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特許7380069事故原因予測装置、事故原因予測システム、事故原因予測方法、及び、事故原因予測プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】事故原因予測装置、事故原因予測システム、事故原因予測方法、及び、事故原因予測プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20230101AFI20231108BHJP
   G06Q 50/06 20120101ALI20231108BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
G06Q10/04
G06Q50/06
H02J3/00 170
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019191624
(22)【出願日】2019-10-21
(65)【公開番号】P2021068070
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】楠本 学
【審査官】酒井 優一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-075828(JP,A)
【文献】特開2008-022606(JP,A)
【文献】特開2018-119871(JP,A)
【文献】特開2018-109819(JP,A)
【文献】特開2018-169823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
H02J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
事故が発生した場所における気象の状態と1以上の事故原因の個々との関係性を、前記場所と前記事故原因との履歴を表す事故履歴情報と、所定の期間における前記場所の気象の状態を表す第一の気象情報とを関連付ける教師データを用いて、機械学習した結果を表す学習モデルと、前記場所に関する特定の期間における気象の状態を表す第二の気象情報と、に基づいて、前記場所において発生する可能性がある事故の事故原因を予測する予測手段と、
前記予測手段による1以上の前記場所ごとの前記事故原因の予測結果に基づいて、前記場所を示す所定の大きさの領域毎に、前記事故原因を識別可能な表示態様を用いて、発生する可能性が最も高い前記事故原因を示す、単一のハザードマップを生成する生成手段と、
を備える事故原因予測装置。
【請求項2】
前記学習モデルを記憶する記憶手段をさらに備える、
請求項1に記載の事故原因予測装置。
【請求項3】
前記第一の気象情報は、前記所定の期間における前記気象の状態を表す数値の平均値を含む、
求項1または請求項に記載の事故原因予測装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の事故原因予測装置と、
前記学習モデルを生成する機械学習装置と、
を有する事故原因予測システム。
【請求項5】
前記機械学習装置は、前記事故履歴情報から前記所定の期間における前記履歴を抽出し、その抽出結果を用いて、前記場所における前記気象の状態と前記事故原因との関係性を機械学習する、
請求項に記載の事故原因予測システム。
【請求項6】
情報処理装置によって、
事故が発生した場所における気象の状態と1以上の事故原因の個々との関係性を、前記場所と前記事故原因との履歴を表す事故履歴情報と、所定の期間における前記場所の気象の状態を表す第一の気象情報とを関連付ける教師データを用いて、機械学習した結果を表す学習モデルと、前記場所に関する特定の期間における気象の状態を表す第二の気象情報と、に基づいて、前記場所において発生する可能性がある事故の事故原因を予測
1以上の前記場所ごとの前記事故原因の予測結果に基づいて、前記場所を示す所定の大きさの領域毎に、前記事故原因を識別可能な表示態様を用いて、発生する可能性が最も高い前記事故原因を示す、単一のハザードマップを生成する、
事故原因予測方法。
【請求項7】
事故が発生した場所における気象の状態と1以上の事故原因の個々との関係性を、前記場所と前記事故原因との履歴を表す事故履歴情報と、所定の期間における前記場所の気象の状態を表す第一の気象情報とを関連付ける教師データを用いて、機械学習した結果を表す学習モデルと、前記場所に関する特定の期間における気象の状態を表す第二の気象情報と、に基づいて、前記場所において発生する可能性がある事故の事故原因を予測する予測処理と、
前記予測処理による1以上の前記場所ごとの前記事故原因の予測結果に基づいて、前記場所を示す所定の大きさの領域毎に、前記事故原因を識別可能な表示態様を用いて、発生する可能性が最も高い前記事故原因を示す、単一のハザードマップを生成する生成処理と、
をコンピュータに実行させるための事故原因予測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、インフラ設備において発生する可能性のある事故の事故原因を予測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
社会インフラ設備において発生した事故が人々の生活に与える影響は、事故の内容によっては非常に大きくなることがある。例えば、送配電線は、各電力需要者に電力を供給するために各地に張り巡らされており、重要なインフラ設備の一つである。そして、この送配電線において、樹木や鳥獣の接触、機器の故障、落雷等の異常が発生した場合、停電が発生するおそれがあり、停電によって人々の生活や経済活動に大きな影響を及ぼす可能性がある。したがって、このようなインフラ設備において発生する事故に対して適切に対応して迅速に復旧できるようにするために、発生した事故の事故原因を高い精度で解析するとともに、事故の発生やその影響を予測するための技術への期待が高まってきている。
【0003】
このような技術に関連する技術として、特許文献1には、入力された事故情報が過去に発生した事故情報の中で一致するものがあるか否かを判定する装置が開示されている。この装置は、一致するものがなければ過去の事故の事故情報と今回の事故の事故情報とのパターンマッチングをするニューラルネットワークの学習を行い、最も類似度の高い過去の事故の事故情報に対応する事故原因を今回の事故の事故原因と推定する。
【0004】
また、特許文献2には、気温、風速、降水量等の気象データを基にして送電線の雪害を予測し警報を発するシステムが開示されている。このシステムは、警報の対象となる小領域の気象データをそれよりも大領域の予測気象データを用いて小領域の予測気象データに補正し、この補正した小領域の予測気象データを基にして雪害を予測する。
【0005】
また、特許文献3には、送電線の事故原因が既知である過去の事故状況データを定量化する際に、定性的表現の事故状況データに対しても定量化を行うようにした事故原因の判別方法が開示されている。この方法では、当該定量化された事故状況データからパターン認識を用いて各事故原因の特徴を抽出する。この方法では、続いて、事故原因が未知の事故状況データを定量化し、パターン認識を用いて当該定量化された事故状況データを、予め抽出した各事故原因の特徴に照らして、最も類似度の大きい事故原因を求め、求めた最も類似度の大きい事故原因を事故原因と判定する。
【0006】
また、特許文献4には、瞬時電圧低下の実績データに基づき、ユーザが指定した場所に
対応する電気所において検出された瞬時電圧低下の原因と直接関連する設備を抽出する方法が開示されている。この方法では、抽出された設備の位置データに基づいて、少なくともユーザが指定した場所における瞬時電圧低下の要因となりうる地域を特定した地図データを生成して出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平05-250593号公報
【文献】特開平08-194970号公報
【文献】特開2000-184593号公報
【文献】特開2005-027426号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】"GISホームページ(国土交通省国土政策局国土情報課)"、[Online]、[2019年10月8日検索]、インターネット<URL:http://nlftp.mlit.go.jp/ksj/gml/datalist/KsjTmplt-G02.html>
【文献】"scikit-learn Machine Learning in Python "、[Online]、[2019年10月8日検索]、インターネット<URL:https://scikit-learn.org/stable/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
送配電線等のインフラ設備において発生する事故は様々な原因によって発生する。そして事故原因は、そのインフラ設備がある場所(地域)の特性と、その場所における気象の状態とに大きく依存する(関係性がある)と考えられる。
【0010】
例えば大きな河川がある場所や山岳地域において大量の雨が降った場合、洪水や土砂崩れの発生による鉄道や道路の寸断や送電塔の倒壊などの事故が発生する可能性がある。あるいは例えば、多数の樹木の近辺に送配電線が引かれている場所に強風が発生した場合、送配電線に樹木が接触する事故が発生する可能性がある。
【0011】
しかしながら、特許文献1乃至4が示す技術は、インフラ設備がある場所(地域)の特性と、その場所における気象の状態との関係性に基づいて、事故原因の解析や予測を行うことを十分に行っているとはいえない。したがって、特許文献1乃至4が示す技術による事故原因の予測精度は高いとは言えない。
【0012】
本願発明の主たる目的は、インフラ設備がある場所において発生する可能性がある事故の原因を予測する精度を高める事故原因予測装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明の一態様に係る事故原因予測装置は、事故が発生した場所における気象の状態と事故原因との関係性を、前記場所と前記事故原因との履歴を表す事故履歴情報と、所定の期間における前記場所の気象の状態を表す第一の気象情報とに基づいて、機械学習した結果を表す学習モデルと、前記場所に関する特定の期間における気象の状態を表す第二の気象情報と、に基づいて、前記場所において発生する可能性がある事故の事故原因を予測する予測手段を備える。
【0014】
上記目的を達成する他の見地において、本願発明の一態様に係る事故原因予測方法は、情報処理装置によって、事故が発生した場所における気象の状態と事故原因との関係性を、前記場所と前記事故原因との履歴を表す事故履歴情報と、所定の期間における前記場所の気象の状態を表す第一の気象情報とに基づいて、機械学習した結果を表す学習モデルと、前記場所に関する特定の期間における気象の状態を表す第二の気象情報と、に基づいて、前記場所において発生する可能性がある事故の事故原因を予測する。
【0015】
また、上記目的を達成する更なる見地において、本願発明の一態様に係る事故原因予測プログラムは、事故が発生した場所における気象の状態と事故原因との関係性を、前記場所と前記事故原因との履歴を表す事故履歴情報と、所定の期間における前記場所の気象の状態を表す第一の気象情報とに基づいて、機械学習した結果を表す学習モデルと、前記場所に関する特定の期間における気象の状態を表す第二の気象情報と、に基づいて、前記場所において発生する可能性がある事故の事故原因を予測する予測処理をコンピューに実行させる。
【0016】
更に、本願発明は、係る事故原因予測プログラム(コンピュータプログラム)が格納された、コンピュータ読み取り可能な、不揮発性の記録媒体によっても実現可能である。
【発明の効果】
【0017】
本願発明は、インフラ設備がある場所において発生する可能性がある事故の原因を予測する精度を高めることを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本願発明の第1の実施形態に係る事故原因予測システム1の構成を示すブロック図である。
図2】本願発明の第1の実施形態に係る事故履歴情報211の内容を例示する図である。
図3】本願発明の第1の実施形態に係る教師データ220の内容を例示する図ある。
図4】本願発明の第1の実施形態に係る機械学習装置20が、学習モデル112を生成する動作を示すフローチャートである。
図5】本願発明の第1の実施形態に係るハザードマップ130の内容を例示する図である。
図6】本願発明の第1の実施形態に係る事故原因予測装置10が、事故原因を予測する動作を示すフローチャートである。
図7】本願発明の第2の実施形態に係る事故原因予測装置30の構成を示すブロック図である。
図8】本願発明の各実施形態に係る事故原因予測装置あるいは機械学習装置を実行可能な情報処理装置900の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本願発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
<第1の実施形態>
図1は、本願発明の第1の実施の形態に係る事故原因予測システム1の構成を示すブロック図である。事故原因予測システム1は、例えば送配電網(送配電線)において発生する可能性が高い事故の事故原因を場所(地域)ごとに予測するシステムである。
【0021】
事故原因予測システム1は、大別して、事故原因予測装置10と、機械学習装置20とを有する。事故原因予測装置10と機械学習装置20とは、例えばインターネットやイントラネット等の通信ネットワークによって通信可能に接続されている。事故原因予測装置10は、外部の装置である機械学習装置20と通信する代わりに、機械学習装置20を内蔵してもよい。
【0022】
<機械学習装置20の構成と動作>
まず、機械学習装置20の構成と動作について説明する。
【0023】
機械学習装置20は、記憶部21、及び、機械学習部22を備えている。記憶部21は、例えばHDD(Hard Disk Drive)あるいは電子メモリ等の記憶デバイスであり、事故履歴情報211、及び、学習用気象情報212を記憶している。記憶部21は、機械学習装置20に備えられるのではなく、機械学習装置20と通信可能に接続された外部の装置に備えられてもよい。
【0024】
図2は、事故履歴情報211の内容を例示する図である。事故履歴情報211は、図2に例示する通り、事故原因の予測対象とする送配電網においてこれまでに発生した各事故に関する事故原因と、当該事故が発生した場所と、当該事故が発生した日時とを表す情報である。事故履歴情報211は、例えば、当該送配電網を管理する電力会社等によって作成されたのち、例えば図1に図示しない外部のサーバ装置などに記憶されている。機械学習装置20は、当該サーバ装置等から、事故履歴情報211を取得したのち、取得した事故履歴情報211を記憶部21に格納する。
【0025】
事故履歴情報211における事故原因としては、例えば、保守不完全、製作不完全、施工不完全、自然劣化、過負荷、風雨、氷雪、雷、地震、水害、山崩れ、雪崩、塩・ちり・ガス、作業者の過失、公衆の故意・過失、樹木接触、伐木、鳥獣接触、その他の他物接触、他事故波及、火災、その他、不明等が定義されている。
【0026】
事故履歴情報211における事故発生場所は、例えば、(経度、緯度)により表されるが、(経度、緯度)とは異なる指標で表されてもよい。
【0027】
図2に例示する事故履歴情報211によれば、例えば、2019年5月22日の11時59分に、(経度、緯度)が(145.2443,44.0934)である場所において、樹木が送配電線に接触する(樹木接触)事故が発生している。
【0028】
図1に示す学習用気象情報212は、例えば、非特許文献1に示す国土交通省によって公開されているデータにより表される情報である。機械学習装置20は、例えば図1に図示しない国土交通省のサーバ装置等から、学習用気象情報212を取得したのち、取得した学習用気象情報212を記憶部21に格納する。学習用気象情報212は、第一の気象情報の一例である。
【0029】
学習用気象情報212は、例えば過去数十年分の所定の期間(例えば月)ごとの、各場所(地域)における気象の状態を表す情報である。学習用気象情報212は、気象の状態を示す要素として、例えば、降水量、最高気温、最低気温、平均気温、日照時間、全天日射量を含んでいる。学習用気象情報212は、気象の状態を示す要素として、前述した要素以外の要素を含んでもよい。学習用気象情報212は、当該要素に関する数値の、当該所定の期間における平均値を表してもよい。また、学習用気象情報212に含まれる場所を示す情報は、例えば、4つの頂点の経度と緯度とによって表される矩形の領域を識別可能な情報などでもよい。
【0030】
機械学習装置20における機械学習部22は、記憶部21に記憶された事故履歴情報211と学習用気象情報212とに基づいて、教師データ220を生成する。
【0031】
図3は、本実施形態に係る教師データ220の内容を例示する図である。教師データ220は、ある場所において発生した事故の事故原因と、当該場所においてその事故が発生した所定の期間(例えば月)における気象の状態とを関連付ける情報である。機械学習部22は、事故履歴情報211から、上述した所定の期間(例えば月)ごとの事故履歴を抽出する。機械学習部22は、ある場所におけるある年のある月に関する、学習用気象情報212と抽出した事故履歴との対応付けを行うことによって、図3に例示する教師データ220を生成することが可能である。そして、機械学習部22は、例えば上述した4つの頂点の経度と緯度とによって表される矩形の領域ごとに、図3に例示するような教師データ220を生成する。
【0032】
図3に例示する教師データ220によれば、2行目に示す樹木接触を原因とする事故が発生したときの、事故発生場所における当該事故が発生した月の降水量は101.975mm(ミリメートル)である。同様に、図3に例示する教師データ220によれば、当該事故関して、最高気温は13.225℃(但し℃は摂氏による温度を表す)、最低気温は4.1℃、平均気温は8.3℃、日照時間は164,525時間、全天日射量は16.675kW(キロワット)/m(平方メートル)である。
【0033】
機械学習部22は、教師データ220を生成したのち、生成した教師データ220を用いて、ある場所における気象の状態からその場所において発生する可能性が高い事故の原因を高い精度で予測できるようにするための機械学習を行う。即ち、機械学習部22は、その機械学習の過程において、ある場所における事故原因と、気象の状態に含まれる個々の要素(即ち降水量、気温、日照時間等)との関係性の強さを表す規則を生成する。機械学習部22は、例えば、非特許文献2に示す機械学習のライブラリであるscikit-learnのランダムフォレスト分類器を用いて機械学習を行う。機械学習部22は、機械学習の結果を表す学習モデル112を、事故原因予測装置10における記憶部11に格納する。
【0034】
次に図4のフローチャートを参照して、本実施形態に係る機械学習装置20が、学習モデル112を生成する動作(処理)について詳細に説明する。
【0035】
機械学習装置20は、外部の装置から、事故履歴情報211及び学習用気象情報212を入手し、入手した事故履歴情報211及び学習用気象情報212を記憶部21に格納する(ステップS101)。機械学習部22は、事故履歴情報211及び学習用気象情報212から、事故履歴情報211及び学習用気象情報212に含まれる時間と場所とを対応付けることによって、教師データ220を生成する(ステップS102)。
【0036】
機械学習部22は、教師データ220を用いて機械学習を行い、その結果である学習モデル112を、事故原因予測装置10の記憶部11に格納し(ステップS103)、全体の処理は終了する。
【0037】
<事故原因予測装置10の構成と動作>
次に、事故原因予測装置10の構成と動作について説明する。
【0038】
図1に示す事故原因予測装置10は、記憶部11、予測部12、生成部13、及び、表示部14を備えている。記憶部11、予測部12、及び、生成部13は、順に、記憶手段、予測手段、及び、生成手段の一例である。
【0039】
記憶部11は、例えばHDD(Hard Disk Drive)あるいは電子メモリ等の記憶デバイスであり、予測対象気象情報111、上述した学習モデル112、及び、地図情報113を記憶している。記憶部11は、事故原因予測装置10に備えられるのではなく、事故原因予測装置10と通信可能に接続された外部の装置に備えられてもよい。予測対象気象情報111は、送配電網において今後発生する可能性ある事故の事故原因を予測するのにあたって入力される情報であり、特定の期間(例えば先月)における地域ごとの気象の状態を表す情報である。予測対象気象情報111も、上述した学習用気象情報212と同様に、例えば、非特許文献1に示す国土交通省によって公開されているデータにより表される情報である。
【0040】
予測部12は、予測対象気象情報111と学習モデル112とに基づいて、場所(地域)ごとに、発生する可能性がある事故の事故原因を予測する。例えば、学習モデル112が、ある場所に関して降水量の多さと樹木接触を原因とする事故との間において強い関係性を示していることとする。そして、予測対象気象情報111が、その場所における先月の降水量が多いことを示していることとする。この場合、予測部12は、その場所において樹木接触による事故が発生する可能性が高いと予測する。
【0041】
予測部12は、上述の通りに場所ごとに発生する可能性がある事故の事故原因を予測した結果を、生成部13に入力する。
【0042】
生成部13は、予測部12から入力された予測結果を表すハザードマップ130を、記憶部11に記憶されている地図情報113を用いて生成する。図5は本実施形態に係るハザードマップ130の内容を例示する図である。ハザードマップ130は、例えば、地図情報113が表す地図に含まれる4つの頂点の経度と緯度とによって表される所定の大きさの矩形の領域ごとに、その領域において発生する可能性が最も高い事故原因を、事故原因を識別可能な表示態様(例えば模様や色など)を用いて表している。
【0043】
生成部13は、上述の通りに生成したハザードマップ130を、例えばディスプレイである表示部14に表示する。
【0044】
次に図6のフローチャートを参照して、本実施形態に係る事故原因予測装置10が、事故原因を予測する動作(処理)について詳細に説明する。
【0045】
予測部12は、各地域に関する特定の期間(例えば先月)の気象の状態を表す予測対象気象情報111と学習モデル112とに基づいて、各地域において発生する可能性がある事故の事故原因を予測し、その予測結果を生成部13に入力する(ステップS201)。生成部13は、予測部12から入力された予測結果と地図情報113とに基づいて、ハザードマップ130を生成する(ステップS202)。生成部13は、生成したハザードマップ130を表示部14に表示し(ステップS203)、全体の処理は終了する。
【0046】
本実施形態に係る事故原因予測装置10は、インフラ設備がある場所において発生する可能性がある事故の原因を予測する精度を高めることができる。その理由は、事故原因予測装置10は、場所ごとに気象の状態と発生する事故の原因との関係性について機械学習を行った結果を表す学習モデル112を用いて、各場所において発生する可能性がある事故の原因を予測するからである。
【0047】
以下に、本実施形態に係る事故原因予測装置10によって実現される効果について、詳細に説明する。
【0048】
送配電線等のインフラ設備において発生する事故は様々な原因によって発生する。そして事故原因は、そのインフラ設備がある場所(地域)の特性と、その場所における気象の状態とに大きく依存すると考えられる。したがって、発生する可能性がある事故に対する対策を行うために、インフラ設備がある場所の特性と、その場所における気象の状態とに基づいて、事故の発生とその事故原因とを予測することを十分に行うことが課題である。
【0049】
このような課題に対して、本実施形態に係る事故原因予測装置10は、記憶部11と予測部12とを備え、例えば、図1乃至図6を参照して上述した通り動作する。即ち、記憶部11は、事故が発生した場所における気象の状態と事故原因との関係性を、当該場所と当該事故原因との履歴を表す事故履歴情報211と、所定の期間における当該場所の気象の状態を表す学習用気象情報212とに基づいて、機械学習した結果を表す学習モデル112を記憶する。そして、予測部12は、当該場所に関する特定の期間における予測対象気象情報111と学習モデル112とに基づいて、当該場所において発生する可能性がある事故の事故原因を予測する。
【0050】
即ち、事故原因予測装置10は、各場所における気象の状態と事故原因との関係性を機械学習した結果である学習モデル112を用いることによって、事故の発生とその事故原因とを予測する精度を高めることができる。
【0051】
また、本実施形態に係る機械学習装置20は、機械学習を用いることによって、事故の発生とその事故原因とを予測するための基準(即ち学習モデル112)を作成するのに要するコストを低く抑えることができる。これにより、本実施形態に係る事故原因予測装置10は、インフラ設備がある場所の特性とその場所における気象の状態との多種多様な組み合わせに基づいて、発生する可能性がある事故の原因を予測することを効率的に行うことができる。
【0052】
また、本実施形態に係る事故原因予測装置10は、各場所(地域)を示す所定の大きさの領域毎に、予測した事故原因を識別可能な表示態様を用いたハザードマップ130を生成する。これにより、本実施形態に係る事故原因予測装置10は、各場所における事故原因の予測結果を、ユーザにわかりやすく提示することができる。
【0053】
<第2の実施形態>
図7は、本願発明の第2の実施形態に係る事故原因予測装置30の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る事故原因予測装置30も、第1の実施形態に係る事故原因予測装置10と同様に、例えば送配電網等のインフラ設備において発生する可能性が高い事故の事故原因を場所(地域)ごとに予測する装置である。
【0054】
本実施形態に係る事故原因予測装置30は、予測部32を備えている。予測部32は、予測手段の一例である。
【0055】
学習モデル312は、事故が発生した場所における気象の状態と事故原因との関係性を、当該場所と当該事故原因との履歴を表す事故履歴情報411と、所定の期間における当該場所の気象の状態を表す第一の気象情報412とに基づいて、機械学習した結果を表す。事故履歴情報411及び第一の気象情報412は、例えば、第一の実施形態に係る事故履歴情報211及び学習用気象情報212と同様な情報である。
【0056】
事故原因予測装置30は、例えば第一の実施形態に係る機械学習装置20のような外部の装置によって生成された学習モデル312を、その外部の装置から入手してもよい。あるいは、事故原因予測装置30は、事故履歴情報411と第一の気象情報412とに基づいて、気象の状態と事故原因との関係性を機械学習する機能を備えることによって、学習モデル312を、自ら生成してもよい。事故原因予測装置30は、学習モデル312を、例えば図7に図示しない記憶部に格納してもよい。
【0057】
そして予測部32は、当該場所に関する特定の期間(例えば先月)における第二の気象情報311と学習モデル312とに基づいて、当該場所において発生する可能性がある事故の事故原因を予測する。予測部32は、予測した結果を、図7に図示しない表示装置に表示してもよい。
【0058】
本実施形態に係る事故原因予測装置30は、インフラ設備がある場所において発生する可能性がある事故の原因を予測する精度を高めることができる。その理由は、事故原因予測装置30は、場所ごとに気象の状態と発生する事故の原因との関係性について機械学習を行った結果を表す学習モデル312を用いて、各場所において発生する可能性がある事故の原因を予測するからである。
【0059】
<ハードウェア構成例>
上述した各実施形態において図1、及び、図7に示した事故原因予測装置及び機械学習装置における各部は、専用のHW(HardWare)(電子回路)によって実現することができる。また、図1、及び、図7において、少なくとも、下記構成は、プロセッサによって実行される命令を含むソフトウェアプログラムの機能(処理)単位(ソフトウェアモジュール)と捉えることができる。
・予測部12及び32、
・生成部13、
・表示部14における表示制御機能、
・記憶部11、及び、21における記憶制御機能、
・機械学習部22。
【0060】
但し、これらの図面に示した各部の区分けは、説明の便宜上の構成であり、実装に際しては、様々な構成が想定され得る。この場合のハードウェア環境の一例を、図8を参照して説明する。
【0061】
図8は、本願発明の各実施形態に係る事故原因予測装置あるいは機械学習装置を実行可能な情報処理装置900(コンピュータ)の構成を例示的に説明する図である。即ち、図8は、図1、及び、図7に示した事故原因予測装置あるいは機械学習装置を実現可能なコンピュータ(情報処理装置)の構成であって、上述した実施形態における各機能を実現可能なハードウェア環境を表す。
【0062】
図8に示した情報処理装置900は、構成要素として下記を備えている。
・CPU(Central_Processing_Unit)901、
・ROM(Read_Only_Memory)902、
・RAM(Random_Access_Memory)903、
・ハードディスク(記憶装置)904、
・通信インタフェース905、
・バス906(通信線)、
・CD-ROM(Compact_Disc_Read_Only_Memory)等の記録媒体907に格納されたデータを読み書き可能なリーダライタ908、
・モニターやスピーカ、キーボード等の入出力インタフェース909。
【0063】
即ち、上記構成要素を備える情報処理装置900は、これらの構成がバス906を介して接続された一般的なコンピュータである。情報処理装置900は、CPU901を複数備える場合もあれば、マルチコアにより構成されたCPU901を備える場合もある。
【0064】
そして、上述した実施形態を例に説明した本願発明は、図8に示した情報処理装置900に対して、次の機能を実現可能なコンピュータプログラムを供給する。その機能とは、その実施形態の説明において参照したブロック構成図(図1、及び、図7)における上述した構成、或いはフローチャート(図4、及び、図6)の機能である。本願発明は、その後、そのコンピュータプログラムを、当該ハードウェアのCPU901に読み出して解釈し実行することによって達成される。また、当該装置内に供給されたコンピュータプログラムは、読み書き可能な揮発性のメモリ(RAM903)、または、ROM902やハードディスク904等の不揮発性の記憶デバイスに格納すれば良い。
【0065】
また、前記の場合において、当該ハードウェア内へのコンピュータプログラムの供給方法は、現在では一般的な手順を採用することができる。その手順としては、例えば、CD-ROM等の各種記録媒体907を介して当該装置内にインストールする方法や、インターネット等の通信回線を介して外部よりダウンロードする方法等がある。そして、このような場合において、本願発明は、係るコンピュータプログラムを構成するコード或いは、そのコードが格納された記録媒体907によって構成されると捉えることができる。
【0066】
以上、上述した実施形態を模範的な例として本願発明を説明した。しかしながら、本願発明は、上述した実施形態には限定されない。即ち、本願発明は、本願発明のスコープ内において、当業者が理解し得る様々な態様を適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 事故原因予測システム
10 事故原因予測装置
11 記憶部
111 予測対象気象情報
112 学習モデル
113 地図情報
12 予測部
13 生成部
130 ハザードマップ
14 表示部
20 機械学習装置
21 記憶部
211 事故履歴情報
212 学習用気象情報
22 機械学習部
220 教師データ
30 事故原因予測装置
311 第二の気象情報
312 学習モデル
32 予測部
411 事故履歴情報
412 第一の気象情報
900 情報処理装置
901 CPU
902 ROM
903 RAM
904 ハードディスク(記憶装置)
905 通信インタフェース
906 バス
907 記録媒体
908 リーダライタ
909 入出力インタフェース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8