(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】インクジェット用の活性線硬化型インクおよび画像形成方法
(51)【国際特許分類】
C09D 11/322 20140101AFI20231108BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20231108BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
C09D11/322
B41J2/01 129
B41J2/01 501
B41J2/01 101
B41M5/00 120
B41M5/00 100
(21)【出願番号】P 2019199724
(22)【出願日】2019-11-01
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 陽平
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-148044(JP,A)
【文献】特開2019-104866(JP,A)
【文献】特開2014-076653(JP,A)
【文献】特開2017-007116(JP,A)
【文献】特開2019-005921(JP,A)
【文献】特開2020-015299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00-11/30
B41J 1/00-2/525
B41M 5/00-5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性線重合性化合物と、セルロースナノファイバーと、
顔料と、を含有
し、
前記セルロースナノファイバーは、セルロースが有する水酸基の一部が疎水基で置換されており、
前記疎水基は、炭素数3~10の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有し、
前記顔料の全質量に対する前記セルロースナノファイバーの全質量の割合(セルロースナノファイバー/顔料)は、0.01~0.1である、
インクジェット用の活性線硬化型インク。
【請求項2】
前記疎水基は、前記アルキル基が前記セルロースとエーテル結合してなる官能基である、請求項
1に記載のインクジェット用の活性線硬化型インク。
【請求項3】
前記セルロースナノファイバーに含まれる水酸基のうち、30~70質量%の前記水酸基が前記疎水基で置換されている、請求項
1または請求項
2に記載のインクジェット用の活性線硬化型インク。
【請求項4】
前記セルロースナノファイバーの繊維幅は1~10nmであり、前記セルロースナノファイバーの繊維長は1μm以下である、請求項1~
3のいずれか一項に記載のインクジェット用の活性線硬化型インク。
【請求項5】
ゲル化剤を含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載のインクジェット用の活性線硬化型インク。
【請求項6】
インクジェットヘッドから、請求項1~
5のいずれか一項に記載のインクジェット用の活性線硬化型インクを吐出して、前記吐出されたインクジェット用の活性線硬化型インクを、記録媒体または中間転写体の表面に着弾させる工程と、
前記着弾したインクジェット用の活性線硬化型インクに活性線を照射する工程と、
を含む、画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用の活性線硬化型インクおよび画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット法は、簡便かつ安価に画像を作製できるため、各種印刷、マーキング、細線形成、カラーフィルター等の特殊印刷を含む様々な印刷分野に応用されている。特に、インクジェット法は、版を用いずデジタル印刷が可能であるため、多様な画像を少量ずつ形成するような用途に特に好適である。
【0003】
インクジェットインクの一種として、活性線を照射されることで硬化する活性線重合性化合物を液体成分として含有するインク(以下、単に「活性線硬化型インク」ともいう。)が知られている。活性線硬化型インクの液滴を記録媒体の表面に着弾させ、着弾した液滴に活性線を照射すると、インクの液滴が硬化してなるドットが集合してなる硬化膜が記録媒体の表面に形成される。この硬化膜を形成していくことで、所望の画像を形成することができる。また、活性線硬化型インクを用いて形成された画像は、耐水性が高いことから屋外の看板などに用いられることが多いことから、活性線硬化型インクを用いて形成された画像は、耐水性だけでなく屋外で使用可能な耐光性も求められている。
【0004】
インクジェット用の活性線硬化型インクに、セルロース樹脂を含有させて、印刷後の色相の変化を抑制させる方法が提案されている。たとえば、特許文献1には、水酸基を有するアシル化セルロースを含む金属粉含有活性エネルギー線硬化型インクが開示されている。特許文献1によると、上記金属粉含有活性エネルギー線硬化型インクは、印刷当初の色相を長期間維持できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の金属粉含有活性線硬化型インクでは、水酸基を有するアシル化セルロースを含有することにより、活性エネルギー線硬化型インクに含まれる金属粉の酸化を抑制して印刷物の色相を長期間維持することは達成しているが、当該活性エネルギー線硬化型インクを用いた画像は所望する耐光性を有していなかった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、耐光性に優れる画像を形成できるインクジェット用の活性線硬化型インクおよび当該活性線硬化型インクを用いる画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の一実施の形態に係るインクジェット用の活性線硬化型インクは、活性線重合性化合物と、セルロースナノファイバーと、色材と、を含有する。
【0009】
また、上記課題を解決するため、本発明の一実施の形態に係る画像形成方法は、インクジェットヘッドから、上記インクジェット用の活性線硬化型インクを吐出して、前記吐出されたインクジェット用の活性線硬化型インクを、記録媒体または中間転写体の表面に着弾させる工程と、前記着弾したインクジェット用の活性線硬化型インクに活性線を照射する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐光性に優れる画像を形成できるインクジェット用の活性線硬化型インクを提供すること、および当該活性線硬化型インクを用いる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の例示的な構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
1.活性線硬化型インク
本発明の実施の形態に係るインクジェット用の活性線硬化型インクは、活性線重合性化合物と、セルロースナノファイバーと、色材と、を含有する。また、本発明の実施の形態に係るインクジェット用の活性線硬化型インクは、ゲル化剤を含むことが好ましい。
【0014】
1-1.セルロースナノファイバー
本発明の実施の形態に係るインクジェット用の活性線硬化型インクは、セルロースナノファイバーを含有する。セルロースナノファイバーとは、植物細胞壁由来のセルロース繊維をナノレベルにまで解繊した繊維である。本実施の形態に係るセルロースナノファイバーの原料は、特に限定されない。セルロースナノファイバーは、側鎖に有する水素結合によりファイバー同士による三次元のネットワーク構造を構成することから、高い増粘性や乳化安定性、分散安定性を有する。
【0015】
本実施の形態に係るセルロースナノファイバーの繊維幅は1~10nmであることが好ましく、6~8nmであることがより好ましい。また、上記セルロースナノファイバーの繊維長は1μm以下であることが好ましい。上記セルロースナノファイバーの繊維幅および繊維長が上記範囲内であると、色材(たとえば顔料)の表面にセルロースナノファイバーが高密度に吸着して、顔料の表面に立体障害を生じさせる。これにより、活性線硬化型インクの退色の原因となる物質(たとえば一重項酸素)が顔料に到達するのを阻害して、活性線硬化型インクを用いて形成される画像の退色を抑制することができる。これにより、活性線硬化型インクを用いて形成される画像の耐光性を向上させることができる。
【0016】
上記セルロースナノファイバーの繊維幅の測定は以下の方法で行うことができる。観察条件や倍率は下記の条件を満たすように調整する。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、直線Xに対し、20本以上の微細セルロース繊維が交差する。
(2)同じ画像内で直線と垂直に交差する直線Yを引き、直線Yに対し、20本以上の微細セルロース繊維が交差する。
上記条件を満足する観察画像に対し、直線X、直線Yと交錯する微細セルロース繊維の幅を目視で読み取る。こうして異なる観察画像を3枚以上観察し、各々の画像に対して、直線X、直線Yと交錯する微細セルロース繊維の幅を読み取る。このようにして少なくとも20本×2×3=120本の繊維幅を読み取る。本実施の形態に係るセルロースナノファイバーの平均繊維幅は、このように読み取った繊維幅の平均値である。
【0017】
また、セルロースナノファイバーの繊維長の測定は、長さ加重平均繊維長の測定により行うことができる。たとえば、カヤーニオートメーション社のカヤーニ繊維長測定器(FS-200形)を用いて測定することができる。なお、平均繊維長の測定は上記の装置に限られず、同等品を使用して測定することもできる。少なくとも120本の微細セルロース繊維の繊維長を測定し、その平均値を平均繊維長とする。
【0018】
また、本実施の形態に係るセルロースナノファイバーは、セルロースが有する水酸基の一部が疎水基で置換されていることが好ましく、上記疎水基が炭素数3~10の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有することがより好ましい。また、上記疎水基は、上記アルキル基がセルロースとエーテル結合してなる官能基であることが好ましい。また、セルロースナノファイバーに含まれる水酸基のうち、30~70質量%の水酸基が、上記疎水基(炭素数3~10の直鎖または分岐鎖状のアルキル基)で置換されていることが好ましい。なお、疎水基は1個の水酸基を有してもよい。上記疎水基は、炭素数3~7の直鎖または分岐鎖状のアルキル基であることが好ましく、炭素数3~5の直鎖または分岐鎖状のアルキル基であることがより好ましい。
【0019】
上記セルロースナノファイバーに含まれる水酸基のうち、30~70質量%の水酸基を上記疎水基で置換することにより、親水性、疎水性のバランスが良好なものとすることができる。セルロースナノファイバーに含まれる水酸基のうち、30質量%以上の水酸基を上記疎水基で置換することにより、親水性である活性線重合性化合物との相互作用を弱くして、顔料との相互作用を強くすることができる。顔料との相互作用が強くなることで、顔料の表面にセルロースナノファイバーが高密度に吸着して、顔料の表面に立体障害を生じさせる。これにより、活性線硬化型インクを用いて形成される画像の退色の原因となる物質(たとえば一重項酸素)が顔料に到達するのを阻害し、活性線硬化型インクの退色を抑制することができる。これにより、活性線硬化型インクを用いて形成される画像の耐光性を向上させることができる。
【0020】
また、セルロースナノファイバーに含まれる水酸基のうち、70質量%以下の水酸基を上記疎水基で置換することにより、活性線重合性化合物との相溶性が低下しにくいので、セルロースナノファイバーが凝集して活性線硬化型インクの粘度が過度に上昇するのを抑制できる。これにより、活性線硬化型インクの吐出を安定して行えるので、高精細な画像を形成することができる。また、70質量%以下の水酸基を上記疎水基で置換することにより、顔料の分散安定性が高まり、顔料粒子同士の凝集を抑制できる。これにより、活性線硬化型インクの吐出を安定して行えるので、高精細な画像を形成することができる。
【0021】
疎水化セルロースナノファイバーを製造する方法は特に限定されないが、公知の方法(例えば特開2019-007117号公報)に従って行うことができる。製造方法としては、シート状のセルロース繊維集合体に対しエーテル化剤を含む薬液を含浸させ、得られた薬液含浸シートを加圧下、加熱攪拌することでエーテル化反応を行う工程(疎水化工程)を含むものが好ましい。この疎水化工程により、疎水化セルロースナノファイバーが得られる。また、疎水化工程により得られた疎水化セルロース繊維に対し、機械的に解繊する工程(微細化工程)を行ってもよい。疎水化セルロース繊維を機械的に解繊することにより、疎水化したセルロースナノファイバーを得ることができる。
【0022】
セルロースナノファイバーに含まれる水酸基の疎水化率の算出は、脱溶媒処理後における未乾燥のセルロースナノファイバーをトリアセチル化処理した後、生成したセルロース誘導体をNMRで定量して、以下の式(1)で算出することができる。詳細には、9mLスクリュー管にセルロースナノファイバー(50mg)、酢酸(1mL)、トルエン(1mL)、60%過塩素酸(5μL)を入れて攪拌した後、無水酢酸(0.5mL)を投入し室温中2時間攪拌を行う。繊維形状が消失し溶解したことを確認した後、水を投入し反応を停止し、これを20質量%メタノール/ジクロロメタン溶液に希釈させ、トリエチルアミンで中和する。この溶液を水中に投入して、セルロース誘導体を沈殿させ、その沈殿物を回収する。回収した沈殿物を乾燥(50℃、2時間)させた後、NMR用溶媒に溶解させ1HNMR分析(溶媒:d-DMSO、積算回数:64回)を行う。
【0023】
【0024】
また、色材(たとえば顔料)の全質量に対するセルロースナノファイバーの全質量の割合(セルロースナノファイバー/色材)は、0.01~0.1であることが好ましく、0.04~0.07であることがより好ましい。色材の全質量に対するセルロースナノファイバーの全質量の割合が0.01以上であると、顔料の表面をセルロースナノファイバーで十分に覆うことができるので、活性線硬化型インクを用いて形成される画像の退色の原因となる物質(たとえば一重項酸素)が顔料に到達するのを阻害し、活性線硬化型インクの退色を抑制することができる。これにより、活性線硬化型インクを用いて形成される画像の耐光性を向上させることができる。また、色材の全質量に対するセルロースナノファイバーの全質量の割合が0.1以下であると、セルロースナノファイバーが凝集して活性線硬化型インクの粘度が過度に上昇するのを抑制できる。これにより、活性線硬化型インクの吐出を安定して行えるので、高精細な画像を形成することができる。
【0025】
本発明の実施の形態に係る活性線硬化型インクがセルロースナノファイバーを含有することにより、上記活性線硬化型インクがゲル化剤(後述)を含む場合であっても、ゲル化剤のブルーミングを抑制することができる。これにより、高精細な画像を形成することができる。
【0026】
1-2.活性線重合性化合物
本実施の形態に係る活性線硬化型インクは、活性線重合性化合物を含む。本実施の形態に係る活性線重合性化合物は、活性線の照射により架橋または重合する化合物である。活性線の例には、紫外線、電子線、エックス線、α線およびγ線などが含まれる。上記活性線の中では、紫外線が好ましい。上記活性線重合性化合物の例には、ラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物、またはそれらの混合物が含まれる。上記活性線重合性化合物の中では、ラジカル重合性化合物が好ましい。なお、上記活性線重合性化合物は、モノマー、重合性オリゴマー、プレポリマーおよびこれらの混合物のいずれであってもよい。
【0027】
ラジカル重合性化合物とは、分子中にエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物である。ラジカル重合性化合物は、単官能または多官能の化合物でありうる。ラジカル重合性化合物の例には、不飽和カルボン酸エステル化合物である、(メタ)アクリレートが含まれる。なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタアクリレートを意味し、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基またはメタアクリロイル基を意味し、「(メタ)アクリル」は、アクリルまたはメタクリルを意味する。
【0028】
単官能の(メタ)アクリレートの例には、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミルスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル-ジグリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸およびt-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートが含まれる。
【0029】
多官能の(メタ)アクリレートの例には、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートおよびトリプロピレングリコールジアクリレートなどの2官能の(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの3官能の(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレートなどの3官能以上の(メタ)アクリレート;ポリエステルアクリレートオリゴマーを含む(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマー、ならびにこれらの変性物などが含まれる。上記変性物の例には、エチレンオキサイド基を挿入したエチレンオキサイド変性(EO変性)アクリレート、およびプロピレンオキサイドを挿入したプロピレンオキサイド変性(PO変性)アクリレートが含まれる。
【0030】
また、カチオン重合性化合物とは、分子中にカチオン重合性基を有する化合物である。カチオン重合性化合物の例には、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物およびオキセタン化合物などが含まれる。
【0031】
上記エポキシ化合物の例には、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンモノエポキサイド、ε-カプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1-メチル-4-(2-メチルオキシラニル)-7-オキサビシクロ[4,1,0]ヘプタン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサノン-メタ-ジオキサンおよびビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテルなどの脂環式エポキシ樹脂、1,4-ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、およびグリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種類または2種類以上のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドなど)を付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテルなどを含む脂肪族エポキシ化合物、ならびに、ビスフェノールAまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、およびノボラック型エポキシ樹脂などを含む芳香族エポキシ化合物などが含まれる。
【0032】
上記ビニルエーテル化合物の例には、エチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル-o-プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、およびオクタデシルビニルエーテルなどを含むモノビニルエーテル化合物、ならびにエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、およびトリメチロールプロパントリビニルエーテルなどを含むジまたはトリビニルエーテル化合物などが含まれる。
【0033】
上記オキセタン化合物の例には、3-ヒドロキシメチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-ノルマルブチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-ベンジルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシブチル-3-メチルオキセタン、1,4ビス{[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタンおよびジ[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテルなどが含まれる。
【0034】
上記活性線重合性化合物の含有量は、例えば、活性線硬化型インクの全質量に対して1.0質量%以上97質量%以下であることが好ましく、30質量%以上90質量%以下とすることがより好ましい。
【0035】
1-3.重合開始剤
本実施の形態に係る活性線硬化型インクは、重合開始剤を含むことができる。上記重合開始剤は、活性線の照射により、上記活性線重合性化合物の重合を開始できるものであればよい。たとえば、上記活性線硬化型インクがラジカル重合性化合物を有するときは、重合開始剤は光ラジカル開始剤とすることができ、上記活性線硬化型インクがカチオン重合性化合物を有するときは、重合開始剤は光カチオン開始剤(光酸発生剤)とすることができる。
【0036】
ラジカル重合開始剤には、分子内結合開裂型のラジカル重合開始剤と分子内水素引き抜き型のラジカル重合開始剤とが含まれる。
【0037】
分子内結合開裂型のラジカル重合開始剤の例には、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、および2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノンなどを含むアセトフェノン系の開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、およびベンゾインイソプロピルエーテルなどを含むベンゾイン類、2,4,6-トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシドなどを含むアシルホスフィンオキシド系の開始剤、ならびに、ベンジルおよびメチルフェニルグリオキシエステルなどが含まれる。
【0038】
分子内水素引き抜き型のラジカル重合開始剤の例には、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、および3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノンなどを含むベンゾフェノン系の開始剤、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントンなどを含むチオキサントン系の開始剤、ミヒラーケトン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノンなどを含むアミノベンゾフェノン系の開始剤、10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアンスラキノン、9,10-フェナンスレンキノン、ならびにカンファーキノンなどが含まれる。
【0039】
カチオン系の重合開始剤の例には、光酸発生剤が含まれる。光酸発生剤の例には、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、およびホスホニウムなどを含む芳香族オニウム化合物のB(C6F5)4
-、PF6
-、AsF6
-、SbF6
-、CF3SO3
-塩など、スルホン酸を発生するスルホン化物、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物、ならびに鉄アレン錯体などが含まれる。
【0040】
上記重合開始剤の含有量は、紫外線の照射によって活性線硬化型インクが十分に硬化し、かつ活性線硬化型インクの射出性を低下させない範囲において、任意に設定することができる。たとえば、上記重合開始剤の含有量は、活性線硬化型インクの全質量に対して、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上12質量%以下であることがより好ましい。
【0041】
1-4.ゲル化剤
本実施の形態に係る活性線硬化型インクは、ゲル化剤を含むことができる。ゲル化剤は、常温では固体であるが、加熱すると液体となることにより、上記活性線硬化型インクを温度変化に応じてゾルゲル相変移させることができる有機物である。
【0042】
また、上記ゲル化剤は、インクのゲル化温度以下の温度で、インク中で結晶化することが好ましい。ここで、ゲル化温度とは、加熱によりゾル化または液体化したインクを冷却していったときに、インクがゾルからゲルに相転移し、インクの粘度が急変する温度をいう。具体的には、ゾル化または液体化したインクを、例えば、レオメータMCR300(Anton Paar社製)で粘度を測定しながら冷却していき、粘度が急激に上昇した温度を、そのインクのゲル化温度とすることができる。
【0043】
上記ゲル化剤がインク中で結晶化すると、板状に結晶化した上記ゲル化剤およびワックスによって形成された三次元空間に活性線重合性化合物が内包される構造が形成されることがある(このような構造を、以下「カードハウス構造」という)。カードハウス構造が形成されると、液体の活性線重合性化合物が上記空間内に保持されるため、インクが付着して形成されたドットがより濡れ広がりにくくなり、インクのピニング性がより高まる。インクのピニング性が高まると、インクが記録媒体に付着して形成されたドット同士が合一しにくくなる。
【0044】
ゲル化剤の例には、ジペンタデシルケトン、ジヘプタデシルケトン、ジリグノセリルケトン、ジベヘニルケトン、ジステアリルケトン、ジエイコシルケトン、ジパルミチルケトン、ジミリスチルケトン、ラウリルミリスチルケトン、ラウリルパルミチルケトン、ミリスチルパルミチルケトン、ミリスチルステアリルケトン、ミリスチルベヘニルケトン、パルミチルステアリルケトン、バルミチルベヘニルケトンおよびステアリルベヘニルケトン等の脂肪族ケトン化合物;パルミチン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸ベヘニル、イコサン酸イコシル、ステアリン酸ベヘニル、ステアリン酸パルミチル、ステアリン酸ラウリル、パルミチン酸ステアリル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸ステアリル、エルカ酸ステアリル、リノール酸ステアリル、オレイン酸ベヘニルおよびリノール酸アラキジル等の脂肪族エステル化合物;N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジブチルアミド、N-(2-エチルヘキサノイル)-L-グルタミン酸ジブチルアミド等のアミド化合物;1,3:2,4-ビス-O-ベンジリデン-D-グルシトール等のジベンジリデンソルビトール類;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等の石油系ワックス;キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油、ホホバ固体ロウ、およびホホバエステル等の植物系ワックス;ミツロウ、ラノリンおよび鯨ロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス、および水素化ワックス等の鉱物系ワックス;硬化ヒマシ油または硬化ヒマシ油誘導体;モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体またはポリエチレンワックス誘導体等の変性ワックス;ベヘン酸、アラキジン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、オレイン酸、およびエルカ酸等の高級脂肪酸;ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール;12-ヒドロキシステアリン酸等のヒドロキシステアリン酸;12-ヒドロキシステアリン酸誘導体;ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、12-ヒドロキシステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド;N-ステアリルステアリン酸アミド、N-オレイルパルミチン酸アミド等のN-置換脂肪酸アミド;N,N’-エチレンビスステアリルアミド、N,N’-エチレンビス-12-ヒドロキシステアリルアミド、およびN,N’-キシリレンビスステアリルアミド等の特殊脂肪酸アミド;ドデシルアミン、テトラデシルアミンまたはオクタデシルアミンなどの高級アミン;ステアリルステアリン酸、オレイルパルミチン酸、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル化合物;ショ糖ステアリン酸、ショ糖パルミチン酸等のショ糖脂肪酸エステル;ポリエチレンワックス、α-オレフィン無水マレイン酸共重合体ワックス等の合成ワックス;重合性ワックス;ダイマー酸;ダイマージオール等が含まれる。これらのワックスは、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0045】
上記ゲル化剤の含有量は、活性線硬化型インクの全質量に対して0.5質量%以上10.0質量%未満であることが好ましく、活性線硬化型インクの全質量に対して1.0質量%以上10.0質量%以下であることがより好ましく、活性線硬化型インクの全質量に対して2.0質量%以上7.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0046】
1-5.色材
本実施の形態に係る活性線硬化型インクは、色材を含む。色材には、顔料および染料が含まれる。インクの分散安定性をより高め、かつ耐候性が高い画像を形成する観点からは、色材は顔料であることが好ましい。
【0047】
顔料の例には、カラーインデックスに記載される下記の有機顔料および無機顔料が含まれる。本実施の形態に係る活性線硬化型インクにおいては、顔料は有機顔料であることが好ましい。
【0048】
赤またはマゼンタ顔料の例には、Pigment Red 3、5、19、22、31、38、43、48:1、48:2、48:3、48:4、48:5、49:1、53:1、57:1、57:2、58:4、63:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、88、104、108、112、122、123、144、146、149、166、168、169、170、177、178、179、184、185、208、216、226、257、PigmentViolet 3、19、23、29、30、37、50、および88、ならびにPigmentOrange 13、16、20、および36が含まれる。
【0049】
青またはシアン顔料の例には、pigment Blue 1、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17-1、22、27、28、29、36、および60が含まれる。
【0050】
緑顔料の例には、Pigment Green 7、26、36、および50が含まれる。
【0051】
黄顔料の例には、Pigment Yellow 1、3、12、13、14、17、34、35、37、55、74、81、83、93、94、95、97、108、109、110、137、138、139、153、154、155、157、166、167、168、180、185、および193が含まれる。
【0052】
黒顔料の例には、Pigment Black 7、26、および28が含まれる。
【0053】
染料の例には、各種の油溶性染料が含まれる。
【0054】
顔料または染料の含有量は、インクの全質量に対して0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.4質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。顔料または染料の含有量が、インクの全質量に対して0.1質量%以上であると、得られる画像の発色が十分となる。顔料または染料の含有量がインクの全質量に対して20質量%以下であると、インクの粘度が高まりすぎない。
【0055】
上記顔料は、必要に応じて分散助剤によって分散性を高められていてもよい。
【0056】
1-6.重合禁止剤
本実施の形態に係る活性線硬化型インクは、重合禁止剤を含有してもよい。
【0057】
上記重合禁止剤の例には、(アルキル)フェノール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、p-メトキシフェノール、t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、ピロガロール、1,1-ピクリルヒドラジル、フェノチアジン、p-ベンゾキノン、ニトロソベンゼン、2,5-ジ-t-ブチル-p-ベンゾキノン、ジチオベンゾイルジスルフィド、ピクリン酸、クペロン、アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリ-p-ニトロフェニルメチル、N-(3-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ジブチルクレゾール、シクロヘキサノンオキシムクレゾール、グアヤコール、o-イソプロピルフェノール、ブチラルドキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシムが含まれる。
【0058】
1-7.その他の成分
上記活性線硬化型インクには、必要に応じて他の成分がさらに含まれていてもよい。他の成分は、カチオン性の活性線重合性化合物、光酸発生剤、各種添加剤や他の樹脂等であってよい。添加剤の例には、界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、赤外線吸収剤、抗菌剤、インクの保存安定性を高めるための塩基性化合物等も含まれる。塩基性化合物の例には、塩基性アルカリ金属化合物、塩基性アルカリ土類金属化合物、アミンなどの塩基性有機化合物などが含まれる。他の樹脂の例には、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、およびゴム系樹脂等の硬化膜の物性を調整するための樹脂などが含まれる。
【0059】
1-8.活性線硬化型インクの物性
上記活性線硬化型インクの粘度は、40℃において、1×103mPa・s以上5×104mPa・s未満であることが好ましく、3×103mPa・s以上1×104mPa・s未満であることがより好ましい。インク付与時の中間転写体の温度における粘度が1×103mPa・s以上であると、中間転写体に付与された活性線硬化型インクの液滴が広がり難く、液滴同士が合一し難い。一方で、インク付与時の中間転写体の温度における粘度が5×104mPa・s未満であると、インクジェットヘッドからの吐出性が良好となる。
【0060】
また、インクジェットヘッドからの射出性をより高める観点からは、上記活性線硬化型インクの80℃における粘度は3mPa・s以上20mPa・s以下であることが好ましい。80℃における粘度が3mPa・s以上20mPa・s以下であると、インクジェットヘッドからの上記活性線硬化型組成物の射出時に組成物がゲル化しにくいため、より安定して上記活性線重合性化合物を射出することができる。また、活性線硬化型インクがゲル化剤を含有している場合には、着弾して常温に降温した際にインクを十分にゲル化させる観点から、上記活性線硬化型インクの25℃における粘度は1000mPa・s以上であることが好ましい。25℃における粘度が1000mPa・s以上であると、中間転写体に付与されたインク液滴が過剰に広がり難く、液滴同士が合一し難い。
【0061】
上記活性線硬化型インクの40℃における粘度および80℃における粘度は、レオメータにより、活性線硬化型インクを100℃に加熱し、ストレス制御型レオメータ(Anton Paar社製、Physica MCR301(コーンプレートの直径:75mm、コーン角:1.0°))によって粘度を測定しながら、剪断速度11.7(1/s)、降温速度0.1℃/sの条件で20℃までインクを冷却して得られた粘度の温度変化曲線において40℃および80℃における粘度をそれぞれ読み取ることにより求める。
【0062】
1-9.活性線硬化型インクの調製方法
上記活性線硬化型インクは、前述の活性線重合性化合物、セルロースナノファイバー、色材と、任意のその他の成分とを、加熱下において混合することにより調製することができる。この際、得られた混合液を所定のフィルターで濾過することが好ましい。なお、顔料を含有するインクを調製する際は、顔料、活性線重合性化合物を含む顔料分散液を調製し、その後、顔料分散液と他の成分とを混合することが好ましい。顔料分散液は、分散剤をさらに含んでもよい。
【0063】
上記顔料分散液は、活性線重合性化合物に顔料を分散して調製することができる。顔料の分散は、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカーなどを用いて行えばよい。このとき、分散剤を添加してもよい。
【0064】
2.画像形成方法
本発明の実施の形態に係る画像形成方法は、上述したインクジェット用の活性線硬化型インクを用いた、画像形成方法である。具体的には、本発明の画像形成方法は、インクジェットヘッドから、上述したインクジェット用の活性線硬化型インクの液滴を吐出して、吐出されたインクジェット用の活性線硬化型インクを、記録媒体または中間転写体の表面に着弾させる工程と、上記着弾して記録媒体に付与された上記インクジェット用の活性線硬化型インクに活性線を照射する工程と、を含む、画像形成方法である。
【0065】
活性線硬化型インクを吐出して、記録媒体または中間転写体の表面に着弾させる工程では、上述した活性線硬化型インクを、インクジェットヘッドから吐出する。
【0066】
互いに組成(たとえば、色材の種類または量)が異なる複数種の上記活性線硬化型インクの液滴を吐出して着弾させて、多色の画像を形成するときは、上記複数種の上記活性線硬化型インクの少なくとも一種が上記活性線硬化型インクである。なお、上記吐出する活性線硬化型インクのうち2以上のインクが上記活性線硬化型インクであること(互いに組成が異なる複数種の上記活性線硬化型インクの液滴が吐出されて記録媒体に着弾すること)が好ましい。上記観点からは、上記吐出する活性線硬化型インクのすべてが上記活性線硬化型インクであることがより好ましい。
【0067】
インクジェットヘッドは、オンデマンド方式およびコンティニュアス方式のいずれのインクジェットヘッドでもよい。オンデマンド方式のインクジェットヘッドの例には、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型およびシェアードウォール型を含む電気-機械変換方式、ならびにサーマルインクジェット型およびバブルジェット(バブルジェットはキヤノン株式会社の登録商標)型を含む電気-熱変換方式等が含まれる。
【0068】
また、インクジェットヘッドは、スキャン式およびライン式のいずれのインクジェットヘッドでもよい。
【0069】
このとき、インク液滴の吐出性を高めるために、インクジェットヘッド内の活性線硬化型インクを40~120℃に加熱して、上記加熱された活性線硬化型インクを吐出する。吐出安定性の観点から、インクジェットヘッド内の温度において、活性線硬化型インクの粘度は3mPa・s以上20mPa・s未満であることが好ましい。
【0070】
また、上記インクジェット用の活性線硬化型インクがゲル化剤を含むときは、インクジェットヘッド内の活性線硬化型インクの温度を、活性線硬化型インクのゲル化温度より10℃以上40℃未満高い温度に設定することが好ましい。インクジェットヘッド内の活性線硬化型インクの温度をゲル化温度+10℃以上にすることで、インクジェットヘッド内もしくはノズル表面で活性線硬化型インクがゲル化することがなく、活性線硬化型インクを良好に射出することができる。また、インクジェットヘッド内の活性線硬化型インクの温度を活性線硬化型インクのゲル化温度+40℃未満とすることで、インクジェットヘッドの熱的負荷を小さくすることができる。特に、ピエゾ素子を用いたインクジェットヘッドでは、熱的負荷による性能低下が生じやすいため、活性線硬化型インクの温度を上記範囲内とすることが特に好ましい。
【0071】
上記吐出した活性線硬化型インクは、記録媒体の表面に着弾される。
【0072】
記録媒体は、インクジェット法で画像を形成できる媒体であればよく、例えば、アート紙、コート紙、軽量コート紙、微塗工紙およびキャスト紙を含む塗工紙ならびに非塗工紙を含む吸収性の媒体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブタジエンテレフタレートを含むプラスチックで構成される非吸収性の記録媒体、中間転写体ならびに金属類およびガラス等の非吸収性の無機記録媒体とすることができる。各種プラスチックフィルムとしては、例えば、PPフィルム、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルム、PEフィルム、TACフィルムが使用できる。その他のプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類等が使用できる。また、金属類や、ガラス類にも適用可能である。なお、本発明のインクは、従来のインクよりも光沢度の高い画像を形成しうるものであるため、光沢が比較的高いコート紙などに好適である。
【0073】
上記インクジェット用の活性線硬化型インクがゲル化剤を含むときは、記録媒体の表面に着弾した活性線硬化型インクは、ゲル化剤が結晶化してピニングされる。これにより、インクが着弾して形成されたドットがより濡れ広がりにくくなり、インクが記録媒体または中間転写体に着弾して形成されたドット同士が合一するのを抑制する。
【0074】
このとき、インクのピニング性を高めるために、記録媒体の表面温度をゲル化剤のゲル化温度の付近またはそれ以下としてもよい。
【0075】
上記活性線硬化型インクが着弾した記録媒体の表面に活性線を照射する。上記活性線の例には、紫外線、電子線、エックス線、α線およびγ線などが含まれる。これらのうち、取り扱いの容易さおよび人体への影響の少なさの観点から、紫外線を照射することが好ましく、活性線硬化型インクを硬化させやすくする観点からは、電子線を照射することが好ましい。光源の輻射熱によって活性線硬化型インクが溶けることによる活性線硬化型インクの硬化不良の発生を抑制する観点から、紫外線の光源は発光ダイオード(LED)であることが好ましい。インクを硬化させるための活性線を照射することができるLED光源の例には、395nm、水冷LED、Phoseon Technology社製、Heraeus社製、京セラ株式会社製、HOYA株式会社製、およびIntegration Technology社製が含まれる。
【0076】
照射される活性線のエネルギーは、200mJ/cm2以上1000mJ/cm2であることが好ましい。上記エネルギーが200mJ/cm2以上だと、活性線重合性化合物を十分に重合および架橋させることができる。上記エネルギーが1000mJ/cm2以下だと、照射される活性線の熱によるワックスの再溶解によるピニング性の低下が生じにくくなる。上記観点からは、照射される活性線のエネルギーは300mJ/cm2以上800mJ/cm2以下であることがより好ましく、350mJ/cm2以上500mJ/cm2以下であることがさらに好ましい。
【0077】
なお、上記画像形成方法では、上記インクジェット用の活性線硬化型インクを記録媒体上に着弾させ、上記記録媒体に付与された活性線硬化型インクに活性線を照射して画像を形成する方法を説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、上記インクジェット用の活性線硬化型インクを中間転写体の表面に着弾させ、上記中間転写体上に付与された上記インクジェット用の活性線硬化型インクを記録媒体に転写し、上記記録媒体上に転写された上記インクジェット用の活性線硬化型インクに活性線を照射して画像を形成してもよい。なお、中間転写体は、インクジェット法による画像形成に用いられる公知の中間転写体であればよい。
【0078】
3.画像形成装置
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット用の画像形成装置100の例示的な構成を示す模式図である。
【0079】
本実施の形態に係る画像形成装置100は、中間転写体110の表面に活性線硬化型インクを付与するインク付与部120と、記録媒体Sに活性線硬化型インクを転写する転写部130と、記録媒体Sに転写された活性線硬化型インクに活性線を照射する硬化部140と、を有する。画像形成装置100は、さらに、無端状ベルトの形状を有する中間転写体110を張架する支持ローラ150、151および152と、記録媒体Sに転写されずに中間転写体110の表面に残存した活性線硬化型インクを中間転写体110の表面から除去するクリーニング部160と、を有する。
【0080】
中間転写体110は、支持ローラ150、151および152によって張架され、かつ回転移動し、中間画像形成部121によって中間転写体110の表面に形成された中間画像を転写部130に搬送する。
【0081】
3つの支持ローラ150、151および152のうち、少なくとも1つのローラは、駆動ローラであり、中間転写体110をA方向に回転させる。
【0082】
中間転写体110における、逆三角形状の左右の頂点部分に位置する支持ローラ150、151および152に張架された部分は、インク付与部120から付与された活性線硬化型インクの着弾面となっている。中間転写体110における、逆三角形状の下側の頂点部分に位置する支持ローラ150は、中間転写体110を搬送路170に向けて所定のニップ圧により加圧する加圧ローラであり、インク付与部120から吐出された活性線硬化型インクが付与して形成された中間画像を記録媒体Sに転写する加圧部131として機能する。
【0083】
インク付与部120でもある中間画像形成部121は、本実施の形態ではインクジェット法により中間画像を形成するインク付与部であり、それぞれY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色の活性線硬化型組成物(インクジェットインク)をノズルから吐出して中間転写体110の表面に付与させる、インクジェットヘッド120Y、120M、120Cおよび120Kを有する。インクジェットヘッド120Y、120M、120Cおよび120Kは、上記各色の活性線硬化型インクを、中間転写体110の表面のうち形成されるべき画像に応じた位置に付与して、中間画像を形成する。
【0084】
転写部130は、中間転写体110と搬送路170とが最接近した部分であって、支持ローラ150、151および152によって中間転写体110が搬送路170の方向に付勢されることにより、中間転写体110が接する搬送路170の表面を加圧する。中間転写体110の表面に形成されて搬送されてきた活性線硬化型インクと、搬送路170の表面に配置されて搬送されてきた記録媒体Sとが転写部130において接触され、支持ローラ150を介して中間転写体110から搬送路170側に加圧されることで、記録媒体Sに転写される。
【0085】
搬送路170は、例えば、金属ドラムで構成され、中間画像を転写される記録媒体110を搬送する。搬送路170は、中間転写体110の一部の表面に接して配置され、加圧部131よって中間転写体110の上記接する表面が加圧されることで、転写ニップが形成される。搬送路170は、記録媒体Sの先端を固定する爪(不図示)を有してもよい。搬送路170は、当該爪に記録媒体Sの先端を固定し、
図1における反時計回り方向に回転することで、記録媒体Sを転写ニップに搬送する。
【0086】
クリーニング部160は、ウェブローラやスポンジローラ等のクリーニングローラであり、転写部130の下流側で、中間転写体110の表面に接触する。クリーニング部160は、上記クリーニングローラが駆動回転することで、転写部130において記録媒体Sに転写されずに中間転写体110の表面に残存した残組成物(残塗布物)を除去する。
【0087】
なお、本実施の形態に係る画像形成装置100は、活性線硬化型インクを記録媒体に転写する前に、または転写時に、活性線硬化型インクに活性線を照射して活性線硬化型インクを増粘させるための増粘部を有していてもよい。また、画像形成装置100は、中間転写体110のうちインクが着弾する位置の表面温度を60℃以下に調整する温度調整部を有してもよい。
【0088】
また、上記説明では中間転写体を有する画像形成装置について説明したが、本実施の形態に係る画像形成装置は、中間転写体を有さず、インク吐出部から吐出された活性線硬化型インクを搬送路に搬送される記録媒体に直接に着弾させる構成であってもよい。
【実施例】
【0089】
本発明を以下の試験を用いてさらに具体的に説明するが、本発明は以下の試験に限定されない。
【0090】
1.顔料分散液の調製
1-1.マゼンタ顔料分散液Aの調製
トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(A-DCP、新中村化学工業株式会社製)70.0質量部と、顔料分散剤(EFKA4130、BASF社製)9.0質量部と、をステンレス鋼製のビーカーに入れ、65℃のホットプレート上で加熱しながら1時間撹拌した。
【0091】
得られた溶液を室温まで冷却した後、マゼンタ顔料「F CARMINE 580S」(Pigment Red #238、富士色素株式会社製)20.0質量部と、セルロースの水酸基の一部が、ブチレン基で置換されたセルロースナノファイバー(繊維幅:8nm、繊維長:800nm)1.0質量部を加えた。混合液を直径0.5mmのジルコニアビーズ200gとともにガラス瓶に入れて密栓し、ペイントシェーカーにて5時間分散処理した。分散液からジルコニアビーズを除去して、マゼンタ顔料分散液Aを得た。
【0092】
1-2.セルロースナノファイバーの調製
セパラブルフラスコにt-ブタノール(7.8g)、6質量%NaOH水溶液(1.8g)を投入し5分間攪拌した後、ブチレンオキシド(20g)を加え5分間攪拌を行って疎水化用の薬液を得た。セルロース原料であるシート状のセルロース繊維集合体として、一辺2cmにカットしたシート状の針葉樹クラフトパルプ(NBKP、厚み:5mm、坪量:300g/m2、セルロースI型結晶化度:85%)4.0gを用い、上記薬液を針葉樹クラフトパルプに対して少量ずつ滴下しながら攪拌する操作を行い、薬液含浸シートを得た。ここで、エーテル化剤であるプロピレンオキシドの仕込量は、セルロース分子中のアンヒドログルコース単位1モル当たり11.2モルとした。また、触媒であるNaOHの仕込量は、系内における濃度が0.32質量%(セルロース分子中のアンヒドログルコース単位1モル当たり0.18モル)とした。
【0093】
上記薬液含浸シートをSUS製のネジ式耐圧反応容器(380mL容)に移し、ポット回転式恒温槽にセットして60℃、9時間反応させた(0.4MPa)。反応後冷却し、水200mLに分散させ1Lビーカーに移した。ここに酢酸をpHが7になるまで滴下、攪拌を行った。得られた疎水化セルロース繊維水分散液を、水洗浄およびエタノール洗浄を行い、遠心分離操作により繊維が乾燥しない程度に脱溶媒処理し、疎水化セルロースナノファイバーを得た(パルプ固形量:3.5g)。
【0094】
セルロースナノファイバーに含まれる水酸基の疎水化率の算出は、脱溶媒処理後における未乾燥のセルロースナノファイバーをトリアセチル化処理した後、生成したセルロース誘導体をNMRで定量して、以下の式(1)で算出した。詳細には、9mLスクリュー管にセルロースナノファイバー(50mg)、酢酸(1mL)、トルエン(1mL)、60%過塩素酸(5μL)を入れて攪拌した後、無水酢酸(0.5mL)を投入し室温中2時間攪拌を行った。繊維形状が消失し溶解したことを確認した後、水を投入し反応を停止した。これを20質量%メタノール/ジクロロメタン溶液に希釈させ、トリエチルアミンで中和した。この溶液を水中に投入することで、セルロース誘導体を沈殿させた。沈殿物を回収し、乾燥(50℃、2時間)させた後、NMR用溶媒に溶解させ1HNMR分析(溶媒:d-DMSO、積算回数:64回)を行った。
【0095】
【0096】
表1に、マゼンタ顔料分散液A~Mの各成分の含有量(単位は質量部)を示す。なお、表1中、セルロースナノファイバーをCNFと、ヒドロキシプロピルメチルセルロースをHPMCと、セルロースアセテートブチレートをCABと記載する。また、表1中、顔料分散液A~F、H、Iに含まれるセルロースナノファイバーは、疎水基が炭素数4の直鎖のアルキル基で置換されているセルロースナノファイバーであり、顔料分散液Lに含まれるセルロースナノファイバーは、疎水基がアシル基で置換されているセルロースナノファイバーであり、顔料分散液Mに含まれるセルロースナノファイバーは、疎水基がアセチル基で置換されているセルロースナノファイバーである。
【0097】
【0098】
2.インクの調製
マゼンタ顔料分散液A(10.0質量部)と、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(49.8質量部)と、6EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(10.0質量部)と、4EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(10.0質量部)と、PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート(10.0質量部)と、重合開始剤「DAROCURE TPO」(BASF社製)(5.0質量部)と、ゲル化剤「エキセパールSS」(花王株式会社製、「エキセパール」は同社の登録商標)(2.5質量部)と、ゲル化剤「カオーワックスT1」(2.5質量部)と、重合禁止剤「Irgastab UV10」(BASF社製)(0.1質量部)と、界面活性剤「KF-352」(信越化学株式会社製)(0.1質量部)とを加え、105℃で45分撹拌した後、3μmメンブランフィルター(ADVANTEC社製のテフロン(登録商標))で濾過して、インク1を得た。
【0099】
表2にインク1~16の各成分の含有量(単位は質量部)を示す。
【0100】
表2で示される各略号は次のとおりである。
TCD-DMDA :トリシクロデカンジメタノールジアクリレート
TMP(EO)6TA:6EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート
4EO-PETTA :4EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート
PO-NPGDA :PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート
TMP(PO)3TA:3PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート
MPDDA :3-メチルペンタンジオールジアクリレート
VEEA :アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル
TPO :DAROCURE TPO
UV10 :Irgastab UV10
【0101】
【0102】
2.評価
調製したインク1~16を用いて、耐光性評価、顔料分散安定性評価、ブルーミング評価、溶解安定性評価、およびインク粘度の評価を行った。
【0103】
2-1.耐光性評価
(画像形成方法)
インク1~16を、それぞれピエゾ型インクジェットノズルを備えたインクジェットヘッドを有するシングルパスのインクジェット画像形成装置に装填した。インク供給系は、インクタンク、インク流路、インクジェットヘッド直前のサブインクタンク、フィルター付き配管、およびインクジェットヘッドからなり、インクジェットヘッドの温度は80℃に設定した。インクジェットヘッドは、ノズル径20μm、ノズル数1024ノズル(512ノズル×2列、千鳥配列、1列のノズルピッチ600dpi)のピエゾヘッドを用いた。
【0104】
インク1~16のそれぞれを、1滴の液滴量が3.0plとなる吐出条件で、液滴速度約6m/sで射出した。画像形成は、23℃、55%RHの環境下で行った。記録媒体であるOKトップコート(王子製紙社製、坪量70g/m2)に着弾したインク1~13に、インクジェットヘッドよりも下流側に配置したLEDランプ(Phoseon Technology社製、395nm、水冷LED)から紫外線を照射して、インク1~13を硬化して、1200dpi×1200dpiの解像度でベタ画像を形成した。
【0105】
(評価方法)
促進耐候性試験機「低温XeウェザーメータXL75」(スガ試験機株式会社製)を用いて、20℃、50RHの環境で照度70000lxのキセノン光を7日間、インク1~16を用いて形成したベタ画像に照射した。次いで、分光濃度・測色計「X-Rite900」(日本平板機材株式会社製)を用いて、プリント濃度1.0近辺の濃度が、促進耐候性試験の前後でどの程度変化したかを測定した。なお、促進耐候性試験後に濃度測定ができない程度に濃度が低下していた場合は、最高濃度であった部分の濃度変化を測定した。促進耐候性試験の前後での反射濃度の変化率をもとに、以下の基準で耐光性を評価した。
【0106】
(評価基準)
A:変化率は85%以上である
B:変化率は70%以上85%未満である
C:変化率は50%以上70%未満である
D:変化率は50%未満である
【0107】
2-2.顔料分散安定性評価
(評価方法)
インク1~16のそれぞれを、ワイヤーバーを用いてポリエチレンテレフタレートフィルム上に、湿潤膜厚として20μmとなるように塗布した。ルーペ(100倍)を用いて、塗布面の観察を行い、粗大粒子の有無を確認した。
【0108】
(評価基準)
◎:視野中に確認できる粗大粒子は10個未満である
〇:視野中に確認できる粗大粒子は10個以上50個未満である
△:視野中に確認できる粗大粒子は50個以上100個未満である
×:視野中に確認できる粗大粒子は100個以上である
【0109】
2-3.ブルーミング評価
(評価方法)
インク1~16を用いて、記録媒体である印刷用コート紙A(OKトップコート 米坪量128g/m2 王子製紙社製)に形成した5cm×5cmのベタ画像を、40℃の環境下で1か月間保管した。保管後の画像を目視観察した。
【0110】
(評価基準)
○:画像表面に析出物が認められない
△:画像表面に薄らとした析出物が存在しており、目視で確認できる
×:画像表面が粉状の物質で覆われており、目視で明らかに確認できる
【0111】
2-4.溶解安定性の評価
(評価方法)
インク1~16を100℃で4時間静置して、インク1~16の表面に層分離して浮遊している成分が存在するか否かを目視で観察した。
【0112】
(評価基準)
○:浮遊物は視認されなかった
△:浮遊物がわずかに視認された
×:浮遊物が視認された
【0113】
2-5.インクの粘度変化
(評価方法)
25℃~85℃におけるインク粘度(mPa・s)をレオメータ(Paar Physica製 MCR300)により測定し、下記の基準で評価した。
【0114】
(評価基準)
◎:55℃未満において、9mPa・s以上12mPa・s未満の粘度範囲に収まる
○:55℃以上65℃未満において、9mPa・s以上12mPa・s未満の粘度範囲に収まる
△:65℃以上80℃以下において、9mPa・s以上12mPa・s未満の粘度範囲に収まる
×:80℃を超える温度で、9mPa・s以上12mPa・s未満の粘度範囲に収まる
【0115】
上記各評価結果を表3に示す。
【0116】
【0117】
セルロースナノファイバーを含有する活性線硬化型インクを用いることにより、当該活性線硬化型インクで形成された画像の耐光性が向上することがわかった。これは、セルロースナノファイバーが顔料の表面に高密度に吸着することにより、顔料の表面に立体障害を生じ、活性線硬化型インクの退色の原因となる物質(たとえば一重項酸素)が顔料に到達するのを阻害したためであると考えられる。また、セルロースナノファイバーに含まれる水酸基のうち、30~70質量%の水酸基を疎水基で置換することで、親水性、疎水性のバランスを良好にできたため、顔料分散安定性および溶解性が高まったと考えられる。
【0118】
ゲル化剤を含む活性線硬化型インクにセルロースナノファイバーを含有することにより、ゲル化剤のブルーミングを抑制することができることがわかった。これにより、高精細な画像を形成することができると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の活性線硬化型インクによれば、インクジェット法による印刷の適用の幅を広げ、同分野の技術の進展および普及に貢献することが期待される。
【符号の説明】
【0120】
100 画像形成装置
110 中間転写体
120 インク付与部
121 中間画像形成部
130 転写部
131 加圧部
140 硬化部
150、151、152 支持ローラ
160 クリーニング部
170 搬送路
S 記録媒体