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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】潤滑剤検査装置
(51)【国際特許分類】
   F16N 29/00 20060101AFI20231108BHJP
   F16C 33/66 20060101ALI20231108BHJP
   F16N 21/00 20060101ALI20231108BHJP
   F16N 29/04 20060101ALI20231108BHJP
   G01N 11/10 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
F16N29/00 A
F16C33/66 Z
F16N29/00 D
F16N21/00
F16N29/04
G01N11/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019216636
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021085493
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 浩隆
【審査官】糟谷 瑛
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-177407(JP,A)
【文献】特開2010-203495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00-19/56
F16C 33/30-33/66
F16C 41/00-41/04
F16N 1/00-99/00
G01N 33/00-33/46
G01N 11/00-13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転がり軸受内から潤滑剤を吸引する吸引部と、
前記転がり軸受内と前記吸引部との間に位置し、前記転がり軸受内から流出した前記潤滑剤が流通する配管と、
前記配管内の前記潤滑剤に関する少なくとも1つの物理量を測定する測定部と、
前記測定部と前記吸引部の間に接続され、前記潤滑剤及び気体を貯留する貯留部と、
を備え、
前記貯留部は、前記測定部側の前記配管と接続する供給口と、前記吸引部側の前記配管と接続する排出口とを有し、
前記測定部側の前記配管から流出する前記潤滑剤は、前記供給口を通って前記貯留部内に貯留され、
前記貯留部内の気体は、前記排出口を通って前記吸引部に吸引される、
潤滑剤検査装置。
【請求項2】
前記貯留部と前記吸引部の間に接続される第3バルブと、
前記第3バルブと前記吸引部との間に接続され、内部に気体を貯留する気体貯留部と、
をさらに備え、
前記第3バルブにより前記貯留部と前記吸引部の間の気体の流通が遮断された状態で、前記吸引部により前記気体貯留部内の気体が吸引されることで、前記気体貯留部内の気体の圧力は、前記貯留部内の気体の圧力よりも低くなり、
前記第3バルブは、前記貯留部内の気体の圧力よりも前記気体貯留部内の気体の圧力が低いときに、前記貯留部と前記吸引部の間の気体の流通を遮断する状態から、流通する状態に切り替える、
請求項1の潤滑剤検査装置。
【請求項3】
前記配管のうち前記転がり軸受内と前記測定部との間および前記配管のうち前記測定部と前記吸引部との間の少なくともいずれか一方に接続される1つ又は複数の第1バルブをさらに備え、
前記第1バルブは、前記転がり軸受が回転するとき、前記転がり軸受内と前記測定部との間および前記測定部と前記吸引部との間の少なくともいずれか一方の前記潤滑剤の流通を遮断する、
請求項1又は請求項2の潤滑剤検査装置。
【請求項4】
前記測定部は、前記配管のうち第1領域内に存在する前記潤滑剤について、前記潤滑剤中に分散する鉄粉の割合を測定する第1測定部を有する、
請求項1から請求項3までのいずれか1項の潤滑剤検査装置。
【請求項5】
前記測定部は、
前記配管のうち前記第1領域よりも前記吸引部側に位置する第2領域内に存在する前記潤滑剤に貫入するピストンを有する貫入部と、
前記ピストンが前記潤滑剤に貫入する際の流動抵抗を測定する第2測定部と、
を有する、請求項の潤滑剤検査装置。
【請求項6】
前記配管のうち、前記第1領域と前記第2領域の間に接続される第2バルブをさらに備え、
前記第2バルブは、前記転がり軸受が回転するとき、及び前記ピストンが前記潤滑剤に貫入するとき、の少なくとも一方の状態で、前記第1領域と前記第2領域の間の前記潤滑剤の流通を遮断する、
請求項の潤滑剤検査装置。
【請求項7】
前記測定部が測定した前記物理量に基づいて、前記転がり軸受の劣化および前記転がり軸受内の前記潤滑剤の劣化の少なくともいずれか一方の程度を判定する判定部と、
前記判定部による判定結果に関する情報を、前記判定結果を作業者に報知する報知部へ出力する通信部と、
をさらに備える、請求項1から請求項までのいずれか1項の潤滑剤検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受に用いられる潤滑剤を検査する潤滑剤検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、風力発電装置は、一般に、主軸に接続されたブレードにより風力を受けて当該主軸を回転させ、その主軸の回転を発電機に伝達して発電を行う。この風力発電装置の主軸は、転がり軸受によって回転できる状態で支持される。また、主軸には、ブレードにかかる風力で軸方向荷重や径方向荷重が負荷され、運転中に主軸に撓みが発生するため、転がり軸受には、主軸の撓みを吸収することが可能な自動調心ころ軸受が主に用いられている。
【0003】
主軸を支持する転がり軸受は、内部に充填された潤滑剤(例えば、グリース)によって潤滑されるが、当該潤滑剤は使用によって劣化するため、劣化の程度に応じて交換する必要が生じる。従来、転がり軸受内の潤滑剤は、風力発電装置の定期点検時に一部が取り出され、その硬さ(ちょう度)等から劣化の程度が人為的に調査され、その結果、劣化が進んでいると判断された場合に交換されていた。
【0004】
また、特許文献1には、軸受に潤滑剤を供給する供給ポンプと、この供給ポンプによる潤滑剤の供給圧力を検出する圧力センサと、この圧力センサが検出した供給圧力と予め設定された適正供給圧力とを比較して潤滑剤の劣化を判定する劣化判定装置とを設ける軸受の保守装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-154472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
風力発電装置の定期点検に合わせて転がり軸受内の潤滑剤を取り出し、いわゆるオフラインに潤滑剤の硬さ等を人為的に調査する方法では、定期点検の時期にしか潤滑剤の調査を行うことができない。このため、定期点検が行われ、次の定期点検が行われるまでの間に、潤滑剤が交換を要する程度に劣化した場合であっても、定期点検が行われるまでの間はそのままの状態で転がり軸受が使用され、転がり軸受の寿命が制限されるおそれがある。
【0007】
また、潤滑剤が早く劣化することを見越して、潤滑剤についての点検の間隔を極度に狭くすると、潤滑剤が未だ劣化していないにもかかわらず、潤滑剤の硬さを調べるために高所にある風力発電装置のナセル内まで作業者が頻繁に出向かなければならない。このため、転がり軸受の保守作業の負担が増加する。このような課題は、風力発電装置に限られず、転がり軸受が用いられる他の装置にも生じうるが、転がり軸受が高所又は遠隔地に設けられる場合に、特に顕著に生じる。
【0008】
また、特許文献1の技術は、潤滑剤を軸受に供給する圧力に基づいて潤滑剤の劣化を判定するものであるため、測定される圧力は、軸受で使用された後の潤滑剤のほか、新たに軸受内へ供給する潤滑剤の影響を受けてしまう。したがって、すでに軸受内にある使用済みの潤滑剤の圧力のみ直接測定することはできず、特許文献1の技術では、軸受で使用された潤滑剤についての劣化の程度を正確に判断し難い。
【0009】
本発明は、転がり軸受で使用された後の潤滑剤に関する物理量を測定することで、転がり軸受で使用された潤滑剤についての劣化の程度をより正確に検査することを可能とする、潤滑剤検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 本発明の潤滑剤検査装置は、転がり軸受内から潤滑剤を吸引する吸引部と、前記転がり軸受内と前記吸引部との間に位置し、前記転がり軸受内から流出した前記潤滑剤が流通する配管と、前記配管内の前記潤滑剤に関する少なくとも1つの物理量を測定する測定部と、を備える。
【0011】
以上の構成を有する潤滑剤検査装置では、吸引部により転がり軸受内の使用済みの潤滑剤を吸引することで配管へ流出させ、測定部により当該配管内の潤滑剤に関する少なくとも1つの物理量を測定する。これにより、転がり軸受内で使用された後の潤滑剤に関する物理量を測定することができるため、転がり軸受で使用された潤滑剤についての劣化の程度をより正確に検査することができる。
【0012】
(2) 好ましくは、前記配管のうち前記転がり軸受内と前記測定部との間および前記配管のうち前記測定部と前記吸引部との間の少なくともいずれか一方に接続される1つ又は複数の第1バルブをさらに備え、前記第1バルブは、前記転がり軸受が回転するとき、前記転がり軸受内と前記測定部との間および前記測定部と前記吸引部との間の少なくともいずれか一方の前記潤滑剤の流通を遮断する。
【0013】
このような構成によれば、転がり軸受が回転しているときに、転がり軸受から配管のうち第1バルブの下流側へ潤滑剤が流出することを防止できる。
【0014】
(3) 好ましくは、前記測定部は、前記配管のうち第1領域内に存在する前記潤滑剤について、前記潤滑剤中に分散する鉄粉の割合を測定する第1測定部を有する。
【0015】
このような構成によれば、転がり軸受内で使用された後の潤滑剤に関する物理量として、潤滑剤中に分散する摩耗粉(鉄粉)の割合を測定することができる。
【0016】
(4) 好ましくは、前記測定部は、前記配管のうち前記第1領域よりも前記吸引部側に位置する第2領域内に存在する前記潤滑剤に貫入するピストンを有する貫入部と、前記ピストンが前記潤滑剤に貫入する際の流動抵抗を測定する第2測定部と、を有する。
【0017】
このような構成によれば、転がり軸受内で使用された後の潤滑剤に関する物理量として、潤滑剤の流動抵抗を測定することができる。また、第1領域のほうが第2領域よりも転がり軸受に近い位置にあり、第1領域内において潤滑剤の充満状態が維持されやすくなる。これにより、第1測定部において摩耗粉(鉄粉)の割合をより正確に測定することができる。
【0018】
(5) 好ましくは、前記潤滑剤検査装置は、前記第1領域と前記第2領域の間に接続される第2バルブをさらに備え、前記第2バルブは、前記転がり軸受が回転しているとき、及び前記ピストンが前記潤滑剤に貫入しているとき、の少なくとも一方の状態で、前記第1領域と前記第2領域の間の前記潤滑剤の流通を遮断する。
【0019】
このような構成によれば、転がり軸受が回転しているときに、転がり軸受から前記第2領域へ潤滑剤が流出することを防止できる。また、ピストンが潤滑剤に貫入しているときに、第2領域から転がり軸受へ潤滑剤が逆流するのを防止できる。
【0020】
(6) 好ましくは、前記測定部と前記吸引部の間に接続され、前記潤滑剤及び気体を貯留する貯留部をさらに備え、前記貯留部は、前記測定部側の前記配管と接続する供給口と、前記吸引部側の前記配管と接続する排出口とを有し、前記測定部側の前記配管から流出する前記潤滑剤は、前記供給口を通って前記貯留部内に貯留され、前記貯留部内の気体は、前記排出口を通って前記吸引部に吸引される。
【0021】
このような構成によれば、転がり軸受から流出した潤滑剤は供給口を通って貯留部に貯留され、貯留部から吸引部へは排出口を介して気体のみが排出されるため、吸引部に潤滑剤が流入することを防止できる。これにより、潤滑剤の流入による吸引部の故障を防止できる。
【0022】
(7) 好ましくは、前記潤滑剤検査装置は、前記貯留部と前記吸引部の間に接続される第3バルブと、前記第3バルブと前記吸引部との間に接続され、内部に気体を貯留する気体貯留部と、をさらに備え、前記第3バルブにより前記貯留部と前記吸引部の間の気体の流通が遮断された状態で、前記吸引部により前記気体貯留部内の気体が吸引されることで、前記気体貯留部内の気体の圧力は、前記貯留部内の気体の圧力よりも低くなり、前記第3バルブは、前記貯留部内の気体の圧力よりも前記気体貯留部内の気体の圧力が低いときに、前記貯留部と前記吸引部の間の気体の流通を遮断する状態から、流通する状態に切り替える。
【0023】
このような構成によれば、前記第3バルブは、貯留部内の気体の圧力よりも気体貯留部内の気体の圧力が低いときに、貯留部と吸引部の間の気体の流通を遮断する状態から、流通する状態に切り替えるため、貯留部と気体貯留部との差圧により、配管内に急激な吸引力が発生する。このため、動粘度の高い(すなわち、流動しにくい)潤滑剤を用いる場合でも、転がり軸受から潤滑剤を確実に流出させることができる。
【0024】
(8) 好ましくは、前記潤滑剤検査装置は、前記測定部が測定した前記物理量に基づいて、前記転がり軸受の劣化および前記転がり軸受内の前記潤滑剤の劣化の少なくとも一方の程度を判定する判定部と、前記判定部による判定結果に関する情報を、前記判定結果を作業者に報知する報知部へ出力する通信部と、をさらに備える。
【0025】
このような構成によれば、転がり軸受の劣化および転がり軸受内の潤滑剤の劣化の少なくとも一方の程度についての判定結果を、転がり軸受から離れた場所にいる作業者に報知することができる。作業者は、報知された判定結果から、転がり軸受の劣化および潤滑剤の劣化の少なくとも一方の程度を知ることができる。したがって、転がり軸受の劣化および転がり軸受内の潤滑剤の劣化の少なくとも一方の程度を調査するために、作業者が転がり軸受の設置された現場に赴く必要がなくなり、転がり軸受についての保守作業の負担を軽減することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、転がり軸受の劣化の程度及び転がり軸受で使用された潤滑剤についての劣化の程度の少なくとも一方をより正確に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1実施形態に係る潤滑剤検査装置を示す模式図である。
図2図1に係る潤滑剤検査装置の測定部を示す模式図である。
図3図2に係る潤滑剤検査装置の第1測定部を示す模式図である。
図4図2に係る潤滑剤検査装置の第2測定部及び押圧部を示す模式図である。
図5図4に係る第2測定部及び押圧部の一部を示す断面図である。
図6図4に係る第2測定部及び押圧部の一部を示す斜視図である。
図7図4に係る第2測定部及び押圧部の一部を示す側面図である。
図8図4に係る第2測定部及び押圧部の動作を示す模式図である。
図9図1に係る潤滑剤検査装置の吸引部を示す模式図である。
図10図1に係る潤滑剤検査装置の制御部を示すブロック図である。
図11】第2測定工程の開始直前、途中及び終了直後の第2測定部を示す模式図である。
図12】第1実施形態の変形例に係る潤滑剤検査装置を示す模式図である。
図13】第1実施形態の変形例に係る潤滑剤検査装置の一部を示す模式図である。
図14】第1実施形態の変形例に係る潤滑剤検査装置の一部を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る潤滑剤検査装置の検査対象となる潤滑剤としては、例えば、潤滑油、グリース等が挙げられる。グリースは、基油に増ちょう剤を分散した半固体状又は固体状の潤滑剤である。
【0029】
以下、本発明の第1実施形態を、風力発電装置に用いられる転がり軸受についての潤滑剤検査装置を例にとって、図面を参照して説明する。本発明に係る潤滑剤検査装置は、転がり軸受に用いられた潤滑剤について検査する装置である。本発明にて潤滑剤を検査する転がり軸受の用途は、風力発電装置に限られず、各種の装置にも適用することができる。
【0030】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る潤滑剤検査装置を示す概略的な側面図(一部断面図)である。本実施形態の潤滑剤検査装置1は、転がり軸受61の内部に充填された潤滑剤に関する物理量を測定する装置である。
【0031】
本実施形態において測定の対象となる転がり軸受61は、風力発電装置の主軸70を回転自在に支持する転がり軸受である。一般に、この転がり軸受61には、ラジアル荷重及びアキシアル荷重を負荷可能でかつ主軸70の撓みを吸収可能な自動調心ころ軸受が採用される。転がり軸受61は、軸受ハウジング67に収容される。
【0032】
<1.転がり軸受61の構成>
転がり軸受61は、外輪62と、内輪63と、転動体64と、保持器65とを有する。外輪62は円環状に形成される。外輪62は鋼材で形成される。外輪62の内周には、凹球面状の軌道面62aが形成される。外輪62の軸方向中央部には、潤滑剤の注入口62bが形成される。潤滑剤は、給脂装置12によって軸受ハウジング67に形成された給脂口68bから軸受ハウジング67内に供給され、さらに注入口62bから転がり軸受61内に充填される。
【0033】
内輪63は円環状に形成される。内輪63は鋼材で形成される。内輪63の外周には、軸方向の中央側が凸となるように複列の曲面状の軌道面63aが形成される。内輪63の外周の軸方向両端部には、一対のつば63bが設けられる。内輪63の内周面には主軸70が圧入され、内輪63が主軸70に一体回転可能に固定される。
【0034】
転動体64は、外輪62の軌道面62aと内輪63の軌道面63aとの間に転動自在に配置された複列の球面ころである。転動体64は鋼材で形成される。転動体64は、一対のつば63bによって軸方向外側への移動が制限され、転がり軸受61外への脱落が防止される。転がり軸受61は、外輪62の軌道面62a上で転動体64が軸方向へ移動することによって主軸70の撓み等による変形を吸収することができる。
【0035】
軸受ハウジング67は、ハウジング本体68と、2つの蓋69とを備える。ハウジング本体68には、外輪62を嵌合させるための装着口68aが形成される。外輪62の外周面は、装着口68aに嵌合される。蓋69は、ハウジング本体68の装着口68aと主軸70との間の環状の空間を軸方向両側から覆う。蓋69は円板形状であり、蓋69の中央には、主軸70を通すための開口69aが形成される。蓋69は、ハウジング本体68の軸方向側面にボルト等によって固定される。転がり軸受61側に位置する蓋69の一側面には、外輪62側へ向けて突出し、ハウジング本体68の装着口68aに嵌合される環状の突条部69bが設けられる。
【0036】
転がり軸受61の外輪62と内輪63との間の環状空間には潤滑剤が充填される。また、潤滑剤は、蓋69によって外部への漏洩が阻止される。蓋69には、転がり軸受61に充填された潤滑剤を外部に排出するための排出口69cが形成される。排出口69cは、転がり軸受61に充填された潤滑剤を配管11へ搬送するために利用される。
【0037】
<2.潤滑剤検査装置1の構成>
潤滑剤検査装置1は、配管11と、測定部2と、貯留部3と、吸引部4と、制御部5とを備える。配管11は、内部に潤滑剤又は気体を流通させることができる管である。配管11は、後述する配管111、112、113、114、211、242を含む。
【0038】
配管111は、転がり軸受61から測定部2へ潤滑剤を流通させる管であり、一端を排出口69cと接続し、他端を測定部2と接続する。配管113は、測定部2から貯留部3へ潤滑剤を流通させる管であり、一端を測定部2と接続し、他端を貯留部3と接続する。配管114は、貯留部3から吸引部4へ気体を流通させる管であり、一端を貯留部3と接続し、他端を吸引部4と接続する。
【0039】
制御部5は、潤滑剤検査装置1の各部と電気的に接続し、潤滑剤検査装置1の各部へ動作指令を出力する。また、制御部5には、潤滑剤検査装置1の各部から送信される信号が入力される。以下、潤滑剤検査装置1の各部の構成について説明する。
【0040】
<2.1 測定部2>
図2は、図1に係る測定部2の詳細を示す模式図である。測定部2は、第1測定部21と、第2測定部23とを有する。第1測定部21と第2測定部23とを接続する配管112には、バルブ22が設けられる。
【0041】
バルブ22は、制御部5と電気的に接続し、制御部5の動作指令により、開閉が切り替えられる。バルブ22が閉状態になると、第1測定部21と第2測定部23との間の潤滑剤の流通が遮断される。バルブ22が開状態になると、第1測定部21と第2測定部23との間の潤滑剤の流通が確保される。
【0042】
以下、第1測定部21について、図3を用いて説明し、第2測定部23について、図4から図8までを用いて説明する。
【0043】
図3は、図2に係る第1測定部21の詳細を示す模式図である。図3のうち、断面として示す部分にはハッチングを付す。配管211は、第1測定部21の内部に位置する配管である。配管211は、継手213を介して配管111と接続し、継手214を介して配管112と接続する。
【0044】
第1測定部21は、配管11のうち第1領域内(本実施形態では配管211内)に存在する潤滑剤について、いわゆる磁気バランス式電磁誘導法により、潤滑剤中に分散する鉄粉の割合を測定する測定部である。転がり軸受61(図1)において、転がり軸受61の回転時間の累積に伴い、転がり軸受61内の潤滑剤が劣化すると、転動体64と軌道面62a、63aやつば63bとは金属接触することがあり、転がり軸受61内の各部に摩耗が生じる場合がある。摩耗により生じた微量の摩耗粉(鉄粉)は、転がり軸受61の回転により、潤滑剤中に分散される。摩耗が進むにつれて、潤滑剤中に分散する摩耗粉(鉄粉)の割合は増加する。したがって、転がり軸受61で使用された潤滑剤中に分散する摩耗粉(鉄粉)の割合を測定することで、軌道面62a、63aの摩耗の程度を検査することができる。
【0045】
第1測定部21は、測定用コイル222と、図示省略する参照用コイルと、図示省略する検出コイルとを有する。測定用コイル222は、配管211を取り囲む。第1測定部21は制御部5と電気的に接続し、制御部5の動作指令により、測定用コイル222及び参照用コイルに交流電流が流される。測定用コイル222に交流電流が流れると、配管211内に鉄粉がある場合、測定用コイル222と鉄粉のない参照用コイルとの磁界のバランスが崩れ、このとき、検出コイルには、配管211内の鉄粉の量に応じて、誘導電圧が発生する。このように、第1測定部21は、検出コイルが検出した誘導電圧に基づいて配管211内の鉄粉の量を測定する。
【0046】
ここで、測定の対象領域となる配管211内の容積は既知であり、配管211内に潤滑剤が充満していれば、配管211内の潤滑剤の容量も既知となる。第1測定部21は、配管211内の容積(すなわち、充満時の潤滑剤の容量)と測定した摩耗粉の量とに基づいて、配管211内に存在する潤滑剤中に分散する摩耗粉(鉄粉)の割合を測定する。測定の対象領域となる配管211内の容積をL、測定した対象領域の摩耗粉(鉄粉)の量をXとすると、配管211内に存在する潤滑剤中に分散する摩耗粉(鉄粉)の割合Yは、Y=X/Lにより求められる。第1測定部21は、測定した摩耗粉(鉄粉)の割合を、制御部5へ出力する。
【0047】
図4は、図2に係る第2測定部23の詳細を示す模式図である。第2測定部23は、第2領域内(本実施形態では配管242内)に存在する潤滑剤について、ピストン251が潤滑剤に貫入する際の流動抵抗を測定する測定部である。潤滑剤の流動抵抗は、潤滑剤の硬さ(ちょう度)に依存するため、流動抵抗を測定すれば、潤滑剤の硬さを知ることができる。
【0048】
ここで、転がり軸受61内の潤滑剤の硬さは、転がり軸受61の使用条件によって、使用前の硬さから変化する。例えば、転がり軸受61内の温度が高くなることにより、潤滑剤中の成分が酸化してスラッジになると、潤滑剤は硬くなる(ちょう度が高くなる)。したがって、転がり軸受61で使用された潤滑剤の流動抵抗を測定し、使用前の潤滑剤の硬さからの変化量を調べることで、潤滑剤の劣化の程度を検査することができる。
【0049】
第2測定部23は、充填部24と、貫入部25と、検出部27とを有する。貫入部25のうち後述するアクチュエータ255は、制御部5と電気的に接続し、制御部5の動作指令により駆動する。検出部27のうち後述する検出回路272は、制御部5と電気的に接続し、検出信号を制御部5へ出力する。以下、第2測定部23の各部について、図4から図7までを適宜用いて説明する。
【0050】
図5は潤滑剤検査装置1の充填部24を示す断面図である。充填部24は、金属又は硬質樹脂等により形成された略直方体形状の本体241とピストン支持部245とを備える。本体241には、配管242、導入口243、排出口244、取付口260が設けられている。
【0051】
配管242は、本体241の内部に位置する配管である。具体的には、配管242は、本体241の長手方向に沿って設けられた円筒形状の内周面により、形成される。配管242内には、潤滑剤が充填される空間が設けられる。配管242内には、後述する貫入部25のピストンヘッド251aが配管242の長さ方向(筒軸心方向)に沿って移動可能に収容される。配管242は、配管242の長さ方向のうちピストンヘッド251aの反対側に、配管242の横断面積が縮小した絞り部(オリフィス)242aを有する。
【0052】
導入口243は、配管242の外部から配管242内に潤滑剤を導入するための開口である。導入口243は、一端を本体241の側面241aに開口し、他端を配管242の周面に開口する円筒形状の口である。導入口243の中心線(筒軸心)O2は、配管242の中心線(筒軸心)O1と直交する。導入口243には、継手246が取り付けられ、継手246には配管112が接続される。したがって、配管112を流れる潤滑剤は、導入口243から配管242内に導入される。
【0053】
排出口244は、配管242内に充填された潤滑剤を本体部241外へ排出するための開口である。排出口244は、一端を本体241の長手方向の側面241bに開口し、他端を配管242の長さ方向の端部に開口する円筒形状の口である。排出口244の中心線(筒軸心)は、配管242の中心線O1と一致し、排出口244と配管242とは一直線上に存在する。排出口244は、継手247を介して配管113と接続する。
【0054】
ピストン支持部245は、後述する貫入部25のピストンロッド251bを支持する。ピストン支持部245は、シール261と、支持リング262と、スペーサ263と、固定部材264とを有し、本体241の取付口260に固定されている。
【0055】
取付口260は、一端を本体241の長手方向の側面241cに開口し、他端を配管242の長さ方向のうち排出口244と反対側の端部に開口する円筒形状の口である。取付口260は、内周面の一部に雌ネジ260bを有する。取付口260の中心線(筒軸心)は、配管242の中心線O1と一致し、取付口260と配管242は一直線上に存在する。取付口260の内径は、配管242の内径よりも大きい。したがって、取付口260と配管242の境界には、両者の内径差による段差面260aが存在する。
【0056】
取付口260には、段差面260a側から順に、シール261、支持リング262、スペーサ263が収容される。シール261は、ゴム等の弾性材料である。シール261は、外径が取付口260の内径と略同じ(又は、取付口260の内径よりわずかに小さい)円環形状を有する。シール261の内径は、貫入部25のピストンロッド251bの外径よりもわずかに大きい。シール261と貫入部25のピストンヘッド251aとが密着するとき、配管242と取付口260との間の空気の流通は阻止される。
【0057】
支持リング262は、金属又は合成樹脂である。支持リング262は、外径が取付口260の内径と略同じ(又は、取付口260の内径よりわずかに小さい)円環形状であり、内周面262aを有する。内周面262aの内径は、貫入部25のピストンロッド251bの外径よりもわずかに大きい。支持リング262は、内周面262aにより、ピストンロッド251bを摺動可能に支持する。
【0058】
スペーサ263は、固定部材264と支持リング262の間に配置され、固定部材264と支持リング262の間隔を保つ。スペーサ263は、取付口260の内径よりもわずかに小さい外径を有する円筒である。
【0059】
固定部材264は、取付口260に収容されたシール261、支持リング262及びスペーサ263を取付口260内に固定する。固定部材264は、略円筒形状を有する。固定部材264は、外周面の一部に雄ネジ264aを有する。固定部材264の雄ネジ264aを取付口260の雌ネジ260bに締結することにより、固定部材264はシール261、支持リング262及びスペーサ263を固定する。
【0060】
図4を参照する。貫入部25は、ピストン251と、駆動部252と、連結部253とを備える。以下、図4から図7までを適宜用いて、貫入部25について説明する。図6は、貫入部25のうち駆動部252とピストン251との連結部253を示す斜視図であり、図7は、連結部253を示す側面図である。
【0061】
図5を参照する。ピストン251は、ピストンヘッド251aと、ピストンロッド251bとを有する。ピストンヘッド251aは、円柱形状を有し、配管242に収容される。ピストンヘッド251aの外径は、配管242の内径よりも小さい。したがって、ピストンヘッド251aと配管242との間に隙間を有する状態で、ピストンヘッド251aは配管242の中に充填される潤滑剤の中に貫入できる。ピストンロッド251bは、円柱形状の棒体である。ピストンロッド251bは、支持リング262の内周面262a内に摺動可能に挿入される。ピストンロッド251bの長さ方向の一端部にピストンヘッド251aが固定される。ピストンロッド251bは、ピストンヘッド251aの外径よりも小さい外径を有する。
【0062】
図6を参照する。ピストン251は、荷重受け部材251cを有する。荷重受け部材251cは、ピストンロッド251bの長さ方向の他端部に設けられる。荷重受け部材251cは、円板形状を有し、駆動部252からの荷重を受ける。
【0063】
荷重受け部材251cは、ピストンロッド251bの長さ方向の他端側の中実部251c2と、長さ方向の一端側の雌ねじ部251c3と、を有する。中実部251c2と雌ねじ部251c3とはピストンロッド251bの長さ方向に固定されている。中実部251c2と雌ねじ部251c3とは接着剤で接着されて固定されている。雌ねじ部251c3はピストンロッド251bの長さ方向に貫通する雌ねじを有し、ピストンロッド251bの長さ方向の他端部に形成された雄ねじと螺合してピストンロッド251bに固定されている。
【0064】
図4を参照する。駆動部252は、ピストン251を駆動し、ピストン251のピストンヘッド251aを配管242内で往復移動させる。駆動部252は、アクチュエータ255と、貫入部材256とを備えている。アクチュエータ255は、伸縮可能なシリンダである。シリンダとしては、例えば、ボールねじ機構を内蔵した公知の電動シリンダや、油圧等の流体圧を利用した流体圧シリンダを用いる。アクチュエータ255は、シリンダ本体255aと、シリンダ本体255a内に長さ方向に移動可能に設けられたピストン部材255bとを有する。
【0065】
図6及び図7を参照する。押圧部材256は、ピストン部材255bの先端に取り付けられる。具体的には、ピストン部材255bの先端には、2つのナット257が並べて締結され、より先端側のナット257に押圧部材256が取り付けられる。押圧部材256は円板形状を有する。押圧部材256の一方の側面(押圧面)256aは、荷重受け部材251cの一方の側面(荷重受け面)251c1と対向する。押圧面256aと荷重受け面251c1は、平行に配置される。
【0066】
連結部253は、駆動部252とピストン251とを連結する。連結部253は、取付板253aと、連結板253bと、係止板253cとを有し、これらはいずれも矩形の形状を有する。取付板253aと係止板253cは、互いに対向した状態で、連結板253bの両端部にそれぞれ連結する。すなわち、連結部253は、コの字形状(又は、U字形状)を有する。
【0067】
取付板253aは、アクチュエータ255のピストン部材255bの先端部において、2つのナット257の間に取り付けられる。係止板253cは、切り欠き溝253c1を有する。切り欠き溝253c1には、ピストン251のピストンロッド251bが挿入される。
【0068】
図4を参照する。検出部27は、貫入部25のピストン251が配管242内の潤滑剤に貫入する際の、潤滑剤の流動抵抗を測定する。具体的には、検出部27は、アクチュエータ255からピストン251に付与される圧力を検出し、当該圧力から潤滑剤の流動抵抗を測定する。検出部27は、圧力センサ(感圧センサ)271と、検出回路272とを備える。
【0069】
図6及び図7を参照する。圧力センサ271は、押圧面256aに取り付けられ、荷重受け面251c1と対向する。圧力センサ271は、圧力が付与されると電気抵抗値が変化するセンサである。なお、本発明の実施に関してはこれに限られず、圧力センサ271は、荷重受け面251c1に取り付けられ、押圧面256aと対向する構成としてもよい。
【0070】
検出回路272は、圧力センサ271にかかる電圧値を検出信号として出力する電気回路である。当該電圧値は、圧力センサ271の電気抵抗値の変化によって変動するため、当該電圧値を換算することで、圧力センサ271に付与される圧力を検出することができる。
【0071】
次に、第2測定部23における測定動作について、図7及び図8を参照しながら説明する。図8は、圧力センサ271と貫入部25の動作を模式的に示す図である。
【0072】
図7を参照する。制御部5の動作指令により、収縮状態にあるアクチュエータ255が伸長すると、押圧部材256が、ピストン251の荷重受け部材251cを矢印Aの方向(第1方向)に押圧する。これにより、充填部24の配管242内では、ピストン251のピストンヘッド251aが配管242の取付口260側からオリフィス242a側へ移動する。配管242内に潤滑剤が充填される場合、ピストンヘッド251aの第1方向への移動によって配管242内の潤滑剤にピストン251が貫入し、一部の潤滑剤がピストン251に押しのけられて取付口260側へ移動するとともに他の一部の潤滑剤が排出口244から排出される。
【0073】
一方、制御部5の動作指令により、伸長状態にあるアクチュエータ255が収縮すると、連結部253を介してピストン251が矢印Bの方向(第2方向)に引っ張られる。具体的には、荷重受け部材251cが連結部253の係止板253cに係止し、ピストン251が矢印Bの方向に引っ張られる。これにより、配管242内では、ピストンヘッド251aが配管242のオリフィス242a側から取付口260側へ移動する。以上の動作により、ピストン251のピストンヘッド251aは、配管242内で往復移動する。
【0074】
図8(a)は、アクチュエータ255が伸長し、矢印Aの方向に押圧部材256がピストン251の荷重受け部材251cを押圧している状態を示す。この状態において、圧力センサ271は、押圧面256aと荷重受け面251c1との間に挟まれた状態となる。この状態において、圧力センサ271は、押圧部材256から荷重受け部材251cに付与される圧力を検出することができる。このとき、荷重受け部材251cと連結部253の係止板253cとの間には隙間t1が生じている。アクチュエータ255は、隙間t1がなくなり、荷重受け部材251cが係止板253cと接触するまで、矢印Aの方向に伸長する。
【0075】
配管242内に潤滑剤が充填された状態で、矢印Aの方向に押圧部材256が荷重受け部材251cを押圧すると、圧力センサ271は、配管242内の潤滑剤の硬さに応じた圧力を検出することができる。配管242内の潤滑剤の硬さが大きい場合、潤滑剤の流動抵抗も高くなるので、アクチュエータ255からピストン251に付与される圧力が大きくなり、圧力センサ271が検出する圧力も大きくなる。一方、配管242内の潤滑剤の硬さが小さい場合、アクチュエータ255からピストン251に付与される圧力が小さくなり、圧力センサ271が検出する圧力も小さくなる。したがって、圧力センサ271が検出する圧力から、配管242内の潤滑剤の流動抵抗を求めることができる。
【0076】
図8(b)は、アクチュエータ255が矢印Aの方向に伸長して、荷重受け部材251cが係止板253cと接触した後、アクチュエータ255が収縮している状態を示す。アクチュエータ255が収縮し、連結部253を介してピストン251を引っ張っているとき、荷重受け部材251cは、圧力センサ271から隙間t2をあけて離反する。このため、圧力センサ271には荷重が付与されず、圧力は検出されない。したがって、連結部253は、ピストン251が配管242内の潤滑剤に貫入するときのみ圧力センサ271によって圧力を検出することができるように構成される。
【0077】
なお、押圧部材256は、ゴム等の弾性材を介してアクチュエータ255に取り付けられてもよいし、荷重受け部材251cは、ゴム等の弾性材を介してピストンロッド251bに取り付けられてもよい。第1実施形態では、押圧面256aと荷重受け面251c1とが平行に配置されるため、圧力センサ271に均等に圧力が付与され、より正確な圧力検出を行うことができる。これに加え、弾性材を押圧部材256及び荷重受け部材251cの少なくとも一方に取り付けることで、押圧面256aと荷重受け面251c1との間に傾きが生じても当該弾性材で傾きを吸収することができる。このため、より正確な圧力検出が可能となる。
【0078】
<2.2 貯留部3>
図1を参照する。貯留部3は、潤滑剤及び気体が貯留される貯留部本体31を有する。貯留部本体31は、供給口311と、排出口312とを有する。貯留部本体31の内部は、供給口311及び排出口312を除いて、密閉される。すなわち、貯留部本体31は、密閉容器である。図1において、貯留部3に貯留される潤滑剤G1をクロスハッチングで示す。
【0079】
供給口311は、配管113と接続し、排出口312は配管114と接続する。すなわち、貯留部3は、測定部2と吸引部4の間の配管11の管路途中に接続される。供給口311は、配管113の端部を貯留部本体31内へ導入するために、貯留部本体31に設けられた口である。配管113の端部は、貯留部本体31内で開口し、配管113内を流れる潤滑剤は、供給口311を通って当該開口から貯留部本体31内へ排出される。排出口312は、配管114の端部を貯留部本体31内へ導入するために、貯留部本体31に設けられた口である。配管114の端部は、貯留部本体31内で開口し、貯留部本体31内の気体は、当該開口から排出口312を通って配管114へ排出される。
【0080】
<2.3 吸引部4>
図9は、吸引部4の詳細を示す模式図である。吸引部4は、真空エジェクタ41と、圧力センサ42と、圧縮機43とを有する。
【0081】
真空エジェクタ41は、T字形状(長手方向に長尺な第1部分と、前記第1部分の管路途中から長手方向と交差する方向に突出する第2部分とを含む形状)を有する配管410を有し、長手方向の一端に開口412が形成され、長手方向の他端に開口413が形成される。配管410のうち、長手方向と交差する方向には、開口411が形成される。配管114は、一端を貯留部3と接続し、他端を配管410に開口411を介して接続する。配管115は、一端を配管410に開口412を介して接続し、他端を圧縮機43と接続する。
【0082】
圧力センサ42は、配管114に接続され、配管114内の気体の圧力を測定する。圧力センサ42は制御部5と電気的に接続し、測定した気体の圧力についての検出信号を制御部5に出力する。
【0083】
圧縮機43は、気体を圧縮し、配管115へ圧縮気体を送出する装置である。圧縮機43は、制御部5と電気的に接続し、制御部5の動作指令により圧縮気体を配管115へ送出する。制御部5は、圧力センサ42から入力される値に基づいて、圧縮機43の動作を制御する。
【0084】
次に、吸引部4の吸引動作について説明する。制御部5の動作指令により、圧縮機43が圧縮気体を配管115へ送出すると、配管115を流れる圧縮気体は矢印Cの方向に進みながら開口412から配管410へ導入される。そして、圧縮気体は配管410内を開口413側へ流れ、開口413から排気される。配管410及び配管114内の気体は、矢印Cの方向に進む圧縮気体に巻き込まれることで、矢印Dの方向に流れ、開口413から圧縮気体とともに排気される。これにより、配管114内の気体を吸引することができる。
【0085】
<2.4 制御部5>
図10は、制御部5の機能を示すブロック図である。制御部5は、演算部と記憶部とを有するコンピュータにより構成される。制御部5は、駆動制御部51と、判定部52と、測定値記憶部53と、基準値記憶部54と、結果記憶部55と、通信部56とを有する。
【0086】
駆動制御部51は、潤滑剤検査装置1の各部の駆動を制御する。具体的には、駆動制御部51は、第1測定部21、バルブ22、アクチュエータ255及び圧縮機43の駆動を制御する。
【0087】
測定値記憶部53は、潤滑剤検査装置1で測定された潤滑剤の物理量に関する値(測定値)を記憶する。具体的には、測定値記憶部53は、第1測定部21で測定した配管211内に存在する潤滑剤中に分散する摩耗粉(鉄粉)の割合(以下、「第1測定値」と称する)を記憶し、第2測定部23で測定した配管242内の潤滑剤の流動抵抗(以下、「第2測定値」と称する)を記憶する。
【0088】
基準値記憶部54は、潤滑剤の測定値に対応する基準値を記憶する。具体的には、基準値記憶部54は、第1測定値に対応する所定の割合の値(以下、「第1基準値」と称する)を記憶する。第1基準値は、例えば、転がり軸受の劣化状態として許容される摩耗粉(鉄粉)の割合の上限値である。また、基準値記憶部54は、第2測定値に対応する基準値として、転がり軸受61に使用される前の潤滑剤の流動抵抗の値(以下、「第2基準値」と称する)を記憶する。基準値記憶部54には、実際に転がり軸受61に使用される前の潤滑剤を測定して得られる流動抵抗を第2基準値として記憶させてもよいし、使用する潤滑剤のデータシート等に基づいた値を第2基準値として記憶させてもよい。転がり軸受61に使用される前の潤滑剤を測定して得られる流動抵抗を第2基準値とする場合、測定値記憶部53に記憶された第2測定値を読み出して基準値記憶部54に記憶させてもよい。
【0089】
判定部52は、測定部2が測定した潤滑剤に関する物理量に基づいて、転がり軸受61内の潤滑剤の劣化の程度を判定し、その判定結果を結果記憶部55に出力する。具体的には、判定部52は、測定値記憶部53から測定値を読み出し、基準値記憶部54から基準値を読み出す。そして、測定値と基準値を比較することで、転がり軸受61の劣化の程度や転がり軸受61内の潤滑剤の劣化の程度を判定する。
【0090】
第1基準値は、潤滑剤中に分散する摩耗粉(鉄粉)の割合の許容上限であるから、第1測定値が第1基準値を超える場合、転がり軸受61の摩耗が進行しており、転がり軸受61内に潤滑剤を供給する等のメンテナンスが必要である。したがって、判定部52は、第1測定値と第1基準値を比較し、第1測定値が第1基準値よりも大きい場合に、「転がり軸受が摩耗している」と判定し、その判定結果を結果記憶部55に出力する。なお、判定の内容は上記に限られず、転がり軸受の劣化の程度(本実施形態では、転がり軸受の摩耗の進行の程度)を示すものであればよい。例えば、「転がり軸受の摩耗の進行度合いが大・中・小の3段階のうち大である」という判定であってもよい。
【0091】
また、転がり軸受61に使用される前の潤滑剤の流動抵抗の値が第2基準値であり、使用された後の潤滑剤の流動抵抗の値が第2測定値であるから、第2測定値と第2基準値との差の絶対値が、第2基準値からの変動が許容される所定値よりも大きい場合、転がり軸受61内に潤滑剤を供給する等のメンテナンスが必要である。したがって、判定部52は、第2測定値と第2基準値の差の絶対値を算出し、当該絶対値が所定値よりも大きい場合に、「潤滑剤が劣化している」と判定し、その判定結果を結果記憶部55に出力する。
【0092】
結果記憶部55は、判定部52による判定結果を記憶する。通信部56は、結果記憶部55から判定結果に関する情報を読み出し、報知部7へ出力する。
【0093】
報知部7は、制御部5から出力された判定結果を作業者に報知する装置であり、転がり軸受61から離れた場所(例えば、作業者が常駐する建屋内)に設置される。報知部7は、表示部71と、入力部72とを有する。表示部71は、判定結果を表示する装置であり、例えばディスプレイである。なお、表示部71は、ディスプレイに加えてスピーカーを有しても良く、「潤滑剤が劣化している」という判定結果を受信した際に、アラーム音を発生してもよい。入力部72は、潤滑剤検査装置1の各種設定について、作業者が入力する装置であり、例えばマウス及びキーボードである。入力部72に入力された情報は、制御部5に出力される。例えば、第1基準値及び第2基準値が作業者により入力部72に入力され、制御部5に出力され、基準値記憶部54へ記憶される。また、潤滑剤検査装置1による検査の間隔(例えば、一週間に1回、1日に1回、等)が入力され、制御部5に出力されると、制御部5は、当該間隔に従って、駆動制御部51による各部の動作指令を行い、判定部52による判定を行う。
【0094】
<3.潤滑剤検査装置1の測定動作>
次に、図1から図11までを適宜参照しながら、潤滑剤検査装置1の測定動作について説明する。バルブ22は、風力発電装置が通常運転する間(すなわち、転がり軸受61が回転し、潤滑剤検査装置1による測定動作が行われない間)、閉状態とされている。これにより、転がり軸受61が回転しているときに、転がり軸受61から配管11へ潤滑剤が流出することを防止でき、潤滑剤の使用量を低減することができる。
【0095】
潤滑剤検査装置1による測定動作中、転がり軸受61は停止していても回転していてもよい。測定動作では、まず、制御部5の動作指令により、バルブ22を開状態にする。続いて、制御部5の動作指令により、吸引部4による吸引動作が開始される(吸引工程)。
【0096】
以上で説明したように、転がり軸受61から吸引部4までの間には、配管111、211、112、242、113と、貯留部3と、配管114が、この順番で接続し、これらの内部は密閉空間となる。したがって、バルブ22を開いた状態で、吸引部4が配管114内の気体を吸引すると、貯留部3及び配管111、211、112、242、113を介して、転がり軸受61内へ吸引力が伝わり、転がり軸受61から配管111へ潤滑剤が流出する。潤滑剤は、配管111から、配管211、112、242の順に流入する。以下、配管111から、配管211、112、242の順に潤滑剤が流れる方向を「流れ方向」と称する。
【0097】
次に、制御部5の動作指令により、バルブ22を閉状態とする。その後、制御部5の動作指令により、第1測定部21は配管211内に存在する潤滑剤について、第1測定値を測定する(第1測定工程)。また、制御部5の動作指令により、第2測定部23は配管242内に存在する潤滑剤について、第2測定値を測定する(第2測定工程)。第1及び第2測定工程で測定された第1及び第2測定値は、測定値記憶部53に記憶される。なお、第1測定部21による測定は、バルブ22が開状態となっている間に実行されてもよい。
【0098】
第2測定工程について、図11を参照しながら説明する。図11(a)は、第2測定工程が実行される直前の状態を示す図である。充填部24の配管242内には、吸引工程によって転がり軸受61から流出した潤滑剤が貯留されている。また、ピストン251のピストンヘッド251aは、アクチュエータ255によって矢印B方向へ引っ張られ、シール部材261と密着している。ピストンヘッド251aとシール部材261との密着により、配管242と取付口260との間の空気の漏洩を防止することができる。
【0099】
図11(b)は、第2測定工程の途中の状態を示す図であり、図11(c)は、第2測定工程の終了直後の状態を示す図である。第2測定工程が開始されると、制御部5の動作指令により、アクチュエータ255が伸長する。図11(b)に示すように、アクチュエータ255が伸長すると、配管242内のピストン251が潤滑剤に貫入される。そして、第2測定部23は、圧力センサ271により検出した圧力に基づいて、配管242内の潤滑剤の流動抵抗を測定する。このとき、配管112のバルブ22は閉状態であるため、図11(a)に示す位置から図11(b)に示す位置へピストンヘッド251aが移動するまでの間(すなわち、貫入部25が潤滑剤に貫入する間)、潤滑剤が配管112を介して転がり軸受61側へ逆流することを防止できる。
【0100】
また、配管242の排出口244側の端部には絞り部242aが設けられるので、配管242内の潤滑剤を押し出す際の潤滑剤の流動抵抗が高められる。そのため、アクチュエータ255からピストン251に付与される圧力を圧力センサ271によって確実に検出することができる。
【0101】
ここで、第1測定部21における摩耗粉(鉄粉)の割合(X/L)の測定は、前述のとおり、配管211内に潤滑剤が充満していると想定して、配管211の容積Lに基づいて測定される。よって、配管211内に潤滑剤が充満していれば、第1測定部21の測定がより正確になる。本実施形態では、配管211は第2測定部23により流動抵抗測定が行われる配管242よりも転がり軸受61に近い位置(すなわち、流れ方向上流側)にあり、配管211内において潤滑剤の充満状態が維持されやすくなる。これにより、第1測定部21において摩耗粉(鉄粉)の割合をより正確に測定することができる。
【0102】
また、第2測定部23における流動抵抗の測定は、前述のとおり、貫入部25が配管242内の潤滑剤に貫入しながら行われるため、第2測定工程前に配管242内において潤滑剤が充満状態ではない場合であっても、貫入部25が潤滑剤に貫入しながら配管242内に潤滑剤の充満状態を作り出すことができる。このように、配管242内が厳密に充満状態でなくともある程度正確な測定ができる第2測定部23を、第1測定部21の流れ方向下流側に配置することで、第1測定部21及び第2測定部23においてより正確な測定を行うことができる。
【0103】
第2測定部23から排出された潤滑剤は、配管113及び供給口311を介して、貯留部3に貯留される。貯留部3から吸引部4へは、排出口312を介して気体のみが排出されるため、吸引部4に潤滑剤が流入することを防止できる。これにより、潤滑剤の流入による吸引部4の故障を防止できる。
【0104】
第1及び第2測定工程の後、判定部52は、測定値に基づいて、転がり軸受61内への潤滑剤の供給の要否を判定する(判定工程)。そして、通信部56は、判定結果に関する情報を報知部7へ出力する(通信工程)。最後に、報知部7は、表示部71に判定結果を表示して、作業者に判定結果を報知する(報知工程)。作業者は、表示部71により報知された判定結果に基づいて、必要に応じて転がり軸受61内への潤滑剤の供給や、その他のメンテナンス作業を行う。潤滑剤の供給は、給脂装置12により行われる。
【0105】
以上より、通信部56により、転がり軸受61から離れた場所にある報知部7へ判定結果を出力することで、転がり軸受61から離れた場所にいる作業者に判定結果を報知することができる。作業者は、報知された判定結果から、転がり軸受61の劣化の程度や潤滑剤の劣化の程度を知ることができる。したがって、転がり軸受61の劣化の程度や転がり軸受61内への潤滑剤の劣化の程度を調査するために、作業者が転がり軸受61の設置された現場に赴く必要がなくなり、転がり軸受61についての保守作業の負担を軽減することができる。
【0106】
本実施形態の潤滑剤検査装置1では、吸引部4が潤滑剤を吸引して転がり軸受61内から配管11へ潤滑剤を流通させ、測定部2が、配管11内の潤滑剤に関する物理量(潤滑剤中に分散する金属粉の割合や、潤滑剤の流動抵抗)を測定する。配管11内には、転がり軸受61内で使用された後の潤滑剤が流通するため、潤滑剤検査装置1によれば、転がり軸受61内で使用された後の潤滑剤に関する物理量を測定することができる。
【0107】
<4.変形例>
以上、本発明の第1実施形態に係る潤滑剤検査装置1を説明した。しかしながら、本発明の実施に関してはこれに限られず、種々の変形を行うことができる。以下、本発明の第1実施形態についての変形例について、説明する。
【0108】
<4.1 貯留部3a>
図12は、第1実施形態についての変形例に係る潤滑剤検査装置1aを示す模式図である。なお、以下の説明において、第1実施形態から変更のない部分については同じ符号を付し、説明を省略する。潤滑剤検査装置1aの貯留部3aは、潤滑剤検査装置1の貯留部3と異なる構成を有する。
【0109】
貯留部3aは、供給口311及び排出口312を有する貯留部本体31と、供給口321及び排出口322を有する貯留部本体32(気体貯留部)と、バルブ33とを有する。貯留部本体31と貯留部本体32は、配管116を介して接続される。配管116は、一端を排出口312と接続し、他端を供給口321と接続する。バルブ33は、配管116の管路途中に接続され、閉状態にすることで貯留部本体31と貯留部本体32との間の気体の流通を遮断する。バルブ33は、制御部5と電気的に接続し、制御部5の動作指令により、開閉を切り替える。貯留部本体32と吸引部4は、配管117を介して接続される。配管117は、一端を排出口322と接続し、他端を配管410(図9)と接続する。
【0110】
貯留部本体32は、密閉容器であり、供給口321及び排出口322を除いて、貯留部本体32の内部には密閉空間が形成される。貯留部本体32は、流れ方向上流側の配管116及び流れ方向下流側の配管117の容積よりも大きい断面積及び大きい容積を有しており、内部に気体を貯留する。
【0111】
次に、本変形例に係る潤滑剤検査装置1aによる吸引工程について説明する。吸引工程が開始されると、制御部5の動作指令により、バルブ33を閉じる。これにより、貯留部本体31と吸引部4との間の気体の流通が遮断される。次に、制御部5の動作指令により、吸引部4が吸引動作を行う。これにより、配管117を介して貯留部本体32内の気体が吸引部4によって吸引され、貯留部本体32内の気体の圧力は、貯留部本体31内の気体の圧力よりも低くなる。
【0112】
次に、制御部5の動作指令により、貯留部本体31内の気体の圧力よりも貯留部本体32内の気体の圧力が低いときに、バルブ33を開く。これにより、貯留部本体31と吸引部4との間で、気体が流通できる状態になる。そして、貯留部本体31と貯留部本体32との差圧により、貯留部本体31よりも流れ方向上流側に位置する配管11に急激な吸引力が発生し、転がり軸受61から潤滑剤が流出する。
【0113】
本変形例では、貯留部本体32と貯留部本体31との差圧を利用して配管11内に急激な吸引力を発生させる。このため、動粘度の高い(すなわち、流動しにくい)潤滑剤を用いる場合でも、転がり軸受61から潤滑剤を確実に流出させることができる。また、貯留部本体32の容積は上流側及び下流側の配管116、117よりも大きいため、バルブ33を開状態に切り替えた後も、強い吸引力をある程度持続させることができる。これにより、より確実に潤滑剤を流出させることができる。
【0114】
なお、吸引部4による吸引動作を行いながら、バルブ33の開閉を繰り返すことで、配管11内に急激な吸引力を複数回付与してもよい。このように構成することで、転がり軸受61から潤滑剤を確実に流出させることができる。
【0115】
また、本変形例では気体貯留部として密閉容器(貯留部本体32)を用いるが、本発明の実施に関してはこれに限られない。例えば、配管117や貯留部本体32を設けず、配管116を吸引部4に接続し、配管116内の一部領域に気体貯留部を設けてもよい。この場合、気体貯留部は、配管116のうち、バルブ33よりも吸引部4側の位置において、管内の内径が前後の内径よりも大きく拡張した領域として設けられる。
【0116】
<4.2 バルブ>
図13は、第1実施形態についての変形例に係る潤滑剤検査装置1aの一部を示す模式図である。本変形例では、第1実施形態のバルブ22に替えて、転がり軸受61と測定部2との間の配管111にバルブ522が設けられている。バルブ522は、制御部5と電気的に接続し、制御部5の動作指令により、開閉が切り替えられる。バルブ522が閉状態になると、転がり軸受61内と測定部2との間の潤滑剤の流通が遮断される。バルブ522が開状態になると、転がり軸受61内と測定部2との間の潤滑剤の流通が確保される。
【0117】
バルブ522は、転がり軸受61が回転する間、閉状態とされている。これにより、転がり軸受61が回転しているときに、転がり軸受61内からバルブ522よりも流れ方向下流側の配管111へ潤滑剤が流出することを防止でき、転がり軸受61内の潤滑剤が減少することを抑制できる。
【0118】
図14は、第1実施形態についての変形例に係る潤滑剤検査装置1aの一部を示す模式図である。本変形例では、第1実施形態のバルブ22に替えて、測定部2と貯留部3との間の配管113にバルブ622が設けられている。バルブ622は、制御部5と電気的に接続し、制御部5の動作指令により、開閉が切り替えられる。バルブ622が閉状態になると、測定部2と貯留部3との間の潤滑剤の流通が遮断される。バルブ622が開状態になると、測定部2と貯留部3との間の潤滑剤の流通が確保される。
【0119】
バルブ622は、転がり軸受61が回転する間、閉状態とされている。これにより、転がり軸受61が回転しているときに、転がり軸受61内からバルブ622よりも流れ方向下流側の配管113へ潤滑剤が流出することを防止でき、転がり軸受61内の潤滑剤が減少することを抑制できる。
【0120】
<4.3 温度センサ>
第1実施形態の測定部2に温度センサをさらに設け、潤滑剤についての温度を測定してもよい。潤滑剤に関する物理量は、温度により変動する場合がある。例えば、潤滑剤の流動抵抗は、潤滑剤の温度により変動する。したがって、第2基準値が基準とする潤滑剤の温度と、第2測定部23で測定された潤滑剤の温度とが大きく異なる場合、潤滑剤自体は劣化しておらず、供給が不要であるにもかかわらず、第2基準値と第2測定値との差が大きくなるため、判定部52にて「潤滑剤が劣化している」と判定されるおそれがある。
【0121】
そこで、第2測定部23の配管242内に温度センサ(例えば、熱電対)を設け、配管242内の潤滑剤の温度を測定する。そして、温度センサにより測定された潤滑剤の温度に基づき、第2測定部23により測定された潤滑剤の流動抵抗を、第2基準値が基準とする潤滑剤の温度のときの流動抵抗へ補正する。これにより、第2基準値と第2測定値との温度条件を合わせた状態で判定を行うことができ、より正確な判定が可能となる。
【0122】
なお、温度条件ごとに複数の第2基準値を準備して基準値記憶部54に記憶させ、判定部52による判定工程の際に、第2測定値の温度条件に最も近い第2基準値を基準値記憶部54から判定部52へ読み出すように構成してもよい。
【0123】
<4.4 その他>
第1実施形態において、測定部2は、潤滑剤中の摩耗粉(鉄粉)の割合を測定する第1測定部21と、潤滑剤の流動抵抗を測定する第2測定部23とを有する。しかしながら、本発明の実施に関してはこれに限られず、測定部2は、第1測定部21と第2測定部23のいずれか一方を有する構成であってもよい。このような構成であっても、測定部2は吸引部4により転がり軸受61から吸引されて配管11内に流入した使用済みの潤滑剤を測定するため、転がり軸受で使用された潤滑剤についての劣化の程度をより正確に検査することができる。
【0124】
また、第1測定部21における摩耗粉(鉄粉)の量の測定は、磁気バランス式電磁誘導法による測定に限られず、公知の種々の測定法を用いることができる。この場合にも、配管211内の容積Lを分母とし、測定した摩耗粉(鉄粉)の量Xを分子として、摩耗粉(鉄粉)の割合X/Lを求めることができる。
【0125】
また、測定部2が測定する物理量は、摩耗粉(鉄粉)の割合や流動抵抗に限られず、潤滑剤の劣化の程度を知るための他の物理量を測定するようにしてもよい。例えば、赤外分光法を用いて、潤滑剤に含まれる不純物の量を測定してもよい。
【0126】
第1実施形態の潤滑剤検査装置1は、判定部52による判定結果を通信部56から報知部7へ出力した。しかしながら、本発明の実施に関してはこれに限られず、通信部56は、例えば定期的に測定値記憶部53から測定値を読み出し、当該測定値を通信部56から報知部7へ出力してもよい。このように構成することで、転がり軸受61から離れた場所にいる作業者は、報知部7に表示された測定値を見ることができる。
【0127】
吸引工程の際、給脂装置12から潤滑剤を供給することで、転がり軸受61から配管11への潤滑剤の流出を促してもよい。このとき、転がり軸受61の回転を停止するように構成してもよい。潤滑剤の供給中に転がり軸受61が回転を停止しているため、給脂装置12から供給された潤滑剤と、転がり軸受61内に存在する使用済みの潤滑剤とが混合せず、配管11には使用済み潤滑剤が流出する。したがって、より確実に、転がり軸受61で使用された後の潤滑剤についての物理量を測定することができる。
【0128】
第1実施形態では、転がり軸受61は自動調心ころ軸受であった。しかしながら、本発明の実施に関してはこれに限られず、転がり軸受61は、その他のころ軸受であってもよいし、玉軸受であってもよい。また、転がり軸受61は、単列であってもよい。転動体64は、玉であってもよい。
【0129】
以上のとおり開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。つまり、本発明の潤滑剤検査装置は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。
【符号の説明】
【0130】
1:潤滑剤検査装置 12:給脂装置 61:転がり軸受
11:配管(111、112、113、114、211、242)
2:測定部 21:第1測定部 23:第2測定部
22:バルブ 24:充填部 25:貫入部
27:検出部 3:貯留部 31:貯留部本体
311:供給口 312:排出口 4:吸引部
41:真空エジェクタ 42:圧力センサ 43:圧縮機
5:制御部 7:報知部 G1:潤滑剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14