(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】定着装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
G03G15/20 555
G03G15/20 535
(21)【出願番号】P 2019183151
(22)【出願日】2019-10-03
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100113310
【氏名又は名称】水戸 洋介
(72)【発明者】
【氏名】原 瞳子
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-166795(JP,A)
【文献】特開2011-064726(JP,A)
【文献】特開2017-215542(JP,A)
【文献】特開2019-035920(JP,A)
【文献】特開2005-141974(JP,A)
【文献】特開2004-296188(JP,A)
【文献】特開2017-120392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に形成され、回転可能に設けられ、記録材に接触する外周面を有し、当該記録材上の画像の当該記録材への定着に用いられる定着用部材と、
前記定着用部材の内周面に接触して配置され、環状の当該定着用部材の軸方向に延びるように配置された接触部材と、
前記定着用部材の内周面に付着した潤滑剤の温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部により検出された温度に基づき、前記定着用部材の回転を制御するプロセッサと、
を備え
、
前記温度検出部は、複数設けられるとともに、前記軸方向における位置が互いに異なるように配置され、
前記プロセッサは、一の前記温度検出部が検出した温度と他の前記温度検出部が検出した温度との差が、予め定められた閾値よりも小さい場合に、前記定着用部材の回転を開始し又は当該定着用部材の回転速度を大きくする、
定着装置。
【請求項2】
前記温度検出部は、潤滑剤に接触する部材の温度を検出して、潤滑剤の温度を検出する請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記接触部材は、前記定着用部材の加熱を行う加熱部材であり、
前記温度検出部は、前記加熱部材の温度を検出して潤滑剤の温度を検出する請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記一の温度検出部が検出した温度と前記他の温度検出部が検出した温度との差が前記予め定められた閾値よりも小さい場合に、且つ、当該一の温度検出部が検出した温度および
当該他の温度検出部が検出した温度のうちの低い方の温度が予め定められた閾値よりも大きい場合に、前記定着用部材の回転を開始し又は当該定着用部材の回転速度を大きくする請求項
1に記載の定着装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記定着用部材の軸方向における端部に配置された前記温度検出部が検出した温度と当該定着用部材の軸方向における中央部に配置された前記温度検出部が検出した温度との差が、
前記予め定められた閾値よりも小さい場合に、当該定着用部材の回転を開始し又は当該定着用部材の回転速度を大きくする請求項
1に記載の定着装置。
【請求項6】
前記予め定められた閾値を変更できるように構成された請求項
1に記載の定着装置。
【請求項7】
前記プロセッサが、前記閾値の変更を行い、当該プロセッサは、前記定着装置の使用時間に関する情報に基づき当該閾値を変更する請求項
6に記載の定着装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記定着装置の使用時間に関する情報により特定される値が、予め定められた値を超えた場合、超えない場合に比べ、前記閾値を小さくする請求項
7に記載の定着装置。
【請求項9】
環状に形成され、回転可能に設けられ、記録材に接触する外周面を有し、当該記録材上の画像の当該記録材への定着に用いられる定着用部材と、
前記定着用部材の内周面に接触して配置され、環状の当該定着用部材の軸方向に延びるように配置された接触部材と、
前記定着用部材の内周面に付着した潤滑剤の温度を検出する温度検出部と、
前記潤滑剤の温度の調整を行うプロセッサと、
を備え
、
前記温度検出部は、複数設けられるとともに、前記軸方向における位置が互いに異なるように配置され、
前記プロセッサは、一の前記温度検出部が検出する温度と他の前記温度検出部が検出する温度との差が、予め定められた閾値よりも小さくなるように、潤滑剤の温度の調整を行う、
定着装置。
【請求項10】
記録材に画像を形成する画像形成手段と、
環状に形成され、回転可能に設けられ、前記画像形成手段により画像が形成された記録材に接触する外周面を有し、当該記録材上の画像の当該記録材への定着に用いられる定着用部材と、
前記定着用部材の内周面に接触して配置され、環状の当該定着用部材の軸方向に延びるように配置された接触部材と、
前記定着用部材の内周面に付着した潤滑剤の温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部により検出された温度に基づき、前記定着用部材の回転を制御するプロセッサと、
を備え
、
前記温度検出部は、複数設けられるとともに、前記軸方向における位置が互いに異なるように配置され、
前記プロセッサは、一の前記温度検出部が検出した温度と他の前記温度検出部が検出した温度との差が、予め定められた閾値よりも小さい場合に、前記定着用部材の回転を開始し又は当該定着用部材の回転速度を大きくする、
画像形成装置。
【請求項11】
記録材に画像を形成する画像形成手段と、
環状に形成され、回転可能に設けられ、前記画像形成手段により画像が形成された記録材に接触する外周面を有し、当該記録材上の画像の当該記録材への定着に用いられる定着用部材と、
前記定着用部材の内周面に接触して配置され、環状の当該定着用部材の軸方向に延びるように配置された接触部材と、
前記定着用部材の内周面に付着した潤滑剤の温度を検出する温度検出部と、
前記潤滑剤の温度の調整を行うプロセッサと、
を備え
、
前記温度検出部は、複数設けられるとともに、前記軸方向における位置が互いに異なるように配置され、
前記プロセッサは、一の前記温度検出部が検出する温度と他の前記温度検出部が検出する温度との差が、予め定められた閾値よりも小さくなるように、潤滑剤の温度の調整を行う、
画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ヒータの長手方向の温度分布を変更し、加圧ローラの逆クラウン量を適正化する処理が開示されている。
特許文献2には、無端状のベルト部材と、ベルト部材の内周面に接触するよう固定した状態で配置される固定部材と、ベルト部材に接触してベルト部材を回転可能に支持する支持ロールと、ベルト部材を加熱する加熱手段とを備える定着装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-156570号公報
【文献】特開2014-174503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
記録材上の画像を記録材に定着する装置では、環状に形成され且つ回転可能に設けられた定着用部材が設けられ、また、この定着用部材に接触する部材とこの定着用部材との間の滑りをよくするため、定着用部材に潤滑剤が塗布されることがある。
ここで、潤滑剤の温度にむらがあると、潤滑剤の温度が高い箇所では定着用部材が移動しやすく、潤滑剤の温度が低い箇所では定着用部材が移動しにくくなる。この場合、定着用部材の変形が生じやすくなり、定着用部材のこの変形に起因して、記録材上に定着される画像の質の低下を招いたり、定着用部材の破損を招いたりするおそれがある。
本発明の目的は、潤滑剤の温度を考慮せずに定着用部材の回転を制御する場合に比べ、潤滑剤の温度のむらに起因する定着用部材の変形を抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、環状に形成され、回転可能に設けられ、記録材に接触する外周面を有し、当該記録材上の画像の当該記録材への定着に用いられる定着用部材と、前記定着用部材の内周面に接触して配置され、環状の当該定着用部材の軸方向に延びるように配置された接触部材と、前記定着用部材の内周面に付着した潤滑剤の温度を検出する温度検出部と、前記温度検出部により検出された温度に基づき、前記定着用部材の回転を制御するプロセッサと、を備え、前記温度検出部は、複数設けられるとともに、前記軸方向における位置が互いに異なるように配置され、前記プロセッサは、一の前記温度検出部が検出した温度と他の前記温度検出部が検出した温度との差が、予め定められた閾値よりも小さい場合に、前記定着用部材の回転を開始し又は当該定着用部材の回転速度を大きくする、定着装置である。
請求項2に記載の発明は、前記温度検出部は、潤滑剤に接触する部材の温度を検出して、潤滑剤の温度を検出する請求項1に記載の定着装置である。
請求項3に記載の発明は、前記接触部材は、前記定着用部材の加熱を行う加熱部材であり、前記温度検出部は、前記加熱部材の温度を検出して潤滑剤の温度を検出する請求項2に記載の定着装置である。
請求項4に記載の発明は、前記プロセッサは、前記一の温度検出部が検出した温度と前記他の温度検出部が検出した温度との差が前記予め定められた閾値よりも小さい場合に、且つ、当該一の温度検出部が検出した温度および当該他の温度検出部が検出した温度のうちの低い方の温度が予め定められた閾値よりも大きい場合に、前記定着用部材の回転を開始し又は当該定着用部材の回転速度を大きくする請求項1に記載の定着装置である。
請求項5に記載の発明は、前記プロセッサは、前記定着用部材の軸方向における端部に配置された前記温度検出部が検出した温度と当該定着用部材の軸方向における中央部に配置された前記温度検出部が検出した温度との差が、前記予め定められた閾値よりも小さい場合に、当該定着用部材の回転を開始し又は当該定着用部材の回転速度を大きくする請求項1に記載の定着装置である。
請求項6に記載の発明は、前記予め定められた閾値を変更できるように構成された請求項1に記載の定着装置である。
請求項7に記載の発明は、前記プロセッサが、前記閾値の変更を行い、当該プロセッサは、前記定着装置の使用時間に関する情報に基づき当該閾値を変更する請求項6に記載の定着装置である。
請求項8に記載の発明は、前記プロセッサは、前記定着装置の使用時間に関する情報により特定される値が、予め定められた値を超えた場合、超えない場合に比べ、前記閾値を小さくする請求項7に記載の定着装置である。
請求項9に記載の発明は、環状に形成され、回転可能に設けられ、記録材に接触する外周面を有し、当該記録材上の画像の当該記録材への定着に用いられる定着用部材と、前記定着用部材の内周面に接触して配置され、環状の当該定着用部材の軸方向に延びるように配置された接触部材と、前記定着用部材の内周面に付着した潤滑剤の温度を検出する温度検出部と、前記潤滑剤の温度の調整を行うプロセッサと、を備え、前記温度検出部は、複数設けられるとともに、前記軸方向における位置が互いに異なるように配置され、前記プロセッサは、一の前記温度検出部が検出する温度と他の前記温度検出部が検出する温度との差が、予め定められた閾値よりも小さくなるように、潤滑剤の温度の調整を行う、定着装置である。
請求項10に記載の発明は、記録材に画像を形成する画像形成手段と、環状に形成され、回転可能に設けられ、前記画像形成手段により画像が形成された記録材に接触する外周面を有し、当該記録材上の画像の当該記録材への定着に用いられる定着用部材と、前記定着用部材の内周面に接触して配置され、環状の当該定着用部材の軸方向に延びるように配置された接触部材と、前記定着用部材の内周面に付着した潤滑剤の温度を検出する温度検出部と、前記温度検出部により検出された温度に基づき、前記定着用部材の回転を制御するプロセッサと、を備え、前記温度検出部は、複数設けられるとともに、前記軸方向における位置が互いに異なるように配置され、前記プロセッサは、一の前記温度検出部が検出した温度と他の前記温度検出部が検出した温度との差が、予め定められた閾値よりも小さい場合に、前記定着用部材の回転を開始し又は当該定着用部材の回転速度を大きくする、画像形成装置である。
請求項11に記載の発明は、記録材に画像を形成する画像形成手段と、環状に形成され、回転可能に設けられ、前記画像形成手段により画像が形成された記録材に接触する外周面を有し、当該記録材上の画像の当該記録材への定着に用いられる定着用部材と、前記定着用部材の内周面に接触して配置され、環状の当該定着用部材の軸方向に延びるように配置された接触部材と、前記定着用部材の内周面に付着した潤滑剤の温度を検出する温度検出部と、前記潤滑剤の温度の調整を行うプロセッサと、を備え、前記温度検出部は、複数設けられるとともに、前記軸方向における位置が互いに異なるように配置され、前記プロセッサは、一の前記温度検出部が検出する温度と他の前記温度検出部が検出する温度との差が、予め定められた閾値よりも小さくなるように、潤滑剤の温度の調整を行う、画像形成装置である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、潤滑剤の温度を考慮せずに定着用部材の回転を制御する場合に比べ、潤滑剤の温度のむらに起因する定着用部材の変形を抑えることができ、また、一の温度検出部が検出した温度と他の温度検出部が検出した温度との差が、予め定められた閾値よりも大きいにも関わらず定着用部材の回転を開始し又は定着用部材の回転速度を大きくする場合に比べ、定着用部材の変形を抑えることができる。
請求項2の発明によれば、潤滑剤の温度を直接検出する場合に比べ、潤滑剤の温度の検出をより簡易に行える。
請求項3の発明によれば、潤滑剤の温度を直接検出する場合に比べ、潤滑剤の温度の検出をより簡易に行える。
請求項4の発明によれば、低い方の温度が閾値よりも小さい場合でも、定着用部材の回転を開始し又は定着用部材の回転速度を大きくする場合に比べ、定着用部材をより円滑に回転させることができる。
請求項5の発明によれば、定着用部材の軸方向における端部における潤滑剤の温度と、中央部における潤滑剤の温度との差が小さい場合に、定着用部材の回転を開始し又は定着用部材の回転速度を大きくすることができる。
請求項6の発明によれば、閾値の変更を行えない構成に比べ、定着用部材の変形をより抑えることが可能になる。
請求項7の発明によれば、定着装置の使用時間に関する情報に基づく閾値の変更を行わない場合に比べ、定着装置の使用時間に応じて生じやすくなる可能性がある定着用部材の変形を抑えることが可能になる。
請求項8の発明によれば、定着装置の使用時間に関する情報により特定される値が、予め定められた値を超えた場合に、閾値を小さくしない構成に比べ、定着用部材の変形をより抑えることが可能になる。
請求項9の発明によれば、一の温度検出部が検出した温度と他の温度検出部が検出した温度との差が、予め定められた閾値よりも小さくなるように、潤滑剤の温度の調整が行われない場合に比べ、定着処理の開始の指示があってから定着処理が実際に開始されるまでの時間をより短いものにできる。
請求項10の発明によれば、潤滑剤の温度を考慮せずに定着用部材の回転を制御する場合に比べ、潤滑剤の温度のむらに起因する定着用部材の変形を抑えることができ、また、一の温度検出部が検出した温度と他の温度検出部が検出した温度との差が、予め定められた閾値よりも大きいにも関わらず定着用部材の回転を開始し又は定着用部材の回転速度を大きくする場合に比べ、定着用部材の変形を抑えることができる。
請求項11の発明によれば、一の温度検出部が検出した温度と他の温度検出部が検出した温度との差が、予め定められた閾値よりも小さくなるように、潤滑剤の温度の調整が行われない場合に比べ、定着処理の開始の指示があってから定着処理が実際に開始されるまでの時間をより短いものにできる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】
図3の矢印IVで示す方向から、定着ベルト、熱源、温度センサを見た場合の図である。
【
図5】定着処理に関して、制御部に設けられたCPUが実行する処理の流れを示した図である。
【
図7】潤滑剤の一例である、シリコンオイル、フッ素グリスの粘度を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、画像形成装置1の全体構成図である。付言すると、
図1は、画像形成装置1のフロント側(前面側)から画像形成装置1を眺めた場合の図である。
画像形成装置1は、所謂タンデム型のカラープリンタである。
画像形成装置1は、画像形成手段の一例としての画像形成部10を備える。画像形成部10は、各色の画像データに基づき、記録材の一例である用紙Pへの画像形成を行う。
【0009】
また、画像形成装置1には、制御部30、画像処理部35が設けられている。さらに、画像形成装置1には、表示装置90が設けられている。
この表示装置90は、タッチパネルにより構成され、情報の表示を行う。また、表示装置90は、ユーザから入力される情報を受け付ける。
制御部30は、画像形成装置1に設けられた各機能部を制御する。画像処理部35は、パーソナルコンピュータ(PC)3や画像読取装置4等からの画像データに対して画像処理を施す。
【0010】
図2(制御部30の構成を説明する図)に示すように、制御部30には、プロセッサ(Processor)の一例であるCPU(Central Processing Unit)401、RAM(Random Access Memory)402、ROM(Read Only Memory)403、ハードディスクなどにより構成される記憶装置404が設けられている。
【0011】
ROM403、記憶装置404は、CPU401により実行されるプログラムを記憶する。CPU401は、ROM403や記憶装置404に記憶されているプログラムを読み出し、RAM402を作業エリアにしてプログラムを実行する。
CPU401により、ROM403や記憶装置404に格納されたプログラムが実行されることで、後述する各機能が実現される。
【0012】
ここで、CPU401によって実行されるプログラムは、磁気記録媒体(磁気テープ、磁気ディスクなど)、光記録媒体(光ディスクなど)、光磁気記録媒体、半導体メモリなどのコンピュータが読取可能な記録媒体に記憶した状態で、画像形成装置1へ提供しうる。また、CPU401によって実行されるプログラムは、インターネットなどの通信手段を用いて、画像形成装置1へ提供してもよい。
【0013】
なお、本実施形態において、プロセッサとは、広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit、等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU: Graphics Processing Unit、ASIC: Application Specific Integrated Circuit、FPGA: Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス、等)を含むものである。
また、プロセッサの動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。また、プロセッサの各動作の順序は、本実施形態において記載した順序のみに限定されるものではなく、変更してもよい。
【0014】
図1を参照し、画像形成装置1についてさらに説明する。
画像形成部10には、一定の間隔を置いて並列的に配置された4つの画像形成ユニット11Y,11M,11C,11K(以下、総称して単に「画像形成ユニット11」とも称する)が設けられている。
各画像形成ユニット11は、現像器15に収納されるトナーを除いて、同様に構成されている。各画像形成ユニット11は、それぞれがイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)のトナー像(画像)を形成する。
【0015】
画像形成ユニット11の各々には、感光体ドラム12、感光体ドラム12の帯電を行う帯電器200、感光体ドラム12への露光を行うLEDプリントヘッド(LPH)300が設けられている。
感光体ドラム12は、帯電器200による帯電が行われる。さらに、感光体ドラム12は、LPH300により露光され、感光体ドラム12には、静電潜像が形成される。
さらに、各画像形成ユニット11には、感光体ドラム12に形成された静電潜像を現像する現像器15、感光体ドラム12の表面を清掃するクリーナ(不図示)が設けられている。
【0016】
また、画像形成部10には、感光体ドラム12にて形成された各色トナー像が転写される中間転写ベルト20、感光体ドラム12にて形成された各色トナー像を中間転写ベルト20に順次転写(一次転写)させる一次転写ロール21が設けられている。
また、画像形成部10には、中間転写ベルト20上に転写されたトナー像を用紙Pに一括転写(二次転写)させる二次転写ロール22、用紙Pに転写されたトナー像をこの用紙Pに定着させる定着装置40が設けられている。
【0017】
定着装置40には、熱源を備えた定着ベルトモジュール41、および、加圧ロール46が設けられている。
定着ベルトモジュール41は、用紙搬送経路R1の図中左側に配置されている。加圧ロール46は、用紙搬送経路R1の図中右側に配置されている。さらに、定着ベルトモジュール41に対して、加圧ロール46が押し当てられている。
【0018】
定着ベルトモジュール41は、用紙Pに接触するフィルム状の定着ベルト411を備える。定着ベルト411は、用紙P上のトナー像(画像)のこの用紙Pへの定着に用いられる定着用部材である。
定着ベルト411は、例えば、最外層に位置し用紙Pに接触する離型層と、離型層の一つ内側に位置する弾性層と、この弾性層を支持する基層とにより構成される。
定着ベルト411は、環状に形成され、回転可能に設けられ、図中反時計周り方向に回転する。言い換えると、定着ベルト411は、無端状に形成され、予め定められた経路に沿って循環移動を行う。
【0019】
定着ベルト411は、図中下方から搬送されてくる用紙Pに接触する。より具体的には、定着ベルト411は、外周面411Bを有し、この外周面411Bが用紙Pに接触する。
そして、定着ベルト411のうちの用紙Pに接触した部分が、用紙Pとともに移動する。さらに、定着ベルト411は、加圧ロール46とともに用紙Pを挟み、この用紙Pを加圧および加熱する。
さらに、定着ベルトモジュール41には、定着ベルト411の内側に、定着ベルト411を加熱する熱源(後述)が設けられている。
【0020】
加圧部材の一例としての加圧ロール46は、用紙搬送経路R1の図中右側に配置されている。加圧ロール46は、定着ベルト411の外周面411Bに押し当てられ、定着ベルト411と加圧ロール46との間を通る用紙Pを加圧する。
また、加圧ロール46は、不図示のモータにより、図中時計回り方向に回転する。加圧ロール46が、時計回り方向に回転すると、定着ベルト411が、加圧ロール46から駆動力を受けて反時計回り方向に回転する。
【0021】
画像形成装置1では、画像処理部35が、PC3や画像読取装置4からの画像データに対して画像処理を施し、画像処理が施された画像データが、各画像形成ユニット11に供給される。
そして、例えば、黒(K)色の画像形成ユニット11Kでは、感光体ドラム12が矢印A方向に回転しながら、帯電器200により帯電され、画像処理部35から送信された画像データに基づいて発光するLPH300により露光される。
【0022】
これにより、感光体ドラム12上には、黒(K)色の画像に関する静電潜像が形成される。そして、感光体ドラム12上に形成された静電潜像は、現像器15により現像され、感光体ドラム12上には、黒(K)色のトナー像が形成される。
同様に、画像形成ユニット11Y,11M,11Cでは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色トナー像が形成される。
【0023】
各画像形成ユニット11で形成された各色トナー像は、矢印B方向に移動する中間転写ベルト20上に、一次転写ロール21により順次静電吸引されて、中間転写ベルト20上には、各色トナーが重畳されたトナー像が形成される。
中間転写ベルト20上に形成されたトナー像は、中間転写ベルト20の移動に伴って二次転写ロール22が位置する箇所(二次転写部T)に搬送される。そして、このトナー像が二次転写部Tに搬送されるタイミングに合わせて、用紙収容部1Bから二次転写部Tへ用紙Pが供給される。
【0024】
二次転写部Tでは、二次転写ロール22により形成される転写電界により、中間転写ベルト20上のトナー像が、搬送されてきた用紙Pに一括して静電転写される。
その後、トナー像が静電転写された用紙Pは、中間転写ベルト20から剥離され、定着装置40まで搬送される。
【0025】
定着装置40では、用紙Pを、定着ベルトモジュール41と加圧ロール46とで挟む。具体的には、用紙Pを、反時計回り方向へ循環移動している定着ベルト411と、時計回り方向へ回転している加圧ロール46とで挟む。
これにより、用紙Pの加圧および加熱が行われて、用紙P上のトナー像が、この用紙Pに定着される。そして、定着が終了した後の用紙Pは、排出ロール500によって、用紙積載部1Eへ搬送される。
【0026】
図3は、定着装置40の構成を説明する図である。
図3に示すように、定着装置40には、定着ベルトモジュール41、加圧ロール46が設けられている。
定着ベルトモジュール41には、用紙Pへのトナー像の定着に用いられる定着ベルト411が設けられ、この定着ベルト411が、用紙Pのうちのトナー像が形成された面に押し当てられる。
【0027】
ここで、本実施形態では、定着ベルト411と後述する熱源との間における滑りを良くするため、定着ベルト411の内周面411Dに潤滑剤が塗布され、定着ベルト411の内周面411Dに潤滑剤が付着している。
ここで、潤滑剤の種類は特に問わないが、潤滑剤としては、例えば、シリコンオイルや、フッ素グリスを挙げることができる。
【0028】
加圧部材の一例としての加圧ロール46は、定着ベルト411の外周面411Bに押し当てられ、定着ベルト411と加圧ロール46との間を通る用紙Pを加圧する。
具体的には、加圧ロール46は、定着ベルト411の外周面411Bに接触配置され、用紙Pが加圧されながら通過する領域であるニップ部Nを、定着ベルト411との間に形成する。
本実施形態では、このニップ部Nを用紙Pが通過する過程で、用紙Pの加熱および加圧が行われて、用紙Pへのトナー像の定着が行われる。
【0029】
定着ベルト411の内側には、定着ベルト411を加熱する加熱部材の一例としての熱源413が設けられている。
熱源413は、定着ベルト411の内周面411Dに接触して配置されている。さらに、熱源413は、環状の定着ベルト411の軸方向に延びるように配置されている。言い換えると、熱源413は、定着ベルト411の軸方向に沿って配置されている。
【0030】
また、熱源413は、定着ベルト411の移動方向と交差する方向に延びるように配置されている。付言すると、熱源413は、
図3の紙面と直交する方向に延びるように配置されている。
ここで、熱源413は、定着ベルト411に接触する接触部材として捉えることができる。
【0031】
また、定着ベルト411の内側には、熱源413を支持する支持部材440が設けられている。この支持部材440は、熱源413を支持する支持部441を有する。
さらに、熱源413の一方側の面の対向位置には、定着ベルト411の内周面411Dに付着した潤滑剤の温度を検出する温度検出部の一例としての温度センサ120が設けられている。
【0032】
より具体的には、本実施形態では、熱源413が有する面のうち、定着ベルト411に対向する対向面413Mとは反対側に位置する反対面413Nの対向位置に、温度センサ120が設けられている。
本実施形態では、潤滑剤の温度は、熱源413の温度に応じて変化するようになり、本実施形態では、熱源413の温度を検出することで、潤滑剤の温度を検出する。
【0033】
図4は、
図3の矢印IVで示す方向から、定着ベルト411、熱源413、温度センサ120を見た場合の図である。
熱源413には、熱源413の長手方向に沿って配置された第1発熱体413A、第2発熱体413Bが設けられている。
この第1発熱体413Aおよび第2発熱体413Bは、定着ベルト411の移動方向における位置が互いに異なるように配置されている。
【0034】
第1発熱体413Aは、発熱部H1を有する。この発熱部H1は、熱源413の長手方向における中央部に位置している。以下、本明細書では、第1発熱体413Aに設けられたこの発熱部H1を、「中央発熱部H1」と称する。
第2発熱体413Bは、第1端部発熱部H28、第2端部発熱部H29を有する。第1端部発熱部H28は、熱源413の長手方向における一端部413Eに位置し、第2端部発熱部H29は、熱源413の長手方向における他端部413Fに位置する。
【0035】
ここで、本実施形態では、第1端部発熱部H28、第2端部発熱部H29の各々の出力(単位時間当たりの発熱量)の方が、第1発熱体413Aに設けられた中央発熱部H1の出力(単位時間当たりの発熱量)よりも大きくなっている。
【0036】
また、本実施形態では、温度センサ120として、複数の温度センサ120が設けられている。
具体的には、本実施形態では、温度センサ120として、中央部温度センサ121と、端部温度センサ122とが設けられている。
中央部温度センサ121および端部温度センサ122は、定着ベルト411の軸方向における位置が互いに異なるように配置されている。付言すると、中央部温度センサ121および端部温度センサ122は、熱源413の長手方向における位置が互いに異なるように配置されている。
【0037】
中央部温度センサ121は、定着ベルト411の軸方向における中央部に配置され、定着ベルト411の軸方向における中央部に位置する潤滑剤の温度を検出する。
付言すると、中央部温度センサ121は、熱源413の長手方向における中央部の対向位置に配置され、熱源413の長手方向における中央部の対向位置に位置する潤滑剤の温度を検出する。
【0038】
端部温度センサ122は、定着ベルト411の軸方向における一端部411Eに配置され、定着ベルト411の軸方向における一端部411Eに位置する潤滑剤の温度を検出する。
付言すると、端部温度センサ122は、熱源413の長手方向における一端部413Eの対向位置に配置され、熱源413の長手方向における一端部413Eの対向位置に位置する潤滑剤の温度を検出する。
【0039】
熱源413は、板状に形成され、定着ベルト411の移動方向および定着ベルト411の幅方向に沿うように設けられている。
より具体的には、熱源413は、
図4に示すように、正面から見た場合の形状が長方形状となっており、その長手方向が定着ベルト411の幅方向に沿うように配置されている。
ここで、定着ベルト411の幅方向とは、定着ベルト411の移動方向と直交する方向と同義である。また、定着ベルト411の幅方向とは、環状の定着ベルト411の軸方向と同義である。
また、本実施形態では、熱源413は、定着ベルト411の軸方向における一端部411Eから他端部411Fにかけて配置されている。
【0040】
本実施形態では、熱源413から定着ベルト411へ熱が供給されて、定着ベルト411の加熱が行われる。
熱源413は、
図3に示すように、定着ベルト411に対向する対向面413Mと、この対向面413Mとは反対側に位置する反対面413Nと、対向面413Mと反対面413Nとを結ぶ側面413Pとを有する。
【0041】
本実施形態では、反対面413Nの対向位置に、上記の中央部温度センサ121、端部温度センサ122が設けられている。
さらに、本実施形態では、
図3に示すように、定着ベルト411を介し、熱源413に対して、加圧ロール46が押し当てられている。
また、本実施形態では、加圧ロール46が、定着ベルトモジュール41に対して進退可能となっており、定着動作が行われていないときなどに、加圧ロール46が定着ベルトモジュール41から退避する。この場合、定着ベルト411と加圧ロール46とが非接触の状態となる。
【0042】
また、本実施形態では、
図3に示すように、支持部材440には、上流側案内部445と下流側案内部446とが設けられている。
定着ベルト411の回転方向(移動方向)において、上流側案内部445は、熱源413よりも上流側に位置する。上流側案内部445は、定着ベルト411のうち、熱源413よりも上流側に位置する部分に接触し、この上流側に位置する部分の案内を行う。
【0043】
定着ベルト411の回転方向において、下流側案内部446は、熱源413よりも下流側に位置する。
下流側案内部446は、定着ベルト411のうち、熱源413よりも下流側に位置する部分に接触し、この下流側に位置する部分の案内を行う。
【0044】
また、定着ベルトモジュール41には、内部部材としての支持フレーム490が設けられている。この支持フレーム490は、定着ベルト411の内側に配置され、定着ベルト411の内側に配置される部材を支持する。
具体的には、支持フレーム490は、定着ベルト411の内側に配置された、支持部材440、熱源413などを支持する。
【0045】
図5は、定着処理に関して、制御部30に設けられたCPU401が実行する処理の流れを示した図である。
本実施形態では、CPU401は、画像形成が開始される際、まず、加圧ロール46を移動させて(ステップS101)、定着ベルトモジュール41に対して加圧ロール46を押し当てる。
【0046】
次いで、CPU401は、熱源413への給電(第1発熱体413Aおよび第2発熱体413Bへの給電)を開始し(ステップS102)、熱源413を発熱させる。
その後、CPU401は、中央部温度センサ121が検出した温度と、端部温度センサ122が検出した温度との差(以下、単に「温度差」と称する場合がある)が、予め定められた閾値Xよりも小さいか否かを判断する(ステップS103)。
【0047】
そして、CPU401は、ステップS103にて、温度差が、予め定められた閾値Xよりも小さいと判断した場合、定着ベルト411の回転を開始する(ステップS104)。
より具体的には、CPU401は、加圧ロール46の回転駆動を開始し、定着ベルト411の回転を開始する。
【0048】
ここで、本実施形態では、CPU401は、温度センサ120により検出された温度に基づき、定着ベルト411の回転の制御を行う。
より具体的には、CPU401は、上記のように、温度差が、予め定められた閾値Xよりも小さい場合に、定着ベルト411の回転を開始する。
【0049】
ここで、定着ベルト411の軸方向において、潤滑剤の温度にむらがあると、潤滑剤の温度が高い箇所では定着ベルト411が移動しやすく、潤滑剤の温度が低い箇所では定着ベルト411が移動しにくくなる。
より具体的には、潤滑剤の温度が高い箇所では、熱源413と定着ベルト411との間における滑りが生じやすく、定着ベルト411が移動しやすくなり、潤滑剤の温度が低い箇所では、熱源413と定着ベルト411との間における滑りが生じにくく、定着ベルト411が移動しにくくなる。
【0050】
より具体的には、本実施形態では、定着ベルト411の軸方向における端部における放熱量の方が、定着ベルト411の軸方向における中央部における放熱量よりも大きい。
この場合、
図6(潤滑剤の温度分布を示した図)に示すように、定着ベルト411の軸方向における端部に位置する潤滑剤の温度の方が、定着ベルト411の軸方向における中央部に位置する潤滑剤の温度よりも低くなる。
【0051】
この場合、定着ベルト411の軸方向における端部にて、定着ベルト411が移動しにくくなり、定着ベルト411の捻じれなど、定着ベルト411の変形が生じやすくなる。
そして、定着ベルト411の変形が生じると、定着ベルト411の損傷を招いたり、用紙P上に定着される画像の質の低下を招いたりする。
【0052】
これに対し、実施形態の構成では、潤滑剤の温度のむらが小さい状況にて、定着ベルト411の回転が開始されるようになり、潤滑剤の温度のむらに起因する定着ベルト411の変形が抑えられる。
そして、この場合、定着ベルト411の損傷や、画像の質の低下が抑えられる。
【0053】
付言すると、本実施形態の定着装置40では、第1発熱体413A(
図4参照)、第2発熱体413Bへの給電を開始した直後は、上記の温度差が大きい状態にある。
しかしながら、本実施形態では、第1端部発熱部H28、第2端部発熱部H29の出力の方が、中央発熱部H1の出力よりも大きくなっており、時間の経過に伴い、上記の温度差が小さくなる。
【0054】
付言すると、本実施形態では、時間の経過に伴い、定着ベルト411の中央部に位置する潤滑剤の温度に、定着ベルト411の端部に位置する潤滑剤の温度が近づくようになり、上記の温度差が小さくなる。
そして、本実施形態では、上記のとおり、温度差が、予め定められた閾値Xよりも小さくなると、定着ベルト411の回転が開始される。
これにより、定着ベルト411の変形が抑制され、定着ベルト411の変形に起因する、定着ベルト411の損傷や、画像の質の低下が抑制される。
【0055】
なお、本実施形態では、温度差が、予め定められた閾値Xよりも小さくなった場合に、定着ベルト411の回転を開始する場合を一例に説明した。
ところで、これ以外に、温度差が、予め定められた閾値Xよりも小さくなった場合、定着ベルト411の回転速度を大きくしてもよい。
【0056】
ここで、定着ベルト411の回転速度を大きくする処理を行う場合は、例えば、上記のステップS101(
図5参照)の処理が終了した後、低速で、定着ベルト411の回転を開始する。
そして、ステップS103にて、温度差が予め定められた閾値Xよりも小さくなったと判断された場合、定着ベルト411の回転速度を大きくする。言い換えると、定着ベルト411の増速を行う。
この場合も、定着ベルト411の増速に起因する、定着ベルト411の変形が抑制され、定着ベルト411の増速に起因する、定着ベルト411の損傷や、画像の質の低下が抑制される。
【0057】
なお、定着ベルト411の変形は、潤滑剤として、オイル系の潤滑剤ではなく、グリス系の潤滑剤を用いた方が生じやすくなる。
図7は、潤滑剤の一例である、シリコンオイル、フッ素グリスの粘度を示した図である。
シリコンオイル、フッ素グリスの両者とも、温度が低くなるに応じて粘度が増加するが、フッ素グリスでは、シリコンオイルに比べ、温度が低くなった場合の粘度の上昇率が大きい。
この場合、潤滑剤としてフッ素グリスを用いると、上記のように温度差が生じた場合に、シリコンオイルを用いる場合に比べ、定着ベルト411が部分的に移動しにくくなる。そして、この場合、定着ベルト411の変形が生じやすくなる。
【0058】
なお、本実施形態の画像形成装置1では、上記の予め定められた閾値Xを変更できるように構成されている。
より具体的には、本実施形態では、表示装置90(
図1参照)に、閾値Xを変更するための画面(不図示)が表示される。そして、ユーザが、この画面に対する、新たな閾値Xの入力作業を行うことで、上記の予め定められた閾値Xが変更される。
【0059】
なお、閾値Xの変更は、CPU401が行ってもよい。この場合、閾値Xが自動で変更される。
CPU401が閾値Xを変更する場合、CPU401は、例えば、定着装置40の使用時間に関する情報に基づき閾値Xを変更する。
ここで、「使用時間に関する情報」とは、定着装置40の稼働時間に限るものでない。「使用時間に関する情報」には、定着装置40にて定着処理が行われた用紙Pの枚数など、定着装置40の使用時間に応じてその値が増加する、可動時間以外の情報を含む。
【0060】
ここで、CPU401が、定着装置40の使用時間に関する情報(以下、「使用時間情報」と称する)に基づき閾値Xを変更する場合、CPU401は、例えば、使用時間情報により特定される値が、予め定められた値を超えた場合に、超えない場合に比べて、閾値Xを小さくする。
【0061】
ここで、定着装置40の使用時間に応じて、潤滑剤の粘度が増加することがあり、この場合、定着ベルト411の変形がより生じやすくなる。
より具体的には、定着装置40の使用時間に応じて、潤滑剤に対して混入する紙粉などの量が増加し、これに応じて、潤滑剤の粘度が増加し、定着ベルト411の変形がより生じやすくなる。付言すると、この場合、潤滑剤の温度が低い箇所では、定着ベルト411がさらに移動しにくくなり、定着ベルト411の変形がさらに生じやすくなる。
【0062】
このような場合に、上記のように、CPU401によって、閾値Xが小さくされると、潤滑剤の温度むらがより小さい状態にて、定着ベルト411の回転や、定着ベルト411の増速が開始される。この場合、定着ベルト411の変形を抑えられる。
【0063】
なお、上記では、中央部温度センサ121、端部温度センサ122は、潤滑剤に接触する部材である熱源413の温度を検出して、潤滑剤の温度を検出した。
より具体的には、熱源413は、定着ベルト411の加熱を行う加熱部材であり、中央部温度センサ121、端部温度センサ122は、この加熱部材の温度を検出して、潤滑剤の温度を検出した。
【0064】
ところで、これに限らず、潤滑剤に温度センサ120が直接触れるように温度センサ120を設置し、潤滑剤の温度を直接検出してもよい。
より具体的には、例えば、定着ベルト411の内周面411D(
図3参照)の対向位置に、温度センサ120を配置するなどして、この内周面411Dに付着している潤滑剤の温度を直接検出してもよい。
また、その他に、いわゆるサーモグラフィなどを利用して、非接触で潤滑剤の温度を検出してもよい。
【0065】
また、上記では、中央部温度センサ121により検出された温度と、端部温度センサ122により検知された温度との差が、予め定められた閾値Xよりも小さい場合に、定着ベルト411の回転や定着ベルト411の増速を行う場合を説明した。
付言すると、2つの温度の温度差が予め定められた閾値Xよりも小さい場合に、定着ベルト411の回転や定着ベルト411の増速を行う場合を説明した。
【0066】
但し、これに限らず、この2つの温度のうちの低い方の温度が予め定められた閾値よりも大きい場合に定着ベルト411の回転や定着ベルト411の増速を行う、という条件をさらに加えて、定着ベルト411の回転を制御するようにしてもよい。
【0067】
言い換えると、中央部温度センサ121により検出された温度と、端部温度センサ122により検知された温度との差が、予め定められた閾値Xよりも小さく、且つ、この2つの温度のうちの低い方の温度が予め定められた閾値(閾値Xとは異なる値の閾値)よりも大きい場合に、定着ベルト411の回転や定着ベルト411の増速が行われるようにしてもよい。
【0068】
2つの温度の差が小さい状況にあっても、この2つの温度が低い場合には、潤滑剤の粘度が大きく、定着ベルト411が回転しにくくなる。
上記のように、低い方の温度が予め定められた閾値よりも大きい場合に、定着ベルト411の回転や定着ベルト411の増速を行う場合、潤滑剤の温度がより高い状態にて、定着ベルト411の回転や定着ベルト411の増速が行われるようになる。この場合、定着ベルト411がより円滑に回転する。
【0069】
また、上記では、中央部温度センサ121により検出された温度、端部温度センサ122により検知された温度の2つの温度に基づき、定着ベルト411の回転や、定着ベルト411の増速を行うか否かを決定する場合を説明した。
これに限らず、例えば、端部温度センサ122により検知された温度のみに基づき、定着ベルト411の回転や、定着ベルト411の増速を行うか否かを決定してもよい。
【0070】
言い換えると、CPU401は、定着ベルト411の軸方向における端部に位置する潤滑剤の温度のみに基づき、定着ベルト411の回転や、定着ベルト411の増速を行うか否かを決定してもよい。
より具体的には、この場合、CPU401は、定着ベルト411の軸方向における端部に位置する潤滑剤の温度が、予め定められた閾値よりも大きい場合に、定着ベルト411の回転を開始し又は定着ベルト411の回転速度を大きくする。
【0071】
ここで、本実施形態では、定着ベルト411の軸方向における端部に位置する第1端部発熱部H28、第2端部発熱部H29の出力の方が、中央発熱部H1の出力よりも大きい。
この場合、定着ベルト411の軸方向における端部に位置する潤滑剤の温度が、上昇し、予め定められた閾値よりも大きくなった場合、上記の温度差が小さくなっていることが想定される。
そこで、必ずしも、温度差ではなく、このように、定着ベルト411の軸方向における端部に位置する潤滑剤の温度のみに基づいて、定着ベルト411の回転や、定着ベルト411の増速を行うようにしてもよい。
【0072】
また、その他に、CPU401は、用紙Pの搬送が行われていない場合など、特定の条件が満たされた場合に、潤滑剤の温度の調整をさらに行うようにしてもよい。
より具体的には、CPU401は、中央部温度センサ121が検出した温度と端部温度センサ122が検出した温度との差が、予め定められた閾値よりも小さくなるように、第1発熱体413A(
図4参照)、第2発熱体413Bの制御を行い、潤滑剤の温度の調整を行うようにしてもよい。
【0073】
より具体的には、CPU401は、例えば、画像の形成の開始指示を未だ受信しておらず、用紙Pの搬送が行われてない場合などに、例えば、定着ベルト411を回転させながら、あるいは、定着ベルト411の回転を停止させた状態で、第1発熱体413A、第2発熱体413Bの制御を行う。
より具体的には、CPU401は、中央部温度センサ121が検出する温度と端部温度センサ122が検出する温度との差が、予め定められた閾値(上記の閾値Xと同じであってもよいし、他の閾値であってもよい)よりも小さくなるように、第1発熱体413A、第2発熱体413Bの制御を行う。
【0074】
より好ましくは、CPU401は、中央部温度センサ121が検出した温度と端部温度センサ122が検出した温度との差が、予め定められた閾値よりも小さくなるように、且つ、この2つの温度のうちの低い方の温度が予め定められた閾値よりも大きくなるように、第1発熱体413Aおよび第2発熱体413Bの制御を行う。
これにより、この場合、後に、画像形成の開始指示があった場合に、より早期に画像の形成を行えるようになる。
【符号の説明】
【0075】
1…画像形成装置、10…画像形成部、40…定着装置、120…温度センサ、121…中央部温度センサ、122…端部温度センサ、401…CPU、411…定着ベルト、411B…外周面、413…熱源、P…用紙