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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】血圧計
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/022 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
A61B5/022 F
A61B5/022 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019222303
(22)【出願日】2019-12-09
(65)【公開番号】P2021090544
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100122286
【弁理士】
【氏名又は名称】仲倉 幸典
(72)【発明者】
【氏名】近藤 勝宣
(72)【発明者】
【氏名】山下 新吾
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/168797(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/018029(WO,A1)
【文献】特開2013-165812(JP,A)
【文献】特開2009-39352(JP,A)
【文献】特開2007-144130(JP,A)
【文献】実開平3-31404(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められたスケジュールに従って血圧測定を自動的に開始する自動血圧測定モードを有する血圧計であって、
被測定部位に装着される血圧計本体と、
上記血圧計本体に設けられた、互いに異なる指示を入力する複数の操作部とを備え、
上記操作部は、上記自動血圧測定モードへモードを切り替えるための自動血圧測定モード指示を入力する自動血圧測定モード操作部を含んでおり、
上記血圧計は、上記自動血圧測定モード操作部が操作されて、上記血圧計が上記自動血圧測定モードに設定されているとき、上記操作部の機能を制限する制限部を備えることを特徴とする血圧計。
【請求項2】
請求項1に記載の血圧計において、
上記操作部は、入力された血圧測定指示に応じて血圧測定を行う通常血圧測定モードのための上記血圧測定指示を入力する通常血圧測定操作部を含んでおり、
上記制限部は、上記血圧計が上記自動血圧測定モードに設定されているとき、上記通常血圧測定操作部による上記血圧測定指示に応じて血圧測定を行うことを制限する
ことを特徴とする血圧計。
【請求項3】
請求項1または2に記載の血圧計において、
上記操作部は、上記血圧計の電源をオンまたはオフさせる指示を入力する電源指示操作部を含んでおり、
上記制限部は、上記血圧計が上記自動血圧測定モードに設定されているとき、上記電源指示操作部が操作されて上記血圧計の電源がオフされることを制限する
ことを特徴とする血圧計。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一つに記載の血圧計において、
上記制限部は、上記血圧計が上記自動血圧測定モードに設定されているとき、上記自動血圧測定モードが解除されることを制限する
ことを特徴とする血圧計。
【請求項5】
請求項4に記載の血圧計において、
上記血圧計本体は、表示器を備えており、
上記制限部は、
上記血圧計が上記自動血圧測定モードに設定されているとき、上記自動血圧測定モード操作部が操作されると、上記表示器に、予め決められた表示時間が経過するまで、上記血圧計が上記自動血圧測定モードに設定されていることを示す表示を維持させ、
上記表示器が上記表示を維持しているとき、上記自動血圧測定モード操作部が、予め決められた時間間隔を空けて、予め決められた入力時間よりも長く操作され続けることにより、上記自動血圧測定モードを解除する
ことを特徴とする血圧計。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一つに記載の血圧計において、
上記操作部は、上記血圧計の時計設定を行うための時計設定指示を入力する時計設定指示操作部を含んでおり、
上記制限部は、上記血圧計が上記自動血圧測定モードに設定されているとき、上記時計設定指示操作部が操作されて上記時計設定が行われることを制限する
ことを特徴とする血圧計。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一つに記載の血圧計において、
上記被測定部位は手首であることを特徴とする血圧計。
【請求項8】
請求項7に記載の血圧計において、
上記血圧計本体と一体に設けられている血圧測定用カフを備え、
上記血圧計本体は、上記血圧測定用カフによって上記手首を一時的に圧迫して、上記カフ内の圧力を検出するオシロメトリック法により血圧測定を行う血圧測定部、上記操作部、および、上記制限部を搭載している
ことを特徴とする血圧計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は血圧計に関し、より詳しくは、自動(睡眠時)血圧測定モードを有する血圧計に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、血圧測定は、被験者の血圧を確実に調べるため、毎日同じ時間帯で実施されることが好ましい。この血圧測定はまた、被験者が日常生活を過すときに実施される必要があるため、身体的負担をできる限り被験者に与えないような血圧計を用いて実施されることが好ましい。この要求を満たすように、予め設定した時刻になると血圧測定を自動的に実施する手首式血圧計が特許文献1に開示されている。上述の手首式血圧計により、例えば被験者が就寝している夜間においても、被験者の睡眠を阻害することなく、血圧測定を自動的に実施できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際再表2012/018029号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、睡眠中の被験者は、例えば寝返りにより、測定姿勢、特に手首の向きを変化させ易い。このとき、手首式血圧計本体に設けられているスイッチが寝具などに押し付けられて誤って操作されることで、自動血圧測定が実施されない恐れがある。
【0005】
本発明は、上述の問題点を解消するためになされたもので、自動血圧測定モードに設定されているとき、意図しない操作で、自動血圧測定が正しく実施されない事態を回避できる血圧計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、この開示の血圧計は、
予め定められたスケジュールに従って血圧測定を自動的に開始する自動血圧測定モードを有する血圧計であって、
被測定部位に装着される血圧計本体と、
上記血圧計本体に設けられた、互いに異なる指示を入力する複数の操作部とを備え、
上記操作部は、上記自動血圧測定モードへモードを切り替えるための自動血圧測定モード指示を入力する自動血圧測定モード操作部を含んでおり、
上記血圧計は、上記自動血圧測定モード操作部が操作されて、上記血圧計が上記自動血圧測定モードに設定されているとき、上記操作部の機能を制限する制限部を備えることを特徴とする。
【0007】
本明細書で、「操作部」は、典型的には、上記血圧計の本体に設けられたスイッチであって、ユーザ(主に、被験者)によるスイッチオンを指示として受け付けるものを指す。なお、血圧計の操作自体は、上記血圧計の外部に存在するスマートフォン等から無線通信を介した指示によって行われてもよい。
【0008】
操作部の機能を「制限」するとは、例えば、仮にユーザが操作部を操作しても、指示が入力されない状態にすること、および、例えばユーザによるスイッチの長押しを要求するなど、指示が入力され難い状態にすることを含む。
【0009】
この開示の血圧計では、例えば、被験者が、血圧計本体を被測定部位に装着した状態で、互いに異なる指示を入力する複数の操作部に含まれる自動血圧測定モード操作部によって、予め定められたスケジュールに従って血圧測定を自動的に開始する自動血圧測定モードへモードを切り替えるための自動血圧測定モード指示を入力する。上記血圧計が上記自動血圧測定モードに設定されているとき、制限部は上記操作部の機能を制限する。これにより、血圧計が自動血圧測定モードに設定されているとき、意図しない操作で、自動血圧測定が正しく実施されない事態を回避できる。したがって、自動血圧測定が正しく行われる。
【0010】
一実施形態の血圧計では、
上記操作部は、入力された血圧測定指示に応じて血圧測定を行う通常血圧測定モードのための上記血圧測定指示を入力する通常血圧測定操作部を含んでおり、
上記制限部は、上記血圧計が上記自動血圧測定モードに設定されているとき、上記通常血圧測定操作部による上記血圧測定指示に応じて血圧測定を行うことを制限する
ことを特徴とする。
【0011】
この一実施形態の血圧計では、上記血圧計が上記自動血圧測定モードに設定されているとき、上記制限部は、上記通常血圧測定操作部(上記通常血圧測定モードのための血圧測定指示を入力する)による上記血圧測定指示に応じて血圧測定を行うことを制限する。これにより、血圧計が自動血圧測定モードに設定されているとき、割り込みで予定外の血圧測定が行われる事態を回避できる。
【0012】
一実施形態の血圧計では、
上記操作部は、上記血圧計の電源をオンまたはオフさせる指示を入力する電源指示操作部を含んでおり、
上記制限部は、上記血圧計が上記自動血圧測定モードに設定されているとき、上記電源指示操作部が操作されて上記血圧計の電源がオフされることを制限する
ことを特徴とする。
【0013】
この一実施形態の血圧計では、上記血圧計が上記自動血圧測定モードに設定されているとき、上記制限部は、上記電源指示操作部(上記血圧計の電源をオンまたはオフさせる指示を入力する)が操作されて上記血圧計の電源がオフされることを制限する。これにより、血圧計が自動血圧測定モードに設定されているとき、電源が誤ってオフになる事態を回避できる。したがって、自動血圧測定が確実に行われる。
【0014】
一実施形態の血圧計では、
上記制限部は、上記血圧計が上記自動血圧測定モードに設定されているとき、上記自動血圧測定モードが解除されることを制限する
ことを特徴とする。
【0015】
この一実施形態の血圧計では、上記血圧計が上記自動血圧測定モードに設定されているとき、上記制限部は、上記自動血圧測定モードが解除されることを制限する。これにより、血圧計が自動血圧測定モードに設定されているとき、自動血圧測定モードが誤って解除される事態を回避できる。したがって、自動血圧測定が確実に行われる。
【0016】
一実施形態の血圧計では、
上記血圧計本体は、表示器を備えており、
上記制限部は、
上記血圧計が上記自動血圧測定モードに設定されているとき、上記自動血圧測定モード操作部が操作されると、上記表示器に、予め決められた表示時間が経過するまで、上記血圧計が上記自動血圧測定モードに設定されていることを示す表示を維持させ、
上記表示器が上記表示を維持しているとき、上記自動血圧測定モード操作部が、予め決められた時間間隔を空けて、予め決められた入力時間よりも長く操作され続けることにより、上記自動血圧測定モードを解除する
ことを特徴とする。
【0017】
ここで、「表示器」とは、例えば、上記血圧計の本体に設けられたLED(発光ダイオード)であって、点灯することにより、上記血圧計が上記自動血圧測定モードに設定されていることを示すように構成されてもよく、または、LCD(液晶ディスプレイ)であって、「自動血圧測定モードON」という文字を表示することにより、上記血圧計が上記自動血圧測定モードに設定されていることを示すように構成されてもよい。
【0018】
「予め決められた表示時間」とは、例えば、10秒間である。
【0019】
また、「予め決められた時間間隔」とは、例えば、1秒間である。
【0020】
さらに、「予め決められた入力時間」とは、例えば、上記自動血圧測定モード操作部がスイッチである場合、ユーザによりスイッチオンされ続ける時間であり、例えば、3秒間である。
【0021】
この一実施形態の血圧計では、上記制限部は、上記血圧計が上記自動血圧測定モードに設定されているとき、例えば、被験者が上記自動血圧測定モード操作部を操作することにより、予め決められた表示時間が経過するまで、上記表示器に上記表示(血圧計が上記自動血圧測定モードに設定されていることを示す表示)を維持させる。このとき、被験者が、予め決められた時間間隔を空けて、予め決められた入力時間よりも長く上記自動血圧測定モード操作部を操作し続けることにより、上記制限部は、上記自動血圧測定モードを解除する。したがって、血圧計が自動血圧測定モードに設定されているとき、被験者が意図して行う操作によってのみ、自動血圧測定モードは解除される。これにより、自動血圧測定モードが誤って解除される事態を回避できる。
【0022】
一実施形態の血圧計では、
上記操作部は、上記血圧計の時計設定を行うための時計設定指示を入力する時計設定指示操作部を含んでおり、
上記制限部は、上記血圧計が上記自動血圧測定モードに設定されているとき、上記時計設定指示操作部が操作されて上記時計設定が行われることを制限する
ことを特徴とする。
【0023】
ここで、「時計設定」とは、自動血圧測定モードで行われる血圧測定のスケジュールの基準となる血圧計の時計を進める、または戻すことを指す。
【0024】
この一実施形態の血圧計では、上記制限部は、上記血圧計が上記自動血圧測定モードに設定されているとき、上記時計設定指示操作部(上記血圧計の時計設定を行うための時計設定指示を入力する)が操作されて上記時計設定が行われることを制限する。これにより、血圧計が自動血圧測定モードに設定されているとき、時計設定が誤って行われて、血圧測定がスケジュールと異なる時刻に開始される事態を回避できる。
【0025】
一実施形態の血圧計では、上記被測定部位は手首であることを特徴とする。
【0026】
この一実施形態の血圧計は、被測定部位としての手首を圧迫するタイプであるから、上腕を圧迫するタイプに比して、被験者の睡眠を妨げる程度が少ないことが期待される(Imai et al., “Development and evaluation of a home nocturnal blood pressure monitoring system using a wrist-cuff device”, Blood Pressure Monitoring 2018, 23,P318-326)。したがって、この血圧計は、自動(睡眠時)血圧測定に適する。
【0027】
一実施形態の血圧計では、
上記血圧計本体と一体に設けられている血圧測定用カフを備え、
上記血圧計本体は、上記血圧測定用カフによって上記手首を一時的に圧迫して、上記カフ内の圧力を検出するオシロメトリック法により血圧測定を行う血圧測定部、上記操作部、および、上記制限部を搭載している
ことを特徴とする。
【0028】
ここで、「血圧測定部」は、例えば、上記血圧測定用カフに加圧用の流体を供給するポンプ、上記血圧測定用カフから流体を排気させる弁、これらのポンプ・弁などを駆動・制御する要素を含む。
【0029】
この一実施形態の血圧計は、一体かつコンパクトに構成され得る。したがって、ユーザによる取り扱いが便利になる。
【発明の効果】
【0030】
以上より明らかなように、本発明の血圧計によれば、自動血圧測定モードに設定されているとき、意図しない操作で、自動血圧測定が正しく実施されない事態を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態に係る手首式血圧計の概略図である。
図2図1に示す手首式血圧計が左手首に巻き付けられた状態を示す概略図である。
図3図1に示す手首式血圧計のブロック図である。
図4図1に示す手首式血圧計により実施される自動血圧測定のフローチャートである。
図5図1に示す手首式血圧計における、通常血圧測定モードと自動血圧測定モードとの間で切り替え条件を示す図である。
図6】上記自動血圧測定モードを解除する自動血圧測定モード解除処理のフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る、手首式血圧計の実施形態を説明する。
【0033】
[手首式血圧計]
図1は、本発明の実施形態に係る手首式血圧計(以下、適宜「血圧計」という。)100の概略構成を示す。この血圧計100は、後述するように、血圧測定スイッチがオンされた直後に血圧測定を開始する通常血圧測定モードと、予め決められたスケジュールに従って血圧測定を開始する自動血圧測定モードを有する。
【0034】
[手首式血圧計の構成]
図1に示すように、血圧計100は、被験者の被測定部位に巻き付けられる血圧測定用のカフ10と、カフ10に一体に取り付けられている血圧計本体20を備える。
【0035】
図2に示すように、実施形態の血圧計100は手首式血圧計である。したがって、カフ10は、被験者200の例えば左手首210に巻き付けられるように細長い帯状の形状を有している。カフ10は、左手首210を圧迫するための空気袋12(図3参照)が内包されている。なお、カフ10を常時環状に維持するために、カフ10内に、適度な可撓性を有するカーラ(図示せず)が設けられてもよい。
【0036】
血圧計本体20は、帯状のカフ10の長手方向に関して略中央の部位に一体に取り付けられている。実施形態では、血圧計本体20が取り付けられる部位は、左手首210の掌側面(手の平側の面)210aに対応することが予定されている。
【0037】
血圧計本体20は、カフ10の外周面に沿った扁平な略直方体の形状を有しており、被験者200の睡眠の邪魔にならないように、小型且つ薄く形成されている。図1に示す血圧計本体20の上面とその周りを囲む側面とを繋ぐ角部は、曲面状の面取りが施されている。
【0038】
図1に示すように、血圧計本体20の外面のうち左手首210から最も遠い側の上面には、表示画面をなす画面表示部30が設けられている。また、この上面と図の手前側の側面には、被験者200からの指示を入力するための操作部40とが設けられている。
【0039】
実施形態において、画面表示部30は、LCD(液晶ディスプレイ)を含み、後述のCPU(中央演算処理装置)110からの制御信号に従って所定の情報、例えば最高血圧(単位;mmHg)、最低血圧(単位;mmHg)、脈拍(単位;拍/分)を表示するように構成されている。なお、画面表示部30は有機ELディスプレイ又はLED(発光ダイオード)のいずれであってもよい。
【0040】
操作部40は、被験者200が操作する複数のボタン又はスイッチを有する。実施形態では、操作部40は、通常血圧測定モードで血圧測定指示を被験者200が入力するための血圧測定スイッチ(通常血圧測定操作部)42A、自動血圧測定モードの血圧測定指示を被験者200が入力するための自動測定スイッチ(自動血圧測定モード操作部)42B、および血圧計本体20の時計設定を行う時計設定指示を被験者200が入力するための時計設定スイッチ(時計設定指示操作部)42Cを含む。血圧測定スイッチ42Aは、血圧計100が通常血圧測定モードに設定されている場合、又は血圧計100が自動血圧測定モードに設定されている場合、該スイッチが血圧測定中に押されたときは実行中の血圧測定を停止するスイッチとして機能する。
【0041】
以下の説明において、「通常血圧測定」とは、血圧測定スイッチ42Aがオンされた直後に開始される血圧測定をいう。また、以下の説明において、「自動血圧測定」とは、自動測定スイッチ42Bを通じて血圧測定指示が入力された後に、予め定められたスケジュールに従って自動的に行われる血圧測定を意味し、例えば被験者200の睡眠中に行われる。予め定められたスケジュールに従って行われる血圧測定は、例えば深夜1時、2時、3時などの決められた時刻に行われる血圧測定、または、自動測定スイッチ42Bが押されてから例えば2時間間隔で行われる血圧測定である。
【0042】
実施形態において、血圧測定スイッチ42A、自動測定スイッチ42B、及び時計設定スイッチ42Cは、いずれもモーメンタリタイプ(自己復帰タイプ)のスイッチであり、押し下げられている間だけオン状態になり、離されるとオフ状態に戻るように構成されている。
【0043】
図1,2に示すように、自動測定スイッチ42Bの端部には、LED点灯部(表示器)32が設けられている。このLED点灯部32は、血圧計100のモードが自動血圧測定モードへ切り替えられているとき、自動測定スイッチ42Bが押し下げられると、10秒間(表示時間)点灯し続ける。また、LED点灯部32が点灯し続ける時間は、この内容に限定されることなく、例えば5秒間または20秒間でもよい。
【0044】
図3は血圧計100のブロック構成を示す。
【0045】
上述のカフ10に含まれる空気袋12と血圧計本体20に含まれる種々の流体制御機器(以下に説明する)は、エア配管50によって流体流通可能に接続されている。
【0046】
血圧計本体20は、上述の画面表示部30とLED点灯部32と操作部40とに加えて、制御部であるCPU110と、記憶部であるメモリ112と、電源部114と、圧力センサ62と、ポンプ72と、弁82を有する。また、血圧計本体20は、圧力センサ62の出力をアナログ信号からデジタル信号へ変換するA/D変換回路64と、ポンプ72を駆動するポンプ駆動回路74と、弁82を駆動する弁駆動回路84を有する。圧力センサ62、ポンプ72、及び弁82は、エア配管50を通して、空気袋12と流体流通可能に接続されている。
【0047】
メモリ112は、血圧計100を制御するためのプログラム、血圧計100を制御するために用いられるデータ、血圧計100の各種機能を設定するための設定データ、および血圧値の測定結果のデータなどを記憶している。メモリ112はまた、プログラム実行中の各種情報を一時的に保存するワークメモリとしても用いられる。特に、実施形態における血圧計メモリ112は、プログラム記憶部として構成されており、後述するオシロメトリック法による血圧算出のための通常血圧測定プログラムと自動血圧測定プログラムを記憶している。
【0048】
CPU110は、血圧計100全体の動作を制御するように構成されている。具体的には、CPU110は、メモリ112に記憶された血圧計100を制御するためのプログラムに従って、ポンプ72又は弁82を駆動する圧力制御部、血圧計100のモードが自動血圧測定モードへ切り替えられているとき、操作部40に設けられている血圧測定スイッチ42Aと自動測定スイッチ42Bと時計設定スイッチ42Cの機能を制限する制限部、及び後述する通常血圧測定プログラム又は自動血圧測定プログラムにより、血圧測定を実施する測定実施部として構成されている。CPU110はまた、血圧測定を実施することで得られる血圧値を画面表示部30に表示し、メモリ112に記憶させる。CPU110はさらに、血圧計100のモードが自動血圧測定モードへ切り替えられているとき、自動測定スイッチ42Bが押し下げられると、LED点灯部32を10秒間点灯させ続ける。
【0049】
実施形態において、CPU110は、時計設定スイッチ42Cが押し下げられると、血圧計本体20の時計設定を行う。具体的には、CPU110は、時計設定スイッチ42Cが押し下げられた後、血圧測定スイッチ42Aが押し下げられ続けると、血圧計100の時計を進めて、自動測定スイッチ42Bが押し下げられ続けると、血圧計100の時計を戻す。その後、CPU110は、時計設定スイッチ42Cが再び押し下げられると、上述のように調整された時計を設定する。CPU110は、自動血圧測定モードにおいて、この時計を参照することで、上述のスケジュールで定められた測定時刻であるか否かを判断する。
【0050】
電源部114は、2次電池からなり、CPU110、圧力センサ62、ポンプ72、弁82、画面表示部30、LED点灯部32、メモリ112、A/D変換回路64、ポンプ駆動回路74、および弁駆動回路84の各部に電力を供給するように構成されている。電源部114はまた、オン/オフ状態を切り替えることができるように構成されている。例えば、電源がオフ状態のとき、血圧測定スイッチ(電源指示操作部)42Aを3秒間以上押し下げ続けると、オン状態に切り替わる。また、通常血圧測定モードでは、電源がオン状態のとき、血圧測定スイッチ(電源指示操作部)42Aを3秒間以上押し下げ続けると、オフ状態に切り替わる。
【0051】
ポンプ72は、カフ10に内蔵された空気袋12内の圧力(以下、適宜「カフ圧」という。)を上げるために、エア配管50を通して空気袋12に流体としての空気を供給するように構成されている。弁82は、カフ圧を制御するため、開くことによってエア配管50を通して空気袋12の空気を排出する、又は閉じることによってカフ圧を保持するように構成されている。ポンプ駆動回路74は、CPU110から与えられる制御信号に基づいてポンプ72を駆動するように構成されている。弁駆動回路84は、CPU110から与えられる制御信号に基づいて弁82を開閉するように構成されている。
【0052】
圧力センサ62とA/D変換回路64は、カフ圧を検出するように構成されている。実施形態における圧力センサ62は、ピエゾ抵抗式圧力センサであり、空気袋12のカフ圧をピエゾ抵抗効果による電気抵抗として検出し出力する。A/D変換回路64は、圧力センサ62の出力(電気抵抗)をアナログ信号からデジタル信号へ変換してCPU110に出力する。実施形態では、CPU110は、圧力センサ62から出力される電気抵抗に応じて、カフ圧を取得する。
【0053】
[血圧測定プログラム]
血圧測定プログラムは、血圧計本体20を左手首210に取り付けている被験者200の血圧を算出する。血圧測定プログラムは、通常血圧測定プログラムと自動血圧測定プログラムを含む。通常血圧測定プログラムは、被験者200が椅子などに座り、血圧計本体20が取り付けられている左手首210を被験者200の心臓と同じ高さに保つことを想定している。自動血圧測定プログラムは、被験者200がベッドなどに横たわり、血圧計本体20が取り付けられている左手首210が被験者200の心臓よりも低い位置に置かれることを想定している。血圧計本体20の高さと被験者200の心臓の高さの関係が異なることで、異なる血圧値が算出されることが分かっている。そのため、通常血圧測定プログラムと自動血圧測定プログラムは、それぞれが想定する血圧計本体20の高さと被験者200の心臓の高さの関係を考慮して、血圧算出に用いるパラメータが予め調整されている。
【0054】
CPU110は、通常血圧測定プログラム又は自動血圧測定プログラムを実施するとき、圧力センサ62により得られるカフ圧に含まれる脈波の変動成分から脈波信号を得て、メモリ112に記憶されているそれぞれのプログラムを用いて、血圧値(最高血圧と最低血圧)を算出する。
【0055】
[自動血圧測定モード]
自動血圧測定について説明する。血圧計100のカフ10が被験者200の左手首210に巻き付けられ、電源がオンしている状態(通常血圧測定モード)で、未就寝の被験者200が血圧計本体20の自動測定スイッチ42Bを一度押下すると、自動血圧測定モードへ移行すべき旨の指示(自動血圧測定モード指示)がCPU110に出力される。
【0056】
その後、予め定められたスケジュールに従って自動血圧測定プログラムが実施される。
【0057】
実施形態において、自動血圧測定のスケジュールでは、自動測定スイッチ42Bが押下されてから所定時間(例えば、4時間)経過した時点、また、必要であれば、この時点から所定時刻(例えば午前7時)まで、一定時間(例えば、2時間)経過ごとに、自動血圧測定プログラムが実施される。自動血圧測定の行われる時刻が自動測定スイッチ42Bを押下した時点を基準に計算される形態において、自動血圧測定プログラムは測定時刻を決定するプログラム(図示せず)を備えており、この時刻決定プログラムに基づいて測定時刻が決定される。
【0058】
自動血圧測定の実施スケジュールはこれに限定されるものでなく、予め決められた予約時刻、例えば午前1時、2時、3時に、自動血圧測定プログラムが実施されるように設定されてもよい。
【0059】
図4は、被験者200が血圧計100により自動血圧測定を実施するときの動作フローを示す。この自動血圧測定の間、左手首210に血圧計100を装着した被験者200は、ベッドなどに横たわった状態を保つ。
【0060】
この状態で、図4のステップS1に示すように、被験者200が血圧計本体20に設けられている自動測定スイッチ42Bを押下して自動血圧測定モードの血圧測定指示を入力すると、CPU110は、自動血圧測定のスケジュールで定められた測定時刻であるか否かを判断し(ステップS2)、スケジュールで定められた測定時刻でなければ(ステップS2でNOへ分岐するとき)、該測定時刻になるまで待つ。
【0061】
上記測定時刻になるとき(ステップS2でYESへ分岐するとき)、CPU110は、圧力センサ62を初期化する(ステップS3)。具体的には、CPU110は、処理用メモリ領域を初期化するとともに、ポンプ72を停止し、弁82を開いた状態で、圧力センサ62の0mmHg調整(大気圧を0mmHgに設定する。)を行う。
【0062】
次に、CPU110は、弁駆動回路84を介して弁82を閉じ(ステップS4)、続いて、ポンプ駆動回路74を介してポンプ72を駆動して、カフ10(空気袋12)の加圧を開始する(ステップS5)。このとき、CPU110は、ポンプ72からエア配管50を通して空気袋12に空気を供給しながら、圧力センサ62の出力に基づいて、空気袋12内の圧力であるカフ圧の加圧速度を制御する。
【0063】
次に、ステップS6において、CPU110は、この時点で取得されている脈波信号に基づいて、メモリ112に記憶されている上述の自動血圧測定プログラムを用いて血圧値(最高血圧と最低血圧)を算出する。
【0064】
この時点で、CPU110は、データ不足のために未だ血圧値を算出できないとき(ステップS7でNOへ分岐する場合)、カフ圧が上限圧力(安全のために、例えば300mmHgというように予め定められている。)に達していない限り、ステップS5,S6の処理を繰り返す。
【0065】
血圧値が算出されると(ステップS7でYESへ分岐する場合)、CPU110は、ポンプ72を停止し(ステップS8)、弁82を開いて(ステップS9)、カフ10(空気袋12)内の空気を排気するように制御する。
【0066】
その後、CPU110は、算出した血圧値を画面表示部30へ表示し、血圧計をメモリ112へ保存する(ステップS10)ように制御する。
【0067】
上述のスケジュールで定められた1回の血圧測定が完了すると、CPU110は、上述のスケジュールで定められた全ての血圧測定が完了したか否かを判断する(ステップS11)。上述のスケジュールで定められた血圧測定が未だ予定されている場合(ステップS11で「未完」へ分岐するとき)、CPU110は、ステップS2に戻り、上述のスケジュールで定められた次の測定時刻であるか否かを判断し、該測定時刻でなければ(ステップS2でNOへ分岐するとき)、該測定時刻になるまで待つ。
【0068】
上記スケジュールで定められた次の測定時刻になるとき(ステップS2でYESへ分岐するとき)、CPU110は、ステップS3~S10の処理を繰り返し、ステップS11において、再び、上記スケジュールで定められた全ての血圧測定が完了したか否かを判断する。
【0069】
上述のスケジュールで定められた全ての血圧測定が完了すると(ステップS11で「終了」へ分岐するとき)、CPU110は自動血圧測定を終了する。
【0070】
図5は、CPU110が血圧計100のモードを通常血圧測定モードと自動血圧測定モードとの間で切り替えるときの条件を示す。
【0071】
上述のように、血圧計100が通常血圧測定モードにあるとき、自動測定スイッチ42Bが押下されると、血圧計100のモードは自動血圧測定モードへ切り替わる、すなわち自動血圧測定モードが設定されている状態になる。その後、CPU110は、図4に示す動作フローにしたがって、自動血圧測定を行う。
【0072】
実施形態では、CPU(制限部)110は、血圧計100が自動血圧測定モードに設定されているとき、仮に血圧測定スイッチ42Aが押下されたとしても、血圧計100が血圧測定スイッチ42Aによる血圧測定指示に応じた血圧測定を行うことを制限する。これにより、血圧計100が自動血圧測定モードに設定されているとき、割り込みで予定外の血圧測定が行われる事態を回避できる。
【0073】
また、CPU110は、血圧計100が自動血圧測定モードに設定されているとき、電源がオフ状態になることを制限する。すなわち、CPU110は、仮に血圧測定スイッチ42Aが3秒間以上押下され続けられたとしても、血圧計100の電源部114がオフ状態に切り替わることを制限する。これにより、血圧計100が自動血圧測定モードに設定されているとき、電源部114が誤ってオフになる事態を回避できる。したがって、自動血圧測定が確実に行われる。なお、この電源114がオフ状態に切り替わる機能の制限は、血圧測定スイッチ42Aが血圧測定中に押されたときに実行中の血圧測定を停止する機能を損なうものではない。
【0074】
さらに、CPU110は、血圧計100が自動血圧測定モードに設定されている状態であるとき、時計設定スイッチ42Cが押下されることで、時計設定が行われることを制限する。これにより、血圧計100が自動血圧測定モードに設定されているとき、時計設定が誤って行われて、血圧測定がスケジュールと異なる時刻に開始される事態を回避できる。
【0075】
自動血圧測定モードの解除(この例では、通常血圧測定モードへの移行)は、図6に示す自動血圧測定モード解除処理によって行われる。すなわち、血圧計100が自動血圧測定モードに設定されている状態であるとき、ステップS51に示すように自動測定スイッチ42Bが押下されると(ステップS51でYESへ分岐するとき)、ステップS52に示すようにLED点灯部32が10秒間(表示時間)点灯し続ける。自動測定スイッチ42Bの端部に設けられているLED点灯部32の点灯は、血圧計100のモードが自動血圧測定モードであることを意味する。このLED点灯部32が点灯し続けている間、ステップS53に示すように、1秒間以上の時間間隔を空けて、自動測定スイッチ42Bが3秒間(入力時間)以上押下され続けると(ステップS53でYESへ分岐するとき)、血圧計100のモードを自動血圧測定モードから切り替える自動血圧測定モードの解除指示がCPU110に出力されて、ステップS54に示すように自動血圧測定モードが解除される(この例では、通常血圧測定モードに移行する。)。したがって、血圧計100が自動血圧測定モードに設定されているとき、被験者200が意図して行う上述の操作(ステップS51,S53)を要件として、自動血圧測定モードは解除される。これにより、自動血圧測定モードが誤って解除される事態を回避できる。
【0076】
さらに、CPU(制限部)110は、血圧計100が自動血圧測定モードに設定されているとき、上述の自動血圧測定モード解除処理(図6)以外で、自動血圧測定モードが解除されることを制限する。これにより、血圧計100が自動血圧測定モードに設定されているとき、自動血圧測定モードが誤って解除される事態を回避できる。したがって、自動血圧測定が確実に行われる。
【0077】
このように、この血圧計100によれば、血圧計100が自動血圧測定モードに設定されているとき、意図しない操作で、自動血圧測定が正しく実施されない事態を回避できる。したがって、自動血圧測定が正しく行われる。
【0078】
血圧計100は、被測定部位としての手首(実施形態では左手首210としたが、右手首でもよい。)を圧迫するタイプであるから、上腕を圧迫するタイプに比べて、被験者200の睡眠を妨げ難いことが期待される(Imai et al., “Development and evaluation of a home nocturnal blood pressure monitoring system using a wrist-cuff device”, Blood Pressure Monitoring 2018, 23,P318-326)。したがって、上記血圧計100は自動(睡眠時)血圧測定に適する。
【0079】
また、血圧計100は、手首式血圧計として一体かつコンパクトに構成されているため、被験者200が扱い易い。
【0080】
[他の実施形態]
上述の実施形態では、CPU110は、カフ10(空気袋12)の加圧過程で血圧を算出したが、カフの減圧過程で血圧を算出してもよい。
【0081】
上述の実施形態では、血圧計100は、通常の血圧測定指示が入力される血圧測定スイッチ42Aと、自動血圧測定指示が入力される自動測定スイッチ42Bを備えるが、例えば、血圧計の外部に存在するスマートフォン等から無線通信を介して、血圧計の信号受信部が指示を受け付け、この信号受信部が受信する信号を通常の血圧測定スイッチ又は自動測定スイッチからCPUに出力される信号に代えてもよい。
【0082】
上述の実施形態では、血圧計100は、血圧測定スイッチ42Aが通常の血圧測定指示の信号をCPU110に出力し、自動測定スイッチ42Bが自動血圧測定指示の信号をCPU110に出力するように構成されているが、例えば、血圧測定スイッチを1回押下することにより、通常の血圧測定指示の信号をCPUに出力し、血圧測定スイッチを一定時間内に2回押下することにより、自動血圧測定指示の信号をCPUに出力するように構成されてもよい。
【0083】
上述の実施形態では、血圧計本体20は、カフ10に一体に取り付けられているが、カフと別体に設けられ、可撓性のエアチューブを介してカフ10(空気袋12)と流体流通可能に接続されてもよい。
【0084】
上述の実施形態では、通常血圧測定プログラム、自動血圧測定プログラム、及びこれらのフローは、ソフトウェアとしてメモリ112に記憶されているが、CD(コンパクトディスク)、DVD(デジタル万能ディスク)、フラッシュメモリなどの非一時的な媒体に記録されてもよい。上述の媒体に記録されたソフトウェアを、パーソナルコンピュータ、PDA(パーソナル・デジタル・アシスタンツ)、スマートフォンなどの実質的なコンピュータ装置にインストールすることにより、それらのコンピュータ装置に、上述のプログラムとフローを実行させることができる。
【符号の説明】
【0085】
100:血圧計、20:血圧計本体、40:操作部、42B:自動血圧測定モード操作部(自動測定スイッチ)、110:制限部(CPU)、210:被測定部位(手首)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6