(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】間仕切り用のパネル装置と、それを使用する間仕切り用のドア装置
(51)【国際特許分類】
E04B 2/74 20060101AFI20231108BHJP
E06B 3/36 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
E04B2/74 511A
E06B3/36
(21)【出願番号】P 2019182379
(22)【出願日】2019-10-02
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000184621
【氏名又は名称】小松ウオール工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090712
【氏名又は名称】松田 忠秋
(72)【発明者】
【氏名】寺井 寛
(72)【発明者】
【氏名】森田 律子
(72)【発明者】
【氏名】本 慶子
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-084185(JP,A)
【文献】特開平11-022315(JP,A)
【文献】特許第6513497(JP,B2)
【文献】実開昭61-136074(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/72-2/82
E06B 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア枠の一方の縦枠を連結する第1の支柱と、該第1の支柱と対になる第2の支柱と、前記第1、第2の支柱の前面側、後面側にそれぞれ装着する前パネル、後パネルとを備えてなり、前記前パネルは、
前記第1の支柱の前面側に付設するフック板のフックに掛止し、互いに同一平面となっている前記第1の支柱、縦枠の各前面側の全部を覆うとともに前記第2の支柱の前面側の半分を覆い、前記後パネルは、前記第1、第2の支柱の後面側の各半分を覆うことを特徴とする間仕切り用のパネル装置。
【請求項2】
前記前パネルは、前記第1の支柱側の端縁が縦枠の前面側を越えてドア枠側に突出し、閉鎖時のドアが接触するシール材の収納部を形成することを特徴とする請求項1記載の間仕切り用のパネル装置。
【請求項3】
前記前パネルは
、前記第2の支柱に装着する掛止金
具に掛止することを特徴とする請求項1または請求項2記載の間仕切り用のパネル装置。
【請求項4】
前記後パネルは、前記第1の支柱側の端縁が縦枠の後面側の端縁と目地を介して対向することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか記載の間仕切り用のパネル装置。
【請求項5】
前記前パネル、後パネルは、それぞれ石膏ボードの裏面材を付設することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか記載の間仕切り用のパネル装置。
【請求項6】
ドアと、ピボットヒンジを介して前記ドアを装着するドア枠と、該ドア枠の少なくとも一方の縦枠に連設する請求項1ないし請求項5のいずれか記載の間仕切り用のパネル装置とを備えてなる間仕切り用のドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、事務所フロア等の間仕切りを構築する際に有用な間仕切り用のパネル装置と、それを使用する間仕切り用のドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
事務所フロア等の室内に間仕切りを設置して会議室等の区画スペースを形成するとき、間仕切りパネルの途中に設ける出入口用のドアのドア枠を隠蔽して全体の外観を向上させることができるパネル装置が提案されている(特許文献1)。
【0003】
従来のパネル装置は、ドア枠の一方の縦枠を兼ねる第1の支柱と、第1の支柱と対になる第2の支柱とを設け、連結部材を介して第1、第2の支柱を一体に連結して支柱ユニットを形成した上、支柱ユニットの両面に前後一対の表面カバーを装着している。なお、連結部材は、たとえば鋼板製の表面材に石膏ボードの裏面材を設ける2枚の積層板を鋼板等の中間結合材で連結し、積層板の間の空間にロックウール等の充填材を充填する構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる従来技術によるときは、第1の支柱は、ドア枠の縦枠を兼ねるため、ドアの吊り元側に位置する場合、ドア用のヒンジが旗丁番や平丁番などに限定され、ピボットヒンジの採用が困難となり、外観の向上に限界があるという問題が避けられない。ピボットヒンジ用の固定部材を第1の支柱に後付けすると、第1の支柱と他の支柱との共通性を保つことが難しくなるからである。
【0006】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、第1の支柱、縦枠の各前面側を隠蔽する前パネルを用いることによって、少なくとも縦枠の前面側を隠蔽するとともにピボットヒンジの採用を容易にして必要十分に外観を向上させることができる間仕切り用のパネル装置と、それを使用する間仕切り用のドア装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するための請求項1の発明の構成は、ドア枠の一方の縦枠を連結する第1の支柱と、第1の支柱と対になる第2の支柱と、第1、第2の支柱の前面側、後面側にそれぞれ装着する前パネル、後パネルとを備えてなり、前パネルは、第1の支柱の前面側に付設するフック板のフックに掛止し、互いに同一平面となっている第1の支柱、縦枠の各前面側の全部を覆うとともに第2の支柱の前面側の半分を覆い、後パネルは、第1、第2の支柱の後面側の各半分を覆うことをその要旨とする。
【0008】
なお、前パネルは、第1の支柱側の端縁が縦枠の前面側を越えてドア枠側に突出し、閉鎖時のドアが接触するシール材の収納部を形成することができる。
【0009】
また、前パネルは、第2の支柱に装着する掛止金具に掛止してもよく、後パネルは、第1の支柱側の端縁が縦枠の後面側の端縁と目地を介して対向してもよく、さらに、前パネル、後パネルは、それぞれ石膏ボードの裏面材を付設してもよい。
【0010】
請求項6の発明の構成は、ドアと、ピボットヒンジを介してドアを装着するドア枠と、ドア枠の少なくとも一方の縦枠に連設する請求項1ないし請求項5のいずれかの発明の間仕切り用のパネル装置とを備えることをその要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
かかる請求項1の発明の構成によるときは、第1の支柱と別材の縦枠は、ピボットヒンジの採用に支障がなく、ピボットヒンジを採用しても第1の支柱と他の支柱との共通性が損われるおそれがない。また、前パネルは、第1の支柱、縦枠の各前面側を覆うことにより、縦枠の前面側を隠蔽して良好な外観を実現することができる。
【0012】
前パネルは、第1の支柱側の端縁をドア枠側に突出させてシール材の収納部を形成することにより、シール材用の格別な収納部材を設ける必要がない。また、前パネルは、第1の支柱の前面側に付設するフック板のフックを利用することにより、掛止位置を第1の支柱側の端縁に十分近接させ、装着強度や安定性を一層向上させることができる。なお、後パネルは、目地を介して第1の支柱側の端縁が縦枠の後面側の端縁と対向することにより、縦枠の後面側を明瞭に視認させて外観上のアクセントにすることができる。
【0013】
前パネル、後パネルは、それぞれ石膏ボードの裏面材を付設すれば、機械的な剛性を補強するとともに、必要な断熱性、防音性などを付与することができる。
【0014】
請求項6の発明の構成によるときは、ドア枠の一方または双方の縦枠に請求項1ないし請求項5のいずれかの発明の間仕切り用のパネル装置を連設し、たとえば透明なガラスパネルを含む任意の間仕切りパネル中にドア付きの出入口を設け、間仕切り用のパネル装置の効果をそのまま実現することができる。ただし、間仕切り用のパネル装置を連設しない側の縦枠は、間仕切りパネルを装着する支柱に連結すればよく、間仕切り用のパネル装置の第2の支柱には、間仕切りパネルを併せて装着して連設すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0017】
間仕切り用のドア装置は、ドアDを装着するドア枠10の吊り元側の縦枠11に間仕切り用のパネル装置20を連設してなる(
図1、
図2)。ただし、以下の説明において、便宜的に、
図1の上側、
図2の右側を前面側とし、
図1の下側、
図2の左側を後面側とする。
【0018】
ドアDは、上下のピボットヒンジH、Hを介し、ドア枠10に開閉自在に装着されている(
図1の実線、二点鎖線)。一方、ドア枠10は、吊り元側、戸先側の縦枠11、12と、上枠13とを門形に組み立てて構成されている。吊り元側の縦枠11は、間仕切り用のパネル装置20に属する第1の支柱21に連結して直立させており、戸先側の縦枠12は、間仕切りパネル31用の支柱32に連結して直立させている。
【0019】
縦枠11は、所定の間隔g1 、g2 を介して第1の支柱21のドアD側の側面と後面側の約半分とをL字状に覆うようにして第1の支柱21にねじ止めされている(
図1、
図3)。なお、縦枠11、第1の支柱21の各前面側は、互いに同一平面となっている。縦枠12は、所定の間隔g1 、g2 、g2 を介して支柱32のドアD側の側面と、前面側、後面側の約半分とを凹字状に覆うようにして支柱32にねじ止めされている。ただし、縦枠11、12は、それぞれ第1の支柱21、支柱32との間に図示しないスペーサ金具を有するものとする。
【0020】
上枠13には、チャンネル状の補強板13aが内装され(
図2、
図4)、上枠13は、取付金具C1 を介して天井Cの下面にねじ止めする天井レールC2 により拘束されている。上枠13の前面側には、弾性材のシール材14を後向きに収納する収納部13bが垂設され、シール材14は、閉鎖時のドアDの前面側上端の戸当り用の段部D1 に弾発的に接触する。なお、戸当り用の段部D1 は、ドアDの前面側の上端から吊り元側、戸先側にかけて連続的に形成されている(
図1、
図2)。
【0021】
間仕切り用のパネル装置20は、互いに対になる第1、第2の支柱21、22と、第1、第2の支柱21、22の前面側、後面側にそれぞれ装着する前パネル23、後パネル24とを備えて構成されている。第1、第2の支柱21、22は、戸先側の支柱32とともに、それぞれ床F、天井Cの間に直立させ、ドア枠10と共通の一直線上に配列されている。また、前パネル23、後パネル24は、第2の支柱22、支柱32に装着する間仕切りパネル31、31、縦枠11の後面側、縦枠12の前面側、後面側と同一平面を形成するように、それぞれ鋼板を折曲加工されている(
図1、
図3)。
【0022】
前パネル23は、第1の支柱21、縦枠11の各前面側の全部を覆うとともに、第2の支柱22の前面側の半分を覆う。前パネル23には、石膏ボードの裏面材23aが付設され(
図3、
図5)、前パネル23の第1の支柱21側の端縁は、縦枠11の前面側を越えてドアD側に突出し、弾性材のシール材25を後向きに収納する収納部23bが形成されている。シール材25は、上枠13側のシール材14に連続し、閉鎖時のドアDの前面吊り元側の段部D1 に弾発的に接触する。
【0023】
前パネル23の第1の支柱21側の内面には、浅いチャンネル状の補強板26aを介して鋼板製の掛止板26が付設されている。掛止板26のドア枠10側の端縁は、内向きに折り返して掛止部26bが形成され、掛止部26bには、複数の縦長の掛止孔26c、26c…が上下方向に形成されている。一方、第1の支柱21の前面側には、複数の上向きのフック27a、27a…を上下方向に切起し加工するフック板27がねじ止めされ、各フック27aは、前パネル23側の各掛止孔26cに対応している。また、前パネル23の第2の支柱22側の端縁は、内向きに折り返して縦長の掛止孔23d、23d…付きの掛止部23cが形成されている。ただし、
図5には、各1個のフック27a、掛止孔26c、23dのみが図示されている。
【0024】
第2の支柱22の第1の支柱21側の側面には、複数の掛止金具28、28…が上下方向に装着されている(
図3、
図6)。各掛止金具28は、左右各一対の上向きのフック28a、28a、取付用の脚部28b、28bを有し、脚部28b、28bを第2の支柱22上の縦長の角孔22a、22aに挿入して掛けることにより第2の支柱22に装着することができ、このとき、左右のフック28a、28aは、第2の支柱22の前面側、後面側に対称的に突出する。なお、掛止金具28には、図示しないタッピンねじの止めねじ用の丸孔28c、28cが開孔され、スペーサ用の突部28d、28dが裏面側下部に突設されている。第2の支柱22の前面側に突出する各掛止金具28のフック28aは、前パネル23の掛止部23cに形成する各掛止孔23dに対応している。
【0025】
そこで、前パネル23は、フック板27上の各フック27aに掛止部26bの掛止孔26cを掛け、各掛止金具28の前面側のフック28aに掛止部23cの掛止孔23dを掛けることにより、第1、第2の支柱21、22の前面側に着脱自在に装着することができる。
【0026】
後パネル24には、石膏ボードの裏面材24aが付設されている(
図3)。後パネル24の第1、第2の支柱21、22側の端縁は、それぞれ内向きに折り返して掛止部24b、24cが形成されている。また、第1の支柱21の第2の支柱22側の側面には、第2の支柱22上の掛止金具28、28…と同等の掛止金具28、28…が装着されており、掛止部24b、24cには、それぞれ各掛止金具28の後面側のフック28a、28a…に対応する掛止孔が形成されている。そこで、後パネル24は、掛止金具28、28…を利用して第1、第2の支柱21、22の後面側に着脱自在に装着することができる。また、後パネル24の第1の支柱21側の端縁は、縦枠11の後面側の端縁との間に目地dを形成して対向する。
【0027】
戸先側の縦枠12の前面側は、ドア枠10の内側に突出し(
図1)、弾性材のシール材15を後向きに収納する収納部12aが形成されている。シール材15は、上枠13側のシール材14に連続しており、閉鎖時のドアDの前面戸先側の段部D1 に弾発的に接触する。また、縦枠12の後面側の端縁は、縦枠11側の目地dと同一の目地dを介して間仕切りパネル31の端縁と対向している。
【0028】
なお、
図1において、前面側、後面側は、たとえば会議室などを形成する間仕切りの室外側、室内側に対応させるのがよい。また、間仕切りパネル31は、透明または透光性のガラスパネルや合成樹脂パネルであってもよく、鋼板製や木製などの不透明パネルであってもよい。
【他の実施の形態】
【0029】
間仕切り用のパネル装置20は、ドア枠10の戸先側の縦枠11に連設してもよく(
図7)、吊り元側、戸先側の双方の縦枠11、11に連設してもよい(
図8)。すなわち、間仕切り用のパネル装置20は、ドア枠10の少なくとも一方の縦枠11に連設することができる。また、
図7、
図8において、ドア枠10は、それぞれ図示しない上枠13と、吊り元側の縦枠12と戸先側の縦枠11、吊り元側、戸先側の縦枠11、11を組み合わせて構成されている。なお、間仕切り用のパネル装置20は、照明用やエアコン用のスイッチなどの組込み位置に合わせて設けることが好ましい。また、ドアDの開閉方向は、図示の方向と左右勝手違いとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
この発明は、たとえば事務所フロア等に間仕切りを設置して会議室などの区画スペースを形成する場合などにおいて、間仕切りパネルの途中に出入口用のドアを設けるなどの用途に広く好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
D…ドア
H…ピボットヒンジ
d…目地
10…ドア枠
11、12…縦枠
20…間仕切り用のパネル装置
21…第1の支柱
22…第2の支柱
23…前パネル
23a…裏面材
23b…収納部
24…後パネル
24a…裏面材
25…シール材
27…フック板
27a…フック
28…掛止金具
特許出願人 小松ウオール工業株式会社