(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/03 20060101AFI20231108BHJP
B60C 11/13 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B60C11/03 300B
B60C11/03 300E
B60C11/13 A
(21)【出願番号】P 2019187045
(22)【出願日】2019-10-10
【審査請求日】2022-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】谷田 健
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-128272(JP,A)
【文献】実開昭57-059102(JP,U)
【文献】特開2019-151264(JP,A)
【文献】特開2016-88219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03
B60C 11/11
B60C 11/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、一対のショルダー主溝と、前記一対のショルダー主溝の間に形成された複数のクラウンブロックとを含み、
前記クラウンブロックは、踏面と、前記踏面の全周を囲むように配された面取り部と、前記面取り部よりもタイヤ半径方向内側の本体部とを含み、
前記本体部には、前記踏面と直交する横断面において階段状に曲がった少なくとも1つの階段状部分が設けられて
おり、
前記横断面において、前記階段状部分の前記踏面に沿った方向の長さは、前記面取り部のトレッド平面視における幅の80%~150%である、
タイヤ。
【請求項2】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、一対のショルダー主溝と、前記一対のショルダー主溝の間に形成された複数のクラウンブロックとを含み、
前記クラウンブロックは、踏面と、前記踏面の全周を囲むように配された面取り部と、前記面取り部よりもタイヤ半径方向内側の本体部とを含み、
前記本体部には、前記踏面と直交する横断面において階段状に曲がった少なくとも1つの階段状部分が設けられており、
前記トレッド部は、副溝を介して隣り合う2つのクラウンブロックを含み、
前記2つのクラウンブロックは、それぞれ、前記副溝に面する位置に、前記階段状部分が設けられている、
タイヤ。
【請求項3】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、一対のショルダー主溝と、前記一対のショルダー主溝の間に形成された複数のクラウンブロックとを含み、
前記クラウンブロックは、踏面と、前記踏面の全周を囲むように配された面取り部と、前記面取り部よりもタイヤ半径方向内側の本体部とを含み、
前記本体部には、前記踏面と直交する横断面において階段状に曲がった少なくとも1つの階段状部分が設けられており、
前記クラウンブロックは、互いに形状の異なる第1クラウンブロック及び第2クラウンブロックを含む、
タイヤ。
【請求項4】
前記本体部には、前記階段状部分が複数設けられている、請求項1ないし3のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項5】
前記横断面において、前記面取り部のタイヤ半径方向の長さは、前記クラウンブロックのタイヤ半径方向の最大高さの15%以下である、請求項1ないし4のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項6】
トレッド平面視において、前記面取り部の幅は、前記クラウンブロックのタイヤ半径方向の最大高さの15%以下である、請求項1ないし5のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項7】
前記階段状部分の段数は、2~3である、請求項1ないし6のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項8】
前記トレッド部は、前記階段状部分が複数設けられた前記クラウンブロックを複数含んでいる、請求項1ないし7のいずれかに記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、オフロード走行に適した空気入りタイヤが提案されている。前記空気入りタイヤは、ブロックに設けられたサイプを改善することを基本として、オフロード走破性能を維持しつつ、耐久性能及び乾燥路面での操縦安定性能の向上を期待している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オフロード走行を想定したタイヤは、大きな石を多数含むロック路面や、それとは対照的に、柔らかい雪又は泥を含むスノー・マッド路面で高いグリップ性能が要求される。一方、前記タイヤは、ブロックの耐久性についても配慮する必要がある。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出なされたもので、ブロックの耐久性を維持しつつ、ロック路面及びスノー・マッド路面で優れたグリップ性能を発揮し得るタイヤを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、一対のショルダー主溝と、前記一対のショルダー主溝の間に形成された複数のクラウンブロックとを含み、前記クラウンブロックは、踏面と、前記踏面の全周を囲むように配された面取り部と、前記面取り部よりもタイヤ半径方向内側の本体部とを含み、前記本体部には、前記踏面と直交する横断面において階段状に曲がった少なくとも1つの階段状部分が設けられている。
【0007】
本発明のタイヤにおいて、前記本体部には、前記階段状部分が複数設けられているのが望ましい。
【0008】
本発明のタイヤにおいて、前記横断面において、前記面取り部のタイヤ半径方向の長さは、前記クラウンブロックのタイヤ半径方向の最大高さの15%以下であるのが望ましい。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、トレッド平面視において、前記面取り部の幅は、前記クラウンブロックのタイヤ半径方向の最大高さの15%以下であるのが望ましい。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、前記横断面において、前記階段状部分の前記踏面に沿った方向の長さは、前記面取り部のトレッド平面視における幅の80%~150%であるのが望ましい。
【0011】
本発明のタイヤにおいて、前記階段状部分の段数は、2~3であるのが望ましい。
【0012】
本発明のタイヤにおいて、前記トレッド部は、副溝を介して隣り合う2つのクラウンブロックを含み、前記2つのクラウンブロックは、それぞれ、前記副溝に面する位置に、前記階段状部分が設けられているのが望ましい。
【0013】
本発明のタイヤにおいて、前記クラウンブロックは、互いに形状の異なる第1クラウンブロック及び第2クラウンブロックを含むのが望ましい。
【0014】
本発明のタイヤにおいて、前記トレッド部は、前記階段状部分が複数設けられた前記クラウンブロックを複数含んでいるのが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のタイヤのクラウンブロックは、踏面と、前記踏面の全周を囲むように配された面取り部と、前記面取り部よりもタイヤ半径方向内側の本体部とを含む。前記面取り部は、前記クラウンブロックの局部的な欠けを抑制し、それを起点として生じるクラックを抑制し、長期に亘って耐久性を高める。また、前記クラウンブロックは、ロック路面において高い路面追従性を有し、優れたグリップ性能を発揮する。
【0016】
本発明において、前記本体部には、前記踏面と直交する横断面において階段状に曲がった少なくとも1つの階段状部分が設けられている。このような階段状部分が設けられたクラウンブロックは、スノー・マッド路面走行時、前記階段状部分が雪や泥をせん断して大きなトラクションを提供する。また、前記階段状部分は、前記クラウンブロックの曲げ剛性を高め、ブロックの耐久性をさらに向上させるのにも役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態のタイヤのトレッド部の展開図である。
【
図3】
図2の第1クラウンブロックの拡大図である。
【
図5】
図2の第2クラウンブロックの拡大図である。
【
図6】第1サイプ及び第2サイプを通るクラウンブロックの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態のタイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある。)1のトレッド部2の展開図である。
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、例えば、オフロードでの走行も想定されるSUV用の空気入りタイヤとして好適に使用される。但し、本発明のタイヤ1は、このような態様に限定されるものではない。
【0019】
本実施形態のタイヤ1のトレッド部2は、タイヤ赤道Cを挟む様に設けられた一対のショルダー主溝3と、一対のショルダー主溝3の間のクラウン領域4と、一対のショルダー主溝3の両外側の一対のショルダー領域5とを含んでいる。
【0020】
ショルダー主溝3は、タイヤ周方向に連続して延びている。本実施形態のショルダー主溝3は、タイヤ周方向にジグザグ状に延びている。タイヤ赤道Cからショルダー主溝3の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離は、例えば、トレッド幅TWの0.20~0.30倍であるのが望ましい。トレッド幅TWは、前記正規状態における一方のトレッド端Teから他方のトレッド端Teまでのタイヤ軸方向の距離である。
【0021】
トレッド端Teは、正規リム(図示せず)にリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも無負荷である正規状態のタイヤ1に、正規荷重を負荷してキャンバー角0°で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。
【0022】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0023】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0024】
「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
【0025】
ショルダー主溝3の溝幅は、例えば、トレッド幅TWの4%~8%であるのが望ましい。各主溝の溝深さは、例えば、5~15mmであるのが望ましい。
【0026】
クラウン領域4のランド比は、例えば、50%~70%である。ショルダー領域5のランド比は、例えば、50%~70%である。これにより、クラウン領域4及びショルダー領域5において、陸部の剛性が維持されつつ、溝部分の開口面積が確保される。したがって、耐摩耗性能及びオフロードでのトラクション性能が向上する。なお、本明細書において、「ランド比」とは、溝及びサイプを埋めた仮想の接地面に対する、実際の接地面の比である。
【0027】
本実施形態では、クラウン領域4のランド比がショルダー領域5のランド比よりも大きく設定されている。これにより、タイヤの内部に空気が充填されたときのクラウン領域4のせり出しが抑制され、クラウン領域4の偏摩耗が抑制される。
【0028】
図2には、クラウン領域4の拡大図が示されている。
図2に示されるように、クラウン領域4は、一対のショルダー主溝3をつなぐ複数のクラウン横溝6と、タイヤ周方向に隣接する前記クラウン横溝6の間に区分されたクラウンパターン要素8とを含む。クラウンパターン要素8は、副溝10により複数のクラウンブロック9に区分されている。本実施形態のクラウンパターン要素8は、4つのクラウンブロック9を含んでいる。クラウンパターン要素8は、例えば、互いに形状の異なる第1クラウンブロック16及び第2クラウンブロック17を含んでいる。
【0029】
図3には、クラウンブロック9の一例を示す図として、第1クラウンブロック16の拡大図が示されている。
図3に示されるように、クラウンブロック9は、踏面36と、踏面36の全周を囲むように配された面取り部37と、面取り部37よりもタイヤ半径方向内側の本体部38とを含む。なお、面取り部37は、踏面36と本体部38との間に配された傾斜面を含み、この傾斜面は、踏面36のエッジを通ってタイヤ半径方向に延びる法線に対し、本体部38の外面よりも大きい角度で配されている。
【0030】
面取り部37は、クラウンブロック9の局部的な欠けを抑制し、それを起点として生じるクラックを抑制し、長期に亘って耐久性を高める。また、クラウンブロック9は、ロック路面において高い路面追従性を有し、優れたグリップ性能を発揮する。
【0031】
図4には、
図3のA-A線断面図が示されている。
図4に示されるように、本体部38には、踏面36と直交する横断面において階段状に曲がった少なくとも1つの階段状部分39が設けられている。このような階段状部分39が設けられたクラウンブロック9は、スノー・マッド路面走行時、階段状部分39が雪や泥をせん断して大きなトラクションを提供する。また、階段状部分39は、クラウンブロック9の曲げ剛性を高め、ブロックの耐久性をさらに向上させるのにも役立つ。
【0032】
本実施形態の階段状部分39の段数は、例えば、2~3である。階段状部分39は、例えば、踏面36に沿って延びる横面46及びタイヤ半径方向に沿って延びる縦面47からなる複数の段要素45で構成されている。望ましい態様では、横面46は踏面36と平行に配されており、縦面47はタイヤ半径方向に平行に配されている。
【0033】
本実施形態では、各段要素45について、横面46の踏面36に沿った方向の長さL5が縦面47のタイヤ半径方向の長さL6よりも小さい。横面46の前記長さL5は、例えば、縦面47の前記長さL6の20%~40%である。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。
【0034】
トレッド平面視における面取り部37の幅W6は、クラウンブロック9のタイヤ半径方向の最大高さh1の15%以下であり、望ましくは5%~15%である。また、前記横断面において、面取り部37のタイヤ半径方向の長さL7は、クラウンブロック9のタイヤ半径方向の最大高さh1の15%以下であり、望ましくは5%~15%である。このような面取り部37は、ロック路面でのグリップ性能及びブロックの耐久性をバランス良く高めるのに役立つ。
【0035】
階段状部分39の踏面36に沿った方向の長さL8は、面取り部37のトレッド平面視における幅W6の80%~150%であるのが望ましい。このような階段状部分39は、隣接する溝の容積を確保しつつ、スノー・マッド路面でのグリップ性能を高めるのに役立つ。
【0036】
図2に示されるように、本実施形態のクラウンブロック9の本体部38には、階段状部分39が複数設けられている。望ましい態様では、トレッド部2は、階段状部分39が複数設けられたクラウンブロック9を複数含んでいる。これにより、上述の効果がさらに高められる。
【0037】
図3に示されるように、本実施形態の第1クラウンブロック16は、例えば、2つの階段状部分39を含んでいる。具体的には、第1クラウンブロック16は、ショルダー主溝3に面する第1階段状部分51と、副溝10に面する第2階段状部分52とを含んでいる。第1クラウンブロック16の階段状部分39は、例えば、タイヤ周方向に延びる部分に設けられている。
【0038】
図5には、第2クラウンブロック17の拡大図が示されている。
図5に示されるように、本本実施形態の第2クラウンブロック17は、例えば、2つの階段状部分39を含んでいる。具体的には、第2クラウンブロック17は、ショルダー主溝3に面する第3階段状部分53と、副溝10に面する第4階段状部分54とを含んでいる。第4階段状部分54は、例えば、タイヤ軸方向に延びる部分に設けられている。
【0039】
図2に示されるように、本実施形態のトレッド部2は、副溝10を介して隣り合う2つの第2クラウンブロック17を含む。2つの第2クラウンブロック17は、それぞれ、副溝10に面する位置に、階段状部分39が設けられている。また、2つの第2クラウンブロック17に挟まれた副溝10は、タイヤ赤道C上に設けらえているのが望ましい。このような階段状部分39の配置は、スノー・マッド路面でのグリップ性能をさらに高めることができる。
【0040】
クラウン横溝6は、例えば、タイヤ軸方向に対して0~15°の角度で延びている。本実施形態のクラウン横溝6は、折れ曲がる部分を含んでタイヤ軸方向に延びている
【0041】
副溝10は、例えば、第1副溝11及び第2副溝12を含む。第1副溝11は、一方のショルダー主溝3から斜め(
図2では右上がりである。)に延びている。第2副溝12は、他方のショルダー主溝3から斜め(
図2では左下がりである。)に延びている。本実施形態の第1副溝11及び第2副溝12は、タイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜している。本実施形態の第1副溝11及び第2副溝12は、折れ曲がる部分を含んで斜めに延びている。
【0042】
第1副溝11のタイヤ周方向に対する角度θ1、及び、第2副溝12のタイヤ周方向に対する角度θ2は、それぞれ、30~60°であるのが望ましい。このような第1副溝11及び第2副溝12は、オフロードでのトラクション性能を維持しつつ、舗装路でのピッチノイズを抑制するのに役立つ。
【0043】
上述の効果をさらに高めるために、第1副溝11及び第2副溝12は、それぞれ、ショルダー主溝3と連通する急傾斜部31と、タイヤ周方向に対する角度が急傾斜部31よりも大きい緩傾斜部32とを含む。
【0044】
副溝10は、第1副溝11と第2副溝12との間を連通する第3副溝13を含んでいる。本実施形態の第3副溝13は、第1副溝11の緩傾斜部32と第2副溝12の緩傾斜部32との間を連通している。また、第3副溝13は、タイヤ赤道Cを横切っている。このような第3副溝13は、オフロードにおいて第1副溝11及び第2副溝12とは異なる向きの摩擦力を提供し、オフロード性能を高める。
【0045】
第3副溝13は、タイヤ軸方向に対して第1副溝11及び第2副溝12とは逆向きに傾斜している。第3副溝13のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、10~20°である。
【0046】
第3副溝13の溝幅W3は、第1副溝11の溝幅W1及び第2副溝12の溝幅W2よりも大きいのが望ましい。具体的には、第3副溝13の溝幅W3は、第1副溝11の溝幅W1又は第2副溝12の溝幅W2の1.50~2.00倍である。このような第3副溝13は、オフロード走行時に多くの泥や土を内部に取り込んで反力を提供する。
【0047】
本実施形態では、第3副溝13の両側の溝壁として、第2クラウンブロック17の第4階段状部分54(
図5に示す)が構成されている。
【0048】
本実施形態の副溝10は、第4副溝14及び第5副溝15を含んでいる。第4副溝14は、第1副溝11又は第3副溝13からタイヤ周方向の一方側に延び、クラウン横溝6に連通している。本実施形態の第4副溝14は、一方の溝縁が第1副溝11の溝縁に連なり、他方の溝縁が第3副溝13の溝縁と連なっている。第5副溝15は、第2副溝12又は第3副溝13からタイヤ周方向の他方側に延び、クラウン横溝6に連通している。本実施形態の第5副溝15は、一方の溝縁が第2副溝12の溝縁に連なり、他方の溝縁が第3副溝13の溝縁と連なっている。第4副溝14及び第5副溝15は、オフロードでの旋回性を高めるのに役立つ。
【0049】
第4副溝14及び第5副溝15は、ジグザグ状に延びているのが望ましい。第4副溝14の溝幅W4及び第5副溝15の溝幅W5は、第3副溝13の溝幅W3よりも小さいのが望ましい。具体的には、第4副溝14の溝幅W4は及び第5副溝15の溝幅W5は、第3副溝13の溝幅W3の0.60~0.80倍である。このような第4副溝14及び第5副溝15は、クラウンパターン要素8のタイヤ軸方向の剛性を維持し、耐摩耗性能の過度な低下を抑制できる。
【0050】
本実施形態の第4副溝14の一方の溝壁は、第1クラウンブロック16の第2階段状部分52(
図3に示す)で構成されている。また、第5副溝15の一方の溝壁は、第1クラウンブロック16の第2階段状部分52で構成されている。
【0051】
図3に示されるように、第1クラウンブロック16のタイヤ周方向の長さL1は、第1クラウンブロック16のタイヤ軸方向の長さL2よりも大きいのが望ましい。第1クラウンブロック16のタイヤ軸方向の長さL2は、例えば、前記タイヤ周方向の長さL1の0.50~0.70倍である。このような第1クラウンブロック16は、タイヤ軸方向に大きな摩擦力を提供してオフロードでの旋回性能を高める。また、第1クラウンブロック16は、タイヤ軸方向に適度に変形し易く、ロック路面での旋回性能を高めるのに役立つ。
【0052】
図5に示されるように、第2クラウンブロック17のタイヤ周方向の長さL3は、第2クラウンブロック17のタイヤ軸方向の長さL4よりも小さいのが望ましい。第2クラウンブロック17のタイヤ周方向の長さL3は、例えば、前記タイヤ軸方向の長さL4の0.80~0.95倍である。このような第2クラウンブロック17は、耐摩耗性能を維持しつつ、オフロード走行時のトラクション性能を高める。
【0053】
図2に示されるように、2つの第1クラウンブロック16は、互いに点対称となる様に配されている。同様に、2つの第2クラウンブロック17は、互いに点対称となる様に配されている。このようなクラウンパターン要素8は、各部に偏摩耗が発生するのを抑制するのに役立つ。
【0054】
複数のクラウンブロック9は、複数のクラウンブロックの中で踏面の面積が最も小さい最小ブロック18と、クラウンブロック9の中で踏面の面積が最も大きい最大ブロック19とを含む。これにより、最小ブロック18が相対的に変形し易くなり、オフロード走行時において、副溝10内に泥や土が保持されるのが抑制される。本実施形態では、第1クラウンブロック16が最大ブロック19に相当し、第2クラウンブロック17が最小ブロック18に相当する。最小ブロック18の踏面の面積は、最大ブロック19の踏面の面積の0.80倍以上である。これにより、各ブロックの偏摩耗が抑制される。
【0055】
図3に示されるように、クラウンブロック9の少なくとも1つの踏面には、第1サイプ21、第2サイプ22及び第3サイプ23が設けられている。本実施形態では、各クラウンブロック9に、第1サイプ21、第2サイプ22及び第3サイプ23が設けられている。本明細書において、サイプとは、幅が1.5mm以下の切れ込みである。
【0056】
第1サイプ21、第2サイプ22及び第3サイプ23は、1つの交点30で互いに連通している。第1サイプ21、第2サイプ22及び第3サイプ23は、交点30で終端している。第1サイプ21、第2サイプ22及び第3サイプ23は、交点30から互いに異なる向きに延びている。なお、交点30には、第1サイプ21、第2サイプ22及び第3サイプ23のみが連通している。
【0057】
このような各サイプは、ブロックの剛性を維持しつつ、前記交点を中心にブロックを変形させ、ブロックの路面追従性を高める。したがって、本実施形態のタイヤは、クラウンブロック9の耐摩耗性能の過度な低下を抑制しつつ、とりわけロック路面でのトラクション性能を向上させることができる。
【0058】
図3及び
図5に示されるように、本実施形態の第1サイプ21、第2サイプ22及び第3サイプ23は、それぞれ、クラウンブロック9の踏面のエッジに連通している。これにより、クラウンブロック9の踏面は、第1サイプ21、第2サイプ22及び第3サイプ23に区分された第1面26、第2面27及び第3面28を含んでいる。
【0059】
第1面26の面積S1は、第2面27の面積S2及び第3面28の面積S3よりも大きい。第1面26の面積S1は、第2面27の面積S2と第3面28の面積S3とを足し合わせた合計面積の好ましくは0.65倍以上、より好ましくは0.73倍以上であり、好ましくは1.45倍以下、より好ましくは1.36倍である。これにより、第1面26を含むブロック片が大きな剛性を有し、ブロックの過度な変形が抑制される。
【0060】
第2面27の面積S2は、第3面28の面積S3より大きいのが望ましい。第3面28の面積S3は、第2面27の面積S2の好ましくは0.60倍以上であり、より好ましくは0.66倍以上である。これにより、第2面27及び第3面28の偏摩耗が抑制される。
【0061】
第1サイプ21は、第1面26と第2面27とを区分し、かつ、交点30からタイヤ軸方向の一方側に延びている。第2サイプ22は、第1面26と第3面28とを区分し、かつ、交点30からタイヤ軸方向の他方側に延びている。第3サイプ23は、第2面27と第3面28とを区分し、かつ、交点30からタイヤ周方向の一方側に延びている。
【0062】
具体的には、
図3に示されるように、第1クラウンブロック16において、第1サイプ21は、交点30から左側に延び、第2サイプ22は、交点30から右側に延び、第3サイプ23は交点30から下側に延びている。また、
図5に示されるように、第2クラウンブロック17において、第1サイプ21は、交点30から左側に延び、第2サイプ22は、交点30から右側に延び、第3サイプ23は、交点30から上側に延びている。
【0063】
第1面26は、第1サイプ21及び第2サイプ22のタイヤ周方向の他方側(第3サイプ23の反対側)に区分されている。
図3及び
図5に示されるように、第1クラウンブロック16において、第1面26は、第1サイプ21及び第2サイプ22の上側に区分されており、第2クラウンブロック17において、第1面26は、第1サイプ21及び第2サイプ22の下側に区分されている。
【0064】
第1サイプ21、第2サイプ22及び第3サイプ23は、それぞれ、90°以上の角度で折れ曲がる部分を含む。このような第1サイプ21、第2サイプ22及び第3サイプ23は、多方向に摩擦力を提供でき、とりわけロック路面において優れたトラクション性能を発揮し得る。また、第1サイプ21、第2サイプ22及び第3サイプ23は、それぞれ、90°未満の角度で折れ曲がる部分を含んでいない。これにより、ブロックの踏面の偏摩耗が抑制される。
【0065】
交点30において、第1サイプ21と第2サイプ22との間の角度θ3、第2サイプ22と第3サイプ23との間の角度θ4、及び、第1サイプ21と第3サイプ23との間の角度θ5は、互いに相違するのが望ましい。前記角度θ3は、例えば、115~150°である。前記角度θ4は、例えば、125~155°である。前記角度θ5は、例えば、80~100°である。
【0066】
図6には、第1サイプ21及び第2サイプ22を通るクラウンブロック9の横断面図が示されている。
図6に示されるように、交点30におけるサイプの深さd2は、ショルダー主溝3の深さd1の0.10~0.30倍であるのが望ましい。これにより、交点30付近の偏摩耗が抑制される。
【0067】
第1サイプ21、第2サイプ22及び第3サイプ23の踏面のエッジ側の端部35の深さd3は、それぞれ、ショルダー主溝3の深さd1の0.10~0.30倍であるのが望ましい。これにより、前記端部35付近の偏摩耗が抑制される。
【0068】
第1サイプ21、第2サイプ22及び第3サイプ23の最大の深さd4は、ショルダー主溝3の深さd1の0.60~0.90倍であるのが望ましい。これにより、耐摩耗性能とオフロードでのトラクション性能とがバランス良く向上する。
【0069】
図7には、ショルダー領域5の拡大図が示されている。
図7に示されるように、ショルダー領域5は、複数のショルダー横溝40に区分された複数のショルダーブロック41を含んでいる。
【0070】
ショルダー横溝40の溝幅は、例えば、クラウン横溝6の溝幅よりも大きいのが望ましい。ショルダー横溝40は、例えば、トレッド端Te側に向かって溝幅が漸増しているのが望ましい。
【0071】
ショルダーブロック41には、例えば、ショルダー細溝42及びショルダーサイプ43が設けられているのが望ましい。ショルダー細溝42は、トレッド端Teからタイヤ軸方向内側に延び、ショルダーブロック41内で途切れている。ショルダーサイプ43は、ショルダー細溝42からショルダー主溝3まで延びている。ショルダーサイプ43は、例えば、一部で折れ曲がっているのが望ましい。ショルダー細溝42及びショルダーサイプ43は、オフロードでのトラクション性能を高めるのに役立つ。
【0072】
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例】
【0073】
図1の基本トレッドパターンを有するサイズ35×12.50R20LTの空気入りタイヤが、表1の仕様に基づき試作された。比較例として、クラウンブロックが面取り部及び階段状部分を含まないタイヤが試作された。比較例のタイヤは、上述の構成を除き、
図1に示されるタイヤと実質的に同じである。各テストタイヤについて、クラウンブロックの耐久性、ロック路面でのグリップ性能及びスノー・マッド路面でのグリップ性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
テスト車両:排気量3500cc、4輪駆動車
テストタイヤ装着位置:全輪
リム:20×10J
タイヤ内圧:全輪260kPa
【0074】
<クラウンブロックの耐久性>
上記テスト車両でロック路面及びスノー・マッド路面をそれぞれ一定距離走行した後のクラウンブロックの損傷程度が目視により評価された。結果は、比較例の前記損傷程度を100とする評点であり、数値が大きい程、クラウンブロックの耐久性が優れていることを示す。
【0075】
<ロック路面でのグリップ性能>
上記テスト車両でロック路面を走行したときのグリップ性能が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例の前記グリップ性能を100とする評点であり、数値が大きい程、ロック路面でのグリップ性能が優れていることを示す。
【0076】
<スノー・マッド路面でのグリップ性能>
上記テスト車両でスノー・マッド路面を走行したときのグリップ性能が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例の前記グリップ性能を100とする評点であり、数値が大きい程、スノー・マッド路面でのグリップ性能が優れていることを示す。
テストの結果が表1に示される。
【0077】
【0078】
表1に示されるように、各テストタイヤは、クラウンブロックの耐久性を維持しつつ、ロック路面及びスノー・マッド路面で優れたグリップ性能を発揮していることが確認できた。
【符号の説明】
【0079】
2 トレッド部
3 ショルダー主溝
9 クラウンブロック
36 踏面
37 面取り部
38 本体部
39 階段状部分