分子分散剤)
J819(BASFジャパン社製ジョンクリル819、Tg:57℃、酸価75mgKOH/g、アンモニア中和)
【0151】
(水分散性樹脂)
WBR-2000U(大成ファインケミカル社製アクリット、ポリウレタン系樹脂粒子、Tg:45℃)
J7600(BASFジャパン社製ジョンクリル7600、Tg:35℃、アクリル系樹脂粒子、平均粒子径:90nm)
J390(BASFジャパン社製ジョンクリル390、スチレン-アクリル酸共重合体、Tg:-5℃、酸価:54mgKOH/g、平均粒子径:0.09μm)
【0152】
(3)溶剤
グリセリン
プロピレングリコール
ジエチレングリコール
【0153】
(4)界面活性剤
KF351A(信越シリコーン社製、ポリオキシエチレン変性シリコーン)
【0154】
(5)防腐剤
プロキセルGXL(1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン)
【0155】
2.インクの調製
<インク1~14の調製>
表1または2に示される組成となるように、各成分を混合して、インク1~13を調製した。
【0156】
<評価>
得られたインク1~14の粘度を、以下の方法で測定した。
【0157】
(粘度)
インクの粘度は、E型粘度計V-25(東機産業株式会社製)により、25℃、20rpm(インク1~4、7、8および10~14)または10rpm(インク5、6、9および10)で測定した。
【0158】
インク1~10の組成および物性を表1に示し、インク11~14の組成および物性を表2に示す。
【表1】
【表2】
【0159】
3.画像形成方法と評価
<比較例1、2、実施例5~16>
(画像形成装置)
まず、
図1~9に示される画像形成装置200を準備した。画像形成装置200の構成は、以下の通りである。
・フィルターユニット90の位置:インクジェットヘッド100の外部の流路85の中に配置(
図9参照)
・ノズル111に接続された排出流路121の数:2つ(2つの排出流路121の断面積は同一であり、長さは異なる、排出流路121間のインピーダンス比Zmax/Zmin:3)
・インクジェットヘッド100の印字方式:スキャン方式
【0160】
(布帛)
布帛として、T/Cブロード(コットン35%、ポリエステル65%)を準備した。
【0161】
(画像形成)
そして、表3または4に示されるインクを、画像形成装置100のインクジェットヘッド1のノズル11から吐出させて、布帛上に画像を形成した。具体的には、以下の手順で画像形成を行った。
【0162】
1)インク付与工程
得られたインクを、画像形成装置100にセットした。そして、主走査540dpi×副走査720dpiにて、得られたインクを用いて上記布帛上に、ベタ画像を形成した。なお、dpiとは、2.54cm当たりのインク液滴(ドット)の数を表す。吐出周波数は、22.4kHzとした。
【0163】
2)乾燥工程
インクを付与した布帛を、ベルト搬送式乾燥機にて160℃で3分間乾燥させた。
【0164】
<実施例1、2>
インクジェットヘッドの排出流路の幅wと高さh(断面積)を変えてインピーダンス比(ΣZa/Zb)を表3に示されるように変更した以外は実施例5と同様にして画像形成を行った。
【0165】
<実施例3>
インクジェットヘッドの排出流路の幅wと高さh(断面積)を変えて2つの排出流路のインピーダンスを同じにした以外は実施例5と同様にして画像形成を行った。
【0166】
<実施例4>
インク循環部8の流路85上にフィルターユニット90を設けなかった以外は実施例5と同様にして画像形成を行った。
【0167】
<比較例3、4>
1つのノズルと連通する排出流路の数を、表3に示されるように変更した以外は実施例5と同様にして画像形成を行った。
【0168】
<評価>
実施例1~16および比較例1~4の画像形成時の射出安定性およびノズル詰まりの有無、および得られる画像品質を、以下の方法で評価した。
【0169】
(射出安定性)
連続吐出(吐出周波数22.4kHz)を10分間行った後の射出欠や曲がりなどの確認を射出検査機にて行った。そして、射出安定性を、以下の基準で評価した。
5:長時間の連続使用でも問題がない
4:射出不良が発生しない
3:軽微な曲りが発生するが、問題は無い
2:射出中にプリント中に射出欠が発生する
1:すぐに射出欠が発生する、又は正常に射出できない
3以上であれば良好と判断した。
【0170】
(ノズル詰まり)
プリント試験機を用いて画像形成する途中にノズル面のメンテナンスを行い、当該メンテナンス後のノズル欠の状態を、ノズルチェックチャートにて確認した。そして、ノズル詰まりを、以下の基準で評価した。
5:長時間の連続使用でも詰りは発生しない
4:詰りは発生しない
3:詰りが発生してもメンテナンスで回復する
2:メンテナンスで回復しない詰りが多数発生する
1:正常に射出できない
3以上であれば良好と判断した。
【0171】
(画像品質)
得られた100%ベタ画像における白スジの有無を確認した後、測色計にて濃度L*を測定した。そして、以下の基準で評価した。
5:欠発生なく、非常に濃度が高い(L*が23以下)
4:欠発生なく、濃度が高い(L*が23超25以下)
3:欠発生なく、濃度は十分(L*が25超30以下)
2:欠が散見される、又は濃度が不十分(L*が30超)
1:欠が多く発生し、正常にプリントできない
3以上であれば良好と判断した。
【0172】
なお、インク11については色が異なるため、画像品質の評価は、白スジの有無で判断した。具体的には、白スジが全くない場合を5、白スジが若干あるがほとんど目立たない場合を4、白スジがあるが実用上問題ない場合を3、白スジがあり、実用上使用できない場合を2とした。
【0173】
比較例1~4および実施例1~6の評価結果を表3に示し、実施例7~16の評価結果を表4に示す。
【0174】
【0175】
【0176】
表3および4に示されるように、ノズルごとに複数の排出流路を有するインクジェットヘッドを有する画像形成装置を用い、かつ粘度が一定以上のインクを用いた実施例1~14では、いずれもノズル詰まりを生じることなく、良好な射出安定性を示すことがわかる。また、画像品質も良好であることがわかる。
【0177】
これに対して、インクの粘度が6cP未満のインクを用いた比較例1では、実施例4と比べて射出安定性が低いことがわかる。一方、インクの粘度が20cPを超えるインクを用いた比較例2では、実施例4と比べて射出安定性もノズル詰まりも顕著であることがわかる。また、排出流路が1つだけのインクジェットヘッドを用いた比較例3や、排出流路を有しないインクジェットヘッドを用いた比較例4では、いずれも射出安定性が低く、得られる画像品質も劣ることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0178】
本発明によれば、インクジェットヘッドのノズル近傍でのインクの滞留に起因するノズル詰まりを抑制しつつ、射出安定性の低下を抑制可能な画像形成方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0179】
1 ヘッドチップ
8 インク循環部
11 ノズル基板
12 流路スペーサー基板
13 圧力室基板
51 共通インク室
81 供給用サブタンク
82 循環用サブタンク
84 循環流路
85、86 流路
87 循環流路
88、89 ポンプ
90 フィルターユニット
121 排出流路
131 圧力室
134 第1共通排出流路
135 第2共通排出流路
100 インクジェットヘッド
200 画像形成装置
210 搬送装置
211 ベルトコンベア
212 送りローラー
213a、213b プーリー
214 ベルト
220 インク供給装置
230 メインタンク
240 布帛
251、252 流路
253 バイパス流路
254 弁