(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/06 20060101AFI20231108BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20231108BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20231108BHJP
【FI】
H02M7/06 Z
H01L25/04 C
(21)【出願番号】P 2019200415
(22)【出願日】2019-11-05
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】高橋 潔
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-303939(JP,A)
【文献】特開2015-153708(JP,A)
【文献】国際公開第2016/031295(WO,A1)
【文献】実開平03-007265(JP,U)
【文献】特開2000-236677(JP,A)
【文献】実開昭57-064074(JP,U)
【文献】実開昭63-028263(JP,U)
【文献】実開平06-041068(JP,U)
【文献】特開2013-077688(JP,A)
【文献】特開2013-222886(JP,A)
【文献】米国特許第06054765(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/00 - 7/40
H01L 25/04
H01L 25/07
H01L 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体素子を内部に収容するとともに、複数の接続端子が設けられる半導体モジュールと、
前記半導体モジュールとは別個に設けられ、前記半導体モジュールの表面に対して直交するように、かつ、前記複数の接続端子同士の間に配置される板状の絶縁部材とを備え、
前記複数の接続端子は、前記半導体モジュールの表面において、第1方向および前記第1方向に直交する第2方向に沿って配置されており、
前記絶縁部材は、前記第2方向に隣り合う前記接続端子の間に配置され前記第1方向に延びる第1絶縁部材と、前記第1絶縁部材に交差するように設けられるとともに、前記第1方向に隣り合う前記接続端子の間に配置され前記第2方向に延びる第2絶縁部材とを含み、
前記半導体モジュールの表面には、前記第1方向および前記第2方向に沿って貫通しない溝部が設けられており、
前記絶縁部材は、前記溝部に配置されて
おり、
前記半導体モジュールは、前記第1方向に沿って配置されている第1半導体モジュールおよび第2半導体モジュールを含み、
前記第1半導体モジュールの前記接続端子は、前記第1半導体モジュールに備えられる前記第2絶縁部材と、前記第2半導体モジュールに備えられる前記第2絶縁部材との間に位置する第1中間接続端子を含み、
前記第2半導体モジュールの前記接続端子は、前記第1半導体モジュールに備えられる前記第2絶縁部材と、前記第2半導体モジュールに備えられる前記第2絶縁部材との間に位置する第2中間接続端子を含み、
前記第1中間接続端子と前記第2中間接続端子とを接続するモジュール間接続導体をさらに備える、電力変換装置。
【請求項2】
前記溝部は、前記第1方向に沿った貫通しない溝である第1溝部と、前記第2方向に沿った貫通しない溝である第2溝部とを含み、
前記第1溝部の幅は、前記第2溝部の幅より狭い、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第1絶縁部材は、前記第1方向に沿って配置されている前記
第1半導体モジュールおよび前記第2半導体モジュールに跨るように配置されており、
前記第2絶縁部材は、前記
第1半導体モジュールおよび前記第2半導体モジュールの各々において、前記第1方向に隣り合う前記接続端子の間に配置されるように複数設けられている、請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1絶縁部材には、第1切込み部が設けられ、
前記第2絶縁部材には、第2切込み部が設けられ、
前記第1絶縁部材の前記第1切込み部に対して、前記第2絶縁部材の前記第2切込み部が挿入されることにより、前記第1絶縁部材に対して前記第2絶縁部材が交差するように設けられている、請求項1~
3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第1絶縁部材には、孔部が設けられており、
前記第2方向に隣り合う前記接続端子同士を、前記孔部を介して接続する接続導体をさらに備える、請求項1~
4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記第2方向に隣り合う前記接続端子の各々と、前記接続導体との間に設けられるとともに、前記半導体モジュールの表面に直交するように設けられる導電性のスペーサ部材をさらに備える、請求項
5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記第1絶縁部材の前記孔部は、前記スペーサ部材の上端に対応する位置に設けられている、請求項
6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記接続導体は、前記接続端子に電気的に接続されるとともに、電気機器が実装された基板に接続される、請求項
5~
7のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記第1方向および前記第2方向から見て、前記絶縁部材の上端および側端は、それぞれ、前記接続端子の上端および側端よりも外側に配置されている、請求項1~
8のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項10】
複数の半導体素子を内部に収容するとともに、複数の接続端子が設けられる半導体モジュールと、
前記半導体モジュールとは別個に設けられ、前記半導体モジュールの表面に対して直交するように、かつ、前記複数の接続端子同士の間に配置される板状の絶縁部材とを備え、
前記複数の接続端子は、前記半導体モジュールの表面において、第1方向および前記第1方向に直交する第2方向に沿って配置されており、
前記絶縁部材は、前記第2方向に隣り合う前記接続端子の間に配置され前記第1方向に延びる第1絶縁部材と、前記第1絶縁部材に交差するように設けられるとともに、前記第1方向に隣り合う前記接続端子の間に配置され前記第2方向に延びる第2絶縁部材とを含み、
前記第1方向から見て、前記第2絶縁部材の上方側の一対の角部には、配線を逃がすための切欠きが設けられている、電力変換装置。
【請求項11】
前記第1絶縁部材には、孔部が設けられており、
前記第2方向に隣り合う前記接続端子同士を、前記孔部を介して接続する接続導体をさらに備え、
前記第2絶縁部材の前記切欠
きは、前記第1方向から見て、前記接続導体よりも上方に設けられている、請求項
10に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力変換装置に関し、特に、半導体モジュールを備える電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体モジュールを備える電力変換装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、複数の半導体素子を内部に収容するモジュールを備えるパワー半導体装置(電力変換装置)が開示されている。このパワー半導体装置のモジュールの表面には、複数の端子が設けられている。そして、隣り合う2つの端子の間には、これらの端子の上端よりも高く突出した樹脂製の凸壁と、これらの端子の下端よりも低く窪んだ凹部とが形成されている。そして、凸壁と凹部とによって、隣り合う2つの端子の間の絶縁距離(沿面距離)を増大させることが可能になるので、パワー半導体装置を小型化することが可能になる。なお、樹脂製の凸壁および凹部は、モジュールの表面に一体的に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のパワー半導体装置(電力変換装置)では、樹脂製の凸壁および凹部は、モジュールの表面に一体的に形成されている。このため、絶縁距離(沿面距離)を増大させるために、モジュールの表面に予め凸壁および凹部を形成(加工)する必要がある。このため、表面に凸壁および凹部が形成されていない一般的なモジュール(半導体モジュール)に対して、容易に絶縁距離(沿面距離)を増大させることが望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、半導体モジュールの表面において、容易に絶縁距離(沿面距離)を増大させることが可能な電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による電力変換装置は、複数の半導体素子を内部に収容するとともに、複数の接続端子が設けられる半導体モジュールと、半導体モジュールとは別個に設けられ、半導体モジュールの表面に対して直交するように、かつ、複数の接続端子同士の間に配置される板状の絶縁部材とを備え、複数の接続端子は、半導体モジュールの表面において、第1方向および第1方向に直交する第2方向に沿って配置されており、絶縁部材は、第2方向に隣り合う接続端子の間に配置され第1方向に延びる第1絶縁部材と、第1絶縁部材に交差するように設けられるとともに、第1方向に隣り合う接続端子の間に配置され第2方向に延びる第2絶縁部材とを含み、半導体モジュールの表面には、第1方向および第2方向に沿って貫通しない溝部が設けられており、絶縁部材は、溝部に配置されており、半導体モジュールは、第1方向に沿って配置されている第1半導体モジュールおよび第2半導体モジュールを含み、第1半導体モジュールの接続端子は、第1半導体モジュールに備えられる第2絶縁部材と、第2半導体モジュールに備えられる第2絶縁部材との間に位置する第1中間接続端子を含み、第2半導体モジュールの接続端子は、第1半導体モジュールに備えられる第2絶縁部材と、第2半導体モジュールに備えられる第2絶縁部材との間に位置する第2中間接続端子を含み、第1中間接続端子と第2中間接続端子とを接続するモジュール間接続導体をさらに備える。
【0008】
この発明の第1の局面による電力変換装置では、上記のように、絶縁部材は、半導体モジュールとは別個に設けられているとともに、第2方向に隣り合う接続端子の間に配置され第1方向に延びる第1絶縁部材と、第1絶縁部材に交差するように設けられるとともに、第1方向に隣り合う接続端子の間に配置され第2方向に延びる第2絶縁部材とを含み、半導体モジュールの表面には、第1方向および第2方向に沿って貫通しない溝部が設けられており、絶縁部材は、溝部に配置されている。これにより、第1方向に延びる第1絶縁部材と第2方向に延びる第2絶縁部材とが配置されるので、半導体モジュールの表面の形状を変更(加工)することなく、第1絶縁部材および第2絶縁部材によって接続端子の間の絶縁距離(沿面距離)を増大させることができる。その結果、半導体モジュールの表面において、容易に絶縁距離(沿面距離)を増大させることができる。
上記第1の局面による電力変換装置において、好ましくは、溝部は、第1方向に沿った貫通しない溝である第1溝部と、第2方向に沿った貫通しない溝である第2溝部とを含み、第1溝部の幅は、第2溝部の幅より狭い。
【0009】
上記第1の局面による電力変換装置において、好ましくは、第1絶縁部材は、第1方向に沿って配置されている第1半導体モジュールおよび第2半導体モジュールに跨るように配置されており、第2絶縁部材は、第1半導体モジュールおよび第2半導体モジュールの各々において、第1方向に隣り合う接続端子の間に配置されるように複数設けられている。このように構成すれば、第1絶縁部材が複数の半導体モジュールに対して共通に設けられているので、絶縁部材の構成を簡略化することができる。
【0010】
上記第1の局面による電力変換装置において、好ましくは、第1絶縁部材には、第1切込み部が設けられ、第2絶縁部材には、第2切込み部が設けられ、第1絶縁部材の第1切込み部に対して、第2絶縁部材の第2切込み部が挿入されることにより、第1絶縁部材に対して第2絶縁部材が交差するように設けられている。このように構成すれば、第1絶縁部材の第1切込み部に第2絶縁部材の第2切込み部を挿入するだけで、容易に、絶縁部材を形成することができる。
【0011】
上記第1の局面による電力変換装置において、好ましくは、第1絶縁部材には、孔部が設けられており、第2方向に隣り合う接続端子同士を、孔部を介して接続する接続導体をさらに備える。このように構成すれば、接続導体によって、絶縁部材を半導体モジュールに固定することができる。
【0012】
この場合、好ましくは、第2方向に隣り合う接続端子の各々と、接続導体との間に設けられるとともに、半導体モジュールの表面に直交するように設けられる導電性のスペーサ部材をさらに備える。このように構成すれば、導電性のスペーサ部材の上端と、スペーサ部材が設けられない接続端子との間の距離(空間距離)を大きくすることができるので、スペーサ部材の上端(接続導体)と、スペーサ部材が設けられない接続端子との絶縁を確保することができる。
【0013】
上記スペーサ部材を備える電力変換装置において、好ましくは、第1絶縁部材の孔部は、スペーサ部材の上端に対応する位置に設けられている。このように構成すれば、接続導体を、第1絶縁部材の孔部に、半導体モジュールの表面に沿った方向に挿入することにより、容易に、スペーサ部材と接続導体とを接続することができる。
【0014】
上記接続導体を備える電力変換装置において、好ましくは、接続導体は、接続端子に電気的に接続されるとともに、電気機器が実装された基板に接続される。このように構成すれば、接続導体を介して、接続端子と電気機器が実装された基板とを容易に電気的に接続することができる。
【0015】
上記第1の局面による電力変換装置において、好ましくは、第1方向および第2方向から見て、絶縁部材の上端および側端は、それぞれ、接続端子の上端および側端よりも外側に配置されている。このように構成すれば、絶縁部材の大きさが比較的大きくなるので、接続端子同士の間の絶縁距離(沿面距離)をより増大させることができる。
【0016】
上記第1の局面による電力変換装置において、好ましくは、半導体モジュールの表面には、第1方向および第2方向に沿って溝部が設けられており、絶縁部材は、溝部に配置されている。このように構成すれば、溝部において、絶縁部材を安定した状態で配置することができる。
上記目的を達成するために、この発明の第2の局面による電力変換装置は、複数の半導体素子を内部に収容するとともに、複数の接続端子が設けられる半導体モジュールと、半導体モジュールとは別個に設けられ、半導体モジュールの表面に対して直交するように、かつ、複数の接続端子同士の間に配置される板状の絶縁部材とを備え、複数の接続端子は、半導体モジュールの表面において、第1方向および第1方向に直交する第2方向に沿って配置されており、絶縁部材は、第2方向に隣り合う接続端子の間に配置され第1方向に延びる第1絶縁部材と、第1絶縁部材に交差するように設けられるとともに、第1方向に隣り合う接続端子の間に配置され第2方向に延びる第2絶縁部材とを含み、第1方向から見て、第2絶縁部材の上方側の一対の角部には、配線を逃がすための切欠きが設けられている。
上記第2の局面による電力変換装置において、好ましくは、第1絶縁部材には、孔部が設けられており、第2方向に隣り合う接続端子同士を、孔部を介して接続する接続導体をさらに備え、第2絶縁部材の切欠き部は、第1方向から見て、接続導体よりも上方に設けられている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上記のように、半導体モジュールの表面において、容易に絶縁距離(沿面距離)を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態による電力変換装置の回路図である。
【
図2】本実施形態による電力変換装置の斜視図である。
【
図3】半導体モジュールが、冷却部の表面に配置されている状態を示す図である。
【
図4】半導体モジュール(絶縁部材が配置される前の状態)を示す図である。
【
図5】半導体モジュール(絶縁部材が配置された後の状態)を示す図である。
【
図6】基板が取り付けられた状態の半導体モジュールの上面図である。
【
図8】Y方向から見た半導体モジュールの側面図である。
【
図9】X方向から見た半導体モジュールの側面図である。
【
図11】半導体モジュール(接続導体が取り付けられる前の状態)を示す図である。
【
図12】半導体モジュール(第2接続導体が取り付けられた状態)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1~
図12を参照して、本実施形態による電力変換装置100の構成について説明する。なお、以下の説明において、「上方」とは、半導体モジュール10が水平面(冷却部4の表面)に配置された状態における「上方(Z1方向)」を意味する。また、「下方」とは、半導体モジュール10が水平面(冷却部4の表面)に配置された状態における「下方(Z2方向)」を意味する。
【0021】
まず、
図1を参照して、電力変換装置100の回路構成について説明する。
【0022】
電力変換装置100は、1次側の交流電圧を、直流電圧に変換するように構成されている。具体的には、電力変換装置100は、ブリッジ整流による全波整流方式の変換回路により構成されている。すなわち、電力変換装置100は、トランス1に接続された2次側の整流部を構成している。なお、
図1では、3並列分の整流部のうちの一部を示している。
【0023】
電力変換装置100は、半導体モジュール10を備えている。半導体モジュール10は、複数の整流ダイオード11を内部に収容する。具体的には、半導体モジュール10は、1並列に対して2つ設けられている。そして、2つの半導体モジュール10aおよび10bは、各々、整流ダイオード11を2つずつ収容する。なお、半導体モジュール10aおよび10bの構成は、互いに同様である。そして、4つの整流ダイオード11a~11dによって、ブリッジ回路が構成されている。すなわち、整流ダイオード11aのアノードと、整流ダイオード11cのカソードとが接続されている。また、整流ダイオード11bのアノードと、整流ダイオード11dのカソードとが接続されている。また、整流ダイオード11aと整流ダイオード11bとのカソード同士が接続されている。また、整流ダイオード11cと整流ダイオード11dとのアノード同士が接続されている。なお、整流ダイオード11および11a~11dは、特許請求の範囲の「半導体素子」の一例である。
【0024】
また、整流ダイオード11aおよび整流ダイオード11bのカソードと、整流ダイオード11cおよび整流ダイオード11dのアノードとの間には、コンデンサ2が設けられている。また、整流ダイオード11aおよび整流ダイオード11bのカソードには、リアクトル3が接続されている。なお、コンデンサ2は、特許請求の範囲の「電気機器」の一例である。
【0025】
また、
図2および
図3に示すように、半導体モジュール10には、複数(本実施形態では4個)の接続端子12が設けられている。具体的には、4個の接続端子12は、半導体モジュール10の表面Sにおいて、X方向およびX方向に直交するY方向に沿って配置されている。また、4個の接続端子12は、マトリクス状に配置されている。なお、X方向およびY方向は、それぞれ、特許請求の範囲の「第1方向」および「第2方向」の一例である。
【0026】
図2および
図3に示すように、複数の半導体モジュール10は、冷却部4の表面上に配置されている。冷却部4は、板形状の冷却本体部4aと、冷却本体部4aから延びる冷却フィン4bとを含む。1並列分の2つの半導体モジュール10aおよび10bは、X方向に沿って、隣り合うように、かつ、互いに離間した状態で配置されている。また、3並列分の半導体モジュール10aおよび10bは、Y方向に隣り合うように、かつ、互いに離間した状態で配置されている。
【0027】
また、
図1に示すように、半導体モジュール10aに収容される整流ダイオード11aのカソード、および、整流ダイオード11bのカソードは、それぞれ、接続端子12aおよび接続端子12bに対応する。また、半導体モジュール10aに収容される整流ダイオード11aのアノード、および、整流ダイオード11bのアノードは、それぞれ、接続端子12cおよび接続端子12dに対応する。
【0028】
また、半導体モジュール10bに収容される整流ダイオード11cのカソード、および、整流ダイオード11dのカソードは、それぞれ、接続端子12aおよび接続端子12bに対応する。また、半導体モジュール10bに収容される整流ダイオード11dのアノード、および、整流ダイオード11bのアノードは、それぞれ、接続端子12cおよび接続端子12dに対応する。
【0029】
ここで、本実施形態では、
図4~
図6に示すように、電力変換装置100は、半導体モジュール10とは別個に設けられる、板状の絶縁部材20を備えている。絶縁部材20は、半導体モジュール10とは別個に設けられ、半導体モジュール10の表面Sに対して直交するように、かつ、複数の接続端子12同士の間に配置されている。絶縁部材20は、たとえば、PC(polycarbonate)、ABC(Acrylonitrile butadiene styrene)、PBT(polybutylene terephthalate)などにより構成されている。
【0030】
具体的には、本実施形態では、絶縁部材20は、Y方向に隣り合う接続端子12の間に配置されX方向に延びる第1絶縁部材21と、第1絶縁部材21に交差(本実施形態では、直交)するように設けられるとともに、X方向に隣り合う接続端子12の間に配置されY方向に延びる第2絶縁部材22とを含む。
図7に示すように、第1絶縁部材21は、略長方形形状を有する。また、第2絶縁部材22は、上方側(Z1方向側)の一対の角部に切欠き22aが設けられている。この切欠き22aは、図示しない配線を逃がすために設けられている。
【0031】
また、本実施形態では、
図4~
図6に示すように、第1絶縁部材21は、X方向に沿って配置されている複数(本実施形態では、2つ)の半導体モジュール10に跨るように配置されている。また、第2絶縁部材22は、複数(本実施形態では、2つ)の半導体モジュール10の各々において、X方向に隣り合う接続端子12の間に配置されるように複数設けられている。つまり、X方向に沿って配置されている2つの半導体モジュール10に対して、第1絶縁部材21は、共通に1つ設けられている。また、X方向に沿って配置されている2つの半導体モジュール10に対して、第2絶縁部材22は、1つずつ(合計2つ)設けられている。
【0032】
また、本実施形態では、Y方向(
図8参照)から見て、絶縁部材20の上端(第1絶縁部材21の上端21aおよび第2絶縁部材22の上端22b)および側端(第1絶縁部材21の側端21b)は、それぞれ、接続端子12の上端12eおよび側端12fよりも外側に配置されている。また、X方向(
図9参照)から見て、絶縁部材20の上端(第1絶縁部材21の上端21aおよび第2絶縁部材22の上端22b)および側端(第2絶縁部材22の側端22c)は、それぞれ、接続端子12の上端12eおよび側端12fよりも外側に配置されている。具体的には、第1絶縁部材21の上端21aおよび第2絶縁部材22の上端22bは、接続端子12の上端12eよりも上方に突出している。また、第1絶縁部材21のX方向の側端21bは、接続端子12のX方向の側端12fよりも外側に突出している。また、第2絶縁部材22のY方向の側端22cは、接続端子12のY方向の側端12fよりも外側に突出している。
【0033】
また、本実施形態では、
図10に示すように、半導体モジュール10の表面Sには、X方向およびY方向に沿って、それぞれ、溝部10fおよび10gが設けられており、絶縁部材20は、溝部10fおよび10gに配置されている。具体的には、半導体モジュール10の表面Sには、Y方向に隣り合う接続端子12の間に、X方向に沿うように溝部10fが設けられている。また、半導体モジュール10の表面Sには、X方向に隣り合う接続端子12の間に、Y方向に沿うように溝部10gが設けられている。そして、第1絶縁部材21は、溝部10fに配置されている。また、第2絶縁部材22は、溝部10gに配置されている。
【0034】
また、本実施形態では、
図7に示すように、第1絶縁部材21には、第1切込み部21cが設けられ、第2絶縁部材22には、第2切込み部22dが設けられている。第1切込み部21cは、第1絶縁部材21において、半導体モジュール10の表面Sに垂直な方向(Z方向)に沿って、かつ、下側(半導体モジュール10側)に開口するように設けられている。また、第1切込み部21cは、第1絶縁部材21のX1方向側とX2方向側との両方に1つずつ設けられている。また、第2切込み部22dは、第2絶縁部材22において、半導体モジュール10の表面Sに垂直な方向に沿って、かつ、上方(半導体モジュール10と反対側)に開口するように設けられている。また、第2切込み部22dは、2つの第2絶縁部材22の各々に設けられている。そして、第1絶縁部材21の第1切込み部21cに対して、第2絶縁部材22の第2切込み部22dが挿入されることにより、第1絶縁部材21に対して第2絶縁部材22が交差するように設けられている。また、第1絶縁部材21の第1切込み部21cに対して、第2絶縁部材22の第2切込み部22dが挿入された状態で、第1絶縁部材21の上端21aと、第2絶縁部材22の上端22bとの高さ位置は、略等しい。
【0035】
また、本実施形態では、第1絶縁部材21には、孔部21dが設けられている。そして、Y方向に隣り合う接続端子12同士を、孔部21dを介して接続する接続導体30(
図5および
図11参照)が設けられている。具体的には、孔部21dは、略長方形形状を有する。また、接続導体30は、断面が略長方形形状の銅バーなどにより構成されている。また、接続導体30により接続される接続端子12は、半導体モジュール10aの、接続端子12a(整流ダイオード11aのカソード)と、接続端子12b(整流ダイオード11bのカソード)である。また、接続導体30により接続される接続端子12は、半導体モジュール10bの、接続端子12c(整流ダイオード11cのアノード)と、接続端子12d(整流ダイオード11dのアノード)である。
【0036】
また、本実施形態では、
図12に示すように、Y方向に隣り合う接続端子12の各々と、接続導体30との間には、半導体モジュール10の表面Sに直交するように設けられる導電性のスペーサ部材31が配置されている。なお、スペーサ部材31は、半導体モジュール10aの接続端子12aおよび12bと、半導体モジュール10bの接続端子12cおよび12dとに設けられている。そして、
図5に示すように、接続端子12aおよび接続端子12b(接続端子12cおよび接続端子12d)は、スペーサ部材31を介して、接続導体30により電気的に接続されている。なお、接続導体30とスペーサ部材31とは、ネジ32により固定されている。
【0037】
また、本実施形態では、
図11に示すように、第1絶縁部材21の孔部21dは、スペーサ部材31の上端31aに対応する位置に設けられている。すなわち、第1絶縁部材21の孔部21dは、スペーサ部材31の上端31aのX方向における位置と、スペーサ部材31の上端31aの高さ位置(Z方向における位置)と、に対応している。
【0038】
また、本実施形態では、
図6に示すように、接続導体30は、接続端子12に電気的に接続(スペーサ部材31を介して接続)されるとともに、コンデンサ2が実装された基板5に接続される。すなわち、スペーサ部材31と、接続導体30と、基板5とが、共に、ネジ32によって固定される。
【0039】
また、
図5に示すように、X方向に隣り合う半導体モジュール10aの接続端子12cおよび半導体モジュール10bの接続端子12a同士を接続する第1接続導体41が設けられている。第1接続導体41は、トランス1(
図1参照)の2次側のコイルの一方端に接続されている。
【0040】
また、第1接続導体41は、半導体モジュール10の表面Sに沿うように設けられ、半導体モジュール10aの接続端子12cと半導体モジュール10bの接続端子12aとに接続される端子接続部分41aを含む。また、第1接続導体41は、端子接続部分41aの第1絶縁部材21側(Y1方向側)から半導体モジュール10の表面Sに直交するように接続される本体部分41bを含む。また、第1接続導体41は、本体部分41bの上端においてY1方向に延びるように設けられる接続部分41cをさらに含む。
【0041】
また、
図12に示すように、半導体モジュール10aの接続端子12dおよび半導体モジュール10bの接続端子12b同士を接続する第2接続導体42が設けられている。第2接続導体42は、トランス1(
図1参照)の2次側のコイルの他方端に接続されている。
【0042】
また、第2接続導体42は、半導体モジュール10の表面Sに沿うように設けられ、半導体モジュール10aの接続端子12dと半導体モジュール10bの接続端子12bに接続される端子接続部分42aを含む。また、第2接続導体42は、端子接続部分42aの第1絶縁部材21とは反対側(Y1方向側)から半導体モジュール10の表面Sに直交するように接続される本体部分42bを含む。また、第2接続導体42は、本体部分42bの上端においてY1方向に延びるように設けられる接続部分42cをさらに含む。
【0043】
また、
図5に示すように、第1接続導体41の接続部分41cは、第1絶縁部材21の上端21aを超えて、第2接続導体42側に延びるように設けられている。また、接続部分41cと接続部分42cとは、X方向において、互いに離間した状態で配置されている。
【0044】
次に、絶縁部材20の組み立て(取り付け)方法について説明する。
【0045】
まず、
図4に示すように、第1絶縁部材21の第1切込み部21cに対して、第2絶縁部材22の第2切込み部22dが挿入されることにより、第1絶縁部材21に対して第2絶縁部材22が交差するように取り付けられる。これにより、絶縁部材20が構成される。
【0046】
次に、
図11に示すように、絶縁部材20が、半導体モジュール10の表面Sに設けられる溝部10fおよび10gに配置される。
【0047】
そして、接続導体30が絶縁部材20の孔部21dに挿入される。そして、絶縁部材20の孔部21dを介して、接続導体30により、スペーサ部材31同士が接続される。また、接続導体30とスペーサ部材31とは、ネジ32により固定される。これにより、絶縁部材20が半導体モジュール10に対して固定(
図5参照)される。
【0048】
[本実施形態の効果]
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0049】
本実施形態では、上記のように、絶縁部材20は、半導体モジュール10とは別個に設けられているとともに、Y方向に隣り合う接続端子12の間に配置されX方向に延びる第1絶縁部材21と、第1絶縁部材21に交差するように設けられるとともに、X方向に隣り合う接続端子12の間に配置されY方向に延びる第2絶縁部材22とを含む。これにより、X方向に延びる第1絶縁部材21とY方向に延びる第2絶縁部材22とが配置されるので、半導体モジュール10の表面Sの形状を変更(加工)することなく、第1絶縁部材21および第2絶縁部材22によって接続端子12の間の絶縁距離(沿面距離)を増大させることができる。その結果、半導体モジュール10の表面Sにおいて、容易に絶縁距離(沿面距離)を増大させることができる。
【0050】
また、本実施形態では、上記のように、第1絶縁部材21は、X方向に沿って配置されている複数の半導体モジュール10に跨るように配置されている。これにより、第1絶縁部材21が複数の半導体モジュール10に対して共通に設けられているので、絶縁部材20の構成を簡略化することができる。
【0051】
また、本実施形態では、上記のように、第1絶縁部材21の第1切込み部21cに対して、第2絶縁部材22の第2切込み部22dが挿入されることにより、第1絶縁部材21に対して第2絶縁部材22が交差するように設けられている。これにより、第1絶縁部材21の第1切込み部21cに第2絶縁部材22の第2切込み部22dを挿入するだけで、容易に、絶縁部材20を形成することができる。
【0052】
また、本実施形態では、上記のように、Y方向に隣り合う接続端子12同士を、第1絶縁部材21の孔部21dを介して接続する接続導体30が設けられている。これにより、接続導体30によって、絶縁部材20を半導体モジュール10に固定することができる。
【0053】
また、本実施形態では、上記のように、Y方向に隣り合う接続端子12の各々と、接続導体30との間に設けられるとともに、半導体モジュール10の表面Sに直交するように設けられる導電性のスペーサ部材31を設ける。これにより、導電性のスペーサ部材31の上端31aと、スペーサ部材31が設けられない接続端子12との間の距離(空間距離)を大きくすることができるので、スペーサ部材31の上端31a(接続導体30)と、スペーサ部材31が設けられない接続端子12との絶縁を確保することができる。
【0054】
また、本実施形態では、上記のように、第1絶縁部材21の孔部21dは、スペーサ部材31の上端31aに対応する位置に設けられている。これにより、接続導体30を、第1絶縁部材21の孔部21dに、半導体モジュール10の表面Sに沿った方向に挿入することにより、容易に、スペーサ部材31と接続導体30とを接続することができる。
【0055】
また、本実施形態では、上記のように、接続導体30は、接続端子12に電気的に接続されるとともに、コンデンサ2が実装された基板5に接続される。これにより、接続導体30を介して、接続端子12とコンデンサ2が実装された基板5とを容易に電気的に接続することができる。
【0056】
また、本実施形態では、上記のように、X方向およびY方向から見て、絶縁部材20の上端(第1絶縁部材21の上端21aおよび第2絶縁部材22の上端22b)および側端(第1絶縁部材21の側端21bおよび第2絶縁部材22の側端22c)は、それぞれ、接続端子12の上端12eおよび側端12fよりも外側に配置されている。これにより、絶縁部材20の大きさが比較的大きくなるので、接続端子12同士の間の絶縁距離(沿面距離)をより増大させることができる。
【0057】
また、本実施形態では、上記のように、絶縁部材20は、溝部10fおよび10gに配置されている。これにより、溝部10fおよび10gにおいて、絶縁部材20を安定した状態で配置することができる。
【0058】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0059】
上記実施形態では、半導体モジュールの内部に整流ダイオードが収納される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、半導体モジュールの内部に整流ダイオード以外の半導体素子(スイッチング素子など)が収納されていてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、半導体モジュールの表面に、4つの接続端子が設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、接続端子の数は、4つに限られない。
【0061】
また、上記実施形態では、第1絶縁部材が、X方向に沿って2つ配置された半導体モジュールに跨るように配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、X方向に沿って2つ配置された半導体モジュールの各々に(個別に)、第1絶縁部材が配置されていてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、第1絶縁部材の第1切込み部に対して、第2絶縁部材の第2切込み部が挿入されることにより、第1絶縁部材に対して第2絶縁部材が固定されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第1絶縁部材に対して第2絶縁部材が接着剤などにより固定されていてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、接続端子と接続導体との間に導電性のスペーサ部材が設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、接続端子同士の絶縁距離が十分に確保されるのであれば、スペーサ部材を設けなくてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、基板にコンデンサが実装されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、基板にコンデンサ以外の電気機器が実装されていてもよい。
【符号の説明】
【0065】
2 コンデンサ(電気機器)
5 基板
10、10a、10b 半導体モジュール
10g、10f 溝部
11、11a~11d 整流ダイオード(半導体素子)
12、12a~12d 接続端子
12e 上端
12f 側端
20 絶縁部材
21 第1絶縁部材
21a 上端
21b 側端
21c 第1切込み部
21d 孔部
22 第2絶縁部材
22b 上端
22c 側端
22d 第2切込み部
30 接続導体
31 スペーサ部材
31a 上端
100 電力変換装置
S 表面
X方向(第1方向)
Y方向(第2方向)