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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/34 20060101AFI20231108BHJP
   H01L 23/473 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
H01L23/34 D
H01L23/46 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019190626
(22)【出願日】2019-10-18
(65)【公開番号】P2021068740
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 悠司
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-116840(JP,A)
【文献】国際公開第2016/204257(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/174899(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/220721(WO,A1)
【文献】特開2006-004961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L23/29
H01L23/34 -23/36
H01L23/373-23/427
H01L23/44
H01L23/467-23/473
H01L25/00 -25/07
H01L25/10 -25/11
H01L25/16 -25/18
H02M 7/42 -7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに離れて並列に配置された第1流路及び第2流路と、前記第1流路及び前記第2流路を接続する第3流路と、を有する冷却器と、
前記冷却器に搭載され、前記第3流路に交差する方向に並んで設けられた複数の回路板を有する積層基板と、を備え、
前記複数の回路板は、
P端子に接続された第1回路板と、
N端子に接続された第2回路板と、
M端子に接続された第3回路板と、を有し、
前記第1回路板には、温度を検知するセンス機能を有する第1センスチップと、前記センス機能を有しない第1非センスチップと、が前記第3流路に沿って並んで搭載され、
前記第3回路板には、前記センス機能を有する第2センスチップと、前記センス機能を有しない第2非センスチップと、が前記第3流路に沿って並んで搭載され、
前記第1センスチップは、前記第2流路側に偏って配置され、
前記第2センスチップは、前記第1流路側に偏って配置されている半導体モジュール。
【請求項2】
前記第1センスチップ及び第2センスチップは、更に短絡を検知する電流センス機能を有する請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項3】
前記積層基板を収容し、第1端子部材及び第2端子部材を有するケース部材を更に備え、
前記第1センスチップと前記第1端子部材が第1配線部材により接続され、前記第2センスチップと前記第2端子部材が第2配線部材により接続される請求項1又は請求項2に記載の半導体モジュール。
【請求項4】
前記端子部材は、前記第1センスチップ側と前記第2センスチップ側にそれぞれ設けられ、
前記第1センスチップ側に設けられる前記端子部材と前記第2センスチップ側に設けられる前記端子部材とは、平面視において、前記積層基板を挟んで斜めに対向するように配置されている請求項3に記載の半導体モジュール。
【請求項5】
前記積層基板の上面にサーミスタが配置されている請求項1から請求項4のいずれかに記載の半導体モジュール。
【請求項6】
前記P端子は、前記第1回路板において、前記第1流路側に偏って配置され、
前記M端子は、前記第3回路板において、前記第2流路側に偏って配置されている請求項1から請求項5のいずれかに記載の半導体モジュール。
【請求項7】
前記P端子は、前記第1回路板において、前記第2流路側に偏って配置され、
前記M端子は、前記第3回路板において、前記第1流路側に偏って配置されている請求項1から請求項5のいずれかに記載の半導体モジュール。
【請求項8】
前記第1流路に導入口が設けられ、前記第2流路に排出口が設けられた請求項6又は7記載の半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、FWD(Free Wheeling Diode)等の半導体素子が設けられた基板を有し、インバータ装置等に利用されている。
【0003】
民生・産業用のモータ駆動用等に広く用いられるインバータ装置は、MOSFETやIGBT等の半導体スイッチング素子(スイッチング素子)と、その半導体スイッチング素子を駆動する駆動用集積回路(ICチップ)から構成される。また、機器の小型化と保護回路内蔵のための手段として、上記したスイッチング素子とICチップを1パッケージ化したIPM(Intelligent Power Module)が用いられる。
【0004】
従来の半導体装置(半導体モジュール)においては、半導体素子の温度を検出するための温度センサとしてサーミスタが設けられていた。しかしながら、サーミスタは、チップ温度を直接監視することができないため、デバイスの特性バラツキや、パッケージの熱抵抗バラツキといった製品の様々な特定バラツキを考慮して装置の熱設計をする必要があった。そこで、温度センサや電流センサ等の機能を搭載した、いわゆるオンチップセンサ内蔵型の半導体モジュールが提案されている(例えば特許文献1-3参照)。
【0005】
特許文献1では、絶縁基板の回路板上に複数の半導体チップが配置されている。各半導体チップには、過熱保護用の温度検出ダイオードが内蔵されている。特許文献2では、ドレイン基板上に複数の半導体チップが配置されている。各半導体チップは、センス電流を流すセンスノードを有している。センスノードに流れる電流から、所定の出力電圧を検出可能である。また、特許文献3には、電流センス付IGBTについて開示されている。この種のIGBTは、電流センス部と、温度センスダイオード部と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2016/174899号
【文献】国際公開第2015/125281号
【文献】特開2007-287988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のオンチップセンサ内蔵型の半導体素子は高価であるため、モジュール内に配置される全ての半導体素子をオンチップセンサ内蔵型としてしまうとモジュール全体のコストに影響を与えるおそれがある。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、安価な構成で内部の温度をモニターできる半導体モジュールを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の半導体モジュールは、離れて並列に配置された第1流路及び第2流路と、前記第1流路及び前記第2流路を接続する第3流路と、を有する冷却器と、前記冷却器に搭載され、前記第3流路に交差する方向に並んで設けられた複数の回路板を有する積層基板と、を備え、前記複数の回路板は、P端子に接続された第1回路板と、N端子に接続された第2回路板と、M端子に接続された第3回路板と、を有し、前記第1回路板には、温度を検知するセンス機能を有する第1センスチップと、前記センス機能を有しない第1非センスチップと、が前記第3流路に沿って並んで搭載され、前記第3回路板には、前記センス機能を有する第2センスチップと、前記センス機能を有しない第2非センスチップと、が前記第3流路に沿って並んで搭載され、前記第1センスチップは、前記第2流路側に偏って配置され、前記第2センスチップは、前記第1流路側に偏って配置されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、半導体モジュールにおいて、安価な構成で内部の温度をモニターすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態に係る半導体モジュールの一例を示す平面図である。
図2図1に係る半導体モジュールを下面側からみた図である。
図3図1の積層基板単位の部分拡大図である。
図4図3に示す半導体モジュールをYZ平面に沿って切断した断面図である。
図5】半導体素子のセンス機能を示す等価回路図である。
図6】参考例に係る半導体モジュールの平面模式図である。
図7】変形例に係る半導体モジュールを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用可能な半導体モジュールについて説明する。図1は、本実施の形態に係る半導体モジュールの一例を示す平面図である。図2は、図1に係る半導体モジュールを下面側からみた図である。図3は、図1の積層基板単位の部分拡大図である。図4は、図3に示す半導体モジュールをYZ平面に沿って切断した断面図である。図5は、半導体素子のセンス機能を示す等価回路図である。なお、以下に示す半導体モジュールはあくまで一例にすぎず、これに限定されることなく適宜変更が可能である。
【0013】
また、以下の図において、半導体モジュールの長手方向(後述する複数の積層基板が並ぶ方向)をX方向、短手方向をY方向、高さ方向をZ方向と定義することにする。図示されたX、Y、Zの各軸は互いに直交し、右手系をなしている。また、場合によっては、X方向を左右方向、Y方向を前後方向、Z方向を上下方向と呼ぶことがある。これらの方向(前後左右上下方向)は、説明の便宜上用いる文言であり、半導体モジュールの取付姿勢によっては、XYZ方向のそれぞれとの対応関係が変わることがある。例えば、半導体モジュールの放熱面側(冷却器側)を下面側とし、その反対側を上面側と呼ぶことにする。また、本明細書において、平面視は、半導体モジュールの上面をZ方向正側からみた場合を意味する。
【0014】
半導体モジュール1は、例えばパワーモジュール等の電力変換装置に適用されるものである。本実施の形態に係る半導体モジュール1は、インバータ回路を構成する6in1タイプのパワーモジュールである。図1から図4に示すように、半導体モジュール1は、ベース板10と、ベース板10上に配置される複数の積層基板2と、積層基板2上に配置される複数の半導体素子3と、複数の積層基板2及び複数の半導体素子3を収容するケース部材11と、ベース板10の下面に配置される冷却器12と、を含んで構成される。
【0015】
ベース板10は、上面と下面を有する長方形の板である。ベース板10は、放熱板として機能する。また、ベース板10は、X方向に長い平面視矩形状を有している。ベース板10は、例えば銅、アルミニウム又はこれらの合金等からなる金属板であり、表面にメッキ処理が施されてもよい。
【0016】
ベース板10の上面には、枠状のケース部材11が配置される。ケース部材11は、例えば合成樹脂によって成形され、接着剤(不図示)を介してベース板10の上面に接合される。ケース部材11は、ベース板10の外形に沿った矩形状を有し、中央に開口が形成された環状壁部13を有している。環状壁部13は、Z方向に立ち上がるように形成されている。環状壁部13には、複数の端子部材14が設けられている。端子部材14については後述する。
【0017】
また、環状壁部13の内側において、ベース板10の上面には、3つの積層基板2がX方向に並んで配置されている。これら3つの積層基板2は、インバータ回路のU相、V相及びW相を構成する。本実施の形態では、図1の紙面右側からU相、V相、W相という配置になっている。
【0018】
積層基板2は、金属層と絶縁層とを積層して形成され、例えば、DCB(Direct Copper Bonding)基板やAMB(Active Metal Brazing)基板、あるいは金属ベース基板で構成される。具体的に積層基板2は、絶縁板20と、絶縁板20の下面に配置された放熱板21と、絶縁板20の上面に配置された複数の回路板22と、を有する。積層基板2は、例えば平面視略方形状に形成される。
【0019】
絶縁板20は、Z方向に所定の厚みを有し、上面と下面を有する平板状に形成される。絶縁板20は、例えばアルミナ(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化珪素(Si)等のセラミックス材料、エポキシ等の樹脂材料、又はセラミックス材料をフィラーとして用いたエポキシ樹脂材料等の絶縁材料によって形成される。なお、絶縁板20は、絶縁層又は絶縁フィルムと呼ばれてもよい。
【0020】
放熱板21は、Z方向に所定の厚みを有し、絶縁板20の下面全体を覆うように形成される。放熱板21は、例えば銅やアルミニウム等の熱伝導性の良好な金属板によって形成される。
【0021】
絶縁板20の上面(主面)には、複数の回路板22が、電気的に互いに絶縁された状態で、島状に形成されている。具体的に複数の回路板22は、正電位点(P端子)に接続される第1回路板23と、負電位点(N端子)に接続される第2回路板24と、中間電位点(M端子)に接続される第3回路板25と、を含んで構成される。これらの回路板22は、銅箔等によって形成される所定厚みの金属層で構成される。
【0022】
第1回路板23は、積層基板2のX方向一方側の一辺に沿うようにY方向へ延びた平面視矩形状を有している。第1回路板23は、Y方向の略中央において、X方向外側から内側に向かって僅かに切欠かれている。切欠かれた部分には、ゲートパッド26a及びエミッタパッド26bがY方向に並んで形成されている。ゲートパッド26aが上アームの端子部材14側(Y方向正側)に位置している。
【0023】
第2回路板24は、積層基板2のX方向略中央において、Y方向へ延びた長尺形状を有している。第2回路板24の一端はX方向へ僅かに屈曲されており、全体として平面視略L字状を成している。
【0024】
第3回路板25は、積層基板2のX方向他方側の一辺に沿うようにY方向へ延び、第2回路板24の他端側で折り返すように屈曲した後、第2回路板24をY方向で挟むようにY方向に延びた平面視略U字形状を有している。第3回路板25は、Y方向の略中央において、X方向外側から内側に向かって僅かに切欠かれている。切欠かれた部分には、ゲートパッド27a及びエミッタパッド27bがY方向に並んで形成されている。ゲートパッド27aが下アームの端子部材14側(Y方向負側)に位置している。これら3つの回路板22は、後述する冷媒流路の一部を構成する第3流路F3(図2参照)に交差する方向(X方向)に並んで設けられている。
【0025】
回路板22の上面の所定箇所には、半田等の接合材S(図4参照)を介して複数の半導体素子3が配置される。半導体素子3は、例えばシリコン(Si)、炭化けい素(SiC)窒化ガリウム(GaN)等の半導体基板によって平面視方形状に形成される。本実施の形態において、半導体素子3は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子とFWD(Free Wheeling Diode)素子の機能を一体化したRC(Reverse Conducting)-IGBT素子で構成される。
【0026】
なお、半導体素子3は、これに限定されず、IGBT、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、BJT(Bipolar junction transistor)等のスイッチング素子、FWD(Free Wheeling Diode)等のダイオードを組み合わせて構成されてもよい。また、半導体素子3として、逆バイアスに対して十分な耐圧を有するRB(Reverse Blocking)-IGBT等を用いてもよい。また、半導体素子3の形状、配置数、配置箇所等は適宜変更が可能である。半導体素子3は、第1面および第1面の反対側の第2面を有する半導体基板において、第1面にエミッタ、ソースまたはアノード電極を、第2面にコレクタ、ドレインまたはカソード電極を備えてよい。スイッチング素子である半導体素子3は、半導体基板の第1面にゲート電極を備え、さらにセンス電極を備えてよい。
【0027】
本実施の形態では、1つの積層基板2につき(1相につき)、4つの半導体素子3が配置されている。具体的に第1回路板23の上面に配置される2つの半導体素子3a、3bは、上アームを構成する。また、第3回路板25の上面に配置される2つの半導体素子3c、3dは、下アームを構成する。すなわち、上アームと下アームは、積層基板2の上面にX方向で横並びに配置される。回路板23のチップ搭載部、回路板25の配線部材接続部、回路板24、及び回路板25のチップ搭載部が、X方向において順に設けられている。
【0028】
上下の各アームを構成する2つずつの半導体素子は、更に所定のセンス機能を有するセンスチップと、上記センス機能を有しない非センスチップと、に分けられる。具体的に半導体素子3a、3cは、チップの温度及び電流を検知するセンス機能を有するセンスチップである。一方、半導体素子3b、3dは、これらのセンス機能を有しない非センスチップである。すなわち、上下の各アームは、それぞれセンスチップと非センスチップを1つずつ備えている。各アームはそれぞれ、センスチップを少なくとも1つ含む、3以上の半導体素子を有してよい。
【0029】
上アームにおいて、半導体素子3a、3bは、並列接続され、Y方向に並んで配置されている。また、下アームにおいて、半導体素子3c、3dは、並列接続され、Y方向に並んで配置されている。このように、センスチップと非センスチップは、上アーム及び下アームの並び方向(X方向)に対して直交する方向(Y方向)に並んで配置されている。詳細は後述するが、上アームと下アームにおいて、センスチップと非センスチップは、逆に配置されている。すなわち、半導体素子3a、3cは、平面視で斜めに対向する位置に設けられている。半導体素子3a、3cは、積層基板2において、対角線上に離れて配置されてよい。
【0030】
ここで、図5を参照して、半導体素子(センスチップ)のセンス機能について説明する。図5に示すように、半導体素子3a、3cは、半導体基板において、IGBT素子30と、FWD素子31と、温度センス用ダイオード32と、を備えている。
【0031】
IGBT素子30は、一端側がゲート(G)に接続され、他端側がコレクタ(C)、エミッタ(E)、センスエミッタ(S)に接続されている。FWD素子31は、IGBT素子30のエミッタ~コレクタ間で逆並列接続されている。
【0032】
温度センス用ダイオード32は、一端がアノード(A)に接続され、他端がカソード(K)に接続される。温度センス用ダイオード32は、アノード~カソード間の電圧に基づいてチップ温度を検知する。センスエミッタ(S)は、IGBTに流れる電流の一部を分流して検出できる端子である。センスエミッタ(S)に、例えば、外部の電流センス用抵抗を接続してその電圧を検出することで、短絡動作が発生した際に短絡保護をかけることが可能である。この電流センス用抵抗は制御回路の設計にて、適宜条件を設定することが可能であり、これにより短絡保護を開始する電圧値を設定できる。
【0033】
また、積層基板2の上面には、下アームの半導体素子3dの近傍に位置する一角部にサーミスタ4が配置されている。サーミスタ4は、積層基板2の下面側に位置する冷却器12内で流れる冷却水の温度を検知する。なお、サーミスタ4に限らず、他のタイプの測温抵抗体、又は熱電対を配置してもよい。
【0034】
上記したように、積層基板2の上面には、枠状のケース部材11が配置される。ケース部材11は、3つの積層基板2の周囲を囲う環状壁部13を有している。環状壁部13の上面の内周側には、一段下がった段部13aが形成されている。段部13aの上面は、環状壁部13の上面に対して低い位置に設けられている。
【0035】
また、図1に示すように、環状壁部13の短手方向(Y方向)で対向する一対の壁部には、複数の端子部材14が一体成型により埋め込まれている。端子部材14は、例えば銅素材、銅合金系素材、アルミニウム合金系素材、鉄合金系素材等の金属素材の板状体を折り曲げて形成される。端子部材14は、段部13aの上面に露出する内側端子部15と、環状壁部13の上面に突出する外側端子部16と、を有している。
【0036】
複数の端子部材14は、図3に示すように、センス機能を有する半導体素子3a、3cの近傍において、各電極に対応してX方向に並んで配置されている。具体的に半導体素子3aの近傍には、5つの端子部材14がX方向に並んで配置されている。また、半導体素子3cの近傍にも、5つの端子部材14がX方向に並んで配置されている。これら5つずつ配置される端子部材14は、図3に示すように、平面視で積層基板2をY方向で挟んで斜めに対向する位置関係にある。積層基板2の対角線の方向において、上アーム用の端子部材14は半導体素子3aに隣接して、下アーム用の端子部材14は半導体素子3cに隣接して、それぞれ設けられる。半導体素子3aのセンス電極(S,A,K)及び半導体素子3cのセンス電極(S,A,K)は、積層基板2の対角線の方向において、Y方向に離れて配置されてよい。上アーム用の端子部材14と半導体素子3aのセンス電極は配線部材Wにより電気的に接続されてよい。下アーム用の端子部材14と半導体素子3cのセンス電極は配線部材Wにより電気的に接続されてよい。半導体素子3aにおいて、ゲート電極はセンス電極の反対側に配置されてよい。半導体素子3cにおいて、ゲート電極はセンス電極の反対側に配置されてよい。更に、サーミスタ4の近傍に位置する環状壁部13にも、端子部材14が配置されている。これらの端子部材14は、図1に示すように、各相共に同じように配置されている。
【0037】
各半導体素子3、回路板22、及び端子部材14は、配線部材Wによって電気的に接続される。例えば、上アームにおいて、半導体素子3aと内側端子部15、半導体素子3aと第3回路板25、半導体素子3aとゲートパッド26a、ゲートパッド26aとゲート側の端子部材14、第3回路板25とエミッタパッド26b、エミッタパッド26bとエミッタ側の端子部材14は、それぞれ配線部材Wによって接続される。また、半導体素子3bと第3回路板25、半導体素子3bとゲートパッド26aも、それぞれ配線部材Wによって接続される。半導体素子3bのゲート電極は、ゲートパッド26aを間において、半導体素子3aのゲート電極の近くに配置されてよい。半導体素子3a,3bの間に配置された配線部材Wにより第3回路板25とエミッタパッド26bを接続することにより、並列接続された半導体素子3a,3bの中間電位を検出してもよい。
【0038】
下アームにおいて、半導体素子3cと内側端子部15、半導体素子3cと第2回路板24、半導体素子3dとゲートパッド27a、ゲートパッド27aとゲート側の端子部材14、第2回路板24とエミッタパッド27b、エミッタパッド27bとエミッタ側の端子部材14は、それぞれ配線部材Wによって接続される。また、半導体素子3dと第2回路板24、半導体素子3dとゲートパッド27aも、それぞれ配線部材Wによって接続される。半導体素子3dのゲート電極は、ゲートパッド27aを間において、半導体素子3cのゲート電極の近くに配置されてよい。半導体素子3c,3dの間に配置された配線部材Wにより第2回路板24とエミッタパッド27bを接続することにより、並列接続された半導体素子3c,3dの中間電位を検出してもよい。
【0039】
また、サーミスタ4と内側端子部15も、配線部材Wによって接続される。なお、これらの配線部材Wには、導体ワイヤ(ボンディングワイヤ)が用いられる。導体ワイヤの材質は、金、銅、アルミニウム、金合金、銅合金、アルミニウム合金のいずれか1つ又はそれらの組み合わせを用いることができる。また、配線部材として導電ワイヤ以外の部材を用いることも可能である。例えば、配線部材としてリボンを用いることができる。
【0040】
また、環状壁部13により規定されるケース部材11の内部空間には、封止樹脂17が充填される。封止樹脂17は、上面が例えば環状壁部13の上面に至るまで充填される。これにより、積層基板2、半導体素子3、内側端子部15、配線部材Wが封止される。なお、封止樹脂17には、エポキシ樹脂やシリコーンゲルを用いることが可能である。
【0041】
図2及び図4に示すように、冷却器12は、上記したベース板10と、ベース板10の下面側に設けられる複数のフィン12a(詳細な形状は省略)とを含んで構成される。冷却器12は、さらに冷却ケース12bを含んでよい。上記したように、ベース板10は、放熱板として機能し、上面に複数の積層基板2が搭載されている。ベース板10の下面(放熱面)に設けられた複数のフィン12aは、冷却ケース12bに形成された凹部12cに収容される。なお、冷却ケース12bは、冷媒ジャケット又はウォータージャケットと呼ばれてもよい。
【0042】
複数のフィン12aは、ベース板10の下面に一体的に設けられている。フィン12aは、ベース板10と同一の金属材料で構成されてよい。フィン12aは、放熱板、言い換えると、ヒートシンクとして用いられる。例えば、フィン12aには、角柱形状のピン(角ピン)を複数個、間隔を空けて所定ピッチで配列されたピンフィンを用いることができる。フィン12aの構成については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、角柱形状の代わりに円柱形状のピンを設けることや、Y方向に延在するブレード形状の複数のフィンを互いに平行に配列する構成としてもよい。フィン12aは、Y方向に冷媒を流し得るように設けられる。
【0043】
ベース板10において、複数のフィン12aが設けられる領域は、複数の積層基板2がベース板10に接合された状態において、積層基板2上の半導体素子3の実装領域の反対側(裏面側)の領域を含むことが好ましい。言い換えると、複数のフィン12aがベース板10に一体的に設けられる領域は、半導体素子3の直下の領域を含む領域であることが好ましい。なお、本実施の形態では、複数の積層基板2の直下の領域を含む領域に、複数のフィン12aが配置されている。また、本実施の形態においては、複数のフィン12aの集合体が略直方体形状を有している。複数のフィン12aの集合体の長手方向は、半導体モジュール1の長手方向(X方向)と一致している。
【0044】
冷却ケース12bは、略直方体形状の外形を有し、平面視にて、X方向に長い長方形状を有している。平面視した場合の冷却ケース12bの外形は、実質的にベース板10の外形と同一の形状を有している。冷却ケース12bは、上面に凹部12cが形成されている。これにより、冷却ケース12bは、上部が開口した箱型に形成される。凹部12cは、冷却ケース12bの外形と相似形状の平面視長方形状を有している。
【0045】
凹部12cは、複数のフィン12aの集合体の外形よりも大きく形成されている。より具体的に凹部12cのY方向の幅は、複数のフィン12aの集合体のY方向の幅よりも十分に大きく設定されている。また、複数のフィン12aの集合体は、凹部12cのY方向中央に配置されている。上記したように、凹部12cは、複数のフィン12を収容する。凹部12cと複数のフィン12との間に設けられる隙間は冷媒流路を画定し、流路を冷媒が流れ得る。
【0046】
具体的に冷媒流路は、図2に示すように複数のフィン12のY方向負側の凹部12c内に設けられた第1流路F1と、複数のフィン12のY方向正側の凹部12c内に設けられた第2流路F2と、複数のフィン12の隙間に設けられた第3流路F3と、を含んで構成される。第1流路F1及び第2流路F2は、Y方向で互いに離れて並列に配置されている。第3流路F3は、第1流路F1及び第2流路F2の間に設けられ、第1流路F1及び第2流路F2を接続する。第1流路F1及び第2流路F2は、X方向に延びる一方、第3流路F3は、Y方向に延びている。ポンプなど外部装置から供給される冷媒は、第1流路F1、第3流路F3及び第2流路F2を通過して、冷却システムを循環し得る。冷媒は、第1流路F1から第2流路F2へ向かって第3流路F3を通過してよい。
【0047】
また、冷却ケース12bには、冷媒の出入り口となる導入口12d及び排出口12eが設けられている。図2に示すように、導入口12dは、冷却ケース12bの底壁部分において第1流路F1のX方向正側の端部に連通するように配置されている。排出口12eは、冷却ケース12bの底壁部分において第2流路F2のX方向負側の端部に連通するように配置されている。すなわち、導入口12d及び排出口12eは、複数のフィン12aを挟んで斜めに対向するように配置されている。なお、導入口12d及び排出口12eは、冷却ケース12bの側壁部分に設けられてもよい。
【0048】
本実施の形態において、冷媒は、導入口12dから冷却ケース12b内に導入され、第1流路F1から第3流路F3を通じて更に第2流路F2を流れ、排出口12eから冷却ケース12bの外に排出される。なお、導入口12d及び排出口12eの配置は、これに限定されず、適宜変更が可能である。例えば、導入口12d及び排出口12eの位置関係を逆にしてもよい。すなわち、冷媒流路は、冷媒が第2流路F2から第3流路F3を通じて更に第1流路F1を流れるように構成されてもよい。
【0049】
なお、本実施の形態では、冷却器12の構成として冷却ケース12bを含むとしたが、冷却ケース12bは任意の構成としてよい。すなわち、ベース板10及び複数のフィン12aのみで冷却器12を構成してもよい。
【0050】
ところで、車載用のパワー半導体モジュールにおいては、主として半導体素子、絶縁基板(積層基板)、及び冷却器等を含んで構成される。半導体素子には、IGBT素子とFWD素子を一体化したRC-IGBTが採用される。冷却器をモジュールに組み込むことで、冷却性能を高めつつも、モジュール全体の小型化・軽量化を実現している。また、この種の半導体モジュールでは、大電流を流すため、上下の各アームにおいて2つのチップを並列接続した2並列構造の回路を形成している。2並列のチップのうち、一方のチップは、チップ温度をモニターするための温度センス機能と、電流の異常を検出するための電流センス機能と、を有している。
【0051】
ここで、参考例を参照して、従来の半導体モジュールの構成について説明する。図6は、参考例に係る半導体モジュールの平面模式図である。図6においては、半導体素子3、端子部材14、及び一部の回路板22のレイアウトが図2と相違する。このため、図2と共通する構成は、同じ名称及び符号で示し、適宜説明を省略する。
【0052】
図6に示すように、上アームにおいて、半導体素子3a、3bは、並列接続され、Y方向に並んで第1回路板23の上面に配置されている。また、下アームにおいて、半導体素子3c、3dは、並列接続され、Y方向に並んで第3回路板25の上面に配置されている。このように、センスチップと非センスチップは、上アーム及び下アームの並び方向(X方向)に対して直交する方向(Y方向)に並んで配置されている。また、上アームと下アームにおいて、センスチップと非センスチップは、Y方向で同じ側に設けられている。すなわち、半導体素子3a、3cは、積層基板2において一つの辺に沿って、Y方向一方側に偏って配置されており、且つ、X方向で対向するように配置されている。
【0053】
また、上アームにおいて、半導体素子3a、3bの間に位置する積層基板2の上面には、ゲートパッド26a及びエミッタパッド26bがY方向に並んで形成されている。同様に、下アームにおいて、半導体素子3c、3dの間に位置する積層基板2の上面には、ゲートパッド27a及びエミッタパッド27bがY方向に並んで形成されている。図6において、上アーム側のエミッタ電極(E)は、配線部材Wを介して絶縁板20上のエミッタパッド26bに接続されている。また、下アーム側のエミッタ電極(E)は、配線部材Wを介して絶縁板20上のエミッタパッド27bに接続されている。
【0054】
また、積層基板2の上面には、半導体素子3a、3cのY方向外側において、半導体素子3a、3cの各電極に対応して複数の電極パッド28が形成されている。具体的に、半導体素子3aの側方に5つの電極パッド28がX方向に並んで配置され、半導体素子3cの側方に5つの電極パッド28がX方向に並んで配置されている。
【0055】
また、環状壁部13には、半導体素子3a、3cの各電極に対応して、複数の端子部材14が一体成型により埋め込まれている。具体的に複数の端子部材14は、環状壁部13の短手方向(Y方向)一方側の壁部に配置されている。半導体素子3aの側方に配置された5つの電極パッド28の更に側方に、5つの端子部材14がX方向に並んで配置されている。また、半導体素子3cの側方に配置された5つの電極パッド28の更に側方に、5つの端子部材14がX方向に並んで配置されている。
【0056】
一般に上下の各アームにおいて、2並列接続された2つの半導体素子のうち、電流が流れる向きに対して手前側(上流側)に位置する半導体素子の方が負荷が大きいとされる。例えば、上アームにおける電流はP端子からM端子に向かって流れ、下アームにおける電流はM端子からN端子に向かって流れる。上記の参考例では、センス機能を有する半導体素子3a、3cがY方向一方側に偏って配置されるため、半導体モジュールのY方向一方側の温度しか検出することができない。例えば、Y方向他方側に位置し、センス機能を有しない半導体素子3b、3dの温度が、上記の半導体素子3a、3cの温度よりも高くなった場合に適切に温度制御ができなくなってしまうおそれがある。
【0057】
そこで、本件発明者は、センス機能を有するセンスチップとセンス機能を有しない非センスチップとの位置関係と、モジュールに一体化された冷却器を流れる冷媒(冷却水)の流れ方向に着目し、本発明に想到した。
【0058】
すなわち、本発明の骨子は、従来に対して下アーム側のセンスチップと非センスチップを逆に配置し、センスチップ及び非センスチップの並び方向と冷媒の流れる方向とを一致させることである。
【0059】
具体的に本実施の形態では、図3に示すように、積層基板2の上面に横並びで上アーム及び下アームを構成する複数の半導体素子3が配置されている。複数の半導体素子は、温度を検知するセンス機能を有するセンスチップ(半導体素子3a、3c)と、センス機能を有しない非センスチップ(半導体素子3b、3d)と、を上アーム及び下アームの並び方向(X方向)に対して直交する方向(Y方向)に並んで配置して構成される。また、上アームと下アームにおいて、センスチップと非センスチップは、逆に配置されている。すなわち、半導体素子3a、3cは平面視で斜めに対向するように配置され、積層基板2において対角線上に設けられている。更に、冷却器12を流れる冷媒の流れ方向は、センスチップと非センスチップの並び方向に一致している。
【0060】
言い換えると、第1回路板23には、温度を検知するセンス機能を有する第1センスチップとしての半導体素子3aと、センス機能を有しない第1非センスチップとしての半導体素子3bと、が第3流路F3に沿って並んで搭載されている。また、第3回路板25には、センス機能を有する第2センスチップとしての半導体素子3cと、センス機能を有しない第2非センスチップとしての半導体素子3dと、が第3流路F3に沿って並んで搭載されている。更に、半導体素子3aは、第2流路F2側に偏って配置されており、半導体素子3cは、第1流路F1側に偏って配置されている。また、P端子は、第1回路板23において、第1流路F1側に偏って配置され、M端子は、第3回路板25において、第2流路F2側に偏って配置されている。第1流路F1は導入口12dを、第2流路F2は排出口12を、それぞれ備える。
【0061】
これらの構成によれば、センスチップと非センスチップを組み合わせたことにより、モジュール内の半導体素子を全てセンスチップで構成した場合に比べて、安価に製造することが可能である。また、上アームと下アームでセンスチップと非センスチップを互い違いに配置したことで、センスチップが半導体モジュール1のY方向一方側に偏ることがない。また、冷却器12を流れる冷媒の流れ方向をセンスチップと非センスチップの並び方向(Y方向)に一致させたことで、冷却器12の上流側及び下流側の両方において、半導体素子の温度を適切に検出することが可能である。よって、センス機能を有しない非センスチップの温度を近傍のセンスチップから推定することができ、より効果的に温度制御を実現することが可能である。このように、センス機能を有しない半導体素子であっても安価な構成でチップ温度を検出することが可能である。
【0062】
本実施の形態では、参考例の図6に示すパッド28に相当する要素がないため、パッド28のスペースだけ、半導体素子3a及び半導体素子3dをY方向外側にずらして配置することが可能である。すなわち、半導体素子3aは、半導体素子3dよりも第2流路F2側に寄っており、半導体素子3cは、半導体素子3bよりも第1流路F1側に寄っている。これにより、半導体素子3の直下を流れる冷媒の流れ方向(第3流路F3)において、半導体素子3a、3c間の距離を確保することができ、冷媒の温度変化をモニターし易くすることが可能である。
【0063】
本実施の形態では、センスチップが、温度センス機能だけでなく、電流センス機能も有している。この構成によれば、電流センス機能により、短絡を検知することが可能である。なお、本実施の形態では、センスチップが温度センス機能と電流センス機能の両方を有する構成としたが、この構成に限定されない。電流センス機能は、必ずしも有しなくてよい。
【0064】
参考例では、端子部材14と半導体素子3が絶縁板20上の各電極パッド28を介して電気的に接続されているのに対し、本実施の形態では、端子部材14と半導体素子3が配線部材Wにより直接接続されている。この構成によれば、各電極パッド28を省略できるため、積層基板2の面積を小さくすることができ、モジュール全体の小型化及びコスト低減を実現することが可能である。
【0065】
本実施の形態では、複数の端子部材14は、上アームと下アームにそれぞれ設けられている。平面視において、複数の端子部材14は、上アームと下アームとで積層基板2を挟んで斜めに対向するように配置されている。この構成によれば、複数の端子部材14がY方向で斜めに対向していることで、モジュール上面に配置される制御ボード(プリント基板)を実装する場合に、対向する複数の端子部材14で制御ボードを安定的に保持することが可能である。制御ボードには、スイッチング素子を制御するための駆動用集積回路が実装されてよい。
【0066】
特に図示はしないが、制御ボードは、半導体モジュール1の外形に対応したX方向に長い平面視矩形状のプリント基板で構成される。制御ボードには、例えば各端子部材14の外側端子部16に対応したスルーホールが形成されている。スルーホールに外側端子部16の先端を挿入することで、制御ボードが半導体モジュール1の所定箇所に配置される。
【0067】
参考例においては、端子部材14がY方向一方側にのみ配置されているため、制御ボードを配置しても、Y方向他方側が支持されない。このため、参考例では、制御ボードを安定的に保持することができない。よって、参考例においては、ケース部材11(環状壁部13)に制御ボードを支持するための支持部を別途形成する必要があり、構成が複雑になる。
【0068】
本実施の形態では、積層基板2(絶縁板20)の上面にサーミスタ4が配置されている。この構成によれば、サーミスタ4により、積層基板2の下方を流れる冷媒の温度を検出することが可能である。なお、サーミスタ4は、冷媒の流れ方向下流側に配置されることが好ましい。これにより、半導体素子3の熱により温められた冷媒の温度を検出することが可能である。
【0069】
以上説明したように、本発明によれば、従来に対して下アーム側のセンスチップと非センスチップを逆に配置し、センスチップ及び非センスチップの並び方向と冷媒の流れる方向とを一致させたことで、センス機能を有しない半導体素子であっても安価な構成でチップ温度を検出することができる。
【0070】
なお、上記実施の形態において、積層基板2に配置される半導体素子3の個数及び配置箇所は、上記構成に限定されず、適宜変更が可能である。
【0071】
また、上記実施の形態において、回路板22の個数及びレイアウトは、上記構成に限定されず、適宜変更が可能である。
【0072】
また、上記実施の形態では、半導体素子3が平面視矩形状に形成される構成としたが、この構成に限定されない。半導体素子3は、矩形以外の多角形状に形成されてもよい。
【0073】
また、上記実施の形態では、一相分の上アーム及び下アームが、それぞれ2つの半導体素子を並列接続して構成されているが、半導体素子の並列接続数は3個以上であってもよい。また、半導体モジュール1の相数も、単相、三相を問わず、更に多相であってもよい。
【0074】
また、上記実施の形態では、上アームと下アーム共にセンスチップが非センスチップに対して電流の流れ方向下流側に配置される場合について説明したが、この構成に限定されない。上アームと下アームの両方において、センスチップと非センスチップの位置関係を逆にし、センスチップが非センスチップに対して電流の流れ方向上流側に配置されてもよい。例えば、図7に示す配置が可能である。図7は、変形例に係る半導体モジュールを示す平面図である。図7においては、半導体素子3a、3bの配置、半導体素子3c、3dの配置、及び複数の端子部材14の配置がそれぞれ逆になっている点で、図3と相違する。このため、主に相違点についてのみ説明し、共通する構成は同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0075】
図7に示すように、第1回路板23には、温度を検知するセンス機能を有する第1センスチップとしての半導体素子3aと、センス機能を有しない第1非センスチップとしての半導体素子3bと、が第3流路F3に沿って並んで搭載されている。また、第3回路板25には、センス機能を有する第2センスチップとしての半導体素子3cと、センス機能を有しない第2非センスチップとしての半導体素子3dと、が第3流路F3に沿って並んで搭載されている。更に、半導体素子3aは、第1流路F1側に偏って配置されており、半導体素子3cは、第2流路F2側に偏って配置されている。また、P端子は、第1回路板23において、第1流路F1側に偏って配置され、M端子は、第3回路板25において、第2流路F2側に偏って配置されている。図7に示す実施形態において、第1流路F1及び第2流路F2は、第3流路F3に関して入れ替わってもよい。このとき、第3流路F3において、冷媒はM端子側からP端子側へ流れてよい。
【0076】
これらの構成によれば、図3の構成と同様に、半導体素子3の直下を流れる冷媒の流れ方向(第3流路F3)において、半導体素子3a、3c間の距離を確保することができ、冷媒の温度変化をモニターし易くすることが可能である。特に図7の破線矢印に示す電流の流れ方向に対して、半導体素子3a、3cを上流側に配置することが可能である。これにより、より負荷が大きいとされる電流方向上流側の半導体素子3a、3cの温度をモニターすることが可能である。P端子及びM端子の近位に半導体素子3a、3cを、遠位に半導体素子3b、3dを、それぞれ設けてよい。
【0077】
上記実施の形態では、冷却器12内を流れる冷媒の流れ方向がY方向に向けられている。この場合、冷媒の導入口及び排出口は、Y方向のどちら側であってもよい。すなわち、Y方向のどちら側が上流又は下流であってもよい。例えば、上記したサーミスタ4が配置された側を冷媒の排出側(下流側)としてもよい。
【0078】
本実施の形態及び変形例を説明したが、他の実施の形態として、上記実施の形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0079】
図3及び図7に示した形態において、上アーム用の半導体素子3a(センスチップ)と下アーム用の半導体素子3c(センスチップ)は、冷媒の流通方向に離れ、積層基板2の対角に隣接しそれぞれ設けられる。この配置により、冷媒の上流側と下流側に離れたセンスチップによりモジュール内の温度をモニターできる。両形態において、上アーム用の半導体素子3aに接続される端子部材14と下アーム用の半導体素子3cに接続される端子部材14も、冷媒の流通方向に離れ、積層基板2の対角に隣接し設けられてよい。これら端子部材14の配置により、制御ボードを安定的に保持できる。さらに図7に示す形態のように、積層基板2において、上アーム用の半導体素子3a及び端子部材14はP端子側に、下アーム用の半導体素子3c及び端子部材14はM端子側に、それぞれ設けられてよい。この配置により、冷媒の流通方向に関わらず、相対的に負荷の大きなセンスチップによりモジュール内の温度をモニターできる。
【0080】
また、本実施の形態は上記の実施の形態及び変形例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらに、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【0081】
下記に、上記実施の形態における特徴点を整理する。
上記実施の形態に記載の半導体モジュールは、互いに離れて並列に配置された第1流路及び第2流路と、前記第1流路及び前記第2流路を接続する第3流路と、を有する冷却器と、前記冷却器に搭載され、前記第3流路に交差する方向に並んで設けられた複数の回路板と、を備え、前記複数の回路板は、P端子に接続された第1回路板と、N端子に接続された第2回路板と、M端子に接続された第3回路板と、を有し、前記第1回路板には、温度を検知するセンス機能を有する第1センスチップと、前記センス機能を有しない第1非センスチップと、が前記第3流路に沿って並んで搭載され、前記第3回路板には、前記センス機能を有する第2センスチップと、前記センス機能を有しない第2非センスチップと、が前記第3流路に沿って並んで搭載され、前記第1センスチップは、前記第2流路側に偏って配置され、前記第2センスチップは、前記第1流路側に偏って配置されている。
【0082】
また、上記実施の形態に記載の半導体モジュールにおいて、前記第1センスチップ及び第2センスチップは、更に短絡を検知する電流センス機能を有する。
【0083】
また、上記実施の形態に記載の半導体モジュールにおいて、前記積層基板を収容し、第1端子部材及び第2端子部材を有するケース部材を更に備え、前記第1センスチップと前記第1端子部材が第1配線部材により接続され、前記第2センスチップと前記第2端子部材が第2配線部材により接続される。
【0084】
また、上記実施の形態に記載の半導体モジュールにおいて、前記端子部材は、前記第1センスチップ側と前記第2センスチップ側にそれぞれ設けられ、前記第1センスチップ側に設けられる前記端子部材と前記第2センスチップ側に設けられる前記端子部材とは、平面視において、前記積層基板を挟んで斜めに対向するように配置されている。
【0085】
また、上記実施の形態に記載の半導体モジュールにおいて、前記積層基板の上面にサーミスタが配置されている。
【0086】
また、上記実施の形態に記載の半導体モジュールにおいて、前記P端子は、前記第1回路板において、前記第1流路側に偏って配置され、前記M端子は、前記第3回路板において、前記第2流路側に偏って配置されている。
【0087】
また、上記実施の形態に記載の半導体モジュールにおいて、前記P端子は、前記第1回路板において、前記第2流路側に偏って配置され、前記M端子は、前記第3回路板において、前記第1流路側に偏って配置されている。
【0088】
また、上記実施の形態に記載の半導体モジュールにおいて、前記第1流路に導入口が設けられ、前記第2流路に排出口が設けられている。
【産業上の利用可能性】
【0089】
以上説明したように、本発明は、安価な構成で内部の温度をモニターすることができるという効果を有し、特に、半導体モジュールに有用である。
【符号の説明】
【0090】
1 :半導体モジュール
2 :積層基板
3 :半導体素子
3a :半導体素子(第1センスチップ)
3b :半導体素子(第1非センスチップ)
3c :半導体素子(第2センスチップ)
3d :半導体素子(第2非センスチップ)
4 :サーミスタ
10 :ベース板
11 :ケース部材
12 :冷却器
12a :フィン
12b :冷却ケース
12c :凹部
12d :導入口
12e :排出口
13 :環状壁部
13a :段部
14 :端子部材
15 :内側端子部
16 :外側端子部
17 :封止樹脂
20 :絶縁板
21 :放熱板
22 :回路板
23 :第1回路板
24 :第2回路板
25 :第3回路板
26a :ゲートパッド
26b :エミッタパッド
27a :ゲートパッド
27b :エミッタパッド
28 :電極パッド
30 :IGBT素子
31 :FWD素子
32 :温度センス用ダイオード
F1 :第1流路(冷媒流路)
F2 :第2流路(冷媒流路)
F3 :第3流路(冷媒流路)
S :接合材
W :配線部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7