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  • 特許-ブーム支持構造 図1
  • 特許-ブーム支持構造 図2
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  • 特許-ブーム支持構造 図4
  • 特許-ブーム支持構造 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】ブーム支持構造
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/82 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
B66C23/82 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019195355
(22)【出願日】2019-10-28
(65)【公開番号】P2021066593
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 和弘
(72)【発明者】
【氏名】清水 健司
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-001699(JP,A)
【文献】特開2009-184818(JP,A)
【文献】特開2012-062176(JP,A)
【文献】米国特許第04185426(US,A)
【文献】実開昭61-178800(JP,U)
【文献】特開2018-193247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線と配管の少なくとも一方が側面に配置されるブームと、
前記ブームの下面から前記側面にかけて延在して前記ブームを支持する板状のブーム支持部と、を備え、
前記ブーム支持部は、本体部と、先端部と、曲げ部と、を備え、前記本体部は前記ブームの軸方向に直交する方向に延在し、前記先端部は前記本体部の先端から前記軸方向の基端側に延在し、前記曲げ部は前記先端部を前記配線と前記配管の少なくとも一方の手前で前記本体部の先端から曲げている
ことを特徴とする、ブーム支持構造。
【請求項2】
前記ブーム支持部の前記本体部は、前記ブームを起伏する起伏シリンダが接続された起伏支点より、前記ブームの先端側に設けられ、
前記ブーム支持部の前記先端部は、前記起伏支点を超えずに前記基端側に延在する
ことを特徴とする、請求項1に記載のブーム支持構造。
【請求項3】
前記ブーム支持部の前記本体部は、前記ブームを起伏する起伏シリンダが接続された起伏支点より、前記ブームの先端側に設けられ、
前記ブーム支持部の前記先端部は、前記起伏支点を超えて前記基端側に延在する
ことを特徴とする、請求項1に記載のブーム支持構造。
【請求項4】
前記曲げ部は、前記ブームの中立軸の手前に設けられる
ことを特徴とする、請求項1から3のうちいずれか1項に記載のブーム支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブーム支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クレーン等のブームを支持する板状のブーム支持部がブームに取り付けられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、応力の分散を図る補強リブがアーム部に設けられている構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-348903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、クレーン等の作業車両では、一般的に、ブームの側面に配線や配管が取り付けられる。しかし、特許文献1に記載の構成では、配線をアーム部の側面に取り付ける際に、補強リブを回避して配置しなければならない、という問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、ブームを支持するブーム支持部を回避することなく、ブームの側面に配線や配管を配置することができるブーム支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明のブーム支持構造は、配線と配管の少なくとも一方が側面に配置されるブームと、前記ブームの下面から前記側面にかけて延在して前記ブームを支持する板状のブーム支持部と、を備え、前記ブーム支持部は、本体部と、先端部と、曲げ部と、を備え、前記本体部は前記ブームの軸方向に直交する方向に延在し、前記先端部は前記本体部の先端から前記軸方向の基端側に延在し、前記曲げ部は前記先端部を前記配線と前記配管の少なくとも一方の手前で前記本体部の先端から曲げていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように構成された本発明のブーム支持構造は、ブームを支持するブーム支持部を回避することなく、ブームの側面に配線や配管を配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1のクレーンを示す側面図である。
図2】実施例1の基端ブームに取り付けられた支持ブラケットを示す側面図である。
図3】実施例1の支持ブラケットと起伏シリンダを示す斜視図である。
図4】ブームに働く曲げモーメントを示すモーメント線図である。
図5】別の実施例の支持ブラケットを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明によるブーム支持構造を実現する実施形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
実施例1におけるブーム支持構造は、クレーンとしてのラフテレーンクレーン(以下、単にクレーンという)に適用される。
【0012】
[クレーンの構成]
図1は、実施例1のクレーンを示す側面図である。以下、実施例1のクレーンの構成を説明する。なお、ブーム30の軸方向を軸方向Dとする。
【0013】
図1に示すように、クレーン1は、走行体10と、旋回体20と、ブーム30とを備える。
【0014】
走行体10は、アウトリガー11と、道路や作業現場を自走するための走行装置等を備える。
【0015】
アウトリガー11は、作業時に、水平方向及び垂直方向に張り出し、車体全体を持ち上げて、姿勢を安定させる。
【0016】
旋回体20は、走行体10の上方に設けられ、走行体10に対して、鉛直軸C1回りに回転可能となっている。旋回体20は、キャビン21を備える。キャビン21は、走行体10の走行を制御するための操作部(例えば、ステアリング、シフトレバー、アクセルペダル、及びブレーキペダル等)を有する。また、キャビン21は、旋回体20やブーム30やウインチ等を操作する操作部を有する。キャビン21に搭乗した作業者は、操作部を操作して、旋回体20を旋回させ、ブーム30を起伏及び伸縮させ、ウインチを回転させて作業を行う。
【0017】
ブーム30は、基端側の基端ブーム31と、中間ブーム32と、先端側の先端ブーム33と、を備える。中間ブーム32と先端ブーム33は、順次、基端ブーム31の内部に格納される入れ子式になっている。
【0018】
基端ブーム31は、基端側が、根元支点23を介して、旋回体20に支持される。基端ブーム31の下面には、支持ブラケット40が取り付けられる。支持ブラケット40は、起伏支点24を介して、旋回体20に設けられた起伏シリンダ22に支持される。
【0019】
起伏シリンダ22が伸縮することで、根元支点23を介して、ブーム30は起伏し、伸縮シリンダ(不図示)が伸縮することによって、ブーム30が伸縮する。
【0020】
先端ブーム33には、アクチュエータとしてのカメラ70が取り付けられる。カメラ70は、先端ブーム33からの映像を撮影する。
【0021】
基端ブーム31の外周面の側面の基端側に、リール25が取り付けられる。リール25は、配線26の巻取りや引き出し(繰り出し)を可能にする。
【0022】
図1及び図2に示すように、配線26は、ブーム30の側面に、軸方向Dに沿って配置され、保持部材(ガイド部材)27によって保持される。すなわち、配線26は、保持部材27を介して、ブーム30の側面に取り付けられる。配線26は、中立軸Nの近傍に配置される。中立軸Nとは、ブーム30の断面の重心を通る軸であり、ブーム30に曲げモーメントをかけた場合に、伸び縮みの少ない軸である。なお、配線26に替えて、配管を設けることもできるし、配線26に沿うように配線26の近傍に配管を設けることもできる。
【0023】
配線26は、電源ケーブルや信号ケーブルとすることができる。配線26の先端は、カメラ70に接続される。
【0024】
図1に示すように、先端ブーム33の先端に設けられたブームヘッド33aには、シーブ34が配置されている。旋回体20の、ブーム30の基端近くに設けられたウインチには、吊り荷用のワイヤロープ35が巻かれている。ワイヤロープ35は、ウインチからシーブ34までブーム30の軸方向Dに沿って配置され、シーブ34に掛け回されたワイヤロープ35は、シーブ34から鉛直方向の下方に吊り下げられる。ワイヤロープ35の最下部には、フック36が設けられている。
【0025】
フック36に荷物が吊られ、ウインチに巻かれたワイヤロープ35を繰り出すことで、フック36が降下し、ワイヤロープ35を巻き上げることで、フック36は上昇する。
【0026】
このように構成されたクレーン1は、ウインチによるワイヤロープ35の繰り出し・巻き上げ、ブーム30の起伏及び伸縮、並びに旋回体20の旋回により、フック36に吊られた荷物を所定の位置に移動させる。
【0027】
[支持ブラケットの構成]
図2は、実施例1の基端ブーム31に取り付けられた支持ブラケットを示す側面図である。図3は、実施例1の支持ブラケットと起伏シリンダを示す斜視図である。以下、実施例1の支持ブラケットの構成を説明する。
【0028】
図2及び図3に示すように、支持ブラケット40は、例えば、溶接等によって、基端ブーム31に取り付けられる。支持ブラケット40は、対向する一対の支持プレート42と、ブーム支持部41と、を備える。
【0029】
支持プレート42は、鋼板で板状に形成される。支持プレート42は、起伏支点24を介して、起伏シリンダ22の一端に回転可能に接続される。
【0030】
ブーム支持部41は、鋼板で板状に形成され、支持プレート42の軸方向Dの先端側に、溶接等によって接続される。ブーム支持部41は、本体部41aと、先端部41bと、曲げ部41cと、を備える。
【0031】
本体部41aは、軸方向Dにおいて、起伏支点24の先端側に配置される。本体部41aは、基端ブーム31の下面から側面にかけて、軸方向Dに直交する方向に延在して、基端ブーム31を支持する。
【0032】
本体部41aは、基端ブーム31の下面から中立軸Nの手前まで延在する。すなわち、本体部41aは、基端ブーム31の下面から、中立軸Nの手前の側面の位置までを囲むように形成されて、基端ブーム31を支持する。本体部41aは、上方に向かうにしたがって末広がりに形成される。
【0033】
先端部41bは、本体部41aの先端から、曲げ部41cを介して、軸方向Dの基端側に延在する。先端部41bは、起伏支点24を超えて、軸方向Dの基端側に延在する。曲げ部41cは、所定の大きさの半径を有するように曲げられて形成される。
【0034】
すなわち、先端部41bは、中立軸Nの手前で曲げられて形成される。つまり、曲げ部41cは、中立軸Nの手前に設けられる。
【0035】
言い換えると、先端部41bは、中立軸Nの付近に取り付けられた配線26の手前で曲げられて形成される。つまり、曲げ部41cは、中立軸Nの付近に取り付けられた配線26の手前に設けられる。
【0036】
図2に示すように、ブーム支持部41には、軸方向Dで先端側に、ブーム支持部41を補強する補強プレート43が取り付けられる。補強プレート43は、側面視で略三角形に形成される。補強プレート43は、基端ブーム31の外周面と、ブーム支持部41の先端側の面とに、溶接等によって取り付けられる。
【0037】
このように構成された支持ブラケット40は、起伏シリンダ22からの入力荷重を基端ブーム31へ伝達する。この際、本体部41aが上方に向かうにしたがって末広がりに形成されることで、起伏シリンダ22からの力を、基端ブーム31の広い範囲で分散させることができる。
【0038】
[ブーム支持構造の作用]
以下、実施例1のブーム支持構造の作用を説明する。
【0039】
実施例1のブーム支持構造は、配線26と配管の少なくとも一方が側面に配置されるブーム30と、ブーム30の下面から側面にかけて延在してブーム30を支持する板状のブーム支持部41と、ブーム支持部41の先端部41bを配線26と配管の少なくとも一方の手前で曲げた曲げ部41cと、を備える(図2)。
【0040】
これにより、配線26や配管を、ブーム支持部41に邪魔されることなく、配置することができる。そのため、配線26や配管をブーム30の側面に取り付けやすくすることができる。
【0041】
また、配線26や配管を一直線に配置することができるので、配線26や配管の見栄えを良くすることができる。
【0042】
また、ブーム支持部41が曲げ部41cを有することで、曲げ部41cで応力を分散させ、ブーム支持部41の先端部41bへの応力集中を緩和することができる。
【0043】
実施例1のブーム支持構造では、ブーム支持部41は、ブーム30を起伏する起伏シリンダ22が接続された起伏支点24より、ブーム30の先端側に設けられ、ブーム支持部41の先端部41bは、起伏支点24を超えて基端側に延在する(図2及び図3)。
【0044】
ところで、図4に示すブームに働く曲げモーメントを示すモーメント線図から分かるように、荷物をフック36で吊った際、起伏支点24より基端側は、起伏支点24より先端側と逆の曲げモーメントが働く。そして、起伏支点24の基端側に働く曲げモーメントは、起伏支点24の先端側より、低下する。
【0045】
実施例1では、先端部41bが起伏支点24を超えて基端側に延在することで、ブーム支持部41の先端部41bの先端縁を、曲げモーメントが低い場所に着地させることができる。その結果、ブーム支持部41の先端部41bとブーム30の接続部の近傍に生じる応力集中を回避して、溶接割れ等を防ぐことができる。
【0046】
実施例1のブーム支持構造では、曲げ部41cは、ブーム30の中立軸Nの手前に設けられる(図2)。
【0047】
ところで、ブーム30が荷物を吊ると、ブーム30は荷物の重さで変形する。このブーム30の変形量は、ブーム30の中立軸Nから遠ざかる程、大きくなる。
【0048】
実施例1では、曲げ部41cを中立軸Nの手前に設けることで、配線26や配管をブーム30の中立軸Nの付近に設けることができる。そのため、ブーム30の曲げモーメントの影響が小さい中立軸Nの付近に、配線26や配管を設けることができる。その結果、配線26の断線や配管からの油漏れ等を防ぐことができる。
【0049】
以上、本発明のブーム支持構造を実施例1に基づき説明してきた。しかし、具体的な構成については、この実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や、追加等は許容される。
【0050】
実施例1では、先端部41bは、起伏支点24を超えて、軸方向Dの基端側に延在する例を示した。しかし、図5に示すように、先端部41bは、起伏支点24を超えずに、起伏支点24の手前まで、軸方向Dの基端側に延在してもよい。この場合、ブーム支持部41の全長を短くすることができ、軽量化をすることができる。
【0051】
実施例1では、ブーム支持部41は、起伏シリンダ22に接続される例を示した。しかし、ブーム支持部は、起伏シリンダ22に接続されないものであってもよい。
【0052】
実施例1では、先端ブーム33にアクチュエータとしてのカメラ70が取り付けられる例を示した。しかし、先端ブームには、アクチュエータとしての検出器等が取り付けられてもよい。
【0053】
実施例1では、配線26は、1本取り付け得られる例を示した。しかし、配線は、2本以上取り付けられてもよいし、配管が取り付けられてもよい。
【0054】
実施例1では、本発明をラフテレーンクレーン車に適用する例を示した。しかし、本発明は、ブームと配線や配管を備える作業車両に適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 クレーン
24 起伏支点
26 配線
30 ブーム
41 ブーム支持部
41b 先端部
41c 曲げ部
N 中立軸
図1
図2
図3
図4
図5