(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】空調コントローラ
(51)【国際特許分類】
F24F 11/49 20180101AFI20231108BHJP
F24F 11/63 20180101ALI20231108BHJP
G06F 9/4401 20180101ALI20231108BHJP
【FI】
F24F11/49
F24F11/63
G06F9/4401
(21)【出願番号】P 2019177064
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】中島 見介
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-143318(JP,A)
【文献】特開2018-025925(JP,A)
【文献】特表2003-526069(JP,A)
【文献】特開平10-240516(JP,A)
【文献】特開2016-200861(JP,A)
【文献】特開2010-026650(JP,A)
【文献】特開2007-122151(JP,A)
【文献】特開2013-210137(JP,A)
【文献】特開2012-103181(JP,A)
【文献】特開平06-099156(JP,A)
【文献】特開2019-023523(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0091902(US,A1)
【文献】特開平05-204654(JP,A)
【文献】特開平11-119984(JP,A)
【文献】特開2014-067215(JP,A)
【文献】特開2008-059339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/49
F24F 11/63
G06F 9/4401
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブート用プログラムが格納されるブートプログラム領域を有している記録媒体との間でデータ転送を行うメモリインターフェイスを備え、前記記録媒体に記憶されているアプリケーションプログラムを読み出して更新する機能を備える空調コントローラにおいて、
前記記録媒体のブートプログラム領域に書き込まれるブート用プログラムが記憶される記憶部と、
一定期間が経過すると、前記記憶部より前記ブート用プログラムを読み出して、前記ブートプログラム領域に上書きを行う制御部
と、
電源電圧が閾値未満に低下したことを検出すると、低電圧検出フラグをセットする低電圧検出部とを備え、
前記制御部は、前記低電圧検出フラグがリセット状態であることを条件に前記上書きを行う空調コントローラ。
【請求項2】
前記記録媒体は、microSDカードである請求項1記載の空調コントローラ。
【請求項3】
自身の処理負荷が一定量以上であることを検出すると、ビジーフラグをセットする処理負荷判定部を備え、
前記制御部は、前記ビジーフラグがリセット状態であることを条件に前記上書きを行う請求項
1又は2記載の空調コントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に記憶されているアプリケーションプログラムを読み出して更新する機能を備える空調コントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空調コントローラに適用されるアプリケーションプログラムのバージョンが更新された際に、プログラムの更新を容易に行うため、例えばmicroSDカード(microSDは登録商標)のような記録媒体に記憶されたアプリケーションプログラムを読み出して更新するものがある。尚、このような構成に関して、特に提示すべき先行技術文献は見当たらなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
microSDカードについては、データ値をマルチビットで表現する構成を採用しているものがある。データ値をマルチビット化すると、データ値を区分する電圧の閾値幅が狭くなるため、所謂データ化けやビット化けと称される現象が発生し易くなる。また、microSDカードを使用する際には、ブートプログラム領域にブート用プログラムを記憶しておく必要があるが、ブート用プログラムにビット化けが発生するとmicroSDカードが使用できなくなってしまう。
【0004】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、記録媒体を用いる際に、ブート用プログラムにビット化けが生じることを防止できる空調コントローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の空調コントローラによれば、記録媒体との間でデータ転送を行うメモリインターフェイスを備え、記憶部には、記録媒体のブートプログラム領域に書き込まれるブート用プログラムが記憶される。そして、制御部は、一定期間が経過すると、記憶部よりブート用プログラムを読み出してブートプログラム領域に上書きを行う。このように構成すれば、記録媒体のブート用プログラムは一定期間毎に上書きされてリフレッシュされるので、ブートプログラム領域におけるビット化けの発生を防止できる。
また、制御部は、低電圧検出部によりセットされる低電圧検出フラグがリセット状態であることを条件に、ブートプログラム領域への上書きを行う。すなわち、電源電圧が低下している際にブートプログラム領域への上書きを行うと、上書きが完了せずに中断するおそれがある。したがって、低電圧検出フラグがリセット状態であることを条件に上書きを行うことで、中断することなく上書きを完了させることができる。
【0006】
請求項2記載の空調コントローラによれば、記録媒体をmicroSDカードとするので、ブートプログラム領域を備える記録媒体として一般的に使用されるmicroSDカードを使用する際に本発明を適用できる。
【0008】
請求項3記載の空調コントローラによれば、制御部は、処理負荷判定部によりセットされるビジーフラグがリセット状態であることを条件に、ブートプログラム領域への上書きを行う。すなわち、制御部の処理負荷が一定量以上の状態でブートプログラム領域への上書きを行うと、書込みに時間を要することになり、その間に電源電圧が低下して上書きが中断するおそれがある。したがって、ビジーフラグがリセット状態であることを条件に上書きを行うことで、これにより、電源が遮断されて電圧が低下する際に上書きが中断する可能性を排除して、上書きを確実に完了させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態であり、本実施形態の要旨に係る部分のメイン処理を示すフローチャート
【
図2】マイクロコンピュータの割込み処理を示すフローチャート
【
図4】microSDカードのパーティション構成の一例を示す図
【
図5】電解コンデンサの端子電圧,電源ICの出力電圧,microSDカードのリセット信号,microSDカードのクロック信号の各波形を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態について図面を参照して説明する。
図3に示すように、本実施形態の空調コントローラ1を構成する回路基板2には、24Vの交流電源が供給されている。電源IC3の周辺には、複数の電解コンデンサ5が配置されており、電源IC3には、図示しない整流回路を介して電解コンデンサ5により平滑された24Vの直流電源が供給されている。電源IC3は、例えば3.3Vの電源を生成してマイクロコンピュータ6,EEPROM7,記録媒体の一例であるmicroSDカード8やRTC(Real Time Clock)9等に供給する。RTC9には、上記電源がスーパーキャパシタ10を介して供給されている。RTC9は、年月日及び時刻を計時するICである。
【0011】
制御部に相当するマイコン6と、記憶部に相当するEEPROM7,microSDカード8やRTC9とは、バスを介して接続されている。温度センサ11は、空調コントローラ1が配置されている室内の温度を検知して検知結果をマイコン6に入力する。低電圧検知回路4は、電解コンデンサ5の端子電圧が、閾値電圧である例えば10Vに低下したことを検出すると、検知信号をマイコン6に割込みとして入力する。その際に、マイコン6は、
図2に示すように、低電圧検出フラグを「1」にセットする(S0)。すなわち、低電圧検知回路4及びマイコン6が低電圧検知部の一例である。尚、マイコン6とmicroSDカード8とは、実際にはメモリインターフェイスを介して電気的に接続されているが、その図示を省略している。
【0012】
図4は、microSDカード8内のパーティション構成を示しており、u-Boot12,Boot partation13,Data partation14,Rootfs0_15,Rootfs1_16,unallocated17に分かれている。各パーティションの容量と用途は、例えば以下のように設定されている。尚、「partation」は「p.」と略して記載する。
パーティション 容量 用途(格納される内容)
u-Boot 300kB OSをメモリに展開するプログラム
Boot p. 14MB 起動時の設定情報が記載されたプログラム
Data p. 2GB データログ等
Rootfs0 512MB アプリケーションプログラム
Rootfs1 512MB アプリケーションプログラムのバックアップ
unalloc. 592MB 未使用
【0013】
一般に、u-Boot12,Boot p.13については、製品の出荷時に上記のブート用プログラムが格納されるが、その後は読み込み専用として使用される。したがって、空調コントローラ1が動作する際に書き込みが行われて使用されるのは、Data p.14,Rootfs0_15又はRootfs1_16である。しかし、本実施形態では、EEPRROM7にも上記のブート用プログラムが予め格納されており、マイコン6は、所定の条件が成立するとu-Boot12及びBoot p.13にブート用プログラムを上書きする。
【0014】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図1は、本実施形態の要旨に係る部分のメイン処理を示すフローチャートである。マイコン6は、microSDカード8のu-Boot12,Boot p.13に格納されているブート用プログラムを起動;実行すると(S1,S2)、続いてRootfs0_15に格納されているアプリケーションプログラムを実行する(S3)。尚、ここでは、Rootfs1_16に格納されているプログラムを実行しても良い。
【0015】
次に、マイコン6は、RTC9が計時している年月日及び時刻を参照して、X月XX日のAM2:00であるか否かを判断する(S4)。X月XX日のAM2:00でなければ(NO)、マイコン6は低電圧検知フラグを「0」にクリアしてから(S9)ステップS4に戻る。
【0016】
一方、ステップS4で「YES」と判断すると、低電圧検知フラグが「0」で且つマイコン6のCPUの処理負荷が低い「Free」の状態か否かを判断する(S5)。ここで、CPUの処理負荷が高い状態とは、
図1には示していない空調機との通信処理が行われている状態等である。例えば、CPUは自身の処理負荷が高いと判断するとビジーフラグを「1」にセットし、低いと判断すると同フラグを「0」にリセットする。すなわち、後者の状態が「Free」に対応する。したがって、ステップS5の判断は、CPUの周辺回路であるマイコン6内のロジック回路で行っても良い。CPUは処理負荷判定部の一例である。
【0017】
ステップS5で「YES」と判断すると、マイコン6は、microSDカード8のu-Boot12にブート用プログラムを上書きする(S6)。すなわち、EEPROM7に記憶されているブート用プログラムを読み出して、u-Boot12に書き込む。ステップS5で「NO」と判断すると、ステップS7に移行する。ステップS7ではステップS5と同様の判断を行い、「YES」と判断するとmicroSDカード8のBoot p.13にブート用プログラムを上書きする(S8)。ステップS5で「NO」と判断すると、ステップS9に移行する。
【0018】
以上の処理では、各年X月XX日のAM2:00になった際に、ステップS5,S7でそれぞれ「YES」と判断すると、microSDカード8のu-Boot12,Boot p.13にそれぞれのブート用プログラムの上書きが行われる。本実施形態では、1年が一定期間の一例である。
【0019】
図5には、電解コンデンサ5の端子電圧,電源IC3の出力電圧,microSDカード8のリセット信号,microSDカード8のクロック信号の各波形を示している。具体数値例として、クロック信号の周波数は528MHzである。電解コンデンサ5の容量は400μF,u-Boot12,Boot p.13にそれぞれの上書きに要する時間は、46msec,73msecであり、計約120msecとなる。また、その際の消費電流は120mA程度である。
【0020】
電解コンデンサ5に交流24Vを印加した1msec後に遮断しているが、電解コンデンサ5の容量によって、24Vの電圧が暫く維持されている。電源投入後約90msecが経過すると、電源IC3が3.3V電源の出力を開始し、それに伴いmicroSDカード8のパワーオンリセットが解除されている。その時点から40msecが経過する前に、microSDカード8用の図示しないクロック回路が動作を開始している。そして、約80msec動作した後、3.3V電源の電圧低下によりmicroSDカード8がリセットされ、動作が停止されている。
【0021】
図5に示すケースでは、電解コンデンサ5の容量を400μFにしたことで、電源が遮断されてからmicroSDカード8の動作が停止するまでに200msecの時間が確保されている。したがって、u-Boot12,Boot p.13にそれぞれの上書きに要する合計時間の120msecはカバーできている。低電圧検出回路4の閾値電圧は10Vに設定されているため、低電圧検出フラグがセットされた状態では、3.3V電源の電圧を上記の合計時間以上に維持することは困難になる。これにより、ステップS5,S7の判断において、低電圧検出フラグ=0を条件としている。
【0022】
また、CPUの処理負荷が高い状態で上書きを行うと、電源が遮断された際に、3.3V電源の電圧が維持されている期間内に上書きが完了せずに中断して、microSDカード8が使用できなくなるおそれがある。そこで、ステップS5,S7の判断において、CPUが「Free」の状態であることを条件に加えている。
【0023】
以上のように本実施形態によれば、空調コントローラ1に、microSDカード8との間でデータ転送を行うメモリインターフェイスを備え、SDカード8に格納されたアプリケーションプログラムを読み出すことでバージョンアップを容易に行えるようにする。EEPORM7には、microSDカード8のブートプログラム領域,u-Boot12,Boot p.13に書き込まれるブート用プログラムを記憶しておく。そして、マイコン6は、一定期間が経過すると、EEPORM7よりブート用プログラムを読み出してu-Boot12,Boot p.13に上書きを行う。このように構成すれば、microSDカード8のブート用プログラムは一定期間毎に上書きされてリフレッシュされるので、ブートプログラム領域におけるビット化けの発生を防止できる。
【0024】
また、マイコン6は、電解コンデンサ5の端子電圧が閾値を下回ることでセットされる低電圧検出フラグがリセット状態であることを条件に、u-Boot12,Boot p.13への上書きを行う。これにより、3.3V電源の電圧が確実に維持される期間内に上書きを完了させることができる。
【0025】
また、マイコン6は、CPUによりセットされるビジーフラグがリセット状態であることを条件に、u-Boot12,Boot p.13ブートプログラムへの上書きを行う。これにより、電源が遮断されて3.3V電源の電圧が低下する際に上書きが中断する可能性を排除して、上書きを確実に完了させることができる。
【0026】
本発明は上記した、又は図面に記載した実施形態にのみ限定されるものではなく、以下のような変形又は拡張が可能である。
microSDカードの各パーティションのサイズ、電圧や回路定数,時間等の具体数値例は一例であり、これらは個別の設計に応じて適宜設定すれば良い。
一定期間は1年に限らず、これも適宜設定すれば良い。
ステップS5,S7の判断を、低電圧検出フラグについてのみ行っても良い。
記録媒体はmicroSDカードに限ることなく、ブート用プログラムが格納されるブートプログラム領域を有している記録媒体であれば適用が可能である。
【符号の説明】
【0027】
図面中、1は空調コントローラ、3は電源IC、4は低電圧検知回路、5は電解コンデンサ、6はマイクロコンピュータ、7はEEPROM、8はmicroSDカード、9はRTCを示す。