(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】ケーブル巻き取り装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/02 20060101AFI20231108BHJP
B66D 1/54 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
G01B11/02 Z
B66D1/54 H
(21)【出願番号】P 2019191082
(22)【出願日】2019-10-18
【審査請求日】2022-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 和彦
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特公平07-077952(JP,B2)
【文献】特開2004-010207(JP,A)
【文献】特開2000-258135(JP,A)
【文献】実開平02-105988(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
B66D 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサを取り付けたケーブルを水中に投入し、回収するケーブル巻き取り装置であって、
光が導通可能なケーブルと、
前記ケーブルの巻上げ機と、
前記巻上げ機から送り出される前記ケーブルの長さが所定の長さとなる位置に設けられる前記ケーブルを吊り下げるプーリーと、
前記ケーブルの端部のうち、前記プーリーによって吊り下げられ前記水中に投入される側の端部である第1端部に取り付けられた前記センサと、
前記ケーブルの端部のうち、前記第1端部の反対側の端部である第2端部に設けられ、前記第2端部から前記ケーブル内に光を発射する光源と、
前記ケーブルの前記第2端部に設けられ、発射された前記光の後方散乱光と反射光を検出する検出器と、
計測部と、
前記巻上げ機を制御する制御部と、
を備え、
前記計測部は、前記第2端部から前記光源が発射した光について、前記光を発射してから前記第1端部に取り付けられた前記センサで反射される反射光を検出するまでの第1時間と、前記光を発射してから前記プーリーによって方向を変更されることによって形成される前記ケーブルの屈曲部で生じる後方散乱光を検出するまでの第2時間と、の差に基づいて、前記第1端部から前記屈曲部までの長さを計測し、
制御部は、前記計測部によって計測された前記長さが所定の第1長さになると、前記ケーブルの巻き上げ速度を減速し、計測された前記長さが所定の第2長さになると前記ケーブルの巻き上げを停止する、
ケーブル巻き取り装置。
【請求項2】
センサを取り付けたケーブルを水中に投入し、回収するケーブル巻き取り装置であって、
光が導通可能なケーブルと、
前記ケーブルの巻上げ機と、
前記巻上げ機から送り出される前記ケーブルの長さが所定の長さとなる位置に設けられる前記ケーブルを吊り下げるプーリーと、
前記ケーブルの端部のうち、前記プーリーによって吊り下げられ前記水中に投入される側の端部である第1端部に取り付けられた前記センサと、
前記ケーブルの前記第1端部に設けられ、前記第1端部から前記ケーブル内に光を発射する光源と、
前記ケーブルの前記第1端部に設けられ、発射された前記光の後方散乱光と反射光を検出する検出器と、
計測部と、
前記巻上げ機を制御する制御部と、
を備え、
前記計測部は、前記第1端部から前記光源が発射した光について、前記光を発射してから、前記第1端部の反対側の端部である第2端部で反射される反射光を検出するまでの第1時間と、前記光を発射してから前記プーリーによって方向を変更されることによって形成される前記ケーブルの屈曲部で生じる後方散乱光を検出するまでの第2時間と、の差に基づいて、前記第1端部から前記屈曲部までの長さを計測し、
制御部は、前記計測部によって計測された前記長さが所定の第1長さになると、前記ケーブルの巻き上げ速度を減速し、計測された前記長さが所定の第2長さになると前記ケーブルの巻き上げを停止する、
ケーブル巻き取り装置。
【請求項3】
前記計測部は、前記光の強度が、所定の第1強度以下に低下することを検出することによって前記第1時間を検出し、前記光の強度が、前記第1強度以下の状態から所定の第2強度以上に上昇することを検出することによって前記第2時間を検出する、
請求項1
又は請求項2に記載の
ケーブル巻き取り装置。
【請求項4】
センサを取り付けたケーブルを水中に投入し、回収するケーブル巻き取り装置であって、
光が導通可能なケーブルと、
前記ケーブルの巻上げ機と、
前記巻上げ機から送り出される前記ケーブルの長さが所定の長さとなる位置に設けられる前記ケーブルを吊り下げるプーリーと、
前記ケーブルの端部のうち、前記プーリーによって吊り下げられ前記水中に投入される側の端部である第1端部に取り付けられた前記センサと、
前記ケーブルの前記第1端部に設けられ、前記第1端部から前記ケーブル内に光を発射する光源と、
前記ケーブルの前記第1端部に設けられ、発射された前記光の後方散乱光を検出する検出器と、
計測部と、
前記巻上げ機を制御する制御部と、
を備え、
前記計測部は、前記ケーブルの前記第1端部から前記光源が発射した光について、前記光を発射してから前記プーリーによって方向を変更されることによって形成される前記ケーブルの屈曲部で生じる後方散乱光を検出するまでの時間に基づいて、前記第1端部から前記屈曲部までの長さを計測し、
制御部は、前記計測部によって計測された前記長さが所定の第1長さになると、前記ケーブルの巻き上げ速度を減速し、計測された前記長さが所定の第2長さになると前記ケーブルの巻き上げを停止する、
ケーブル巻き取り装置。
【請求項5】
光が導通可能なケーブルと、前記ケーブルの巻上げ機と、前記巻上げ機から送り出される前記ケーブルの長さが所定の長さとなる位置に設けられる前記ケーブルを吊り下げるプーリーと、前記ケーブルの端部のうち、前記プーリーによって吊り下げられ水中に投入される側の端部である第1端部に取り付けられたセンサと、前記ケーブルの端部のうち、前記第1端部の反対側の端部である第2端部に設けられ、前記第2端部から前記ケーブル内に光を発射する光源と、前記ケーブルの前記第2端部に設けられ、発射された前記光の後方散乱光と反射光を検出する検出器と、を備える、前記センサを取り付けた前記ケーブルを前記水中に投入し、回収するケーブル巻き取り装置の制御方法であって、
前記第2端部から前記光源が発射した光について、前記光を発射してから前記第1端部に取り付けられた前記センサで反射される反射光を検出するまでの第1時間と、前記光を発射してから前記プーリーによって方向を変更されることによって形成される前記ケーブルの屈曲部で生じる後方散乱光を検出するまでの第2時間と、の差に基づいて、前記第1端部から前記屈曲部までの長さを計測し、
計測された前記長さが所定の第1長さになると、前記ケーブルの巻き上げ速度を減速し、計測された前記長さが所定の第2長さになると前記ケーブルの巻き上げを停止する、
制御方法。
【請求項6】
光が導通可能なケーブルと、前記ケーブルの巻上げ機と、前記巻上げ機から送り出される前記ケーブルの長さが所定の長さとなる位置に設けられる前記ケーブルを吊り下げるプーリーと、前記ケーブルの端部のうち、前記プーリーによって吊り下げられ水中に投入される側の端部である第1端部に取り付けられたセンサと、前記ケーブルの前記第1端部に設けられ、前記第1端部から前記ケーブル内に光を発射する光源と、前記ケーブルの前記第1端部に設けられ、発射された前記光の後方散乱光と反射光を検出する検出器と、を備える、前記センサを取り付けた前記ケーブルを前記水中に投入し、回収するケーブル巻き取り装置の制御方法であって、
前記第1端部から前記光源が発射した光について、前記光を発射してから前記第1端部の反対側の端部である第2端部で反射される反射光を検出するまでの第1時間と、前記光を発射してから前記プーリーによって方向を変更されることによって形成される前記ケーブルの屈曲部で生じる後方散乱光を検出するまでの第2時間と、の差に基づいて、前記第1端部から前記屈曲部までの長さを計測し、
計測された前記長さが所定の第1長さになると、前記ケーブルの巻き上げ速度を減速し、計測された前記長さが所定の第2長さになると前記ケーブルの巻き上げを停止する、
制御方法。
【請求項7】
光が導通可能なケーブルと、前記ケーブルの巻上げ機と、前記巻上げ機から送り出される前記ケーブルの長さが所定の長さとなる位置に設けられる前記ケーブルを吊り下げるプーリーと、前記ケーブルの端部のうち、前記プーリーによって吊り下げられ水中に投入される側の端部である第1端部に取り付けられたセンサと、前記ケーブルの前記第1端部に設けられ、前記第1端部から前記ケーブル内に光を発射する光源と、前記ケーブルの前記第1端部に設けられ、発射された前記光の後方散乱光を検出する検出器と、を備える、前記センサを取り付けた前記ケーブルを前記水中に投入し、回収するケーブル巻き取り装置の制御方法あって、
前記ケーブルの前記第1端部から前記光源が発射した光について、前記光を発射してから前記プーリーによって方向を変更されることによって形成される前記ケーブルの屈曲部で生じる後方散乱光を検出するまでの時間に基づいて、前記第1端部から前記屈曲部までの長さを計測し、
計測された前記長さが所定の第1長さになると、前記ケーブルの巻き上げ速度を減速し、計測された前記長さが所定の第2長さになると前記ケーブルの巻き上げを停止する、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル巻き取り装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海洋環境観測装置の一つに、船舶または航空機から水中センサを取り付けたケーブルを吊り下げ、これを巻上げ機により投入、回収するものがある。観測効率向上の観点から、水中センサの投入・回収を短時間で行うことが要求されている。また、ケーブルによって吊り下げた水中センサを巻上げ機によって回収する場合、巻き取り長さに応じて、巻き取り速度の減速や停止を行う必要がある。しかし、巻き取り速度や海象等により、ケーブルの張力が増減し、巻上げ機の回転数が同一であっても、巻上げ機に巻かれるケーブルの長さは増減する。その為、巻上げ機の回転数から巻き取り長さを正確に割り出すことは困難である。より具体的には、一般的に巻き取り長さは、巻上げ機に巻かれるケーブルの巻き径(巻き取りドラムの直径)と巻き取りドラムの回転数から計算して求める。しかし、巻き取り速度の変化等により、ケーブルの張力が増減することで、巻上げ機に巻かれるケーブルの巻き径が増減し、巻上げ機の回転数が同一であっても、巻上げ機に巻かれるケーブルの長さは増減する。したがって、巻き出し時と同一の回転数で巻き取りを行った場合、巻き取り量の過不足が生じ得る。
【0003】
巻き取り停止の遅れは、水中センサと巻上げ機の衝突を引き起こし、それら装置の破損や、オペレータの怪我等に繋がり得る。あるいは、水中センサが船舶または航空機に高速で接触することにより、船舶等が損傷する可能性がある。そのため、早い段階で減速や停止を行い、過剰な巻き取りを防止するため、現状では早い段階で巻き取りを停止し、目視で確認しながらの手動操作による巻き取りが必要となっている。
【0004】
この課題に対し、特許文献1では、ケーブルに一定間隔で白色の参照用のマークを付し、このマークを光学検出器で検出することにより、ケーブルの巻き取り距離を検出するシステムが開示されている。特許文献2に開示されたケーブルの昇降機では、ケーブルに一定間隔でホワイトテープを巻き、これに赤外線を発射してホワイトテープからの反射光を検出して、ケーブルの巻き取り長さ、送り出し長さを計測する。さらにケーブルの昇降機では、ケーブルの上下停止希望深度に対応する箇所にアルミ箔などの金属材料を付して、メタルセンサによって金属材料を検出すると、ケーブルの巻き取り、送り出しを停止する。しかしながら、ケーブルに着色したり、光を反射する参照用のマークや金属材料のマークをケーブル表面に貼付けたりしてこれらのマークを検出する方法を用いると、ケーブル表面の付着物によってマークが隠れたり、こすれ等によってマークが消失し、マークの検出ができず、所望の巻き取りができない可能性がある。
【0005】
また、特許文献3には、エレベータのカゴの昇降位置を検出するために、カゴ底部に光ファイバの一方の端部を接続し、光ファイバを重り付きのプーリーに通して屈曲させ、光ファイバの他方の端部を光の送受信器を備えた計測装置に接続したカゴ位置検出装置が開示されている。重り付きプーリーの位置は、カゴの位置に応じて変化する。カゴ位置検出装置では、計測装置から光ファイバへ光を発射し、プーリーによる屈曲部で反射した光を受光して、光の発射から受光までの時間に基づいて、プーリーの位置を算出し、さらにプーリーの位置からカゴの位置を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6266518号公報
【文献】特開2000-26075号公報
【文献】特開2004-010207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
信頼度の高いケーブルの巻き上げ距離の計測方法が求められている。
【0008】
この発明は、上述の課題を解決するケーブル巻き取り装置および制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、ケーブル巻き取り装置は、センサを取り付けたケーブルを水中に投入し、回収するケーブル巻き取り装置であって、光が導通可能なケーブルと、前記ケーブルの巻上げ機と、前記巻上げ機から送り出される前記ケーブルの長さが所定の長さとなる位置に設けられる前記ケーブルを吊り下げるプーリーと、前記ケーブルの端部のうち、前記プーリーによって吊り下げられ前記水中に投入される側の端部である第1端部に取り付けられた前記センサと、前記ケーブルの端部のうち、前記第1端部の反対側の端部である第2端部に設けられ、前記第2端部から前記ケーブル内に光を発射する光源と、前記ケーブルの前記第2端部に設けられ、発射された前記光の後方散乱光と反射光を検出する検出器と、計測部と、前記巻上げ機を制御する制御部と、を備え、前記計測部は、前記第2端部から前記光源が発射した光について、前記光を発射してから前記第1端部に取り付けられた前記センサで反射される反射光を検出するまでの第1時間と、前記光を発射してから前記プーリーによって方向を変更されることによって形成される前記ケーブルの屈曲部で生じる後方散乱光を検出するまでの第2時間と、の差に基づいて、前記第1端部から前記屈曲部までの長さを計測し、制御部は、前記計測部によって計測された前記長さが所定の第1長さになると、前記ケーブルの巻き上げ速度を減速し、計測された前記長さが所定の第2長さになると前記ケーブルの巻き上げを停止する。
【0010】
本発明の一態様によれば、ケーブル巻き取り装置は、センサを取り付けたケーブルを水中に投入し、回収するケーブル巻き取り装置であって、光が導通可能なケーブルと、前記ケーブルの巻上げ機と、前記巻上げ機から送り出される前記ケーブルの長さが所定の長さとなる位置に設けられる前記ケーブルを吊り下げるプーリーと、前記ケーブルの端部のうち、前記プーリーによって吊り下げられ前記水中に投入される側の端部である第1端部に取り付けられた前記センサと、前記ケーブルの前記第1端部に設けられ、前記第1端部から前記ケーブル内に光を発射する光源と、前記ケーブルの前記第1端部に設けられ、発射された前記光の後方散乱光と反射光を検出する検出器と、計測部と、前記巻上げ機を制御する制御部と、を備え、前記計測部は、前記第1端部から前記光源が発射した光について、前記光を発射してから、前記第1端部の反対側の端部である第2端部で反射される反射光を検出するまでの第1時間と、前記光を発射してから前記プーリーによって方向を変更されることによって形成される前記ケーブルの屈曲部で生じる後方散乱光を検出するまでの第2時間と、の差に基づいて、前記第1端部から前記屈曲部までの長さを計測し、制御部は、前記計測部によって計測された前記長さが所定の第1長さになると、前記ケーブルの巻き上げ速度を減速し、計測された前記長さが所定の第2長さになると前記ケーブルの巻き上げを停止する。
【0011】
本発明の一態様によれば、ケーブル巻き取り装置は、センサを取り付けたケーブルを水中に投入し、回収するケーブル巻き取り装置であって、光が導通可能なケーブルと、前記ケーブルの巻上げ機と、前記巻上げ機から送り出される前記ケーブルの長さが所定の長さとなる位置に設けられる前記ケーブルを吊り下げるプーリーと、前記ケーブルの端部のうち、前記プーリーによって吊り下げられ前記水中に投入される側の端部である第1端部に取り付けられた前記センサと、前記ケーブルの前記第1端部に設けられ、前記第1端部から前記ケーブル内に光を発射する光源と、前記ケーブルの前記第1端部に設けられ、発射された前記光の後方散乱光を検出する検出器と、計測部と、前記巻上げ機を制御する制御部と、を備え、前記計測部は、前記ケーブルの前記第1端部から前記光源が発射した光について、前記光を発射してから前記プーリーによって方向を変更されることによって形成される前記ケーブルの屈曲部で生じる後方散乱光を検出するまでの時間に基づいて、前記第1端部から前記屈曲部までの長さを計測し、制御部は、前記計測部によって計測された前記長さが所定の第1長さになると、前記ケーブルの巻き上げ速度を減速し、計測された前記長さが所定の第2長さになると前記ケーブルの巻き上げを停止する。
【0012】
本発明の一態様によれば、制御方法は、光が導通可能なケーブルと、前記ケーブルの巻上げ機と、前記巻上げ機から送り出される前記ケーブルの長さが所定の長さとなる位置に設けられる前記ケーブルを吊り下げるプーリーと、前記ケーブルの端部のうち、前記プーリーによって吊り下げられ水中に投入される側の端部である第1端部に取り付けられたセンサと、前記ケーブルの端部のうち、前記第1端部の反対側の端部である第2端部に設けられ、前記第2端部から前記ケーブル内に光を発射する光源と、前記ケーブルの前記第2端部に設けられ、発射された前記光の後方散乱光と反射光を検出する検出器と、を備える、前記センサを取り付けた前記ケーブルを前記水中に投入し、回収するケーブル巻き取り装置の制御方法であって、前記第2端部から前記光源が発射した光について、前記光を発射してから前記第1端部に取り付けられた前記センサで反射される反射光を検出するまでの第1時間と、前記光を発射してから前記プーリーによって方向を変更されることによって形成される前記ケーブルの屈曲部で生じる後方散乱光を検出するまでの第2時間と、の差に基づいて、前記第1端部から前記屈曲部までの長さを計測し、計測された前記長さが所定の第1長さになると、前記ケーブルの巻き上げ速度を減速し、計測された前記長さが所定の第2長さになると前記ケーブルの巻き上げを停止する。
【0013】
本発明の一態様によれば、制御方法は、光が導通可能なケーブルと、前記ケーブルの巻上げ機と、前記巻上げ機から送り出される前記ケーブルの長さが所定の長さとなる位置に設けられる前記ケーブルを吊り下げるプーリーと、前記ケーブルの端部のうち、前記プーリーによって吊り下げられ水中に投入される側の端部である第1端部に取り付けられたセンサと、前記ケーブルの前記第1端部に設けられ、前記第1端部から前記ケーブル内に光を発射する光源と、前記ケーブルの前記第1端部に設けられ、発射された前記光の後方散乱光と反射光を検出する検出器と、を備える、前記センサを取り付けた前記ケーブルを前記水中に投入し、回収するケーブル巻き取り装置の制御方法であって、前記第1端部から前記光源が発射した光について、前記光を発射してから前記第1端部の反対側の端部である第2端部で反射される反射光を検出するまでの第1時間と、前記光を発射してから前記プーリーによって方向を変更されることによって形成される前記ケーブルの屈曲部で生じる後方散乱光を検出するまでの第2時間と、の差に基づいて、前記第1端部から前記屈曲部までの長さを計測し、計測された前記長さが所定の第1長さになると、前記ケーブルの巻き上げ速度を減速し、計測された前記長さが所定の第2長さになると前記ケーブルの巻き上げを停止する。
【0014】
本発明の一態様によれば、制御方法は、光が導通可能なケーブルと、前記ケーブルの巻上げ機と、前記巻上げ機から送り出される前記ケーブルの長さが所定の長さとなる位置に設けられる前記ケーブルを吊り下げるプーリーと、前記ケーブルの端部のうち、前記プーリーによって吊り下げられ水中に投入される側の端部である第1端部に取り付けられたセンサと、前記ケーブルの前記第1端部に設けられ、前記第1端部から前記ケーブル内に光を発射する光源と、前記ケーブルの前記第1端部に設けられ、発射された前記光の後方散乱光を検出する検出器と、を備える、前記センサを取り付けた前記ケーブルを前記水中に投入し、回収するケーブル巻き取り装置の制御方法あって、前記ケーブルの前記第1端部から前記光源が発射した光について、前記光を発射してから前記プーリーによって方向を変更されることによって形成される前記ケーブルの屈曲部で生じる後方散乱光を検出するまでの時間に基づいて、前記第1端部から前記屈曲部までの長さを計測し、計測された前記長さが所定の第1長さになると、前記ケーブルの巻き上げ速度を減速し、計測された前記長さが所定の第2長さになると前記ケーブルの巻き上げを停止する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ケーブルの巻き取り残長を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第一実施形態に係る巻き取り装置の一例を示す図である。
【
図2】第一実施形態の巻き取り残長の計測方法を説明する第1図である。
【
図3】第一実施形態の巻き取り残長の計測方法を説明する第2図である。
【
図4】第一実施形態の巻き取り残長の計測処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】第二実施形態に係る巻き取り装置の一例を示す図である。
【
図6】第二実施形態の巻き取り残長の計測方法を説明する図である。
【
図7】第二実施形態の巻き取り残長の計測処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】制御装置と計測装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第一実施形態>
以下、第一実施形態に係るケーブルの巻き取り装置について
図1~
図4を参照して説明する。
図1は、第一実施形態に係る巻き取り装置の一例を示す図である。図示するようにケーブル巻き取り装置100は、ケーブル2と巻上げ機4と、ケーブル2を掛けて吊り下げるためのプーリー3と、巻上げ機4の動作を制御する制御装置10と、光ファイバ5および光パルス試験機6と、を有する。ケーブル2の一方の端部(送り出される側の端部)にはセンサ1が設けられている。ケーブル2の他方の端部は巻上げ機4に接続されている。例えば、巻上げ機4は、船舶や航空機に設置され、センサ1を水中に投入し、巻上げ機4によるケーブル2の送り出し、巻き取りによって、センサ1の投入と回収が行われる。また、ケーブル2は、光ファイバを内蔵した光が導通可能なケーブルであって、ケーブル2における巻上げ機4と接続される側の端部には、光ファイバ5を通じて光パルス試験機6が接続されている。光パルス試験機6は、光パルスを発射する光源と光の検出器を備える。光パルス試験機6は、光ファイバ5を通じて、ケーブル2に内蔵された光ファイバへ光パルスを発射する。ケーブル2へ光パルスを発射すると、ケーブル2が内蔵する光ファイバによる後方散乱光、ケーブル2のセンサ1側の端部での反射光が生じる。光パルス試験機6の検出器は、後方散乱光および反射光を検出する。光パルス試験機6は、制御装置10と接続されており、後方散乱光および反射光の検出結果を制御装置10へ出力する。
【0018】
制御装置10は、ケーブル2の送り出し、巻き取り動作を制御する。さらに制御装置10は、ケーブル2の巻き取り残長を計測する機能を備えている。図示するように制御装置10は、取得部11と、計測部12と、制御部13と、記憶部14とを備える。取得部11は、光パルス試験機6が出力した情報を取得する。計測部12は、取得部11が取得した情報に基づいてケーブル2の巻き取り残長を計測する。制御部13は、巻上げ機4を制御して、ケーブル2の送り出しと巻き取りを行う。例えば、センサ1を回収する場合、制御部13は、計測部12が計測する巻き取り残長が目標値となるまでケーブル2の巻き取りを行う。記憶部14は、取得部11が取得した情報を記憶する。
【0019】
次に
図2、
図3を用いて計測部12による巻き取り残長の計測について説明する。
図2、
図3は、それぞれ、第一実施形態の巻き取り残長の計測方法を説明する第1図、第2図である。
図2(a)に示すようなケーブル2が送り出された状態で、光パルス試験機6から光パルスが発射されたときに検出される後方散乱光および反射光の強度とそれらの光が生じた位置の関係を示すグラフを
図2(b)に示す。同様に
図3(a)の状態で発射された光パルスに対する後方散乱光、反射光の強度と位置の関係を示すグラフを
図3(b)に示す。
図2(b)、
図3(b)の縦軸は後方散乱光および反射光の強度を示し、横軸には後方散乱光または反射光が生じたケーブル2の位置の巻上げ機4側の端部からの距離を示す。
図2(b)、
図3(b)の横軸の距離は、光パルス試験機6が、光パルスを発射してから、後方散乱光等を受光するまでの時間に基づいて算出される。
【0020】
後方散乱光の強度は、巻上げ機4からの距離に応じて、その距離が長くなるほど徐々に低下する。また、
図2(a)に示すように、プーリー3は、巻上げ機4から送り出されたケーブル2を送り出し位置とほぼ同じ高さで支える。プーリー3より先のケーブル2は、それ自身の重量やセンサ1の重量によってプーリー3から吊り下げられる。すると、ケーブル2には、プーリー3の位置で屈曲が生じる。ケーブル2の屈曲部における内蔵された光ファイバでは、屈曲による光の伝搬損失が生じる。このため、光パルス試験機6で検出する後方散乱光の強度は、プーリー3の位置で急激に低下する。この様子を
図2(b)の枠2B内に示す。プーリー3の位置を超えると、後方散乱光の強度は巻上げ機4からの距離に応じて徐々に低下し、ケーブル2先端のセンサ1に至る。センサ1側のケーブル2の端部では反射が生じるため、光パルス試験機6で測定される光の強度は上昇する。光パルス試験機6による測定結果を、
図2(b)に示す。
図2(b)に示すように、後方散乱光の強度は、巻上げ機4から離れるにつれ徐々に低下するが、光の強度が低下している箇所(プーリー3の位置)と上昇している箇所(ケーブル2のセンサ1側の端部)が測定される。
図2(b)に示す距離L1は、
図2(a)におけるプーリー3の位置とセンサ1側のケーブル2の端部との距離に対応する。次に説明するように距離L2は、巻き上げ終了時における、センサ1側のケーブル2の端部とプーリー3との間の目標距離であり、距離L3は、目標とする巻き上げ残長である。距離L2は、予め記憶部14に登録されている。
【0021】
次に
図3を参照する。ケーブル2の巻き取りを開始すると、
図2(a)に示す状態から
図3(a)に示す状態になる。これにより、距離L1は、徐々に短くなり、光パルス試験機6による測定結果は、
図2(b)に示すような結果から
図3(b)に示すような結果に変化していく。予め決められた巻き取り停止位置でのプーリー3とセンサ1側のケーブル2の端部との距離L2を用いると、巻き取り残長L3は、距離L1-距離L2で表すことができる。本実施形態では、計測部12が、距離L1を測定し、距離L1から所定の距離L2を減算することで巻き取り残長L3を算出する。制御部13は、巻き取り残長L3に応じて巻上げ機4を制御し、巻き取り速度の減速および停止を行う。
【0022】
次に
図4を参照して、巻き取り残長L3の計測処理について詳しく説明する。
図4は、第一実施形態の巻き取り残長の計測処理の一例を示すフローチャートである。
まず、光パルス試験機6が、光ファイバ5を通じて、ケーブル2に内蔵された光ファイバへ光パルスを発射する。光パルス試験機6は、光パルスの発射したことを制御装置10へ出力する。取得部11は、光パルス試験機6から発射の通知を取得し、制御装置10の記憶部14に光パルスの発射時刻を記録する。光パルスを発射すると、ケーブル2の各位置で生じる後方散乱光とケーブル2のセンサ1側の端部で生じる反射光が、光パルス試験機6からの距離に応じた時間を経た後に光パルス試験機6へ到着する。光パルス試験機6は、後方散乱光等を時々刻々と検出する。光パルス試験機6は、後方散乱光等を検出すると、光パルスを発射してから後方散乱光等を検出するまでの時間(受光時間と呼ぶ。)と、検出した光の強度とを制御装置10へ出力する。取得部11は、光パルス試験機6から受光時間と光の強度とを取得し、制御装置10の記憶部14にそれらの情報を記録する(ステップS1)。
【0023】
取得部11が、1回の光パルスの発射に対する後方散乱光等の情報(受光時間、強度)を記録し終えると、次に計測部12は、記憶部14に記録された後方散乱光等の情報の中から、光の強度の急激な低下に基づいて、プーリー3の位置で生じた後方散乱光の受光時間を特定する(ステップS2)。例えば、計測部12は、検出した光の強度が、所定の第1閾値以下に低下したときの受光時間を特定する。あるいは、計測部12は、検出した光の強度が、微小時間に所定値以上、低下したときの受光時間を特定する。
【0024】
次に計測部12は、記憶部14に記録された後方散乱光等の情報の中から、光の強度の上昇に基づいて、センサ1側の端部による反射光の受光時間を特定する(ステップS3)。例えば、計測部12は、光の強度が、ケーブル2の屈曲部における急激な低下の後に、所定の第2閾値以上に上昇したときの受光時間を特定する。あるいは、計測部12は、光の強度の急激な低下の後に、光の強度が微小時間に所定値以上、上昇したときの受光時間を特定する。
【0025】
次に計測部12は、プーリー3によって形成されたケーブル2の屈曲部からセンサ1までの距離L1を算出する(ステップS4)。例えば、計測部12は、ステップS3で特定した受光時間からステップS2で特定した受光時間を減算して時間差を算出し、その時間差に光速を乗じた値を2で除算して距離L1を算出する。
【0026】
次に計測部12は、記憶部14から所定の距離L2を読み出して、距離L1から距離L2を減算して巻き取り残長L3を算出する(ステップS5)。計測部12は、算出した巻き取り残長L3を、制御部13へ出力する。例えば、制御部13は、巻き取り残長L3が所定値より小さくなると巻き上げ速度を減速し、巻き取り残長L3が0になるとケーブル2の巻き取りを停止するよう巻上げ機4の動作を制御する。
【0027】
本実施形態によれば、ケーブル2の表面へのマークを必要とせず、ケーブル2の巻き取り残長L3を監視することができる。これにより、ケーブル2の表面への付着物やこすれ等の影響を受けない、信頼性の高い、巻き取り残長L3の監視が可能となる。
また、センサ1と巻上げ機4の衝突、センサ1と船舶や航空機との衝突による機器の破損を引き起こすことなく、センサ1の回収を短時間で行うことができる。また、ケーブル2の巻き上げを自動化することができるので、目視確認や手動操作を行う必要が無い。
【0028】
また、本実施形態では、プーリー3によって生じるケーブル2の屈曲部で後方散乱光の強度が低下することや、ケーブル2のセンサ1側の端部における反射によって、光パルス試験機6が検出する光の強度が上昇することを利用して巻き取り残長L3を計測する。この計測に必要なプーリー3およびセンサ1は、センサ1を水中に投入し回収するシステムが元々備える構成の為、巻き取り残長L3の監視のために、新たにこれらの構成を設ける必要が無い。
【0029】
<第二実施形態>
次に第二実施形態のケーブル巻き取り装置について
図5~
図7を参照して説明する。第一実施形態では、巻上げ機4側に光パルス試験機6を設けた。第二実施形態では、センサ1側に光パルス試験機6を設ける。
図5は、第二実施形態に係る巻き取り装置の一例を示す図である。
第二実施形態に係る構成のうち、第一実施形態のケーブル巻き取り装置100と同様の構成には同じ符号を付し、それらの詳細な説明を省略する。
図5に示すようにケーブル巻き取り装置100-1は、先端にセンサ1が取り付けられたケーブル2と、巻上げ機4と、プーリー3と、制御装置10-1と、光パルス試験機6と、計測装置10-2とを有する。巻上げ機4から巻き出されたケーブル2はプーリー3を介して吊下げられている。ケーブル2における巻上げ機4と接続される側の端部には、ケーブル5-1を通じて制御装置10-1が接続されている。ケーブル5-1は、光ファイバ又はデータ通信に用いるメタルケーブルである。光パルス試験機6は、センサ1に内蔵されている。光パルス試験機6は、ケーブル2に接続されていて、ケーブル2が内蔵する光ファイバへの光パルスの照射が可能である。光パルス試験機6が光を発射すると、ケーブル2が内蔵する光ファイバでは後方散乱光が生じ、巻上げ機4側の端部では反射光が生じる。光パルス試験機6は、後方散乱光や反射光を検出する。第一実施形態と同様に、プーリー3によるケーブル2の屈曲部では、光の伝搬損失が生じ、光パルス試験機6で検出する後方散乱光の強度はプーリー3の位置で急激に低下する。また、ケーブル2の巻上げ機4側の端部での反射光は、その付近で生じる後方散乱光よりも強度の高い光として検出される。光パルス試験機6は計測装置10-2と接続され、計測装置10-2はケーブル2とも接続されている。光パルス試験機6は、検出した光の強度の情報を、計測装置10-2へ出力する。計測装置10-2は、巻き取り残長L3を計測し、巻き取り残長L3をケーブル2が内蔵する光ファイバを通じて送信する。送信された情報は、ケーブル2、ケーブル2に接続されたケーブル5-1を通じて制御装置10-1へ送信される。制御装置10-1は、計測装置10-2が計測した巻き取り残長L3の情報を取得して、ケーブル2の巻き取り制御を行う。
【0030】
制御装置10-1は、制御部13と通信部15-1を備える。通信部15-1は、計測装置10-2から巻き取り残長L3の情報を受信し、その情報を制御部13へ出力する。制御部13は、巻上げ機4の動作を制御する。
【0031】
計測装置10-2は、取得部11と、計測部12-2と、記憶部14と、通信部15-2とを備える。取得部11、光パルス試験機6が出力した情報を取得する。計測部12-2は、ケーブル2の巻き取り残長L3を計測する。通信部15-2は、巻き取り残長L3を送信する。
【0032】
図6は、第二実施形態の巻き取り残長の計測方法を説明する図である。
第二実施形態においても光ファイバを内蔵したケーブル2に、プーリー3によって屈曲を生じさせる。プーリー3の位置で、光ファイバには屈曲による光の伝搬損失が生じるため、光パルス試験機6から見てプーリー3より離れた位置からの後方散乱光強度は低下する。光パルス試験機6による測定結果は
図6(a)のようになり、後方散乱光強度が低下している箇所が測定される。
図2(a)を参照して説明したように、光パルス試験機6からこの箇所までの距離L1は、プーリー3から光パルス試験機6(ケーブル2のセンサ1側の端部)までの距離に対応する。ケーブル2の巻き取りを開始すると、
図3(a)に示すように、距離L1は徐々に短くなり、光パルス試験機6による測定結果は、
図6(a)に示すような結果から
図6(b)に示すような結果に変化していく。予め決められた巻き取り停止位置でのプーリー3とセンサ1側のケーブル2の端部との距離L2を用いると、巻き取り残量L3は、距離L1-距離L2で算出される。このように、第二実施形態では、センサ1側に光パルス試験機6を設け、巻上げ機4側の端部での反射光を用いずに、プーリー3による屈曲部での後方散乱光の検出結果から距離L1を計測し、距離L1から距離L2を減算して、巻き取り残量L3を算出する。
【0033】
次に
図7を参照して、本実施形態の巻き取り残長L3の計測処理について詳しく説明する。
図7は、第二実施形態の巻き取り残長の計測処理の一例を示すフローチャートである。
まず、光パルス試験機6が、ケーブル2に内蔵された光ファイバへ光パルスを発射する。光パルスを発射すると、ケーブル2の各位置で生じる後方散乱光と巻上げ機4側のケーブル2の端部で生じる反射光が、光パルス試験機6からの距離に応じた時間を経た後に光パルス試験機6へ到着する。光パルス試験機6は、後方散乱光等を時々刻々と検出する。光パルス試験機6は、後方散乱光等を検出すると、光パルスを発射してから後方散乱光等を検出するまでの受光時間と、検出した光の強度とを計測装置10-2へ出力する。取得部11は、光パルス試験機6から受光時間と光の強度とを取得し、計測装置10-2の記憶部14にそれらの情報を記録する(ステップS11)。
【0034】
取得部11が、1回の光パルスの発射に対する後方散乱光の受光時間と強度を記録し終えると、次に計測部12-2は、光の強度の急激な低下に基づいて、記憶部14に記録された後方散乱光の受光時間の中から、プーリー3の位置で生じた後方散乱光の受光時間を特定する(ステップS12)。例えば、計測部12は、検出した光の強度が、所定の第1閾値以下に低下したときの受光時間を特定する。あるいは、計測部12は、検出した光の強度が、微小時間に所定値以上低下したときの受光時間を特定する。
【0035】
次に計測部12は、光パルス試験機6(ケーブル2のセンサ1側の端部)からプーリー3によって形成されたケーブル2の屈曲部までの距離L1を算出する(ステップS13)。例えば、計測部12は、ステップS12で特定した受光時間に光速を乗じた値を2で除算して距離L1を算出する。
【0036】
次に計測部12は、記憶部14から距離L2を読み出し、距離L1から距離L2を減算して巻き取り残長L3を算出する(ステップS14)。計測部12は、算出した巻き取り残長L3を、制御部13へ出力する。例えば、制御部13は、巻き取り残長L3が所定値より小さくなると巻き上げ速度を減速し、巻き取り残長L3が0になるとケーブル2の巻き取りを停止するように巻上げ機4の動作を制御する。
【0037】
本実施形態によれば、ケーブル2の表面へのマークを必要とせず、ケーブル2の巻き取り残長L3を監視することができる。これにより、ケーブル2の表面への付着物やこすれ等の影響を受けない、信頼性の高いケーブル巻き取り残長L3の監視が可能となる。また、センサ1の回収を短時間で自動化することができる。また、センサ1に光パルス試験機6を設ける必要があるが、プーリー3を新たに導入する必要が無い。
【0038】
なお、第二実施形態の構成においても、計測部12-2は、第一実施形態と同様の処理を行って巻き取り残長L3を算出してもよい。つまり、計測部12-2は、プーリー3による屈曲部における後方散乱光の受光時間を特定する(
図4のS2)。また、計測部12-2は、巻上げ機4側の反射光の受光時間を特定する(
図4のS3)。そして、計測部12-2は、プーリー3によって形成されたケーブル2の屈曲部からケーブル2の巻上げ機4側端部までの距離L4を算出する(
図4のS4)。距離L4を、
図6(a)、
図6(b)に示す。例えば、計測部12-2は、S3で特定した受光時間からS2で特定した受光時間を減算して時間差を算出し、その時間差に光速を乗じた値を2で除算して距離L4を算出する。次に計測部12-2は、距離L4に基づいて、巻き取り残長L3を算出する(
図4のS5)。例えば、計測部12-2は、ケーブル2の全長から距離L4と距離L2を減算して巻き取り残長L3を算出する。これにより、巻き取り残長L3を計測することができる。
【0039】
図8は、計測装置の最小構成を示す図である。
計測装置30は、少なくとも計測部31を備える。
例えば、第一実施形態で説明したように、計測部31は、光が導通可能なケーブルの端部から可変な位置に屈曲部が設けられる前記ケーブル内に前記ケーブルの一方の端部から発射した光について、前記光を発射してから前記ケーブルの他方の端部で反射される反射光を検出するまでの第1時間と、前記光を発射してから前記屈曲部で生じる後方散乱光を検出するまでの第2時間と、の差に基づいて、前記一方の端部又は前記他方の端部から前記屈曲部までの長さを計測する。
また、例えば、第二実施形態で説明したように、計測装置30は、光が導通可能なケーブルの一方の端部が巻上げ機に接続され、所定の位置に設置されたプーリーによって方向を変更して送り出された前記ケーブルを、前記ケーブルの他方の端部が前記プーリーから所定の距離となるまで巻き取る巻き取り装置において、前記ケーブルの巻き取り残量を計測する計測装置であって、計測部31は、前記他方の端部から光を発射してから、前記プーリーによって方向を変更されることによって形成される前記ケーブルの屈曲部で生じる後方散乱光を検出するまでの時間に基づいて、前記巻き取り残量を計測する。
【0040】
図9は、制御装置と計測装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、入出力インタフェース904、通信インタフェース905を備える。上述の制御装置10、10-1と計測装置10-2は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各機能部の動作は、プログラムの方式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、記憶領域を主記憶装置902に確保する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置903に確保する。
【0041】
なお、少なくとも1つの実施形態において、補助記憶装置903は、一時的でない有形の媒体の一例である。一時的でない有形の媒体の他の例としては、入出力インタフェース904を介して接続される磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等が挙げられる。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行しても良い。また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、当該プログラムは、前述した機能を補助記憶装置903に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0042】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。また、この発明の技術範囲は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0043】
100、100-1・・・ケーブル巻き取り装置
1・・・センサ
2・・・ケーブル
3・・・プーリー
4・・・巻上げ機
5・・・光ファイバ
5-1・・・ケーブル
6・・・光パルス試験機
10、10-1・・・制御装置
10-2・・・計測装置
11・・・取得部
12、12-2・・・計測部
13・・・制御部
14・・・記憶部
15-1、15-2・・・通信部
900・・・コンピュータ
901・・・CPU
902・・・主記憶装置
903・・・補助記憶装置
904・・・入出力インタフェース
905・・・通信インタフェース