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特許7380129画像形成装置、及び、清掃部材の寿命判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】画像形成装置、及び、清掃部材の寿命判定方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20231108BHJP
   G03G 15/16 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
G03G21/00 318
G03G15/16
G03G21/00 370
G03G21/00 386
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019209890
(22)【出願日】2019-11-20
(65)【公開番号】P2021081625
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村内 淳二
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-109433(JP,A)
【文献】特開2013-250469(JP,A)
【文献】特開2015-072358(JP,A)
【文献】特開昭58-186780(JP,A)
【文献】特開2000-188686(JP,A)
【文献】特開2011-013351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、
前記像担持体の表面を清掃する清掃部材と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記像担持体を駆動する駆動部の電流値、又は、前記電流値から換算したトルク値から、前記清掃部材の振動を検知する振動検知部と、
前記振動検知部で検知した振動データから周波数成分を検出する処理を行う周波数成分検出部と、
前記周波数成分検出部による演算結果において、所定の周波数区間におけるピーク周波数の値から前記清掃部材の寿命を判定する寿命判定部と、を有する
画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、予め設定された前記清掃部材の寿命を示す所定の周波数を記憶する設定値記憶部を有し、
前記寿命判定部は、
前記所定の周波数区間において所定値以上のスペクトル強度を有するピーク値の周波数を検知し、
検知した前記ピーク値の周波数と、前記設定値記憶部に記憶された前記清掃部材の寿命を示す所定の周波数とを比較することにより、前記清掃部材の寿命を判定する
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部からの指示に従って各種情報を報知する報知部を備え、
前記寿命判定部は、前記ピーク値の周波数が所定値未満の場合には、前記ピーク値の周波数と、前記設定値記憶部に記憶された前記清掃部材の寿命を示す所定の周波数とを比較することにより、前記清掃部材の現在の使用量に関する情報、及び、前記清掃部材の残寿命に関する情報の少なくともいずれかを前記報知部に報知させる
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記振動検知部が前記清掃部材の振動を検知する時間間隔は、1ms以下である
請求項1から3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記像担持体が、感光体ドラムである
請求項1から4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記像担持体が、中間転写体である
請求項1から5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
像担持体と、
前記像担持体の表面を清掃する清掃部材と、
制御部と、を備える画像形成装置の前記清掃部材の寿命を判定する方法であって、
前記像担持体を駆動する駆動部の電流値、又は、前記電流値から換算したトルク値から、前記清掃部材の振動を検知する処理と、
検知した振動データから周波数成分を検出する処理と、
前記周波数成分の検出結果において、所定の周波数区間におけるピーク周波数の値から前記清掃部材の寿命を判定する処理と、を行う
清掃部材の寿命判定方法。
【請求項8】
前記所定の周波数区間が100Hzから500Hzである
請求項7に記載の清掃部材の寿命判定方法。
【請求項9】
前記周波数成分の検出の出力ポイントが、2でありNが12以上である
請求項7に記載の清掃部材の寿命判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、及び、画像形成装置に搭載される像担持体の清掃部材の寿命判定方法に係わる。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、トナー像が形成される像担持体、例えば、感光体ドラムや、中間転写ベルト等の表面上に、クリーニングブレード等の清掃部材を摺接させることにより、像担持体の表面上に付着した残留トナー等の付着物を除去(クリーニング)することが行われている。このような画像形成装置では、クリーニングブレードが摩耗して製品寿命を過ぎると、クリーニング不良が発生してしまう。
【0003】
そこで、クリーニングブレードの摩耗(劣化状態)に応じてクリーニング条件を決定することで、クリーニング不良を抑制する画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この画像形成装置では、クリーニングブレードが摩耗しても、クリーニング不良を抑制できるため、クリーニングブレードの耐久寿命を延ばすことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-61471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1に記載された技術では、画像形成装置は、クリーニングブレードをトナーがすり抜けた場合、即ち、クリーニングブレードの摩耗に起因するクリーニング不良が発生した場合に、クリーニングブレードの製品寿命を過ぎたことをユーザーに警告する。ユーザは、警告が行われると部品を交換しなければならないが、その交換期間において画像形成装置を使用できなくなる。このため、画像形成装置において、クリーニング不良が発生する前に、クリーニングブレードの寿命を予測することが求められている。
【0006】
上述した問題の解決のため、本発明においては、清掃部材の寿命を予測することが可能な画像形成装置、及び、清掃部材の寿命予測方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像形成装置は、像担持体と、像担持体の表面を清掃する清掃部材と、制御部とを備える。そして、制御部は、清掃部材の振動を検知する振動検知部と、振動検知部で検知した振動データから周波数成分を検出する処理を行う周波数成分検出部と、周波数成分検出部による演算結果において、所定の周波数区間におけるピーク周波数の値から清掃部材の寿命を判定する寿命判定部とを有する。
【0008】
また、本発明の清掃部材の寿命判定方法は、像担持体と、像担持体の表面を清掃する清掃部材と、制御部とを備える画像形成装置の清掃部材の寿命を判定する方法であって、清掃部材の振動を検知する処理と、振動検知部で検知した振動データから周波数成分を検出する処理と、周波数成分の検出結果において、所定の周波数区間におけるピーク周波数の値から清掃部材の寿命を判定する処理とを行う。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、清掃部材の寿命を予測することが可能な画像形成装置、及び、清掃部材の寿命予測方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】画像形成装置の概略構成を示す図である。
図2】画像形成装置の主要な機能構成を示すブロック図である。
図3】画像形成装置における、各作像部の構成を示す図である。
図4】画像形成装置の制御部における清掃部材の寿命を予測するための機能ブロック図である。
図5】振動検知部が検知した電流値の一例を示す図である。
図6】FFT解析による周波数毎の電流値のスペクトル強度を表示す図である。
図7】清掃部材の劣化状態とピーク周波数との関係の一例を表すグラフである。
図8】清掃部材の劣化状態とピーク周波数との関係の一例を表すグラフである。
図9】清掃部材の寿命判定、及び、劣化状態を判定するためのデータテーブルの一例を示す図である。
図10】清掃部材の寿命判定、及び、劣化状態を判定するためのデータテーブルの一例を示す図である。
図11】清掃部材の寿命判定、及び、劣化状態を判定するためのデータテーブルの一例を示す図である。
図12】清掃部材の寿命判定、及び、劣化状態を判定するためのデータテーブルの一例を示す図である。
図13】画像形成装置で行われる寿命判定処理のフローチャートである。
図14】画像形成装置で行われるFFT解析による演算結果を格納する処理のフローチャートである。
図15】画像形成装置で行われる寿命判定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る画像形成装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、本発明は、図示例に限定されるものではない。
【0012】
[画像形成装置の構成]
図1は、画像形成装置の概略構成を示す図である。図2は、画像形成装置の主要な機能構成を示すブロック図である。画像形成装置100は、電子写真方式の画像形成プロセスにより、用紙等の記録媒体に画像形成を行う。
【0013】
画像形成装置100は、電子写真方式の画像形成プロセスにより、用紙等の記録媒体に画像形成を行う。
画像形成装置100は、画像形成部10と、制御部20と、給紙部21と、画像読取部22と、表示部23と、操作部24と、記憶部25と、ベルトベルトクリーニング部9とを備えて構成されている。
【0014】
画像形成部10は、イエロー作像部11Yと、マゼンタ作像部11Mと、シアン作像部11Cと、ブラック作像部11Kと、中間転写体である中間転写ベルト12と、2次転写ローラー13と、定着装置14とを備えて構成されている。
【0015】
各作像部11Y,11M,11C,11Kは、中間転写ベルト12のベルト面に沿って直列(タンデム)に配置され、中間転写ベルト12上に各色のトナー像を形成する。各作像部11Y,11M,11C,11Kは、形成するトナー像の色が異なるだけで構成は、ほぼ同じである。
【0016】
各作像部11Y,11M,11C,11Kは、感光体ドラム1、帯電部2及び露光部3からなる潜像形成部、現像部4、潤滑剤塗布部7、1次転写ローラー5並びにクリーニング部6を有する。
【0017】
各作像部11Y,11M,11C,11Kにおいて、矢印(図中、反時計回り)方向に回転する感光体ドラム1上に形成されたトナー像は、それぞれ感光体ドラム1と1次転写ローラー5とに挟持されて中間転写ベルト12の外周面側(第1面側)の所定位置に重ね合わせるように順次一次転写される。これにより、中間転写ベルト12上には、各作像部11Y,11M,11C,11Kにおいて形成されたトナー像が重なってカラートナー像が形成される。
【0018】
中間転写ベルト12は、2次転写ローラー13によって記録材に圧接され、中間転写ベルト12上のカラートナー像が記録材に転写(二次転写)される。定着装置14は、記録媒体上に転写されたトナー像を加熱及び加圧して、定着処理を施す。
【0019】
ベルトクリーニング部9は、二次転写後の中間転写ベルト12をクリーニングする機構である。ベルトクリーニング部9は、ベルトクリーニングブレード9Aと、クリーニングブラシ9Bと、ケーシング9Cとを備える。
【0020】
ベルトクリーニングブレード9Aは、中間転写ベルト12の表面に当接し、転写残トナー、紙粉、潤滑剤等を掻き取り除去する。ベルトクリーニングブレード9Aは、中間転写ベルト12を支持するローラーが中間転写ベルト12に接触している領域内で、中間転写ベルト12に当接している。ベルトクリーニングブレード9Aは、中間転写ベルト12の回動方向に対してカウンター方向に、先端(エッジ)が当接している。
【0021】
クリーニングブラシ9Bは、ベルトクリーニングブレード9Aの中間転写ベルト12の回転方向上流側に配設されている。クリーニングブラシ9Bはローラー形状のブラシであり、中間転写ベルト12に当接して、中間転写ベルト12の表面に付着したトナーを含む異物を除去する。
ケーシング9Cは、ベルトクリーニングブレード9Aとクリーニングブラシ9Bとを支持する。また、ケーシング9Cは、ベルトクリーニングブレード9A及びクリーニングブラシ9Bによって除去されたトナー等を収容する。
【0022】
制御部20は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備えて構成される。CPUは、ROMに記憶されている各種プログラムをRAMに展開し、展開された各種プログラムと協働して、画像形成装置100の各部の動作を統括的に制御する。例えば、制御部20は、画像読取部22からの電気信号を入力して各種画像処理を行い、画像処理により生成されたYMCK各色の画像データDy、Dm、Dc、Dkを画像形成部10に出力する。また、制御部20は、画像形成部10の動作を制御して、記録媒体に画像を形成させる。
【0023】
給紙部21は、複数の給紙トレイを備えて構成され、各給紙トレイに種類の異なる複数の記録媒体を収容する。給紙部21は、所定の搬送路により収容される記録媒体を画像形成部10に供給する。
【0024】
画像読取部22は、光源や反射鏡等の光学系を備えて構成される。画像読取部22は、自動原稿搬送部により搬送された原稿又はプラテンガラスに載置された原稿に光源を照射し、反射光を受光し、受光した反射光を電気信号に変換して制御部20に出力する。
【0025】
表示部23は、LCD(Liquid Crystal Display)、により構成され、制御部20から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、各機能の動作状況等の表示を行う。
操作部24は、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部20に出力する。操作部24としては、テンキー、スタートキー等の各種操作キー、表示部23と一体に構成されたタッチパネル等を用いることができる。
【0026】
記憶部25は、HDD(Hard Disk Drive)、半導体メモリーなどにより構成され、プログラムデータや各種設定データ等のデータを記憶する。
【0027】
[作像部]
図3に、画像形成装置100における、各作像部11Y,11M,11C,11Kの構成を示す。各作像部11Y,11M,11C,11Kは、感光体ドラム1(像担持体)と、帯電部2と、露光部3と、現像部4と、1次転写ローラー5と、クリーニング部6と、潤滑剤塗布部7とを備える。
【0028】
感光体ドラム1は、図3に示すA方向に回転駆動され、その表層に静電潜像及びトナー像を担持する。感光体ドラム1は、例えば、ドラム状の金属基体の外周面に、有機光導電体を含有させた樹脂よりなる感光層が形成された有機感光体で構成される。感光層を構成する樹脂として、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0029】
帯電部2は、帯電ローラーを用いて、感光体ドラム1の表面を一様に帯電させる。なお、帯電ローラーを用いた方が感光体ドラム1を均一に一定の電位に帯電させることができる点で好ましいが、帯電部2として、コロトロン帯電器、スコロトロン帯電器等を用いてもよい。
【0030】
露光部3は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像データDy、Dm、Dc、Dkに基づいて、帯電部2により帯電された感光体ドラム1の表面を露光して静電潜像を形成する。
【0031】
現像部4は、露光部3により形成された静電潜像を、トナーを含む現像剤を用いて可視像化する。現像部4は、感光体ドラム1と現像領域を介して対向するよう配置された現像スリーブ41を備え、感光体ドラム1上の静電潜像にトナーを付着させ、トナー像を形成する。
【0032】
1次転写ローラー5は、感光体ドラム1上に形成されたトナー像を、図3に示すB方向に移動する中間転写ベルト12に転写(1次転写)する。
【0033】
クリーニング部6は、中間転写ベルト12上に転写されずに感光体ドラム1上に残ったトナーを除去し、回収する。クリーニング部6は、感光体ドラム1に当接され、感光体ドラム1上の残留物を掻き取るクリーニングブレード61と、クリーニングブレード61により掻き取られた残留物を回収する回収部材62とを備える。
【0034】
潤滑剤塗布部7は、感光体ドラム1の回転方向Aにおいて、クリーニング部6の下流側に設置されており、感光体ドラム1の表面に潤滑剤を塗布する。潤滑剤塗布部7は、塗布ブラシ71(潤滑剤供給部材)と、固形潤滑剤72と、加圧部材73と、均しブレード74と、を備える。
【0035】
塗布ブラシ71は、感光体ドラム1の回転軸と平行な回転軸を有し、固形潤滑剤72及び感光体ドラム1の両方に当接するように設置されている。塗布ブラシ71は、この状態で、感光体ドラム1の回転方向に対してカウンター方向に回転することにより、固形潤滑剤72から削り取った潤滑剤を感光体ドラム1に供給する。その際、当接圧によって潤滑剤を感光体ドラム1上に延展塗布する役割も担っている。塗布ブラシ71は、図示しないブラシモーターにより回転駆動される。なお、塗布ブラシ71の回転方向は、スジムラ、トルク低減等の他の品質を考慮して、感光体ドラム1の回転方向に対してウィズ方向の回転設定にしてもよい。
【0036】
加圧部材73は、バネ等により構成され、塗布ブラシ71に対して固形潤滑剤72を押し当てる。
均しブレード74は、感光体ドラム1の回転方向Aにおいて、塗布ブラシ71の下流側に設置されている。均しブレード74は、塗布ブラシ71によって感光体ドラム1上に供給された潤滑剤を更に感光体ドラム1上に延展塗布するとともに、過剰な潤滑剤粒子を排除する機能を有している。
【0037】
[現像剤]
現像剤におけるトナーを製造するにあたっては、一般に使用されている公知の方法で製造することができ、例えば、粉砕法、乳化重合法、懸濁重合法等を用いて製造することができる。また、トナーに使用するバインダー樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂(スチレン、又はスチレン置換体を含む単重合体及び共重合体)やポリエステル樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。そして、これらの樹脂単体又は複合体によるバインダー樹脂は、軟化温度が80~160℃の範囲、又はガラス転移点が50~75℃の範囲であることが好ましい。
【0038】
着色剤としては、一般に使用されている公知のものを用いることができ、例えば、カーボンブラック、アニリンブラック、活性炭、マグネタイト、ベンジンイエロー、パーマネントイエロー、ナフトールイエロー、フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、ウルトラマリンブルー、ローズベンガル、レーキーレッド等が挙げられる。そして、上記したバインダー樹脂100重量部に対して2~20重量部の割合で着色剤を用いることが好ましい。
【0039】
また、バインダー樹脂に含有される荷電制御材は、正帯電性トナー用の場合は、例えばニグロシン系染料、4級アンモニウム塩系化合物、トリフェニルメタン系化合物、イミダゾール系化合物、ポリアミン樹脂などが使用され、負帯電性トナー用荷電制御材の場合は、クロム、コバルト、アルミニウム、鉄等の金属含有アゾ系染料、サリチル酸金属化合物、アルキルサリチル酸金属化合物、カーリックスアレン化合物などが使用される。この荷電制御材は、バインダー樹脂100重量部に対して0.1~10重量部の割合で用いることが好ましい。更に、バインダー樹脂に含有される離型材については、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、カルナバワックス、サゾールワックス等が単独又は2種類以上組合せて使用されており、バインダー樹脂100重量部に対して0.1~10重量部の割合で用いることが好ましい。
【0040】
(外添剤)
トナーとしての帯電性能や流動性、又は、クリーニング性を向上させる観点から、トナー母体粒子の表面に公知の無機微粒子や有機微粒子などの粒子、滑剤を外添剤として添加することができる。これらの外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。
【0041】
滑剤は、クリーニング性や転写性をさらに向上させる目的で使用されるものである。滑剤としては、例えば、ステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウムなどの塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウムなどの塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウムなどの塩、リノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩などの(高級)脂肪酸金属塩粒子が挙げられる。外添剤は、少なくとも体積基準のメジアン径が0.5~1.5μmの範囲である脂肪酸金属塩粒子(滑剤)を有する。上記脂肪酸金属塩粒子の体積基準のメジアン径が0.5μm未満の場合には、現像器の混合ストレスにより変形、融着し、キャリアや他の部材の表面を汚染してしまうため好ましくない。一方、上記脂肪酸金属塩粒子の体積基準のメジアン径が1.5μmよりも大きいと、トナー(母体粒子)との保持性が低下し、すぐに離れてしまい、偏りを伴った画像不良が生じるため好ましくない。上記脂肪酸金属塩粒子(滑剤)の体積基準のメジアン径(体積平均粒径)は、レーザー回折粒度測定装置SALD-2100を使用して測定することができる。なお、トナーから上記脂肪酸金属塩粒子(滑剤)を分離するのは、上記した外添剤分離法の応用において、フィルタ孔径の目的に応じた選択や、遠心分離で可能である。
【0042】
上記体積基準のメジアン径の脂肪酸金属塩(粒子)としては、上記した各種(高級)脂肪酸金属塩(粒子)を用いることができるが、なかでもステアリン酸金属塩が好ましく、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛等がある。滑剤としての性能や、静電的なトナー保持性の観点から、ステアリン酸亜鉛が特に好ましい。
上記体積基準のメジアン径の脂肪酸金属塩粒子(滑剤)の含有量は、トナー全量に対して、0.05~0.60質量%である。
【0043】
外添剤として、上記した粒径範囲の滑剤(上記体積基準のメジアン径の脂肪酸金属塩粒子)を用いていればよく、この他にも、上記した公知の無機微粒子や有機微粒子などの粒子を併用してもよい。
【0044】
上記無機微粒子としては、シリカ、チタニア、アルミナなどの無機酸化物微粒子、ステアリン酸アルミニウム微粒子、ステアリン酸亜鉛微粒子などの無機ステアリン酸化合物微粒子、及び、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸亜鉛などの無機チタン酸化合物微粒子等による無機微粒子が好ましい。このうちチタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウムなどの無機チタン酸化合物微粒子(金属酸化物微粒子)は、研磨効果が高い特徴を有する。また、シリカ粒子としては、例えば、コロイダルシリカ、アルコキシシランの加水分解物(ゾルゲル法により作製されたシリカ)、沈殿シリカ等の湿式法で製造されたシリカ、フュームドシリカ、溶融シリカ等の乾式法で製造されたシリカ等が用いられる。
【0045】
必要に応じてこれらの無機微粒子は、耐熱保管性の向上、環境安定性の向上等のために、シランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイル等によって、光沢処理、疎水化処理等が行われていてもよい。外添剤の流動性が向上するという観点から、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)等で疎水化処理(表面処理)したシリカ粒子を用いると好ましい。
【0046】
これらの無機微粒子は、個数平均一次粒子径が5nm~2μm程度の球形の疎水化処理された、又は、疎水化処理されていない無機微粒子を用いるのが好ましい。なお、無機微粒子の個数平均一次粒子径は、電子顕微鏡写真を用いて算出することができるが、具体的には、走査型電子顕微鏡にてトナー試料の3万倍写真を撮影し、この写真画像をスキャナーにより取り込む。画像処理解析装置LUZEX(登録商標)、AP(株式会社ニレコ製)にて、当該写真画像のトナー表面に存在する外添剤について2値化処理し、外添剤1種につき100個についての水平方向フェレ径を算出、その平均値を個数平均粒子径とする。
【0047】
無機微粒子は、個数平均一次粒子径が異なる二種の粒子(例えば、シリカ粒子)を用いてもよい。例えば、粒径が大きい方の個数平均一次粒子径は、60~250nmが好ましく、80~200nmがより好ましい。上記範囲であれば、トナー母体粒子への大きい方の粒子の付着を促進し、帯電量の安定性およびクリーニング性を向上させることができる。また、粒径が小さい方の個数平均一次粒子径は、5~45nmが好ましく、12~40nmがより好ましい。上記範囲であれば、小径シリカ粒子の良好な帯電性を十分に得ることができ、また、トナー母体粒子表面において均一に付着しやすくなり、高温高湿環境下における初期帯電量および帯電量の安定性を向上させることができる。
【0048】
有機微粒子としては、個数平均一次粒子径が10nm~2μm程度の球形の有機微粒子を使用することができる。具体的には、スチレンやメチルメタクリレートなどの単独重合体やこれらの共重合体による有機微粒子を使用することができる。なお、有機微粒子の個数平均一次粒子径は、無機微粒子の個数平均一次粒子径と同様に電子顕微鏡写真を用いて算出することができる。
【0049】
外添剤の添加量は、トナー粒子100質量部に対して0.1~10.0質量部であることが好ましい。
外添剤の添加方法としては、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの公知の種々の混合装置を使用して添加する方法が挙げられる。
【0050】
キャリアは、バインダー型キャリアやコート型キャリア等が使用され、そのキャリア粒径としては、限定されるものではないが、15~100μmが好ましい。そして、トナーとキャリアの混合比は、所望のトナー帯電量が得られるように調整されればよく、トナーとキャリアの合計量に対するトナー比を、3~30重量%とすることで、好適に調整される。また、トナー比は、4~20重量%とすることが更に好ましい。
【0051】
バインダー型キャリアは、磁性体微粒子をバインダー樹脂中に分散させたものであり、キャリア表面に正または負帯電性の帯電性微粒子を固着させたり、表面コーティング層を設けることでも構成される。バインダー型キャリアの帯電特性は、バインダー樹脂の材質、帯電性微粒子、表面コーティング層の種類によって制御される。そして、バインダー樹脂は、ポリスチレン系樹脂に代表されるビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂等が使用される。
【0052】
バインダー型キャリアに分散される磁性体微粒子として、例えば、マグネタイト、ガンマ酸化鉄等のスピネルフェライトや、鉄以外の金属(マンガン、ニッケル、マグネシウム、銅等)を一種または二種以上含有するスピネルフェライトや、バリウムフェライト等のマグネトプランバイト型フェライトや、表面に酸化鉄を有する鉄や合金の粒子等が用いられる。このとき、高磁化を要する場合、鉄系の強磁性微粒子を用いることが好ましい。一方、化学的な安定性を考慮する場合は、スピネルフェライトやマグネトプランバイト型フェライトといった強磁性微粒子を用いることが好ましい。そして、強磁性微粒子の種類及び含有量を適宜選択することで、所望の磁化を有するキャリアを得ることができる。また、磁性体微粒子の形状は、粒状、球状、針状のいずれであってもよい。更に、磁性体微粒子は、キャリア中に50~90重量%の量で添加することが適当である。
【0053】
表面に帯電性微粒子又は導電性微粒子を固着させたバインダー型キャリアの場合、例えば、キャリア表面において磁性樹脂キャリアに上記微粒子を均一に混合して付着させた後に、機械的・熱的な衝撃力を与えることで、キャリア表面の磁性樹脂キャリア中に上記微粒子を打ち込むようにして固定させる。このとき、微粒子は磁性樹脂キャリア中に完全に埋設されるのではなく、その一部を磁性樹脂キャリア表面から突き出すようにして固定される。
【0054】
そして、微粒子に帯電性微粒子を使用する場合、有機系又は無機系の絶縁性材料が用いられる。具体的には、例えば、ポリスチレン、スチレン系共重合物、アクリル樹脂、各種アクリル共重合物、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂及びこれらの架橋物などの有機絶縁性微粒子を用い、その素材、重合触媒、表面処理等を適宜選択することで、キャリアの帯電レベルおよび極性を希望するものに設定できる。また、無機系微粒子としては、例えば、シリカ、二酸化チタン等といった負帯電性の無機微粒子や、チタン酸ストロンチウム、アルミナ等といった正帯電性の無機微粒子が用いられる。
【0055】
また、表面コーティング層を設けたバインダー型キャリアの場合、表面コーティング層を形成する表面コート材として、例えば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂等が用いられる。このように、樹脂材を表面にコートして硬化させた表面コーティング層を形成することで、帯電付与能力を向上できる。
【0056】
一方、コート型キャリアは、磁性体からなるキャリアコア粒子をコート樹脂で被覆して構成するキャリアであり、コート型キャリアにおいてもバインダー型キャリア同様、キャリア表面に正または負帯電性の帯電性微粒子を固着させることができる。そして、コート型キャリアの極性等の帯電特性は、表面コーティング層の種類や帯電性微粒子の種類により制御され、その材料として、バインダー型キャリアと同様の材料を用いることができる。また、キャリアコア粒子を被覆するコート樹脂については、バインダー型キャリアのバインダー樹脂と同様の樹脂が使用される。
【0057】
[機能ブロック図]
図4に、画像形成装置100の制御部20における、像担持体に当接する清掃部材の寿命を予測するための機能ブロック図を示す。なお、以下では、清掃部材の寿命を予測の一例として、像担持体を画像形成装置100における各作像部11Y,11M,11C,11Kの感光体ドラム1、清掃部材を感光体ドラム1に当接するクリーニングブレード61とする場合について説明する。ただし、本形態の清掃部材の寿命の予測は、回転駆動する像担持体と、この像担持体に当接する清掃部材とを有する構成であれば、清掃部材の寿命を予測することができる。このため、像担持体を中間転写体(中間転写ベルト12、二次転写ベルト)、清掃部材を中間転写ベルト12に当接するベルトクリーニングブレード9Aとした場合にも、同様の形態を適用することにより清掃部材の寿命を予測することができる。
【0058】
(振動検知部)
振動検知部51は、感光体ドラム1に当接するクリーニングブレード61の振動を検知するための電流値等(振動データ)を取得する。クリーニングブレード61と感光体ドラム1との摩擦抵抗は、クリーニングブレード61が振動することによって変化する。このため、振動検知部51は、感光体ドラム1を駆動するための電流値を検出することにより、クリーニングブレード61の振動を検知することができる。例えば、振動検知部51は、時間単位で感光体ドラム1を駆動するためのモーター等の駆動部の電流値を検知することにより、時間情報と電流値とを取得する。あるいは、電流値をトルク換算した値を検知することにより、時間情報と駆動トルクとを取得する。
【0059】
図5に、振動検知部51が検知した電流値(駆動トルク)の一例を示す。ここで取得した時間に対しては、演算に使用する時間をスタート時間0秒に規格化している。

図5では、縦軸が電流値をトルク換算した値(V)、横軸が経過時間(s)を示している。図5に示すように、クリーニングブレード61の振動による摩擦抵抗の増減によって駆動に必要な駆動トルクが変化するため、感光体ドラム1を駆動するため電流値は、時間ごとに一定のトルク幅内で増減するように変動している。従って、この電流値(トルク)を取得することにより、感光体ドラム1に当接するクリーニングブレード61の振動を検知することができる。なお、図5に示す感光体ドラム1の駆動トルクの変動には、上述のクリーニングブレード61の振動による摩擦抵抗の変動の他にも、感光体ドラム1と当接する現像スリーブ41、帯電部2、中間転写ベルト12、塗布ブラシ71、及び、均しブレード74等による影響も含まれている。このため、図5に示す電流値(駆動トルク)は、クリーニングブレード61の振動による影響を含む電流値(駆動トルク)ともいえる。
【0060】
また、振動検知部51は、クリーニングブレード61に取り付けられた機械的ひずみ量を電気量に変換する応力測定用の素子、例えばひずみゲージ等から電流値(抵抗値)の変化を読み出すことにより、クリーニングブレード61の振動を検知するための電流値(抵抗値)を取得することもできる。
【0061】
なお、像担持体が中間転写ベルト12の場合には、中間転写ベルト12に当接するベルトクリーニングブレード9A(ベルトクリーニング部9)の振動を検知する。振動検知部51による振動検知は、上述の感光体ドラム1及びクリーニングブレード61の場合と同様に、中間転写ベルト12を駆動するための電流値や、ベルトクリーニングブレード9Aに取り付けられたひずみゲージ等から読み取ることができる。
【0062】
(FFT演算部)
FFT演算部52は、振動検知部51でクリーニングブレード61の振動として取得した電流値等(振動データ)に対して、周波数成分を検出する処理を行う周波数成分検出部である。本形態では、周波数成分を検出する処理として、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)解析を行う。例えば、図5に示した電流値等に対してFFT解析を行うことによって、図6に示す周波数成分を検出する。図6は、FFT解析によって周波数毎に電流値のスペクトル強度が表示されている。
【0063】
FFT解析により検出される周波数成分は、監視対象物(図5では、感光体ドラム1)に係わる各部位から発生する固有周波数の振動に相当する。例えば、FFT解析によって、感光体ドラム1の駆動系や、感光体ドラム1の回転によって発生する感光体ドラム1自体に起因する固有周波数、クリーニングブレード61、現像スリーブ41、帯電部2、中間転写ベルト12、塗布ブラシ71、及び、均しブレード74等の感光体ドラム1に当接する各構成に起因する固有周波数に相当する各周波数成分が検出される。このため、FFT解析では、所定の周波数成分が、どこの構成から発生するのかを予め確認し、どの周波数成分がどのように変化するかを検出することにより、異常の箇所の検出や、異常発生の原因を推定することが可能である。特に、FFT解析では、他の方法では検出が困難な微小な異常の検出することができるため、本形態の清掃部材の劣化診断や寿命予測に適用することができる。
【0064】
図6に示すFFT解析によって検出された周波数成分では、高いスペクトル強度のピーク値を示す周波数が、周波数100Hz以下の周波数区間に集まっている。また、200Hz付近と、300Hz付近とにも、それぞれ周囲の周波数よりも高いスペクトル強度のピーク値示す周波数が1つずつ存在している。
【0065】
図6に示す周波数成分において100Hz以下の周波数区間に発生するピーク値は、感光体ドラム1自体に起因するものや、クリーニングブレード61以外の現像スリーブ41、帯電部2、中間転写ベルト12、塗布ブラシ71、及び、均しブレード74等の感光体ドラム1に当接する各構成に起因するものである。
また、200Hz及び300Hz付近に発生するピーク値は、クリーニングブレード61の振動に起因するものである。
【0066】
なお、FFT解析による周波数成分において、クリーニングブレード61の起因するピーク値の周波数は、予め求めておく必要がある。例えば、画像形成装置において、クリーニングブレード61を設けた構成と、クリーニングブレード61を設けていない構成とで、FFT解析による周波数成分を比較することにより、クリーニングブレード61に起因するピーク値の周波数を求めることができる。クリーニングブレード61に起因する周波数成分のピーク値は、クリーニングブレード61の材質や形状、感光体ドラム1に係わる構成、及び、その他の種々の条件によって異なる値となる。このため、同様の構成を有する画像形成装置のユニット毎に、清掃部材に起因するピーク値の周波数を検出しておくことが好ましい。像担持体として中間転写ベルト12、清掃部材としてベルトクリーニングブレード9Aを適用する場合にも、同様に清掃部材に起因するピーク値の周波数を検出することが好ましい。
【0067】
FFT解析において取得する電流値の時間間隔とポイント数について説明する。FFT解析の際の最大周波数は取得する時間間隔の半分になる。例えば、電流値を1ms(1kHz)間隔で取得すると、FFT解析で取得できる最大周波数が500Hzになる。そして、FFT解析の分解能を0.1Hz程度とする条件で、上記の最大周波数500Hzまでの周波数を取得すると、周波数の出力ポイントが5000ポイントとなる。このため、サンプリングポイントは、出力ポイントの2倍の10000ポイント程度必要になる。
【0068】
上述の図6に示す本形態のFFT解析では、電流値を1ms間隔で取得し、8192のサンプリングポイント(8.192秒間)のデータから、FFT解析によって500Hzまでの4096ポイントを出力し、分解能を0.122Hzとした。取得したい分解能によってはこの値に限るものではない。FFT解析において分解能を上げればより正確なデータを取得できるが、演算処理に時間がかかる。このため、清掃部材の寿命を判定するために十分なデータを取得できれば、それ以上に分解能を大きくする必要がない。画像形成装置の清掃の寿命判定であれば、出力ポイントが上記の例のように4096以上であれば、十分なデータを取得することができる。このため、出力ポイントは、2でありNが12以上、すなわち出力ポイントが4096以上であることが好ましい。
【0069】
また、上記の図6に示す本形態のFFT解析では、画像形成ジョブ中に取得した電流値等(振動データ)を、画像形成ジョブの終了後の後処理の立ち下げ時にFFT解析を行った。FFT解析を行うタイミングは、これに限られず、画像形成ジョブ中にリアルタイムでFFT解析を行ってもよく、後処理の立ち下げ後にFFT解析を行ってもよい。
【0070】
(寿命判定部)
寿命判定部53は、上記のFFT演算部52においてFFT解析した周波数成分から、クリーニングブレード61に起因するピーク値を示す周波数(以下、ピーク周波数ともいう)を取得し、取得した周波数からクリーニングブレード61の寿命を判定する。
【0071】
クリーニングブレード61は、先端部の摩耗状態や部材の劣化状態に応じて固有周波数が変動する。このため、FFT解析した周波数成分においても、クリーニングブレード61の劣化状態に応じて、クリーニングブレード61に起因するピーク周波数が変動する。具体的には、画像形成装置100を駆動するごとに、クリーニングブレード61に起因するピーク周波数が所定の周波数区間内において低くなる(Hzの値が小さくなる)。
【0072】
このため、清掃部材の寿命判定においては、予め、クリーニングブレード61に起因するピーク値が発生する周波数区間を、寿命判定部53がピーク値を検知する周波数区間として指定しておく。例えば、図6では200Hz付近の周波数区間、又は、300Hz付近の周波数区間を、寿命判定部53がピーク値を検知する周波数区間を指定しておく。そして、寿命判定部53は、上述のFFT演算部52においてFFTT解析した結果から、上記の指定された周波数区間における所定値以上のスペクトル強度を有するピーク値が発生した周波数(ピーク周波数)を検知する。この所定値以上のスペクトル強度を有するピーク値がクリーニングブレード61に起因するものであるため、このピーク周波数を検知することにより、クリーニングブレード61の状態を判定することができる。
【0073】
従って、寿命判定部53は、所定の周波数区間においてピーク周波数が、クリーニングブレード61の製品寿命として設定した周波数(寿命周波数)の値以下であれば、クリーニングブレード61を寿命と判定することができる。また、寿命判定部53は、ピーク周波数を、クリーニングブレード61の劣化状態を判定するためのデータテーブル(寿命テーブル)と比較することにより、クリーニングブレード61の劣化状態を判定することができる。寿命判定部53がピーク周波数を検知するために指定する周波数区間の情報や、清掃部材の寿命周波数、寿命テーブル等は、下記の設定値記憶部54に記憶されている。
【0074】
クリーニングブレード61の印刷枚数とピーク周波数との関係を表すグラフの一例を、図7及び図8に示す。図7及び図8は、異なる2種類のクリーニングブレード(ブレードA、ブレードB)を用いた場合について、各ブレード(ブレードA、ブレードB)におけるピーク周波数と印刷枚数との関係を表している。なお、図7及び図8は、縦軸がピーク周波数、横軸が印刷枚数を示し、実線Aで示す線がブレードAを用いた場合のグラフ、破線Bで示す線がブレードBを用いた場合のグラフを示している。また、図7は、200Hz付近の周波数区間のピーク値を検知する場合のグラフであり、図8は、300Hz付近の周波数区間のピーク値を検知する場合のグラフである。
【0075】
図7及び図8に示すように、ブレードA、及び、ブレードBのいずれにおいても、印刷枚数が増加するほど、ピーク周波数が小さくなる。また、200Hz付近、及び、300Hz付近のいずれの周波数区間においても、印刷枚数が増加するほど、ピーク周波数が小さくなる。このように、画像形成を行うほど、クリーニングブレード61の先端部の摩耗や劣化によって、ピーク周波数が小さくなる。
【0076】
また、図7及び図8に示すように、印刷枚数に応じてピーク周波数が小さくなる様子は、ブレードの種類によって異なる。
図7では、ブレードAは、初期のピーク周波数が200Hzであり、650枚の印刷でピーク周波数が185Hzまで低下した。また、ブレードAは、ピーク周波数の低下速度が一定に近く、グラフも直線に近い。これに対し、ブレードBは、初期のピーク周波数が200Hzであり、650枚の印刷でピーク周波数が190Hzまで低下した。そして、ブレードBは、ピーク周波数の低下速度が一定ではなく、ピーク周波数の低下速度が194Hz付近(印刷枚数350枚付近)から緩やかになる。
【0077】
図8においても、上記図7と同様の結果が示されている。図8では、ブレードAは、初期のピーク周波数が303Hzであり、650枚の印刷でピーク周波数が270Hzまで低下した。また、ブレードAは、ピーク周波数の低下速度が一定に近く、グラフも直線に近い。これに対し、ブレードBは、初期のピーク周波数が303Hzであり、650枚の印刷でピーク周波数が285Hzまで低下した。そして、ブレードBは、ピーク周波数の低下速度が一定ではなく、ピーク周波数の低下速度が290Hz付近(印刷枚数350枚付近)から緩やかになる。
【0078】
また、上述の図7及び図8に示すようなクリーニングブレード61の劣化状態とピーク周波数との関係を用いれば、寿命判定部53は、現在のピーク周波数や、ピーク周波数の初期値からの変動量等を検出することにより、クリーニングブレード61の劣化状態を判定することができる。例えば、下記の設定値記憶部54に記憶されている寿命テーブルを用いて、現在のピーク値の周波数とテーブルに記憶された周波数との比較によって、使用量、残寿命(余命)量等のクリーニングブレード61の状態を判定することができる。
【0079】
さらに、寿命判定部53は、周波数の初期値と、現在の周波数、及び、寿命と判定する周波数とから、任意の数式を用いて現在の周波数でのクリーニングブレード61の劣化具合を判定することもできる。寿命判定部53は、画像形成装置100の構成や、クリーニングブレード61の材料等に応じて、ピーク値の周波数と劣化状態とが線形で変化する場合の数式や、曲線の近似による数式を用いてクリーニングブレード61の劣化状態を判定してもよい。例えば、上述の図7及び図8に示すグラフを近似した数式を用いてクリーニングブレード61の劣化状態を判定することができる。
【0080】
(設定値記憶部)
設定値記憶部54は、上記の寿命判定部53において行われる寿命判定に必要な設定値やデータテーブルを記憶する。清掃部材の寿命判定、及び、劣化状態を判定するためのデータテーブルの一例を図9~12に示す。
【0081】
図9は、寿命判定部53がピーク値を検知する周波数区間を200Hz付近に指定し、寿命周波数を185Hzに設定した場合のデータテーブルである。このデータテーブルでは、ピーク値の周波数が200Hzの場合には、クリーニングブレード61の使用量を0%と判定する。すなわち、周波数の初期値が200Hzに設定され、周波数が200Hzから小さくなるごとにクリーニングブレード61の使用量(劣化状態)を判定している。そして、検知した周波数が185Hzになった場合に、クリーニングブレード61の使用量が100%、即ち、クリーニングブレード61の製品寿命の終了と判定する。
【0082】
図10は、寿命判定部53がピーク値を検知する周波数区間を200Hz付近に指定し、寿命周波数を190Hzに設定した場合のデータテーブルである。図11は、寿命判定部53がピーク値を検知する周波数区間を303Hz付近に指定し、寿命周波数を270Hzに設定した場合のデータテーブルである。図12は、寿命判定部53がピーク値を検知する周波数区間を303Hz付近に指定し、寿命周波数を285Hzに設定した場合のデータテーブルである。
これらの図10図12のデータテーブルを用いた場合にも、上述の図9のデータテーブルを用いる場合と同様に、クリーニングブレード61の寿命判定、及び、劣化状態の判定を行うことができる。
【0083】
なお、データテーブルに設定されている周波数と使用量との関係は、画像形成装置100の構成毎に異なる値となる。このため、画像形成装置100の構成毎に、清掃部材(クリーニングブレード61、ベルトクリーニングブレード9A等)の使用量、使用時間や、劣化状態と、各状態に応じたピーク周波数を予め検出してデータテーブルに設定することが好ましい。
【0084】
(履歴管理部)
履歴管理部55は、上記FFT演算部52によるFFT解析の周波数成分の演算結果を格納する。FFT解析の演算結果を取得することにより、ピーク周波数が移動する様子を把握することができる。このため、履歴管理部55に格納されたFFT解析の演算結果を調べることにより、清掃部材の寿命や劣化状態を判定するためのデータを取得することができる。
【0085】
また、履歴管理部55は、格納されたFFT解析の演算結果を寿命判定部53に対して供給する。寿命判定部53は、クリーニングブレード61の寿命判定を画像形成ジョブの実行と同時に判定しない場合には、ジョブ終了後に履歴管理部55に格納されたFFT解析の演算結果を読み取ることにより、上述の清掃部材の寿命判定を行うことができる。
【0086】
(表示制御部)
表示制御部56は、画像形成装置100の表示部23に対して、上述の寿命判定の結果を表示させる。表示させる内容は、例えば、上述のデータテーブルを参照したクリーニングブレード61の劣化状態、使用量、残寿命(余命)量等を表示させることができる。また、FFT解析による周波数成分の演算結果や、寿命判定部53が検出する周波数区間での現在のピーク値の周波数等を表示させることもできる。
【0087】
なお、上述の説明では、寿命判定の結果や演算結果等の情報をユーザーに報知する方法として、表示部に情報を表示する方法を記載しているが、ユーザーへの情報の報知は、表示以外の方法であってもよい。例えば、情報をユーザーに報知するための報知部として音声出力装置や携帯端末等を用い、画像形成装置100の制御部20に音声出力装置や携帯端末等への情報の報知を制御するための報知制御部を設ける。そして、報知制御部が、音声出力装置や携帯端末等に対して音声によるユーザーへの報知や、携帯端末への情報の送信を行うことにより、各種情報をユーザーに報知することもできる。
【0088】
[処理フロー]
次に、画像形成装置100における上述の清掃部材の寿命判定に係わる動作について説明する。
【0089】
(寿命判定)
図13に、画像形成装置100の制御部20において行われる寿命判定処理のフローチャートを示す。
まず、画像形成装置100は、ユーザーによるプリント指示を操作部24から受け付ける(ステップS10)。そして、プリント指示に従って画像形成を開始(プリントスタート)し(ステップS11)、支持された画像形成が完了した後にプリントを終了する(ステップS12)。
【0090】
次に、制御部20において振動検知部51が、画像形成中のクリーニングブレード61の振動を検知するため電流値(振動データ)を取得する(ステップS13)。例えば、画像形成中に感光体ドラム1を駆動するための電流値(駆動トルク)のデータを記憶部25(図2参照)等に記憶させておき、振動検知部51は、記憶部25から上記データを画像形成終了後に取得する。また、振動検知部51は、画像形成中に感光体ドラム1の駆電流値(駆動トルク)のデータをリアルタイムで取得してもよい。
【0091】
次に、FFT演算部52は、振動検知部51が取得した感光体ドラム1を駆動するための電流値(駆動トルク)のデータに対して、FFT解析の演算処理を行う(ステップS14)。このFFT解析によって、感光体ドラム1を駆動するための電流値(駆動トルク)の周波数成分を検出する。そして、FFT演算部52は、FFT解析した感光体ドラム1を駆動するための電流値(駆動トルク)の周波数成分の演算結果データを、履歴管理部55に格納する(ステップS15)。
【0092】
次に、寿命判定部53が、FFT解析された電流値(駆動トルク)の周波数成分の演算結果データから、クリーニングブレード61の寿命を判定する(ステップS16)。寿命判定部53における寿命判定は、FFT解析の結果と、設定値記憶部54に記憶された各種条件とを用いて行う。例えば、寿命判定部53は、設定値記憶部54において設定された、所定の周波数区間におけるピーク周波数を検出し、ピーク周波数を寿命周波数と比較うする。これにより、クリーニングブレード61の寿命を判定する。また、寿命判定部53は、ピーク周波数に対して設定値記憶部54に記憶された寿命テーブルを参照することにより、クリーニングブレード61の劣化状態を判定することもできる。
【0093】
上記の寿命判定部53によるクリーニングブレード61の寿命判定後、本フローチャートによる処理を終了する。なお、必要に応じて、寿命判定の結果を、表示制御部56を用いて画像形成装置100の表示部23に上記の寿命判定の結果を表示させてもよい。
【0094】
(演算結果の格納)
次に、図14に、寿命判定を行わずにFFT解析による演算結果を格納する場合のフローチャートを示す。
まず、上述の図13のステップS10~S14と同様に、プリント指示の受け付けからFFT解析の演算処理(ステップS20~S24)までを行う。
次に、FFT演算部52が、FFT解析の演算結果を履歴管理部55に格納する(ステップS25)。そして、履歴管理部55は、格納したFFT解析の演算結果(履歴)を表示制御部56に出力し(ステップS26)、本フローチャートによる処理を終了する。この後、表示制御部56がFFT解析の演算結果を画像形成装置100の表示部23に表示させる。
【0095】
履歴管理部55に格納されたFFT解析の演算結果のデータは、例えば、寿命判定部53が履歴管理部55に格納されたデータを読み出すことにより、上述の寿命判定に使用することができる。また、履歴管理部55に格納されたFFT解析の演算結果のデータを使用することにより、清掃部材の寿命や劣化状態を判定するための各種条件等を調べることができる。
【0096】
(寿命判定の選択)
次に、画像形成装置100において、清掃部材の寿命判定を行うかどうかを判定した後、寿命判定を行う場合の処理について説明する。図15に、清掃部材の寿命判定を行うかどうかの判定を含む、寿命判定処理のフローチャートを示す。
【0097】
まず、上述の図13のステップS10~S12と同様に、プリント指示の受け付けからプリント終了の処理(ステップS30~S32)までを行う。
次に、プリントを終了した後、制御部20において、清掃部材の寿命判定を行うかどうかを判定する(ステップS33)。制御部20は、例えば、設定値記憶部に54に寿命判定を行う条件を記憶させておき、この条件を満たした場合に清掃部材の寿命判定の処理を行うように判定する。
【0098】
制御部20において清掃部材の寿命判定を行わないと判定した場合(ステップS33のNO)、本フローチャートによる処理を終了する。
制御部20において清掃部材の寿命判定を行うと判定した場合(ステップS33のYES)、図13のステップS13~S16と同様に、振動検知部51による振動データの取得から寿命判定部53による寿命判定までの処理(ステップS34~S37)を行う。そして、本フローチャートによる処理を終了する。
【0099】
以上の処理を行うことにより、取得した像担持体(感光体ドラムや中間転写体)の駆動電流値(駆動トルク)をFFT解析し、清掃部材に起因する振動データ(ピーク周波数)を検知することにより、清掃部材の寿命や劣化状態を判定することができる。特に、FFT解析によって、微小な異常や状態変化を検出することができるため、清掃部材の劣化状態や寿命を正確に予測することができる。
【0100】
なお、本発明は上述の実施形態例において説明した構成に限定されるものではなく、その他本発明の構成を逸脱しない範囲において種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0101】
1 感光体ドラム、2 帯電部、3 露光部、4 現像部、5 1次転写ローラー、6 クリーニング部、7 潤滑剤塗布部、9 ベルトベルトクリーニング部、9A ベルトクリーニングブレード、9B クリーニングブラシ、9C ケーシング、10 画像形成部、11C シアン作像部、11K ブラック作像部、11M マゼンタ作像部、11Y イエロー作像部、12 中間転写ベルト、13 2次転写ローラー、14 定着装置、20 制御部、21 給紙部、22 画像読取部、23 表示部、24 操作部、25 記憶部、41 現像スリーブ、51 振動検知部、52 FFT演算部、53 寿命判定部、54 設定値記憶部、55 履歴管理部、56 表示制御部、61 クリーニングブレード、62 回収部材、71 塗布ブラシ、72 固形潤滑剤、73 加圧部材、74 均しブレード、100 画像形成装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15