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特許7379990情報表示システム、および前記情報表示システムを備える高所作業車と前記情報表示システムを備える移動式クレーン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】情報表示システム、および前記情報表示システムを備える高所作業車と前記情報表示システムを備える移動式クレーン
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/46 20060101AFI20231108BHJP
   B66C 23/00 20060101ALI20231108BHJP
   B66C 23/42 20060101ALI20231108BHJP
   B66F 9/06 20060101ALI20231108BHJP
   B66F 9/24 20060101ALI20231108BHJP
   B66F 11/04 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B66C13/46 Z
B66C23/00 Z
B66C23/42 A
B66F9/06 L
B66F9/24 Z
B66F11/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019171835
(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公開番号】P2021046320
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】100196623
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 計介
(72)【発明者】
【氏名】元木 浩平
(72)【発明者】
【氏名】神田 真輔
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-156529(JP,A)
【文献】特開2019-108180(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0308354(US,A1)
【文献】特表2019-513654(JP,A)
【文献】特開2019-156531(JP,A)
【文献】特開平10-157984(JP,A)
【文献】特開2016-190719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/46
B66C 23/00
B66C 23/42
B66F 9/06
B66F 9/24
B66F 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体に旋回台を介して起伏可能なブームが設けられた移動式クレーンの情報表示システムであって、
前記旋回台におけるブームの延伸方向の方位を検出する旋回台方位検出装置と、
前記移動式クレーンの情報を表示する表示装置と、
前記表示装置における画面の特定方向の方位を検出する表示装置方位検出装置と、
前記移動式クレーンの情報と前記表示装置の情報とを送受信する通信装置と
前記表示装置に表示する情報を算出する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記通信装置を介して前記旋回台におけるブームの延伸方向の方位と前記表示装置における画面の特定方向の方位とを取得し、
前記表示装置の特定方向の方位を基準として前記旋回台におけるブームの延伸方向を表示するとともに、前記旋回台におけるブームの延伸方向に連動して前記移動式クレーンの操縦席における操縦者の旋回台およびブームの操作方向を示す操作方向基準を表示する情報表示システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記通信装置を介して前記移動式クレーンの位置情報および姿勢情報と、前記表示装置の位置情報とを取得し、
取得した前記移動式クレーンの姿勢情報と、前記移動式クレーンが前記表示装置の位置に荷物を移動させた場合における前記移動式クレーンの姿勢情報とを前記表示装置に表示する請求項1に記載の情報表示システム。
【請求項3】
位置情報を入力する入力装置を有し、
前記制御装置は、
前記通信装置を介して前記移動式クレーンの位置情報および姿勢情報と、前記入力装置から入力された任意の位置情報とを取得し、
取得した前記移動式クレーンの姿勢情報と、前記移動式クレーンが前記任意の位置に荷物を移動させた場合における前記移動式クレーンの姿勢情報とを前記表示装置に表示する請求項1に記載の情報表示システム。
【請求項4】
前記表示装置が高所作業車のバケットに設けられ、
前記制御装置は、
前記通信装置を介して前記高所作業車の姿勢情報を取得し、
取得した前記高所作業車の姿勢情報を前記表示装置に表示する請求項2または請求項3に記載の情報表示システム。
【請求項5】
走行体に旋回台を介して起伏可能なブームが設けられた高所作業車であって、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の情報表示システムを備える高所作業車。
【請求項6】
走行体に旋回台を介して起伏可能なブームが設けられた移動式クレーンであって、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の情報表示システムを備える移動式クレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報表示システム、および前記情報表示システムを備える高所作業車と前記情報表示システムを備える移動式クレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動式クレーンは、自走可能な下部走行体に上部旋回台が設けられ、この旋回台に伸縮するブームが起伏自在に設けられている。移動式クレーンは、作業現場において、荷物を吊り上げて目的地点まで搬送可能な位置まで移動して搬送作業を実施することができる。このような移動式クレーンにおいて共吊り作業を行う場合に、表示装置に他の移動式クレーンの情報を表示させる移動式クレーンの表示装置が知られている。例えば、特許文献1の如くである。
【0003】
特許文献1に記載の移動式クレーンの表示装置は、ブームの先端近傍の撮像部によって撮像された画像と他の移動式クレーンから受信した他の移動式クレーンの情報を、表示部に重ねて表示する。このように構成することで、操縦者は、表示部の画像を見ることで自らが操作している一方の移動式クレーンの情報と他の操縦者が操作している他方の移動式クレーンの情報とを一目で把握することができる。操縦者は、表示装置に表示されるこれらの情報を確認しながら共吊り作業を適切に行うことができる。
【0004】
このように構成される移動式クレーンの可動範囲表示装置は、一方の移動式クレーンと他方の移動式クレーンとの位置関係、姿勢情報、荷物の状態等をリアルタイムで表示する。一方の移動式クレーンの操縦者は、表示装置の表示を確認しつつ、他方の移動式クレーンの操縦者にブームの移動方向についての指示を出し合いながら協調操作を行う。このような協調操作において、一方の移動式クレーンの操縦席と他方の移動式クレーンの操縦席とが対向する位置関係にある場合、他方の移動式クレーンの操作方向は、一方の移動式クレーンの操作方向に対して相対的に反転した状態になる。このため、一方の移動式クレーンの操縦者は、指示する操作方向を他方の移動式クレーンの座標系に変換する必要があるため、指示が煩雑になる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-190719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、移動式クレーンの操縦者への指示を容易に行うために必要な情報を移動式クレーンの状態に連動して提示することができる情報表示システムおよび前記情報表示システムを備える高所作業車と前記情報表示システムを備える移動式クレーンの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、第1の発明は、走行体に旋回台を介して起伏可能なブームが設けられた移動式クレーンの情報表示システムであって、前記旋回台におけるブームの延伸方向の方位を検出
する旋回台方位検出装置と、前記移動式クレーンの情報を表示する表示装置と、前記表示装置における画面の特定方向の方位を検出する表示装置方位検出装置と、前記移動式クレーンの情報と前記表示装置の情報とを送受信する通信装置と前記表示装置に表示する情報を算出する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記通信装置を介して前記旋回台におけるブームの延伸方向の方位と前記表示装置における画面の特定方向の方位とを取得し、前記表示装置の特定方向の方位を基準として前記旋回台におけるブームの延伸方向を表示するとともに、前記旋回台におけるブームの延伸方向に連動して前記移動式クレーンの操縦席における操縦者の旋回台およびブームの操作方向を示す操作方向基準を表示する情報表示システムである。
【0009】
第2の発明は、前記制御装置は、前記通信装置を介して前記移動式クレーンの位置情報および姿勢情報と、前記表示装置の位置情報とを取得し、取得した前記移動式クレーンの姿勢情報と、前記移動式クレーンが前記表示装置の位置に荷物を移動させた場合における前記移動式クレーンの姿勢情報とを前記表示装置に表示する情報表示システムである。
【0010】
第3の発明は、位置情報を入力する入力装置を有し、前記制御装置は、前記通信装置を介して前記移動式クレーンの位置情報および姿勢情報と、前記入力装置から入力された任意の位置情報とを取得し、取得した前記移動式クレーンの姿勢情報と、前記移動式クレーンが前記任意の位置に荷物を移動させた場合における前記移動式クレーンの姿勢情報とを前記表示装置に表示する情報表示システムである。
【0011】
第4の発明は、前記表示装置が高所作業車のバケットに設けられ、前記制御装置は、前記通信装置を介して前記高所作業車の姿勢情報を取得し、取得した前記高所作業車の姿勢情報を前記表示装置に表示する情報表示システムである。
【0012】
第5の発明は、走行体に旋回台を介して起伏可能なブームが設けられた高所作業車であって、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の情報表示システムを備える高所作業車である。
【0013】
第6の発明は、走行体に旋回台を介して起伏可能なブームが設けられた移動式クレーンであって、請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の情報表示システムを備える移動式クレーンである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以下に示すような効果を奏する。
【0015】
第1の発明においては、移動式クレーンの方位と表示装置の方位とに基づいて、移動式クレーンの操縦席における旋回台の操作方向基準が表示装置に表示される。つまり、表示装置には、旋回台に対する表示装置の向きに連動して移動式クレーンの操縦者の操作方向基準が表示される。これにより、情報表示システムは、移動式クレーンの操縦者への指示を容易に行うために必要な情報を移動式クレーンの状態に連動して提示することができる。
【0016】
第2の発明においては、移動式クレーンの姿勢情報と位置情報、および表示装置の位置情報に基づいて、移動式クレーンの現在の姿勢情報を表示させるとともに、フックを表示装置の位置まで移動させた場合の移動式クレーンの姿勢情報が表示される。つまり、表示装置には、フックを表示装置の位置まで移動させるための指示内容が表示される。これにより、情報表示システムは移動式クレーンの操縦者への指示を容易に行うために必要な情報を移動式クレーンの状態に連動して提示することができる。
【0017】
第3の発明においては、移動式クレーンの姿勢情報と位置情報、および入力された任意の位置情報に基づいて、移動式クレーンの現在の姿勢情報を表示させるとともに、フックを任意の位置まで移動させた場合の移動式クレーンの姿勢情報が表示される。つまり、表示装置には、フックを任意の位置まで移動させるための指示内容が表示される。これにより、情報表示システムは、移動式クレーンの操縦者への指示を容易に行うために必要な情報を移動式クレーンの状態に連動して提示することができる。
【0018】
第4の発明においては、高所作業車のバケットに表示装置が設けられているので、移動式クレーンの姿勢情報と位置情報、および高所作業車の姿勢情報とバケットの位置情報に基づいて、移動式クレーンの現在の姿勢情報を表示させるとともに、フックをバケットの位置まで移動させた場合の移動式クレーンの姿勢情報が表示される。つまり、表示装置には、フックをバケットの位置まで移動させるための指示内容が表示される。これにより、情報表示システムは、移動式クレーンの操縦者への指示を容易に行うために必要な情報を移動式クレーンの状態に連動して提示することができる。
【0019】
第5の発明および第6の発明においては、移動式クレーンおよび高所作業車の操縦者に他の移動式クレーンや高所作業車の情報が提供される。つまり、移動式クレーンおよび高所作業車には、自機の情報に加えて他の移動式クレーンの操縦席における旋回台の操作方向や他の移動式クレーンのフックを任意の位置まで移動させた場合の他の移動式クレーンの姿勢情報が表示される。これにより、移動式クレーンおよび高所作業車は、移動式クレーンの操縦者への指示を容易に行うために必要な情報を移動式クレーンの状態に連動して提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】クレーンの全体構成を示す側面図。
図2】クレーンの制御構成を示すブロック図。
図3】情報表示システムの第一実施形態における制御構成を示すブロック図。
図4図4は方位角を示す。(A)は旋回台の方位角を示し、(B)は表示装置の方位角を示す。
図5図5はクレーンの操作方向基準の表示態様を示す。(A)は旋回台と表示装置の方位角の関係を示し、(B)は表示装置に表示されるクレーンの操作方向基準を示す。
図6図6は表示装置の表示態様を示す。(A)は表示装置の位置にフックを移動させた場合のクレーンの姿勢情報が表示されている状態を示し、(B)は任意の位置にフックを移動させた場合のクレーンの姿勢情報が表示されている状態を示す。
図7】情報表示システムにおける情報表示制御の態様を表すフローチャートを示す図。
図8】高所作業車の全体構成を示す上面図と側面図。
図9】情報表示システムの第二実施形態における制御構成を示すブロック図。
図10】バケットに設けられた表示装置の方位角を示す図。
図11】バケット位置と任意の位置とにフックを移動させた場合のクレーンの姿勢情報が表示されている状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図1図2とを用いて、移動式クレーンの一実施形態であるクレーン1について説明する。なお、本実施形態においては、ラフテレーンクレーンついて説明を行うが、オールテレーンクレーン、トラッククレーン、積載型トラッククレーン等であればよい。
【0022】
図1に示すように、クレーン1は、不特定の場所に移動可能な移動式クレーンである。クレーン1は、走行体である車両2、作業装置であるクレーン装置6および制御装置32を有する。また、クレーン1は、本発明における情報表示システム33(図2参照)と通信可能に構成されている。
【0023】
車両2は、クレーン装置6を搬送する移動体である。車両2は、複数の車輪3を有し、エンジン4を動力源として走行する。車両2には、アウトリガ5が設けられている。車両2は、アウトリガ5を車両2の幅方向に延伸させるとともにジャッキシリンダを接地させることにより、クレーン1の作業可能範囲を広げることができる。
【0024】
クレーン装置6は、荷物Wをワイヤロープによって吊り上げる装置である。クレーン装置6は、旋回台7、旋回用油圧モータ8、ブーム9、メインフックブロック10、サブフックブロック11、起伏用油圧シリンダ12、メインウインチ13、メイン用油圧モータ13a、メインワイヤロープ14、サブウインチ15、サブ用油圧モータ15a、サブワイヤロープ16およびキャビン17等を具備する。
【0025】
旋回台7は、クレーン装置6を旋回する装置である。旋回台7は、円環状の軸受の中心を回転中心として回転自在に構成されている。旋回台7には、アクチュエータである旋回用油圧モータ8が設けられている。旋回台7は、旋回用油圧モータ8によって一方向と他方向とに旋回可能に構成されている。
【0026】
旋回用油圧モータ8は、電磁比例切換弁である旋回用バルブ23(図2参照)によって回転操作される。旋回用バルブ23は、旋回用油圧モータ8に供給される作動油の流量を任意の流量に制御することができる。旋回台7には、旋回台7の基準位置からの旋回した角度である旋回角度αを検出する旋回用センサ27(図2参照)が設けられている。
【0027】
ブーム9は、荷物Wを吊り上げ可能な状態にワイヤロープを支持する梁部材である。ブーム9は、ベースブーム部材の基端が旋回台7の略中央に揺動可能に設けられている。ブーム9は、各ブーム部材をアクチュエータである図示しない伸縮用油圧シリンダで移動させることで軸方向に伸縮自在に構成されている。また、ブーム9には、ジブ9aが設けられている。ブーム9には、ブーム長さγを検出する伸縮用センサ28や荷物Wの重量を検出する重量センサ等が設けられている。
【0028】
吊り荷カメラ9b(図2参照)は、荷物Wおよび荷物W周辺の地物を撮影する撮影装置である。吊り荷カメラ9bは、ブーム9の先端部に設けられている。吊り荷カメラ9bは、荷物Wの鉛直上方から荷物Wおよびクレーン1周辺の地物(例えば高所作業車)や地形を撮影可能に構成されている。
【0029】
メインフックブロック10とサブフックブロック11とは、荷物Wを吊る部材である。メインフックブロック10には、メインワイヤロープ14が巻き掛けられる複数のフックシーブと、荷物Wを吊るメインフック10aとが設けられている。サブフックブロック11には、荷物Wを吊るサブフック11aが設けられている。
【0030】
起伏用油圧シリンダ12は、ブーム9を起立および倒伏させ、ブーム9の姿勢を保持するアクチュエータである。起伏用油圧シリンダ12は、電磁比例切換弁である起伏用バルブ25(図2参照)によって伸縮操作される。ブーム9には、ブーム9の起伏角度βを検出する起伏用センサ29(図2参照)が設けられている。
【0031】
メインウインチ13とサブウインチ15とは、メインワイヤロープ14とサブワイヤロープ16との繰り入れ(巻き上げ)および繰り出し(巻き下げ)を行う。メインウインチ13は、メインワイヤロープ14が巻きつけられるメインドラムがアクチュエータであるメイン用油圧モータ13aによって回転され、サブウインチ15は、サブワイヤロープ16が巻きつけられるサブドラムがアクチュエータであるサブ用油圧モータ15aによって回転されるように構成されている。メインウインチ13とサブウインチ15とは、メインワイヤロープ14とサブワイヤロープ16との繰り出し量を検出する繰り出し用センサ30が設けられている。
【0032】
メイン用油圧モータ13aは、電磁比例切換弁であるメイン用バルブ26m(図2参照)によって回転操作される。メインウインチ13は、メイン用バルブ26mによってメイン用油圧モータ13aを制御し、任意の繰り入れおよび繰り出し速度に操作可能に構成されている。同様に、サブウインチ15は、電磁比例切換弁であるサブ用バルブ26s(図2参照)によってサブ用油圧モータ15aを制御し、任意の繰り入れおよび繰り出し速度に操作可能に構成されている。
【0033】
キャビン17は、旋回台7に搭載されている。キャビン17は、図示しない操縦席が設けられている。操縦席には、車両2を走行操作するための操作具やクレーン装置6を操作するための旋回操作具18、起伏操作具19、伸縮操作具20、メインドラム操作具21m、サブドラム操作具21s等が設けられている。
【0034】
図2に示すように、通信装置22は、広域情報通信網等を介して後述の情報表示システム33からの制御信号を受信し、広域情報通信網等を介してクレーン1の情報等を送信する装置である。通信装置22は、キャビン17に設けられている。通信装置22は、情報表示システム33の制御信号等を受信するとクレーン1の制御装置32に転送するように構成されている。
【0035】
GNSS受信機31は、全球測位衛星システム(Global Navigation Satellite System)を構成する受信機であって、衛星から測距電波を受信し、受信機の位置座標である緯度、経度、標高および方位の数値表現である方位角を算出する装置である。クレーン1は、GNSS受信機31によって、ブーム9の先端の位置座標と、旋回台7の回転中心における位置座標およびブーム9の延伸方向の方位角を算出することができる。つまり、GNSS受信機31は、旋回台方位検出装置として旋回台方位角A1を算出している(図4参照)。なお、GNSS受信機31に替えて近距離無線通信等で緯度、経度、標高および方位角を算出してもよい。
【0036】
制御装置32は、各操作弁を介してクレーン1のアクチュエータを制御する装置である。制御装置32は、キャビン17内に設けられている。制御装置32は、実体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。制御装置32は、各アクチュエータや切換え弁、センサ等の動作を制御するために種々のプログラムやデータが格納されている。
【0037】
制御装置32は、吊り荷カメラ9b、旋回操作具18、起伏操作具19、伸縮操作具20、メインドラム操作具21mおよびサブドラム操作具21sに接続され、吊り荷カメラ9bの映像を取得し、旋回操作具18、起伏操作具19、メインドラム操作具21mおよびサブドラム操作具21sのそれぞれの操作量を取得することができる。
【0038】
制御装置32は、通信装置22に接続され、情報表示システム33からの制御信号を取得し、クレーン1の情報、吊り荷カメラ9bが撮影した映像等を情報表示システム33に送信することができる。
【0039】
制御装置32は、旋回用バルブ23、伸縮用バルブ24、起伏用バルブ25、メイン用バルブ26mおよびサブ用バルブ26sに接続され、旋回用バルブ23、起伏用バルブ25、メイン用バルブ26mおよびサブ用バルブ26sに制御信号を伝達することができる。
【0040】
制御装置32は、旋回用センサ27、伸縮用センサ28、起伏用センサ29および繰り出し用センサ30に接続され、旋回台7の旋回角度α、起伏角度β、ブーム長さγ、メインワイヤロープ14とサブワイヤロープ16との繰り出し量Δ等の姿勢情報および荷物Wの重量を取得することができる。
【0041】
制御装置32は、GNSS受信機31に接続され、ブーム9の先端の位置座標と旋回台7の回転中心における位置座標および旋回台方位角A1(図4参照)を高精度で取得することができる。
【0042】
制御装置32は、旋回操作具18、起伏操作具19、伸縮操作具20、メインドラム操作具21mおよびサブドラム操作具21sの操作量に基づいて各操作具に対応した制御信号を生成することができる。
【0043】
このように構成されるクレーン1は、車両2を走行させることで任意の位置にクレーン装置6を移動させることができる。また、クレーン1は、起伏操作具19の操作によって起伏用油圧シリンダ12でブーム9を任意の起伏角度βに起立させて、伸縮操作具20の操作によってブーム9を任意のブーム長さγに延伸させたりすることでクレーン装置6の揚程や作業半径を拡大することができる。また、クレーン1は、サブドラム操作具21s等によって荷物Wを吊り上げて、旋回操作具18の操作によって旋回台7を旋回させることで荷物Wを搬送することができる。
【0044】
次に、図3および図4を用いて、情報表示システム33について説明する。情報表示システム33は、対象となるクレーン1の位置情報と姿勢情報とを表示装置35に表示するシステムである。情報表示システム33は、通信装置であるシステム側通信装置34、表示装置35、入力装置36、システム側GNSS受信機37および制御装置であるシステム制御装置38とから構成されている。
【0045】
図4(A)に示すように、クレーン1の位置情報とは、旋回台7の回転中心における位置座標と旋回台7におけるブーム9の延伸方向の方位角である旋回台方位角A1、およびブーム9の先端の位置座標を含む。また、姿勢情報とは、クレーン1における旋回台7の旋回角度α、ブーム9の起伏角度β、ブーム9のブーム長さγ、メインワイヤロープ14とサブワイヤロープ16との繰り出し量Δ、作業半径Rおよび負荷率Dを含む。
【0046】
図4(B)に示すように、表示装置35の位置情報には、表示装置35の中心位置における位置座標および表示装置35の特定方向の方位である画面に向かって上方向(矢印参照)の方位角である表示装置方位角A2を含む。
【0047】
方位角とは、方位の数値表現であり、基準となる方位との間の角度を言う。以下の実施形態において、方位角は、基準方位を北(N)とし、北(N)の方位角を0°、東(E)の方位角を90°南(S)の方位角を180°、西(W)の方位角を270°とする。
【0048】
図4(A)におけるクレーン1は、ブーム9が北北東に延伸する旋回角度αに旋回台7が旋回されている。この場合、基準方位である北(N)北北東までの角度が22.5°なので、旋回台方位角A1は、22.5°となる。図4(B)における表示装置35は、上下方向が北北西に向くように配置されている。この場合、基準方位である北(N)北北西までの角度が337.5°(-22.5°)なので、表示装置方位角A2は337.5°となる。
【0049】
図3に示すように、システム側通信装置34は、広域情報通信網等を介して選択されたクレーン1と情報の送受信を行う装置である。システム側通信装置34は、所定の範囲内に存在するクレーン1からの信号を受信する。そして、システム側通信装置34は、選択されたクレーン1の制御装置32からクレーン1の位置情報と姿勢情報および吊り荷カメラ9bが撮影した映像等を受信し、選択したクレーン1の制御装置32に制御信号を送信する。システム側通信装置34は、表示装置35に設けられている。システム側通信装置34は、選択したクレーン1の位置情報と姿勢情報とを受信するとシステム制御装置38に転送するように構成されている。
【0050】
表示装置35は、選択したクレーン1の情報を表示させる装置である。表示装置35は、持ち運び可能なタブレット等から構成されている。表示装置35は、画面から入力可能なタッチパネルで構成されている。つまり、表示装置35は、入力装置36としての機能を有している。表示装置35は、選択したクレーン1の位置情報と姿勢情報、クレーン1の操縦席における旋回台7の操作方向基準およびカメラ9bが撮影した映像等を表示するように構成されている。
【0051】
入力装置36は、クレーン1の移動目標を入力するものである。入力装置36は、タッチパネルからなる表示装置35に表示され、画面上から入力可能に構成されている。入力装置36は、表示装置35に表示されたクレーン1から任意のクレーン1を選択するように構成されている。現在の表示装置35の位置を起点として、任意のX座標、Y座標、Z座標を入力するように構成されている。
【0052】
システム側GNSS受信機37(図2参照)は、受信機の位置座標である緯度、経度、標高および方位角(図4参照)を算出する装置である。システム側GNSS受信機37は、表示装置35に設けられている。つまり、システム側GNSS受信機37は、表示装置35の位置情報である位置座標を算出し、表示装置方位検出装置として表示装置方位角A2を算出する(図4参照)。なお、システム側GNSS受信機37に替えて近距離無線通信等で緯度、経度、標高および方位角を算出してもよい。
【0053】
システム制御装置38は、選択したクレーン1の制御装置32からクレーン1の情報を取得し、表示装置35に表示させる装置である。システム制御装置38は、表示装置35に設けられている。システム制御装置38は、実体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。システム制御装置38は、各アクチュエータや切換え弁、センサ等の動作を制御するために種々のプログラムやデータが格納されている。なお、システム制御装置38は、表示装置35と別体に構成されていてもよい。
【0054】
システム制御装置38は、表示装置35に接続され、表示装置35に所定の範囲内に存在するクレーン1の位置情報や機種名を表示させる。また、システム制御装置38は、選択したクレーン1の現在のクレーン1の位置情報と姿勢情報、吊り荷カメラ9bが撮影した映像、およびクレーン1の制御装置32が制御信号に従って算出されたクレーン1の姿勢情報を表示させることができる。また、システム制御装置38は、選択したクレーン1の操縦席における旋回台7の操作方向基準を表示させることができる。
【0055】
システム制御装置38は、表示装置35の一部である入力装置36から入力された任意の位置座標を取得することができる。
【0056】
システム制御装置38は、システム側GNSS受信機37に接続され、表示装置35の位置情報である位置座標および方位角を高精度で取得することができる。
【0057】
システム制御装置38は、取得したクレーン1における旋回台方位角A1(図4(A)参照)と情報表示システム33における表示装置方位角A2(図4(B)参照)との間の角度のうち小さい方の角度Aを算出することができる。本実施形態において、旋回台方位角A1=45°と表示装置方位角A2=315°のうち小さい方の角度A=45°を算出することができる。
【0058】
システム制御装置38は、算出した角度Aが所定値である90°よりも大きい場合、クレーン1の操縦席における旋回台7の操作方向基準の表示(前後左右、左旋回および右旋回の表示)を反転して表示させる。また、システム制御装置38は、算出した角度Aが所定値である90°以下である場合、クレーン1の操縦席における旋回台7の操作方向基準(前後左右、左旋回および右旋回の表示)を表示させる。
【0059】
このように構成される情報表示システム33は、クレーン1の位置情報と姿勢情報、吊り荷カメラ9bが撮影した映像、およびクレーン1の制御装置32が、取得した制御信号に従って算出されたクレーン1の姿勢情報を表示させることができる。また、システム制御装置38は、クレーン1の操縦席における旋回台7の操作方向基準を表示させることができる。操作方向基準の表示として、ブーム9の延伸方向と、方位と、操縦者からみた旋回方向(前後左右、左旋回および右旋回の表示)が表示されている(図5参照)。
【0060】
次に、図4から図7を用いて情報表示システム33の制御について説明する。情報表示システム33は、クレーン1の操縦者に指示をだす作業者が表示装置35を保持しているものとする。
【0061】
情報表示システム33のシステム制御装置38は、表示装置35を中心とした所定範囲内にあるクレーン1からの信号を受信すると、表示装置35に信号を受信したクレーン1を表示させる。システム制御装置38は、入力装置36によって選択された一のクレーン1と通信を開始し、選択されたクレーン1の位置情報と姿勢情報とを単位時間毎に取得する。
【0062】
図5に示すように、システム制御装置38は、選択したクレーン1における旋回台方位角A1と表示装置方位角A2との間の角度のうち小さい方の角度Aを算出する。
【0063】
図4(A)おいて、角度Aは、ブーム9が北北東に向けて延伸している旋回台7の旋回台方位角A1=22.5°と、画面に向かって上方向が北北西に向けて配置されている表示装置35の表示装置方位角A2=337.5°から角度A=360-(337.5-22.5)=45°となる。つまり、旋回台7におけるブーム9は、表示装置の特定方向の方位である画面に向かって上方向(矢印参照)の方位から時計回り(右方向)に45°の方向に延伸している。
【0064】
図5(A)おいて、角度Aは、ブーム9が北北東に向けて延伸している旋回台7の旋回台方位角A1=22.5°と、画面に向かって上方向が西南西に向けて配置されている表示装置35の表示装置方位角A2=247.5°から角度A=360-(247.5-22.5)=135°となる。つまり、旋回台7におけるブーム9は、表示装置の特定方向の方位である画面に向かって上方向の方位から時計回り(右方向)に135°の方向に延伸している。
【0065】
図5(B)と図6に示すように、システム制御装置38は、表示装置35の上方向の方位を基準として実際の方位に合わせた方位図を表示させる。次に、システム表示装置38は、旋回台7とブーム9の模式図35aを、旋回台7におけるブーム9の延伸方向の方位を基準として方位図上に表示させる。さらに、システム制御装置38は、クレーン1の操縦席における旋回台7の操作方向基準(前後左右、左旋回および右旋回)を模式図35aの周囲に表示させる。システム制御装置38は、方位図と模式図35aと操作方向基準とを表示装置の方位に連動して回転させる。
【0066】
本実施形態において、システム制御装置38は、表示装置35の画面に向かって上方向が西南西を向いている場合(図5(A)参照)、表示装置35の画面に向かって上方向が西南西になるように方位図を表示するとともに、方位図上でブーム9の延伸方向を北北東に向けた状態でクレーン1の模式図35aを表示させる。さらに、システム制御装置38は、模式図35aにおけるブーム9の延伸方向を前後方向として。ブーム9の先端側(北北東)に「前」を表示し、ブーム9の基端側(南南西)に「後」を表示する。次に、システム制御装置38は、前後方向を基準として、左側(西北西)に「左」を表示し、右側(西南西)に「左」を表示する。システム制御装置38は、表示装置35に表示させた方位図とクレーン1の模式図35aと操作方向基準とを、表示装置35の方位に連動して表示させる。
【0067】
図6(A)に示すように、システム制御装置38は、取得したクレーン1の姿勢情報である旋回台7の旋回角度α、ブーム9の起伏角度β、ブーム9のブーム長さγ、メインワイヤロープ14とサブワイヤロープ16との繰り出し量Δ(フック高さ)、作業半径Rおよび負荷率D等と、クレーン1の模式図35aと方位図と操作方向基準とを表示装置35に表示させる。
【0068】
図6(B)に示すように、システム制御装置38は、入力装置36から任意の位置座標が入力された場合、その位置座標にフック(メインフックブロック10またはサブフックブロック11)を移動させた際の姿勢情報を算出する旨の制御信号をクレーン1の制御装置32に送信する。また、システム制御装置38は、入力装置36から任意の位置座標の入力がない場合、表示装置35の位置座標にフックを移動させた場合の姿勢情報を算出する旨の制御信号を制御装置32に送信する。システム制御装置38は、制御装置32から算出結果を取得すると表示装置35に表示させる。
【0069】
以下に、図7を用いて、情報表示システム33による情報表示制御について具体的に説明する。
【0070】
図7に示すように、情報表示システム33による情報表示制御のステップS110において、システム制御装置38は、所定範囲内に存在するクレーン1からの信号を取得するとともに、信号を取得したクレーン1の一覧を表示画面に表示し、ステップをステップS120に移行させる。
【0071】
ステップS120において、システム制御装置38は、表示画面の一部から構成される入力装置36によって選択されたクレーン1の位置情報と姿勢情報とを単位時間毎に取得し、ステップをステップS130に移行させる。
【0072】
ステップS130において、システム制御装置38は、表示装置35の位置情報を単位時間毎に取得し、ステップをステップS140に移行させる。
【0073】
ステップS140において、システム制御装置38は、取得したクレーン1の位置情報に含まれる旋回台方位A1と表示装置35における表示装置方位A2との間の角度のうち小さい方の角度Aを算出し、ステップをステップS150に移行させる。
【0074】
ステップS150において、システム制御装置38は、算出した旋回台方位A1と表示装置方位A2とに基づいて表示装置35の方位図とクレーン1の模式図35aとクレーン1の操作方向基準とを表示装置に表示し、ステップをステップ160に移行させる。
【0075】
ステップS160において、システム制御装置38は、入力装置36を介して任意の位置座標が入力されたか否かを判定する。
その結果、任意の位置座標が入力された場合、システム制御装置38はステップをステップS170に移行させる。
一方、任意の位置座標が入力されない場合、システム制御装置38はステップをステップS175に移行させる。
【0076】
ステップS170において、システム制御装置38は、入力された位置座標にフックを移動させた際のクレーン1の姿勢情報を算出する旨の制御信号をクレーン1の制御装置32に送信し、ステップをステップS180に移行させる。
【0077】
ステップS175において、システム制御装置38は、表示装置35の位置座標にフックを移動させた際のクレーン1の姿勢情報を算出する旨の制御信号をクレーン1の制御装置32に送信し、ステップをステップS180に移行させる。
【0078】
ステップS180において、システム制御装置38は、クレーン1の制御装置32から算出した姿勢情報を取得し、ステップをステップS190に移行させる。
【0079】
ステップS190において、システム制御装置38は、操作方向基準と、クレーン1の現在の姿勢情報と、クレーン1の制御装置32が算出した姿勢情報とを表示させて、ステップをステップS110に移行させる。
【0080】
このように構成される情報表示システム33は、選択した一のクレーン1の姿勢情報、位置情報および表示装置35の位置情報を取得し、クレーン1における旋回台7の旋回台方位A1と表示装置35の表示装置方位A2とに基づいて、クレーン1の操縦席における旋回台7の操作方向基準が表示装置35に表示される。つまり、表示装置35には、旋回台7に対する表示装置35の向きに連動して方位図とクレーン1の模式図35aとクレーン1の操縦者の操作方向基準が表示される。また、クレーン1の姿勢情報と位置情報、および表示装置35の位置情報または任意の位置情報に基づいて、クレーン1の現在の姿勢情報を表示させるとともに、フックを表示装置35の位置または任意の位置まで移動させた場合の移動式クレーン1の姿勢情報が表示される。つまり、表示装置35には、フックを表示装置35の位置まで移動させるための指示内容が表示される。
【0081】
情報表示システム33は、クレーン1の操縦者に指示を与える作業者をサポートする情報が表示されている。これにより、情報表示システム33は、クレーン1の操縦者への指示を容易に行うために必要な情報をクレーン1の状態に連動して提示することができる。従って、作業者は、表示装置35に表示されているクレーン1の情報および旋回台7の操作方向基準に基づいて、容易にクレーン1の操縦者に指示を行うことができる。
【0082】
なお、本実施形態において、情報表示システム33は、作業者が保持している表示装置35にクレーン1の位置情報と姿勢情報とが表示されているが、クレーン1のキャビン17内に情報表示システム33の表示装置としてクレーン側表示装置を更に備えてもよい。クレーン側表示装置には、作業者が保持している表示装置35に表示されている情報が表示されている。このように情報表示システム33を備えているクレーン1は、クレーン1の操縦者と表示装置35を保持している作業者とが常に同一の情報を共有している。これにより、情報表示システム33は、移動式クレーン1の操縦者への指示を容易に行うために必要な情報をクレーン1の状態に連動して提示することができる。
【0083】
次に、図8から図10を用いて、本発明に係る情報表示システムの第二実施形態である情報表示システム39について説明する。なお、以下の各実施形態に係る情報表示システム39は、図3に示す情報表示システム39において、情報表示システム39に替えて適用されるものとして、その説明で用いた名称、図番、符号を用いることで、同じものを指すこととし、以下の実施形態において、既に説明した実施形態と同様の点に関してはその具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
【0084】
以下に、図8を用いて、情報表示システム39が設けられている高所作業車40の一実施形態である高所作業車40について説明する。 図8に示すように、高所作業車40は、高所に作業者を配置するための作業車である。高所作業車40は、車両41、高所作業装置45を有する。
【0085】
車両41は、高所作業装置45を搬送するものである。車両41は、フレーム41aに運転室41bや複数の車輪42が設けられ、動力源である図示しないエンジンが搭載されている。車両41は、エンジンの駆動力を複数の車輪42に伝達して走行するように構成されている。車両41には、アウトリガ44が設けられている。アウトリガ44は、車両41の幅方向両側に油圧によって延伸可能な張り出しビームと地面に垂直な方向に延伸可能な油圧式のジャッキシリンダとから構成されている。車両41は、アウトリガ44を車両41の幅方向に延伸させるとともにジャッキシリンダを接地させることにより、高所作業車40の作業可能範囲を広げることができる。
【0086】
高所作業装置45は、作業者が搭乗するバケット48を高所まで持ち上げるものである。高所作業装置45は、旋回台46、ブーム47、バケット48、起伏シリンダ49、操作装置50を具備する。
【0087】
旋回台46は、高所作業装置45を旋回するものである。旋回台46は、円環状の軸受を介して車両41のフレーム41a上に設けられる。旋回台46は、円環状の軸受の中心を回転中心として回転自在に構成されている。また、旋回台46は、図示しない油圧式の旋回モータによって回転されるように構成されている。
【0088】
ブーム47は、バケット48を支持するものである。ブーム47は、複数のブーム部材から構成されている。ブーム47は、各ブーム部材を図示しないシリンダ等で移動させることで伸縮自在に構成されている。ブーム47は、ブーム部材の基端が旋回台46上に揺動可能に設けられている。
【0089】
バケット48は、作業者の作業空間を確保するためのものである。バケット48は、内部に作業者が乗り込むように構成されている。バケット48は、支持機構48aを介してブーム47の先端に支持されている。支持機構48aは、図示しない油圧アクチュエータによりバケット48を俯仰方向及び水平方向に揺動させる。
【0090】
起伏シリンダ49は、ブーム47を起立および倒伏させ、ブーム47の姿勢を保持するものである。起伏シリンダ49は油圧シリンダから構成されている。起伏シリンダ49は、基部が旋回台46に揺動自在に連結され、ロッド先端がブーム47に揺動自在に連結されている。起伏シリンダ49は、ロッドが伸縮されることでブーム47を起立または倒伏させる。
【0091】
操作装置50は、旋回台46、ブーム47、バケット48等の操作を行うものである。操作装置50は、車両41およびバケット48の内部に設けられている。操作装置50は、旋回台46の旋回操作、ブーム47の伸縮操作を行う旋回伸縮操作具、ブーム47の起伏操作を行う起伏用操作具およびエンジン始動スイッチ等が設けられている。
【0092】
このように構成される高所作業車40は、車両41を走行させることで任意の位置に高所作業装置45を移動させることができる。また、高所作業車40は、起伏シリンダ49でブーム47を任意の起伏角度に起立させて、ブーム47を任意のブーム長さに延伸させて高所作業装置45のバケット48の移動範囲を拡大することができる。
【0093】
図9に示すように、システム制御装置38は、通信装置であるシステム側通信装置34、表示装置51、入力装置52、システム側GNSS受信機37および制御装置であるシステム制御装置38とから構成されている。
【0094】
システム側通信装置34は、広域情報通信網等を介して選択されたクレーン1と高所作業車40との間で情報の送受信を行う装置である。システム側通信装置34は、システム側通信装置34は、高所作業車40の制御装置43から高所作業車40の位置情報と姿勢情報(旋回台46の旋回角度、ブーム47の起伏角度、ブーム47のブーム長さ、作業半径および負荷率)等を受信する。システム側通信装置34は、表示装置35に設けられている。システム側通信装置34は、高所作業車40の位置情報と姿勢情報とを受信するとシステム制御装置38に転送するように構成されている。
【0095】
表示装置51は、選択したクレーン1の情報を表示させる装置である。表示装置51は、高所作業車40のバケット48内に設けられている。表示装置51は、画面から入力可能なタッチパネルで構成されている。つまり、表示装置51は、入力装置52としての機能を有している。表示装置51は、選択したクレーン1の位置情報と姿勢情報、クレーン1の操縦席における旋回台46の操作方向基準およびカメラ9bが撮影した映像等を表示するように構成されている。
【0096】
システム制御装置38は、システム側GNSS受信機37に接続され、表示装置51の位置座標と表示装置方位A2を高精度で取得することができる。つまり、システム制御装置38は、高所作業車40におけるバケット48の位置座標と、バケットに設けられた表示装置の方位であるバケット方位A3とを取得することができる(図10参照)。
【0097】
図10において、バケット48は、表示装置51が固定されている側面が西北西に向けられている。すなわち、バケット48に固定されている表示装置51は、画面に向かって上方向が西北西を向くように配置されているので、バケット方位A3=292.5°になる。なお、本実施形態において、バケット方位A3は、システム側GNSS受信機37から取得しているが、高所作業車40における旋回台46の旋回角度とバケット48の水平方向の揺動角度から算出する構成でもよい。
【0098】
また、システム制御装置38は、バケット48の位置座標とバケット方位A3とをシステム側GNSS受信機37から取得しているが、クレーン1の吊り荷カメラで高所作業車40のバケット48を撮影し、撮影画像からバケット48の位置座標とバケット方位A3を算出する構成でもよい。具体的には、システム制御装置38は、クレーン1の制御装置32から旋回台方位A1を取得する、次に、システム制御装置38は、旋回台方位A11とクレーン1の姿勢情報とから吊り荷カメラ9bの位置座標を算出する。次に、システム制御装置38は、吊り荷カメラ9bが撮影した画像を取得し、画像内におけるバケット48の位置および向きからバケット方位A3を算出する。
【0099】
このように構成される情報表示システム33は、選択した一のクレーン1の姿勢情報、位置情報および表示装置35の位置情報を取得し、クレーン1における旋回台7の旋回台方位A1とバケット方位A3とに基づいて、方位図とクレーン1の模式図51aと操縦席における旋回台7の操作方向基準とが表示装置35に表示される。つまり、表示装置35には、旋回台7に対するバケット48の向きに連動してクレーン1の操縦者の操作方向基準が表示される。
【0100】
また、情報表示システム33は、クレーン1と高所作業車40との姿勢情報と位置情報、および表示装置35の位置情報または任意の位置情報に基づいて、クレーン1と高所作業車40との現在の姿勢情報を表示させるとともに、フックを表示装置35の位置または任意の位置まで移動させた場合の移動式クレーン1の姿勢情報が表示される。つまり、表示装置35には、フックを表示装置35の位置まで移動させるための指示内容が表示される。
【0101】
図11に示すように、システム制御装置38は、入力装置52からバケット48の位置を基準とする任意の位置座標が入力された場合、その位置座標にフックを移動させた場合の姿勢情報を算出する旨の制御信号をクレーン1の制御装置32に送信する。また、システム制御装置38は、入力装置52から任意の位置座標の入力がない場合、バケット48の位置座標にフックを移動させた際の姿勢情報を算出する旨の制御信号を制御装置32に送信する。システム制御装置38は、制御装置32から計算結果を取得すると表示装置51に表示させる。
【0102】
このように高所作業車には、情報表示システム39が設けられているので、高所作業車のバケット48内でクレーン1の姿勢情報を取得することができる。バケット48に設けられた表示装置51には、クレーン1の姿勢情報と位置情報、および高所作業車40の姿勢情報とバケット48の位置情報に基づいて、クレーン1と高所作業車40との現在の姿勢情報と、フックをバケット48の位置まで移動させた場合の移動式クレーン1の姿勢情報が表示される。つまり、表示装置51には、フックをバケット48の位置まで移動させるための指示内容が表示される。
【0103】
また、情報表示システム39を具備するクレーン1または高所作業車40には、クレーンと高所作業車40との操縦者に他のクレーン1や高所作業車40の情報が提供される。つまり、クレーン1および高所作業車40には、自機の情報に加えて他のクレーン1の操縦席における旋回台46の操作方向基準や他のクレーン1のフックを任意の位置まで移動させた場合の他のクレーン1の姿勢情報が表示される。例えば、2台の高所作業車40におけるバケット48間の中間位置にフックを移動させた場合のクレーン1の姿勢情報を表示させることもできる。これにより、情報表示システム39は、クレーン1の操縦者への指示を容易に行うために必要な情報クレーン1の状態に連動して提示することができる。
【0104】
上述の実施形態は、代表的な形態を示したに過ぎず、一実施形態の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0105】
1 クレーン
2 車両
6 クレーン装置
7 旋回台
9 ブーム
22 通信装置
31 GNSS受信機
32 制御装置
33 情報表示システム
34 システム側通信装置
35 表示装置
36 入力装置
38 システム制御装置
A1 旋回台方位
A2 表示装置方位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11