(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】電力用半導体モジュール及び電力用半導体モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20231108BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20231108BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L21/60 321E
(21)【出願番号】P 2019209347
(22)【出願日】2019-11-20
【審査請求日】2022-10-14
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、「戦略的イノベーション創造プログラム/SIP第2期/脱炭素社会実現のためのエネルギーシステム/高パワー密度、高温動作可能なWBGチップ搭載パワーモジュール/ユニバーサル対応コア・パワーモジュールの開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】堀 元人
(72)【発明者】
【氏名】池田 良成
(72)【発明者】
【氏名】平尾 章
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-142124(JP,A)
【文献】特開2017-168721(JP,A)
【文献】特開2017-022346(JP,A)
【文献】特開2016-006806(JP,A)
【文献】特開2018-098451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/447-21/449
H01L21/60 -21/607
H01L25/00 -25/07
H01L25/10 -25/11
H01L25/16 -25/18
H02M 7/42 - 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁板及び回路板を有する積層基板と、
それぞれおもて面及び裏面を有し、前記おもて面に主電極及び制御電極を有し、前記裏面が前記回路板に固定された複数の半導体チップと、
前記積層基板の前記半導体チップの搭載面側と対向して配置され、前記対向する面側に第1導電板及び第2導電板を有するプリント回路基板と、
前記複数の半導体チップのそれぞれと前記プリント回路基板との間にそれぞれ配置された複数のインターポーザと、
を備え、
前記複数のインターポーザのそれぞれは、前記主電極を前記第1導電板に電気的に接続し、前記制御電極を前記第2導電板に電気的に接続する、電力用半導体モジュール。
【請求項2】
前記プリント回路基板と前記複数のインターポーザは、接合材により接合される請求項1に記載の電力用半導体モジュール。
【請求項3】
前記接合材は、はんだ及び焼結材の少なくともいずれかを含む請求項2に記載の電力用半導体モジュール。
【請求項4】
前記インターポーザは、
絶縁層と、
前記絶縁層のプリント回路基板側と対向する面に設けられ前記第1導電板に接続される主電極用回路層と、
前記主電極及び前記制御電極が並ぶ方向において、前記主電極用回路層と離間して設けられ前記第2導電板に接続される制御電極用回路層と、
前記絶縁層の前記半導体チップ側と対向する面に設けられ前記主電極に接続される第1ポスト電極と、
前記絶縁層の前記半導体チップ側と対向する面に設けられ前記制御電極に接続される第2ポスト電極と
を有し、
前記主電極用回路層と前記第1ポスト電極との間は、前記絶縁層を貫通する第1貫通孔を介して導電接続され、
前記制御電極用回路層と前記第2ポスト電極との間は、前記絶縁層を貫通する第2貫通孔を介して導電接続されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の電力用半導体モジュール。
【請求項5】
前記主電極及び前記制御電極が並ぶ方向における前記第1導電板の幅は、前記主電極用回路層の幅より大きい、請求項4に記載の電力用半導体モジュール。
【請求項6】
前記主電極及び前記制御電極が並ぶ方向における前記第2導電板の幅は、前記制御電極用回路層の幅より大きい、請求項4または5に記載の電力用半導体モジュール。
【請求項7】
前記主電極及び前記制御電極が並ぶ方向における前記第1導電板と前記第2導電板との間の距離は、前記主電極用回路層と前記制御電極用回路層との間の距離より長い、請求項4から6のいずれか1項に記載の電力用半導体モジュール。
【請求項8】
前記複数のインターポーザの隣り合う絶縁層の対向する端部が、前記主電極用回路層及び前記制御電極用回路層よりも突出している、請求項4から7のいずれか1項に記載の電力用半導体モジュール。
【請求項9】
前記第1ポスト電極及び前記第2ポスト電極は、ピンまたは銅箔である、請求項4から8のいずれか1項に記載の電力用半導体モジュール。
【請求項10】
絶縁板及び回路板を有する積層基板の上面に、主電極及び制御電極を有する半導体チップを搭載する工程と、
複数の半導体チップのそれぞれの前記主電極及び前記制御電極に複数のインターポーザのそれぞれを電気的に接続する工程と、
前記複数のインターポーザを、前記積層基板の前記半導体チップの搭載面側と対向する面側に第1導電板及び第2導電板を有するプリント回路基板に接合して、前記主電極を前記第1導電板に電気的に接続し、前記制御電極を前記第2導電板に電気的に接続する工程と、
を含む電力用半導体モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力用半導体モジュール、及び電力用半導体モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータ装置、産業用ロボット等では、その本体装置とは独立して、パワー半導体素子を搭載したパワー半導体モジュールが使用されている。パワー半導体モジュールは、
図8に示すように、絶縁層101と銅板102、103からなる絶縁基板104の上面に、はんだ105によりパワー半導体チップ106が接合され、さらにパワー半導体チップ106の上面に、はんだ107によりポスト電極108を有するプリント基板109が取り付けられる。
【0003】
ポスト電極108には、エミッタ用ポスト電極108aとゲート用ポスト電極108bがあり、それぞれはんだ107aとはんだ107bにて接合される。銅板102にはコレクタ側接続端子110が取り付けられ、パワー半導体チップ106裏面に電流が流れる。また、プリント基板109には、パワー半導体チップ106のオン/オフを制御するゲート用接続端子111とパワー半導体チップ106おもて面からの電流を外部に流すエミッタ側接続端子112が取り付けられる。これら絶縁基板104、パワー半導体チップ106及びプリント基板109は、封止樹脂127によって封止される。
【0004】
上記パワー半導体モジュールでは、プリント基板に曲がりや反りなどが発生すると、パワー半導体チップとポスト電極とが相対的位置ずれを起こし、接合できない場合がある。そこで、エミッタ用ポスト電極とゲート用ポスト電極とを別々の基板に設ける方法(例えば、特許文献1)と、プリント基板とパワー半導体チップとの間に、インターポーザ基板を介在させる方法(例えば、特許文献2)とが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-92185号公報
【文献】特開2013-140870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来では、上記パワー半導体モジュールが小型化され、上記プリント基板が複数のパワー半導体チップに接合するための複数のポスト電極を有する場合に、パワー半導体チップごとに相対的位置ずれを起こさないようにする手段が要望されている。特許文献1及び特許文献2には、パワー半導体チップごとに相対的位置ずれを起こさないようにすることに関する記述はない。
本発明は上記課題に着目してなされたものであって、半導体チップとプリント回路基板との相対的位置ずれの影響を回避できるようにした電力用半導体モジュール及び電力用半導体モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、絶縁板及び回路板を有する積層基板と、それぞれおもて面及び裏面を有し、おもて面に主電極及び制御電極を有し、裏面が回路板に固定された複数の半導体チップと、積層基板の半導体チップの搭載面側と対向して配置され、対向する面側に第1導電板及び第2導電板を有するプリント回路基板と、複数の半導体チップのそれぞれとプリント回路基板との間にそれぞれ配置された複数のインターポーザと、を備え、複数のインターポーザのそれぞれは、主電極を第1導電板に電気的に接続し、制御電極を第2導電板に電気的に接続する電力用半導体モジュールを要旨とする。
【0008】
本発明の他の態様は、絶縁板及び回路板を有する積層基板の上面に、主電極及び制御電極を有する半導体チップを搭載する工程と、複数の半導体チップのそれぞれの主電極及び制御電極に複数のインターポーザのそれぞれを電気的に接続する工程と、複数のインターポーザを、積層基板の半導体チップの搭載面側と対向する面側に第1導電板及び第2導電板を有するプリント回路基板に接合して、主電極を第1導電板に電気的に接続し、制御電極を第2導電板に電気的に接続する工程と、を含む電力用半導体モジュールの製造方法を要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、半導体チップとプリント回路基板との相対的位置ずれの影響を回避できるようにした電力用半導体モジュール及び電力用半導体モジュールの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電力用半導体モジュールの構成例を示す回路図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る電力用半導体モジュールの分解構成例を示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る電力用半導体モジュールの接続完了時の例を示す断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る電力用半導体モジュールの相対位置ずれが生じた場合の例を示す断面図である。
【
図5】比較例とする電力用半導体モジュールの正しい接続が行われた際の例を示す断面図である。
【
図6】比較例とする電力用半導体モジュールの位置ずれが生じた場合の例を示す断面図である。
【
図7】本発明の他の実施形態に係る電力用半導体モジュールの構成例を示す断面図である。
【
図8】従来の電力用半導体モジュールの構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各装置や各部材の厚みの比率等は現実のものと異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判定すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0012】
以下の図面の記載では、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向を用いて、方向を示す場合がある。X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに直交する。
また、以下の説明では、Z軸の正方向を「上」と称し、Z軸の負方向を「下」と称する場合がある。「上」及び「下」は、必ずしも地面に対する鉛直方向を意味しない。つまり、「上」及び「下」の方向は、重力方向に限定されない。「上」及び「下」は、層及び基板等における相対的な位置関係を特定する便宜的な表現に過ぎず、本発明の技術的思想を限定するものではない。例えば、紙面を180°回転すれば「上」が「下」に、「下」が「上」になることは勿論である。
【0013】
(一実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る電力用半導体モジュール100Aの構成例を示す回路図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る電力用半導体モジュールの構成例を示す断面図である。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る電力用半導体モジュール100Aは、例えば3相のインバータ回路50を備える。
インバータ回路50は、図示しない直流電源と、この直流電源の高電位側に接続されえる正端子(正の入力端子;P端子)42と、低電位側に接続される負端子(負の入力端子;N端子)43と、3相の出力端子41u、41v、41wで構成されている。出力端子41u、41v、41wは、正端子42と負端子43とに接続するU相、V相、W相の3相の回路と、接続点a、b、cでそれぞれ接続されている。出力端子41u、41v、41wは、モータ等の負荷Mに接続される。
【0014】
u相の回路は、u相の上アームと、u相の下アームとで構成されている。u相の上アームは半導体チップ1uを含む。u相の下アームは半導体チップ2uを含む。
同様に、v相の回路は、v相の上アームと、v相の下アームとで構成されている。v相の上アームは半導体チップ1vを含む。v相の下アームは半導体チップ2vを含む。w相の回路は、w相の上アームと、w相の下アームとで構成されている。w相の上アームは半導体チップ1wを含む。w相の下アームは半導体チップ2wを含む。
【0015】
半導体チップ1u、1v、1w、2u、2v、2wは、シリコン基板等の半導体基板に縦型のスイッチング素子が形成されたチップである。スイッチング素子は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)やパワーMOSFET等のトランジスタであってもよい。半導体チップ1、2は、逆並列接続されたフリーホイールダイオード(FWD)が形成された半導体チップとともに絶縁回路基板6に搭載されてよい。半導体チップ1、2は、半導体基板にIGBTおよびFWDが形成された、RC-IGBT(Reverse-ConductingIGBT)であってもよい。半導体チップ1、2は、上面電極および下面電極を有する。上面電極はエミッタ電極、ソース電極又はアノード電極であり、下面電極はコレクタ電極、ドレイン電極又はカソード電極であってもよい。半導体チップ2、3は、さらにゲート電極を有してもよい。半導体基板は炭化ケイ素基板、窒化ガリウム基板等のワイドバンドギャップ半導体基板であってもよい。
【0016】
以下、半導体チップ1u、1v、1wを区別して説明する必要がないときは、半導体チップ1u、1v、1wを半導体チップ1と称する。半導体チップ2u、2v、2wを区別して説明する必要がないときは、半導体チップ2u、2v、2wを半導体チップ2と称する。出力端子41u、41v、41wを区別して説明する必要がないときは、出力端子41u、41v、41wを出力端子41と称する。
【0017】
図2に示すように、インバータ回路50は、半導体チップ1、2が搭載される積層基板としての絶縁回路基板6を備える。絶縁回路基板6は、絶縁層3と、絶縁層3のおもて面に設けられた回路板としての銅板4と、絶縁層3の裏面に設けられた銅板5と、を有する。
図2に示すように、銅板4の上面に半導体チップ1、2の裏面が接合材としてのはんだ7、8により接合されている。半導体チップ1のおもて面に設けられる主電極としてのエミッタ電極にはエミッタ用ポスト電極用はんだ9aが塗布され、半導体チップ1のおもて面に設けられる制御電極としてのゲート電極にはゲート用ポスト電極用はんだ9bが塗布される。また、半導体チップ2のおもて面に設けられる主電極としてのエミッタ電極にはエミッタ用ポスト電極用はんだ10aが塗布され、半導体チップ2おもて面に設けられる制御電極としてのゲート電極にはゲート用ポスト電極用はんだ10bが塗布される。
【0018】
半導体チップ1のおもて面の上方にインターポーザ17が配置される。また、半導体チップ2のおもて面の上方にインターポーザ18が配置される。インターポーザ17は、絶縁層13と、絶縁層の半導体チップ1側と対向する面に設けられるエミッタ用ポスト電極11a、ゲート用ポスト電極11bと、絶縁層の半導体チップ1側と反対の面に設けられる主電極用回路層としてのエミッタ用銅パターン15a、制御電極用回路層としてのゲート用銅パターン15bとを有する。
【0019】
絶縁層13には、
図2中Z軸方向に貫く第1貫通孔22a、第2貫通孔22bが設けられている。第1貫通孔22aの内壁は、エミッタ用ポスト電極11aとエミッタ用銅パターン15aとを導電接続する導電部材で形成されている。さらに、第2貫通孔22bの内壁は、ゲート用ポスト電極11bとゲート用銅パターン15bとを導電接続する導電部材で形成されている。エミッタ用ポスト電極11a、ゲート用ポスト電極11bは、ピンにより構成される。さらに、エミッタ用銅パターン15aと、ゲート用銅パターン15bは、離間されて配置される。
【0020】
インターポーザ18は、上記インターポーザ17と同様に、絶縁層14と、絶縁層14の半導体チップ2側と対向する面に設けられるエミッタ用ポスト電極12a、ゲート用ポスト電極12bと、絶縁層14の半導体チップ2側と反対の面に設けられる主電極用回路層としてのエミッタ用銅パターン16a、制御電極用回路層としてのゲート用銅パターン16bとを有する。
【0021】
絶縁層14には、
図2中Z軸方向に貫く第1貫通孔23a、第2貫通孔23bが設けられている。第1貫通孔23aの内壁は、エミッタ用ポスト電極12aとエミッタ用銅パターン16aとを導電接続する導電部材で形成されている。さらに、第2貫通孔23bの内壁は、ゲート用ポスト電極12bとゲート用銅パターン16bとを導電接続する導電部材で形成されている。エミッタ用ポスト電極12a、ゲート用ポスト電極12bは、ピンにより構成される。さらに、エミッタ用銅パターン16aと、ゲート用銅パターン16bは、離間されて配置される。
【0022】
インターポーザ17、18は、それぞれの絶縁層13、14の互いに向かい合う端部が、エミッタ用銅パターン15a及びゲート用銅パターン16bより突出している。
インターポーザ17、18の上方にプリント回路基板19が配置されている。プリント回路基板19は、インターポーザ17、18と対向する面側に第1導電板とするエミッタ用銅パターン20a、21aと、第2導電板とするゲート用銅パターン20b、21bとを有する。エミッタ用銅パターン20a、21aと、ゲート用銅パターン20b、21bは、距離x離れている。
【0023】
半導体チップ1、2のエミッタ電極及びゲート電極が並ぶ方向(
図2中Y軸方向)におけるエミッタ用銅パターン20a、21aの幅(長さA)は、インターポーザ17、18それぞれのエミッタ用銅パターン15a、16aの幅(長さa)より大きい。また、半導体チップ1、2のエミッタ電極及びゲート電極が並ぶ方向(
図2中Y軸方向)におけるゲート用銅パターン20b、21bの幅(長さB)は、インターポーザ17、18それぞれのゲート用銅パターン15b、16bの幅(長さb)より大きい。
さらに、半導体チップ1、2のエミッタ電極及びゲート電極が並ぶ方向(
図2中Y軸方向)におけるエミッタ用銅パターン20a、21aと、ゲート用銅パターン20b、21bとの距離xは、エミッタ用銅パターン15aと、ゲート用銅パターン15bとの間の距離yより長い。
【0024】
そして、エミッタ用銅パターン20aは、はんだや焼結材等の接合材24aによりインターポーザ17のエミッタ用銅パターン15aに接合される。ゲート用銅パターン20bは、はんだや焼結材等の接合材24bによりインターポーザ17のゲート用銅パターン15bに接合される。
以後、インターポーザ17のエミッタ用ポスト電極11aは、エミッタ用ポスト電極用はんだ9aにより半導体チップ1のエミッタ電極に接合される。インターポーザ17のゲート用ポスト電極11bは、ゲート用ポスト電極用はんだ9bにより半導体チップ1のゲート電極に接合される。この接合により、プリント回路基板19は、インターポーザ17を介して、半導体チップ1のエミッタ電極及びゲート電極に電気的に接続される。
【0025】
同様に、エミッタ用銅パターン21aは、はんだや焼結材等の接合材25aによりインターポーザ18のエミッタ用銅パターン16aに接合される。ゲート用銅パターン21bは、はんだや焼結材等の接合材25bによりインターポーザ18のゲート用銅パターン16bに接合される。
以後、インターポーザ18のエミッタ用ポスト電極12aは、エミッタ用ポスト電極用はんだ10aにより半導体チップ2のエミッタ電極に接合される。インターポーザ18のゲート用ポスト電極12bは、ゲート用ポスト電極用はんだ10bにより半導体チップ2のゲート電極に接合される。この接合により、プリント回路基板19は、インターポーザ18を介して、半導体チップ2のエミッタ電極及びゲート電極に電気的に接続される。
なお、絶縁回路基板6及びインターポーザ17、18は、u相、v相、w相の各回路にそれぞれ設けられる。
【0026】
(電力用半導体モジュールの製造工程)
次に、電力用半導体モジュール100Aの製造工程を説明する。
図2に示すように、まず、絶縁回路基板6が用意される。続いて、絶縁回路基板6の銅板4上に半導体チップ1、2をはんだ7、8により接合する。
次に、半導体チップ1、2それぞれのエミッタ電極及びゲート電極に、インターポーザ17、18をエミッタ用ポスト電極用はんだ9a、10a、及びゲート用ポスト電極用はんだ9b、10bにより接合する。
図3に示すように、インターポーザ17、18を、はんだ等によりプリント回路基板19に接合する。
【0027】
(比較例)
次に、以前に考えられた電力用半導体モジュールと本発明の一実施形態に係る電力用半導体モジュール100Aとを比較した場合を例にして
図4、
図5、
図6を参照して説明する。以前に考えられた電力用半導体モジュールについて、本発明の一実施形態に係る電力用半導体モジュールと同一部分については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0028】
図5(a)に示すように、以前の電力用半導体モジュールでは、絶縁回路基板6の銅板4上に2個の半導体チップ120、121を搭載している。半導体チップ120、121の上面には、プリント回路基板200に設けられるエミッタ用ポスト電極124a、125aとゲート用ポスト電極124b、125bを接合する、エミッタ用ポスト電極用はんだ122a、123aとゲート用ポスト電極用はんだ122b、123bが塗布されている。
図5(b)に示すように、半導体チップ120、121の搭載位置精度が高ければ、狙い通りの位置に接合される。
ところが、
図6(a)に示すように、例えば絶縁回路基板6の銅板4上に搭載される半導体チップ130の位置が想定よりずれていた場合、
図6(b)に示すように、エミッタ用ポスト電極用はんだ131とゲート用ポスト電極用はんだ132の位置もずれる。
【0029】
一実施形態では、
図4に示すように、半導体チップ2の搭載位置が、半導体チップ1、2のエミッタ電極及びゲート電極が並ぶ方向(
図4中Y軸方向)に距離yずれた場合、エミッタ用ポスト電極用はんだ10aとゲート用ポスト電極用はんだ10bは、半導体チップ2がずれた位置に応じて塗布される。また、インターポーザ18も同様に、半導体チップ2がずれた位置に応じて搭載される。
ただし、プリント回路基板19は、本来の位置であるインターポーザ17の位置に合わせて搭載されるため、インターポーザ18とプリント回路基板19の相対位置はずれるが、ゲート用銅パターン16bゲート用銅パターン21bは重なる箇所があるため、電気接続上の問題は無い。
【0030】
(一実施形態の作用効果)
以上のように上記実施形態によれば、インターポーザ17、18を半導体チップ1、2ごとに備えることで、半導体チップ1、2とプリント回路基板19との相対的位置ずれの影響を回避できる。これにより、半導体チップ1、2を複数設置した場合の組立性向上が可能となる。
【0031】
また、上記実施形態によれば、プリント回路基板19のエミッタ用銅パターン20a、21aの幅をインターポーザ17、18のエミッタ用銅パターン15a、16aの幅より大きくすることで、半導体チップ1、2のエミッタ電極をエミッタ用銅パターン20a、21aに確実に接続することができる。また、プリント回路基板19のゲート用銅パターン20b、21bの幅をインターポーザ17、18のゲート用銅パターン15b、16bの幅より大きくすることで、半導体チップ1、2のゲート電極をゲート用銅パターン20b、21bに確実に接続することができる。
【0032】
また、上記実施形態によれば、プリント回路基板19のエミッタ用銅パターン21aとゲート用銅パターン21bとの距離を、インターポーザ18のエミッタ用銅パターン16aとゲート用銅パターン16bとの間の距離より長くすることで、インターポーザ18とプリント回路基板19との相対位置がずれたとしても、エミッタ用銅パターン21aとエミッタ用銅パターン16a、ゲート用銅パターン21bとゲート用銅パターン16bは重なる箇所があるため、半導体チップ1、2とプリント回路基板19との間を確実に電気接続できる。
【0033】
さらに、上記実施形態によれば、インターポーザ17、18において、それぞれの絶縁層13、14の互いに向かい合う端部が、エミッタ用銅パターン15a及びゲート用銅パターン16bより突出しているので、半導体チップ1、2とプリント回路基板19との相対的位置ずれがおきても、絶縁層13、14の端部同士がぶつかることになるため、大きく位置ずれを起こすことはない。
【0034】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は一実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、変形例が明らかとなろう。
例えば、
図7に示すように、半導体チップ1、2のゲート電極が絶縁回路基板6の端部側、つまり外側に設けられる電力用半導体モジュール100Bにも適用可能である。この電力用半導体モジュール100Bにおいて、プリント回路基板19のエミッタ用銅パターン20a、21aを1個のエミッタ用銅パターンに集積化することもできる。このようにすれば、部品点数を削減可能となる。
【0035】
上記実施形態では、エミッタ用ポスト電極11a、12a、及びゲート用ポスト電極11b、12bを、ピン形状として説明したが、銅箔であってもよい。
さらに、上記実施形態では、半導体チップ1、2がIGBT又はMOSFETであることを説明したが、半導体チップ1、2のゲート絶縁膜は、シリコン酸化膜(SiO2膜)に限定されるものではなく、他の絶縁膜であってもよい。ゲート絶縁膜としてSiO2膜以外の絶縁膜を用いたMOSFETは、MIS(metal insulator semiconductor)FETと呼んでもよい。MISFETは、MOSFETを含む、より包括的な絶縁ゲート型トランジスタを意味する。
【符号の説明】
【0036】
1、1u、1v、1w、2、2u、2v、2w、120、121、130 半導体チップ
3、13、14、101 絶縁層
4、5、102、103 銅板
6 絶縁回路基板
7、8、105、107 はんだ
9a、10a エミッタ用ポスト電極用はんだ
9b、10b ゲート用ポスト電極用はんだ
11a、12a、124a、125a エミッタ用ポスト電極
11b、12b、125b、125b ゲート用ポスト電極
15a、16a エミッタ用銅パターン(主電極用回路層)
20a、21a エミッタ用銅パターン(第1導電板)
15b、16b ゲート用銅パターン(制御電極用回路層)
20b、21b ゲート用銅パターン(第2導電板)
17、18 インターポーザ
22a、23a 第1貫通孔
22b、23b 第2貫通孔
24a、24b、25a、25b 接合材
19、200 プリント回路基板
41、41u、41v、41w 出力端子
42 正端子
43 負端子
50 インバータ回路
100A、100B 電力用半導体モジュール
104 絶縁基板
106 パワー半導体チップ
109 プリント基板
127 封止樹脂