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  • 特許-井戸監視システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】井戸監視システム
(51)【国際特許分類】
   E03B 3/10 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
E03B3/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019191795
(22)【出願日】2019-10-21
(65)【公開番号】P2021067047
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】千田 輝一
(72)【発明者】
【氏名】中野 寛二
(72)【発明者】
【氏名】前田 洋佑
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-055441(JP,A)
【文献】特開2006-221402(JP,A)
【文献】国際公開第2018/124286(WO,A1)
【文献】特開2006-026572(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0033462(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03B 1/00-11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の帯水層から取水すると推定される複数の井戸のそれぞれに設置される揚水設備と、
前記各井戸に関する井戸情報を記憶するサーバとを備える井戸監視システムであって、
前記各揚水設備は、前記井戸から地下水を汲み上げるポンプと、前記井戸の水位を計測する水位センサと、前記井戸情報を前記サーバに送信する制御装置とを含み、
前記井戸情報には、前記各井戸の関わり合いを示す情報である、前記各井戸の水位に関する水位情報と、前記各井戸からの揚水量に関する揚水量情報と、前記各井戸が設置されている地点を示す位置情報とが含まれており、
前記井戸情報は、前記井戸の異常の有無を監視するのに使用される情報である井戸監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の井戸監視システムにおいて、
前記各制御装置は、前記井戸情報を無線通信にて前記サーバに送信する井戸監視システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の井戸監視システムにおいて、
前記各制御装置は、前記水位センサを含む各種センサ及び前記ポンプに異常が発生したか否かを判定する異常判定を実行するように構成されており、
前記井戸情報には、前記各種センサ及び前記ポンプが異常であるか否かを示す設備状態情報が含まれる井戸監視システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の井戸監視システムにおいて、
前記サーバに記憶された前記井戸情報をネットワークを介して読み出し可能な端末を備える井戸監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、井戸監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場や病院等の各種施設において、井戸から揚水した地下水が利用されている。こうした地下水を揚水する揚水設備を監視するための監視システムとして、例えば特許文献1に開示のものがある。同文献の監視システムでは、設備側の監視制御装置が揚水設備の各種状態量を検出している。そして、監視制御装置は、異常が発生すると、揚水設備を提供する提供会社側へインターネットを介して警報を送信する。詳しくは、監視制御装置は、揚水設備の状態量として井戸の水位を検出しており、検出される水位が予め設定された水位を下回った場合に、異常が発生したと判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-26572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、井戸は、帯水層と呼ばれる地下水で満たされた地層から取水している。そのため、同一の帯水層から取水する井戸が複数ある場合、一の井戸からの揚水が他の井戸の水位に影響を及ぼすことがある。しかし、上記従来の監視システムは、互いに離れた複数の揚水設備を監視しているものの、各揚水設備が設置された井戸の間の関係については考慮せずに個別に監視している。したがって、井戸の異常の有無を適切に判断できないおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、井戸の異常の有無を適切に監視できる井戸監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する井戸監視システムは、同一の帯水層から取水すると推定される複数の井戸のそれぞれに設置される揚水設備と、前記各井戸に関する井戸情報を記憶するサーバとを備えるものであって、前記各揚水設備は、前記井戸から地下水を汲み上げるポンプと、前記井戸の水位を計測する水位センサと、前記井戸情報を前記サーバに送信する制御装置とを含み、前記井戸情報には、前記各井戸の水位に関する水位情報及び該各井戸からの揚水量に関する揚水量情報が含まれる。
【0007】
上記構成によれば、複数の井戸は、同一の帯水層から取水していると推定されるものであるため、各井戸の水位情報及び揚水量情報には相関がある。そして、こうした複数の井戸の水位情報及び揚水量情報は、各揚水設備の制御装置からサーバに送信されて保存される。このように互いに相関のある水位情報及び揚水量情報がサーバに集約されるため、複数の井戸の関わり合いを踏まえつつ、適切に井戸の異常の有無を監視できる。
【0008】
上記井戸監視システムにおいて、前記各制御装置は、前記井戸情報を無線通信にて前記サーバに送信することが好ましい。
上記構成によれば、広範囲に亘って揚水設備が点在する場合でも、サーバに対して井戸情報を制御装置から容易に送信できる。
【0009】
上記井戸監視システムにおいて、前記井戸情報には、前記各井戸が設置されている地点を示す位置情報が含まれることが好ましい。
上記構成によれば、井戸の間の距離等を把握することができ、複数の井戸の関わり合いをより適切に踏まえつつ、井戸の異常の有無を監視できる。
【0010】
上記井戸監視システムにおいて、前記サーバに記憶された前記井戸情報をネットワークを介して読み出し可能な端末を備えることが好ましい。
上記構成によれば、作業者が、例えばスマートフォン等の端末を用いて容易に井戸情報を確認できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、井戸の異常の有無を適切に監視できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】井戸監視システムの概略構成図。
図2】地図上での複数の井戸と帯水層との関係を示す模式図。
図3】井戸及び揚水設備の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、井戸監視システムの一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、井戸監視システム1は、複数の井戸2A~2Cのそれぞれに設置される揚水設備3A~3Cと、サーバ4と、端末5とを備えている。揚水設備3A~3C及び端末5は、インターネット等のネットワーク6を介してサーバ4にそれぞれ接続されている。なお、説明の便宜上、井戸監視システム1の監視対象となる井戸が3つの場合を例示しているが、井戸の数は2つ以上であれば適宜変更可能である。
【0014】
図2に示すように、井戸2A~2Cは、同図において破線で示す帯水層11上に設置されている。帯水層11の分布範囲は、例えば地表地質踏査、ボーリング調査等の地質調査、電気探査、イオン分析を含む水質調査等の典型的な手法又はその組み合わせによって推定される。そして、同一の帯水層11上に設置された井戸2A~2Cは、同一の帯水層11から取水すると推定される。
【0015】
図3に示すように、揚水設備3Aは、井戸2Aから地下水を汲み上げるポンプ21と、ポンプ21により汲み上げられた地下水を貯留するタンク22と、ポンプ21の作動を制御する制御装置23とを備えている。なお、揚水設備3B,3Cは、揚水設備3Aと同一の構成であるため、これらの説明を省略する。
【0016】
ポンプ21には、モータ24によって駆動される電動式のポンプが採用されている。ポンプ21は、陸上に設置するタイプであっても、水中に投入するタイプであってもよい。また、ポンプ21として、例えばエンジン駆動によるポンプ等、他の駆動方式によるポンプを採用してもよい。ポンプ21は、揚水管25を介して井戸2Aから地下水を汲み上げ、接続管26を介して汲み上げた地下水をタンク22に送出する。タンク22に貯留された地下水は、送出管27を介して図示しない工場等の施設に送出される。
【0017】
制御装置23には、PLC(Programmable Logic Controller)が採用されており、制御装置23はCPU31やメモリ32を備えている。制御装置23は、メモリ32に記憶されたプログラムをCPU31が実行することにより、各種制御を実行する。
【0018】
詳しくは、制御装置23は、モータ24への駆動電力の供給を通じてポンプ21の作動を制御する。また、制御装置23は、揚水設備3Aに設けられた各種センサから井戸2Aに関する井戸情報を取得し、上記サーバ4に送信する。
【0019】
各種センサには、水位センサ41、流量センサ42、電流センサ43、及び貯水量センサ44が含まれる。水位センサ41は、井戸2Aの水位Hwを検出する。流量センサ42は、ポンプ21により汲み上げられる地下水の流量Qwを検出する。制御装置23は、検出される流量Qwに基づいて、単位時間当たりの地下水の揚水量Pwを検出する。電流センサ43は、モータ24に供給される電流Imを検出する。貯水量センサ44は、タンク22内に貯留された地下水の水位に基づいてタンク22内の貯水量Nwを検出する。
【0020】
制御装置23は、水位センサ41の異常判定を行う。具体的には、制御装置23は、水位センサ41から水位Hwを示す信号が出力されなくなった場合、あるいは当該信号に示される水位Hwが取り得ない値となった場合等に、水位センサ41に異常が発生したと判定する。また、制御装置23は、流量センサ42、電流センサ43及び貯水量センサ44についても、水位センサ41と同様に、その異常判定を行う。なお、制御装置23は、電流センサ43に異常が発生すると、ポンプ21に異常が発生したと判定する。
【0021】
制御装置23は、無線通信によりサーバ4との間で信号を授受する。本実施形態の制御装置23は、例えば数GHz程度の周波数帯の電波を用いる。制御装置23は、サーバ4に井戸2Aに関する井戸情報を、例えば数十秒から数分程度の所定間隔でサーバ4に送信する。一方、制御装置23は、サーバ4から、例えばポンプ21の駆動・停止等を指示する指示信号を受信する。
【0022】
井戸情報には、井戸2Aの水位Hwからなる水位情報、井戸2Aからの揚水量Pwからなる揚水量情報、及び貯水量Nwからなる貯水量情報が含まれる。また、井戸情報には、各種センサ及びポンプ21が異常であるか否かを示す設備状態情報が含まれる。さらに、井戸情報には、井戸2Aが設けられている地点を示す位置情報が含まれる。なお、位置情報は、井戸2Aが設置された地点の緯度及び経度を含み、予め制御装置23のメモリ32に記憶されている。また、位置情報は、サーバ4にも保管されている。
【0023】
図1に示すように、サーバ4は、ネットワーク6を介して複数の揚水設備3A~3C及び端末5と接続することで、これらの間で情報の授受を行うことが可能に構成されている。サーバ4には、設置型のサーバ、又はネットワーク6上に仮想的に構築されたクラウドサーバ等が採用されている。サーバ4は、CPU51及びメモリ52を備えている。サーバ4は、メモリ52に記憶されたプログラムをCPU51が実行することにより、各種制御を実行する。
【0024】
詳しくは、サーバ4は、揚水設備3A~3Cの各制御装置23から送信される井戸情報をメモリ52に保存する。サーバ4は、後述する端末5からの要求に応じて井戸情報を端末5に送信する。また、サーバ4は、端末5からの揚水設備3A~3Cの各制御装置23への指示信号を制御装置23に送信する。
【0025】
端末5は、ネットワーク6を介してサーバ4と接続することで、サーバ4との間で情報の授受を行うことを可能に構成されている。端末5には、スマートフォンやノートパソコン等の情報端末が採用される。
【0026】
端末5は、作業者の操作によって、サーバ4から井戸情報を読み出し、その画面上に表示する。こうした井戸情報、すなわち水位情報、揚水量情報、貯水量情報、位置情報及び設備状態情報は、例えば表形式やグラフ形式等、種々の形式で表示される。そして、作業者は、表示される井戸情報に基づき、端末5からサーバ4を介して揚水設備3A~3Cに指示信号等を送信する。
【0027】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)井戸監視システム1は、同一の帯水層11から取水すると推定される複数の井戸2A~2Cのそれぞれに設置される揚水設備3A~3Cと、井戸情報を記憶するサーバ4とを備える。井戸情報には、井戸2A~2Cの水位Hwを示す水位情報及び井戸2A~2Cからの揚水量Pwを示す揚水量情報が含まれる。複数の井戸2A~2Cは、同一の帯水層11から取水していると推定されるものであるため、井戸2A~2Cの水位情報及び揚水量情報には相関がある。そして、こうした井戸2A~2Cの水位情報及び揚水量情報は、揚水設備3A~3Cの制御装置23からサーバ4に送信されて保存される。このように互いに相関のある水位情報及び揚水量情報がサーバ4に集約されるため、井戸2A~2Cの関わり合いを踏まえつつ、適切に井戸2A~2Cの異常の有無を監視できる。
【0028】
すなわち、例えば揚水設備3Aについて揚水していないのにも関わらず井戸2Aの水位Hwが低下した場合であっても、揚水設備3Bでの揚水量Pwが大きい場合には、揚水設備3Aに異常は発生していないと判断することが可能になる。また、このような場合に、例えば揚水設備3Bに対して井戸2Bからの揚水を減少させるように要請することで、揚水設備3A~3C間における揚水量の平準化等を図ることも可能になる。さらに、井戸2A~2Cの水位Hwに基づいて、例えば帯水層11全体の地下水量等を把握することも可能になる。
【0029】
(2)制御装置23は、井戸情報を無線通信にてサーバ4に送信するため、広範囲に亘って揚水設備3A~3Cが点在する場合でも、サーバ4に対して井戸情報を制御装置23から容易に送信できる。
【0030】
(3)井戸情報には、各井戸2A~2Cが設けられている地点を示す位置情報が含まれるため、井戸2A~2Cの間の距離等を把握することができ、井戸2A~2Cの関わり合いをより適切に踏まえつつ、井戸2A~2Cの異常の有無を監視できる。
【0031】
(4)井戸監視システム1は、サーバ4に記憶された井戸情報をネットワーク6を介して読み出し可能な端末5を備える。そのため、作業者が端末5を用いて容易に井戸情報を確認できる。
【0032】
(5)井戸情報には、設備状態情報が含まれるため、同設備状態情報に基づいて揚水設備3A~3Cの異常の有無を検出できる。これにより、井戸2A~2C自体の異常の有無を正確に判断できる。
【0033】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態において、揚水設備3A~3Cの構成は適宜変更可能である。例えば、揚水設備3A~3Cがタンク22を備えない構成としてもよい。また、揚水設備3A~3Cが流量センサ42を備えない構成としてもよい。この場合、制御装置23は、例えばポンプ21の駆動時間に基づいて揚水量Pwを推定してもよい。
【0034】
・上記実施形態において、制御装置23が設備状態情報を井戸情報に含めてサーバ4に送信しなくてもよい。また、制御装置23が位置情報を井戸情報に含めてサーバ4に送信しなくてもよい。
【0035】
・上記実施形態において、井戸監視システム1が端末5を備えない構成としてもよい。この場合、作業者は、例えばサーバ4のディスプレイ上で井戸情報を確認してもよい。また、例えばサーバ4が取得した井戸情報と予め設定した閾値との比較を行い、その比較結果に基づいて、サーバ4が井戸2A~2Cの異常の有無の監視及び揚水設備3A~3Cに対する指示信号の送信を行ってもよい。
【0036】
・上記実施形態では、制御装置23は無線通信により井戸情報をサーバ4に送信したが、これに限らず、例えば制御装置23とサーバ4とを物理的な信号線で接続し、該信号線を介して井戸情報をサーバ4に送信してもよい。
【0037】
・上記実施形態において、井戸監視システム1により監視される複数の井戸のすべてが同一の帯水層から取水するものでなくてもよく、異なる帯水層から取水する井戸が含まれていてもよい。この場合、サーバ4は、例えば帯水層ごとにグループ分けして井戸情報を保存することが好ましい。
【0038】
・上記実施形態において、制御装置23がCPU31とメモリ32とを備え、ソフトウェア処理を実行するものでなくともよい。例えば上記実施形態において実行されるソフトウェア処理の少なくとも一部を処理する専用のハードウェア回路(たとえばASIC等)を備えてもよい。すなわち、制御装置23は、以下の(a)~(c)のいずれかの構成であればよい。(a)上記処理の全てを、プログラムに従って実行する処理装置と、プログラムを記憶するROM等のプログラム格納装置とを備える。(b)上記処理の一部をプログラムに従って実行する処理装置およびプログラム格納装置と、残りの処理を実行する専用のハードウェア回路とを備える。(c)上記処理の全てを実行する専用のハードウェア回路を備える。ここで、処理装置およびプログラム格納装置を備えたソフトウェア処理回路や、専用のハードウェア回路は複数であってもよい。すなわち、上記処理は、1または複数のソフトウェア処理回路および1または複数の専用のハードウェア回路の少なくとも一方を備えた処理回路(Processing Circuitry)によって実行されればよい。サーバ4についても同様である。
【0039】
次に、上記実施形態及び変形例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(イ)前記井戸情報には、前記各揚水設備の状態を示す設備状態情報が含まれる井戸監視システム。上記構成によれば、設備状態情報に基づいて揚水設備の異常の有無を検出でき、井戸自体の異常の有無を正確に判断できる。
【符号の説明】
【0040】
1…井戸監視システム、2A~2C…井戸、3A~3C…揚水設備、4…サーバ、5…端末、6…ネットワーク、11…帯水層、21…ポンプ、23…制御装置、41…水位センサ、42…流量センサ、Hw…水位、Pw…揚水量。
図1
図2
図3