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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】熱転写シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/06 20190101AFI20231108BHJP
   B41M 5/382 20060101ALI20231108BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B32B7/06
B41M5/382 420
B32B27/00 L
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019181037
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021054003
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(74)【代理人】
【識別番号】100152098
【弁理士】
【氏名又は名称】林 剛史
(72)【発明者】
【氏名】福井 大介
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/151391(WO,A1)
【文献】特開2019-093686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
B41M 5/035
B41M 5/26
B41M 5/36 - 5/48
B41M 5/50
B41M 5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、前記支持体から転写可能に設けられた転写層と、を含む熱転写シートであって、
前記転写層は、保護層のみからなる単層構造、または前記支持体から最も近くに保護層が位置する積層構造を呈しており、
前記支持体は、基材と、離型層とを含む積層構造であり、
前記離型層は、前記転写層と接している側の表面に位置しており、
前記基材が、粒子を含んでおり、
前記基材の離型層側の表面の中心面平均粗さ(SRa)が、0.15μm以下であり、
前記支持体の、前記転写層と接している側の表面の中心面平均粗さ(SRa)が、0.035μm以上0.085μm以下であり、
前記離型層の前記転写層側の表面から粒子が突出していないことを特徴とする熱転写シート。
【請求項2】
前記離型層の厚みが、0.55μm以上4.5μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱転写シート。
【請求項3】
前記保護層が、活性光線硬化樹脂層であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱転写シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写シートに関する。
【背景技術】
【0002】
透明性に優れ、中間色の再現性や階調性が高く、従来のフルカラー写真画像と同等の高品質画像が簡易に形成できる点から、昇華型熱転写方式を用いて被転写体上に熱転写画像を形成することが広く行われている。被転写体上に熱転写画像が形成された印画物としては、デジタル写真や、身分証明書、運転免許証、会員証等多くの分野で使用されているIDカードが知られている。
【0003】
昇華型熱転写方式による熱転写画像の形成は、基材の一方の面に染料層が設けられた熱転写シートと、被転写体、たとえば、他の基材の一方の面に受容層が設けられた熱転写受像シートとを組み合わせることで行われる。具体的には、被転写体と、熱転写シートの染料層とを重ね合わせ、サーマルヘッド等の加熱手段により、熱転写シートの背面側にエネルギーを印加して染料層の染料を被転写体上に移行させることにより行われる。このような昇華型熱転写方式は、熱転写シートに印加するエネルギー量によって染料の移行量を制御できるため濃度階調が可能であることから、熱転写画像が非常に鮮明であり、且つ透明性、中間調の色再現性、階調性に優れ、フルカラー写真画像に匹敵する高品質の印画物を形成できる。
【0004】
ところで、上記昇華型熱転写方式により形成される熱転写画像は、色材が顔料でなく、比較的低分子量の染料であるため、耐久性に劣るといった欠点を有する。そこで、通常、昇華型熱転写方式により形成された熱転写画像に対しては、保護層を有する熱転写シートを用い、熱転写画像上に保護層を転写して耐久性を向上させることが行われている。(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-71619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、熱転写画像上に保護層が転写された印画物は、その再表面に保護層が位置することになるが、この保護層を指で触ると、保護層に指紋などが付着し、付着した指紋が目立ってしまうといった問題が生じ得る。本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、印画物に耐久性を付与することができ、かつ耐指紋付着性に優れた保護層を転写可能な、熱転写シートを提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、支持体と、前記支持体から転写可能に設けられた転写層と、を含む熱転写シートであって、前記転写層は、保護層のみからなる単層構造、または前記支持体から最も近くに保護層が位置する積層構造を呈しており、前記支持体は、基材と、離型層とを含む積層構造であり、前記離型層は、前記転写層と接している側の表面に位置しており、前記基材が、粒子を含んでおり、前記基材の離型層側の表面の中心面平均粗さ(SRa)が、0.15μm以下であり、前記支持体の、前記転写層と接している側の表面の中心面平均粗さ(SRa)が、0.035μm以上0.085μm以下であり、前記離型層の前記転写層側の表面から粒子が突出していないことを特徴とする。
一実施形態の熱転写シートは、支持体と、前記支持体から転写可能に設けられた転写層と、を含む熱転写シートであって、前記転写層は、保護層のみからなる単層構造、または前記支持体から最も近くに保護層が位置する積層構造を呈しており、前記支持体の、前記転写層と接している側の表面の中心面平均粗さ(SRa)が、0.035μm以上0.085μm以下であることを特徴とする。
【0008】
上記本発明にあっては、前記支持体が、基材と、離型層とを含む積層構造を有しており、前記離型層が、前記転写層と接している側の表面に位置していてもよい。
【0009】
また、上記本発明にあっては、前記基材が、粒子を含んでいてもよい。
【0010】
また、上記本発明にあっては、前記離型層が、粒子を含んでいてもよい。
【0011】
また、上記本発明にあっては、前記保護層が、活性光線硬化樹脂層であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる熱転写シートによれば、保護層が転写された印画物に耐久性を付与しつつ、良好な耐指紋付着性をも付与できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態の熱転写シートの一例を示す概略断面図である。
図2】一実施形態の熱転写シートの一例を示す概略断面図である。
図3】一実施形態の熱転写シートの一例を示す概略断面図である。
図4】一実施形態の熱転写シートを用いて被転写体上に転写層を転写したときの状態の一例を示す概略断面図であり、(A)は転写前の状態を示し、(B)は転写後の状態を示している。
図5】一実施形態の熱転写シートを用いて被転写体上に転写層を転写したときの状態の一例を示す概略断面図であり、(A)は転写前の状態を示し、(B)は転写後の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面等を参照しながら説明する。なお、本発明は多くの異なる態様で実施でき、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。また、説明の便宜上、上または下等という語句を用いて説明するが、上下方向が逆転してもよい。左右方向についても同様である。
【0015】
<<熱転写シート>>
以下に、本発明の一実施形態の熱転写シート(以下、一実施形態の熱転写シートと言う)について図面を用いて具体的に説明する。
【0016】
図1図3に示すように、一実施形態の熱転写シート100は、支持体3と、この支持体3の一方の面上(図示する形態では上面)に設けられた転写層10とから構成されている。ここで、支持体3は、基材1と、この基材1の一方の面(図示する形態では上面)に設けられた離型層2とから構成されている。転写層10は、一実施形態の熱転写シート100にエネルギーを印加することで、離型層2との界面で剥離し、被転写体上に移行する層である。転写層10は、保護層のみからなる単層構造、または保護層を含む積層構造であり、図1に示す形態の転写層10は、保護層5のみからなる単層構造を呈しており、図2に示す形態の転写層10は、支持体3側から、保護層5と接着層6がこの順で積層されてなる積層構造を呈している。なお、転写層10を構成する保護層5は、被転写体上に転写層10を転写したときに、最表面に位置する層である。したがって、転写層10が積層構造を呈する場合、保護層5は、転写層10を構成する層のうち、支持体3から最も近くに位置している。以下、一実施形態の熱転写シート100の各構成について説明する。
【0017】
(支持体)
支持体3は、一実施形態の熱転写シート100における必須の構成であり、支持体3の一方の面上に位置する転写層10を支持している。このような支持体3の具体的な構造については特に限定されることはないが、たとえば、図1~3に示すように、基材1と離型層2との積層構造であってもよい。
【0018】
ここで、一実施形態の熱転写シート100にあっては、支持体3の、転写層10と接している側の表面(図1~3においては、上面側に位置する離型層2の表面)の中心面平均粗さ(SRa)が、0.035μm以上0.085μm以下であることに特徴を有している。このように、支持体3における転写層10との界面の中心面平均粗さ(SRa)を所定の範囲内とすることにより、被転写体上に転写された後の転写層10の表面に、適度な凹凸を付与せしめることができ、当該凹凸により、転写層10表面に指紋汚れが付着した際に、当該指紋汚れの濡れ面積が広げられ、指紋汚れを目立たなくできる。なお、付着した指紋汚れが広がらずに一カ所に集中すると、当該指紋汚れに照射された光が散乱し易くなり、その結果、指紋汚れが目立ちやすくなる。
【0019】
支持体3における転写層10との界面の中心面平均粗さ(SRa)を適当な数値範囲、具体的には0.035μm以上0.085μm以下とすることにより、付着した指紋汚れが適当に広がることについては、本願発明者が鋭意研究した結果見出したことであり、当該中心面平均粗さ(SRa)が0.035μm未満であっても、0.085μmより大きくても、付着した指紋汚れが広がらず、当該指紋汚れを目立たなくする効果は発揮されない。当該中心面平均粗さ(SRa)は、0.04μm以上0.07μm以下であることがより好ましい。
【0020】
なお、この明細書中における「中心面平均粗さ(SRa)」は、3次元表面粗さ形状測定機(サーフコム(登録商標)1400 (株)東京精密)を用いて測定した値である。
【0021】
本発明の熱転写シートにあっては、支持体の、転写層と接している側の表面の中心面平均粗さ(SRa)が0.035μm以上0.085μm以下となっていればよく、いかにして当該数値範囲とするのか、つまりその具体的な手段や構成については特に限定されることはない。たとえば、図1~3に示すように、支持体3が、基材1と離型層2との積層構造を呈している場合にあっては、当該基材1および離型層2のいずれか一方または双方の表面に所定の凹凸を設けることにより、最終的な支持体3の表面粗さを所定の範囲内とすることもできる。
【0022】
以下に、図1~3に示すように、支持体3が基材と離型層2との積層構造を呈している場合を例に挙げて、具体的に説明する。
【0023】
(基材)
基材1は、その面上に位置する離型層2および転写層10を保持している。基材1の材料について特に限定はないが、転写層10を転写する際に加えられる熱に耐え、取り扱い上支障のない機械的特性を有するものが好ましい。このような基材1としては、たとえばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、セルロース誘導体、ポリエチレン、エチレン- 酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド等の各種プラスチックフィルムまたはシートが挙げられる。これらの材料はそれぞれ単独でも使用できるが、他の材料と組み合わせた積層体として使用してもよい。基材1の厚さは、その強度及び耐熱性が適切になるように材料に応じて適宜設定でき、0.5μm以上50μm以下の範囲内が好ましく、1μm以上20μm以下の範囲内がより好ましく、1μm以上10μm以下の範囲内がさらに好ましい。
【0024】
また、基材1は、離型層2が設けられる面に接着処理が施されていてもよい。接着処理を施すことで、基材1と離型層2との密着性を向上させることができる。
【0025】
接着処理としては、たとえば、コロナ放電処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線処理、放射線処理、粗面化処理、化学薬品処理、プラズマ処理、低温プラズマ処理、プライマー処理、グラフト化処理等公知の樹脂表面改質技術をそのまま適用できる。また、それらの処理を2種以上併用することもできる。なお、プライマー処理には、基材1上にプライマー層を設けた構成も含まれる。
【0026】
ここで、一実施形態にかかる熱転写シート100にあっては、基材1の、離型層2が積層される側の表面に所定の凹凸を設けることにより、最終的な支持体3の中心面平均粗さ(SRa)を0.035μm以上0.085μm以下としてもよい。
【0027】
基材1の、離型層2が積層される側の表面に所定の凹凸を設けるための具体的な手段については特に限定されることはないが、たとえば、上記で説明した基材1中にフィラーを含有せしめてもよい。
【0028】
図4(A)に示すように、基材1中にフィラーを含有せしめることにより、基材1の離型層2が積層される側の表面に所定の凹凸を設けることができ、この凹凸は、当該表面に設けられる離型層2の表面にも反映される。そして、図4(B)に示すように、この状態において離型層2の表面に設けられた転写層10を被転写体に転写することにより、転写層10の表面にも、離型層表面に反映された凹凸に対応した凹凸が発現されることとなり、当該凹凸によって指紋汚れを目立たなくすることができる。
【0029】
ここで、基材1中にフィラーを含有せしめる場合にあっては、市販のフィラー入り樹脂フィルムを用いてもよい。たとえば、二酸化ケイ素フィラー入りポリエチレンテレフタレートなどが市販されており、より具体的には、エンブレットPTH-12(ユニチカ(株))などを挙げることができる。
【0030】
なお、図4(A)に示すように、基材1中にフィラーを含有せしめつつ、その上に離型層2を積層することで、支持体3における最終的な表面(つまり、離型層2の表面)の中心面平均粗さ(SRa)を0.035μm以上0.085μm以下とする場合にあっては、フィラーを含有する基材1の中心面平均粗さ(SRa)を0.15μm以下とすることが好ましい。この値よりも大きくすると、離型層2の厚さを過剰に厚くしないと当該離型層2の中心面平均粗さ(SRa)が0.085μm以下とすることができないためである。
【0031】
なお、図示はしていないが、支持体が基材のみから構成されている場合にあっては、当該基材の、転写層が設けられる側の表面の中心面平均粗さ(SRa)が0.035μm以上0.085μm以下となるように、基材1中にフィラーを含有せしめる必要がある。
【0032】
(離型層)
図1図3に示すように、一実施形態にかかる熱転写シート100を構成する支持体3にあっては、前述した基材1上に離型層2が設けられている。離型層2は、少なくともバインダー樹脂によって構成されており、当該離型層2の表面に設けられる転写層10の転写性を向上するための層である。
【0033】
離型層2を構成するバインダー樹脂については特に限定はなく、たとえば、ワックス類、シリコーンワックス、シリコーン樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂などの各種シリコーン変性樹脂、フッ素樹脂、フッ素変性樹脂、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、アクリル-スチレン系共重合体、熱硬化性エポキシ-アミノ共重合体、及び熱硬化性アルキッド-アミノ共重合体(熱硬化性アミノアルキド樹脂)、メラミン樹脂、セルロース樹脂、尿素系樹脂、ポリオレフィン、繊維素系樹脂等の、転写層10の転写性を良好なものとできるバインダー樹脂を好適に用いることができる。離型層2は、バインダー樹脂として1種を含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。また、離型層2の厚みについても特に限定されることはなく、たとえば、0.1μm以上10μm以下の範囲内が好ましく、0.55μm以上4.5μm以下の範囲内がより好ましい。
【0034】
ここで、一実施形態にかかる熱転写シート100にあっては、離型層2の、転写層10が積層される側の表面に所定の凹凸を設けることにより、最終的な支持体3の中心面平均粗さ(SRa)を0.035μm以上0.085μm以下としてもよい。
【0035】
離型層2の、転写層10が積層される側の表面に所定の凹凸を設けるための具体的な手段については特に限定されることはないが、たとえば、上記で説明した離型層2中にフィラーを含有せしめてもよい。
【0036】
図5(A)に示すように、離型層2中にフィラーを含有せしめることにより、離型層2の、転写層10が積層される側の表面に所定の凹凸を設けることができる。そして、図5(B)に示すように、この状態において離型層2の表面に設けられた転写層10を被転写体に転写することにより、転写層10の表面にも、離型層表面に設けられた凹凸に対応した凹凸が発現されることとなり、当該凹凸によって指紋汚れを目立たなくすることができる。
【0037】
ここで、離型層2中に含有せしめるフィラーの材質は特に限定されることはないが、たとえばシリコーン樹脂などを挙げることができる。また、フィラーの形状も特に限定されることはないが、たとえば真球状を挙げることができる。また、フィラーの大きさも限定されることはないが1μm以上5μm以下程度であることが好ましく、2μm以上3μm以下程度であることが特に好ましい。また、離型層2の総質量に対するフィラーの含有割合についても特に限定されることはないが、たとえば0.1質量%以上1.5質量%以下程度であることが好ましく、0.5質量%以上1.0質量%以下程度であることが特に好ましい。
【0038】
離型層2の形成方法については特に限定はなく、たとえば、バインダー樹脂、フィラー、必要に応じて用いられる各種の添加材を、適当な溶媒に分散、或いは溶解した離型層用塗工液を調製し、この塗工液を、基材1、或いは基材1上に設けられる任意の層上に、塗布・乾燥して形成できる。塗布方法としては、たとえば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースコーティング法等が挙げられる。また、これ以外の塗布方法を用いることもできる。このことは、後述する各種塗工液の塗布方法についても同様である。
【0039】
(転写層)
図1図3に示すように、離型層2上には、転写層10が設けられている。転写層10は、保護層5のみからなる単層構造を呈しているか(図1参照)、あるいは、離型層2側から最も近くに保護層5が位置する積層構造を呈している(図2参照)。なお、図2に示す形態の転写層10は、離型層2側から、保護層5、接着層6がこの順で積層されてなる積層構造を呈している。図3に示す形態の転写層10は、単層構造、及び積層構造の双方を含むものであり、保護層5の記載を省略している。
【0040】
(保護層)
転写層10を構成する保護層5については特に限定されることはなく、従来から用いられている保護層を適宜用いることができる。
【0041】
具体的には、保護層5は少なくともバインダー樹脂により構成されている。このバインダー樹脂については特に限定はなく、耐可塑剤性や耐擦過性等の耐久性を考慮して適宜決定すればよい。このようなバインダー樹脂としては、たとえば、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリカーボネート、フェノキシ樹脂、紫外線吸収性樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリルウレタン樹脂、これらの各樹脂をシリコーン変性させた樹脂、これらの各樹脂の混合物、電離放射線硬化性樹脂や紫外線吸収性樹脂等の活性光線硬化樹脂などが挙げられる。保護層5は、バインダー樹脂として1種を含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。
【0042】
電離放射線硬化性樹脂は、耐可塑剤性や耐擦過性が特に優れている点で保護層のバインダー樹脂として好適に用いることができる。電離放射線硬化性樹脂は、従来公知の電離放射線硬化性樹脂の中から適宜選択して用いることができ、たとえば、ラジカル重合性のポリマーまたはオリゴマーを電離放射線照射により架橋、硬化させ、必要に応じて光重合開始剤を添加し、電子線や紫外線によって重合架橋させたものを用いることができる。紫外線吸収性樹脂を含有する保護層5は、印画物に耐光性を付与することに優れている。
【0043】
紫外線吸収性樹脂としては、たとえば、反応性紫外線吸収剤を熱可塑性樹脂または上記の電離放射線硬化性樹脂に反応、結合させて得た樹脂を使用できる。より具体的には、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、置換アクリロニトリル系、ニッケルキレート系、ヒンダートアミン系のような従来公知の非反応性の有機系紫外線吸収剤に、付加重合性二重結合(たとえばビニル基、アクリロイル基、メタアクリロイル基など)、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基のような反応性基を導入したもの等が挙げられる。
【0044】
バインダー樹脂の含有量についても特に限定はないが、保護層5の総質量に対し85質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。バインダー樹脂の含有量を好ましい範囲とすることで、保護層5に十分な耐久性を付与できる。
【0045】
また、図1に示すように、転写層10を保護層5のみからなる単層構造とする場合には、保護層5は、被転写体と転写層10との密着性を有する成分を含有していることが好ましい。なお、被転写体側で、転写層10との密着性を担保する対策が取られている場合には、保護層5に密着性を有する成分を含有せしめることなく、被転写体と転写層10とを密着させることができる。密着性を有する成分については、後述する接着層で説明する成分等を適宜選択して用いることができる。
【0046】
また、保護層5には、必要に応じて、各種のシリコーンオイル、ポリエチレンワックス、ステアリン酸亜鉛、ステアリルリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムなどの金属石鹸類、脂肪酸アミド、ポリエチレンワックス、カルナバワックス、パラフィンワックス等の離型剤、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、トリアジン系、酸化チタン、酸化亜鉛などの公知の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系、Niキレート系などの光安定剤、ヒンダードフェノール系、硫黄系、リン系、ラクトン系などの酸化防止剤等を含有していてもよい。保護層5は、添加材として1種を単独で含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。
【0047】
保護層5の形成方法について特に限定はなく、バインダー樹脂と、必要に応じて用いられる各種の添加材を、適当な溶媒に分散、或いは溶解した保護層用塗工液を調製し、この塗工液を、離型層2上に、塗布・乾燥して形成できる。
【0048】
保護層5の厚みについて特に限定はないが、通常、0.1μm以上50μm以下の範囲内であり、好ましくは0.5μm以上10μm以下の範囲内である。
【0049】
(接着層)
図2に示すように、転写層10を、基材1側(離型層2側)から、保護層5、接着層6がこの順で積層されてなる積層構造とすることもできる。この形態の転写層10によれば、保護層5に被転写体との密着性を付与するための成分(密着性を有する成分)を含有せしめることなく、転写層10と被転写体との密着性を向上できる。つまりは、耐久性と、密着性の機能を、保護層5と、接着層6とに分離でき、双方の層に求められる機能を高めることができる。
【0050】
接着層を有する成分について特に限定はなく、たとえば、ウレタン樹脂、α-オレフィン-無水マレイン酸樹脂等のポリオレフィン、ポリエステル、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、酢酸ビニル樹脂、シアノアクリレート樹脂等が挙げられる。中でもアクリル樹脂の反応型のものや、変性したもの等を好ましく使用できる。また、接着剤は硬化剤を用いて硬化させると、接着力も向上し、耐熱性も上がるため好ましい。硬化剤としては、イソシアネート化合物が一般的であるが、脂肪族アミン、環状脂肪族アミン、芳香族アミン、酸無水物等を使用できる。
【0051】
接着層6の厚みは、0.5μm以上10μm以下の範囲内が好ましい。接着層の形成方法について特に限定はなく、たとえば、上記で例示した接着剤や、必要に応じて添加される添加材を、適当な溶媒に分散、或いは溶解した接着層用塗工液を調製し、この塗工液を、保護層5、或いは、保護層5上に設けられる任意の層上に塗布・乾燥して形成できる。
【0052】
(染料層)
図3に示すように、支持体3の一方の面上には、上記で説明した転写層10と面順次に染料層7を設けてもよい。図3に示す形態の熱転写シート100は、支持体3の一方の面上に、単一の染料層7が設けられている。また、基材の一方の面上に、複数の染料層、たとえば、イエロー染料層、マゼンタ染料層、シアン染料層、必要に応じてブラック染料層等を面順次に設けてもよい。なお、基材1の一方の面上に単一の染料層(図示しない)を設けてもよい。また、染料層7と転写層10とを「1ユニット」としたときに、基材1の一方の面上に、「1ユニット」を繰り返し設けることもできる。
【0053】
図3に示す形態の熱転写シートによれば、被転写体上への熱転写画像の形成と、形成された熱転写画像上への転写層10の転写を1つの熱転写シート100を用いて行うことができる。
【0054】
一例としての染料層7は、バインダー樹脂と、昇華性染料とを含有している。染料層7が含有しているバインダー樹脂について特に限定はなく、染料層の分野で従来公知のバインダー樹脂を適宜選択して用いることができる。染料層7のバインダー樹脂としては、たとえば、エチルセルロース樹脂、ヒドロキシエチルセルロース樹脂、エチルヒドロキシセルロース樹脂、メチルセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等のセルロース樹脂、ポリビニルアルコール脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルピロリドン等のビニル樹脂、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド等のアクリル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル等が挙げられる。
【0055】
バインダー樹脂の含有量について特に限定はないが、染料層7の総質量に対するバインダー樹脂の含有量は20質量%以上が好ましい。染料層の総質量に対するバインダー樹脂の含有量を20質量%以上とすることで、染料層7中で昇華性染料を十分に保持でき、結果、保存性を向上させることができる。バインダー樹脂の含有量の上限値について特に限定はなく、昇華性染料や、任意の添加材の含有量に応じて適宜設定すればよい。
【0056】
染料層7が含有している昇華性染料について特に限定はないが、十分な着色濃度を有し、光、熱、温度等により変退色しないものが好ましい。染料としては、ジアリールメタン系染料、トリアリールメタン系染料、チアゾール系染料、メロシアニン染料、ピラゾロン染料、メチン系染料、インドアニリン系染料、アセトフェノンアゾメチン、ピラゾロアゾメチン、イミダゾルアゾメチン、イミダゾアゾメチン、ピリドンアゾメチン等のアゾメチン系染料、キサンテン系染料、オキサジン系染料、ジシアノスチレン、トリシアノスチレン等のシアノスチレン系染料、チアジン系染料、アジン系染料、アクリジン系染料、ベンゼンアゾ系染料、ピリドンアゾ、チオフェンアゾ、イソチアゾールアゾ、ピロールアゾ、ピラゾールアゾ、イミダゾールアゾ、チアジアゾールアゾ、トリアゾールアゾ、ジスアゾ等のアゾ系染料、スピロピラン系染料、インドリノスピロピラン系染料、フルオラン系染料、ローダミンラクタム系染料、ナフトキノン系染料、アントラキノン系染料、キノフタロン系染料等が挙げられる。具体的には、MSRedG(三井東圧化学(株))、Macrolex Red Violet R(バイエル社)、Ceres Red 7B(バイエル社)、Samaron Red F3BS(三菱ケミカル(株))等の赤色染料、ホロンブリリアントイエロー6GL(クラリアント社)、PTY-52(三菱ケミカル(株))、マクロレックスイエロー6G(バイエル社)等の黄色染料、カヤセット(登録商標)ブルー714(日本化薬(株))、ホロンブリリアントブルーS-R(クラリアント社)、MSブルー100(三井東圧化学(株))、C.I.ソルベントブルー63等の青色染料等が挙げられる。
【0057】
(染料プライマー層)
また、支持体3と染料層7との間に、染料プライマー層(図示しない)を設けることもできる。染料プライマー層に含まれる成分について特に限定はなく、たとえば、ポリエステル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、アクリル-スチレン系共重合体、ポリアクリルアミド、ポリアミド、ポリエーテル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセトアセタールやポリビニルブチラール等が挙げられる。
【0058】
また、染料プライマー層は、コロイド状無機顔料超微粒子を含有しいていてもよい。コロイド状無機顔料超微粒子としては、たとえば、シリカ(コロイダルシリカ)、アルミナ或はアルミナ水和物(アルミナゾル、コロイダルアルミナ、カチオン性アルミニウム酸化物またはその水和物、擬ベーマイト等)、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン等が挙げられる。特に、コロイダルシリカ、アルミナゾルが好ましく用いられる。これらのコロイド状無機顔料超微粒子の大きさは、一次平均粒径で100nm以下、好ましくは50nm以下である。
【0059】
(背面層)
また、支持体3の他方の面に、背面層(図示しない)を設けてもよい。なお、背面層は一実施形態の熱転写シートにおける任意の構成である。
【0060】
背面層は、従来公知の熱可塑性樹脂等を適宜選択して形成できる。このような、熱可塑性樹脂として、たとえば、ポリエステル、ポリアクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル、アクリル-スチレン系共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンや、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアクリルアミド、ポリビニルクロリド、ポリビニルブチラールやポリビニルアセトアセタール、及びこれらのシリコーン変性物等が挙げられる。中でも、耐熱性等の点から、ポリアミドイミドまたはそのシリコーン変性物等を好ましく用いることができる。また、これらの樹脂は、硬化剤によって硬化されたものであってもよい。硬化剤としては、たとえば、イソシアネート系硬化剤等が挙げられる。
【0061】
また、背面層には、上記熱可塑性樹脂に加え、スリップ性を向上させる目的で、ワックス、高級脂肪酸アミド、リン酸エステル化合物、金属石鹸、シリコーンオイル、界面活性剤等の離型剤、フッ素樹脂等の有機粉末、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム等の無機粒子等の各種添加材が含有されていることが好ましく、リン酸エステルまたは金属石鹸の少なくとも1種が含有されていることが特に好ましい。
【0062】
背面層は、たとえば、上記熱可塑性樹脂、必要に応じて添加される各種添加材を適当な溶媒に分散または溶解させた背面層用塗工液を調製し、この塗工液を、基材1の他方の面上に、塗布・乾燥して形成できる。背面層の厚みは、耐熱性等の向上等の点から、0.1μm以上5μm以下の範囲内が好ましく、0.3μm以上2μm以下の範囲内がより好ましい。
【0063】
(被転写体)
一実施形態の熱転写シート100の転写層10が転写される被転写体としては、たとえば、熱転写受像シート、普通紙、上質紙、トレーシングペーパー、プラスチックフィルム、塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリカーボネートを主体として構成されるプラスチックカード等が挙げられる。また、被転写体として所定の画像を有するものを用いることもできる。また、被転写体は着色されたものであってもよく、透明性を有するものであってもよい。
【0064】
(転写層の転写方法)
被転写体上への転写層の転写方法について特に限定はなく、たとえば、サーマルヘッド等の加熱デバイスを有する熱転写プリンタや、ホットスタンプ、ヒートロール等の加熱手段を用いて行うことができる。
【実施例
【0065】
次に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下、特に断りのない限り、部または%は質量基準である。また、配合量(部)は、仕込み量であり、固形分に換算する前の値である。
【0066】
(実施例1)
基材として、厚さ12μmのフィラー入りポリエチレンテレフタレートフィルム(エンブレットPTH-12 ユニチカ(株)、練込マットPET)を用い、この基材上に、下記組成の離型層用塗工液1を、乾燥時の厚みが0.6μmになるように塗布・乾燥し離型層を形成した。次いで、離型層上に、下記組成の保護層用塗工液1を乾燥時の厚みが4.5μmになるように塗布・乾燥し、保護層を形成することで、基材上に、離型層、保護層がこの順で設けられた実施例1の熱転写シートを得た。
【0067】
なお、保護層用塗工液1を塗布する前の段階で、離型層表面の中心面平均粗さSRaを3次元表面粗さ形状測定機(サーフコム(登録商標)1400 (株)東京精密)を用いて測定したところ、0.044μmであった。
【0068】
<離型層用塗工液1>
・エポキシ基含有シルセスキオキサン樹脂 90部
(SQ502-8 荒川化学工業(株))
・硬化触媒 8部
(セルトップ(登録商標)CAT-A (株)ダイセル)
・ポリエステルウレタン樹脂 2部
(バイロン(登録商標)UR-1700 東洋紡(株))
・トルエン 80部
・メチルエチルケトン 160部
【0069】
<保護層用塗工液1>
・多官能アクリレート 18部
(NKエステルA-9300 新中村化学工業(株))
・ウレタンアクリレート 18部
(NKオリゴマーEA1020 新中村化学工業(株))
・ウレタンアクリレート 10部
(NKエステルU-15HA 新中村化学工業(株))
・反応性バインダー(不飽和基含有) 4部
(NKポリマーC24T 新中村化学工業(株))
・フィラー(体積平均粒子径0.7μm) 10部
(XC99-A8808 モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン製)
・フィラー(体積平均粒子径12nm) 34部
(MEK-AC2140Z 日産化学工業(株))
・界面活性剤(アクリル系界面活性剤) 1部
(LF-1984 楠本化学(株))
・光重合開始剤 5部
(イルガキュア(登録商標)184 BASFジャパン(株))
・トルエン 100部
・メチルエチルケトン 100部
【0070】
(実施例2)
離型層用塗工液1を、下記組成の離型層用塗工液2に変更して離型層を形成した以外はすべて実施例1と同様にして、実施例2の熱転写シートを得た。
【0071】
なお、保護層用塗工液1を塗布する前の段階で、離型層表面の中心面平均粗さSRaを3次元表面粗さ形状測定機(サーフコム(登録商標)1400 (株)東京精密)を用いて測定したところ、0.074μmであった。
【0072】
<離型層用塗工液2>
・エポキシ基含有シルセスキオキサン樹脂 91.3部
(SQ502-8 荒川化学工業(株))
・硬化触媒 8.2部
(セルトップ(登録商標)CAT-A (株)ダイセル)
・シリコーン樹脂フィラー(平均粒子径3.0μm) 0.5部
(トスパール(登録商標)130 モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン)
・トルエン 80部
・メチルエチルケトン 160部
【0073】
(実施例3)
保護層用塗工液1を、下記組成の保護層用塗工液2に変更して保護層を形成した以外はすべて実施例1と同様にして、実施例3の熱転写シートを得た。
【0074】
なお、保護層用塗工液1を塗布する前の段階で、離型層表面の中心面平均粗さSRaを3次元表面粗さ形状測定機(サーフコム(登録商標)1400 (株)東京精密)を用いて測定したところ、0.044μmであった。
【0075】
<保護層用塗工液2>
・スチレン-アクリル樹脂 150部
(ミューティクル(登録商標)PP320P 三井化学(株))
・ポリビニルアルコール 100部
(C-318 (株)DNPファインケミカル)
・水 25部
・溶剤 50部
(ソルミックス(登録商標)A-11 日本アルコール販売(株))
【0076】
(実施例4)
基材を、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(エンブレットS-12 ユニチカ(株)、プレーンPET)に変更し、離型層用塗工液1を、上記組成の離型層塗工液2に変更して離型層を形成した以外はすべて実施例1と同様にして実施例4の熱転写シートを得た。
【0077】
なお、保護層用塗工液1を塗布する前の段階で、離型層表面の中心面平均粗さSRaを3次元表面粗さ形状測定機(サーフコム(登録商標)1400 (株)東京精密)を用いて測定したところ、0.040μmであった。
【0078】
(実施例5)
基材を、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(エンブレットS-12 ユニチカ(株)、プレーンPET)に変更し、離型層用塗工液1を、下記組成の離型層塗工液3に変更して離型層を形成した以外はすべて実施例1と同様にして実施例5の熱転写シートを得た。
【0079】
<離型層用塗工液3>
・エポキシ基含有シルセスキオキサン樹脂 91.3部
(SQ502-8 荒川化学工業(株))
・硬化触媒 8.2部
(セルトップ(登録商標)CAT-A (株)ダイセル)
・シリコーン樹脂フィラー(平均粒子径2.0μm) 0.5部
(トスパール(登録商標)120 モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン)
・トルエン 80部
・メチルエチルケトン 160部
【0080】
なお、保護層用塗工液1を塗布する前の段階で、離型層表面の中心面平均粗さSRaを3次元表面粗さ形状測定機(サーフコム(登録商標)1400 (株)東京精密)を用いて測定したところ、0.065μmであった。
【0081】
(比較例1)
基材を、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(エンブレットS-12 ユニチカ(株)、プレーンPET)に変更した以外はすべて実施例1と同様にして比較例1の熱転写シートを得た。
【0082】
なお、保護層用塗工液1を塗布する前の段階で、離型層表面の中心面平均粗さSRaを3次元表面粗さ形状測定機(サーフコム(登録商標)1400 (株)東京精密)を用いて測定したところ、0.025μmであった。
【0083】
(比較例2)
基材を、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(エンブレットS-12 ユニチカ(株)、プレーンPET)に変更し、離型層用塗工液1を、下記組成の離型層塗工液4に変更して離型層を形成した以外はすべて実施例1と同様にして比較例2の熱転写シートを得た。
【0084】
<離型層用塗工液4>
・エポキシ基含有シルセスキオキサン樹脂 89.9部
(SQ502-8 荒川化学工業(株))
・硬化触媒 8.1部
(セルトップ(登録商標)CAT-A (株)ダイセル)
・シリコーン樹脂フィラー(平均粒子径6.0μm) 2部
(トスパール(登録商標)2000B モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン)
・トルエン 80部
・メチルエチルケトン 160部
【0085】
なお、保護層用塗工液1を塗布する前の段階で、離型層表面の中心面平均粗さSRaを3次元表面粗さ形状測定機(サーフコム(登録商標)1400 (株)東京精密)を用いて測定したところ、0.091μmであった。
【0086】
(比較例3)
基材を、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(エンブレットS-12 ユニチカ(株)、プレーンPET)に変更し、離型層用塗工液1を、下記組成の離型層塗工液5に変更して離型層を形成した以外はすべて実施例1と同様にして比較例3の熱転写シートを得た。
【0087】
<離型層用塗工液5>
・エポキシ基含有シルセスキオキサン樹脂 90.8部
(SQ502-8 荒川化学工業(株))
・硬化触媒 8.2部
(セルトップ(登録商標)CAT-A (株)ダイセル)
・シリコーン樹脂フィラー(平均粒子径3.0μm) 1部
(トスパール(登録商標)130 モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン)
・トルエン 80部
・メチルエチルケトン 160部
【0088】
なお、保護層用塗工液1を塗布する前の段階で、離型層表面の中心面平均粗さSRaを3次元表面粗さ形状測定機(サーフコム(登録商標)1400 (株)東京精密)を用いて測定したところ、0.100μmであった。
【0089】
(比較例4)
離型層用塗工液1を用いることなく(離型層を形成せず)、基材上に直接保護層用塗工液1を用いて保護層を形成した以外はすべて実施例1と同様にして比較例4の熱転写シートを得た。
【0090】
なお、保護層用塗工液1を塗布する前の段階で、離型層表面の中心面平均粗さSRaを3次元表面粗さ形状測定機(サーフコム(登録商標)1400 (株)東京精密)を用いて測定したところ、0.096μmであった。
【0091】
(転写層の転写)
カード用ラミネータ(大日本印刷(株))を用い、塩化ビニル製のカード基材(大日本印刷(株))上に、各実施例、及び比較例の熱転写シートの転写層を転写し、各実施例、及び比較例の転写物を得た。転写層の転写は下記の条件にて行った。
【0092】
(転写条件)
・ラミネータ(GL835PRO 日本ジー・ビー・シー(株))
・上下のロール温度:150℃
・ラミネートスピード:15.07mm/sec.
・ロールニップ幅:1mm
【0093】
(耐指紋性評価)
トリオレイン及び微粒子を含有する擬似指紋液(人工指紋液)を、圧子(接触面は直径12mmφの円)により押圧(500g荷重)して、実施例および比較例それぞれの転写物における転写層の表面に、1mmあたり、0.04mgの人工指紋を付着させた。人工指紋付着前後の印画物の色相をSpectrolino(X-Rite社)(D65光源、視野角2°)を用いて測定し、下記色差計算式に基づいて、ΔEを算出し、下記評価基準に基づいて耐指紋付着性の評価を行った。なお、色相の測定はそれぞれ9回行った。ΔEの値が小さいほど、耐指紋付着性は良好となる。
【0094】
(色差計算式)
ΔE=((人工指紋付着前後のL値の差)+(人工指紋付着前後のa値の差)+(人工指紋付着前後のb値の差)1/2
なお、Lは、CIE1976、L表色系(JIS-Z-8729(1980))に規定されているLを意味する。
【0095】
(評価基準)
A:ΔEが7未満である。
B:ΔEが7以上7.5未満の範囲内である。
C:ΔEが7.5以上8未満の範囲内である。
NG:ΔEが8以上である。
【0096】
(光沢度の測定)
実施例および比較例それぞれの転写物における転写層の表面の光沢度を、光沢度計(VG2000 日本電色工業(株))を用いて測定した(測定角度20°)。
【0097】
(印画物耐久性評価)
実施例および比較例それぞれの転写物における転写層の表面の耐久性を、ANSI-INCITS322-2002、5.9 Surface Abrasionに準拠して、テーバー式摩耗試験機(No.410 (株)東洋精機製作所)で実施した。250サイクル毎に、摩耗部の反射濃度を、分光光度計(RD918 X-Rite社、ビジュアルフィルタ使用)で測定し、摩耗前の濃度に対して、50%未満となった時点で、摩耗を終了し、下記評価基準に基づいて、耐久性の評価を行った。
【0098】
(評価基準)
A:50%未満となった時点のサイクル数が2000サイクル以上。
B:50%未満となった時点のサイクル数が1000サイクル以上2000サイクル未満。
NG:50%未満となった時点のサイクル数が1000サイクル未満。
【0099】
実施例および比較例の熱転写シートの評価結果を表1にまとめる。
【0100】
【表1】
【符号の説明】
【0101】
1・・・基材
2・・・離型層
3・・・支持体
5・・・保護層
7・・・染料層
10・・・転写層
100・・・熱転写シート
図1
図2
図3
図4
図5