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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20231108BHJP
   H05B 6/14 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
G03G15/20 510
H05B6/14
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019192792
(22)【出願日】2019-10-23
(65)【公開番号】P2021067799
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 栄次
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-288578(JP,A)
【文献】特開2007-121926(JP,A)
【文献】特開2004-157363(JP,A)
【文献】特開2011-043763(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0263509(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
H05B 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な定着部材と、
前記定着部材との間にシートが挟持搬送される加圧領域を形成する加圧ローラーと、
前記定着部材の外周面に対向する面が前記外周面に沿う形状に形成され、前記定着部材を加熱する加熱部と、
前記加熱部の前記定着部材の外周面に対向する面に形成された凸部と、を備え
前記凸部は、前記定着部材と前記加熱部との間隙に巻き込まれたシートに点接触することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記凸部は、前記定着部材の回転方向における複数箇所に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記凸部は、前記加圧ローラーの軸方向における複数箇所に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記凸部の表面は、前記定着部材側に突出した曲面又は錐面を形成していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項5】
前記加熱部は、
磁界を発生するコイルと、
前記定着部材の外周面に対向する面が前記外周面に沿う形状に形成され、前記コイルを保持するホルダーと、を備え、
前記凸部は、前記ホルダーの前記定着部材の外周面に対向する面に形成されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項6】
前記シートにトナー像を形成する作像装置と、
形成された前記トナー像を前記シートに定着させる請求項1乃至のいずれか1項に記載の定着装置と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー像をシートに定着させる定着装置及び定着装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱部としてIH(Induction Heating)ヒーターを用いて定着部材を昇温させる定着装置が知られている。IHヒーターは、発熱効率が高いため昇温速度が速く、ウォームアップ時間が短縮できる利点があり、環境性能も優れている。一般に、ベルト状又はローラー状の定着部材が用いられ、磁界を発生させるコイルが定着部材の外周面に沿う形状に形成されたホルダーに保持される。ホルダーと定着部材との間には、間隙が形成されている(例えば、特許文献1乃至3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-56963号公報
【文献】特開2008-139455号公報
【文献】特開2009-48916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記定着装置では、定着部材に加圧ローラーが押し当てられることで加圧領域(ニップ領域)が形成され、加圧領域においてシートが挟持搬送されることで、トナーが加圧及び溶融され、シートに定着される。ところが、溶融したトナーは粘着力を有するため、シートが定着部材に付着することがある。そこで、加圧領域よりも搬送方向下流側に、定着部材に先端部を向けた板状の分離部材が設けられる。離形性を高めるためにフッ素樹脂の離形層で覆われた定着部材が用いられる場合があるが、分離部材を離形層に接触させると離形層が損傷するため、分離部材は、定着部材との間に間隙を設けて配置される。
【0005】
ところが、シートの先端側に余白が少なく、トナーの面積が多い画像の場合、定着部材にシートが付着しやすくなる。シートが斜行した場合には、実質的な余白がさらに少なくなるため、余計に付着しやすくなる。そのため、定着部材に付着したシートが分離部材と定着部材との間隙を通過し、剥がれかかったシートの先端部がホルダーの端部に接触して進路を遮られ、シートの後続の部分がホルダーと定着部材との間隙に巻き込まれることがある。ホルダーは、樹脂製のため離形性が低く、溶融したトナーの粘着力によってシートが付着しやすい。すると、ホルダーに熱を奪われてトナーが固化し、シートがホルダーに接着されてしまう。その後、ユーザーがシートを取り除こうとしても、シートがちぎれてホルダーに残ってしまう。ホルダーに接着されたシートを取り除くことは一般のユーザーには困難なため、サービスマンに依頼する必要があり、サービスマンの作業が終わるまでプリンターが使用できなくなってしまう。
【0006】
本発明は、上記事情を考慮し、加熱部と定着部材との間隙にシートが巻き込まれた場合に加熱部にシートが付着しにくくすることのできる定着装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る定着装置は、回転可能な定着部材と、前記定着部材との間にシートが挟持搬送される加圧領域を形成する加圧ローラーと、前記定着部材の外周面に対向する面が前記外周面に沿う形状に形成され、前記定着部材を加熱する加熱部と、前記加熱部の前記定着部材の外周面に対向する面に形成された凸部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る定着装置において、前記凸部は、前記定着部材の回転方向における複数箇所に形成されていてもよい。
【0009】
本発明に係る定着装置において、前記凸部は、前記加圧ローラーの軸方向における複数箇所に形成されていてもよい。
【0010】
本発明に係る定着装置において、前記凸部の表面は、前記定着部材側に突出した曲面又は錐面を形成していてもよい。
【0011】
本発明に係る定着装置において、前記凸部は、前記加熱部の前記定着部材の外周面に対向する面に沿って線状に形成されていてもよい。
【0012】
本発明に係る定着装置において、前記凸部は、前記加圧ローラーの軸方向に線状に形成されていてもよい。
【0013】
本発明に係る定着装置において、線状の前記凸部の長手方向の断面の輪郭は、前記定着部材側に突出した曲線又は楔形の線を形成していてもよい。
【0014】
本発明に係る定着装置において、前記加熱部は、磁界を発生するコイルと、前記定着部材の外周面に対向する面が前記外周面に沿う形状に形成され、前記コイルを保持するホルダーと、を備え、前記凸部は、前記ホルダーの前記定着部材の外周面に対向する面に形成されていてもよい。
【0015】
また、本発明に係る画像形成装置は、前記シートにトナー像を形成する作像装置と、形成された前記トナー像を前記シートに定着させる上記のいずれかの定着装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、加熱部と定着部材との間隙にシートが巻き込まれた場合に加熱部にシートが付着しにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るプリンターの内部構成を模式的に示す正面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る定着装置の断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るホルダーの右側面図である。
図4】従来の定着装置におけるシート詰まりの様子を示す断面図である。
図5】従来の定着装置におけるシート詰まりの様子を示す断面図である。
図6】従来の定着装置におけるシート詰まりの様子を示す断面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る定着装置におけるシート詰まりの様子を示す断面図である。
図8】本発明の一実施形態の変形例に係るホルダーの右側面図である。
図9A】本発明の一実施形態の変形例に係る定着装置の断面図である。
図9B】本発明の一実施形態の変形例に係る定着装置の断面図である。
図9C】本発明の一実施形態の変形例に係る定着装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態に係るプリンター1(画像形成装置の一例)及び定着装置5について説明する。
【0019】
最初に、プリンター1の全体の構成について説明する。図1は、プリンター1の内部構成を模式的に示す正面図である。以下、図1における紙面手前側をプリンター1の正面側(前側)とし、左右の向きはプリンター1を正面から見た方向を基準として説明する。各図において、U、Lo、L、R、Fr、Rrは、それぞれ上、下、左、右、前、後を示す。
【0020】
プリンター1は、箱形の筐体2を備える。筐体2には、シートSを搬送路6に送り出す給紙装置3と、トナー像をシートSに形成する作像装置4と、トナー像をシートSに定着させる定着装置5と、が収容されている。筐体2の上部には、トナー像が定着されたシートSが排出される排出部7が形成されている。
【0021】
作像装置4は、ドラムユニット11と、露光装置9と、現像剤容器13と、中間転写ベルト15と、二次転写ローラー17と、を備える。ドラムユニット11は、回転駆動される感光体ドラムと、感光体ドラムを帯電させる帯電装置と、露光装置9によって感光体ドラムに形成された潜像をトナーで現像することでトナー像を形成する現像装置と、トナー像を中間転写ベルト15に転写する一次転写ローラーと、感光体ドラムの表面を清掃するクリーニング装置と、を備える。露光装置9は、画像データに基づくレーザー光を感光体ドラムに照射することで潜像を形成する。現像剤容器13は、トナーを含む現像剤を収容し、現像剤を現像装置に供給する。中間転写ベルト15は、駆動ローラーと従動ローラーとに巻き掛けられている。二次転写ローラー17は、中間転写ベルト15上のトナー像をシートSに転写する。プリンター1は、ドラムユニット11、露光装置9及び現像剤容器13を4組備え、4つの現像剤容器13には、互いに異なる色のトナーを含む現像剤が収容されている。なお、1乃至3組又は5組以上のドラムユニット11、露光装置9及び現像剤容器13を備えるプリンター1に本発明が適用されてもよい。
【0022】
プリンター1が外部コンピューター等から画像データを受信すると、シートSが給紙装置3から搬送路6に送り出され、帯電した感光体ドラムの表面に露光装置9により画像データに基づく潜像が形成される。現像装置により潜像が現像されることで感光体ドラムにトナー像が形成され、4つの感光体ドラムに形成されたトナー像が一次転写ローラーにより中間転写ベルト15に重ねて転写される。中間転写ベルト15上のトナー像は、二次転写ローラー17によりシートSに転写され、定着装置5によりシートSに定着される。トナー像が定着されたシートSは、排出部7に排出される。
【0023】
次に、図2及び3を参照して、定着装置5の構成について説明する。図2は、定着装置5の断面図である。図3は、ホルダー23Hの右側面図である。
【0024】
定着装置5は、回転可能な定着ベルト21(定着部材の一例)と、定着ベルト21との間にシートSが挟持搬送される加圧領域Nを形成する加圧ローラー27と、定着ベルト21の外周面に対向する面が外周面に沿う形状に形成され、定着ベルト21を加熱するIHヒーター23(加熱部の一例)と、IHヒーター23の定着ベルト21の外周面に対向する面に形成された凸部23Pと、を備える。なお、本実施形態では、定着ベルト21の右方に加圧ローラー27が位置する姿勢で定着装置5が配置された例を示すが、定着装置5はいかなる姿勢で配置されてもよい。
【0025】
[定着ベルト]
定着ベルト21は、前後方向を長手方向とする筒状に形成された無端のベルトであり、定着ローラー22の外周面を覆うように設けられている。定着ベルト21は、基層と、基層の外周面に形成された弾性層と、弾性層の外周面に形成された離形層と、を備える(図示省略)。基層は、Ni等の磁性合金や、CuやAg、Al等の金属粉を混入させたポリイミド樹脂で形成される。弾性層は、シリコーンゴム等で形成される。離型層は、PFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)チューブ等で形成される。各層の層厚の一例を示すと、基層(Ni合金の場合)が30μm、弾性層が200μm、離形層が50μmである。
【0026】
[定着ローラー]
定着ローラー22は、前後方向を長手方向とするローラーであり、芯金22Cと、芯金22Cの外周面に形成された弾性層22Eと、を備える。芯金22Cは、Al合金等で形成される。弾性層22Eは、発泡系のシリコーンゴム等で形成される。定着ベルト21は、定着ローラー22とともに、定着ローラー22の軸回りに回転可能である。
【0027】
[加圧ローラー]
加圧ローラー27は、前後方向を長手方向とするローラーであり、芯金27Cと、芯金27Cの外周面に形成された弾性層27Eと、弾性層27Eの外周面に形成された離形層(図示省略)と、を備える。芯金27Cは、Al合金等で形成される。弾性層27Eは、シリコーンゴム等で形成される。離型層は、PFAチューブ等で形成される。弾性層27Eの層厚は、例えば、50μmである。ばね等を用いた付勢機構(図示省略)により加圧ローラー27が定着ベルト21に押し当てられることで、定着ローラー22の弾性層22Eと加圧ローラー27の弾性層27Eの一部が押しつぶされ、定着ベルト21と加圧ローラー27との間に加圧領域N(ニップ領域)が形成される。加圧ローラー27は、モーター等の駆動源(図示省略)によって駆動され、加圧ローラー27の回転に追従して定着ベルト21及び定着ローラー22が回転する。
【0028】
[IHヒーター]
IHヒーター23は、ホルダー23Hと、コイル23Cと、サイドコア23SCと、センターコア23CCと、アーチコア23ACと、を備える。
【0029】
[ホルダー]
ホルダー23Hは、定着ベルト21の左側の部分の外周面に対向するように配置されている。ホルダー23Hの定着ベルト21の外周面に対向する面は、定着ベルト21の外周面に沿う形状に形成され、定着ベルト21の外周面との間に概ね一定の距離の間隙(例えば、3mm程度)が形成されるようにして定着ベルト21に対向している。ホルダー23Hは、液晶ポリマー等の耐熱性を有する樹脂を用いて形成されている。以下、便宜上、ホルダー23Hの右側の凹形の面(定着ベルト21の外周面に対向する面)を内面と呼び、ホルダー23Hの左側の凸形の面を外面と呼ぶ。
【0030】
[凸部]
ホルダー23Hの内面には、複数の凸部23Pが形成されている。図3に示されるように、右方から見て、凸部23Pは、定着ベルト21の回転方向Bにおける複数箇所に等間隔で形成されるとともに、加圧ローラー27の軸方向A(前後方向)における複数箇所に等間隔で形成されている。複数の凸23P部の回転方向Bの間隔は、例えば、5mm程度である。複数の凸部23Pの軸方向Aの間隔は、例えば、10mm程度である。図2に示されるように、複数の凸部23Pの表面は、定着ベルト21側に突出した曲面を形成している。ホルダー23Hの内面の上下方向の中央部においては、凸部23Pの表面は概ね半球形をなすが、ホルダー23Hを射出成形する場合、内面側の金型は図2において右方に引き抜かれるため、内面の上下両端部に近いほど、凸部23Pは左右方向に延びた形状になる。ホルダー23Hの内面からの凸部23Pの高さは、例えば、1mm程度である。
【0031】
[コイル、コア]
コイル23Cは、ホルダー23Hの外面に沿って前後方向に長い渦巻き状に形成され、ホルダー23Hの外面に支持されている。サイドコア23SC、センターコア23CC及びアーチコア23ACは、フェライト等の強磁性体を用いて形成され、コイル23Cから発生する磁束を通過させる磁路を形成する。サイドコア23SCは、前後方向を長手方向とする棒状に形成され、ホルダー23Hの上下両端部に設けられている。センターコア23CCは、前後方向を長手方向とする棒状に形成され、ホルダー23Hの上下方向の中央においてホルダー23Hの外面に対向している。左方から見た場合、センターコア23CCの周囲にコイル23Cが渦巻き状に巻かれている(図示省略)。上側のサイドコア23SCとセンターコア23CCとの間に湾曲した棒状のアーチコア23ACが架け渡され、下側のサイドコア23SCとセンターコア23CCとの間に湾曲した棒状のアーチコア23ACが架け渡されている。アーチコア23ACは、前後方向の複数箇所に互いに間隔を空けて設けられている。コイル23Cは、電源(図示省略)から電力の供給を受けて磁界を発生する。この磁界により、定着ベルト21の基層に電磁誘導による電流が流れ、ジュール熱が発生する。
【0032】
[ガイド部材]
ガイド部材24は、加圧領域NよりもシートSの搬送方向上流側に設けられている。ガイド部材24は、板状の部材であり、作像装置4から搬送されてくるシートSを加圧領域Nに案内する。
【0033】
[分離部材]
分離部材25は、加圧領域NよりもシートSの搬送方向下流側に設けられている。分離部材25は、板状の部材であり、分離部材25の定着ベルト21側の先端部と定着ベルト21との間に間隙が形成されている。間隙の大きさは、例えば0.3mm程度である。分離部材25は、加圧領域Nから搬送されてくるシートSの先端部を分離部材25の右面に沿って案内することで、定着ベルト21からのシートSの分離を促進する。
【0034】
ここで、図4乃至6を参照して、従来の定着装置50におけるシート詰まりについて説明する。図4乃至6は、従来の定着装置50におけるシート詰まりの様子を示す断面図である。図示された定着装置50は、本実施形態に係る定着装置5から凸部23Pを省いたものである。
【0035】
シートSの先端側(搬送方向下流側の端部)に余白が少なく、トナーの面積が多い画像の場合、定着ベルト21にシートSが付着しやすくなる。シートSが斜行した場合には、実質的な余白がさらに少なくなるため、余計に付着しやすくなる。そのため、定着ベルト21に付着したシートSが分離部材25と定着ベルト21との間隙を通過し(図4参照)、剥がれかかったシートSの先端部がホルダー23Hの回転方向B上流側の端部に接触して進路を遮られ(図5参照)、シートSの後続の部分がホルダー23Hと定着ベルト21との間隙に巻き込まれることがある(図6参照)。ホルダー23Hは、樹脂製のため離形性が低く、溶融したトナーの粘着力によってシートSが付着しやすい。すると、ホルダー23Hに熱を奪われてトナーが固化し、シートSがホルダー23Hに接着されてしまう。その後、ユーザーがシートSを取り除こうとしても、シートSがちぎれてホルダー23Hに残ってしまう。
【0036】
次に、図7を参照して、本実施形態に係る定着装置5におけるシート詰まりについて説明する。図7は、定着装置5におけるシート詰まりの様子を示す断面図である。図4乃至6で示されたのと同様にシートSがホルダー23Hと定着ベルト21との間隙に巻き込まれた場合、巻き込まれたシートSは、ホルダー23Hの内面に形成された複数の凸部23Pに接触するから、シートSがホルダー23Hの内面に接触しにくくなる。従って、複数の凸部23Pを備えない場合と比べて、ホルダー23HにシートSが付着しにくくなる。また、仮に、複数の凸部23Pに接触したトナーが固化したとしても、複数の凸部23Pを備えない場合と比べて、固化するトナーの量はわずかであるから、シートSを剥がしやすくなる。
【0037】
以上説明した本実施形態に係る定着装置5によれば、IHヒーター23のホルダー23Hと定着ベルト21との間隙にシートSが巻き込まれた場合にホルダー23HにシートSが付着しにくくすることができる。
【0038】
また、凸部23Pが回転方向Bの複数箇所及び軸方向Aの複数箇所に形成されているから、ホルダー23Hの内面の全域にわたって、ホルダー23HにシートSが付着しにくくなる。
【0039】
また、凸部23Pが回転方向Bの複数箇所に形成されているから、ホルダー23Hと定着ベルト21との間隙に巻き込まれたシートSが間隙の奥側(回転方向B下流側)に進入しにくくなるから、シートSが取り除きやすくなる。
【0040】
また、複数の凸部23Pの表面が定着ベルト21側に膨出した曲面をなすから、シートSと凸部23Pとの接触は点接触となる。よって、シートSが凸部23Pに線接触又は面接触する場合と比べて、凸部23PにシートSが付着しにくくなる。
【0041】
上記実施形態が以下のように変形されてもよい。
【0042】
上記実施形態では、凸部23Pの表面が定着ベルト21側に突出した曲面を形成している例が示されたが、凸部23Pの表面が定着ベルト21側に突出した錐面を形成していてもよい。錐面とは、例えば円錐、角錐等の側面である。この構成によっても、シートSと凸部23Pとの接触は点接触となるから、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0043】
また、凸部23Pは、構造材の補強リブのように、ホルダー23Hの内面に沿って線状に形成されていてもよい。例えば、凸部23Pは、軸方向Aに線状に形成されていてもよく(図8参照)、回転方向Bに線状に形成されていてもよく、それ以外の方向に線状に形成されていてもよい。また、線状の凸部23Pの長手方向の断面の輪郭が、定着ベルト21側に突出した曲線又は楔形の線を形成していてもよい。この構成によれば、シートSと凸部23Pとの接触が線接触となるから、上記実施形態に近い効果が得られる。また、凸部23Pが軸方向Aに線状に形成されている場合には、ホルダー23Hと定着ベルト21との間隙に巻き込まれたシートSが間隙の奥側(回転方向B下流側)に進入しにくくなるから、シートSが取り除きやすくなる。
【0044】
上記実施形態では、定着ベルト21が定着ローラー22の外周面を覆うように設けられた定着装置5に本発明が適用された例が示されたが、例えば、図9A乃至9Cに示される定着装置5A乃至5Cに本発明が適用されてもよい。
【0045】
図9Aに示される定着装置5Aは、筒状の定着ベルト21と、定着ベルト21の内周面側に設けられた押圧部材31と、押圧部材31との間に定着ベルト21を挟持し、定着ベルト21との間にシートSが挟持搬送される加圧領域Nを形成する加圧ローラー27と、定着ベルト21の外周面に対向し、定着ベルト21を加熱するIHヒーター23と、定着ベルト21の内周面に接触して定着ベルト21を支持する支持部材32と、を備える。
【0046】
図9Bに示される定着装置5Bは、筒状の定着ベルト21と、定着ベルト21の内径よりも小さな外径を有し、定着ベルト21の内周面側に設けられた押圧ローラー41と、押圧ローラー41との間に定着ベルト21を挟持し、定着ベルト21との間にシートSが挟持搬送される加圧領域Nを形成する加圧ローラー27と、定着ベルト21の外周面に対向し、定着ベルト21を加熱するIHヒーター23と、定着ベルト21の内周面に接触して定着ベルト21を支持する支持部材42と、を備える。
【0047】
図9Cに示される定着装置5Cは、押圧ローラー51と、支持ローラー52と、押圧ローラー51と支持ローラー52とに巻き掛けられた筒状の定着ベルト21と、押圧ローラー51との間に定着ベルト21を挟持し、定着ベルト21との間にシートSが挟持搬送される加圧領域Nを形成する加圧ローラー27と、定着ベルト21の外周面に対向し、定着ベルト21を加熱するIHヒーター23と、を備える。
【0048】
定着装置5A、5B、5Cに備えられたIHヒーター23は、上記実施形態と同様のコイル23C、ホルダー23H及び凸部23Pを備える。これらの構成によっても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0049】
上記実施形態では、複数の凸部23Pが、定着ベルト21の回転方向Bに等間隔で形成されるとともに、加圧ローラー27の軸方向Aに等間隔で形成されている例が示されたが、複数の凸部23Pの間隔は等間隔でなくてもよい。例えば、ホルダー23Hと定着ベルト21との間隙の回転方向B下流側ほど、巻き込まれたシートSが到達する頻度が低下するため、回転方向B下流側ほど複数の凸部23Pの回転方向Bの間隔が増大していてもよい。また、軸方向Aのサイズが異なる複数種類のシートSが使用される場合、軸方向Aの中央部から遠くなるにつれてシートSが通過する頻度が低下する。また、シートSの軸方向Aの両端部には余白が設定されているため、軸方向Aの中央部から遠くなるにつれてシートS上にトナーが存在する確率が低下する。そのため、軸方向Aの中央部から遠くなるにつれて複数の凸部23Pの軸方向Aの間隔が増大していてもよい。
【0050】
上記実施形態では、右方から見て矩形格子の格子点に相当する位置に複数の凸部23Pが形成されている例が示されたが、斜方格子や六角格子の格子点に相当する位置に複数の凸部23Pが形成されていてもよい。また、複数の凸部23Pが不規則な配置で形成されていてもよい。この構成によっても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0051】
上記実施形態では、ホルダー23Hの内面に複数の凸部23Pが形成されている例が示されたが、ホルダー23Hの内面に凸部23Pが1つだけ形成されていてもよい。例えば、つづら折り状に形成された1本のリブ状の凸部23Pが形成されていてもよい。この構成によっても、上記実施形態に近い効果が得られる。
【0052】
上記実施形態では、分離部材25を備える定着装置5に本発明が適用された例が示されたが、分離部材25を備えない定着装置5に本発明が適用されてもよい。
【0053】
上記実施形態では、加熱部としてホルダー23Hにコイル23Cが保持されたIHヒーター23を備える定着装置5に本発明が適用された例が示されたが、IHヒーター23に代えて、ホルダー23Hにハロゲンヒーター、カーボンヒーター等の熱源が保持された加熱部を備える定着装置5に本発明が適用されてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 プリンター(画像形成装置)
4 作像装置
5 定着装置
21 定着ベルト(定着部材)
23 IHヒーター(誘導加熱部)
23C コイル
23H ホルダー
23P 凸部
27 加圧ローラー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C