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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】赤外線検出器
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/08 20060101AFI20231108BHJP
   H01L 31/10 20060101ALI20231108BHJP
   H01L 27/144 20060101ALI20231108BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20231108BHJP
   G01J 1/02 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
H01L31/08 N
H01L31/10 D
H01L27/144 K
H01L27/146 A
G01J1/02 B
G01J1/02 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019204924
(22)【出願日】2019-11-12
(65)【公開番号】P2021077804
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 僚
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-211019(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108281495(CN,A)
【文献】米国特許第09799785(US,B1)
【文献】特開2018-107277(JP,A)
【文献】特開2009-027046(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0025466(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/08-31/119
H01L 27/14-27/148
G01J 1/00-1/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の赤外線を吸収する第1の受光層と、
第2の赤外線を吸収する第2の受光層と、
前記第1の受光層と前記第2の受光層との間に設けられた障壁層と、
前記障壁層との間で前記第1の受光層を挟むように配置され、前記第1の受光層に接する第1の電極層と、
前記障壁層との間で前記第2の受光層を挟むように配置され、前記第2の受光層に接する第2の電極層と、
を有し、
前記第1の受光層のバンドギャップは、前記第2の受光層のバンドギャップよりも大きく、
前記第1の電極層のバンドギャップは、前記第1の受光層のバンドギャップよりも大きく、
前記第2の電極層のバンドギャップは、前記第2の受光層のバンドギャップよりも大きく、
前記第2の電極層のバンドギャップは、前記第1の受光層のバンドギャップ以下であり、
前記第1の電極層のバンドギャップと前記第1の受光層のバンドギャップとの差は、前記第2の電極層のバンドギャップと前記第2の受光層のバンドギャップとの差よりも小さいことを特徴とする赤外線検出器。
【請求項2】
前記第1の電極層のバンドギャップと前記第1の受光層のバンドギャップとの差が0.03eV以上であり、
前記第2の電極層のバンドギャップと前記第2の受光層のバンドギャップとの差が0.03eV以上であることを特徴とする請求項に記載の赤外線検出器。
【請求項3】
前記第1の電極層は、当該第1の電極層の厚さ方向に並んだ複数の第1の半導体層を含み、
前記第2の電極層は、当該第2の電極層の厚さ方向に並んだ複数の第2の半導体層を含み、
前記複数の第1の半導体層のバンドギャップは、前記第1の受光層から離間するほど大きくなっており、
前記複数の第2の半導体層のバンドギャップは、前記第2の受光層から離間するほど大きくなっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の赤外線検出器。
【請求項4】
前記第1の受光層、前記第2の受光層、前記障壁層、前記第1の電極層及び前記第2の電極層は超格子を含むことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の赤外線検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、赤外線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
タイプII超格子(Type II Superlattice:T2SL)は、水銀カドミウムテルル(Mercury Cadmium Telluride:MCT)に変わる次世代の赤外線検出器の材料として期待されており、近年、タイプII超格子を用いた赤外線検出器について盛んに研究されている。タイプII超格子を用いた赤外線検出器の一例は、GaSb基板上に設けられた、GaSb、InAs、AlSb等の材料の超格子を含む受光層を有する。
【0003】
2波長の赤外線を検出できる2波長赤外線検出器についての研究も行われている。2波長赤外線検出器は、バンドギャップが相違する2つの受光層と、これらの間に設けられた障壁層とを含む。障壁層は、電子又は正孔の一方の流れをブロックする。障壁層により正孔の流れがブロックされる2波長赤外線検出器はpBp型とよばれ、障壁層により電子の流れがブロックされる2波長赤外線検出器はnBn型とよばれることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-211019号公報
【文献】特開2018-107277号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】SPIE Proceedings. Vol. 8155, pp.815507 (2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の2波長赤外線検出器では、十分な信号/雑音比(S/N比)を得ることができない。
【0007】
本開示の目的は、S/N比を向上することができる赤外線検出器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一形態によれば、第1の赤外線を吸収する第1の受光層と、第2の赤外線を吸収する第2の受光層と、前記第1の受光層と前記第2の受光層との間に設けられた障壁層と、前記障壁層との間で前記第1の受光層を挟むように配置され、前記第1の受光層に接する第1の電極層と、前記障壁層との間で前記第2の受光層を挟むように配置され、前記第2の受光層に接する第2の電極層と、を有し、前記第1の受光層のバンドギャップは、前記第2の受光層のバンドギャップよりも大きく、前記第1の電極層のバンドギャップは、前記第1の受光層のバンドギャップよりも大きく、前記第2の電極層のバンドギャップは、前記第2の受光層のバンドギャップよりも大きく、前記第2の電極層のバンドギャップは、前記第1の受光層のバンドギャップ以下であり、前記第1の電極層のバンドギャップと前記第1の受光層のバンドギャップとの差は、前記第2の電極層のバンドギャップと前記第2の受光層のバンドギャップとの差よりも小さい赤外線検出器が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、S/N比を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係る赤外線検出器を示す断面図である。
図2】第1の実施形態に係る赤外線検出器内のエネルギバンドを示す図である。
図3】第1の動作例における第1の実施形態に係る赤外線検出器内のエネルギバンドを示す図である。
図4】第2の動作例における第1の実施形態に係る赤外線検出器内のエネルギバンドを示す図である。
図5A】第1の実施形態に係る赤外線検出器の製造方法を示す断面図(その1)である。
図5B】第1の実施形態に係る赤外線検出器の製造方法を示す断面図(その2)である。
図5C】第1の実施形態に係る赤外線検出器の製造方法を示す断面図(その3)である。
図5D】第1の実施形態に係る赤外線検出器の製造方法を示す断面図(その4)である。
図6】第2の実施形態に係る赤外線検出器を示す断面図である。
図7】第2の実施形態に係る赤外線検出器内のエネルギバンドを示す図である。
図8】第1の動作例における第2の実施形態に係る赤外線検出器内のエネルギバンドを示す図である。
図9】第2の動作例における第2の実施形態に係る赤外線検出器内のエネルギバンドを示す図である。
図10】第3の実施形態に係る赤外線検出器を示す断面図である。
図11】第3の実施形態に係る赤外線検出器内のエネルギバンドを示す図である。
図12】第4の実施形態に係る赤外線撮像素子を示す斜視図である。
図13】第4の実施形態に係る赤外線撮像素子の一部を拡大して示す断面図である。
図14】第5の実施形態に係る赤外線撮像システムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
雑音である暗電流を低減することで、赤外線検出器のS/N比を向上することができる。2波長の赤外線を検出できる赤外線検出器では、受光層に隣接して設けられる電極層において熱生成されるキャリアが暗電流の増加を引き起こす。特に、2つの電極層のうち、長波長側の赤外線を受光する受光層に隣接して設けられる電極層において熱生成されるキャリアが暗電流の増加をより引き起こしやすい。キャリアの熱生成は電極層のバンドギャップを受光層のバンドギャップよりも大きくすることで抑制することができる。これらの観点から、S/N比の向上のために、長波長側の赤外線を受光する受光層のバンドギャップよりも、この受光層に隣接する電極層のバンドギャップを大きくすることが考えられる。ところが、電極層のバンドギャップが過剰に大きい場合、当該電極層を通じて光電流が外部に流れ出にくくなる。光電流の低下は信号の低下につながるため、十分なS/N比が得られなくなる。本願発明者は、これらの知見に基づき鋭意検討を行った。この結果、2波長の赤外線を検出できる赤外線検出器に含まれる2つの受光層のバンドギャップ及び2つの電極層のバンドギャップの間に、適切な関係が成り立つことが重要であることが明らかになった。また、本願発明者が行ったシミュレーションにより、上記適切な関係が成り立つ上で、互いに隣接する電極層と受光層との間のバンドギャップの差が0.03eV以上である場合に、暗電流は無視できる程度まで抑制されることも明らかになった。
【0012】
以下、本開示の実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。
【0013】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。第1の実施形態は、pBp型の赤外線検出器に関する。図1は、第1の実施形態に係る赤外線検出器を示す断面図である。図2は、バイアスが印加されていないときの第1の実施形態に係る赤外線検出器内のエネルギバンドを示す図である。図2中のEfはフェルミレベルを示す。
【0014】
第1の実施形態に係る赤外線検出器100は、図1に示すように、基板101と、バッファ層102と、エッチングストッパ層103と、第1の電極層110と、第1の受光層120と、障壁層150と、第2の受光層130と、第2の電極層140とを有する。赤外線検出器100は、更に、絶縁膜160と、第1の電極170と、第2の電極180とを有する。
【0015】
基板101は、例えばn型のGaSb基板である。例えば、基板101の表面のミラー指数は(100)である。バッファ層102は基板101上に設けられている。バッファ層102は、例えばGaSb層である。バッファ層102の厚さは、例えば90nm~110nm程度である。エッチングストッパ層103はバッファ層102上に設けられている。エッチングストッパ層103は、例えばInAsSb層である。エッチングストッパ層103の厚さは、例えば280nm~320nm程度である。InAsSb層の混晶組成は、GaSbに格子整合する混晶組成であることが好ましく、InAsSb層は、InAs0.91Sb0.09層であることが好ましい。
【0016】
第1の電極層110はエッチングストッパ層103上に設けられている。第1の電極層110は、InAs層とGaSb層とが交互に積層されたタイプII超格子を含む。例えば、InAs層の厚さは3.0nmであり、GaSb層の厚さは1.2nmである。厚さが3.0nmのInAs層と厚さが1.2nmのGaSb層とが交互に積層されたタイプII超格子のバンドギャップは約0.177eVである。例えば、第1の電極層110には、正孔濃度が1×1018cm-3程度となるようにBeがドーピングされており、第1の電極層110はp型の導電型を有する。第1の電極層110の厚さは、例えば340nm~380nm程度である。
【0017】
第1の受光層120は第1の電極層110上に設けられている。第1の受光層120は、InAs層とGaSb層とが交互に積層されたタイプII超格子を含む。例えば、InAs層の厚さは3.4nmであり、GaSb層の厚さは1.2nmである。厚さが3.4nmのInAs層と厚さが1.2nmのGaSb層とが交互に積層されたタイプII超格子のバンドギャップは約0.146eVである。例えば、第1の受光層120には、正孔濃度が1×1016cm-3程度となるようにBeがドーピングされており、第1の受光層120はp型の導電型を有する。第1の受光層120の厚さは、例えば1200nm~1400nm程度である。
【0018】
障壁層150は第1の受光層120上に設けられている。障壁層150は、InAs層とAlSb層とが交互に積層されたタイプII超格子を含む。例えば、InAs層の厚さは4.6nmであり、AlSb層の厚さは1.2nmである。厚さが4.6nmのInAs層と厚さが1.2nmのAlSb層とが交互に積層されたタイプII超格子のバンドギャップは約0.485eVである。例えば、障壁層150には、正孔濃度が1×1016cm-3程度となるようにBeがドーピングされており、障壁層150はp型の導電型を有する。障壁層150は、正孔のみをブロックするユニポーラ障壁層として機能する。障壁層150の厚さは、例えば90nm~110nm程度である。
【0019】
第2の受光層130は障壁層150上に設けられている。第2の受光層130は、InAs層とGaSb層とが交互に積層されたタイプII超格子を含む。例えば、InAs層の厚さは4.8nmであり、GaSb層の厚さは2.1nmである。厚さが4.8nmのInAs層と厚さが2.1nmのGaSb層とが交互に積層されたタイプII超格子のバンドギャップは約0.091eVである。例えば、第2の受光層130には、正孔濃度が1×1016cm-3程度となるようにBeがドーピングされており、第2の受光層130はp型の導電型を有する。第2の受光層130の厚さは、例えば1200nm~1400nm程度である。
【0020】
第2の電極層140は第2の受光層130上に設けられている。第2の電極層140は、InAs層とGaSb層とが交互に積層されたタイプII超格子を含む。例えば、InAs層の厚さは4.2nmであり、GaSb層の厚さは2.1nmである。厚さが4.2nmのInAs層と厚さが2.1nmのGaSb層とが交互に積層されたタイプII超格子のバンドギャップは約0.127eVである。例えば、第2の電極層140には、正孔濃度が1×1018cm-3程度となるようにBeがドーピングされており、第2の電極層140はp型の導電型を有する。第2の電極層140の厚さは、例えば340nm~380nm程度である。
【0021】
このように、第1の電極層110に含まれる超格子の材料、第1の受光層120に含まれる超格子の材料、第2の受光層130に含まれる超格子の材料及び第2の電極層140に含まれる超格子の材料は共通している。また、第1の受光層120の正孔濃度と第2の受光層130の正孔濃度とは同程度であり、第1の電極層110の正孔濃度と第2の電極層140の正孔濃度とは同程度である。第1の電極層110の正孔濃度は第1の受光層120の正孔濃度よりも高く、第2の電極層140の正孔濃度は第2の受光層130の正孔濃度よりも高い。
【0022】
第2の電極層140、第2の受光層130、障壁層150及び第1の受光層120はメサ状にエッチングされており、絶縁膜160は、第2の電極層140、第2の受光層130、障壁層150及び第1の受光層120の側面を被覆する。絶縁膜160は、例えば酸化ケイ素膜である。絶縁膜160の厚さは、例えば480nm~520nm程度である。絶縁膜160は、第1の電極層110の上面及び第2の電極層140の上面も覆う。
【0023】
絶縁膜160に、第1の電極層110の上面の一部を露出する開口部167と、第2の電極層140の上面の一部を露出する開口部168とが形成されている。開口部167の内側に第1の電極170が形成され、開口部168の内側に第2の電極180が設けられている。第1の電極170は、例えば、第1の電極層110と接するTi膜と、Ti膜上のPt膜と、Pt膜上のAu膜とを有する。第1の電極170は第1の電極層110とオーミック接合する。第2の電極180は、例えば、第2の電極層140と接するTi膜と、Ti膜上のPt膜と、Pt膜上のAu膜とを有する。第2の電極180は第2の電極層140とオーミック接合する。
【0024】
このように、赤外線検出器100では、第1の電極層110のバンドギャップEg1が約0.177eVであり、第1の受光層120のバンドギャップEg2が約0.146eVである。また、第2の受光層130のバンドギャップEg3が約0.091eVであり、第2の電極層140のバンドギャップEg4が約0.127eVであり、障壁層150のバンドギャップEg5が約0.485eVである。バンドギャップEg2とバンドギャップEg3とが相違するため、第1の受光層120が吸収する第1の赤外線の波長と、第2の受光層130が吸収する第2の赤外線の波長とが相違する。障壁層150は、第1の受光層120と第2の受光層130との間に設けられている。第1の電極層110は、障壁層150との間で第1の受光層120を挟むように配置され、第1の受光層120に接する。第2の電極層140は、障壁層150との間で第2の受光層130を挟むように配置され、第2の受光層130に接する。
【0025】
図2に示すように、第1の受光層120のバンドギャップEg2は、第2の受光層130のバンドギャップEg3よりも大きい。このため、第2の受光層130が受光する第2の赤外線の波長は、第1の受光層120が吸収する第1の赤外線の波長よりも長い。第2の電極層140のバンドギャップEg4は、第2の受光層130のバンドギャップEg3よりも大きい。第1の電極層110のバンドギャップEg1は、第1の受光層120のバンドギャップEg2よりも大きい。第2の電極層140のバンドギャップEg4は、第1の受光層120のバンドギャップEg2以下である。
【0026】
赤外線検出器100には、基板101側から赤外線Irが照射される。赤外線検出器100に照射された赤外線Irは、基板101を通じて赤外線検出器100の内部に入射し、その波長に応じて第1の受光層120又は第2の受光層130に吸収される。第1の受光層120又は第2の受光層130に赤外線Irが吸収されると、赤外線Irを吸収した第1の受光層120又は第2の受光層130にて電子-正孔対が生成される。第1の受光層120又は第2の受光層130にて生成された電子及び正孔は、第1の電極層110と第2の電極層140との間に印加されている電界に応じて拡散し、電流が発生する。そして、この電流を信号電流(光電流)として外部で検出することができる。
【0027】
ここで、赤外線検出器100の動作の詳細について説明する。図3は、第1の動作例における赤外線検出器100内のエネルギバンドを示す図である。図4は、第2の動作例における赤外線検出器100内のエネルギバンドを示す図である。
【0028】
第1の動作例では、第2の受光層130に吸収された赤外線Irを検出する。第1の動作例では、図3に示すように、第1の受光層120の伝導帯の下端Ec2が第2の受光層130の伝導帯の下端Ec3以下となるように、第1の電極170にプラスの電圧が印加され、第2の電極180にマイナスの電圧が印加される。第2の電極層140のバンドギャップEg4は、第2の受光層130のバンドギャップEg3よりも大きい。このため、第2の電極層140におけるキャリアの熱生成が抑制され、暗電流を低減することができる。特に、本実施形態では、バンドギャップEg4がバンドギャップEg3よりも0.03eV以上大きいため、第2の電極層140で熱生成されるキャリアにより生じる暗電流は無視できる程度に抑制することができる。
【0029】
第2の受光層130に吸収され得る赤外線Irが基板101を通じて赤外線検出器100の内部に入射すると、赤外線Irは第2の受光層130に吸収され、赤外線Irを吸収した第2の受光層130にて電子10及び正孔20が生成される。電子10は、第1の電極層110と第2の電極層140との間に印加されている電界に応じて、障壁層150を通過して第1の受光層120へと拡散する。
【0030】
第1の受光層120へと拡散した電子10に対しては、第1の電極層110側では、第1の電極層110のポテンシャル障壁が存在し、第2の電極層140側では、障壁層150、第2の受光層130及び第2の電極層140のポテンシャル障壁が存在する。本実施形態では、第1の電極層110のバンドギャップEg1と第1の受光層120のバンドギャップEg2との差ΔEg12(=Eg1-Eg2)は0.031eVであり、第2の電極層140のバンドギャップEg4と第2の受光層130のバンドギャップEg3との差ΔEg43(=Eg4-Eg3)は0.036eVである。つまり、差ΔEg12は差ΔEg43よりも小さく、第1の電極層110のポテンシャル障壁は、障壁層150、第2の受光層130及び第2の電極層140のポテンシャル障壁よりも小さい。従って、第1の受光層120へと拡散した電子10は、第1の電極層110を介して第1の電極170に到達し、信号電流(光電流)Isが外部に十分に流れ出る。これは、第1の受光層120の伝導帯の下端Ec2が第2の受光層130の伝導帯の下端Ec3と等しい場合でも同様である。
【0031】
なお、図2に示すように、赤外線検出器100において、第1の電極層110の価電子帯の上端Ev1と第1の受光層120の価電子帯の上端Ev2との差ΔEv12(=Ev1-Ev2)は、第2の電極層140の価電子帯の上端Ev4と第2の受光層130の価電子帯の上端Ev3との差ΔEv43(=Ev4-Ev3)と同程度である。従って、差ΔEg43と差ΔEg12との差は、第2の電極層140の伝導帯の下端Ec4と第2の受光層130の伝導帯の下端Ec3との差ΔEc43(=Ec4-Ec3)と第1の電極層110の伝導帯の下端Ec1と第1の受光層120の伝導帯の下端Ec2との差ΔEc12(=Ec1-Ec2)との差と同程度である。
【0032】
第2の動作例では、第1の受光層120に吸収された赤外線Irを検出する。第2の動作例では、図4に示すように、第1の電極170にマイナスの電圧が印加され、第2の電極180にプラスの電圧が印加される。第1の受光層120の価電子帯の上端Ev2は第2の受光層130の価電子帯の上端Ev3以上となる。第1の電極層110のバンドギャップEg1は、第1の受光層120のバンドギャップEg2よりも大きい。このため、第1の電極層110におけるキャリアの熱生成が抑制され、暗電流を低減することができる。特に、本実施形態では、バンドギャップEg1がバンドギャップEg2よりも0.03eV以上大きいため、第1の電極層110で熱生成されるキャリアにより生じる暗電流は無視できる程度に抑制することができる。
【0033】
第1の受光層120に吸収され得る赤外線Irが基板101を通じて赤外線検出器100の内部に入射すると、赤外線Irは第1の受光層120に吸収され、赤外線Irを吸収した第1の受光層120にて電子10及び正孔20が生成される。電子10は、第1の電極層110と第2の電極層140との間に印加されている電界に応じて、障壁層150を通過して第2の受光層130へと拡散する。
【0034】
第2の受光層130へと拡散した電子10に対しては、第1の電極層110側では、障壁層150、第1の受光層120及び第1の電極層110のポテンシャル障壁が存在し、第2の電極層140側では、第2の電極層140のポテンシャル障壁が存在する。本実施形態では、第2の電極層140のバンドギャップEg4は第1の受光層120のバンドギャップEg2以下であり、第2の電極層140のポテンシャル障壁は、障壁層150、第1の受光層120及び第1の電極層110のポテンシャル障壁よりも小さい。従って、第2の受光層130へと拡散した電子10は、第2の電極層140を介して第2の電極180に到達し、信号電流(光電流)Isが外部に十分に流れ出る。
【0035】
このように、第1の実施形態に係る赤外線検出器100によれば、第2の電極層140で熱生成されるキャリアにより生じる暗電流及び第1の電極層110で熱生成されるキャリアにより生じる暗電流を抑制することができる。また、信号電流(光電流)Isが外部に十分に流れ出る。従って、赤外線検出器100によれば、S/N比を向上することができる。
【0036】
なお、第1の電極層110、第1の受光層120、障壁層150、第2の受光層130及び第2の電極層140に含まれるp型不純物はBeに限定されない。例えば、p型不純物としてZnが用いられてもよい。
【0037】
次に、第1の実施形態に係る赤外線検出器100の製造方法について説明する。図5A図5Dは、第1の実施形態に係る赤外線検出器100の製造方法を示す断面図である。この製造方法では、バッファ層102、エッチングストッパ層103、第1の電極層110、第1の受光層120、障壁層150、第2の受光層130及び第2の電極層140を基板101上にエピタキシャル成長させる。以下の説明では、これら半導体層を分子線エピタキシ(Molecular Beam Epitaxy:MBE)法によりエピタキシャル成長させることとする。
【0038】
まず、n型GaSb(100)基板等の基板101をMBE装置の基板導入室の中に導入する。次いで、基板101を超高真空に保持された成長室へ搬送する。その後、例えばSb雰囲気下で基板101を加熱する。この加熱により、基板101の表面の酸化膜が除去される。続いて、図5Aに示すように、MBE法により、基板101上にバッファ層102を形成し、バッファ層102上にエッチングストッパ層103を形成する。基板101の温度は、例えば480℃~520℃程度とする。バッファ層102の形成により、エッチングストッパ層103の下地の表面の平坦性が向上する。
【0039】
次いで、図5Bに示すように、MBE法により、エッチングストッパ層103上に第1の電極層110、第1の受光層120、障壁層150、第2の受光層130及び第2の電極層140を形成する。基板101の温度は、例えば350℃~520℃程度とする。
【0040】
その後、図5Cに示すように、第1の電極層110の一部の表面が露出するように、第2の電極層140、第2の受光層130、障壁層150及び第1の受光層120を選択的にメサ状にエッチングする。
【0041】
続いて、図5Dに示すように、第2の電極層140、第2の受光層130、障壁層150及び第1の受光層120の側面と、第1の電極層110及び第2の電極層140の上面とを覆う絶縁膜160を形成する。絶縁膜160は、例えば化学気相堆積(Chemical Vapor Deposition:CVD)法により形成することができる。絶縁膜160として酸化ケイ素膜を形成する場合、例えば、反応ガスとしてシラン及び一酸化二窒素を用いてもよい。
【0042】
次いで、マスクを用いた絶縁膜160の選択的なエッチングにより、第1の電極層110の上面の一部を露出する開口部167と、第2の電極層140の上面の一部を露出する開口部168とを形成する(図1参照)。更に、開口部167の内側に第1の電極170を形成し、開口部168の内側に第2の電極180を形成する(図1参照)。
【0043】
このようにして、第1の実施形態に係る赤外線検出器100を製造することができる。
【0044】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、nBn型の赤外線検出器に関する。第2の実施形態は、主に、第1の電極層、第1の受光層、障壁層、第2の受光層及び第2の電極層の導電型の点で第1の実施形態と相違する。図6は、第2の実施形態に係る赤外線検出器を示す断面図である。図7は、バイアスが印加されていないときの第2の実施形態に係る赤外線検出器内のエネルギバンドを示す図である。図7中のEfはフェルミレベルを示す。
【0045】
第2の実施形態に係る赤外線検出器200は、図6に示すように、基板101と、バッファ層102と、エッチングストッパ層103と、第1の電極層210と、第1の受光層220と、障壁層250と、第2の受光層230と、第2の電極層240とを有する。赤外線検出器200は、更に、絶縁膜160と、第1の電極170と、第2の電極180とを有する。
【0046】
第1の電極層210はエッチングストッパ層103上に設けられている。第1の電極層210は、InAs層とGaSb層とが交互に積層されたタイプII超格子を含む。例えば、InAs層の厚さは3.0nmであり、GaSb層の厚さは3.6nmである。厚さが3.0nmのInAs層と厚さが3.6nmのGaSb層とが交互に積層されたタイプII超格子のバンドギャップは約0.246eVである。例えば、第1の電極層210には、電子濃度が1×1018cm-3程度となるようにSiがドーピングされており、第1の電極層210はn型の導電型を有する。第1の電極層210の厚さは、例えば340nm~380nm程度である。
【0047】
第1の受光層220は第1の電極層210上に設けられている。第1の受光層220は、InAs層とGaSb層とが交互に積層されたタイプII超格子を含む。例えば、InAs層の厚さは3.3nmであり、GaSb層の厚さは3.6nmである。厚さが3.3nmのInAs層と厚さが3.6nmのGaSb層とが交互に積層されたタイプII超格子のバンドギャップは約0.212eVである。例えば、第1の受光層220には、電子濃度が1×1016cm-3程度となるようにSiがドーピングされており、第1の受光層220はn型の導電型を有する。第1の受光層220の厚さは、例えば1200nm~1400nm程度である。
【0048】
障壁層250は第1の受光層220上に設けられている。障壁層250は、例えばAl0.2Ga0.8Sb層である。Al0.2Ga0.8Sb層のバンドギャップは約1.083eVである。例えば、障壁層250には、電子濃度が1×1016cm-3程度となるようにSiがドーピングされており、障壁層250はn型の導電型を有する。障壁層250は、電子のみをブロックするユニポーラ障壁層として機能する。障壁層250の厚さは、例えば90nm~110nm程度である。
【0049】
第2の受光層230は障壁層250上に設けられている。第2の受光層230は、InAs層とGaSb層とが交互に積層されたタイプII超格子を含む。例えば、InAs層の厚さは4.2nmであり、GaSb層の厚さは2.1nmである。厚さが4.2nmのInAs層と厚さが2.1nmのGaSb層とが交互に積層されたタイプII超格子のバンドギャップは約0.127eVである。例えば、第2の受光層230には、電子濃度が1×1016cm-3程度となるようにSiがドーピングされており、第2の受光層230はn型の導電型を有する。第2の受光層230の厚さは、例えば1200nm~1400nm程度である。
【0050】
第2の電極層240は第2の受光層230上に設けられている。第2の電極層240は、InAs層とGaSb層とが交互に積層されたタイプII超格子を含む。例えば、InAs層の厚さは3.6nmであり、GaSb層の厚さは2.1nmである。厚さが3.6nmのInAs層と厚さが2.1nmのGaSb層とが交互に積層されたタイプII超格子のバンドギャップは約0.171eVである。例えば、第2の電極層240には、電子濃度が1×1018cm-3程度となるようにSiがドーピングされており、第2の電極層240はn型の導電型を有する。第2の電極層240の厚さは、例えば340nm~380nm程度である。
【0051】
このように、第1の電極層210に含まれる超格子の材料、第1の受光層220に含まれる超格子の材料、第2の受光層230に含まれる超格子の材料及び第2の電極層240に含まれる超格子の材料は共通している。また、第1の受光層220の電子濃度と第2の受光層230の電子濃度とは同程度であり、第1の電極層210の電子濃度と第2の電極層240の電子濃度とは同程度である。第1の電極層210の電子濃度は第1の受光層220の電子濃度よりも高く、第2の電極層240の電子濃度は第2の受光層230の電子濃度よりも高い。
【0052】
第2の電極層240、第2の受光層230、障壁層250及び第1の受光層220はメサ状にエッチングされており、絶縁膜160は、第2の電極層240、第2の受光層230、障壁層250及び第1の受光層220の側面を被覆する。絶縁膜160は、第1の電極層210の上面及び第2の電極層240の上面も覆う。
【0053】
絶縁膜160に、開口部167及び開口部168が形成されており、開口部167の内側に第1の電極170が形成され、開口部168の内側に第2の電極180が設けられている。第1の電極170は、例えば、第1の電極層210と接するTi膜と、Ti膜上のPt膜と、Pt膜上のAu膜とを有する。第1の電極170は第1の電極層210とオーミック接合する。第2の電極180は、例えば、第2の電極層240と接するTi膜と、Ti膜上のPt膜と、Pt膜上のAu膜とを有する。第2の電極180は第2の電極層240とオーミック接合する。
【0054】
このように、赤外線検出器200では、第1の電極層210のバンドギャップEg1が約0.246eVであり、第1の受光層220のバンドギャップEg2が約0.212eVである。また、第2の受光層230のバンドギャップEg3が約0.127eVであり、第2の電極層240のバンドギャップEg4が約0.171eVであり、障壁層250のバンドギャップEg5が約1.083eVである。バンドギャップEg2とバンドギャップEg3とが相違するため、第1の受光層220が吸収する第1の赤外線の波長と、第2の受光層230が吸収する第2の赤外線の波長とが相違する。障壁層250は、第1の受光層220と第2の受光層230との間に設けられている。第1の電極層210は、障壁層250との間で第1の受光層220を挟むように配置され、第1の受光層220に接する。第2の電極層240は、障壁層250との間で第2の受光層230を挟むように配置され、第2の受光層230に接する。
【0055】
図7に示すように、第1の受光層220のバンドギャップEg2は、第2の受光層230のバンドギャップEg3よりも大きい。このため、第2の受光層230が受光する第2の赤外線の波長は、第1の受光層220が吸収する第1の赤外線の波長よりも長い。第2の電極層240のバンドギャップEg4は、第2の受光層230のバンドギャップEg3よりも大きい。第1の電極層210のバンドギャップEg1は、第1の受光層220のバンドギャップEg2よりも大きい。第2の電極層240のバンドギャップEg4は、第1の受光層220のバンドギャップEg2以下である。
【0056】
他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0057】
赤外線検出器200には、基板101側から赤外線Irが照射される。赤外線検出器200に照射された赤外線Irは、基板101を通じて赤外線検出器200の内部に入射し、その波長に応じて第1の受光層220又は第2の受光層230に吸収される。第1の受光層220又は第2の受光層230に赤外線Irが吸収されると、赤外線Irを吸収した第1の受光層220又は第2の受光層230にて電子-正孔対が生成される。第1の受光層220又は第2の受光層230にて生成された電子及び正孔は、第1の電極層210と第2の電極層240との間に印加されている電界に応じて拡散し、電流が発生する。そして、この電流を信号電流(光電流)として外部で検出することができる。
【0058】
ここで、赤外線検出器200の動作の詳細について説明する。図8は、第1の動作例における赤外線検出器200内のエネルギバンドを示す図である。図9は、第2の動作例における赤外線検出器200内のエネルギバンドを示す図である。
【0059】
第1の動作例では、第2の受光層230に吸収された赤外線Irを検出する。第1の動作例では、図8に示すように、第1の受光層220の価電子帯の上端Ev2が第2の受光層230の価電子帯の上端Ev3以上となるように、第1の電極170にマイナスの電圧が印加され、第2の電極180にプラスの電圧が印加される。第2の電極層240のバンドギャップEg4は、第2の受光層230のバンドギャップEg3よりも大きい。このため、第2の電極層240におけるキャリアの熱生成が抑制され、暗電流を低減することができる。特に、本実施形態では、バンドギャップEg4がバンドギャップEg3よりも0.03eV以上大きいため、第2の電極層240で熱生成されるキャリアにより生じる暗電流は無視できる程度に抑制することができる。
【0060】
第2の受光層230に吸収され得る赤外線Irが基板101を通じて赤外線検出器200の内部に入射すると、赤外線Irは第2の受光層230に吸収され、赤外線Irを吸収した第2の受光層230にて電子10及び正孔20が生成される。正孔20は、第1の電極層210と第2の電極層240との間に印加されている電界に応じて、障壁層250を通過して第1の受光層220へと拡散する。
【0061】
第1の受光層220へと拡散した正孔20に対しては、第1の電極層210側では、第1の電極層210のポテンシャル障壁が存在し、第2の電極層240側では、障壁層250、第2の受光層230及び第2の電極層240のポテンシャル障壁が存在する。本実施形態では、第1の電極層210のバンドギャップEg1と第1の受光層220のバンドギャップEg2との差ΔEg12(=Eg1-Eg2)は0.034eVであり、第2の電極層240のバンドギャップEg4と第2の受光層230のバンドギャップEg3との差ΔEg43(=Eg4-Eg3)は0.044eVである。つまり、差ΔEg12は差ΔEg43よりも小さく、第1の電極層210のポテンシャル障壁は、障壁層250、第2の受光層230及び第2の電極層240のポテンシャル障壁よりも小さい。従って、第1の受光層220へと拡散した正孔20は、第1の電極層210を介して第1の電極170に到達し、信号電流(光電流)Isが外部に十分に流れ出る。これは、第1の受光層220の価電子帯の上端Ev2が第2の受光層230の価電子帯の下端Ev3と等しい場合でも同様である。
【0062】
なお、図7に示すように、赤外線検出器200において、第1の電極層210の伝導帯の下端Ec1と第1の受光層220の伝導帯の下端Ec2との差ΔEc12(=Ec1-Ec2)は、第2の電極層240の伝導帯の下端Ec4と第2の受光層230の伝導帯の下端Ec3との差ΔEc43(=Ec4-Ec3)と同程度である。従って、差ΔEg43と差ΔEg12との差は、第2の電極層240の価電子帯の上端Ev4と第2の受光層230の価電子帯の上端Ev3との差ΔEv43(=Ev4-Ev3)と第1の電極層210の価電子帯の上端Ev1と第1の受光層220価電子帯の上端Ev3との差ΔEv12(=Ev1-Ev2)との差と同程度である。
【0063】
第2の動作例では、第1の受光層220に吸収された赤外線Irを検出する。第2の動作例では、図9に示すように、第1の電極170にプラスの電圧が印加され、第2の電極180にマイナスの電圧が印加される。第1の受光層220の伝導帯の下端Ec2は第2の受光層230の伝導帯の下端Ec3以下となる。第1の電極層210のバンドギャップEg1は、第1の受光層220のバンドギャップEg2よりも大きい。このため、第1の電極層210におけるキャリアの熱生成が抑制され、暗電流を低減することができる。特に、本実施形態では、バンドギャップEg1がバンドギャップEg2よりも0.03eV以上大きいため、第1の電極層210で熱生成されるキャリアにより生じる暗電流は無視できる程度に抑制することができる。
【0064】
第1の受光層220に吸収され得る赤外線Irが基板101を通じて赤外線検出器200の内部に入射すると、赤外線Irは第1の受光層220に吸収され、赤外線Irを吸収した第1の受光層220にて電子10及び正孔20が生成される。正孔20は、第1の電極層210と第2の電極層240との間に印加されている電界に応じて、障壁層250を通過して第2の受光層230へと拡散する。
【0065】
第2の受光層230へと拡散した正孔20に対しては、第1の電極層210側では、障壁層250、第1の受光層220及び第1の電極層210のポテンシャル障壁が存在し、第2の電極層240側では、第2の電極層240のポテンシャル障壁が存在する。本実施形態では、第2の電極層240のバンドギャップEg4は第1の受光層220のバンドギャップEg2以下であり、第2の電極層240のポテンシャル障壁は、障壁層250、第1の受光層220及び第1の電極層210のポテンシャル障壁よりも小さい。従って、第2の受光層230へと拡散した正孔20は、第2の電極層240を介して第2の電極180に到達し、信号電流(光電流)Isが外部に十分に流れ出る。
【0066】
このように、第2の実施形態に係る赤外線検出器200によれば、第2の電極層240で熱生成されるキャリアにより生じる暗電流及び第1の電極層210で熱生成されるキャリアにより生じる暗電流を抑制することができる。また、信号電流(光電流)Isが外部に十分に流れ出る。従って、赤外線検出器200によれば、S/N比を向上することができる。
【0067】
なお、第1の電極層210、第1の受光層220、障壁層250、第2の受光層230及び第2の電極層240に含まれるn型不純物はSiに限定されない。例えば、n型不純物としてTeが用いられてもよい。
【0068】
第2の実施形態に係る赤外線検出器200は、第1の実施形態に係る赤外線検出器100の製造方法と同様の方法で製造することができる。例えば、第1の電極層110、第1の受光層120、障壁層150、第2の受光層130及び第2の電極層140に代えて、第1の電極層210、第1の受光層220、障壁層250、第2の受光層230及び第2の電極層240をMBE法によりエピタキシャル成長させることができる。
【0069】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、nBn型の赤外線検出器に関する。第3の実施形態は、主に、第1の電極層及び第2の電極層の構成の点で第2の実施形態と相違する。図10は、第3の実施形態に係る赤外線検出器を示す断面図である。図11は、バイアスが印加されていないときの第3の実施形態に係る赤外線検出器内のエネルギバンドを示す図である。図11中のEfはフェルミレベルを示す。
【0070】
第3の実施形態に係る赤外線検出器300は、図10に示すように、基板101と、バッファ層102と、エッチングストッパ層103と、第1の電極層310と、第1の受光層220と、障壁層250と、第2の受光層230と、第2の電極層340とを有する。赤外線検出器200は、更に、絶縁膜160と、第1の電極170と、第2の電極180とを有する。つまり、第2の実施形態の第1の電極層210に代えて第1の電極層310が設けられ、第2の実施形態の第2の電極層240に代えて第2の電極層340が設けられている。
【0071】
第1の電極層310はエッチングストッパ層103上に設けられている。第1の電極層310は、第1のサブ電極層311と、第2のサブ電極層312と、第3のサブ電極層313とを有する。第1の電極層310の厚さは、例えば340nm~380nm程度である。第1~第3のサブ電極層311~313は第1の半導体層の例である。
【0072】
第1のサブ電極層311はエッチングストッパ層103上に設けられている。第1のサブ電極層311は、InAs層とGaSb層とが交互に積層されたタイプII超格子を含む。例えば、InAs層の厚さは3.0nmであり、GaSb層の厚さは3.6nmである。厚さが3.0nmのInAs層と厚さが3.6nmのGaSb層とが交互に積層されたタイプII超格子のバンドギャップは約0.246eVである。例えば、第1のサブ電極層311には、電子濃度が1×1018cm-3程度となるようにSiがドーピングされており、第1のサブ電極層311はn型の導電型を有する。
【0073】
第2のサブ電極層312は第1のサブ電極層311上に設けられている。第2のサブ電極層312は、InAs層とGaSb層とが交互に積層されたタイプII超格子を含む。例えば、InAs層の厚さは3.1nmであり、GaSb層の厚さは3.6nmである。厚さが3.1nmのInAs層と厚さが3.6nmのGaSb層とが交互に積層されたタイプII超格子のバンドギャップは約0.235eVである。例えば、第2のサブ電極層312には、電子濃度が1×1018cm-3程度となるようにSiがドーピングされており、第2のサブ電極層312はn型の導電型を有する。
【0074】
第3のサブ電極層313は第2のサブ電極層312上に設けられている。第3のサブ電極層313は、InAs層とGaSb層とが交互に積層されたタイプII超格子を含む。例えば、InAs層の厚さは3.2nmであり、GaSb層の厚さは3.6nmである。厚さが3.2nmのInAs層と厚さが3.6nmのGaSb層とが交互に積層されたタイプII超格子のバンドギャップは約0.223eVである。例えば、第3のサブ電極層313には、電子濃度が1×1018cm-3程度となるようにSiがドーピングされており、第3のサブ電極層313はn型の導電型を有する。
【0075】
第2の電極層340は第2の受光層230上に設けられている。第2の電極層340は、第1のサブ電極層341と、第2のサブ電極層342と、第3のサブ電極層343と、第4のサブ電極層344と、第5のサブ電極層345と、第6のサブ電極層346とを有する。第2の電極層340の厚さは、例えば340nm~380nm程度である。第1~第6のサブ電極層341~346は第2の半導体層の例である。
【0076】
第1のサブ電極層341は第2の受光層230上に設けられている。第1のサブ電極層341は、InAs層とGaSb層とが交互に積層されたタイプII超格子を含む。例えば、InAs層の厚さは4.1nmであり、GaSb層の厚さは2.1nmである。厚さが4.1nmのInAs層と厚さが2.1nmのGaSb層とが交互に積層されたタイプII超格子のバンドギャップは約0.135eVである。例えば、第1のサブ電極層341には、電子濃度が1×1018cm-3程度となるようにSiがドーピングされており、第1のサブ電極層341はn型の導電型を有する。
【0077】
第2のサブ電極層342は第1のサブ電極層341上に設けられている。第2のサブ電極層342は、InAs層とGaSb層とが交互に積層されたタイプII超格子を含む。例えば、InAs層の厚さは4.0nmであり、GaSb層の厚さは2.1nmである。厚さが4.0nmのInAs層と厚さが2.1nmのGaSb層とが交互に積層されたタイプII超格子のバンドギャップは約0.141eVである。例えば、第2のサブ電極層342には、電子濃度が1×1018cm-3程度となるようにSiがドーピングされており、第2のサブ電極層342はn型の導電型を有する。
【0078】
第3のサブ電極層343は第2のサブ電極層342上に設けられている。第3のサブ電極層343は、InAs層とGaSb層とが交互に積層されたタイプII超格子を含む。例えば、InAs層の厚さは3.9nmであり、GaSb層の厚さは2.1nmである。厚さが3.9nmのInAs層と厚さが2.1nmのGaSb層とが交互に積層されたタイプII超格子のバンドギャップは約0.148eVである。例えば、第3のサブ電極層343には、電子濃度が1×1018cm-3程度となるようにSiがドーピングされており、第3のサブ電極層343はn型の導電型を有する。
【0079】
第4のサブ電極層344は第3のサブ電極層343上に設けられている。第4のサブ電極層344は、InAs層とGaSb層とが交互に積層されたタイプII超格子を含む。例えば、InAs層の厚さは3.8nmであり、GaSb層の厚さは2.1nmである。厚さが3.8nmのInAs層と厚さが2.1nmのGaSb層とが交互に積層されたタイプII超格子のバンドギャップは約0.155eVである。例えば、第4のサブ電極層344には、電子濃度が1×1018cm-3程度となるようにSiがドーピングされており、第4のサブ電極層344はn型の導電型を有する。
【0080】
第5のサブ電極層345は第4のサブ電極層344上に設けられている。第5のサブ電極層345は、InAs層とGaSb層とが交互に積層されたタイプII超格子を含む。例えば、InAs層の厚さは3.7nmであり、GaSb層の厚さは2.1nmである。厚さが3.7nmのInAs層と厚さが2.1nmのGaSb層とが交互に積層されたタイプII超格子のバンドギャップは約0.163eVである。例えば、第5のサブ電極層345には、電子濃度が1×1018cm-3程度となるようにSiがドーピングされており、第5のサブ電極層345はn型の導電型を有する。
【0081】
第6のサブ電極層346は第5のサブ電極層345上に設けられている。第6のサブ電極層346は、InAs層とGaSb層とが交互に積層されたタイプII超格子を含む。例えば、InAs層の厚さは3.6nmであり、GaSb層の厚さは2.1nmである。厚さが3.6nmのInAs層と厚さが2.1nmのGaSb層とが交互に積層されたタイプII超格子のバンドギャップは約0.171eVである。例えば、第6のサブ電極層346には、電子濃度が1×1018cm-3程度となるようにSiがドーピングされており、第6のサブ電極層346はn型の導電型を有する。
【0082】
このように、第1の電極層210に代えて第1の電極層310が設けられ、第2の電極層240に代えて第2の電極層340が設けられている。他の構成は第2の実施形態と同様である。
【0083】
図11に示すように、赤外線検出器300では、第1~第3のサブ電極層311~313のうちで、第1の受光層220に近いものほどバンドギャップが小さくなっている。すなわち、第1の受光層220から第1のサブ電極層311にかけて、熱エネルギ程度の差で段階的にバンドギャップが変化している。このため、第2の受光層230に吸収された赤外線Irを検出する際に、信号電流Isを引き出しやすい。
【0084】
同様に、第1~第6のサブ電極層341~346のうちで、第2の受光層230に近いものほどバンドギャップが小さくなっている。すなわち、第2の受光層230から第6のサブ電極層346にかけて、熱エネルギ程度の差で段階的にバンドギャップが変化している。このため、第1の受光層220に吸収された赤外線Irを検出する際に、信号電流Isを引き出しやすい。
【0085】
なお、第1~第5のサブ電極層341~345のバンドギャップが第2の実施形態の第2の電極層240のバンドギャップよりも小さいが、第2の受光層230のバンドギャップよりも大きいため、暗電流を低減する効果を得ることができる。同様に、第2~第3のサブ電極層312~313のバンドギャップが第2の実施形態の第1の電極層210のバンドギャップよりも小さいが、第1の受光層220のバンドギャップよりも大きいため、暗電流を低減する効果を得ることができる。
【0086】
第2の電極層340では、第2の受光層230との間のバンドギャップ差が0.03eV未満の第1のサブ電極層341、第2のサブ電極層342、第3のサブ電極層343及び第4のサブ電極層344を薄くすることが好ましい。第1の電極層310では、第1の受光層220との間のバンドギャップ差が0.03eV未満の第2のサブ電極層312及び第3のサブ電極層313を薄くすることが好ましい。
【0087】
本開示においては、第2の受光層により受光される第2の赤外線の波長が、第1の受光層により受光される第1の赤外線の波長よりも長い。従って、S/N比の十分な向上には、第2電極層において熱生成されるキャリアにより生じる暗電流を抑制することが重要である。このため、第2の電極層のバンドギャップが第2の受光層のバンドギャップよりも大きければ、第1の電極層のバンドギャップが第1の受光層のバンドギャップよりも大きい必要はなく、第1の電極層のバンドギャップが第1の受光層のバンドギャップと同程度であってもよい。
【0088】
第1の受光層及び第2の受光層に含まれる超格子において、InAs層及びGaSb層の厚さは上記の実施形態のものに限定されず、吸収しようとする赤外線の波長に応じて適宜変更してもよい。
【0089】
第1の電極層、第1の受光層、第2の受光層及び第2の電極層に含まれる超格子において、InAs層とGaSb層との間に、GaSb基板に格子整合するようにInSb層が設けられてもよい。超格子の材料はInAs及びGaSbに限定されない。例えば、超格子の材料にInAs、InSb、GaSb及びAlSbのうちの2種以上が用いられてもよい。赤外領域に応答する材料であれば、InAs、InSb、GaSb及びAlSbのうちの2種以上の混晶が超格子の材料に用いられてもよい。例えば、InAs1-aSb(0≦a≦1)が超格子の材料に用いられてもよい。
【0090】
第1の電極層、第1の受光層、障壁層、第2の受光層及び第2の電極層の形成方法はMBE法に限定されない。例えば、有機金属化学気相堆積(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:CVD)法等により第1の電極層、第1の受光層、障壁層、第2の受光層及び第2の電極層が形成されてもよい。絶縁膜の形成方法はCVD法に限定されない。例えば、原子層堆積(Atomic Layer Deposition:ALD)法又はスパッタ法等により絶縁膜が形成されてもよい。
【0091】
エッチングストッパ層が用いられなくてもよい。また、第1の電極及び第2の電極の形成後に、基板、バッファ層及びエッチングストッパ層を除去してもよい。
【0092】
本開示に係る赤外線検出器により検出する赤外線の波長は限定されない。例えば、波長が3μm~5μmの中赤外線が検出されてもよく、波長が8μm~12μmの遠赤外線が検出されてもよい。本開示に係る赤外線検出器は、例えばセキュリティ分野やインフラストラクチャ点検分野等へ応用することができる。
【0093】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態は、第1の実施形態に係る赤外線検出器100を備えた赤外線撮像素子に関する。図12は、第4の実施形態に係る赤外線撮像素子を示す斜視図である。図13は、第4の実施形態に係る赤外線撮像素子の一部を拡大して示す断面図である。
【0094】
第4の実施形態に係る赤外線撮像素子400は、赤外線撮像パネル41及び駆動回路42を備えており、赤外線撮像パネル41と駆動回路42とがバンプ43により電気的に接続されている。
【0095】
赤外線撮像パネル41では、例えば第1の実施形態に係る赤外線検出器100が複数、2次元にマトリクス状に平面配置されている。各赤外線検出器100が画素となる。赤外線撮像パネル41では、各赤外線検出器100において、基板101、バッファ層102、エッチングストッパ層103、第1の電極層110及び第1の電極170が共通とされている。各赤外線検出器100の絶縁膜160上には表面配線44が形成されており、各表面配線44上にバンプ43が形成されている。バンプ43は、例えばInバンプである。バンプ43の一部は各赤外線検出器100の共通電極43aとされている。各表面配線44は、一端で第1の電極170又は第2の電極180と電気的に接続されている。
【0096】
駆動回路42は、各赤外線検出器100の駆動部であり、複数のトランジスタ45と、電源電圧Vを印加する電源線46とを有している。各トランジスタ45は、バンプ43と電気的に接続されており、電源線46は、共通電極43aと電気的に接続されている。電源電圧Vを印加することにより、各赤外線検出器100に出力電流Iが流れる。
【0097】
本実施形態によれば、赤外線の吸収効率を向上させることができる超格子構造を有する赤外線検出器100を備えた信頼性の高い赤外線撮像素子400が実現する。
【0098】
赤外線撮像素子400を製造する際には、例えば、第1の電極170及び第2の電極180の形成後に、表面配線44用の金属膜を形成し、バンプ43を形成する。次いで、駆動回路42を貼り合わせる。このようにして赤外線撮像素子400を製造することができる。
【0099】
必要に応じて、基板101、バッファ層102、エッチングストッパ層103を除去してもよい。
【0100】
第4の実施形態において、赤外線検出器100に代えて赤外線検出器200又は300が用いられてもよい。
【0101】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。第5の実施形態は、第4の実施形態に係る赤外線撮像素子400を備えた赤外線撮像システムに関する。図14は、第5の実施形態に係る赤外線撮像システムを示す模式図である。
【0102】
第5の実施形態に係る赤外線撮像システム500は、センサ部51、制御演算部52及び表示部53を備えている。
【0103】
センサ部51は、入射光を集光するレンズ54と、第4の実施形態に係る赤外線撮像素子400と、赤外線撮像素子400を冷却するための冷却部55とを備えている。制御演算部52は、赤外線撮像素子400の駆動回路42を制御するものである。表示部53は、制御演算部52から送信された撮像信号に基づいて、赤外線撮像素子400で撮像された赤外線画像を表示する。
【0104】
本実施形態によれば、赤外線の吸収効率を向上させることができる超格子構造を有する赤外線撮像素子400を備えた信頼性の高い赤外線撮像システム500が実現する。
【0105】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0106】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0107】
(付記1)
第1の赤外線を吸収する第1の受光層と、
第2の赤外線を吸収する第2の受光層と、
前記第1の受光層と前記第2の受光層との間に設けられた障壁層と、
前記障壁層との間で前記第1の受光層を挟むように配置され、前記第1の受光層に接する第1の電極層と、
前記障壁層との間で前記第2の受光層を挟むように配置され、前記第2の受光層に接する第2の電極層と、
を有し、
前記第1の受光層のバンドギャップは、前記第2の受光層のバンドギャップよりも大きく、
前記第2の電極層のバンドギャップは、前記第2の受光層のバンドギャップよりも大きく、
前記第2の電極層のバンドギャップは、前記第1の受光層のバンドギャップ以下であることを特徴とする赤外線検出器。
(付記2)
前記第1の電極層のバンドギャップは、前記第1の受光層のバンドギャップよりも大きいことを特徴とする付記1に記載の赤外線検出器。
(付記3)
前記第1の電極層のバンドギャップと前記第1の受光層のバンドギャップとの差は、前記第2の電極層のバンドギャップと前記第2の受光層のバンドギャップとの差よりも小さいことを特徴とする付記2に記載の赤外線検出器。
(付記4)
前記第1の電極層のバンドギャップと前記第1の受光層のバンドギャップとの差が0.03eV以上であり、
前記第2の電極層のバンドギャップと前記第2の受光層のバンドギャップとの差が0.03eV以上であることを特徴とする付記2又は3に記載の赤外線検出器。
(付記5)
前記第1の電極層は、当該第1の電極層の厚さ方向に並んだ複数の第1の半導体層を含み、
前記第2の電極層は、当該第2の電極層の厚さ方向に並んだ複数の第2の半導体層を含み、
前記複数の第1の半導体層のバンドギャップは、前記第1の受光層から離間するほど大きくなっており、
前記複数の第2の半導体層のバンドギャップは、前記第2の受光層から離間するほど大きくなっていることを特徴とする付記2乃至4のいずれか1項に記載の赤外線検出器。
(付記6)
前記第1の受光層、前記第2の受光層、前記障壁層、前記第1の電極層及び前記第2の電極層は超格子を含むことを特徴とする付記1乃至5のいずれか1項に記載の赤外線検出器。
(付記7)
前記超格子はタイプIIの超格子であることを特徴とする付記6に記載の赤外線検出器。
(付記8)
前記第1の受光層に含まれる超格子の材料、前記第2の受光層に含まれる超格子の材料、前記第1の電極層に含まれる超格子の材料及び前記第2の電極層に含まれる超格子の材料は共通していることを特徴とする付記6又は7に記載の赤外線検出器。
(付記9)
前記障壁層のバンドギャップは、前記第1の受光層のバンドギャップ及び前記第2の受光層のバンドギャップよりも大きいことを特徴とする付記1乃至8のいずれか1項に記載の赤外線検出器。
(付記10)
複数の赤外線検出器と、
前記複数の赤外線検出器を駆動する駆動部と、
を有し、
前記複数の赤外線検出器の各々は、付記1乃至9のいずれか1項に記載の赤外線検出器であることを特徴とする撮像素子。
(付記11)
赤外線センサ部と、
前記赤外線センサ部を制御する制御部と、
撮像された赤外線画像を表示する表示部と、
を有し、
前記赤外線センサ部は、
付記10に記載の撮像素子と、
前記撮像素子を冷却する冷却部と、
前記撮像素子に赤外線を入射させるためのレンズと、
を有することを特徴とする撮像システム。
【符号の説明】
【0108】
10:電子
20:正孔
100、200、300:赤外線検出器
110、210、310:第1の電極層
120、220:第1の受光層
130、230:第2の受光層
140、240、340:第2の電極層
150、250:障壁層
311:第1のサブ電極層
312:第2のサブ電極層
313:第3のサブ電極層
341:第1のサブ電極層
342:第2のサブ電極層
343:第3のサブ電極層
344:第4のサブ電極層
345:第5のサブ電極層
346:第6のサブ電極層
400:赤外線撮像素子
500:赤外線撮像システム
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14